説明

油の分離方法

【課題】原料である食品残渣を、水の亜臨界を利用し、原料の水溶液中の油分を効率的に除去し、しかも高温高圧下におき、加水分解を起こさせることで、細菌学的に滅菌し、かつ細菌性毒素等の無毒化を可能とする。
【解決手段】粉砕タンクユニット2において原料に加水して原料と水が混合した被処理溶液とし、被処理溶液を高温及び高圧の水熱反応装置4の反応器6内に保持して被処理溶液の水を亜臨界水とし、水の誘電率を低下させて、原料内に含まれている油を水と混合して抽出するとともに、原料内に含まれている蛋白質を低分子に分解し、油及び水と、低分子に分解した蛋白質とを含む被処理溶液を高圧の反応器6内から取り出して常圧下におき、油と水を分離し、油の除去された水及び蛋白質を含む被処理溶液を乾燥装置5で乾燥し粉粒にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品、その他の物品から油を分離する方法に関し、例えば、食品、食品残渣(各種の余剰食品、調理残渣、食べ残し残渣、売れ残り食品残渣等)、食品製造副産物(米ぬか、酒粕、醤油かす、畜産の内臓、皮、食肉、魚くず等、食品製造で得られる副産物や加工屑)、その他食品以外の物から、油の分離をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、亜臨界状態を利用して各種の物を処理する方法が知られている。例えば、植物、畜産物、魚介類またはそれらの廃棄物、あるいは生ゴミや家畜の糞などの汚物を含むバイオマス資源を有効利用するための処理システム及び処理方法において、バイオマス資源を加熱し、メタンガスと、残渣を含む消化液とを生成し、消化液を、高温高圧雰囲気下で加熱し、メタンガス、有機酸、油、及び残渣を含む水溶液を生成する亜臨界装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ビール製造用麦芽を、亜臨界状態または超臨界状態の二酸化炭素により脂質を除去処理することが知られている(特許文献2参照)。大豆蛋白溶液と亜臨界状態の二酸化炭素を連続的に接触保持して蛋白画分を回収し、色調、風味に優れかつ物性機能も優れた大豆蛋白を得る方法が知られている(特許文献3参照)。
【0004】
さらに、米胚芽、胚芽を含む米糠、胚芽米、小麦胚芽および小麦胚芽の脂質を亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素で抽出分離し、胚芽食品の風味を向上し、食味、消化、調理加工、管理等の総合面で広く食品分野へ応用することを可能にした脱脂食品素材を提供するという点が記載されている(特許文献4参照)。なお、半導体製造技術分野において、亜臨界二酸化炭素を利用して、塵や夾雑物を洗浄し除去する技術も知られている。
【0005】
ところで、近年、スーパー、コンビニエントストア等の売れ残り食品、家庭、レストラン等からの廃棄される食品残渣の効率的な有効利用が検討されている。例えば、食品残渣を、養豚などの飼料に利用する技術が期待されている。すでに、これらを乾燥、もしくは 発酵させ、飼料化することが試みられている。
【0006】
しかしながら、有効利用するべき原料となる食品残渣中には油分が多く、 加工後も油が多く残るので、実際に飼料に配合する場合に、栄養のアンバランス等、栄養価的に問題がある。
【0007】
従来、食品残渣中の油分を除去する手段として、油で揚げて水分を飛ばしてから、又は熱水で脱脂してから、最終的にスクリュープレスなどの機械的圧力で脱脂する方法(油温減圧脱水乾燥方式、ボイル乾燥方式)や、高温発酵乾燥方式で乾燥させる方法が知られている。また、粉砕した原料をタンク内でヘキサンまたはエタノール等の有機溶媒と混合したのち、機械的に有機溶媒を除去する方法も存在する。この方法は高コストであるが、コスト度返しで操作を繰り返せば、脂質分を最終製品あたり5%以下まで脱脂することができる。
【0008】
さらに、従来、有機溶媒で脱脂する方法がある。
【0009】
【特許文献1】特開2005−052692号公報
【特許文献2】特開平5−137555号公報
【特許文献3】特開2006−006185号公報
【特許文献4】特開平9−107920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、二酸化炭素を亜臨界状態として、そこに廃棄物等を入れて脱脂する方法が知られている。しかしながら、これは、亜臨界状態の二酸化炭素を利用し、5MPa〜100MPaの圧力を要するため、その設備が簡単ではなく、コストも高くなるという問題がある。
【0011】
上記従来の油温減圧脱水乾燥方式、ボイル乾燥方式、高温発酵乾燥方式を利用し、最終的に機械的圧力で脱脂する方法では、最終物あたりせいぜい10%くらいまでしか、脱脂できない。かつ、油の回収率は80−90%程度である。
【0012】
また、有機溶媒で脱脂する方法は、手段を選べば残存脂質が数%になるまで脱脂できるが、飼料価値としては最終原料の有機溶媒自体が残存するなどの問題がある。
【0013】
また、食品残渣という原料の特性上、消費期限切れや午肉由来成分も混入することから、加工後の衛生レベルや異常プリオンの残存等の危険性も問題になる。
【0014】
そこで、本発明者らは食品残残渣等(原料)を亜臨界水処理することにより効率的に油を除去し、かつ衛生的で安全性の高い飼料原料を製造する方法を検討した。水は 亜臨界状態になると誘電率が下がり、有機溶媒のような状態になるので、原料 水溶液中の油分を効率的に除去することができるという知見を得た。
【0015】
本発明は、上記知見に基づき、原料である食品残渣を、亜臨界状態の水を利用し、原料の水溶液中の油分を効率的に除去し、しかも高温高圧下におき、加水分解を起こさせることで、細菌学的に滅菌し、かつ細菌性毒素等の無毒化を可能とする食品から油を分離する方法を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、油を分離すべき原料から亜臨界水を利用して油を分離する方法であって、原料に加水、均質化して原料と水が混合した被処理溶液とし、被処理溶液を高温及び高圧の容器内に保持して前記被処理溶液の水を亜臨界水とし、水の誘電率を低下させて、原料内に含まれている油を水と混合して抽出するとともに、原料内に含まれている有機物を低分子に分解することを特徴とする油の分離方法を提供する。
【0017】
本発明は上記課題を解決するために、油を分離すべき原料から亜臨界水を利用して油を分離する方法であって、原料に加水、均質化して原料と水が混合した被処理溶液とし、被処理溶液を高温及び高圧の容器内に保持して前記被処理溶液の水を亜臨界水とし、水の誘電率を低下させて、原料内に含まれている油を水と混合して抽出するとともに、原料内に含まれている蛋白質を低分子に分解し、前記油及び水と、低分子に分解した蛋白質とを含む被処理溶液を前記高圧の容器内から取り出して常圧下におき、前記油と水を分離し、前記油の除去された水及び蛋白質を含むを被処理溶液を乾燥し粉粒にすることを特徴とする油の分離方法を提供する。
【0018】
前記高圧容器内の温度は140〜250℃であり、圧力は0.1〜10MPa、酸性度はpH4〜11、好ましくはpH5〜10、反応温度は1〜30分であることが好ましい。
【0019】
前記原料は、食品、食品残渣又は食品製造副産物であってもよい。そして、本発明の油の分離方法により、畜産もしくは水産用飼料原料、畜産もしくは水産用飼料用、又は工業用油脂等が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、次のような顕著な効果を生じる。
(1)水を亜臨界状態として誘電率を下げて有機溶媒のような状態とし、これを利用して、原料である食品残渣中の油分と混合して抽出することにより、油分を効率的に除去することができ、例えば、栄養上バランスのとれた飼料などに利用することができる。
【0021】
(2)高温高圧下において水を亜臨界状態として、食品残渣を加水分解することで、高分子物質である蛋白質をペプチド、アミノ酸などの低分子物質に分解し、例えば、消化の良い飼料等として利用することがでる。また、このように食品残渣が加水分解されていることにより油分の抽出効率がより向上する。
【0022】
(3)また、食品残渣を加水分解することで、細菌学的に滅菌し、かつ細菌性毒素等の無毒化することができる。具体的には、原料中に残存する細菌、ウィルス異常プリオンなど不活性化し、また抗生物質を分解して不活性化する。その為、別途殺菌の工程を設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る食品から油を分離する方法を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
【0024】
水の温度を374℃、圧力を22MPa(この温度、圧力を「臨界点」という。)まで上げると、超臨界という液体でも気体でもない状態となる。臨界点よりやや低い温度の水の領域を亜臨界水という。図1は、水の温度−圧力線図であり、この図1において、斜線は、水が亜臨界水となる領域(亜臨界領域)を示す。
【0025】
亜臨界領域では、水のイオン積が250℃付近で最大値を示し、[H]と[OH]が常温の約30倍となるので、加水分解力が増大する。かつ、水の誘電率が下がり、水が有機溶媒の性質に近くなる。この結果、水と油が混合(混和)しやすくなる。従って、水の亜臨界状態に食品残渣を置くと、水と食品残渣中の油が混合し、この結果、食品から油分を抽出することが可能となる。
【0026】
また、亜臨界領域では、高い熱と高い圧力(本発明では、温度140〜300℃、圧力180〜250℃)により、蛋白質などの高分子物質が、ペプチド、アミノ酸などの低分子物質に分解する。
【0027】
従って、水の亜臨界状態に食品残渣を置くと、有機物が低分子化してペプチド、アミノ酸となる。このように低分子化された蛋白質は、消化が良い食品、飼料となる。また、水の亜臨界状態に食品残渣を置くと、食品残渣に含まれる細菌、ウィルス、異常プリオンなどを殺菌し、不活性化することができ、食品、飼料として衛生上好ましい。
【0028】
本発明に係る食品から油を分離する方法は、上記のような水の亜臨界状態の特性を利用し、水の亜臨界状態に食品残渣を置き、食品残渣の油分を抽出して分離し、蛋白質を分解し低分子化して消化を良くし、さらに細菌、ウィルス、異常プリオンなどを殺菌し、不活性化することにより、バランスのとれた栄養分を有し、消化がよく衛生的な飼料等を製造する方法である。
【0029】
亜臨界領域は、温度はほぼ140〜300℃、圧力はほぼ0.1〜20MPa位の領域である。しかし、温度については、高すぎると処理される食品等が焦げたりしてしまい、また低すぎても誘電率が低くならず、加水分解反応の程度も低くい。このようなことから、本発明に係る食品から油を分離する方法では、利用する亜臨界領域における温度は、温度180〜250℃程度が適している。
【0030】
なお、本発明者らが、本発明について高圧容器内の温度条件、圧力条件、酸性度、反応時間等を変えて本発明によって効果的に油を分離する方法を確認した結果、次のような条件が好適であるという知見を得た。
【0031】
圧力については、0.1〜10MPaが適切である。この数値的意義は次のとおりである。下限値は、水が水蒸気にならない圧力として決まっている(水の飽和水蒸気圧)。上限値は、加水分解及び脱脂効率と装置コストを考慮したコストパーフォマンスから決めた値である。即ち、圧力は有機物を変性させる方向に働き、加水分解、脱脂効率を高めると推察されるが、その効果を生じさせるには100MPaを超える圧力を必要はない。100MPaを超える圧力を発生し、またそれに耐えうる装置は、高価になり、それに見合うだけの効果は期待できないこと考慮した値である。
【0032】
そして、高圧容器内の温度は140〜250℃であり、酸性度はpH4〜11、好ましくはpH5〜10、反応時間は1〜30分であることが好ましことを確認した。
【実施例】
【0033】
本発明に係る食品から油を分離する方法の実施例、及びこの実施例に基づく実験例1〜3を以下、説明する。図2は、本発明の実施例として、食品残渣から油を分離する方法を適用し、飼料を製造するための飼料製造装置1である。この飼料製造装置1は、上流から下流に向けて、粉砕タンクユニット2、原料タンクユニット3、水熱反応装置(亜臨界水装置)4、及び乾燥装置5を備えている。
【0034】
水熱反応装置4は、上流から下流に向けて、プレヒータ18、縦型反応器6、冷却水タンク7、背圧弁8、及び処理水タンク9が送液ダクト10で直列的に接続されている。縦型反応器6は水が亜臨界状態に保持されるタンクであり、その内部の温度は、図示しないヒータで例えば200℃に保たれ、圧力は、上流の原料タンクユニット3に設けられた押し込みポンプ11の送流圧及び下流に配置された背圧弁8を操作することにより、例えば3MPaに保たれている。
【0035】
上記飼料製造装置1を利用して、原料の食品残渣として、弁当残渣より特に油を含む肉及び魚を選択して、これから油を分離し、家畜(豚など)の飼料を製造する方法を説明する。食品残渣を粉砕タンクユニット2の粉砕タンク13内に投入して攪拌機14で粉砕し、その後、固形分が10〜40%になるように加水し、懸濁液状態の食品残渣溶液を調製する。
【0036】
食品残渣溶液は、粉砕タンクユニット13から送液ポンプ15によって、原料タンクユニット3の原料タンク16に供給される。原料タンク16内で、食品残渣溶液はさらに攪拌機17で撹拌され、押込みポンプ11によって水熱反応装置4のプレヒータ18に圧送される。原料タンクユニット3までは、食品残渣溶液は大気圧(常圧)下にあるが、押込みポンプによって圧送されることにより、3MPaへと加圧されていく。
【0037】
水熱反応装置4では、食品残渣溶液はプレヒータ18内で150℃程度に予熱されてから、縦型反応器6内に供給される。ここで、200℃程度に加熱され、3MPaに保持され、約10分間、滞留させる。
【0038】
これにより、水は亜臨界状態とされ誘電率が下がり、有機溶媒のような状態となり、食品残渣中の油と混合状態となり、油を抽出する。また、食品残渣溶液は、高温(200℃)に加熱され、高圧(3MPa)という状態に置かれるために、加水分解反応が生じ、食品残渣中の蛋白質はペプチド、アミノ酸等の低分子に分解され、さらに細菌学的に滅菌され、細菌性毒素等も無毒化される。
【0039】
水熱反応装置4内でこのように処理された食品残渣溶液は、縦型反応器6から冷却水タンク7内を送液ダクト10を通して通過させて、90〜100℃程度に冷却し、背圧弁8を通過させて、減圧し大気圧(常圧)に戻す。
【0040】
大気圧下となって水が亜臨界状態から通常の状態に戻ることにより、縦型反応器6内で混合していた油と水は分離した状態となり、食品残渣溶液は、処理水タンク9に供給される。ここで、食品残渣溶液は、90℃に保温されて、油層と水層とが分離される。即ち、処理水タンク9内で、食品残渣溶液中に抽出された油は上方に浮き、油が分離された食品残渣溶液は下方に分離される。
【0041】
油層は、原料である食品残渣から脱脂された脂質であり、水層は、水と、主にペプチドとアミノ酸の混合物である。油層は油分離用配管19を介して分離され、その油は例えば工業的に利用してもよい。また、油が分離された食品残渣溶液は、送液ポンプ20によって、乾燥装置5の乾燥機21内に供給される。
【0042】
油が分離された食品残渣溶液は、乾燥機21内で乾燥され粉末状態に乾燥される。このようにして、弁当残渣より特に油を含む肉及び魚が選択された食品残渣は、油が除かれ、蛋白質はペプチド、アミノ酸等の低分子に分解され、さらに細菌学的に滅菌され、細菌性毒素等も無毒化され、飼料として利用可能である。
【0043】
(実験例1)
実験例1として、豚肉を多く含む弁当残渣原料を、本発明の上記実施例の方法と、従来技術のスクリュープレスを利用して機械的圧力で脱脂する方法(比較例という)により、それぞれ脱脂の比較実験を行った。原料の組成比は、固形分あたり、蛋白質27.6%、脂質(油分)38.7%、炭水化物29.5%、灰分4.2%であった。縦型反応器6内の条件は、温度は200℃で、圧力は3MPaであった。
【0044】
実験結果を、表1及び表2に示す。表1は反応液油層の組成を示し、表2は反応液水層(油分を除去した残りの食品残渣)の固形分の組成を示す。
【0045】
(表1)
[反応液油層] 実施例 比較例
水分 0% 0%
蛋白質 0% 0%
脂質 100% 100%
油回収率 95% 75%
【0046】
(表2)
[反応液水層(固形成分あたり)] 実施例 比較例
蛋白質 45% 45%
脂質 0.5% 10%
炭水化物 47.6% 38.1%
灰分 6.85% 6.85%
【0047】
この実験結果からすると、油回収率は、従来技術では75%であったが、本発明によると95%であり、本発明はきわめて良好である。
【0048】
(実験例2)
実験例2として、食肉加工場で廃棄されている豚皮からの脱脂を本発明の上記実施例の方法と、従来技術のスクリュープレスを利用して機械的圧力で脱脂する方法(比較例という)により、それぞれ脱脂の比較実験を行った。原料の組成比は、固形分あたり、蛋白質42.9%、脂質(油分)55.1%、炭水化物1.5%、灰分0.4%であった。亜臨界反応器はバッチ式処理機を用いた。
【0049】
原料に2.5倍量の水を加え、カッターで粉砕・均質化を行った後、190℃、15分、1.5MPaで亜臨界水処理を行った。反応液温度が100℃以下になった時点で、反応器より取出し、反応液を静置し、油分の分離を行った。水層をタンク下部より抜いた後、乾燥機で乾燥させ、水層反応物を得た。実験結果を、次の表3及び表4に示す。この実験例2の表3及び表4からみても、本発明の実施例の油回収率は優れていることが確認できた。
【0050】
(表3)
[反応液油層] 実施例 比較例
水分 0% 0%
蛋白質 0% 0%
脂質 100% 100%
油回収率 96% 76%
【0051】
(表4)
[反応液水層(固形成分あたり)] 実施例 比較例
蛋白質 94.8% 84.1%
脂質 0.8% 12.0%
炭水化物 3.4% 3.0%
灰分 1 .0% 0.9%
【0052】
(実験例3)
実験例3として、バイオエタノール残渣(米由来)の脱脂を行った。バイオエタノール製造時は主に穀物を原料とする。米の場合は、必ずしも精米を原料とするわけでないので、発酵残渣の固形分を飼料原料とする場合、胚芽や表層部由来の残存する脂質が最終製品の20%におよび、栄養上好ましくない。亜臨界水処理には横型反応装置を用いた。
【0053】
原料に対して水分が85%となるように加水後、カッターで粉砕・均質化した。反応は180℃、15分、1MPaで行った。反応液は連続遠心機により油層と水層にわけた。原料の組成比は、固形分あたり、蛋白質13.5%、脂質(油分)24.5%、炭水化物43.5%、灰分18.5%であった。この実験結果を、次の表5及び表6に示す。
【0054】
次の表5は反応液油層の組成を示し、表6は反応液水層(油分を除去した残りの残渣)の固形分の組成を示す。この実験例3での表5及び表6からみても、本発明の実施例の油回収率は優れていることが確認できた。
【0055】
(表5)
[反応液油層] 実施例 比較例
水分 0% 0%
蛋白質 0% 0%
脂質 100% 100%
油回収率 95% 75%
【0056】
(表6)
[反応液水層(固形成分あたり)] 実施例 比較例
蛋白質 17.9% 16.7%
脂質 0.2% 6.1%
炭水化物 57.4% 54.3%
灰分 24.5% 22.9%
【0057】
以上、本発明に係る食品から油を分離する方法の最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明は特にこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る食品から油を分離する方法によれば、食品、コンビニエントストアや家庭において生じた食品残渣(各種の余剰食品、調理残渣、食べ残し残渣、売れ残り食品残渣等)、食品製造副産物(米ぬか、酒粕、醤油かす、畜産の内臓、皮、食肉、魚くず等、食品製造で得られる副産物や加工屑)、その他、食品以外でも脱脂を要する物品についての油の分離に適用可能である。そして、油を分離した食品残渣は乾燥し粉粒として、飼料等として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】水の亜臨界状態を説明する温度圧力線図である。
【図2】本発明の食品残渣から油を分離し飼料を製造する方法を実施するための装置の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 飼料製造装置
2 粉砕タンクユニット
3 原料タンクユニット
4 水熱反応装置(亜臨界水装置)
5 乾燥装置
6 縦型反応器
7 冷却水タンク
8 背圧弁
9 処理水タンク
10 送液ダクト
11 押し込みポンプ
13 粉砕タンク
14、17 攪拌機
15、20 送液ポンプ
16 原料タンク
18 プレヒータ
19 油分離用配管
21 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を分離すべき原料から亜臨界水を利用して油を分離する方法であって、
原料に加水して原料と水が混合した被処理溶液とし、
被処理溶液を高温及び高圧の容器内に保持して前記被処理溶液の水を亜臨界水とし、水の誘電率を低下させて、原料内に含まれている油を水と混合して抽出するとともに、原料内に含まれている有機物を低分子に分解することを特徴とする油の分離方法。
【請求項2】
油を分離すべき原料から亜臨界水を利用して油を分離する方法であって、
原料に加水して原料と水が混合した被処理溶液とし、
被処理溶液を高温及び高圧の容器内に保持して前記被処理溶液の水を亜臨界水とし、水の誘電率を低下させて、原料内に含まれている油を水と混合して抽出するとともに、原料内に含まれている蛋白質を低分子に分解し、
前記油及び水と、低分子に分解した蛋白質とを含む被処理溶液を前記高圧の容器内から取り出して常圧下におき、前記油と水を分離し、
前記油の除去された水及び蛋白質を含むを被処理溶液を乾燥し粉粒にすることを特徴とする油の分離方法。
【請求項3】
前記高圧容器内の温度は140〜250℃であり、圧力は0.1〜10MPa、酸性度はpH4〜11、好ましくはpH5〜10、反応時間は1〜30分であることを特徴とする請求項1又は2記載の油の分離方法。
【請求項4】
前記原料は、食品、食品残渣又は食品製造副産物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の油の分離方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の油の分離方法により得られた畜産又は水産用飼料原料。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の油の分離方法により得られた畜産もしくは水産用飼料用又は工業用油脂。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−291665(P2009−291665A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144620(P2008−144620)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】