説明

油中水型乳化化粧料

【課題】なめらかさ、低粘度領域での安定性に優れている粉末配合の油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(G)を含有し、粘度が3000〜15000mPa・sであることを特徴とする油中水型乳化化粧料。(A)全油分中揮発性シリコーン油を20%以上含有する油分:15〜55質量%(B)ポリエーテル変性シリコ−ン:0.5〜5質量%(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリン:0.1〜10質量%(a)


(D)有機変性粘土鉱物:0.1〜5質量%(E)粉末:1〜40質量%(F)有機酸塩及び/又は無機塩:0.05〜5質量%(G)水:20〜60質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度でありながら、粉末の沈降による分離が起こらず、中味が均一に保たれるW/O型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化組成物の乳化剤としては、従来、HLB1〜12程度の親油性界面活性剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン系界面活性剤が使用されて来た(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これらの乳化剤を用いた油中水型乳化組成物は、乳化安定性に乏しく、高温条件下あるいは経時により水相と油相の分離が生じてしまい、製剤としての安定化が極めて困難であった。
また、外相である油相中にワックスを配合することによって剤型を安定化するという方法も行われている。しかし、高温条件下でワックスが融解あるいは軟化してしまうために、製剤の安定性が十分でないという問題点があった。さらに、のびが重くなる、塗布時にべたつくといった新たな使用性上の問題も生じていた。
【0004】
一方、サンスクリーンやファンデーションなどの粉末を配合した化粧料の多くは、耐水性、耐汗性が求められるため、多くの場合、疎水化処理した粉末をW/O型の製剤に配合している。
【0005】
しかしながら、W/O型製剤に多量の粉末を配合すると、粉末の凝集により製剤の粘度が上がり使用時に塗り伸ばしにくく、さらには塗布後の肌が白くなるという問題点があった。
【0006】
粉末を一次分散させる技術は、ローラーミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等の微細化装置により進んできているが、一旦微分散した粉末をいかにして長期間、凝集せず分散させておくかが課題となっている。多くの化粧料には油分としてシリコーン油が配合されるため、変性シリコーンを用いた粉末分散剤に関する特許が出願されている。例えば、特許文献1には、(A)オルガノポリシロキサン単量体、(B)ポリラクトン含有基、水酸基若しくはアニオン性基を有する単量体とを共重合した分散剤を用いた油中粉末分散物が使用されている。特許文献2には、紫外線遮断性微粒子を変性シリコーンや反応性シリコーンからなるシリコーン系分散剤により分散させている。
【0007】
また、特許文献3には、アルキレンオキサイドを付加した脂肪酸からなる無機粉末用油中分散剤が開示され、その実施例には、POE(4.5)ラウリルエーテル酢酸、POE(4)ステアリルエーテル酢酸、POE(10)ラウリルエーテル酢酸、POE(12)ステアリルエーテル酢酸、POE(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムの分散性、安定性が確認されている。
【0008】
一方、特許文献4には、使用特性(のび)及び保存安定性に優れた粉末含有油中水型乳化化粧料が開示されている。しかしながら、粉末の分散性が不十分であり、凝集による製造時での色ムラが見られ、製剤の粘度が低い場合は保存時における粉末の沈降による分離が起きやすい。
【0009】
また、特許文献5には、油相の固形又は半固形油分を減量し、べたつき感や油っぽさのない安定性の良好な乳化物として有機変性粘土鉱物を乳化剤として用いる油中水型乳化組成物が開示されている。しかしながら、この油中水型乳化組成物からなる乳化化粧料も、その粘度が低い場合(20,000mPa・s以下程度)では分離が起きやすい。また、肌への塗布時に伸びが悪く、みずみずしさ、さっぱりさが足りないという使用性における課題も存在する。
【0010】
【特許文献1】特開平11−263706号公報
【特許文献2】再公表特許 WO97/45097
【特許文献3】特開2000−262883号公報
【特許文献4】特開平3−95107号公報
【特許文献5】特開昭61−129033号公報
【非特許文献1】「第四版 油化学便覧−脂質・界面活性剤」、平成13年、日本油化学会編、丸善株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
油中水型乳化化粧料において内水相に有機または無機塩を配合することで乳化安定性が向上することが一般的に知られている。しかしながら、安定化の効果が充分に得られるのはあくまでも高粘度領域であって低粘度領域では安定化は十分でない。そして、油中水型乳化化粧料の伸びの良さやなめらかさを向上させるためには、その粘度を低くすることが最も有効な手段ではある。しかし、乳化物は元々不均一な粒子の分散体であるため、粘度を下げた場合、密度差によりこれらの粒子が浮上あるいは沈降しやすくなり、安定性を確保するのが非常に困難である。特に粉末を配合した場合、低粘度領域では粉末の沈降が生じるため、分離安定性の確保は極めて難しく、製品によっては鉄玉を容器に入れて使用時に十分振ってから使用する場合もあった。すなわち、伸びの良さやなめらかさを追求するために、シリコーン油や流動パラフィン等の軽い感触の油分を油中水型乳化化粧料に使用する場合が多いが、その分離安定性は不十分であった。
【0012】
本発明者等は上述の観点に鑑みて鋭意研究した結果、(A)全油分中揮発性シリコーン油を20%以上含有する油分と、(B)ポリエーテル変性シリコ−ンと、(C)特定の両末端シリコーン変性グリセリンと、(D)有機変性粘土鉱物と、(E)粉末と、(F)有機酸塩及び/又は無機塩と、(G)水とを含有する油中水型乳化化粧料が、伸びの良さやなめらかさに優れ、かつ、粉末が配合されていても、低粘度領域での安定性に極めて優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の目的は、なめらかさに優れ、かつ、低粘度領域での分離安定性に極めて優れている油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、下記(A)〜(G)を含有し、粘度が3000〜15000mPa・s以下であることを特徴とする油中水型乳化化粧料を提供するものである。
(A)全油分中揮発性シリコーン油を20%以上含有する油分:15〜55質量%
(B)ポリエーテル変性シリコ−ン:0.5〜5質量%
(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリン:0.1〜10質量%





(a)
【化1】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
(D)有機変性粘土鉱物:0.1〜5質量%
(E)粉末:1〜40質量%
(F)有機酸塩及び/又は無機塩:0.05〜5質量%
(G)水:20〜60質量%
【発明の効果】
【0015】
本発明の油中水型乳化化粧料は、伸びが良く、なめらかさに優れ、かつ、粉末が配合されても低粘度領域での分離安定性に極めて優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(A)全油分中揮発性シリコーン油を20%以上含有する油分
本発明の油中水型乳化化粧料を構成する油分は特に限定されないが、全油分中に揮発性シリコーン油を20%以上含有することが要件である。
揮発性シリコーン油は、環状シリコ−ン4〜6量体又は低分子量直鎖状シリコ−ンのうち1種または2種以上を使用できる。好ましくは、デカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンである。
【0017】
油分は、揮発性シリコーン油以外の油分として、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、流動パラフィン、固形パラフィン、ワセリン、セレシン、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、落花生油、グレープシード油、アーモンド油、茶実油、コメヌカ油、ホホバ油、メドウフォーム油、胚芽油等の油分を配合できる。
【0018】
油分は、油中水型乳化化粧料全量に対して15〜55質量%配合される。なお、この配合量には、(B)ポリエーテル変性シリコ−ンと、(C)一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリンは含めない。
【0019】
(B)ポリエーテル変性シリコ−ン
本発明に用いるポリエーテル変性シリコ−ンは特に限定されず、分岐のシリコーン鎖やアルキル鎖を有するものも含まれる。好ましくは、下記化学式「化2」又は「化3」で表されるポリエーテル変性シリコーンである。なお、好ましいポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、信越化学工業株式会社のシリコーンKF6017、シリコーンKF−6028、シリコーンKF−6038およびDegussa社のABIL EM90が挙げられる。
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、mは平均で1〜150、nは平均で1〜50、aおよびbは平均で0〜35の数を示す。)
【化3】

(式中、xが5〜50であり、yが1〜30であり、zが20〜200であり、pが2〜20であり、qが1〜5であり、rが2〜20であり、nが2〜20であり、mが0〜5である)
【0020】
ポリエーテル変性シリコ−ンの配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して0.5〜5質量%である。
【0021】
(C)一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリン
本発明に用いる両末端シリコーン変性グリセリンの基本構造はBAB型トリブロック共重合体であり、Bは、例えば下記構造(c)で示される片末端水素残基シリコーンなどを用いることができる。一般式(a)において、それぞれのR1は同一であっても異なっていてもよい。また、それぞれのR2も同一であっても異なっていてもよい。
Aはグリセリン残基である。
下記構造(c)の片末端水素シリコーンは公知の化合物である。そして、任意の重合度のBAB型トリブロック共重合体を公知の方法により製造出来る。
(c)
【化4】

式中、R1はそれぞれ、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基、mは10〜120の数である。R1はそれぞれが同一であっても、異なっていても良い。
【0022】
AとBとの間の結合は本発明にとって本質的な構造ではないが、本発明に例示される両末端シリコーン変性グリセリンは、化合物(c)と下記構造式(d)で示す化合物を、白金触媒を用い、エーテル結合により結合させたものである。
(d)
【化5】

式中、nは1〜11の数である。
【0023】
BAB型トリブロック共重合体は公知の方法により合成することが出来る。合成スキームを図2に示す。
このようにして、下記構造式(a){好ましくは構造式(b)}で表される両末端シリコーン変性グリセリンが得られる。
(a)
【化6】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキル基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
(b)
【化7】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基、mは10〜120、nは1〜11である。
【0024】
シリコーン鎖の重合度のmは10〜120が好ましい。側鎖置換基はメチル基が好ましいが、フェニルや他のアルキルに置換されていても構わない。
グリセリン鎖の重合度のnは1〜11が好ましい。
両末端シリコーン変性グリセリンの機能発現には、図1に示すようにBブロックの溶媒中への溶解性とAブロック鎖の粉末表面への高い吸着性が重要である。すなわち、AB両ブロックの親水/親油性のバランス(HLB)が適切な範囲にあることが機能発現に必須となる。HLBは公知の方法により求めることができるが、例えばGriffinの式(HLB値=グリセリン部分子量×20/総分子量)により算出される。本発明においては、HLBが0.2〜3.0であることが好ましい。
【0025】
また、粉末同士の凝集を防止するAブロック鎖の広がりは、高分子の分子量に依存し、Aブロック鎖は高分子量であるほど凝集防止効果は高い。一方、粉末への吸着はBブロック鎖のファンデルワールス力、水素結合等の弱い力によると考えられる。しかし、Bブロック鎖としてポリグリセリンを用いることにより、ポリエチレングリコール等に比較し強い吸着力が得られるため、比較的低い分子量で十分な吸着力が得られる。また、AB両ブロックの分子量が高くなりすぎると、化粧料の塗り伸ばしが難くなる場合があり、また伸びの重さを感じる場合がある。以上のことから、分子量についても適切な範囲があり、分子量は2000〜20000が好ましい。
【0026】
両末端シリコーン変性グリセリンの配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して0.1〜10質量%である。好ましくは0.5〜6.0質量%であり、さらに好ましくは1.0〜4.0質量%である。
【0027】
(D)有機変性粘土鉱物
本発明に用いる有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、一般に下記一般式で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られるものである。
[化8]
(X,Y)2-3(Si,Al)410(OH)21/3・nH2
ただし、X=Al,Fe(III),Mn(III),Cr(III)
Y=Mg,Fe(II),Ni,Zn,Li
Z=K,Na,Ca
【0028】
具体的には、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、およびヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0029】
なお、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で粘土鉱物を処理する際には非イオン性界面活性剤を併用して処理することも好ましい。例えば、ポリオキシエチレン2〜30モル付加{以下POE(2〜30)と略す。}オレイルエーテル、POE(2〜35)ステアリルエーテル、POE(2〜20)ラウリルエーテル、POE(1〜20)アルキルフェニルエーテル、POE(6〜18)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜30)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル、等のエーテル型活性剤、およびPOE(4〜60)硬化ヒマシ油、POE(3〜14)脂肪酸モノエステル、POE(6〜30)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型活性剤、更にPOE(2〜30)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(7〜50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(12〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤およびデカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、グリセリルモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤があげられる。これらの中で、デカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート等のジグリセリン以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、POE(2〜12)ラウリルエーテル、POE(6〜15)ベヘニルエーテル、POE(5〜20)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(5〜17)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル等のPOE付加エーテル型活性剤、およびPOE(10〜20))硬化ヒマシ油、POE(5〜14)オレイン酸モノエステル、POE(6〜20)オレイン酸ジエステル、POE(5〜10)ソルビタンオレインエステル等のPOE付加エステル型活性剤、POE(3〜15)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜40)グリセリルトリイソステアレート等のPOE付加エーテルエステル活性剤等のエチレンオキシド付加型の非イオン性界面活性剤の一種または2種以上を用いることが好ましい。
【0030】
本発明に用いる有機変性粘土鉱物は、例えば、水、アセトンあるいは低級アルコール等の低沸点溶媒中で上述の粘土鉱物と、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤とを分散撹拌処理し低沸点溶媒を除去することによって得られる。
【0031】
本発明に用いる有機変性粘土鉱物中の第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の含有量は粘土鉱物100gに対して60〜140ミリ当量(以下 meqと略す。)であることが好ましい。
【0032】
本発明に好ましく使用される有機変性粘土鉱物の代表的なものとしては、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理モンモリロナイト:ナショナルレッド社)等がある。
【0033】
有機変性粘土鉱物の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して0.1〜5質量%である。好ましくは0.5〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0034】
(E)粉末
本発明に用いる粉末は特に限定されない。無機粉末(特に酸化チタン、酸化亜鉛若しくは酸化鉄)が好ましい。粉末の平均粒子径は0.5〜150nmが好ましい。酸化チタン若しくは酸化亜鉛の粉末を紫外線散乱剤として配合する場合は、平均粒子径1〜50nmの微粒子が好ましい。本発明においては、粉末を表面処理することにより、粉末の分散安定性を向上させることも可能である。
【0035】
粉末の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して1.0〜40質量%である。
【0036】
(F)有機酸塩及び/又は無機塩
本発明に用いる有機酸塩及び/又は無機塩は、水に対する溶解度が、20℃で、0.2g/100g(水)以上のものである。アミノ酸塩が好ましい。例えば、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カルシウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸マグネシウム、グルタミン酸カルシウム、グルタミン酸塩酸塩、システイン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、リジン塩酸塩、オルニチン塩酸塩、オルニチン酢酸塩、トリプトファン塩酸塩、アルギニン−グルタミン酸塩、オルニチン−グルタミン酸塩、リジン−グルタミン酸塩、リジン−アスパラギン酸塩、オルニチン−アスパラギン酸塩等である。これらの中でもグルタミン酸ナトリウムが特に好ましい。
また、EDTA−ナトリウム塩も特に好ましい。
【0037】
本発明にいる無機塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩またはアンモニウム塩等があげられる。好ましい無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化アンモニウム等の塩化物、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム等の硫化物、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム等の硝酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸化物、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸化物が挙げられる。中でも、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、デビドロ酢酸ナトリウムが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いる有機酸塩及び/又は無機塩の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、合計量で0.05〜5.0質量%である。好ましくは0.5〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0039】
(G)水
本発明に用いる水は通常はイオン交換水を用いる。水の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して20〜60質量%である。
【0040】
本発明の油中水型乳化化粧料は上記した必須成分に加えて、必要により適宜、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、防腐防ばい剤等、通常化粧料に用いられる成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合し、粘度が3000〜15000mPa・sとなるように、配合成分の配合量を適宜調整しながら、常法により製造することができる。なお、粘度はBL型回転式粘度計にて、測定条件がサンプル温度30℃、ローター#3、回転数12rpmで測定した値である。
【0041】
本発明の油中水型乳化化粧料の使用用途は特に限定されるものではない。例えば、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、クレンジングフォーム、シャンプー、ヘアリンス、リップクリーム、日焼け止めクリーム、日焼け用クリームなど、種々の製品に応用することが可能である。
【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されない。配合量は特に断りのない限り全量に対する質量%である。
【0043】
「合成例1 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(e)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒4600)100g、トリグリセリンジアリルエーテル3.5g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(e)
【化9】

【0044】
「合成例2 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(e)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒4600)100g、テトラグリセリンジアリルエーテル4.3g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(e)
【化10】

【0045】
「合成例3 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(f)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒7600)100g、テトラグリセリンジアリルエーテル2.6g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(f)
【化11】

【0046】
「合成例4 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(g)の片末端水素化メチルフェニルポリシロキサン(Mw≒5600)100g、トリグリセリンジアリルエーテル2.9gおよびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。

(g)
【化12】

式中、Phはフェニル基を表す。
【0047】
「合成例5 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(h)の片末端水素化メチルドデシルポリシロキサン(Mw≒5900)100g、トリグリセリンジアリルエーテル2.7gおよびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(h)
【化13】

【0048】
上記合成例1〜5の合成スキームを図2に示す。図3に合成例1のIRスペクトルを示す。スペクトル中800、1000、1260、2960cm-1付近のピークよりポリジメチルシロキサンに、また1400cm-1付近にポリグリセリン中の二級アルコールに由来するピークがそれぞれ認められることから、合成はスキーム通り進行し、目的化合物が得られていることが分かる。
【0049】
「表1」〜「表4」の油中水型乳化ファンデーションを製造して、下記(1)〜(3)を評価した。一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリンは上記合成例1のものを使用した。
(1)粘度の測定
BL型回転式粘度計(芝浦システム株式会社製、単一円筒型回転粘度計、ビスメトロンVS-A1)を使用した。測定条件は、サンプル温度30℃、ローター#3、回転数12rpmである。
(2)経時安定性(1ヶ月後)
実施例及び比較例の油中水型乳化ファンデーションを50℃で1ヶ月間保存した後、目視で乳化物の形態の観察を行った。
<評価基準>
○:乳化状態に変化なく良好であった。
△:わずかに分離、凝集が見られた。
×:分離、凝集があり、乳化不良である。
(3)凝集試験
実施例及び比較例の油中水型乳化ファンデーションをガラスビーカー中にて1時間攪拌した後、状態を肉眼にて観察し、次の基準にて評価した。
<評価基準>
○:乳化状態に変化なく良好であった。
△:わずかに色ムラが見られた。
×:色ムラ・変色がある。又は、凝集物がある。
(4)使用性(なめらかさ)
専門パネル(10名)による実使用試験により、なめらかさを評価した。
<評価基準>
◎:非常に良い(9人以上が良いと判断した)。
○:良い(7〜8人が良いと判断した)。
△:やや良い(5〜6人が良いと判断した)。
×:効果なし(4人以下が良いと判断した)。
【0050】
【表1】

ポリエーテル変性シリコーンは信越化学工業株式会社製、シリコーンKF6017を使用。有機変性粘土鉱物はナショナルレッド社製、ベントン38を使用。









【0051】
【表2】

ポリエーテル変性シリコーンは信越化学工業株式会社製、シリコーンKF6017を使用。有機変性粘土鉱物はナショナルレッド社製、ベントン38を使用。




















【0052】
【表3】

ポリエーテル変性シリコーンは信越化学工業株式会社製、シリコーンKF6028を使用。有機変性粘土鉱物はナショナルレッド社製、ベントン38を使用。





















【0053】
【表4】

ポリエーテル変性シリコーンはDegussa製、ABIL EM90を使用。有機変性粘土鉱物はナショナルレッド社製、ベントン38を使用。
【0054】
以上の結果より、本発明の油中水型乳化化粧料は、なめらかさに優れ、かつ、低粘度領域での安定性に極めて優れていることが分かる。以下に、本発明の油中水型乳化化粧料を示す。
【0055】
[実施例19:液状ファンデーション]
配合成分 質量%
(成分1)
デカメチルシクロペンタシロキサン 15%
オクタメチルシクロテトラシロキサン 10%
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 10%
エチルヘキサン酸セチル 2%
水添ポリイソブテン 1%
ジメチコンコポリオール 3%
イソステアリン酸ソルビタン 1%
両末端シリコーン変性グリセリン(合成例2) 5%
香料 0.1%
(成分2)
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 2%
(成分3)
表面処理(シリコーン処理)酸化チタン 7%
表面処理(シリコーン処理)酸化鉄 2%
タルク 4%
セリサイト 3%
オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 3%
(成分4)
精製水 25%
ブチレングリコール 5%
グリセリン 4%
L−グルタミン酸ナトリウム 1%
防腐剤 4%
製造方法:成分1を混合しておき、そこに成分2を添加して分散、あらかじめ粉砕しておいた成分3を添加・分散した後、溶解混合しておいた成分4を徐添しながら乳化し、液状ファンデーションを得た。
【0056】
[実施例20:サンスクリーン]
配合成分 質量%
(成分1)
デカメチルシクロペンタシロキサン 10%
オクタメチルトリシロキサン 10%
トリメチルシロキシケイ酸 3%
オクチルメトキシシンナメート 10%
ジメチコンコポリオール 2.5%
イソステアリン酸ジグリセリル 1%
両末端シリコーン変性グリセリン(合成例2) 2%
香料 0.1%
(成分2)
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1%
(成分3)
表面処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン+ドデシル処理)酸化チタン(微粒子)
12%
メチルシロキサン網状重合体粉末 4%
ポリメタクリル酸メチル 4%
(成分4)
精製水 25%
グリセリン 5%
オクトクリレン 5%
エタノール 5%
塩化カリウム 1.5%
硫酸マグネシウム 1.1%
フェノキシエタノール 0.5%
メチルパラベン 0.2%
エチルパラベン 0.1%
製造方法:成分1を混合しておき、そこに成分2を添加して分散、あらかじめ混合・粉砕しておいた成分3を添加・分散した後、溶解混合しておいた成分4を徐添しながら乳化し、サンスクリーンを得た。
【0057】
[実施例21:乳液]
配合成分 質量%
(成分1)
デカメチルシクロペンタシロキサン 20%
オクタメチルヘキサシロキサン 10%
イソパラフィン 8%
スクワラン 5%
流動パラフィン 3.5%
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 2%
アルキル変性ジメチコンコポリオール 1%
イソステアリン酸ソルビタン 1%
両末端シリコーン変性グリセリン(合成例4) 2%
トコフェロール 0.05%
(成分2)
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5%
(成分3)
表面処理(石鹸処理)酸化チタン 5%
(成分4)
精製水 20%
グリセリン 10%
エタノール 10%
塩化ナトリウム 1%
エデト酸塩 0.5%
クエン酸ナトリウム 25%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2%
製造方法:成分1を混合しておき、そこに成分2を添加して分散、成分3を添加・分散した後、溶解混合しておいた成分4を徐添しながら乳化し、乳液を得た。
【0058】
[実施例22:液状ファンデーション]
配合成分 質量%
(成分1)
デカメチルシクロペンタシロキサン 15%
オクタメチルシクロテトラシロキサン 10%
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 10%
エチルヘキサン酸セチル 2%
水添ポリイソブテン 1%
ジメチコンコポリオール 3%
イソステアリン酸ソルビタン 1%
両末端シリコーン変性グリセリン(合成例5) 5%
香料 0.1%
(成分2)
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 2%
(成分3)
表面処理(シリコーン処理)酸化チタン 7%
表面処理(シリコーン処理)酸化鉄 2%
タルク 4%
セリサイト 3%
オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 3%
(成分4)
精製水 25%
ブチレングリコール 5%
グリセリン 4%
L−グルタミン酸ナトリウム 1%
防腐剤 4%
製造方法:成分1を混合しておき、そこに成分2を添加して分散、あらかじめ粉砕しておいた成分3を添加・分散した後、溶解混合しておいた成分4を徐添しながら乳化し、液状ファンデーションを得た。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、なめらかさに優れ、かつ、低粘度領域での安定性に極めて優れている粉末配合の油中水型乳化化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に用いる両末端シリコーン変性グリセリンの粉末分散安定性を示す模式図である。
【図2】エーテル結合により得られる両末端シリコーン変性グリセリンの合成スキームを説明した図である。
【図3】合成例1の両末端シリコーン変性グリセリンのIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(G)を含有し、粘度が3000〜15000mPa・sであることを特徴とする油中水型乳化化粧料。
(A)全油分中揮発性シリコーン油を20%以上含有する油分:15〜55質量%
(B)ポリエーテル変性シリコ−ン:0.5〜5質量%
(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリン:0.1〜10質量%
(a)
【化1】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
(D)有機変性粘土鉱物:0.1〜5質量%
(E)粉末:1〜40質量%
(F)有機酸塩及び/又は無機塩:0.05〜5質量%
(G)水:20〜60質量%

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−161650(P2007−161650A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360534(P2005−360534)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】