説明

油圧作業機

【課題】排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際のエンジンに対する負荷を増加させるために用いられるエネルギを、電力として回収することができる油圧作業機の提供。
【解決手段】本発明は、エンジン2に作用する負荷を増加させて、排気ガス温度を上昇させる排気ガス温度上昇処理手段が、エンジン2に接続した電動アシストモータ5と、この電動アシストモータ5のトルクを調整するインバータ20を含むと共に、アクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態にあるかどうか判定する第1判定手段と、排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段とを有し、第1判定手段で非供給状態と判定され、しかも第2判定手段でフィルタに目詰まりを生じていると判定されたとき、エンジン2に作用する負荷を増加させるように電動アシストモータ5を駆動させ、発電させるメインコントローラ15を含む構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンで生じた排気ガス中の粒子状物質を捕集する排気ガス浄化装置を備えた油圧ショベル等の油圧作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。この特許文献1に示される従来技術は、エンジンと、このエンジンの動力を伝達されて駆動する可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプから吐出される圧油で駆動する油圧アクチュエータとを備えている。また、可変容量型油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御し、可変容量型油圧ポンプから吐出された圧油を油圧アクチュエータに供給する供給状態と、油圧アクチュエータに供給せずに圧油を作動油タンクに戻す非供給状態に切り換え可能なアクチュエータ制御用制御弁と、エンジンで生じた排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気ガス浄化装置とを備えている。さらに、この従来技術は、アクチュエータ制御用制御弁が前述の非供給状態にあって、しかも排気ガス浄化装置のフィルタに目詰まりを生じているときに、エンジンに作用する負荷を増加させて、排気ガス温度を粒子状物質が燃焼するのに必要な温度まで上昇させる処理を行なう排気ガス温度上昇処理手段を備えている。この排気ガス温度上昇処理手段は、可変容量型油圧ポンプから吐出された圧油を作動油タンクに導く管路を連通、あるいは遮断するように開閉可能な切換弁を含む構成になっている。
【0003】
この従来技術は、アクチュエータ用制御弁が非供給状態にあって、しかも排気ガス浄化装置のフィルタに目詰まりを生じているときには、切換弁が閉位置に切り換え制御され、これにより可変容量型油圧ポンプと作動油タンクとを連絡する管路が遮断され、切換弁と可変容量型油圧ポンプとを連絡する管路部分の圧力、すなわちポンプ吐出圧が高くなって、エンジンに作用する負荷が増加する。これによってエンジンの排気ガス温度が上昇して、排気ガス中に含まれる粒子状物質が燃焼するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3073380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、排気ガス中の粒子状物質の燃焼が必要なときには、エンジンに対する負荷を増加させて排気ガスの温度を上昇させ、排気ガス中の粒子状物質を燃焼させることができるが、アクチュエータ制御用制御弁の非供給時は、油圧アクチュエータの作動による作業が実施されない非作業時であり、このような非作業時にエンジンに対する負荷を増加させ、エンジンの出力を大きくすることは、省エネの観点から言えば望ましいものではない。このようなことから、アクチュエータ制御用制御弁の非供給時に粒子状物質を燃焼させるためにエンジンに対する負荷を増加させる際のエネルギロスを少なくすることが、従来から要望されていた。
【0006】
また、前述のようにしてエンジンに対する負荷を増加させて排気ガス温度を上昇させる際には、粒子状物質が燃焼するのに足る必要最低温度まで排気ガス温度を上昇させることが望ましい。しかし、従来技術におけるように切換弁の閉制御によって管路部分の圧力を高める技術では、エンジンに対する負荷が必要以上に大きくなり、排気ガス温度が必要最低温度より高い温度まで上昇してしまう傾向にあった。この点でも従来技術はエネルギロスを生じやすかった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際のエンジンに対する負荷を増加させるために用いられるエネルギを、電力として回収することができる油圧作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンの動力を伝達されて駆動する可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプから吐出される圧油で駆動する油圧アクチュエータと、前記可変容量型油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御し、前記可変容量型油圧ポンプから吐出された圧油を前記油圧アクチュエータに供給する供給状態と、前記油圧アクチュエータに供給せずに圧油を作動油タンクに戻す非供給状態に切り換え可能なアクチュエータ制御用制御弁と、前記エンジンで生じた排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気ガス浄化装置と、前記アクチュエータ制御用制御弁が前記非供給状態にあって、しかも前記フィルタに目詰まりを生じているときに、前記エンジンに作用する負荷を増加させて、排気ガス温度を前記粒子状物質が燃焼するのに必要な温度まで上昇させる処理を行なう排気ガス温度上昇処理手段とを備えた油圧作業機において、前記排気ガス温度上昇処理手段は、前記エンジンの出力軸に接続された電動アシストモータと、この電動アシストモータのトルクを調整するインバータと、このインバータを制御するインバータ制御装置とを含むと共に、前記アクチュエータ制御用制御弁が前記非供給状態にあるかどうか判定する第1判定手段と、前記排気ガス浄化装置の前記フィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段とを有し、前記第1判定手段で前記非供給状態と判定され、しかも前記第2判定手段で前記フィルタに目詰まりを生じていると判定されたとき、前記エンジンに作用する負荷を増加させるように前記電動アシストモータを駆動させ、この電動アシストモータによって発電させる制御信号を前記インバータ制御装置に出力するメインコントローラを含むことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、メインコントローラの第1判定手段でアクチュエータ制御用制御弁が非供給状態、すなわち当該油圧作業機が作業を実施していない非作業状態にあると判定され、第2判定手段で排気ガス浄化装置のフィルタに目詰まりを生じていることが判定されたとき、メインコントローラは、エンジンに作用する負荷を増加させるように電動アシストモータを駆動させる。このとき電動アシストモータによって発電が行なわれる。したがって、その発電による電力、すなわち排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際のエンジンに対する負荷を増加させるために用いられるエネルギを、電力として回収することができ、その電力を当該油圧作業機の駆動のために活用することができる。また、排気ガス中の粒子状物質が燃焼するに足る最低の排気ガス温度、すなわち必要最低温度は、エンジンに対する負荷の大きさに依存するが、エンジンに対する負荷の大きさは電動アシストモータのトルク制御により高精度に制御することができる。すなわち本発明は、前述のようにして排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際に、粒子状物質を燃焼させるに足る必要最低温度を維持できるようにエンジンに対する負荷を高精度に制御することができる。
【0010】
また本発明は、前記発明において、前記電動アシストモータで発生させた電力を蓄えるキャパシタを備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、キャパシタに蓄えられた電力を、インバータを介して電動アシストモータに供給することにより、エンジンの駆動補助のために電動アシストモータを駆動させることができる。
【0011】
また本発明は、前記発明において、前記排気ガス浄化装置に設けられ、前記排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる抵抗線と、前記インバータと、前記キャパシタ及び前記抵抗線のいずれかとを選択的に接続する電流分岐装置と、前記メインコントローラに接続され、前記電流分岐装置の作動を制御する分岐制御装置とを備えると共に、前記メインコントローラは、前記キャパシタが過充電かどうか判定する第3判定手段を含み、この第3判定手段で前記キャパシタが過充電であると判定されたとき、前記メインコントローラは、前記インバータと前記抵抗線とを接続させるように前記分岐制御装置を制御する処理を行なうことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、キャパシタの蓄電容量が限界容量を超えたときには、電動アシストモータで発生した電力によって、排気ガス浄化装置に設けた抵抗線を発熱させることができる。したがって、この抵抗線の発熱によっても排気ガス中の粒子状物質を燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、排気ガス温度上昇処理手段が、エンジンの出力軸に接続された電動アシストモータと、この電動アシストモータのトルクを調整するインバータと、このインバータを制御するインバータ制御装置と、このインバータ制御装置を制御するメインコントローラとを含む構成にしてあることから、排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際のエンジンに対する負荷を増加させるために用いられるエネルギを電動アシストモータの発電により得られる電力として回収することができる。したがって、この電力を当該油圧作業機の駆動に活用させることができ、粒子状物質を燃焼させるためにエンジンに対する負荷を増加させる際のエネルギロスを従来に比べて少なくすることができる。また、排気ガス中の粒子状物質の燃焼に際して、インバータを介して電動アシストモータを制御することによってエンジンの出力を排気ガス中の粒子状物質を燃焼させるに足る必要最低温度とするように高精度に制御することができる。この点でも、粒子状物質を燃焼させるためにエンジンに対する負荷を増加させる際のエネルギロスを従来に比べて少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】油圧作業機の一実施形態である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る油圧ショベルに備えられる駆動装置を示す回路図である。
【図3】図2に示す駆動装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す駆動装置に備えられるメインコントローラにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る油圧作業機の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図1は油圧作業機の一実施形態である油圧ショベルを示す側面図である。この図1に示すように、本実施形態に係る油圧ショベルは、走行体30と、この走行体30上に配置される旋回体31と、この旋回体31に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置32とを備えている。作業装置32は、旋回体31に上下方向の回動可能に取り付けられるブーム33と、このブーム33の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるアーム34と、このアーム34の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるバケット35とを含んでいる。また、作業装置32は、ブーム33を作動させるブームシリンダ33a、アーム34を作動させるアームシリンダ34a、バケット35を作動させるバケットシリンダ35a等の油圧シリンダ、すなわち油圧アクチュエータを含んでいる。旋回体31の前側位置には運転室36を配置してあり、後側位置にはカウンタウエイト37を配置してある。運転室36とカウンタウエイト37の間には、後述するエンジン2や可変容量型油圧ポンプ4等が収容される機械室38を配置してある。
【0017】
図2は本実施形態に係る油圧ショベルに備えられる駆動装置を示す回路図、図3は図2に示す駆動装置の要部構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、本実施形態に係る油圧ショベルに備えられる駆動装置1は、エンジンコントローラ3により燃料噴射量を電子制御されるエンジン2と、このエンジン2の動力を伝達されて駆動される可変容量型油圧ポンプ4、及びパイロットポンプ6とを備えている。また、駆動装置1は、可変容量型油圧ポンプ4から吐出される圧油で駆動する油圧アクチュエータ7と、可変容量型油圧ポンプ4から油圧アクチュエータ7に供給される圧油の流れを制御し、可変容量型油圧ポンプ4から吐出された圧油を油圧アクチュエータ7に供給する供給状態と、油圧アクチュエータ7に供給せずに圧油を作動油タンク9に戻す非供給状態に切り換え可能なアクチュエータ制御用制御弁8とを備えている。ここで、当該油圧ショベルには、前述したブームシリンダ33a、アームシリンダ34a等の油圧シリンダの他、図示しない旋回モータ、走行モータ等の各種の油圧アクチュエータが備えられているが、説明を容易にするために1つの油圧アクチュエータ7だけを示してある。これに伴って実際は各油圧アクチュエータ毎に設けられるアクチュエータ制御用制御弁も、説明を容易にするために1つのアクチュエータ制御用制御弁8だけを示してある。
【0019】
アクチュエータ制御用制御弁8は3位置弁である。これら3つの弁位置のうちの中立位置Sのときにアクチュエータ制御用制御弁8は、同図1に示すように可変容量型油圧ポンプ4から吐出された圧油を作動油タンク9に戻す非供給状態となり、中立位置Sの左右両側の弁位置L,Rのそれぞれのときに可変容量型油圧ポンプ4から吐出された圧油を油圧アクチュエータ7に供給する供給状態となる。
【0020】
アクチュエータ制御用制御弁8は油圧パイロット弁である。このアクチュエータ制御用制御弁8に与えるパイロット圧力は、パイロット弁を含む操作装置10によって、パイロットポンプ6の吐出圧を一次圧として生成される。アクチュエータ制御用制御弁8は操作装置10から第1パイロットライン11を介してパイロット圧力が第1受圧部8aに与えられることによって、中立位置Sから弁位置L方向に切り換わり、逆に、操作装置10により生成されたパイロット圧力を第2パイロットライン12を介して第2受圧部8bに与えることによって、中立位置Sから弁位置Rに切り換わる。
【0021】
第1,第2パイロットライン11,12は、高圧選択弁13に接続されている。高圧選択弁13が選択した高圧側の圧力は、圧力センサ14により検出される。この圧力センサ14は検出圧力Ppをパイロット圧力信号(電気信号)に変換するようになっていて、このパイロット圧力信号はメインコントローラ15に入力されるようになっている。
【0022】
エンジン2には、排気ガスを当該油圧ショベルの外部に導く排気管16が設けられている。この排気管16の途中には、エンジン2における燃焼で生じた排気ガス中の粒子状物質をフィルタにより捕集する排気ガス浄化装置17が設けられている。
【0023】
排気管16には、排気ガス浄化装置17のフィルタの目詰まりを検出する検出手段、すなわち、上流側の排気ガス圧と下流側の排気ガス圧の差圧を検出する差圧センサ18が設けられている。排気ガス浄化装置17のフィルタの目詰まり量が増加すると、排気ガスの流路抵抗が増加して上流側の排気ガス圧が下流側の排気ガス圧よりも高くなるため、差圧センサ18は上流側の排気ガス圧が下流側の排気ガス圧よりも高い圧力であることを示す差圧を検出する。この差圧センサ18は、検出差圧ΔPeを差圧信号(電気信号)に変換するようになっている。この差圧信号は、メインコントローラ15に入力される。
【0024】
可変容量型油圧ポンプ4は、押し退け容積を可変にする押し退け容積可変機構部4aと、この押し退け容積可変機構部4aを制御する油圧パイロット式のレギュレータ4bとを有する。レギュレータ4bに与えるパイロット圧力は、押し退け容積制御用制御弁19により生成される。この押し退け容積制御用制御弁19はパイロットポンプ6の吐出圧を一次圧として、そのパイロット圧力を生成する。また、この押し退け容積制御用制御弁19は電磁弁であり、メインコントローラ15からの押し退け容積制御信号(電流)に応じて、レギュレータ4bに与えるパイロット圧力を変化させる。
【0025】
また、本実施形態に係る油圧ショベルは、アクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態にあって、しかも排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じているときに、エンジン2に作用する負荷を増加させて、排気ガス温度を、排気ガス中に含まれる粒子状物質が燃焼するのに必要な温度まで上昇させる処理を行なう排気ガス温度上昇処理手段を備えている。この排気ガス温度上昇処理手段は、エンジン2の出力軸に接続された電動アシストモータ5と、この電動アシストモータ5のトルクを調整するインバータ20と、メインコントローラ15から出力される信号Ieによって駆動し、インバータ20を制御するインバータ制御装置21と、前述のメインコントローラ15とを含んでいる。メインコントローラ15は、CPU、ROM、及びRAMを有しており、これらのCPU、ROM、及びRAMによって構成され、アクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態にあるかどうか判定する第1判定手段と、排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段とを備えており、第1判定手段で非供給状態と判定され、しかも第2判定手段でフィルタに目詰まりを生じていると判定されたとき、エンジン2に作用する負荷を増加させるように電動アシストモータ5を駆動させ、この電動アシストモータ5によって発電させる制御信号をインバータ制御装置21に出力する。
【0026】
インバータ20は、電動アシストモータ5で発電した交流電流を直流電流に変換するとともに、メインコントローラ15からのインバータ制御装置21を介しての電気信号により電動アシストモータ5の発電量を制御する。
【0027】
また、本実施形態に係る油圧ショベルは、電動アシストモータ5で発生させた電力を蓄えるキャパシタ24と、排気ガス浄化装置17に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を加熱、燃焼させる抵抗線(電熱線)26とを備えると共に、インバータ20と、キャパシタ24及び抵抗線26のいずれかとを選択的に接続する電流分岐装置22と、メインコントローラ15に接続され、電流分岐装置22の作動を制御する分岐制御装置23とを備えている。また、メインコントローラ15は、キャパシタ24が過充電かどうか判定する第3判定手段を含み、この第3判定手段でキャパシタ24が過充電であると判定されたとき、インバータ20と抵抗線26とを接続させるように分岐制御装置23を制御する処理を行なう。
【0028】
メインコントローラ15は、前述したようにアクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態にあるかどうかを判定する第1判定手段を備えているが、この第1判定手段は、圧力センサ14からのパイロット圧力信号により示された検出圧力Ppが、アクチュエータ制御用制御弁8を作動させる設定圧力Pps未満かどうかを、すなわち、アクチュエータ制御用制御弁8の状態が可変容量型油圧ポンプ4からの圧油を油圧アクチュエータ7に供給する供給状態なのか、供給しない非供給状態なのかを判定する。供給状態は当該油圧ショベルによって作業が実施される作業状態に相当し、非供給状態は当該油圧ショベルによって作業が実施されない非作業状態に相当する。つまり、高圧選択弁13と圧力センサ14とメインコントローラ15とによって、当該油圧ショベルの作業状態と非作業状態とが検知されるようになっている。
【0029】
また、メインコントローラ15は、前述したように排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段を備えているが、この第2判定手段は、差圧センサ18からの差圧信号により示された検出差圧ΔPeが、あらかじめ設定された基準差圧ΔPes以上であるかどうかを判定する。検出差圧ΔPeは、排気ガス浄化装置17のフィルタの目詰まりに伴い排気ガスの流路抵抗が大きくなることにより増加する。つまり、差圧センサ18とメインコントローラ15とによって、排気ガス浄化装置17のフィルタの目詰まりを検知するようになっている。
【0030】
なお、メインコントローラ15は、エンジン回転数指令手段も備えている。このエンジン回転数指令手段は、あらかじめ設定された第1目標回転数信号R1をエンジンコントローラ3に与える。第1目標回転数は、省エネを目的として、駆動装置1に含まれる油圧回路の冷却及び潤滑に必要な最低吐出量の圧油を可変容量型油圧ポンプ4が吐出するのに必要な大きさまで、エンジン2の回転数を低下させるために設定された回転数である。
【0031】
また、メインコントローラ15は、押し退け容積制御用制御弁制御手段も備えている。この押し退け容積制御用制御弁制御手段は、あらかじめ設定された第1押し退け容積に相応する第1押し退け容積制御信号DS1を押し退け容積制御用制御弁19に与える。押し退け容積制御用制御弁19が第1押し退け容積制御信号DS1に応じてパイロット圧力をレギュレータ4bに与えると、レギュレータ4bは押し退け容積可変機構部4aを操作し、可変容量型油圧ポンプ4の押し退け容積を第1押し退け容積に設定する。可変容量型油圧ポンプ4は第1押し退け容積に設定された状態において、前述した第1目標回転数で動作するエンジン2により駆動されると、前述の最小吐出量を吐出する。
【0032】
また、メインコントローラ15は、前述したようにキャパシタ24が過充電かどうか判定する第3判定手段を備えている。この第3判定手段は、キャパシタ制御装置25からの蓄電量信号Ceの値Weが限界蓄電量Wes以上であるかどうかを判断する。つまり、メインコントローラ15とキャパシタ制御装置25によって、キャパシタ24が完全に蓄電している状態を検知する。
【0033】
図4は図2に示す駆動装置に備えられるメインコントローラにおける処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
メインコントローラ15は、はじめにアクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態にあるかどうかを判定する第1判定手段として機能し、圧力センサ14からのパイロット圧力信号により示された検出圧力Ppが設定圧力Pps未満かどうかを判定する(手順S1)。メインコントローラ15は、この手順S1の第1判定手段における判定を、検出圧力Ppが設定圧力Pps未満にならない限り、すなわち当該油圧ショベルが非作業状態と見做し得るまで、繰り返し実行する。
【0035】
第1判定手段の判定結果がイエスとなり、非作業状態となると、メインコントローラ15は、エンジン回転数指令手段、及び押し退け容積制御用制御弁制御手段として機能し、エンジンコントローラ3に第1目標回転数信号R1を与えると共に、押し退け容積制御用制御弁19に第1押し退け容積制御信号DS1を与える(手順S2)。このとき、アクチュエータ制御用制御弁8の弁位置は中立位置Sである。したがって、エンジン2の回転数が第1目標回転数になり、かつ、押し退け容積が第1押し退け容積になると、可変容量形油圧ポンプ4は駆動装置1に含まれる油圧回路の冷却及び潤滑に必要な最低吐出圧、及び最低吐出量の圧油を吐出する状態となる。
【0036】
このような状態において、メインコントローラ15は、排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段として機能し、差圧センサ18からの差圧信号により示された検出差圧ΔPeが基準差圧ΔPes以上であるかどうかを判定する(手順S3)。排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じていないときは、手順S1→手順S2→手順S3→手順S1が繰り返される。
【0037】
手順S3で検出差圧ΔPeが基準差圧ΔPes以上と判定され、排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じたときには、メインコントローラ15はインバータ制御装置21に電動アシストモータ目標トルク信号Ieを与えて、電動アシストモータ5のトルクをあらかじめ設定された目標トルクまで上昇させる(手順S4)。この電動アシストモータ5のトルクが上昇することにより、エンジン2に対する負荷が増加して、エンジン2からの排気ガスの温度は、例えば、排気ガス浄化装置17のフィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させるのに必要な最低温度まで上昇する。この間、電動アシストモータ5は、エンジン2へ負荷をかけることにより発電し、その交流電力はインバータ20によって直流に変換され、キャパシタ24へ蓄電される。
【0038】
このような状態において、メインコントローラ15は、キャパシタ24が過充電かどうか判定する第3判定手段として機能し、キャパシタ24の検出蓄電容量Weが限界蓄電容量Wesを超えたとき、メインコントローラ15は分岐制御装置23に制御信号を与え、電流分岐装置22を介してインバータ20と、排気ガス浄化装置17に設けた抵抗線26とを接続する制御を行なう(手順S6)。これにより抵抗線26が発熱し、排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりした排気ガス中の粒子状物質の燃焼に活用される。この手順S6の後は、再び手順S1に戻り、上述した各判定、及び各制御が継続される。
【0039】
このように構成した本実施形態に係る油圧ショベルによれば、前述したように、メインコントローラ15の第1判定手段でアクチュエータ制御用制御弁8が非供給状態、すなわち当該油圧ショベルが非作業状態にあると判定され、第2判定手段で排気ガス浄化装置17のフィルタに目詰まりを生じていることが判定されたとき、メインコントローラ15は、エンジン2に作用する負荷を増加させるように電動アシストモータ5を駆動させる。このとき電動アシストモータ5によって発電が行なわれる。したがって、その発電による電力、すなわち排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際のエンジン2に対する負荷を増加させるために用いられたエネルギを、電力として回収することができる。したがって、その電力を当該油圧作業機の駆動のために活用することができ、粒子状物質を燃焼させるためにエンジン2に対する負荷を増加させる際のエネルギロスを少なくすることができる。また、排気ガス中の粒子状物質が燃焼するに足る最低の排気ガス温度、すなわち必要最低温度は、エンジン2に対する負荷の大きさに依存するが、エンジン2に対する負荷の大きさは電動アシストモータ5のトルク制御により高精度に制御することができる。すなわち本実施形態は、前述のようにして排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる際に、粒子状物質を燃焼させるに足る必要最低温度を維持できるようにエンジン2に対する負荷の大きさを制御することができる。この点でも、粒子状物質を燃焼させるためにエンジン2に対する負荷を増加させる際のエネルギロスを少なくすることができる。
【0040】
また、本実施形態は、キャパシタ24に蓄えられた電力を、インバータ20を介して電動アシストモータ5に供給することにより、エンジン2の駆動補助のために電動アシストモータ5を駆動させることができる。すなわち、粒子状物質を燃焼させる際のエンジン2に対する負荷を増加させるために要したエネルギを、キャパシタ24において電力として蓄え、その電力を有効に活用することができる。
【0041】
また、本実施形態は、キャパシタ24の蓄電容量Weが限界蓄電容量Wesを超えたときには、電動アシストモータ5で発生した電力によって、排気ガス浄化装置17に設けた抵抗線26を発熱させることができる。したがって、この抵抗線26の発熱によっても排気ガス中の粒子状物質を燃焼させることができ、排気ガス中の粒子状物質の燃焼効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 駆動装置
2 エンジン
4 可変容量型油圧ポンプ
5 電動アシストモータ
7 油圧アクチュエータ
8 アクチュエータ制御用制御弁
9 作動油タンク
10 操作装置
11 第1パイロットライン
12 第2パイロットライン
13 高圧選択弁
14 圧力センサ
15 メインコントローラ
16 排気管
17 排気ガス浄化装置
18 差圧センサ
20 インバータ
21 インバータ制御装置
22 電流分岐装置
23 分岐制御装置
24 キャパシタ
25 キャパシタ制御装置
26 抵抗線
30 走行体
31 旋回体
32 作業装置
We 蓄電容量
Wes 限界蓄電容量
Pp 検出圧力
Pps 設定圧力
ΔPe 検出差圧
ΔPes 基準差圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンの動力を伝達されて駆動する可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプから吐出される圧油で駆動する油圧アクチュエータと、前記可変容量型油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御し、前記可変容量型油圧ポンプから吐出された圧油を前記油圧アクチュエータに供給する供給状態と、前記油圧アクチュエータに供給せずに圧油を作動油タンクに戻す非供給状態に切り換え可能なアクチュエータ制御用制御弁と、前記エンジンで生じた排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気ガス浄化装置と、前記アクチュエータ制御用制御弁が前記非供給状態にあって、しかも前記フィルタに目詰まりを生じているときに、前記エンジンに作用する負荷を増加させて、排気ガス温度を前記粒子状物質が燃焼するのに必要な温度まで上昇させる処理を行なう排気ガス温度上昇処理手段とを備えた油圧作業機において、
前記排気ガス温度上昇処理手段は、
前記エンジンの出力軸に接続された電動アシストモータと、この電動アシストモータのトルクを調整するインバータと、このインバータを制御するインバータ制御装置とを含むと共に、
前記アクチュエータ制御用制御弁が前記非供給状態にあるかどうか判定する第1判定手段と、前記排気ガス浄化装置の前記フィルタに目詰まりを生じているかどうか判定する第2判定手段とを有し、前記第1判定手段で前記非供給状態と判定され、しかも前記第2判定手段で前記フィルタに目詰まりを生じていると判定されたとき、前記エンジンに作用する負荷を増加させるように前記電動アシストモータを駆動させ、この電動アシストモータによって発電させる制御信号を前記インバータ制御装置に出力するメインコントローラを含むことを特徴とする油圧作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧作業機において、
前記電動アシストモータで発生させた電力を蓄えるキャパシタを備えたことを特徴とする油圧作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧作業機において、
前記排気ガス浄化装置に設けられ、前記排気ガス中の粒子状物質を燃焼させる抵抗線と、
前記インバータと、前記キャパシタ及び前記抵抗線のいずれかとを選択的に接続する電流分岐装置と、
前記メインコントローラに接続され、前記電流分岐装置の作動を制御する分岐制御装置とを備えると共に、
前記メインコントローラは、前記キャパシタが過充電かどうか判定する第3判定手段を含み、この第3判定手段で前記キャパシタが過充電であると判定されたとき、前記インバータと前記抵抗線とを接続させるように前記分岐制御装置を制御する処理を行なうことを特徴とする油圧作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−52442(P2012−52442A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194193(P2010−194193)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】