説明

油中水型乳化日焼け止め化粧料

【課題】油中水型乳化日焼け止め化粧料を、変臭を生じることがなく、乳化安定性に優れたものとする。
【解決手段】油中水型日焼け止め化粧料を、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸と、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルおよび/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールと、オクチルメトキシシンナメートとを含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化日焼け止め化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、日焼け止め化粧料には、皮膚への紫外線照射を遮断して高いSPF(Sun Protection Factor)値を得るために、紫外線吸収剤を配合したり、紫外線散乱剤(酸化亜鉛、二酸化チタン、等)を配合している。例えば、特許文献1には、オクチルトリアゾンとフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を組合せた日焼け止め化粧料が記載されている。また、出願人は優れた紫外線遮蔽効果を有し、経時での変臭防止・抑制安定性に優れるものとして、特許文献2において、オクトクリレン、疎水化処理を施した二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸およびフェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和塩からなる油中水型乳化日焼け止め化粧料を提案している。
【0003】
上記フェニルベンズイミダゾールスルホン酸は水酸化ナトリウムやトリエタノールアミンで中和塩にすることにより水溶となる数少ない有効な紫外線吸収剤であり、水含有化粧料に配合するのに適したものである。しかし、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸は汎用の紫外線吸収剤であるものの、油中水型日焼け止め化粧料において疎水化処理を施した紫外線散乱剤(酸化亜鉛、二酸化チタン等)と併用することにより経時で変色が発生するという問題が生じる。これを解決するために、出願人は特許文献3において、疎水化処理を施した酸化チタンおよび/または酸化亜鉛、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、トリエタノールアミンおよびトリメチルシロキシケイ酸の含有量を調整した油中水型乳化日焼け止め化粧料を提案している。
【0004】
紫外線は、波長が320〜400nmの長波長紫外線(UVA)、290〜320nmの中波長紫外線(UVB)及び290nm以下の短波長紫外線(UVC)に分類され、紫外線吸収剤の多くは、主にそれぞれの波長領域に対して効果を示すものがほとんどであるため、油中水型乳化日焼け止め化粧料には、UVAからUVBまで幅広い領域の紫外線を吸収することができるように、また他の紫外線吸収剤との併用による紫外線防止効果向上を期待して、複数種類の紫外線吸収剤を含有させることが試みられている。
【0005】
近年UVA吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルやビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、UVB吸収剤としてオクチルトリアゾンなどが開発されているが、これらは室温で固形であり、エステル油や液状のケイ皮酸エステル系紫外線吸収剤(オクチルメトキシシンナメートなど)に溶解して配合する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−120543号公報
【特許文献2】特開2007−217379号公報
【特許文献3】特開2007−217380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、本発明者らがトリエタノールアミンで中和塩としたフェニルベンズイミダゾールスルホン酸とエステル油で溶解したオクチルメトキシシンナメートとを組み合わせた油中水型乳化日焼け止め化粧料を調整したところ、経時により変臭が生じることがわかった。また、水酸化ナトリウムで中和塩としたフェニルベンズイミダゾールスルホン酸の場合には、変臭は生じないものの乳化安定性が悪いことがわかった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、変臭を生じることがなく、また乳化安定性に優れたフェニルベンズイミダゾールスルホン酸とオクチルメトキシシンナメートとを含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸と、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルおよび/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールと、オクチルメトキシシンナメートとを含むことを特徴とするものである。
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、エステル油分を10質量%以上含有することが好ましい。また、UVA吸収剤を0.1〜10質量%含有することがより好ましい。
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、実質的に香料を含有しないことが好ましい。ここで、実質的に香料を含有しないとは、意図的に香料を添加しないことを意味し、油中水型日焼け止め化粧料の原料に由来する自然の香りまでも含有しないという意図ではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸と2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルとオクチルメトキシシンナメートとを含み、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルおよび/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールにより中和塩とすることにより、変臭を生じることがなく、また乳化安定性に優れたものとすることができる。
【0011】
なお、UVA吸収剤を0.1〜10質量%含有させることにより、UVAからUVBまで幅広い領域の紫外線を吸収することができ、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、オクチルメトキシシンナメートとの併用による高い紫外線防止効果を有する油中水型日焼け止め化粧料とすることが可能である。
また、本発明の油中水型日焼け止め化粧料は変臭を生じることがないため、実質的に香料を含有しない、無香料の油中水型日焼け止め化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸と、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル(以下、AMPDともいう)および/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(一般にTrisと省略して呼ばれるため以下、Trisともいう)と、オクチルメトキシシンナメートとを含むことを特徴とする。AMPDやTrisはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤であり、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸はAMPDやTrisによって中和されることにより水溶性となる。これによって、エステル系紫外線吸収剤であるオクチルメトキシシンナメートを併用しても異臭を生じることがなく、乳化安定性も得ることが可能である。
【0013】
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸とAMPDおよび/またはTrisの割合は4:1〜2:1の範囲であることが好ましく、さらには3:1〜2:1の範囲であることがより好ましい。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸とAMPDの割合は4:1〜2:1の範囲を外れると、中和が十分でなくなるため好ましくない。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の含有量は、油中水型日焼け止め化粧料全量に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜4質量%、さらには0.4〜3質量%の範囲が好ましい。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の含有量が0.01質量%未満の場合には紫外線防止効果が十分に発揮されず、5質量%よりも多いとべたつきを生じたり、溶解しきれなくなり結晶が析出するため好ましくない。AMPD、Trisはそれぞれを単独で用いても両者を混合して用いてもよく、AMPDおよび/またはTrisの含有量(両者を併合して用いる場合にはその合計含有量)は0.01〜2.5質量%、好ましくは0.025〜2質量%、さらには0.2〜1.5質量%の範囲が好ましい。
【0014】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、より幅広い領域の紫外線を吸収することができるようにするためUVA吸収剤を0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%含有することがより好ましい。UVA吸収剤の含有量が0.1質量%未満の場合には紫外線防止効果が十分に発揮されず、10質量%よりも多いとべたつきを生じたり、溶解しきれなくなり結晶が析出するため好ましくない。UVA吸収剤としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、UVB波長領域にも吸収を有するビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等を好適に挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0015】
これらのUVA吸収剤は室温で固形であるため、エステル油やオクチルメトキシシンナメートなどに溶解して配合する必要があり、トリエタノールアミンや水酸化ナトリウムを中和剤として用いてフェニルベンズイミダゾールスルホン酸と併用した場合、異臭が生じたり、乳化安定性が悪くなるが、本発明の油中水型日焼け止め化粧料では中和剤としてAMPDを用いているため、これらを併用して使用しても異臭を生じることなく、乳化安定性に優れた油中水型日焼け止め化粧料が得られる。
【0016】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料に含有されるオクチルメトキシシンナメートは液状油溶性紫外線吸収剤であるとともにエステル油分でもある。オクチルメトキシシンナメートを含めたエステル油分は化粧料全量に対して10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%、さらには15〜50質量%であることが好ましい。エステル油分が10質量%未満では安定に乳化できない。一方で、80質量%よりも多いと水の配合量が少なくなって、十分な清涼感が得られなくなる。
【0017】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料には、オクチルメトキシシンナメート、上記で記載したUVA吸収剤の他に、その他の液状油溶性紫外線吸収剤を含んでいてもよい。具体的には、オクトクリレン(2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)、サリチル酸オクチル、サリチル酸ホモメンチル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、およびトリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル等を含有させることができる。これらはそれぞれを単独で用いてもよいし、二種以上を適宜組み合わせて用いることが可能である。複数種類の紫外線吸収剤を組み合わせることにより、幅広い領域の紫外線を吸収することができ、併用により紫外線防止効果を向上させることも可能である。
【0018】
オクチルメトキシシンナメートおよびUVA吸収剤も含めた液状油溶性紫外線吸収剤全体の配合量は、油中水型日焼け止め化粧料全体に対して0.3〜15質量%、好ましくは1〜10質量%であることが好ましい。液状油溶性紫外線吸収剤の配合量が0.3質量%未満の場合には紫外線防止効果が十分に発揮されず、15質量%よりも多いと紫外線吸収剤由来のべたつきが製剤に現れてしまうため好ましくない。
【0019】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料には、上記成分の他に、本発明の目的・効果を損なわない限りにおいて、通常化粧品に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、水溶性高分子、油溶性高分子、高分子粉末、乳化剤、ロウ類、アルコール類、液体油脂、エステル油(オクチルメトキシシンナメート以外)、炭化水素油、シリコーン油、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、薬剤、紫外線吸収剤(フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、オクチルメトキシシンナメート、上記で説明したUVA吸収剤以外)、紫外線散乱剤、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0020】
水溶性高分子としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と略記する)のホモポリマー、あるいはコポリマーが挙げられる。コポリマーは、ビニルピロリドン、アクリル酸アミド、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル等のコモノマーとからなるコポリマーである。すなわち、AMPSホモポリマー、ビニルピロリドン/AMPS共重合体、ジメチルアクリルアミド/AMPS共重合体、アクリル酸アミド/AMPS共重合体、アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体等が例示される。
【0021】
さらには、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム/アクリル酸アルキル/メタクリル酸ナトリウム/メタクリル酸アルキル共重合体、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等が例示される。
【0022】
油溶性高分子としては、トリメチルシロキシケイ酸、アルキル変性シリコーン、ポリアミド変性シリコーン等が例示される。
高分子粉末としてはジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル等が例示される。
【0023】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、液状ラノリン、ジョジョバロウ等が例示される。
乳化剤としてはシリコーン系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、中でもシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0024】
シリコーン系界面活性剤としては、油中水型乳化タイプに用いられ得るものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0025】
アルコール類としては、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール等の高級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどの多価アルコール等が例示される。
【0026】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が例示される。
【0027】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸セチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が例示される。
【0028】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等が例示される。
【0029】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が例示される。
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、アラキドン酸等が例示される。
【0030】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコール、カルナービルアルコール、セリルアルコール、コリヤニルアルコール、ミリシルアルコール、ラクセリルアルコール、エライジルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル、オクチルアルコール、トリアコンチルアルコール、セラキルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルデカノール等が例示される。
脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、ミツロウ脂肪酸2−オクチルドデシル等が例示される。
【0031】
薬剤としては、L−アスコルビン酸およびその誘導体の塩、グリチルリチン酸ジカリルム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸およびその誘導体、グリチルレチン酸ステアリルなどのグリチルレチン酸およびその誘導体、アラントイン、トラネキサム酸およびその誘導体の塩、アルコキシサリチル酸およびその誘導体の塩、グルタチオンおよびその誘導体の塩、アラントイン、アズレンなどが例示される。
【0032】
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、オクチルメトキシシンナメート、上記で説明したUVA吸収剤以外の紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミルなどの桂皮酸誘導体;パラ−アミノ安息香酸(以下、「PABA」と略記)、エチルPABA、エチル−ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル−ジメチルPABA、グリセリルPABA等のPABA誘導体;ジプロピレングリコールサリチラート、TEAサリチラート等のサリチル酸誘導体;ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−5、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−9、ベンゾフェノン−12等のベンゾフェノン誘導体;3−ベンジリデンショウノウ、4−メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ等のベンジリデンショウノウ誘導体;アニソトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6−トリス(ジイソブチル−4’−アミノベンザルマロナート)−s−トリアジン等のトリアジン誘導体;フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム等のフェニルベンゾイミダゾール誘導体;ドロメトリゾール(Drometrizole)トリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)等のフェニルベンゾトリアゾール誘導体;アントラニル酸メンチル等のアントラニル誘導体;エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナート等のイミダゾリン誘導体;ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン等のベンザルマロナート誘導体;1,1−ジカルボキシ(2,2’−ジメチルプロピル)−4,4−ジフェニルブタジエン等の4,4−ジアリールブタジエン誘導体などが例示される。
【0033】
紫外線散乱剤としては、疎水化処理を施した二酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料などが例示される。
有機変性粘土鉱物としては、第4級アンモニウム塩型カチオン変性粘土鉱物などが例示される。
【0034】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、乳液状製品やクリーム状の製品がある。これらの製品は、上記の必須成分および化粧料に通常配合される成分を混合して常法により製造することができる。
【実施例】
【0035】
下記表1に示す処方(表1に示す数値は質量部である)により、以下の手順に従って、実施例および比較例の日焼け止め化粧料を調製した。まず、水溶性紫外線吸収剤(フェニルベンズイミダゾールスルホン酸)に中和剤を添加して反応させた後、水、アルコール、保湿剤を添加して均一に分散させて水相成分を調整した。一方、油分に油溶性紫外線吸収剤等の他の成分を添加して均一に分散させ、ここに先に調整した水溶性紫外線吸収剤を含む水相成分を徐々に添加し乳化させて油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製した。
【0036】
(評価方法)
(紫外線防止効果)
日本化粧品工業連合会で策定した「SPF測定法基準」(2007年改訂版)に準じて、実施例2、比較例1および2の試料のSPF値を測定した。
【0037】
(変臭抑制効果)
40℃で1ヶ月間静置した各試料を女性パネル(10名)に実際に使用してもらい、塗布時の臭いの有無を評価し、変臭のないものを良好、異臭が生じたものを異臭ありと評価した。
【0038】
(乳化安定性)
40℃で1ヶ月間静置した各試料を光学顕微鏡で観察し、乳化粒子が均一で、合一や凝集を認められなかったものを安定と、乳化粒子に合一や凝集が認められたものを合一と評価した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、本発明の油中水型日焼け止め化粧料である実施例1および2は、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルにより、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸が中和塩となっているため、変臭が生じることがなく、乳化安定性が得られた。一方で、中和剤としてトリエタノールアミンを用いた比較例3は、乳化安定性は得られたものの、異臭が生じ、中和剤として水酸化ナトリウムを用いた比較例4および5では異臭は生じなかったものの、乳化粒子に合一が認められ乳化安定性が得られなかった。また、中和剤としてアミノメチルプロパノールを用いた比較例6および7では乳化安定性は得られたものの、異臭が生じた。
【0041】
また、実施例2と比較例1および2のSPF値の比較より、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を含まない油中水型日焼け止め化粧料よりも高いSPF値が得られた。これらの実施例から明らかなように、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸とオクチルメトキシシンナメートとを含む油中水型日焼け止め化粧料の場合、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルおよび/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールを中和剤として用いることにより、変臭の発生を抑制することが可能であるとともに、乳化安定性を得ることができ、オクチルメトキシシンナメート以外の油溶性の紫外線吸収剤を添加することが可能であるため、高い紫外線防止効果を有する油中水型日焼け止め化粧料を得ることができる。
【0042】
下記表2に、本発明の油中水型日焼け止め化粧料の処方例を示す(表2に示す数値は質量部である)。処方例1〜3に示す油中水型日焼け止め化粧料は、以下のようにして調整した。油溶性紫外線吸収剤、油分、被膜剤、界面活性剤を均一に溶解混合し、増粘剤、紫外線散乱剤、粉末を添加してホモミキサーで分散して油相を調整した。イオン交換水に中和剤を加え、水溶性紫外線吸収剤を加えて溶解するまで撹拌し、キレート剤、保湿剤、防腐剤、アルコールを加えて水相を調整した。油相に撹拌しながら水相を添加し、ホモミキサーにて撹拌して日焼け止め化粧料を調整した。得られた日焼け止め化粧料は、40℃で1ヶ月以上保存しても変臭は生じなかった。
【0043】
【表2】

【0044】
なお、上記実施例や処方例では2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールをそれぞれ単独で用いたものを示しているが、これら両方を併合しても同様の結果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸と、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ルおよび/または2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールと、オクチルメトキシシンナメートとを含むことを特徴とする油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
エステル油分を10質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項3】
UVA吸収剤を0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項4】
実質的に香料を含有しないことを特徴とする請求項1、2または3記載の油中水型日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2011−153079(P2011−153079A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13772(P2010−13772)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子
【Fターム(参考)】