油圧パワーステアリング装置
【課題】バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することが可能な油圧パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】油圧パワーステアリング装置1は、作動油を送り出す電動ポンプ24と、油圧室21A,21Bを有するパワーシリンダ21と、油圧室21A,21Bを互いに連通する連通油路66と、連通油路66を開閉するバイパスバルブ50とを備える。バイパスバルブ50は、連通油路66を開放する開放位置および閉鎖する閉鎖位置に移動可能な弁体と、この弁体を吸引する永久磁石と、油圧により永久磁石を移動させるバイパス油圧室とを備える。永久磁石は、バイパス油圧室に作動油が供給されているとき、弁体を開放位置に吸引する吸引位置に位置する。一方、バイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、弁体を開放位置に吸引しない離間位置に位置する。
【解決手段】油圧パワーステアリング装置1は、作動油を送り出す電動ポンプ24と、油圧室21A,21Bを有するパワーシリンダ21と、油圧室21A,21Bを互いに連通する連通油路66と、連通油路66を開閉するバイパスバルブ50とを備える。バイパスバルブ50は、連通油路66を開放する開放位置および閉鎖する閉鎖位置に移動可能な弁体と、この弁体を吸引する永久磁石と、油圧により永久磁石を移動させるバイパス油圧室とを備える。永久磁石は、バイパス油圧室に作動油が供給されているとき、弁体を開放位置に吸引する吸引位置に位置する。一方、バイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、弁体を開放位置に吸引しない離間位置に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油を送り出すオイルポンプと、作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、第1油圧室と第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の油圧パワーステアリング装置は、パワーシリンダの第1油圧室および第2油圧室のそれぞれに接続される配管と、これらの配管同士を互いに連通する連通路(連通管)と、連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブ(2位置電磁切換弁)とを備えている。
【0003】
2位置電磁切換弁は、給電励磁されていないとき、ノーマル位置に位置することにより連通路を開放する。一方、給電励磁されているとき、オフセット位置に位置することにより連通路を閉鎖する。連通路が閉鎖されているときには、パワーステアリングの第1油圧室および第2油圧室が連通されないため、油圧によりステアリングホイールの操作をアシストすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−131875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記油圧パワーステアリング装置においては、連通路が閉鎖された状態を維持するためにバイパスバルブに継続して電力を供給する必要がある。このため、電力の消費量を少なくすることが難しい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することが可能な油圧パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、作動油を送り出すオイルポンプと、前記作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記連通路を開放する開放位置および前記連通路を閉鎖する閉鎖位置に移動可能な磁性体と、この磁性体を吸引する永久磁石と、この永久磁石を移動させる油圧を付与するためのバイパス油圧室とを備えること、前記永久磁石は、前記磁性体を前記開放位置に吸引する吸引位置および前記磁性体を前記開放位置に吸引しない離間位置に移動可能であること、ならびに、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されているとき、前記永久磁石が前記離間位置に位置し、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されていないとき、前記永久磁石が前記吸引位置に位置することを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、オイルポンプからバイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、バイパス油圧室において永久磁石に油圧が付与されない。このため、永久磁石が吸引位置に位置することにより連通路が開放される。一方、オイルポンプからバイパス油圧室に作動油が供給されているとき、バイパス油圧室において永久磁石に油圧が付与される。そして、この油圧により永久磁石が離間位置に位置するため、磁性体が永久磁石により吸引されない。これにより、磁性体が閉鎖位置に位置するため連通路が閉鎖される。このように本発明によれば、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することができる。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記永久磁石が前記離間位置に位置するとき、前記磁性体は重力により前記開放位置から前記閉鎖位置に移動することを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、磁性体を開放位置から閉鎖位置に移動させるための力として重力を利用しているため、磁性体を移動させるために重力を利用しない構成と比較して、磁性体を移動させるために消費されるエネルギーを少なくすることができる。
【0011】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項1または2に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記開放位置から前記閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石をさらに備えることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、バイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、閉鎖用磁石の磁力により磁性体が開放位置から閉鎖位置に移動する。このため、閉鎖用磁石が設けられていない構成と比較して、磁性体をより確実に閉鎖位置に移動させることができる。
【0013】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項3に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記閉鎖用磁石として電磁石を備えることを要旨とする。
【0014】
閉鎖用磁石として永久磁石を備える油圧パワーステアリング装置においては、磁性体を開放位置に移動させる必要があるときに閉鎖用磁石の磁力が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられるおそれがある。この発明によれば、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を磁性体に作用させるか否かを選択することができるため、上記の問題が生じることを抑制することができる。
【0015】
この発明によれば、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を磁性体に作用させるか否かを選択することができる。このため、磁性体を開放位置に移動させる必要があるときに閉鎖用磁石の磁性が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられることを抑制することができる。
【0016】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記閉鎖位置から前記開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、永久磁石とは別に、開放用磁石の磁力により磁性体を閉鎖位置から開放位置に移動させることが可能となる。このため、例えば、永久磁石を離間位置から吸引位置に移動させることができなくなる異常が生じたとしても、磁性体を開放位置に移動させることにより連通路を開放することができる。
【0018】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項5に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記開放用磁石として電磁石を備えることを要旨とする。
【0019】
開放用磁石として他の永久磁石を備える油圧パワーステアリング装置においては、磁性体を閉鎖位置に移動させる必要があるときに開放用磁石の磁力が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられるおそれがある。この発明によれば、開放用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を閉鎖位置から開放位置に斥ける力を磁性体に作用させるか否かを選択することができるため、上記の問題が生じることを抑制することができる。
【0020】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記オイルポンプの吐出口に接続される共通油路と、この共通油路と前記第1油圧室とを互いに接続する第1分岐油路と、前記共通油路と前記第2油圧室とを互いに接続する第2分岐油路と、前記共通油路と前記第1分岐油路および前記第2分岐油路との接続状態を切り替える切替弁と、前記共通油路のうちの前記オイルポンプと前記切替弁との間の部分と前記バイパス油圧室とを互いに接続する第3分岐油路とを備えること、ならびに、前記切替弁は、前記第1分岐油路が前記共通油路に接続され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路から遮断された第1切替状態と、前記第1分岐油路が前記共通油路から遮断され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路に接続された第2切替状態とを切り替えることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、共通油路および第1分岐油路または第2分岐油路を介して第1油圧室および第2油圧室の一方に作動油が供給されるとき、共通油路および第3分岐油路を介してバイパス油圧室に作動油が供給される。このため、永久磁石が離間位置に位置することにより、磁性体が閉鎖位置に位置する。これにより、連通路が閉鎖されるため、第1油圧室および第2油圧室に圧力差を生じさせることができる。
【0022】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、請求項7に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記パワーシリンダから排出される前記作動油を貯留する貯留部と、前記バイパス油圧室の前記作動油を前記貯留部に排出する排出油路とを備えること、ならびに、前記貯留部の作動油が前記オイルポンプにより前記パワーシリンダに供給されることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、パワーシリンダから排出される作動油およびバイパス油圧室から排出される作動油が共通の貯留部に貯留されるため、1つのオイルポンプによりパワーシリンダおよびバイパス油圧室のそれぞれと貯留部との間において作動油を循環させることができる。
【0024】
(9)第9の手段は、請求項9に記載の発明すなわち、請求項1〜8のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記離間位置から前記吸引位置に向けて作用する力を前記永久磁石に付与する弾性部材を備えることを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、バイパス油圧室の作動油から永久磁石に付与される油圧が弾性部材の力よりも小さいとき、永久磁石が吸引位置に位置する。一方、バイパス油圧室の作動油から永久磁石に付与される油圧が弾性部材の力よりも大きいとき、永久磁石が離間位置に位置する。すなわち、永久磁石を離間位置から吸引位置に移動させるための力が弾性部材により付与される。このため、弾性部材が設けられていない構成と比較して、連通路を速やかに開放することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することが可能な油圧パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の油圧パワーステアリング装置について、その全体構造を模式的に示す構成図。
【図2】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、切替弁の断面構造およびその周囲の構成を示す構成図。
【図3】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が回転中立位置のときの断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、(a)は図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が第1供給位置のときの断面構造を示す断面図、(b)は図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が第2供給位置のときの断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、連通路が開放されている状態のバイパスバルブの断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、連通路が閉鎖されている状態のバイパスバルブの断面構造を示す断面図。
【図7】本発明のその他の実施形態としての油圧パワーステアリング装置について、バイパスバルブの弁体を示す構成図。
【図8】本発明のその他の実施形態としての油圧パワーステアリング装置について、バイパスバルブを示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、油圧パワーステアリング装置1の構成について説明する。
油圧パワーステアリング装置1には、ステアリングホイール2の操作を転舵輪4に伝達するステアリング装置10と、ステアリングホイール2の操作に必要な力を補助するアシスト装置20と、アシスト装置20を制御する制御部30とが設けられている。
【0029】
ステアリング装置10には、ステアリングホイール2とともに回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転を直線の運動に変換するラックアンドピニオン機構12と、ラックアンドピニオン機構12の動作にともない軸方向に移動する転舵シャフト13とが設けられている。
【0030】
集積回路を含むECU(Electronic Control Unit)である制御部30は、トルクセンサ14、操舵角センサ15、および車速センサ5の出力に基づいて、アシスト装置20の電動ポンプ24および切替弁40等を制御する。
【0031】
トルクセンサ14は、ステアリングシャフト11に付与された操舵トルクに応じた信号を制御部30に出力する。操舵角センサ15は、ステアリングシャフト11の回転角度、すなわち操舵角に応じた信号を制御部30に出力する。車速センサ5は、転舵輪4の回転速度、すなわち車速に応じた信号を制御部30に出力する。
【0032】
油圧パワーステアリング装置1は次のように動作する。
運転者によりステアリングホイール2にトルクが入力されたとき、ステアリングホイール2とともにステアリングシャフト11が回転する。ステアリングシャフト11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構12により転舵シャフト13の軸方向の直線運動に変換される。転舵シャフト13は、ラックアンドピニオン機構12から伝達される力により軸方向に移動する。そして、転舵シャフト13の軸方向への移動にともないタイロッド3を介して転舵輪4の舵角が変更される。
【0033】
また、ステアリングホイール2が操作されるとき、アシスト装置20の油圧が制御されることにより転舵シャフト13に軸方向の力が付与される。これにより、転舵シャフト13を軸方向に移動させるためにステアリングホイール2の操作に要求される力が小さくなる。すなわち、ステアリングホイール2の操作に必要となる力がアシスト装置20によりアシストされる。
【0034】
アシスト装置20の構成について説明する。
アシスト装置20には、転舵シャフト13に油圧を付与するパワーシリンダ21と、パワーシリンダ21に作動油を供給するオイルポンプである電動ポンプ24と、パワーシリンダ21への作動油の給排態様を制御する切替弁40と、作動油を貯留する貯留部27とが設けられている。また、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの間で作動油を流通させることが可能なバイパスバルブ50と、作動油が流れる油路60とが設けられている。
【0035】
油路60は、次の各油路61〜68を有する。
(a)吸入油路61は、貯留部27と電動ポンプ24の吸入口とを互いに接続している。
(b)吐出油路62は、電動ポンプ24の吐出口と切替弁40の供給ポート73(図2)とを互いに接続している。
(c)第1供給油路63は、切替弁40の第1ポート71(図2)とパワーシリンダ21の第1油圧室21Aとを互いに接続している。すなわち、第1供給油路63は、切替弁40を介して吐出油路62と第1油圧室21Aとを互いに接続している。
(d)第2供給油路64は、切替弁40の第2ポート72(図2)とパワーシリンダ21の第2油圧室21Bとを互いに接続している。すなわち、第2供給油路64は、切替弁40を介して吐出油路62と第2油圧室21Bとを互いに接続している。
(e)排出油路65は、切替弁40の排出ポート74(図2)と貯留部27とを互いに接続している。
(f)連通油路66は、第1供給油路63と第2供給油路64とを互いに接続している。連通油路66は、第1油圧室21Aと第1油圧室21Aとを互いに連通する連通路に相当する。
(g)第3供給油路67は、吐出油路62とバイパスバルブ50のバイパス油圧室51B(図5)とを互いに接続している。
(h)環流油路68は、バイパスバルブ50のバイパス油圧室51B(図5)と排出油路65とを互いに接続している。
【0036】
パワーシリンダ21には、転舵シャフト13が挿入されるハウジング22と、転舵シャフト13に固定されるピストン23とが設けられている。ハウジング22内の空間は、ピストン23により2つの油圧室、すなわち第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに区画されている。
【0037】
作動油を送り出す電動ポンプ24には、その動力源としての電動モータ25と、電動モータ25の出力軸に連結される羽根車(図示略)を備えたポンプ26とが設けられている。電動モータ25としては、3相コイルのブラシレスモータが用いられている。
【0038】
貯留部27には、切替弁40を介してパワーシリンダ21から排出される作動油と、バイパスバルブ50から排出される作動油を貯留するオイルタンクを備えている。電動ポンプ24は、吸入油路61を介して貯留部27から作動油を吸入し、吐出油路62を介して吸入した作動油を切替弁40に吐出する。
【0039】
切替弁40は、吐出油路62、第1供給油路63、第2供給油路64、および排出油路65の接続状態を変更する可変流量バルブとして構成されている。すなわち、切替弁40は、第1供給油路63および第2供給油路64のうち、一方を吐出油路62に接続するとともに、他方を排出油路65に接続する。そして、接続状態を変更して、一方を排出油路65に接続するとともに、他方を吐出油路62に接続することにより、作動油供給先を変更する。このように、切替弁40は、作動油供給先が第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのいずれであっても作動油が一方向に流れる共通油路である吐出油路62と、共通油路から分岐した第1分岐油路である第1供給油路63と第2分岐油路である第2供給油路64との接続状態を切り替える。さらに、作動油の流路面積を変更することにより、作動油供給先への作動油の供給量(流量)を制御する。
【0040】
連通油路66を開閉するバイパスバルブ50は、第1供給油路63と第2供給油路64の接続状態、すなわち第1油圧室21Aと第2油圧室21Bの接続状態を変更するフェールセーフバルブである。すなわち、バイパスバルブ50は、連通油路66を開放することにより、第1供給油路63と第2供給油路64とを連通することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとを互いに連通する。また、連通油路66を閉鎖することにより、第1供給油路63と第2供給油路64との連通を遮断することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断する。
【0041】
図2および図3を参照して、切替弁40の詳細な構成について説明する。
図2に示されるように、切替弁40には、各油路62〜65が接続されるハウジング42と、油路62〜65に接続される複数のポート71〜74が形成されたポート形成部材43と、ポート形成部材43に対して回転する弁体44と、弁体44を回転させるための電動モータ41とが設けられている。またこの他に、電動モータ41の出力軸と弁体44とを互いに固定するための固定部材45と、弁体44とともに回転するトーションバー46と、弁体44をハウジング42に対して支持する軸受47とが設けられている。
【0042】
ハウジング42、ポート形成部材43、および弁体44は、円筒形状の部材として構成されている。ハウジング42、ポート形成部材43、弁体44、およびトーションバー46は、同軸上に設けられている。トーションバー46は、弁体44内の空間(以下、「内部空間44S」)に配置されている。弁体44は、ポート形成部材43内の(以下、「内部空間43S」)に配置されている。ポート形成部材43は、ハウジング42内の空間に配置されている。
【0043】
切替弁40においての回転の伝達構造について説明する。
電動モータ41の出力軸は、固定部材45に固定されている。固定部材45は、弁体44に固定されている。トーションバー46の第1端部46Aは、弁体44に固定されている。トーションバー46の第2端部46Bは、ハウジング42に固定されている。弁体44は、2つの軸受47を介してハウジング42により支持されている。
【0044】
そして、このように各構成要素が組み合わせられていることにより、電動モータ41が回転するとき、電動モータ41の出力軸、固定部材45、弁体44、およびトーションバー46の第1端部46Aを含む部分が、ハウジング42およびポート形成部材43に対して一体的に回転する。また、トーションバー46においては、第1端部46Aを含む部分が第2端部46Bを含む部分に対してねじれる。
【0045】
また、トーションバー46がねじれた状態において、電動モータ41からトーションバー46に付与されるトルクがトーションバー46の復元力と同じ大きさとなったとき、弁体44等の回転が停止して、トーションバー46がねじれた状態が維持される。また、トーションバー46がねじれた状態において、電動モータ41からトーションバー46に付与されるトルクがトーションバー46の復元力よりも小さくなったとき、トーションバー46の第1端部46Aを含む部分が第2端部46Bを含む部分に対してねじれ量を小さくする方向に回転する。
【0046】
ポート形成部材43および弁体44の構成について説明する。
ポート形成部材43には、4つのポートすなわち、第1供給油路63が接続される第1ポート71、第2供給油路64が接続される第2ポート72、吐出油路62が接続される供給ポート73、および排出油路65が接続される排出ポート74が形成されている。
【0047】
第1ポート71は、ポート形成部材43の外周面に形成された第1円環溝71Aと、ポート形成部材43の内周面に形成された軸方向に延びる第1縦軸溝71Cと、第1円環溝71Aと第1縦軸溝71Cとを互いに連通する第1連通孔71Bとにより構成されている。第1円環溝71Aには第1供給油路63が接続されている。図3に示されるように、ポート形成部材43の内周面には4本の第1縦軸溝71Cが形成されている。各第1縦軸溝71Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0048】
第2ポート72は、ポート形成部材43の外周面に形成された第2円環溝72Aと、ポート形成部材43の内周面に形成された軸方向に延びる第2縦軸溝72Cと、第2円環溝72Aと第2縦軸溝72Cとを互いに連通する第2連通孔72Bとにより構成されている。第2円環溝72Aには第2供給油路64が接続されている。図3に示されるように、ポート形成部材43の内周面には4本の第2縦軸溝72Cが形成されている。各第2縦軸溝72Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0049】
供給ポート73は、ポート形成部材43の外周部に設けられた供給円環溝73Aと、供給円環溝73Aと内部空間43Sとを互いに連通する供給連通孔73Bとにより構成されている。供給円環溝73Aには吐出油路62が接続されている。
【0050】
第1円環溝71A、第2円環溝72A、および供給円環溝73Aは、ポート形成部材43の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。また、第1連通孔71B、第2連通孔72B、および供給連通孔73Bも同様に、ポート形成部材43の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。
【0051】
弁体44には、ポート形成部材43に対する弁体44の回転位置に応じて第1縦軸溝71Cまたは第2縦軸溝72Cに接続される供給弁体溝44Aおよび排出弁体溝44Bと、排出弁体溝44Bと内部空間44Sとを互いに連通する入口連通孔44Cと、排出ポート74と内部空間44Sとを互いに連通する出口連通孔44Dとが形成されている。
【0052】
図3および図4を参照して、ポート形成部材43と弁体44の関係について説明する。
切替弁40においては、ポート形成部材43に対する弁体44の回転位置に応じて、吐出油路62および排出油路65と、第1供給油路63および第2供給油路64との関係が以下のように変更される。
【0053】
図3に示されるように、弁体44の回転位置が「回転中立位置」のとき、ポート形成部材43と弁体44の隙間を介して、供給ポート73が第1ポート71と第2ポート72とに連通されるとともに、排出ポート74も第1ポート71と第2ポート72とに連通される。このように弁体44が回転中立位置に位置している態様を「中立モード」とする。
【0054】
図4(a)に示されるように、弁体44の回転位置が「第1供給位置」のとき、供給ポート73が第1ポート71に連通され、かつ排出ポート74が第2ポート72に連通される。このように弁体44が第1供給位置に位置している態様を「第1モード」とする。
【0055】
図4(b)に示されるように、弁体44の回転位置が「第2供給位置」のとき、供給ポート73と第2ポート72に連通され、かつ排出ポート74と第1ポート71に連通される。このように弁体44が第2供給位置に位置している態様を「第2モード」とする。
【0056】
制御部30による切替弁40の制御態様について説明する。
制御部30は、ステアリングホイール2の操作状態に応じて切替弁40の弁体44の位置を制御する。すなわち、ステアリングホイール2の操作が行なわれないとき、制御部30は、切替弁40の電動モータ41を駆動させずに、切替弁40を中立モードとする。また、ステアリングホイール2が右方向に回転操作されるとき、電動モータ41を駆動させて切替弁40を第1モードとする。また、ステアリングホイール2が左方向に回転操作されるとき、電動モータ41を駆動させて切替弁40を第2モードとする。
【0057】
図3および図4を参照して、切替弁40内の作動油の流れについて説明する。なお、ここでの作動油の流れは、バイパスバルブ50が第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断していることを前提としている。
【0058】
(A)中立モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図3に示されるように、第1モードまたは第2モードから中立モードに変更されたとき、弁体44の回転位置が第1供給位置または第2供給位置から回転中立位置に変更される。これにより、第1ポート71および第2ポート72がそれぞれ隙間を介して供給ポート73および内部空間43S(排出ポート74)に接続される。
【0059】
中立モードにおいて電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73を介して、第1ポート71および第2ポート72に少量の作動油が供給され、かつ第1ポート71および第2ポート72から内部空間43S(排出ポート74)に少量の作動油が排出される。
【0060】
(B)第1モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図4(a)に示されるように、中立モードから第1モードに変更されたとき、弁体44が矢印Y1の方向に回転することにより、弁体44の回転位置が回転中立位置から第1供給位置に変更される。これにより、供給ポート73と第1ポート71とが互いに連通し、かつ排出ポート74と第2ポート72とが互いに連通する。
【0061】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73、第1ポート71、第1供給油路63を介して、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aに供給される。また、図4(a)の矢印R1で示されるように、切替弁40内においては、供給連通孔73B、供給弁体溝44A、第1縦軸溝71C、第1連通孔71B、第1円環溝71Aの順に作動油が流れる。
【0062】
パワーシリンダ21の第2油圧室21Bの作動油は、第2供給油路64、第2ポート72、内部空間44S、排出ポート74、および排出油路65を介して、貯留部27に排出される。また、図4(a)の矢印R2で示されるように、切替弁40内においては、第2円環溝72A、第2連通孔72B、第2縦軸溝72C、排出弁体溝44B、入口連通孔44C、および内部空間44Sの順に作動油が流れる。
【0063】
(C)第2モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図4(b)に示されるように、中立モードから第2モードに変更されたとき、弁体44が矢印Y2の方向に回転することにより、弁体44の回転位置が回転中立位置から第2供給位置に変更される。これにより、供給ポート73と第2ポート72とが互いに連通し、かつ排出ポート74と第1ポート71とが互いに連通する。
【0064】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73、第2ポート72、第2供給油路64を介して、パワーシリンダ21の第2油圧室21Bに供給される。また、図4(b)の矢印R3で示されるように、切替弁40内においては、供給連通孔73B、供給弁体溝44A、第2縦軸溝72C、第2連通孔72B、第2円環溝72Aの順に作動油が流れる。
【0065】
パワーシリンダ21の第1油圧室21Aの作動油は、第1供給油路63、第1ポート71、内部空間44S、排出ポート74、および排出油路65を介して、貯留部27に排出される。また、図4(b)の矢印R4で示されるように、切替弁40内においては、第1円環溝71A、第1連通孔71B、第1縦軸溝71C、排出弁体溝44B、入口連通孔44C、および内部空間44Sの順に作動油が流れる。
【0066】
パワーシリンダ21への作動油の供給量の調整について説明する。
制御部30は、電動ポンプ24の回転速度(すなわち電動モータ25の回転速度)および切替弁40の開度の制御により、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bへの作動油の供給量を調整する。作動油の供給量は、電動ポンプ24の回転速度が大きくなるにつれて多くなる。また、切替弁40の開度が大きくなるにつれて多くなる。
【0067】
切替弁40の開度には、以下の4種類の開度が含まれる。
(a)第1油圧室21Aへの作動油の供給量を変更する第1供給開度。
(b)第2油圧室21Bへの作動油の供給量を変更する第2供給開度。
(c)第1油圧室21Aからの作動油の排出量を変更する第1排出開度。
(d)第2油圧室21Bからの作動油の排出量を変更する第2排出開度。
【0068】
上記の各開度は、具体的には切替弁40の以下の部分に相当する。
第1供給開度は、第1ポート71の第1縦軸溝71Cと供給弁体溝44Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2供給開度は、第2ポート72の第2縦軸溝72Cと供給弁体溝44Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第1排出開度は、第1ポート71の第1縦軸溝71Cと排出弁体溝44Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2排出開度は、第2ポート72の第2縦軸溝72Cと排出弁体溝44Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。
【0069】
弁体44が回転中立位置から図4(a)に示す矢印Y1の方向に回転するにつれて、第1供給開度が大きくなるとともに、第2排出開度が大きくなる。また、弁体44が回転中立位置から図4(b)に示す矢印Y2の方向に回転するにつれて、第2供給開度が大きくなるとともに、第2排出開度が大きくなる。
【0070】
図5および図6を参照して、バイパスバルブ50の詳細な構成について説明する。
バイパスバルブ50は、連通油路66の一部を構成するポート81,82が形成されたハウジング51を有している。ハウジング51の内部には、弁体収納室51Aとバイパス油圧室51Bと電磁石収納室51Cとが形成されている。バイパス油圧室51Bは弁体収納室51Aの上方において隣り合って設けられている。電磁石収納室51Cは弁体収納室51Aの下方において隣り合って設けられている。
【0071】
弁体収納室51Aには、磁性体である柱状の弁体52が設けられている。弁体52は、弁体収納室51Aの内部、すなわちハウジング51の内部において上下方向に移動可能に設けられている。第1供給油路63に接続される第1ポート81と、第2供給油路64に接続される第2ポート82とは、弁体収納室51Aを介して連通する。
【0072】
バイパス油圧室51Bには、磁性体である弁体52を上方に吸引する永久磁石53と、永久磁石53が固定されている直動体54と、図5中の矢印F1で示す方向に移動させる力を永久磁石53に付与する弾性部材であるコイルばね55とが設けられている。バイパス油圧室51Bには、吐出油路62のうちの電動ポンプ24と切替弁40との間の部分に接続された第3分岐油路である第3供給油路67が接続されている。さらに、排出油路65のうちの切替弁40と貯留部27との間の部分に接続された排出油路である環流油路68が接続されている。バイパス油圧室51Bは、永久磁石53を移動させる油圧を永久磁石53に付与するために設けられている。
【0073】
電動ポンプ24から吐出された作動油の一部は、吐出油路62の一部、第3供給油路67を介して、バイパスバルブ50のバイパス油圧室51Bに供給される。バイパス油圧室51Bに供給された50に流入した作動油の油圧により、図6中の矢印F2で示す方向に移動させる力が直動体54に付与される。バイパス油圧室51Bの作動油は、環流油路68、排出油路65の一部を介して、貯留部27に排出される。すなわち、環流油路68は、バイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出する。
【0074】
バイパスバルブ50においては、電動ポンプ24による作動油の吐出に応じて、永久磁石53の位置が以下のように変更される。
図5に示されるように、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53と直動体54はコイルばね55により図中の矢印F1で示す方向に押さえつけられる。このとき永久磁石53は、弁体収納室51Aの直上に位置して、弁体収納室51A内の弁体52を磁力により吸引する。このように永久磁石53が弁体52を吸引する位置を「吸引位置」とする。
【0075】
図6に示されるように、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、永久磁石53と直動体54は作動油の油圧により図中の矢印F2で示す方向に移動する。このとき永久磁石53は、吸引位置から離れた位置であって、弁体52を吸引しない位置に位置する。このように永久磁石53が弁体52を吸引しない位置を「離間位置」とする。
【0076】
また、バイパスバルブ50においては、永久磁石53の位置に応じて、弁体52の位置および各油圧室21A,21Bの関係が以下のように変更される。
図5に示されるように、永久磁石53が吸引位置に位置するとき、第1ポート81と第2ポート82とが連通される位置であって、連通油路66を開放する位置に弁体52が吸引される。このとき第1供給油路63と第2供給油路64とが連通油路66を介して連通するため、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとが互いに連通する。このように弁体52が連通油路66を開放する位置を「開放位置」とする。
【0077】
図6に示されるように、永久磁石53が離間位置に位置するとき、第1ポート81と第2ポート82との連通が閉鎖される位置であって、連通油路66を閉鎖する位置に弁体52が重力により移動する。このとき第1供給油路63と第2供給油路64とが連通しない。このように弁体52が連通油路66を閉鎖する位置を「閉鎖位置」とする。
【0078】
電磁石収納室51Cには、磁性体である弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石である電磁石56が設けられている。電磁石56は、弁体52を閉鎖位置に吸引する磁力を発生させるコイル57と、コイル57に電流を供給する電源58と、コイル57と電源58とが接続された回路の開閉を行うスイッチ59とを備えている。電磁石56は閉鎖位置への弁体52の移動を補助するために設けられている。
【0079】
電磁石56の動作について説明する。
電磁石56のスイッチ59は、図1の制御部30により制御される。弁体52を開放位置から閉鎖位置に移動させるとき、すなわち電動ポンプ24の駆動開始時である作動油の供給開始時、制御部30はスイッチ59をオンにする。スイッチ59がオンになると、直流電源である電源58からコイル57に電流が流れて弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引する磁力が発生する。制御部30は、作動油の供給開始時から所定時間後にスイッチ59をオフにする。したがって、弁体52が閉鎖位置に移動した後においてコイル57に電流が継続して流されることはない。
【0080】
(作用)
バイパスバルブ50は以下の作用を奏する。
電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、コイルばね55により離間位置から吸引位置に向けて作用する力が永久磁石53に付与され、バイパス油圧室51Bにおいて永久磁石53に油圧は付与されない。バイパス油圧室51Bの作動油から永久磁石53に付与される油圧がコイルばね55の力よりも小さいとき、永久磁石53が吸引位置に位置する。すなわち、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53が吸引位置に位置することにより、弁体52が開放位置に吸引されて連通油路66が開放される。
【0081】
一方、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、バイパス油圧室51Bにおいて永久磁石53に油圧が付与される。このとき、バイパス油圧室51Bの作動油から永久磁石53に付与される油圧が、コイルばね55の力よりも大きいため、永久磁石53を離間位置から吸引位置に移動させるための力がコイルばね55により付与されて、永久磁石53が離間位置に移動する。そして、この油圧により永久磁石53が離間位置に位置するため、弁体52が永久磁石53により吸引されない。これにより、弁体52が閉鎖位置に位置することにより連通油路66が閉鎖される。
【0082】
(実施形態の効果)
本実施形態の油圧パワーステアリング装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)油圧パワーステアリング装置1は、電動ポンプ24と、第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bを有するパワーシリンダ21と、連通油路66と、バイパスバルブ50とを備えている。バイパスバルブ50は、開放位置および閉鎖位置に移動可能な弁体52と、永久磁石53と、バイパス油圧室51Bとを備えている。そして、永久磁石53は、弁体52を開放位置に吸引する吸引位置および弁体52を離間位置に移動可能であって、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、永久磁石53が離間位置に位置し、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53が吸引位置に位置する。したがって、上記作用により、バイパスバルブ50に継続して電力を供給しなくとも連通油路66が閉鎖された状態を維持することができる。
【0083】
(2)油圧パワーステアリング装置1において、永久磁石53が離間位置に位置するとき、弁体52は重力により開放位置から閉鎖位置に移動する。したがって、弁体52を開放位置から閉鎖位置に移動させるための力として重力を利用しているため、弁体52を移動させるために重力を利用しない構成と比較して、弁体52を移動させるために消費されるエネルギーを少なくすることができる。
【0084】
(3)油圧パワーステアリング装置1において、バイパスバルブ50は電磁石56をさらに備える。このため、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、電磁石56の磁力により弁体52が開放位置から閉鎖位置に移動する。このため、電磁石56が設けられていない構成と比較して、弁体52をより確実に閉鎖位置に移動させることができる。
【0085】
(4)油圧パワーステアリング装置1において、バイパスバルブ50は閉鎖用磁石として電磁石56を備えているため、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を弁体52に作用させるか否かを選択することができる。このため、弁体52を開放位置に移動させる必要があるときに、閉鎖用磁石の磁力による弁体52の移動の妨害を抑制することができる。
【0086】
(5)油圧パワーステアリング装置1は、吐出油路62と第1供給油路63と第2供給油路64と切替弁40と第3供給油路67とを備える。そして、切替弁40は、第1供給油路63が吐出油路62に接続され、かつ第2供給油路64が吐出油路62から遮断された第1切替状態と、第1供給油路63が吐出油路62から遮断され、かつ第2供給油路64が吐出油路62に接続された第2切替状態とを切り替える。したがって、吐出油路62および第1供給油路63または第2供給油路64を介して第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bの一方に作動油が供給されるとき、吐出油路62および第3供給油路67を介してバイパス油圧室51Bに作動油が供給される。このため、永久磁石53が離間位置に位置することにより、弁体52が閉鎖位置に位置する。これにより、連通油路66が閉鎖されるため、第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに圧力差を生じさせることができる。
【0087】
(6)油圧パワーステアリング装置1は、貯留部27と排出油路である環流油路68とを備え、貯留部27の作動油が電動ポンプ24によりパワーシリンダ21に供給される。したがって、パワーシリンダ21から排出される作動油およびバイパス油圧室51Bから排出される作動油が共通の貯留部27に貯留されるため、1つの電動ポンプ24によりパワーシリンダ21およびバイパス油圧室51Bのそれぞれと貯留部27との間において作動油を循環させることができる。
【0088】
(7)油圧パワーステアリング装置1は、離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与するコイルばね55を備える。このため、コイルばね55が設けられていない構成(例えば、重力を利用して離間位置から吸引位置に永久磁石53を移動させる構成)と比較して、連通油路66を速やかに開放することができる。
【0089】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を組み合わせて実施することもできる。
【0090】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、コイルばね55により永久磁石53が図中の矢印F1の方向に押さえつけられているが、コイルばね55以外の弾性部材により離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与することもできる。
【0091】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、弾性部材により離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与しているが、離間位置から吸引位置に向けて作用する力として重力を利用することもできる。この場合、弁体52を吸引する永久磁石は、バイパス油圧室内において上下方向に移動可能に設けられる。
【0092】
・上記実施形態(図5)の油圧パワーステアリング装置1は、バイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出する環流油路68を備えているが、環流油路68を介してバイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出しない構成を採用することもできる。この場合、電動ポンプ24の駆動停止時である作動油の供給停止時、バイパス油圧室51Bに供給された作動油は、第3供給油路67および吐出油路62に戻る。
【0093】
・上記実施形態(図6)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石として電磁石56を備えているが、閉鎖用磁石を例えば永久磁石により構成することもできる。この場合、閉鎖用磁石として設けられる永久磁石は、弁体52が開放位置に吸引されるとき、弁体52を吸引しない位置に設けられることが好ましい。
【0094】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石として電磁石56を備えているが、閉鎖用磁石に代えて、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける開放用磁石を備えることもできる。開放用磁石としては電磁石または永久磁石を用いることができる。以上のように、バイパスバルブ50が、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備える構成によれば、永久磁石53とは別に、開放用磁石の磁力により弁体52を閉鎖位置から開放位置に移動させること、または、開放位置への移動の補助が可能となる。このため、例えば、永久磁石53を離間位置から吸引位置に移動させることができなくなる異常が生じたとしても、弁体52を開放位置に移動させることにより連通油路66を開放することができる。
【0095】
また、バイパスバルブ50は、上記開放用磁石として電磁石を備えることが好ましい。開放用磁石として電磁石を備えるバイパスバルブ50においては、弁体52を閉鎖位置から開放位置に移動させるとき、すなわち電動ポンプ24の駆動停止時である作動油の供給停止時に、直流電源である電源から電磁石のコイルに電流を流して、弁体52を閉鎖位置から開放位置に吸引する磁力を発生させる。コイルへの通電は、電磁石56と同様に、コイルと電源を接続するスイッチの制御により行うことが好ましく、作動油の供給停止時から所定時間後にスイッチはオフにされることにより、弁体52が開放位置に移動した後においてコイルに電流が継続して流されることはない。以上の構成によれば、開放用磁石に供給する電流を制御することにより、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける力を弁体52に作用させるか否かを選択することができる。このため、弁体52を閉鎖位置に移動させる必要があるときに、開放用磁石の磁力による弁体52の移動の妨害を抑制することができる。
【0096】
なお、開放用磁石を例えば永久磁石53と異なる他の永久磁石により構成することもできる。この場合、開放用磁石として設けられる永久磁石は、弁体52を閉鎖位置に位置させるとき、弁体52を斥けない位置に設けられることが好ましい。
【0097】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、柱状の磁性体からなる弁体52を備えているが、図7に示されるように、球状の磁性体からなる弁体90を備えることもできる。図7は、弁体収納室51Aにおける弁体90の移動方向から見たバイパスバルブ50の断面図である。このような構成によれば、柱状の弁体52と比較して、弁体と弁体収納室51Aとの摩擦抵抗を低減することができる。
【0098】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、磁性体からなる弁体52を備えているが、図8に示されるように、永久磁石53により吸引される磁性体91と、磁性体91が固定された直動体92によりバイパスバルブ50の弁体を構成することもできる。この場合、弁体の直動体92により連通油路66が開放および閉鎖される。すなわち、磁性体自身により連通油路66の開放および閉鎖が行われなくてもよい。
【0099】
・上記実施形態(図5)の電磁石56は、コイル57に電流を供給する電源58を備えているが、バイパスバルブ50の外部に電流をコイル57に供給する電源を設けることもできる。例えば、車両に搭載されるバッテリーから、コイル57に電流を供給することもできる。
【0100】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石である電磁石56が設けられているが、電磁石56を備えない構成を採用することもできる。すなわち、閉鎖用磁石を省くこともできる。この場合、バイパスバルブ50の小型化を図ることができる。
【0101】
・上記実施形態(図2)の油圧パワーステアリング装置1は、ねじれた状態のトーションバー46の復元力により第1供給位置および第2供給位置から回転中立位置に弁体44が回転可能であるが、トーションバー46を省略して、電動モータ41の制御により第1供給位置および第2供給位置から回転中立位置に弁体44を回転させることもできる。
【符号の説明】
【0102】
1…油圧パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…タイロッド、4…転舵輪、5…車速センサ、10…ステアリング装置、11…ステアリングシャフト、12…ラックアンドピニオン機構、13…転舵シャフト、14…トルクセンサ、15…操舵角センサ、20…アシスト装置、21…パワーシリンダ、21A…第1油圧室、21B…第2油圧室、22…ハウジング、23…ピストン、24…電動ポンプ(オイルポンプ)、25…電動モータ、26…ポンプ、27…貯留部、30…制御部、40…切替弁、41…電動モータ、42…ハウジング、43…ポート形成部材、43S…内部空間、44…弁体、44A…供給弁体溝、44B…排出弁体溝、44C…入口連通孔、44D…出口連通孔、44S…内部空間、45…固定部材、46…トーションバー、46A…第1端部、46B…第2端部、47…軸受、50…バイパスバルブ、51…ハウジング、51A…弁体収納室、51B…バイパス油圧室、51C…電磁石収納室、52…弁体(磁性体)、53…永久磁石、54…直動体、55…コイルばね(弾性部材)、56…電磁石(閉鎖用磁石)、57…コイル、58…電源、59…スイッチ、60…油路、61…吸入油路、62…吐出油路(共通油路)、63…第1供給油路(第1分岐油路)、64…第2供給油路(第2分岐油路)、65…排出油路、66…連通油路(連通路)、67…第3供給油路(第3分岐油路)、68…環流油路(排出油路)、71…第1ポート、71A…第1円環溝、71B…第1連通孔、71C…第1縦軸溝、72…第2ポート、72A…第2円環溝、72B…第2連通孔、72C…第2縦軸溝、73…供給ポート、73A…供給円環溝、73B…供給連通孔、74…排出ポート、81…第1ポート、82…第2ポート、90…弁体、91…磁性体、92…直動体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油を送り出すオイルポンプと、作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、第1油圧室と第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の油圧パワーステアリング装置は、パワーシリンダの第1油圧室および第2油圧室のそれぞれに接続される配管と、これらの配管同士を互いに連通する連通路(連通管)と、連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブ(2位置電磁切換弁)とを備えている。
【0003】
2位置電磁切換弁は、給電励磁されていないとき、ノーマル位置に位置することにより連通路を開放する。一方、給電励磁されているとき、オフセット位置に位置することにより連通路を閉鎖する。連通路が閉鎖されているときには、パワーステアリングの第1油圧室および第2油圧室が連通されないため、油圧によりステアリングホイールの操作をアシストすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−131875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記油圧パワーステアリング装置においては、連通路が閉鎖された状態を維持するためにバイパスバルブに継続して電力を供給する必要がある。このため、電力の消費量を少なくすることが難しい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することが可能な油圧パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、作動油を送り出すオイルポンプと、前記作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記連通路を開放する開放位置および前記連通路を閉鎖する閉鎖位置に移動可能な磁性体と、この磁性体を吸引する永久磁石と、この永久磁石を移動させる油圧を付与するためのバイパス油圧室とを備えること、前記永久磁石は、前記磁性体を前記開放位置に吸引する吸引位置および前記磁性体を前記開放位置に吸引しない離間位置に移動可能であること、ならびに、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されているとき、前記永久磁石が前記離間位置に位置し、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されていないとき、前記永久磁石が前記吸引位置に位置することを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、オイルポンプからバイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、バイパス油圧室において永久磁石に油圧が付与されない。このため、永久磁石が吸引位置に位置することにより連通路が開放される。一方、オイルポンプからバイパス油圧室に作動油が供給されているとき、バイパス油圧室において永久磁石に油圧が付与される。そして、この油圧により永久磁石が離間位置に位置するため、磁性体が永久磁石により吸引されない。これにより、磁性体が閉鎖位置に位置するため連通路が閉鎖される。このように本発明によれば、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することができる。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記永久磁石が前記離間位置に位置するとき、前記磁性体は重力により前記開放位置から前記閉鎖位置に移動することを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、磁性体を開放位置から閉鎖位置に移動させるための力として重力を利用しているため、磁性体を移動させるために重力を利用しない構成と比較して、磁性体を移動させるために消費されるエネルギーを少なくすることができる。
【0011】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項1または2に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記開放位置から前記閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石をさらに備えることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、バイパス油圧室に作動油が供給されていないとき、閉鎖用磁石の磁力により磁性体が開放位置から閉鎖位置に移動する。このため、閉鎖用磁石が設けられていない構成と比較して、磁性体をより確実に閉鎖位置に移動させることができる。
【0013】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項3に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記閉鎖用磁石として電磁石を備えることを要旨とする。
【0014】
閉鎖用磁石として永久磁石を備える油圧パワーステアリング装置においては、磁性体を開放位置に移動させる必要があるときに閉鎖用磁石の磁力が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられるおそれがある。この発明によれば、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を磁性体に作用させるか否かを選択することができるため、上記の問題が生じることを抑制することができる。
【0015】
この発明によれば、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を磁性体に作用させるか否かを選択することができる。このため、磁性体を開放位置に移動させる必要があるときに閉鎖用磁石の磁性が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられることを抑制することができる。
【0016】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記閉鎖位置から前記開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
この発明によれば、永久磁石とは別に、開放用磁石の磁力により磁性体を閉鎖位置から開放位置に移動させることが可能となる。このため、例えば、永久磁石を離間位置から吸引位置に移動させることができなくなる異常が生じたとしても、磁性体を開放位置に移動させることにより連通路を開放することができる。
【0018】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項5に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記バイパスバルブは、前記開放用磁石として電磁石を備えることを要旨とする。
【0019】
開放用磁石として他の永久磁石を備える油圧パワーステアリング装置においては、磁性体を閉鎖位置に移動させる必要があるときに開放用磁石の磁力が磁性体に作用することに起因して、磁性体の移動が妨げられるおそれがある。この発明によれば、開放用磁石に供給する電流を制御することにより、磁性体を閉鎖位置から開放位置に斥ける力を磁性体に作用させるか否かを選択することができるため、上記の問題が生じることを抑制することができる。
【0020】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記オイルポンプの吐出口に接続される共通油路と、この共通油路と前記第1油圧室とを互いに接続する第1分岐油路と、前記共通油路と前記第2油圧室とを互いに接続する第2分岐油路と、前記共通油路と前記第1分岐油路および前記第2分岐油路との接続状態を切り替える切替弁と、前記共通油路のうちの前記オイルポンプと前記切替弁との間の部分と前記バイパス油圧室とを互いに接続する第3分岐油路とを備えること、ならびに、前記切替弁は、前記第1分岐油路が前記共通油路に接続され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路から遮断された第1切替状態と、前記第1分岐油路が前記共通油路から遮断され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路に接続された第2切替状態とを切り替えることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、共通油路および第1分岐油路または第2分岐油路を介して第1油圧室および第2油圧室の一方に作動油が供給されるとき、共通油路および第3分岐油路を介してバイパス油圧室に作動油が供給される。このため、永久磁石が離間位置に位置することにより、磁性体が閉鎖位置に位置する。これにより、連通路が閉鎖されるため、第1油圧室および第2油圧室に圧力差を生じさせることができる。
【0022】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、請求項7に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記パワーシリンダから排出される前記作動油を貯留する貯留部と、前記バイパス油圧室の前記作動油を前記貯留部に排出する排出油路とを備えること、ならびに、前記貯留部の作動油が前記オイルポンプにより前記パワーシリンダに供給されることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、パワーシリンダから排出される作動油およびバイパス油圧室から排出される作動油が共通の貯留部に貯留されるため、1つのオイルポンプによりパワーシリンダおよびバイパス油圧室のそれぞれと貯留部との間において作動油を循環させることができる。
【0024】
(9)第9の手段は、請求項9に記載の発明すなわち、請求項1〜8のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記離間位置から前記吸引位置に向けて作用する力を前記永久磁石に付与する弾性部材を備えることを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、バイパス油圧室の作動油から永久磁石に付与される油圧が弾性部材の力よりも小さいとき、永久磁石が吸引位置に位置する。一方、バイパス油圧室の作動油から永久磁石に付与される油圧が弾性部材の力よりも大きいとき、永久磁石が離間位置に位置する。すなわち、永久磁石を離間位置から吸引位置に移動させるための力が弾性部材により付与される。このため、弾性部材が設けられていない構成と比較して、連通路を速やかに開放することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バイパスバルブに継続して電力を供給しなくとも連通路が閉鎖された状態を維持することが可能な油圧パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の油圧パワーステアリング装置について、その全体構造を模式的に示す構成図。
【図2】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、切替弁の断面構造およびその周囲の構成を示す構成図。
【図3】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が回転中立位置のときの断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、(a)は図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が第1供給位置のときの断面構造を示す断面図、(b)は図2のA−A線に沿う切替弁の断面構造であり、その弁体の回転位置が第2供給位置のときの断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、連通路が開放されている状態のバイパスバルブの断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、連通路が閉鎖されている状態のバイパスバルブの断面構造を示す断面図。
【図7】本発明のその他の実施形態としての油圧パワーステアリング装置について、バイパスバルブの弁体を示す構成図。
【図8】本発明のその他の実施形態としての油圧パワーステアリング装置について、バイパスバルブを示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、油圧パワーステアリング装置1の構成について説明する。
油圧パワーステアリング装置1には、ステアリングホイール2の操作を転舵輪4に伝達するステアリング装置10と、ステアリングホイール2の操作に必要な力を補助するアシスト装置20と、アシスト装置20を制御する制御部30とが設けられている。
【0029】
ステアリング装置10には、ステアリングホイール2とともに回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転を直線の運動に変換するラックアンドピニオン機構12と、ラックアンドピニオン機構12の動作にともない軸方向に移動する転舵シャフト13とが設けられている。
【0030】
集積回路を含むECU(Electronic Control Unit)である制御部30は、トルクセンサ14、操舵角センサ15、および車速センサ5の出力に基づいて、アシスト装置20の電動ポンプ24および切替弁40等を制御する。
【0031】
トルクセンサ14は、ステアリングシャフト11に付与された操舵トルクに応じた信号を制御部30に出力する。操舵角センサ15は、ステアリングシャフト11の回転角度、すなわち操舵角に応じた信号を制御部30に出力する。車速センサ5は、転舵輪4の回転速度、すなわち車速に応じた信号を制御部30に出力する。
【0032】
油圧パワーステアリング装置1は次のように動作する。
運転者によりステアリングホイール2にトルクが入力されたとき、ステアリングホイール2とともにステアリングシャフト11が回転する。ステアリングシャフト11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構12により転舵シャフト13の軸方向の直線運動に変換される。転舵シャフト13は、ラックアンドピニオン機構12から伝達される力により軸方向に移動する。そして、転舵シャフト13の軸方向への移動にともないタイロッド3を介して転舵輪4の舵角が変更される。
【0033】
また、ステアリングホイール2が操作されるとき、アシスト装置20の油圧が制御されることにより転舵シャフト13に軸方向の力が付与される。これにより、転舵シャフト13を軸方向に移動させるためにステアリングホイール2の操作に要求される力が小さくなる。すなわち、ステアリングホイール2の操作に必要となる力がアシスト装置20によりアシストされる。
【0034】
アシスト装置20の構成について説明する。
アシスト装置20には、転舵シャフト13に油圧を付与するパワーシリンダ21と、パワーシリンダ21に作動油を供給するオイルポンプである電動ポンプ24と、パワーシリンダ21への作動油の給排態様を制御する切替弁40と、作動油を貯留する貯留部27とが設けられている。また、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの間で作動油を流通させることが可能なバイパスバルブ50と、作動油が流れる油路60とが設けられている。
【0035】
油路60は、次の各油路61〜68を有する。
(a)吸入油路61は、貯留部27と電動ポンプ24の吸入口とを互いに接続している。
(b)吐出油路62は、電動ポンプ24の吐出口と切替弁40の供給ポート73(図2)とを互いに接続している。
(c)第1供給油路63は、切替弁40の第1ポート71(図2)とパワーシリンダ21の第1油圧室21Aとを互いに接続している。すなわち、第1供給油路63は、切替弁40を介して吐出油路62と第1油圧室21Aとを互いに接続している。
(d)第2供給油路64は、切替弁40の第2ポート72(図2)とパワーシリンダ21の第2油圧室21Bとを互いに接続している。すなわち、第2供給油路64は、切替弁40を介して吐出油路62と第2油圧室21Bとを互いに接続している。
(e)排出油路65は、切替弁40の排出ポート74(図2)と貯留部27とを互いに接続している。
(f)連通油路66は、第1供給油路63と第2供給油路64とを互いに接続している。連通油路66は、第1油圧室21Aと第1油圧室21Aとを互いに連通する連通路に相当する。
(g)第3供給油路67は、吐出油路62とバイパスバルブ50のバイパス油圧室51B(図5)とを互いに接続している。
(h)環流油路68は、バイパスバルブ50のバイパス油圧室51B(図5)と排出油路65とを互いに接続している。
【0036】
パワーシリンダ21には、転舵シャフト13が挿入されるハウジング22と、転舵シャフト13に固定されるピストン23とが設けられている。ハウジング22内の空間は、ピストン23により2つの油圧室、すなわち第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに区画されている。
【0037】
作動油を送り出す電動ポンプ24には、その動力源としての電動モータ25と、電動モータ25の出力軸に連結される羽根車(図示略)を備えたポンプ26とが設けられている。電動モータ25としては、3相コイルのブラシレスモータが用いられている。
【0038】
貯留部27には、切替弁40を介してパワーシリンダ21から排出される作動油と、バイパスバルブ50から排出される作動油を貯留するオイルタンクを備えている。電動ポンプ24は、吸入油路61を介して貯留部27から作動油を吸入し、吐出油路62を介して吸入した作動油を切替弁40に吐出する。
【0039】
切替弁40は、吐出油路62、第1供給油路63、第2供給油路64、および排出油路65の接続状態を変更する可変流量バルブとして構成されている。すなわち、切替弁40は、第1供給油路63および第2供給油路64のうち、一方を吐出油路62に接続するとともに、他方を排出油路65に接続する。そして、接続状態を変更して、一方を排出油路65に接続するとともに、他方を吐出油路62に接続することにより、作動油供給先を変更する。このように、切替弁40は、作動油供給先が第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bのいずれであっても作動油が一方向に流れる共通油路である吐出油路62と、共通油路から分岐した第1分岐油路である第1供給油路63と第2分岐油路である第2供給油路64との接続状態を切り替える。さらに、作動油の流路面積を変更することにより、作動油供給先への作動油の供給量(流量)を制御する。
【0040】
連通油路66を開閉するバイパスバルブ50は、第1供給油路63と第2供給油路64の接続状態、すなわち第1油圧室21Aと第2油圧室21Bの接続状態を変更するフェールセーフバルブである。すなわち、バイパスバルブ50は、連通油路66を開放することにより、第1供給油路63と第2供給油路64とを連通することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとを互いに連通する。また、連通油路66を閉鎖することにより、第1供給油路63と第2供給油路64との連通を遮断することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断する。
【0041】
図2および図3を参照して、切替弁40の詳細な構成について説明する。
図2に示されるように、切替弁40には、各油路62〜65が接続されるハウジング42と、油路62〜65に接続される複数のポート71〜74が形成されたポート形成部材43と、ポート形成部材43に対して回転する弁体44と、弁体44を回転させるための電動モータ41とが設けられている。またこの他に、電動モータ41の出力軸と弁体44とを互いに固定するための固定部材45と、弁体44とともに回転するトーションバー46と、弁体44をハウジング42に対して支持する軸受47とが設けられている。
【0042】
ハウジング42、ポート形成部材43、および弁体44は、円筒形状の部材として構成されている。ハウジング42、ポート形成部材43、弁体44、およびトーションバー46は、同軸上に設けられている。トーションバー46は、弁体44内の空間(以下、「内部空間44S」)に配置されている。弁体44は、ポート形成部材43内の(以下、「内部空間43S」)に配置されている。ポート形成部材43は、ハウジング42内の空間に配置されている。
【0043】
切替弁40においての回転の伝達構造について説明する。
電動モータ41の出力軸は、固定部材45に固定されている。固定部材45は、弁体44に固定されている。トーションバー46の第1端部46Aは、弁体44に固定されている。トーションバー46の第2端部46Bは、ハウジング42に固定されている。弁体44は、2つの軸受47を介してハウジング42により支持されている。
【0044】
そして、このように各構成要素が組み合わせられていることにより、電動モータ41が回転するとき、電動モータ41の出力軸、固定部材45、弁体44、およびトーションバー46の第1端部46Aを含む部分が、ハウジング42およびポート形成部材43に対して一体的に回転する。また、トーションバー46においては、第1端部46Aを含む部分が第2端部46Bを含む部分に対してねじれる。
【0045】
また、トーションバー46がねじれた状態において、電動モータ41からトーションバー46に付与されるトルクがトーションバー46の復元力と同じ大きさとなったとき、弁体44等の回転が停止して、トーションバー46がねじれた状態が維持される。また、トーションバー46がねじれた状態において、電動モータ41からトーションバー46に付与されるトルクがトーションバー46の復元力よりも小さくなったとき、トーションバー46の第1端部46Aを含む部分が第2端部46Bを含む部分に対してねじれ量を小さくする方向に回転する。
【0046】
ポート形成部材43および弁体44の構成について説明する。
ポート形成部材43には、4つのポートすなわち、第1供給油路63が接続される第1ポート71、第2供給油路64が接続される第2ポート72、吐出油路62が接続される供給ポート73、および排出油路65が接続される排出ポート74が形成されている。
【0047】
第1ポート71は、ポート形成部材43の外周面に形成された第1円環溝71Aと、ポート形成部材43の内周面に形成された軸方向に延びる第1縦軸溝71Cと、第1円環溝71Aと第1縦軸溝71Cとを互いに連通する第1連通孔71Bとにより構成されている。第1円環溝71Aには第1供給油路63が接続されている。図3に示されるように、ポート形成部材43の内周面には4本の第1縦軸溝71Cが形成されている。各第1縦軸溝71Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0048】
第2ポート72は、ポート形成部材43の外周面に形成された第2円環溝72Aと、ポート形成部材43の内周面に形成された軸方向に延びる第2縦軸溝72Cと、第2円環溝72Aと第2縦軸溝72Cとを互いに連通する第2連通孔72Bとにより構成されている。第2円環溝72Aには第2供給油路64が接続されている。図3に示されるように、ポート形成部材43の内周面には4本の第2縦軸溝72Cが形成されている。各第2縦軸溝72Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0049】
供給ポート73は、ポート形成部材43の外周部に設けられた供給円環溝73Aと、供給円環溝73Aと内部空間43Sとを互いに連通する供給連通孔73Bとにより構成されている。供給円環溝73Aには吐出油路62が接続されている。
【0050】
第1円環溝71A、第2円環溝72A、および供給円環溝73Aは、ポート形成部材43の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。また、第1連通孔71B、第2連通孔72B、および供給連通孔73Bも同様に、ポート形成部材43の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。
【0051】
弁体44には、ポート形成部材43に対する弁体44の回転位置に応じて第1縦軸溝71Cまたは第2縦軸溝72Cに接続される供給弁体溝44Aおよび排出弁体溝44Bと、排出弁体溝44Bと内部空間44Sとを互いに連通する入口連通孔44Cと、排出ポート74と内部空間44Sとを互いに連通する出口連通孔44Dとが形成されている。
【0052】
図3および図4を参照して、ポート形成部材43と弁体44の関係について説明する。
切替弁40においては、ポート形成部材43に対する弁体44の回転位置に応じて、吐出油路62および排出油路65と、第1供給油路63および第2供給油路64との関係が以下のように変更される。
【0053】
図3に示されるように、弁体44の回転位置が「回転中立位置」のとき、ポート形成部材43と弁体44の隙間を介して、供給ポート73が第1ポート71と第2ポート72とに連通されるとともに、排出ポート74も第1ポート71と第2ポート72とに連通される。このように弁体44が回転中立位置に位置している態様を「中立モード」とする。
【0054】
図4(a)に示されるように、弁体44の回転位置が「第1供給位置」のとき、供給ポート73が第1ポート71に連通され、かつ排出ポート74が第2ポート72に連通される。このように弁体44が第1供給位置に位置している態様を「第1モード」とする。
【0055】
図4(b)に示されるように、弁体44の回転位置が「第2供給位置」のとき、供給ポート73と第2ポート72に連通され、かつ排出ポート74と第1ポート71に連通される。このように弁体44が第2供給位置に位置している態様を「第2モード」とする。
【0056】
制御部30による切替弁40の制御態様について説明する。
制御部30は、ステアリングホイール2の操作状態に応じて切替弁40の弁体44の位置を制御する。すなわち、ステアリングホイール2の操作が行なわれないとき、制御部30は、切替弁40の電動モータ41を駆動させずに、切替弁40を中立モードとする。また、ステアリングホイール2が右方向に回転操作されるとき、電動モータ41を駆動させて切替弁40を第1モードとする。また、ステアリングホイール2が左方向に回転操作されるとき、電動モータ41を駆動させて切替弁40を第2モードとする。
【0057】
図3および図4を参照して、切替弁40内の作動油の流れについて説明する。なお、ここでの作動油の流れは、バイパスバルブ50が第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通を遮断していることを前提としている。
【0058】
(A)中立モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図3に示されるように、第1モードまたは第2モードから中立モードに変更されたとき、弁体44の回転位置が第1供給位置または第2供給位置から回転中立位置に変更される。これにより、第1ポート71および第2ポート72がそれぞれ隙間を介して供給ポート73および内部空間43S(排出ポート74)に接続される。
【0059】
中立モードにおいて電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73を介して、第1ポート71および第2ポート72に少量の作動油が供給され、かつ第1ポート71および第2ポート72から内部空間43S(排出ポート74)に少量の作動油が排出される。
【0060】
(B)第1モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図4(a)に示されるように、中立モードから第1モードに変更されたとき、弁体44が矢印Y1の方向に回転することにより、弁体44の回転位置が回転中立位置から第1供給位置に変更される。これにより、供給ポート73と第1ポート71とが互いに連通し、かつ排出ポート74と第2ポート72とが互いに連通する。
【0061】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73、第1ポート71、第1供給油路63を介して、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aに供給される。また、図4(a)の矢印R1で示されるように、切替弁40内においては、供給連通孔73B、供給弁体溝44A、第1縦軸溝71C、第1連通孔71B、第1円環溝71Aの順に作動油が流れる。
【0062】
パワーシリンダ21の第2油圧室21Bの作動油は、第2供給油路64、第2ポート72、内部空間44S、排出ポート74、および排出油路65を介して、貯留部27に排出される。また、図4(a)の矢印R2で示されるように、切替弁40内においては、第2円環溝72A、第2連通孔72B、第2縦軸溝72C、排出弁体溝44B、入口連通孔44C、および内部空間44Sの順に作動油が流れる。
【0063】
(C)第2モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図4(b)に示されるように、中立モードから第2モードに変更されたとき、弁体44が矢印Y2の方向に回転することにより、弁体44の回転位置が回転中立位置から第2供給位置に変更される。これにより、供給ポート73と第2ポート72とが互いに連通し、かつ排出ポート74と第1ポート71とが互いに連通する。
【0064】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、吐出油路62、供給ポート73、第2ポート72、第2供給油路64を介して、パワーシリンダ21の第2油圧室21Bに供給される。また、図4(b)の矢印R3で示されるように、切替弁40内においては、供給連通孔73B、供給弁体溝44A、第2縦軸溝72C、第2連通孔72B、第2円環溝72Aの順に作動油が流れる。
【0065】
パワーシリンダ21の第1油圧室21Aの作動油は、第1供給油路63、第1ポート71、内部空間44S、排出ポート74、および排出油路65を介して、貯留部27に排出される。また、図4(b)の矢印R4で示されるように、切替弁40内においては、第1円環溝71A、第1連通孔71B、第1縦軸溝71C、排出弁体溝44B、入口連通孔44C、および内部空間44Sの順に作動油が流れる。
【0066】
パワーシリンダ21への作動油の供給量の調整について説明する。
制御部30は、電動ポンプ24の回転速度(すなわち電動モータ25の回転速度)および切替弁40の開度の制御により、パワーシリンダ21の第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bへの作動油の供給量を調整する。作動油の供給量は、電動ポンプ24の回転速度が大きくなるにつれて多くなる。また、切替弁40の開度が大きくなるにつれて多くなる。
【0067】
切替弁40の開度には、以下の4種類の開度が含まれる。
(a)第1油圧室21Aへの作動油の供給量を変更する第1供給開度。
(b)第2油圧室21Bへの作動油の供給量を変更する第2供給開度。
(c)第1油圧室21Aからの作動油の排出量を変更する第1排出開度。
(d)第2油圧室21Bからの作動油の排出量を変更する第2排出開度。
【0068】
上記の各開度は、具体的には切替弁40の以下の部分に相当する。
第1供給開度は、第1ポート71の第1縦軸溝71Cと供給弁体溝44Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2供給開度は、第2ポート72の第2縦軸溝72Cと供給弁体溝44Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第1排出開度は、第1ポート71の第1縦軸溝71Cと排出弁体溝44Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2排出開度は、第2ポート72の第2縦軸溝72Cと排出弁体溝44Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。
【0069】
弁体44が回転中立位置から図4(a)に示す矢印Y1の方向に回転するにつれて、第1供給開度が大きくなるとともに、第2排出開度が大きくなる。また、弁体44が回転中立位置から図4(b)に示す矢印Y2の方向に回転するにつれて、第2供給開度が大きくなるとともに、第2排出開度が大きくなる。
【0070】
図5および図6を参照して、バイパスバルブ50の詳細な構成について説明する。
バイパスバルブ50は、連通油路66の一部を構成するポート81,82が形成されたハウジング51を有している。ハウジング51の内部には、弁体収納室51Aとバイパス油圧室51Bと電磁石収納室51Cとが形成されている。バイパス油圧室51Bは弁体収納室51Aの上方において隣り合って設けられている。電磁石収納室51Cは弁体収納室51Aの下方において隣り合って設けられている。
【0071】
弁体収納室51Aには、磁性体である柱状の弁体52が設けられている。弁体52は、弁体収納室51Aの内部、すなわちハウジング51の内部において上下方向に移動可能に設けられている。第1供給油路63に接続される第1ポート81と、第2供給油路64に接続される第2ポート82とは、弁体収納室51Aを介して連通する。
【0072】
バイパス油圧室51Bには、磁性体である弁体52を上方に吸引する永久磁石53と、永久磁石53が固定されている直動体54と、図5中の矢印F1で示す方向に移動させる力を永久磁石53に付与する弾性部材であるコイルばね55とが設けられている。バイパス油圧室51Bには、吐出油路62のうちの電動ポンプ24と切替弁40との間の部分に接続された第3分岐油路である第3供給油路67が接続されている。さらに、排出油路65のうちの切替弁40と貯留部27との間の部分に接続された排出油路である環流油路68が接続されている。バイパス油圧室51Bは、永久磁石53を移動させる油圧を永久磁石53に付与するために設けられている。
【0073】
電動ポンプ24から吐出された作動油の一部は、吐出油路62の一部、第3供給油路67を介して、バイパスバルブ50のバイパス油圧室51Bに供給される。バイパス油圧室51Bに供給された50に流入した作動油の油圧により、図6中の矢印F2で示す方向に移動させる力が直動体54に付与される。バイパス油圧室51Bの作動油は、環流油路68、排出油路65の一部を介して、貯留部27に排出される。すなわち、環流油路68は、バイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出する。
【0074】
バイパスバルブ50においては、電動ポンプ24による作動油の吐出に応じて、永久磁石53の位置が以下のように変更される。
図5に示されるように、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53と直動体54はコイルばね55により図中の矢印F1で示す方向に押さえつけられる。このとき永久磁石53は、弁体収納室51Aの直上に位置して、弁体収納室51A内の弁体52を磁力により吸引する。このように永久磁石53が弁体52を吸引する位置を「吸引位置」とする。
【0075】
図6に示されるように、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、永久磁石53と直動体54は作動油の油圧により図中の矢印F2で示す方向に移動する。このとき永久磁石53は、吸引位置から離れた位置であって、弁体52を吸引しない位置に位置する。このように永久磁石53が弁体52を吸引しない位置を「離間位置」とする。
【0076】
また、バイパスバルブ50においては、永久磁石53の位置に応じて、弁体52の位置および各油圧室21A,21Bの関係が以下のように変更される。
図5に示されるように、永久磁石53が吸引位置に位置するとき、第1ポート81と第2ポート82とが連通される位置であって、連通油路66を開放する位置に弁体52が吸引される。このとき第1供給油路63と第2供給油路64とが連通油路66を介して連通するため、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとが互いに連通する。このように弁体52が連通油路66を開放する位置を「開放位置」とする。
【0077】
図6に示されるように、永久磁石53が離間位置に位置するとき、第1ポート81と第2ポート82との連通が閉鎖される位置であって、連通油路66を閉鎖する位置に弁体52が重力により移動する。このとき第1供給油路63と第2供給油路64とが連通しない。このように弁体52が連通油路66を閉鎖する位置を「閉鎖位置」とする。
【0078】
電磁石収納室51Cには、磁性体である弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石である電磁石56が設けられている。電磁石56は、弁体52を閉鎖位置に吸引する磁力を発生させるコイル57と、コイル57に電流を供給する電源58と、コイル57と電源58とが接続された回路の開閉を行うスイッチ59とを備えている。電磁石56は閉鎖位置への弁体52の移動を補助するために設けられている。
【0079】
電磁石56の動作について説明する。
電磁石56のスイッチ59は、図1の制御部30により制御される。弁体52を開放位置から閉鎖位置に移動させるとき、すなわち電動ポンプ24の駆動開始時である作動油の供給開始時、制御部30はスイッチ59をオンにする。スイッチ59がオンになると、直流電源である電源58からコイル57に電流が流れて弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引する磁力が発生する。制御部30は、作動油の供給開始時から所定時間後にスイッチ59をオフにする。したがって、弁体52が閉鎖位置に移動した後においてコイル57に電流が継続して流されることはない。
【0080】
(作用)
バイパスバルブ50は以下の作用を奏する。
電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、コイルばね55により離間位置から吸引位置に向けて作用する力が永久磁石53に付与され、バイパス油圧室51Bにおいて永久磁石53に油圧は付与されない。バイパス油圧室51Bの作動油から永久磁石53に付与される油圧がコイルばね55の力よりも小さいとき、永久磁石53が吸引位置に位置する。すなわち、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53が吸引位置に位置することにより、弁体52が開放位置に吸引されて連通油路66が開放される。
【0081】
一方、電動ポンプ24からバイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、バイパス油圧室51Bにおいて永久磁石53に油圧が付与される。このとき、バイパス油圧室51Bの作動油から永久磁石53に付与される油圧が、コイルばね55の力よりも大きいため、永久磁石53を離間位置から吸引位置に移動させるための力がコイルばね55により付与されて、永久磁石53が離間位置に移動する。そして、この油圧により永久磁石53が離間位置に位置するため、弁体52が永久磁石53により吸引されない。これにより、弁体52が閉鎖位置に位置することにより連通油路66が閉鎖される。
【0082】
(実施形態の効果)
本実施形態の油圧パワーステアリング装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)油圧パワーステアリング装置1は、電動ポンプ24と、第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bを有するパワーシリンダ21と、連通油路66と、バイパスバルブ50とを備えている。バイパスバルブ50は、開放位置および閉鎖位置に移動可能な弁体52と、永久磁石53と、バイパス油圧室51Bとを備えている。そして、永久磁石53は、弁体52を開放位置に吸引する吸引位置および弁体52を離間位置に移動可能であって、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されているとき、永久磁石53が離間位置に位置し、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、永久磁石53が吸引位置に位置する。したがって、上記作用により、バイパスバルブ50に継続して電力を供給しなくとも連通油路66が閉鎖された状態を維持することができる。
【0083】
(2)油圧パワーステアリング装置1において、永久磁石53が離間位置に位置するとき、弁体52は重力により開放位置から閉鎖位置に移動する。したがって、弁体52を開放位置から閉鎖位置に移動させるための力として重力を利用しているため、弁体52を移動させるために重力を利用しない構成と比較して、弁体52を移動させるために消費されるエネルギーを少なくすることができる。
【0084】
(3)油圧パワーステアリング装置1において、バイパスバルブ50は電磁石56をさらに備える。このため、バイパス油圧室51Bに作動油が供給されていないとき、電磁石56の磁力により弁体52が開放位置から閉鎖位置に移動する。このため、電磁石56が設けられていない構成と比較して、弁体52をより確実に閉鎖位置に移動させることができる。
【0085】
(4)油圧パワーステアリング装置1において、バイパスバルブ50は閉鎖用磁石として電磁石56を備えているため、閉鎖用磁石に供給する電流を制御することにより、弁体52を開放位置から閉鎖位置に吸引する力を弁体52に作用させるか否かを選択することができる。このため、弁体52を開放位置に移動させる必要があるときに、閉鎖用磁石の磁力による弁体52の移動の妨害を抑制することができる。
【0086】
(5)油圧パワーステアリング装置1は、吐出油路62と第1供給油路63と第2供給油路64と切替弁40と第3供給油路67とを備える。そして、切替弁40は、第1供給油路63が吐出油路62に接続され、かつ第2供給油路64が吐出油路62から遮断された第1切替状態と、第1供給油路63が吐出油路62から遮断され、かつ第2供給油路64が吐出油路62に接続された第2切替状態とを切り替える。したがって、吐出油路62および第1供給油路63または第2供給油路64を介して第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bの一方に作動油が供給されるとき、吐出油路62および第3供給油路67を介してバイパス油圧室51Bに作動油が供給される。このため、永久磁石53が離間位置に位置することにより、弁体52が閉鎖位置に位置する。これにより、連通油路66が閉鎖されるため、第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに圧力差を生じさせることができる。
【0087】
(6)油圧パワーステアリング装置1は、貯留部27と排出油路である環流油路68とを備え、貯留部27の作動油が電動ポンプ24によりパワーシリンダ21に供給される。したがって、パワーシリンダ21から排出される作動油およびバイパス油圧室51Bから排出される作動油が共通の貯留部27に貯留されるため、1つの電動ポンプ24によりパワーシリンダ21およびバイパス油圧室51Bのそれぞれと貯留部27との間において作動油を循環させることができる。
【0088】
(7)油圧パワーステアリング装置1は、離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与するコイルばね55を備える。このため、コイルばね55が設けられていない構成(例えば、重力を利用して離間位置から吸引位置に永久磁石53を移動させる構成)と比較して、連通油路66を速やかに開放することができる。
【0089】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を組み合わせて実施することもできる。
【0090】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、コイルばね55により永久磁石53が図中の矢印F1の方向に押さえつけられているが、コイルばね55以外の弾性部材により離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与することもできる。
【0091】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、弾性部材により離間位置から吸引位置に向けて作用する力を永久磁石53に付与しているが、離間位置から吸引位置に向けて作用する力として重力を利用することもできる。この場合、弁体52を吸引する永久磁石は、バイパス油圧室内において上下方向に移動可能に設けられる。
【0092】
・上記実施形態(図5)の油圧パワーステアリング装置1は、バイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出する環流油路68を備えているが、環流油路68を介してバイパス油圧室51Bの作動油を貯留部27に排出しない構成を採用することもできる。この場合、電動ポンプ24の駆動停止時である作動油の供給停止時、バイパス油圧室51Bに供給された作動油は、第3供給油路67および吐出油路62に戻る。
【0093】
・上記実施形態(図6)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石として電磁石56を備えているが、閉鎖用磁石を例えば永久磁石により構成することもできる。この場合、閉鎖用磁石として設けられる永久磁石は、弁体52が開放位置に吸引されるとき、弁体52を吸引しない位置に設けられることが好ましい。
【0094】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石として電磁石56を備えているが、閉鎖用磁石に代えて、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける開放用磁石を備えることもできる。開放用磁石としては電磁石または永久磁石を用いることができる。以上のように、バイパスバルブ50が、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備える構成によれば、永久磁石53とは別に、開放用磁石の磁力により弁体52を閉鎖位置から開放位置に移動させること、または、開放位置への移動の補助が可能となる。このため、例えば、永久磁石53を離間位置から吸引位置に移動させることができなくなる異常が生じたとしても、弁体52を開放位置に移動させることにより連通油路66を開放することができる。
【0095】
また、バイパスバルブ50は、上記開放用磁石として電磁石を備えることが好ましい。開放用磁石として電磁石を備えるバイパスバルブ50においては、弁体52を閉鎖位置から開放位置に移動させるとき、すなわち電動ポンプ24の駆動停止時である作動油の供給停止時に、直流電源である電源から電磁石のコイルに電流を流して、弁体52を閉鎖位置から開放位置に吸引する磁力を発生させる。コイルへの通電は、電磁石56と同様に、コイルと電源を接続するスイッチの制御により行うことが好ましく、作動油の供給停止時から所定時間後にスイッチはオフにされることにより、弁体52が開放位置に移動した後においてコイルに電流が継続して流されることはない。以上の構成によれば、開放用磁石に供給する電流を制御することにより、弁体52を閉鎖位置から開放位置に斥ける力を弁体52に作用させるか否かを選択することができる。このため、弁体52を閉鎖位置に移動させる必要があるときに、開放用磁石の磁力による弁体52の移動の妨害を抑制することができる。
【0096】
なお、開放用磁石を例えば永久磁石53と異なる他の永久磁石により構成することもできる。この場合、開放用磁石として設けられる永久磁石は、弁体52を閉鎖位置に位置させるとき、弁体52を斥けない位置に設けられることが好ましい。
【0097】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、柱状の磁性体からなる弁体52を備えているが、図7に示されるように、球状の磁性体からなる弁体90を備えることもできる。図7は、弁体収納室51Aにおける弁体90の移動方向から見たバイパスバルブ50の断面図である。このような構成によれば、柱状の弁体52と比較して、弁体と弁体収納室51Aとの摩擦抵抗を低減することができる。
【0098】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、磁性体からなる弁体52を備えているが、図8に示されるように、永久磁石53により吸引される磁性体91と、磁性体91が固定された直動体92によりバイパスバルブ50の弁体を構成することもできる。この場合、弁体の直動体92により連通油路66が開放および閉鎖される。すなわち、磁性体自身により連通油路66の開放および閉鎖が行われなくてもよい。
【0099】
・上記実施形態(図5)の電磁石56は、コイル57に電流を供給する電源58を備えているが、バイパスバルブ50の外部に電流をコイル57に供給する電源を設けることもできる。例えば、車両に搭載されるバッテリーから、コイル57に電流を供給することもできる。
【0100】
・上記実施形態(図5)のバイパスバルブ50は、閉鎖用磁石である電磁石56が設けられているが、電磁石56を備えない構成を採用することもできる。すなわち、閉鎖用磁石を省くこともできる。この場合、バイパスバルブ50の小型化を図ることができる。
【0101】
・上記実施形態(図2)の油圧パワーステアリング装置1は、ねじれた状態のトーションバー46の復元力により第1供給位置および第2供給位置から回転中立位置に弁体44が回転可能であるが、トーションバー46を省略して、電動モータ41の制御により第1供給位置および第2供給位置から回転中立位置に弁体44を回転させることもできる。
【符号の説明】
【0102】
1…油圧パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…タイロッド、4…転舵輪、5…車速センサ、10…ステアリング装置、11…ステアリングシャフト、12…ラックアンドピニオン機構、13…転舵シャフト、14…トルクセンサ、15…操舵角センサ、20…アシスト装置、21…パワーシリンダ、21A…第1油圧室、21B…第2油圧室、22…ハウジング、23…ピストン、24…電動ポンプ(オイルポンプ)、25…電動モータ、26…ポンプ、27…貯留部、30…制御部、40…切替弁、41…電動モータ、42…ハウジング、43…ポート形成部材、43S…内部空間、44…弁体、44A…供給弁体溝、44B…排出弁体溝、44C…入口連通孔、44D…出口連通孔、44S…内部空間、45…固定部材、46…トーションバー、46A…第1端部、46B…第2端部、47…軸受、50…バイパスバルブ、51…ハウジング、51A…弁体収納室、51B…バイパス油圧室、51C…電磁石収納室、52…弁体(磁性体)、53…永久磁石、54…直動体、55…コイルばね(弾性部材)、56…電磁石(閉鎖用磁石)、57…コイル、58…電源、59…スイッチ、60…油路、61…吸入油路、62…吐出油路(共通油路)、63…第1供給油路(第1分岐油路)、64…第2供給油路(第2分岐油路)、65…排出油路、66…連通油路(連通路)、67…第3供給油路(第3分岐油路)、68…環流油路(排出油路)、71…第1ポート、71A…第1円環溝、71B…第1連通孔、71C…第1縦軸溝、72…第2ポート、72A…第2円環溝、72B…第2連通孔、72C…第2縦軸溝、73…供給ポート、73A…供給円環溝、73B…供給連通孔、74…排出ポート、81…第1ポート、82…第2ポート、90…弁体、91…磁性体、92…直動体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を送り出すオイルポンプと、前記作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記連通路を開放する開放位置および前記連通路を閉鎖する閉鎖位置に移動可能な磁性体と、この磁性体を吸引する永久磁石と、この永久磁石を移動させる油圧を付与するためのバイパス油圧室とを備えること、
前記永久磁石は、前記磁性体を前記開放位置に吸引する吸引位置および前記磁性体を前記開放位置に吸引しない離間位置に移動可能であること、
ならびに、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されているとき、前記永久磁石が前記離間位置に位置し、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されていないとき、前記永久磁石が前記吸引位置に位置すること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記永久磁石が前記離間位置に位置するとき、前記磁性体は重力により前記開放位置から前記閉鎖位置に移動する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記開放位置から前記閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石をさらに備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記閉鎖用磁石として電磁石を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記閉鎖位置から前記開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記開放用磁石として電磁石を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記オイルポンプの吐出口に接続される共通油路と、この共通油路と前記第1油圧室とを互いに接続する第1分岐油路と、前記共通油路と前記第2油圧室とを互いに接続する第2分岐油路と、前記共通油路と前記第1分岐油路および前記第2分岐油路との接続状態を切り替える切替弁と、前記共通油路のうちの前記オイルポンプと前記切替弁との間の部分と前記バイパス油圧室とを互いに接続する第3分岐油路とを備えること、
ならびに、前記切替弁は、前記第1分岐油路が前記共通油路に接続され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路から遮断された第1切替状態と、前記第1分岐油路が前記共通油路から遮断され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路に接続された第2切替状態とを切り替えること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記パワーシリンダから排出される前記作動油を貯留する貯留部と、前記バイパス油圧室の前記作動油を前記貯留部に排出する排出油路とを備えること、
ならびに、前記貯留部の作動油が前記オイルポンプにより前記パワーシリンダに供給されること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記離間位置から前記吸引位置に向けて作用する力を前記永久磁石に付与する弾性部材を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項1】
作動油を送り出すオイルポンプと、前記作動油が供給される第1油圧室および第2油圧室を有するパワーシリンダと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通路と、この連通路を開放および閉鎖するバイパスバルブとを備える油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記連通路を開放する開放位置および前記連通路を閉鎖する閉鎖位置に移動可能な磁性体と、この磁性体を吸引する永久磁石と、この永久磁石を移動させる油圧を付与するためのバイパス油圧室とを備えること、
前記永久磁石は、前記磁性体を前記開放位置に吸引する吸引位置および前記磁性体を前記開放位置に吸引しない離間位置に移動可能であること、
ならびに、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されているとき、前記永久磁石が前記離間位置に位置し、前記バイパス油圧室に前記作動油が供給されていないとき、前記永久磁石が前記吸引位置に位置すること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記永久磁石が前記離間位置に位置するとき、前記磁性体は重力により前記開放位置から前記閉鎖位置に移動する
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記開放位置から前記閉鎖位置に吸引するための閉鎖用磁石をさらに備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記閉鎖用磁石として電磁石を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記磁性体を前記閉鎖位置から前記開放位置に斥ける開放用磁石をさらに備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記バイパスバルブは、前記開放用磁石として電磁石を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記オイルポンプの吐出口に接続される共通油路と、この共通油路と前記第1油圧室とを互いに接続する第1分岐油路と、前記共通油路と前記第2油圧室とを互いに接続する第2分岐油路と、前記共通油路と前記第1分岐油路および前記第2分岐油路との接続状態を切り替える切替弁と、前記共通油路のうちの前記オイルポンプと前記切替弁との間の部分と前記バイパス油圧室とを互いに接続する第3分岐油路とを備えること、
ならびに、前記切替弁は、前記第1分岐油路が前記共通油路に接続され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路から遮断された第1切替状態と、前記第1分岐油路が前記共通油路から遮断され、かつ前記第2分岐油路が前記共通油路に接続された第2切替状態とを切り替えること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記パワーシリンダから排出される前記作動油を貯留する貯留部と、前記バイパス油圧室の前記作動油を前記貯留部に排出する排出油路とを備えること、
ならびに、前記貯留部の作動油が前記オイルポンプにより前記パワーシリンダに供給されること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記離間位置から前記吸引位置に向けて作用する力を前記永久磁石に付与する弾性部材を備える
ことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−60104(P2013−60104A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199721(P2011−199721)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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