説明

油圧シリンダ装置

【課題】停止機構が装置内部に内蔵され、安全確実な停止が可能で外観もスマートな油圧シリンダ装置に関する。
【解決手段】シリンダ1と、シリンダ1に突出・没入自在に配設され、シリンダ1内を加圧室4と復帰室5とに分割するピストン部6が設けられ、内部に高速突出作動室7が形成されているシリンダロッド2と、シリンダ1の閉塞端8からシリンダロッド2の作動室7内に挿入され且つその端にストッパ10が形成されている通油用中空パイプ9と、シリンダロッド2内に配設され、中空パイプ9に沿って移動可能であり且つストッパ10方向に常時押圧付勢され、ストッパ10への当接にはシリンダロッド2内の係合部11に係合し、ストッパ10に係合した後は係合部11から離間方向に移動して加圧室4と作動室7とを連通させ、中空パイプ9を通して加圧室4の圧油をリリースさせる可動弁12とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダロッドのオバーラン防止機構が内部に組み込まれている新規な油圧シリンダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図7は従来の高速油圧シリンダ装置(B)の断面図である。図においてシリンダ(41)中にシリンダロッド(42)が突出・没入自在に配設されており、シリンダロッド(42)のピストン部(46)によりシリンダ(41)内が加圧室(44)と復帰室(45)とに分割されるようになっている。更に、シリンダロッド(42)内には高速突出作動室(47)が形成されており、シリンダ(41)の閉塞端(48)からシリンダロッド(42)の高速突出作動室(47)内に中空パイプ(49)が挿入されている。
【0003】シリンダロッド(42)の突出端に取り付けられた複数のガイド取付部(53)にはガイド棒(51)がそれぞれ取り付けられており、シリンダ(41)の外面に一体的に設けられた複数のガイド(52)に形成されたガイド孔(52a)をスライドするように挿通されている。ガイド棒(51)の他端にはストローク調整バー(54)が取り付けられており、ストローク調整バー(54)にはストローク調整ネジ(55)が取り付けられている。
【0004】前述のように形成された従来の高速油圧シリンダ装置(B)の動作に付いて簡単に説明すると、シリンダロッド(42)がシリンダ(41)内に没入している状態から突出する場合、まず中空パイプ(49)を通じて圧油が高速突出作動室(47)内に供給される。高速突出作動室(47)の容積は小さいので、これによりシリンダロッド(42)は急速にシリンダ(41)から押し出される。
【0005】シリンダロッド(42)がワークの加工位置の直前に至ると図示していないリミットスイッチによって中空パイプ(49)への給油がストップし、加圧室(44)への給油に切り替わる。これにより、加圧室(44)は高速突出作動室(47)に比べて大面積であるので、シリンダロッド(42)は低速であるが高出力で更に押し出されていくことになる。これにより、シリンダロッド(42)の先端に取り付けられたパンチにより、例えばパンチング加工による孔形成などが行われる。
【0006】シリンダロッド(42)は無制限に押し出されるのではなく、ワークの孔加工が終了すると、ピストン部(46)がシリンダ(41)の開口端(43)に当接する前に停止する必要がある。大圧力でピストン部(46)がシリンダ(41)の開口端(43)に当接すると開口端(43)に設けられているシーリング部材などが破損して油漏れを発生させ、高速油圧シリンダ装置(B)の損傷に繋がる。
【0007】そのために、ストローク調整ネジ(55)によりシリンダロッド(42)のストローク調整が行われる。すなわち、ピストン部(46)が開口端(43)に当接する前にストローク調整ネジ(55)の先端がシリンダ(41)の閉塞端(48)に当接してシリンダロッド(42)の突出を規制している。
【0008】このような場合、前記大圧力のシリンダロッド(42)の突き出しに耐えられるようにシリンダ(41)の両側に頑強なガイド棒(51)を設け、更に閉塞端(48)の上方にストローク調整バー(54)及びこれに取り付けられたストローク調整ネジ(55)を設けなければならず、ストローク調整機構そのものが非常に大きくなり、その結果高速油圧シリンダ装置(B)の全体形状が大きくなるだけでなく背も高くなり、しかも外観的に醜い形状となる。また、前述のストローク調整ネジ(55)による調整量にミスがあるとストローク調整ネジ(55)によるストップが掛かる前にピストン部(46)がシリンダ(41)の開口端(43)に当接して高速油圧シリンダ装置(B)を損傷させるという問題もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の解決課題は、前述のようなストローク調整バーやストローク調整ネジ、ガイド棒など外部に表れるストローク調整機構をなくし、同様のストローク調整機能を装置内部に内蔵してその外観形状をスマートなものにする事が出来るだけでなく、その停止動作を安全確実なものにする事ができる油圧シリンダ装置の開発を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】「請求項1」に記載の油圧シリンダ装置(A)は「開口端(3)からシリンダロッド(2)が突出・没入するシリンダ(1)と、シリンダ(1)に突出・没入自在に配設され、シリンダ(1)内を加圧室(4)と復帰室(5)とに分割するピストン部(6)が設けられ、内部に高速突出作動室(7)が形成されている中空のシリンダロッド(2)と、シリンダ(1)の閉塞端(8)からシリンダロッド(2)の高速突出作動室(7)内に挿入され、且つその端部にストッパ(10)が形成されている圧油給排用の中空パイプ(9)と、中空のシリンダロッド(2)内に配設され、中空パイプ(9)に沿って移動可能に取着され、ストッパ(10)方向に常時押圧付勢されており、ストッパ(10)に当接前には中空のシリンダロッド(2)内の係合部(11)に係合し、ストッパ(10)に係合した後は前記係合部(11)から離間する方向に移動して加圧室(4)と高速突出作動室(7)とを連通させ、中空パイプ(9)を通して加圧室(4)の圧油を放出させる可動弁(12)とで構成されている」事を特徴とする。
【0011】これによれば、ストッパ(10)に係合した可動弁(12)の動作により、シリンダロッド(2)が所定ストローク(X+Z)だけ突出すると必然的に加圧室(4)内の圧油が高速突出作動室(7)側に抜けて停止するので、誤動作を生じる事がなく、油圧シリンダ装置(A)の総ストローク範囲(Y)内で確実にシリンダロッド(2)を停止させる事が出来、油圧シリンダ装置(A)を破損させるような事がない。
【0012】「請求項2」は前記の油圧シリンダ装置(A)の改良で「加圧室(4)と高速突出作動室(7)との連通時に、加圧室(4)と高速突出作動室(7)とを連通させる加圧室(4)側の連通部(17)と高速突出作動室(7)側の連通部(18)の少なくとも何れか一方が、重なり合った時に次第にその連通面積を増加するように形成されている」事を特徴とする。
【0013】これによれば、連通部(17)(18)同士が重なり合う時に次第にその連通面積が増加するように形成されているので、シリンダロッド(2)は徐々に停止する事になり、停止時のショックをなくすことが出来る。前記連通面積の漸増部分(26)はどのような形状でも良いが、例えば図6のような三角錐状の溝が挙げられる。また、前述の連通部(17)(18)は本実施例ではいずれも「溝」にて形成されているが、勿論、これに限られるものでなく「溝」と「孔」の組み合わせでもよい。
【0014】「請求項3」は前記油圧シリンダ装置(A)の更なる改良で「中空パイプ(9)に対するストッパ(10)の固定位置が可変となっている」事を特徴とする。このようにする事で、シリンダロッドの停止位置を自由に変更する事が出来る。
【0015】「請求項4」は請求項1乃至3何れかに記載の油圧シリンダ装置(A)の更なる限定で、「 加圧室(4)を構成するシリンダ(1)の閉塞端(8)と、前記閉塞端(8)に対向するピストン部(6)の対向面に、加圧室(4)の縮小時に圧油閉塞空間(31)を形成するリング部(27)と、これに嵌り込む閉塞突部(28)がそれぞれ形成されており、圧油閉塞空間(31)が縮小する場合に圧油閉塞空間(31)内の圧油を外部に徐々に逃がす流量調整弁(32b)が圧油閉塞空間(31)に連通して設置されている」事を特徴とする。
【0016】このようにする事で、シリンダロッド(2)の復帰の最終段階でリング部(27)内に閉塞突部(28)が嵌り込んで圧油閉塞空間(31)を形成し、この中に圧油を閉じこめる事でこれが抵抗となる。そして、流量調整弁(32b)により圧油閉塞空間(31)内の圧油を外部に徐々に逃がすので、復帰の最終段階ではシリンダロッド(2)の復帰速度が低下する。これによりシリンダロッド(2)の復帰時の停止ショックが緩和される。
【0017】「請求項5」は、請求項4に記載の油圧シリンダ装置(A)の更なる限定で「リング部(27)の内周エッジと、これに嵌り込む閉塞突部(28)の外周エッジの少なくとも何れか一方に閉塞突部(28)が嵌り込むに従って圧油閉塞空間(31)の内外との連通面積を減少させる連通面積調整部(30)が形成されている」事を特徴とする。
【0018】この場合は、リング部(27)に閉塞突部(28)が嵌り込む時に、圧油閉塞空間(31)の内外との連通面積を減少させる連通面積調整部(30)が形成されているので、前記嵌り込み動作の進行につれて次第に内外の連通面積が減少するために抵抗が漸増する事になる。その結果、前記嵌り込み動作の開始時のショックが殺され、シリンダロッド(2)の復帰時の動作が非常に円滑に停止する事になる。
【0019】
【発明の実施の態様】以下、本発明を図示に従って詳述する。従来例並びに本発明の油圧シリンダ装置(A)(B)は、共に各種機械の駆動源として使用されるもので、シリンダロッド(2)の突出端にパンチ或いは金型などを取り付けて使用され、例えばパンチング装置或るいはプレス成形装置などがその用途として挙げられる。図1において、シリンダ(1)の内部には中空のシリンダロッド(2)が突出・没入自在に配設されており、シリンダロッド(2)の没入端の外周に形成されたピストン部(6)によってシリンダ(1)の内部が加圧室(4)と復帰室(5)に分割されるようになっている。
【0020】前記加圧室(4)内において、シリンダ(1)の閉塞端(8)の内面「即ち、加圧室(4)の天井部分」には、加圧室(4)の縮小時に圧油閉塞空間(31)を形成するリング部(27)が形成されており、シリンダ(1)の閉塞端(8)の内面に対向するピストン部(6)の対向部位にはこれに嵌り込む閉塞突部(28)が形成されている。そして、圧油閉塞空間(31)に連通するショックアブソーバ用の小孔(29)が前記リング部(27)内に形成されている。前記リング部(27)と閉塞突部(28)の位置は、逆にしてもよい事は言うまでもなく、その場合は前記小孔(29)は閉塞突部(28)を貫通して形成される事になる。
【0021】そして、この小孔(29)には前記圧油閉塞空間(31)が縮小する場合に圧油閉塞空間(31)内の圧油を外部に徐々に逃がす流量調整弁(32b)が設置されており、これに並列にチェック弁(32a)が配設されている。
【0022】また、リング部(27)の内周エッジと、これに嵌り込む閉塞突部(28)の外周エッジの少なくとも何れか一方にリング部(27)に閉塞突部(28)が嵌り込むに従って圧油閉塞空間(31)の内外との連通面積を減少させる連通面積調整部(30)が形成されている。連通面積調整部(30)は三角錐状の溝でもよいし他の形状でも良いが、本実施例では閉塞突部(28)の外周エッジをテーパー状に面取りし、この部分を連通面積調整部(30)としている。逆に、リング部(27) の内周エッジを面取りしてこの部分を連通面積調整部(30)としてしてもよい。
【0023】シリンダロッド(2)内は中空で高速突出作動室(7)が形成されており、高速突出作動室(7)内にはシリンダロッド(2)の一部を構成する固定弁(15)が収納・固定されている。固定弁(15)は有底円筒体で高速突出作動室(7)側が開放しており、高速突出作動室(7)側の開放端に係合部(11)が突設されている。
【0024】シリンダロッド(2)には加圧室(4)に開口する固定側連通孔(16)が穿設されており、固定弁(15)の内周面に凹設されたリング状溝の固定側連通部(17)に連通するようになっている。シリンダ(1)の閉塞端(8)からシリンダロッド(2)の高速突出作動室(7)内に中空パイプ(9)が挿入されており、前記中空パイプ(9)の外周に可動弁(12)がスライド自在に嵌め込まれている。
【0025】可動弁(12)の内周は前記中空パイプ(9)に気密的に摺接しており、可動弁(12)の外周は固定弁(15)の内周に気密的に摺接している。そして、固定弁(15)と可動弁(12)の間のバネ室(15a)にはバネ(14)が配設されており、可動弁(12)を常に係合部(11)に押圧する方向に付勢している。そして中空パイプ(9)の先端の外周にはストッパ(10)が突設されている。
【0026】可動弁(12)には高速突出作動室(7)と固定弁(15)のバネ室(15a)とをつなぐ可動側連通孔(18a)が形成されており、更にこれに連通するリング溝状の可動側連通部(18)を介して可動弁(12)の外周面に開口している。そして可動弁(12)がストッパ(10)側に押圧付勢され係合部(11)に係合している状態にあっては、可動側連通部(18)は固定側連通部(17)とは互いに連通していない。従ってこの状態では高速突出作動室(7)と加圧室(4)とは連通せず互いに独立状態となっている。ここで、固定側連通部(17)と可動側連通部(18)とのズレ量を(Z)とする。
【0027】本油圧シリンダ装置(A)の何れかの部分(本実施例ではシリンダロッド(2)の突出側)には「低出力高速突き出し」から「低速高出力突き出し」にシリンダロッド(2)の押出条件を切り替えるリミットスイッチ(19)が配設されている。
【0028】次に油圧シリンダ(A)を作動させるための油圧回路について説明する。油圧ポンプ(20)は両ソレノイド型の4方向切替弁(21)[勿論、両ソレノイド型である必要はなく、4方向切替が可能であれば足る。]に接続されており、油圧ポンプ(20)から押し出された圧油の供給方向を切り換えるようになっている。
【0029】シリンダ(1)の加圧室(4)側の通油口()には片ソレノイド型の4方向切替弁(24)[勿論、片ソレノイド型である必要はなく、4方向切替が可能であれば足る。]の1つのポートが接続され、更に前記片ソレノイド型の4方向切替弁(24)が前記両ソレノイド型の4方向切替弁(21)に接続されている。そして前記片ソレノイド型の4方向切替弁(24)の他のポートは中空パイプ(9)の開口端()に接続され、更に他のイグゾースト用のポートはタンク(13)に接続されている。
【0030】一方、プロフィル弁(25)は通油口()と前記片ソレノイド型の4方向切替弁(24)の接続配管に連通する分岐配管に接続され、その反対側の圧油給排用のポートはタンク(13)に接続されている。そしてこのプロフィル弁(25)には前記両ソレノイド型の4方向切替弁(21)の圧油排出側のポートから導出されたパイロット配管(25a)が接続されている。
【0031】また、シリンダ(1)の閉塞端(8)に形成されたショックアブソーバ用の小孔(29)の通油口()には、流量制御弁(32b)とチェック弁(32a)とが並列に配設された制御装置(32)が配設されており、片ソレノイド型の4方向切替弁(24)と加圧室(4)の通油口()との間の配管に接続されている。
【0032】シリンダ(1)の復帰室(5)側の通油口()には、通油口()に近い方からカウンタバランス弁(23) 及びパイロットチェック弁(22)が直列に配設されている。そして前記両ソレノイド型の4方向切替弁(21)のシリンダロッド(2)の押出側のポートから導出されたパイロット配管(22a)が前記パイロットチェック弁(22)に接続されている。
【0033】次に本発明の油圧シリンダ(A)の作動について簡単に説明すると、シリンダロッド(2)がシリンダ(1)内の没入している作動前の状態(図2)→シリンダロッド(2)の低出力高速突き出し→シリンダロッド(2)の高出力低速突き出し→ワークの加工→シリンダロッド(2)の高出力低速突き出しの停止→シリンダロッド(2)の高速復帰と言うことになる。
【0034】まず、シリンダロッド(2)の高速押し出しに付いて説明する。図2に示すように、シリンダ(1)内の没入状態において、4方向切替弁(21)の一方のソレノイドが作動してシリンダロッド(2)の押出側ポートを開にし、これと同時に4方向切替弁(24)のバネの弾発力の作用により高速押出側ポートを開にして油圧ポンプ(20)からの圧油を中空パイプ(9)に給油する。この時、パイロット配管(25a)からの圧油の供給がなく、パイロット圧が加わらないからプロフィル弁(25)は閉じている。
【0035】中空パイプ(9)に給油された圧油は高速突出作動室(7)内に入りシリンダロッド(2)をシリンダ(1)の開口端(3)から急速に押し出す。高速突出作動室(7)の容積は非常に小さいので僅かな圧油の供給量でシリンダロッド(2)は開口端(3)から急速に押し出される事になる。
【0036】この時その反作用として加圧室(4)の容積は急拡大するが、圧油は4方向切替弁(24)或いはプロフィル弁(25)を通してタンク(13)から加圧室(4)に大量の圧油が吸い込まれることになる。圧油吸入口としては通油口()()が使用される。特に通油口()においては、チェック弁(32a)を通って大量に圧油が流入することになる。これに対して流量調整弁(32b)側では、流量が絞られているので圧油の流入量は僅かなものとなる。
【0037】一方、復帰室(5)側では、シリンダロッド(2)の急速突き出しに合わせて復帰室(5)の容積が急速に減少し、これに合わせて圧油が排出される。即ち、復帰室(5)内の圧油は復帰室(5)の通油口()に接続しているカウンタバランス弁(23)を通過し、パイロットチェック弁(22)、4方向切替弁(21)を通ってタンク(13)に流入する。
【0038】この時、カウンタバランス弁(23)では圧油が通過する際に或る一定の負荷(内圧)が掛かるようになっており、シリンダロッド(2)の過剰な急速突き出しを抑制している。何故ならば、通常、シリンダロッド(2)の突出端には重いパンチや金型など工具が装着されており、シリンダ(1)が垂直に配設され、シリンダロッド(2)が下向きに突出する場合、工具の重さでシリンダロッド(2)の突出(落下)速度が過大になるのを防ぐためである。前記負荷(内圧)を変える事でシリンダロッド(2)の突出スピードを調整する事が出来るようになっている。
【0039】また、パイロットチェック弁(22)は、パイロット配管(22a)からの圧力にて開となっており、カウンタバランス弁(23)を通過した圧油はパイロットチェック弁(22)を通過出来るようになっている。このようにしてシリンダロッド(2)はある一定の速度で急速突き出しが行われる。
【0040】この高速突き出し動作において、固定弁(15)及び可動弁(12)はシリンダロッド(2)と共に移動しており、固定側連通部(17)と可動側連通部(18)とは断絶状態を保ったままである。従って、加圧室(4)と高速突出作動室(7)とは絶縁状態を保っている。
【0041】シリンダロッド(2)[或いはシリンダロッド(2)の先端に装着された工具]が図示していないワークの直前に至ると、シリンダロッド(2)に併設された図示していないスイッチ作動部が、リミットスイッチ(19)を作動させ、シリンダロッド(2)の動作が、低出力高速突き出し動作から高出力低速突き出し動作に切り替わる。即ち、リミットスイッチ(19)からの信号により、片ソレノイド型の4方向切替弁(24)の圧油供給方向が切り替わる。
【0042】即ち、4方向切替弁(24)のソレノイドが作動して、中空パイプ(9)への圧油の供給を閉じ、加圧室(4)への圧油の供給に切り替える。これにより、大断面積の加圧室(4)内への圧油の供給となるので、当然シリンダロッド(2)はゆっくりとシリンダ(1)から突出し且つ高出力で作動することになる。この時、圧油の加圧室(4)への流入は通油口()()を通して行われる。片ソレノイド型の4方向切替弁(24)による圧油供給方向の切り替えは、前述のようにシリンダロッド(2)の突出端に取り付けられたパンチなどの工具が(図示せず)ワーク(図示せず)に当接する直前の位置である。
【0043】そして、切り替え後、シリンダロッド(2)は低速で且つ高出力にて押し出され、ワークを例えばパンチング加工することになる。この間、前記復帰室(5)側では、前述と同様の状態が続いており、復帰室(5)から圧油がタンク(13)内に流出し続けている。(図3参照)
シリンダロッド(2)の突出端に取り付けられた工具がワークの加工を終了し、工具がワークを僅かに突き抜けた時点で、可動弁(12)は中空パイプ(9)のストッパ(10)に当接する。この地点でストローク(X)だけピストン部(6)が移動したことになる。この状態では更に加圧室(4)への圧油の供給が続いておりシリンダロッド(2)は更にゆっくりと突き出されている。(図4参照)
続いてシリンダロッド(2)のゆっくりとした突き出し動作に合わせてストッパ(10)に係合した可動弁(12)はバネ(14)に抗して押し上げられ、係合部(11)から離間することになる。そして図5に示すように、可動弁(12)の可動側連通部(18)が固定弁(15)の固定側連通部(17)に接近して行き、可動側連通部(18)が固定側連通部(17)に連通するや否や加圧室(4)内の圧油は固定側連通孔(16)、固定側連通部(17)、可動側連通部(18)、可動側連通孔(18a)を通って高速突出作動室(7)に入り、高速突出作動室(7)から中空パイプ(9)並びに4方向切替弁(24)のイグゾーストポートを経てタンク(13)にリリースされる。これにより、加圧室(4)内の圧力は急低下してシリンダロッド(2)の突出動作は停止する。可動側連通部(18)と固定側連通部(17)との中心距離(両者のズレ量)を(Z)で示す。
【0044】図1において、シリンダロッド(2)の突出開始から停止までの距離を安全ストローク(X+Z)とし、本シリンダ装置(A)の総ストロークを(Y)とすると、総ストローク(Y)より安全ストローク(X+Z)は小さく、且つ安全ストローク(X+Z)の終端では確実に可動弁(12)が作動するので、シリンダロッド(2)が暴走してシリンダ(1)の開口端(3)のシール部分を破損させると言うような事故は生じない。
【0045】シリンダロッド(2)が停止すると、次に復帰動作に切り替わる。復帰動作への切替は、図示しないリミットスイッチなどにより行われる。この場合は両ソレノイド型の4方向切替弁(21)を作動させて、加圧室(4)への圧油の供給から復帰室(5)側への圧油の供給に切り替える。即ち、両ソレノイド型の4方向切替弁(21)の復帰ポート、パイロットチェック弁(22)、カウンタバランス弁(23)を通って復帰室(5)内に圧油が供給される。これによりシリンダロッド(2)は没入方向に移動する。復帰室(5)の容積は小さいので、シリンダロッド(2)は没入方向に高速移動する。
【0046】この復帰移動と同時に加圧室(4)内の圧油の一部は通油口()からプロフィル弁(25)を通ってタンク(13)にリリースされる。この時、前記プロフィル弁(25)は両ソレノイド型の4方向切替弁(21)の復帰ポートに接続したパイロット配管(25a)からのパイロット圧により開状態になっている。
【0047】加圧室(4)内の圧油の残部は、通油口()から流量調整弁(32b)からプロフィル弁(25)を通ってタンク(13)にリリースされる。この時、流量調整弁(32b)は絞られているので流量は小さくも大半の圧油は通油口()からリリースされる事になる。
【0048】また、高速突出作動室(7)も同様にシリンダロッド(2)の没入方向に合わせてその容積を減少させ、内部の圧油も中空パイプ(9)及び片ソレノイド型の4方向切替弁(24)のイグゾーストポートを通ってタンク(13)にリリースされる。これにより、シリンダロッド(2)はシリンダ(1)内に没入し、図2の状態に復帰する。
【0049】復帰の終盤に至ると、閉塞端(8)の内面に設けたリング部(27)内に、ピストン部(6)の対向面に設けた閉塞突部(28)が嵌り込んで圧油閉塞空間(31)を形成する。この時、閉塞突部(28)の外周エッジには連通面積調整部(30)となるテーパ面が形成されているので、リング部(27)に閉塞突部(28)が嵌り込むに従って、圧油閉塞空間(31)の内外との連通面積が次第に減少する事になる。
【0050】そしてこの連通面積の減少に合わせて圧油閉塞空間(31)の圧力が漸増して抵抗が増し、ピストンロッド(2)の没入速度が漸減する事になる。その結果、前記嵌り込み動作の開始時のショックが殺され、シリンダロッド(2)の復帰時の動作が非常に円滑に停止する事になる。
【0051】更に、リング部(27)に閉塞突部(28)が嵌り込んで圧油閉塞空間(31)が完全に閉塞されると圧油閉塞空間(31)内の圧力は急速に高まろうとするが、通油口()を介して圧油閉塞空間(31)は流量調整弁(32b)に接続されているので、圧油閉塞空間(31)の減少に合わせて圧油閉塞空間(31)内の圧油は流量調整弁(32b)により外部に徐々に逃がされ、復帰の最終段階ではシリンダロッド(2)の復帰速度が低下する。これによりシリンダロッド(2)の復帰時の停止ショックが緩和される。
【0052】なお、前述の油圧シリンダ装置(A)にあっては、シリンダロッド(2)の停止時に圧油が急激に抜けるのでショックが発生するが、図6に示すように可動側連通部(18)に通ずる三角錐状の連通面積漸増溝(26)を形成しておけば、可動弁(15)の移動と共に次第に固定側連通部(17)との連通面積が増加して圧油の抜け量が増加する事になり、ショックを生じることなく停止するようになる。前記連通面積の漸増部部である溝(26)は、当然三角錐状のものに限られるものでなく半円錐形のようなものでもよく、要するに可動弁(15)の移動に伴って連通面積が増加するような形状のものであればよい。
【0053】また図示していないが、例えば中空パイプ(9)の下端外周に雄ねじを螺設し、ストッパ(10)の内周に雌ねじを螺設しておき、ストッパ(10)を中空パイプ(9)に対して螺進・螺退自在にし、任意の位置でネジ固定できるようにしておけば、シリンダロッド(2)の停止位置を自由に設定する事が出来る。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、シリンダロッドが或るストロークだけ突出すると高速突出状態のシリンダロッド内に内蔵されている可動弁が中空パイプの端部に形成されたストッパに係合する事で可動弁が移動し、加圧室側の連通孔と高速突出作動室側の連通孔とが互いに連通して加圧室の圧油を高速突出作動室側に抜けるようにしてあるので、シリンダロッドが或るストロークだけ突出すると必然的に停止する。従って、誤動作を生じる事がなく、油圧シリンダ装置の総ストローク範囲内で確実にシリンダロッドを停止させる事が出来、油圧シリンダ装置を破損させるような事がない。
【0055】しかも、可動弁を始めシリンダロッド停止機構は油圧シリンダ装置内に内蔵されているので、装置全体が小型でしかも見栄え良く形成する事が出来る。
【0056】更には、加圧室と高速突出作動室との連通時に、両者を連通させる連通孔の連通面積が互いに重なり合った時に次第に増加するように形成されているので、シリンダロッドは徐々に停止する事になり、停止時のショックをなくすことが出来る。
【0057】更に、シリンダの閉塞端と、前記閉塞端に対向するピストン部の対向面に、加圧室の縮小時に圧油閉塞空間を形成するリング部と、これに嵌り込む閉塞突部をそれぞれ形成し、圧油閉塞空間が縮小する場合に圧油閉塞空間内の圧油を外部に徐々に逃がす流量調整弁を圧油閉塞空間に連通して設置する事で、シリンダロッドの復帰の最終段階の停止時の停止ショックを緩和する事が出来る。
【0058】更には、リング部の内周エッジと、これに嵌り込む閉塞突部の外周エッジの少なくとも何れか一方にリング部に閉塞突部が嵌り込むに従って圧油閉塞空間の内外との連通面積を減少させる連通面積調整部を形成する事で、前記嵌り込み動作の開始時のショックが殺され、シリンダロッドの復帰時の動作が非常に円滑に停止させる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる油圧シリンダ装置の配管図
【図2】図1において、シリンダロッドの没入状態の正断面図
【図3】図1において、シリンダロッドの低出力高速突き出し状態の正断面図
【図4】図1において、移動弁がストッパに係合した時の正断面図
【図5】図1において、移動弁が移動して加圧室と高速突出作動室とが互いに連通した時の正断面図
【図6】図5における連通孔の他の実施例の斜視図
【図7】従来例の配管図
【符号の説明】
(1) シリンダ
(2) シリンダロッド
(3) 開口端
(4) 加圧室
(5) 復帰室
(6) ピストン部
(7) 高速突出作動室
(8) 閉塞端
(9) 中空パイプ
(10) ストッパ
(11) 係合部
(12) 可動弁
(13) タンク
(14) バネ
(15) 固定弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口端からシリンダロッドが突出・没入するシリンダと、シリンダに突出・没入自在に配設され、シリンダ内を加圧室と復帰室とに分割するピストン部が設けられ、内部に高速突出作動室が形成されている中空のシリンダロッドと、シリンダの閉塞端からシリンダロッドの高速突出作動室内に挿入され、且つその端部にストッパが形成されている圧油給排用の中空パイプと、中空のシリンダロッド内に配設され、中空パイプに沿って移動可能に取着され、ストッパ方向に常時押圧付勢されており、ストッパ当接前には中空のシリンダロッド内の係合部に係合し、ストッパに係合した後は前記係合部から離間する方向に移動して加圧室と高速突出作動室とを連通させ、中空パイプを通して加圧室の圧油を放出させる可動弁とで構成されている事を特徴とする油圧シリンダ装置。
【請求項2】 請求項1の油圧シリンダ装置において、加圧室と高速突出作動室との連通時に、加圧室と高速突出作動室とを連通させる加圧室側の連通部と高速突出作動室側の連通部の少なくとも何れか一方が、次第に連通面積を増加するように形成されている事を特徴とする油圧シリンダ装置。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の油圧シリンダ装置において、中空パイプに対するストッパの固定位置が可変となっている事を特徴とする油圧シリンダ装置。
【請求項4】 請求項1乃至3何れかに記載の油圧シリンダ装置において、加圧室を構成するシリンダの閉塞端と、前記閉塞端に対向するピストン部の対向面に、加圧室の縮小時に圧油閉塞空間を形成するリング部と、これに嵌り込む閉塞突部がそれぞれ形成されており、圧油閉塞空間が縮小する場合に圧油閉塞空間内の圧油を外部に徐々に逃がす流量調整弁が圧油閉塞空間に連通して設置されている事を特徴とする油圧シリンダ装置。
【請求項5】 請求項4に記載の油圧シリンダ装置において、リング部の内周エッジと、これに嵌り込む閉塞突部の外周エッジの少なくとも何れか一方に閉塞突部が嵌り込むに従って圧油閉塞空間の内外との連通面積を減少させる連通面積調整部が形成されている事を特徴とする油圧シリンダ装置。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−50213(P2001−50213A)
【公開日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−219184
【出願日】平成11年8月2日(1999.8.2)
【出願人】(593056222)
【Fターム(参考)】