説明

油圧制御装置及びこれを備えた作業機械

【課題】動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータが持つエネルギーを回生するための回生モータのキャビテーションを抑制することができる油圧制御装置及びこれを備えた作業機械を提供すること。
【解決手段】油圧アクチュエータ11、12及び油圧ポンプ16、17から導出された作動油をタンクTに回収するための回収油路R7と、作動油の供給に応じてエンジン7の出力軸7aを回転させ、かつ、エンジン7の出力軸7aが回転することにより回転駆動する回生モータ18と、ブームシリンダ12からの戻り油を回収油路R7を経由せずに回生モータ18に導くための回生油路R8と、回収油路R7と回生油路R8とを連結する連結油路R9と、連結油路R9に設けられ、回収油路R7から回生モータ18を向かう作動油の流れを許容するとともに回生モータ18から回収油路R7へ向かう作動油の流れを規制する回生側チェック弁21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータに対する作動油の給排を制御する油圧制御装置及びこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持体と、この支持体に対して旋回可能に支持された旋回体と、この旋回体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記旋回体を旋回動作させる旋回モータと、前記ブームを起伏動作させるブームシリンダと、旋回モータ及びブームシリンダに対して作動油を供給する油圧ポンプと、旋回モータ及びブームシリンダに対する作動油の給排を制御する流量制御弁と、旋回モータ及びブームシリンダからのメータアウト油路に設けられた絞り弁とを備えた作業機械が知られている。
【0003】
この種の作業機械では、油圧ポンプからの作動油の流量調整及び流量制御弁の操作により旋回モータ及びブームシリンダの作動が制御される。ここで、例えば、ブームシリンダを倒伏させる場合、倒伏前のブームの高さ位置に応じた位置エネルギーは、ブームの動作を加速する方向に作用する。この位置エネルギーは、前記絞り弁を流通する際に生じる熱エネルギーとして廃棄される。同様に、旋回体の旋回動作を減速させる場合、旋回体の慣性エネルギーは、旋回体の減速を妨げる方向に作用する。この慣性エネルギーも、前記絞り弁を流通する際に生じる熱エネルギーとして廃棄される。
【0004】
前記エネルギーを回生するものとして、例えば特許文献1に示される油圧制御装置が知られている。特許文献1に示される油圧制御装置は、原動機と、この原動機の回転軸に結合された駆動軸を有する油圧ポンプと、この油圧ポンプの駆動軸に結合された駆動軸を有する可変容量型油圧モータと、前記油圧ポンプから作動油が供給されることにより作動するアクチュエータと、このアクチュエータに対する作動油の給排を制御するための切換弁と、この切換弁を操作するためのパイロット圧を生じさせるパイロットポンプとを備えている。特許文献1に示される油圧制御装置では、アクチュエータから戻る作動油を前記可変容量型油圧モータに供給することにより原動機を回転させる。これにより、油圧エネルギーの回生作用が遂行される。
【0005】
また、特許文献1に示される油圧制御装置では、前記油圧エネルギーの回生作用が遂行されていない状態においても、可変容量型油圧モータが原動機によって常に回転させられる。そこで、可変容量型油圧モータでキャビテーションが生じるのを抑制するために、前記パイロットポンプから可変容量型油圧モータに対して作動油が常に補給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−120616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される油圧制御装置は、パイロットポンプから切換弁に供給される作動油の一部、つまり、切換弁を操作するための動力の一部を用いて可変容量型油圧モータを回転させる。そのため、可変容量型油圧モータのキャビテーションを防止するために、パイロットポンプの動力が損失される。
【0008】
また、特許文献1に示される油圧制御装置は、回生に供される作動油がパイロット回路へ導入するのを防止するためのチェック弁を有する。具体的に、このチェック弁は、パイロットポンプから可変容量型油圧モータへの作動油の流れを許容する一方、可変容量型油圧モータからパイロットポンプへの作動油の流れを規制する。ここで、パイロットポンプの吐出圧は、切換弁を操作するのに十分に高い圧力に設定されている。そのため、前記チェック弁を開放するためのクラッキング圧も比較的高めに設定する必要がある。その結果、特許文献1に示される油圧制御装置では、前記クラッキング圧に対して可変容量型モータへの作動油の供給流量を乗じて算出される大きな動力が損失される。
【0009】
本発明の目的は、動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータが持つエネルギーを回生するための回生モータのキャビテーションを抑制することができる油圧制御装置及びこれを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、油圧制御装置であって、エンジンの出力軸が回転することにより駆動する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから作動油が供給されることにより作動するとともに、導出される戻り油が回生の対象となる回生アクチュエータを含む少なくとも1つの油圧アクチュエータと、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータ及び前記油圧ポンプから導出された作動油をタンクに回収するための回収油路と、作動油の供給に応じて前記エンジンの出力軸を回転させ、かつ、前記エンジンの出力軸が回転することにより回転駆動する回生モータと、前記回生アクチュエータからの戻り油を前記回収油路を経由せずに前記回生モータに導くための回生油路と、前記回収油路と前記回生油路とを連結する連結油路と、前記連結油路に設けられ、前記回収油路から前記回生モータへ向かう作動油の流れを許容するとともに前記回生モータから前記回収油路へ向かう作動油の流れを規制する回生側チェック弁とを備えている、油圧制御装置を提供する。
【0011】
本発明では、回収油路と回生油路とを連結する連結油路に設けられ、回収油路から回生モータへ向かう作動油の流れを許容するとともにその逆向きの流れを規制する回生側チェック弁を備えている。これにより、回生が行われていない状態、つまり、回生油路を介して回生アクチュエータからの戻り油が回生モータに供給されていない状態であっても、回生側チェック弁を介して回収油路から回生モータへ作動油を供給することができる。したがって、回生期間中に回生アクチュエータからの戻り油を用いた回生を行いながら、非回生期間中に回生モータのキャビテーションを抑制することができる。
【0012】
特に、本発明では、少なくとも1つの油圧アクチュエータからタンクに回収される作動油、つまり、本来仕事を行うことを予定していない比較的低圧の作動油を回生モータに供給することができる。そのため、パイロットポンプから導出される作動油を回生モータに供給する場合と比較して、動力の損失を大幅に低減することできる。
【0013】
また、本発明に係る回生側チェック弁には、回生油路から回収油路への作動油の流れを規制する機能が要求される。しかし、回収油路はタンクに接続された比較的低圧の油路であるため、従来のようにパイロット回路との間に設けられるチェック弁と比較して、回生側チェック弁の開放圧を低く設定することができる。これによっても、動力の損失を低減することができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータが持つエネルギーを回生するための回生モータのキャビテーションを抑制することができる。
【0015】
なお、本発明において、『回生』とは、電力を発生させることに限定する趣旨ではなく、油圧アクチュエータからの戻り油を回生モータの駆動のために再利用することを意味する。
【0016】
前記油圧制御装置において、前記回収油路のうち前記連結油路との連結位置よりも下流側に設けられ、通常閉鎖するとともに上流側の圧力が設定圧以上である場合に上流側から下流側への作動油の流れを許容する回収側チェック弁をさらに備え、前記回生側チェック弁は、前記回収側チェック弁の設定圧と同等又はこれよりも低い圧力で開放することが好ましい。
【0017】
この態様では、回収側チェック弁が回収油路に設けられているとともに、回生側チェック弁が回収側チェック弁の設定圧と同等又はこれよりも低い圧力で開放する。これにより、回生アクチュエータからの戻り油が回生油路に供給されていない場合に、回収油路からの戻り油を確実に回生モータに導きながら、余剰の戻り油をタンクに回収することができる。そのため、回生モータのキャビテーションをより確実に抑制することができる。
【0018】
前記油圧制御装置において、前記回生油路のうち前記連結油路との連結位置よりも上流側に設けられ、前記回生油路を介した戻り油の流れを許容する許容状態と戻り油の流れを規制する規制状態との間で切換可能な回生弁と、前記回生アクチュエータからの戻り油の回生が可能な回生期間中には、前記回生弁を前記許容状態に切換操作する一方、前記回生期間以外の期間である場合には、前記回生弁を前記規制状態に切換操作する制御部とをさらに備えていることが好ましい。
【0019】
この態様では、回生期間中に回生弁を許容状態に切換操作する一方、回生期間以外の期間中に回生弁を規制状態に切換操作する制御部を備えている。そのため、回生期間中には回生アクチュエータからの戻り油を回生モータに導く一方、回生期間以外の期間中には前記回収油路からの戻り油を回生モータに導くことができる。
【0020】
前記油圧制御装置において、前記回生油路のうち前記連結油路との連結位置よりも上流側の位置と前記回収油路とを連結する排出油路と、前記排出油路に設けられ、前記回生アクチュエータからの戻り油のうち回生モータに供給すべき戻り油以外の戻り油を前記回収油路に導くための排出弁とをさらに備えていることが好ましい。
【0021】
この態様では、排出油路に排出弁が設けられている。これにより、回生アクチュエータからの戻り油のうち余剰の戻り油を排出油路及び排出弁を介して回収油路に導くことができる。
【0022】
また、本発明は、作業機械であって、ベースマシンと、前記ベースマシンに対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記ベースマシンに対して前記ブームを起伏動作させるブームシリンダと、前記油圧制御装置とを備え、前記油圧制御装置は、前記回生アクチュエータとして前記ブームシリンダを含む、作業機械を提供する。
【0023】
本発明では、ブームシリンダが回生アクチュエータとして含まれる。そのため、ブームシリンダからの戻り油を回生することができる。具体的に、ブームの倒伏させる場合にはブームの位置エネルギーがブームを加速する方向に作用するため、前記位置エネルギーを回生モータの動力として回収することができる。また、ブームシリンダからの戻り油を回生しない場合には回収油路からの戻り油が回生モータに供給されることにより、回生モータのキャビテーションを抑制することができる。特に、本発明では、タンクへ回収される戻り油、つまり、本来仕事を行うことを予定していない比較的低圧の作動油を回生モータに供給する。そのため、パイロットポンプから導出される作動油を回生モータに供給する場合と比較して、動力の損失を大幅に低減することができる。
【0024】
したがって、本発明によれば、動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータが持つエネルギーを回生するための回生モータのキャビテーションを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータが持つエネルギーを回生するための回生モータのキャビテーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を示す右側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルに設けられた油圧制御装置を示す回路図である。
【図3】図2の油圧ポンプの吐出流量と戻り油の流量と回生モータに流れる流量との関係を示すチャートである。
【図4】本発明の別の実施形態の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の全体構成を示す右側面図である。
【0029】
油圧ショベル1は、左右一対のクローラ2aを有する自走式の下部走行体2と、この下部走行体2に対して旋回可能に設けられたアッパフレーム4を有する上部旋回体3と、この上部旋回体3上に起伏可能に設けられた作業アタッチメント5と、図2に示す油圧制御装置6と、エンジン7とを備えている。本実施形態では、下部走行体2及び上部旋回体3は、作業アタッチメント5が起伏可能に取り付けられるベースマシンを構成する。
【0030】
作業アタッチメント5は、上部旋回体3のアッパフレーム4に対して起伏可能に取り付けられた基端部を有するブーム8と、このブーム8の先端部に対して回動可能に取り付けられた基端部を有するアーム9と、このアーム9の先端部に対して回動可能に取り付けられた基端部を有するバケット10とを備えている。
【0031】
図1及び図2を参照して、油圧制御装置6は、前記下部走行体2に対してアッパフレーム4を旋回させる旋回モータ11と、前記アッパフレーム4に対してブーム8を起伏させるブームシリンダ12と、ブーム8に対してアーム9を回動させるアームシリンダ13と、アーム9に対してバケット10を回動させるバケットシリンダ14とを含む複数の油圧アクチュエータ(以下、複数の油圧アクチュエータ11〜14と称することがある)を備えている。本実施形態では、複数の油圧アクチュエータ11〜14のうちのブームシリンダ12から導出される戻り油が回生の対象である。つまり、本実施形態では、ブームシリンダ12が回生アクチュエータを構成する。また、本実施形態では、ブームシリンダ12及び旋回モータ11を駆動するための油圧制御装置6が図2に示されている。
【0032】
また、油圧制御装置6は、図2に示すように、前記旋回モータ11及びブームシリンダ12にそれぞれ作動油を供給する油圧ポンプ16、17と、前記ブームシリンダ12からの戻り油を回生するための回生モータ18と、油圧ポンプ16と旋回モータ11との間に設けられたコントロールバルブ19と、油圧ポンプ17とブームシリンダ12との間に設けられたコントロールバルブ15と、戻り油を冷却するオイルクーラ20と、回生側チェック弁21と、回収側チェック弁22と、回生側切換弁23(回生弁)と、排出側切換弁24(排出弁)と、クーラ保護弁25と、コントローラ(制御部)26と、操作レバー27と、圧力センサ28と、循環チェック弁29と、第1アンロード弁30と、第2アンロード弁31とを備えている。
【0033】
油圧ポンプ16、17は、それぞれエンジン7の出力軸7aが回転することにより駆動する。また、油圧ポンプ16、17は、それぞれの容量を調整するためのレギュレータ16a、17aを有する可変容量型のポンプである。油圧ポンプ16から吐出された作動油は、コントロールバルブ19に導かれる。一方、油圧ポンプ17から吐出された作動油は、コントロールバルブ15に導かれる。
【0034】
コントロールバルブ19は、供給油路R1を介して油圧ポンプ16に接続されているとともに、旋回モータ11に対する作動油の給排を制御可能なスプールを有する制御弁である。このコントロールバルブ19は、図外のパイロット回路からパイロット圧が供給されることより操作される。具体的に、コントロールバルブ19は、旋回モータ11の作動を停止させるための中立位置Dと、旋回モータ11を右旋回させるための切換位置Eと、旋回モータ11を左旋回させるための切換位置Fとの間で切換操作可能である。
【0035】
コントロールバルブ15は、供給油路R4を介して油圧ポンプ17に接続されているとともに、ブームシリンダ12に対する作動油の給排を制御可能なスプールを有する切換弁である。このコントロールバルブ15は、操作レバー27の操作量に応じたパイロット圧が発生するパイロット回路に接続されたポートを有する。このパイロット回路には、パイロット圧を検出するための圧力センサ28が設けられている。圧力センサ28により検出されたパイロット圧に関する電気信号は、後述するコントローラ26に送信される。また、コントロールバルブ15は、ブームシリンダ12の作動を停止させるための中立位置Aと、ブームシリンダ12を下げ動作させるための切換位置Bと、ブームシリンダ12を上げ動作させるための切換位置Cとの間で切換可能である。
【0036】
コントロールバルブ19と旋回モータ11との間には、右旋回用の個別油路R2と、左旋回用の個別油路R3とが設けられている。また、コントロールバルブ15とブームシリンダ12との間には、ロッド側の個別油路R5と、ヘッド側の個別油路R6とが設けられている。また、コントロールバルブ15、19とタンクTとの間には、回収油路R7が設けられている。
【0037】
回生モータ18は、ブームシリンダ12のヘッド側の個別油路R6に接続された回生油路R8に設けられている。回生油路R8は、ヘッド側の個別油路R6から分岐するとともに回収油路R7を介さずに回生モータ18に接続されている。また、回生モータ18は、作動油の供給に応じてエンジン7の出力軸7aを回転させ、かつ、エンジン7の出力軸7aが回転することにより回転駆動するように、エンジン7の出力軸7aに対しワンウェイクラッチ等を介して連結されている。さらに、回生モータ18は、その容量を調整するためのレギュレータ18aを有する可変容量型のモータである。
【0038】
回生側チェック弁21は、前記回生油路R8の回生モータ18よりも上流側の位置と前記回収油路R7とを連結する連結油路R9に設けられている。この回生側チェック弁21は、その上流側(回収油路R7側)から下流側(回生油路R8側)に向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。また、回生側チェック弁21は、通常閉鎖するとともに、その上流側と下流側との差圧が第2圧(例えば、0.3Mpa)以上である場合に開放する。
【0039】
回収側チェック弁22は、前記回収油路R7のうち前記連結油路R9との連結位置よりも下流側(タンクT側)に設けられている。回収側チェック弁22は、その上流側(コントロールバルブ15、19側)から下流側(タンクT側)に向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。また、回収側チェック弁22は、通常閉鎖するとともに、その上流側と下流側との差圧が前記第2圧よりも大きな第1圧(例えば、0.4Mpa)以上である場合に開放する。したがって、コントロールバルブ15、19から導出される作動油は、その圧力が第2圧以上第1圧未満である場合に回生油路R8のみを流れる一方、その圧力が第1圧以上である場合に回収油路R7及び回生油路R8の双方を流れる。なお、本実施形態では、第1圧が第2圧よりも大きい場合を例示したが、第1圧は第2圧と同等の圧力に設定することもできる。
【0040】
回生側切換弁23は、前記回生油路R8のうち連結油路R9との連結位置よりも上流側(ブームシリンダ12側)に設けられている。回生側切換弁23は、回生油路R8を介した戻り油の流れを許容する許容状態と規制する規制状態とで切換動作可能である。具体的に、回生側切換弁23は、コントローラ26からの電気信号S6により切換操作される。
【0041】
排出側切換弁24は、回生油路R8と回収油路R7とを連結する排出油路R10に設けられている。排出油路R10は、回生油路R8のうち回生側切換弁23よりも上流側(ブームシリンダ12側)の位置と、回収油路R7のうち回収側チェック弁22の上流側の位置とを連結する。そして、排出油路R10は、ブームシリンダ12のヘッド側からの戻り油のうち回生に用いない余剰の戻り油を回収油路R7に導く。排出側切換弁24は、排出油路R10を介した戻り油の流れを許容する状態と規制する状態とで切換動作可能である。具体的に、排出側切換弁24は、コントローラ26からの電気信号S5により切換操作される。
【0042】
第1アンロード弁30は、油圧ポンプ16の供給油路R1と回収油路R7とを連結する第1アンロード油路R13に設けられている。第1アンロード弁30は、通常閉鎖し、コントロールバルブ19が中立位置Dに切換操作された場合に開放して、油圧ポンプ16からの作動油をタンクTに回収する。具体的に、第1アンロード弁30は、コントローラ26からの電気信号S8により切換操作される。
【0043】
第2アンロード弁31は、油圧ポンプ17の供給油路R4と回収油路R7とを連結する第2アンロード油路R14に設けられている。第2アンロード弁31は、通常閉鎖し、コントロールバルブ15が中立位置Aに切換操作された場合に開放して、油圧ポンプ17からの作動油をタンクTに回収する。具体的に、第2アンロード弁31は、コントローラ26から電気信号S7により切換操作される。
【0044】
オイルクーラ20は、前記回収油路R7の回収側チェック弁22よりも下流側(タンクT側)に設けられている。なお、前記回生油路R8は、オイルクーラ20の上流側で回収油路R7に接続されている。したがって、回収油路R7及び回生油路R8を流れる作動油は、オイルクーラ20を介して冷却された上で、タンクTに回収される。
【0045】
クーラ保護弁25は、オイルクーラ20を介さずに戻り油をタンクTに導くためにオイルクーラ20を迂回するクーラ迂回油路R11に設けられている。具体的に、クーラ迂回油路R11は、前記オイルクーラ20よりも上流側の位置で回収油路R7から分岐する。クーラ保護弁25は、その上流側から下流側に向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。また、クーラ保護弁25は、通常閉鎖するとともに、その上流側の圧力が所定圧以上である場合に開放する。したがって、戻り油の圧力が前記所定圧未満の場合には戻り油の全てがオイルクーラ20を流れる一方、戻り油の圧力が前記所定圧以上の場合には、余剰の戻り油がクーラ迂回油路R11を流れる。これにより、オイルクーラ20が保護される。
【0046】
循環チェック弁29は、回生モータ18を迂回するモータ迂回油路R12に設けられ、回生モータ18の下流側の作動油を必要に応じて回生モータ18の上流側に循環させる。具体的に、循環チェック弁29は、回生油路R8における回生モータ18の上流側の位置と下流側の位置とを連結する。循環チェック弁29は、その下流側から上流側に向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。
【0047】
コントローラ26は、ブームシリンダ12からの戻り油が回生可能な回生期間中には、戻り油を回生するための回生用容量に回生モータ18の容量を設定するとともに、回生油路R8を介した戻り油の流れが許容されるように回生側切換弁23の開度を調整する。一方、コントローラ26は、前記回生期間以外の期間である非回生期間中には、前記回生容量よりも小さな非回生用容量に回生モータ18の容量を設定するとともに、回生油路R8を介した戻り油の流れが規制されるように回生側切換弁23の開度を調整する。
【0048】
具体的に、コントローラ26は、油圧ポンプ16、17の各レギュレータ16a、17a、回生モータ18のレギュレータ18a、回生側切換弁23のソレノイド、排出側切換弁24のソレノイド、圧力センサ28、第1アンロード弁30のソレノイド、及び第2アンロード弁31のソレノイドと電気的に接続されている。コントローラ26は、ソレノイド16a、17a、18aに対し信号S1〜S3を出力することにより、油圧ポンプ16、17及び回生モータ18の容量を調整する。また、コントローラ26は、圧力センサ28からの出力信号S4に基づいて、操作レバー27によってブーム下げ操作が行われたか否かを判定する。そして、コントローラ26は、ブーム下げ操作が行われた場合に前記回生可能期間であると判定する一方、ブーム下げ操作が行われていない場合に前記非回生期間であると判定する。
【0049】
さらに、コントローラ26は、回生可能期間であると判定した場合、ブームシリンダ12からの戻り油の全量を回生可能であるか否かを判定する。具体的に、コントローラ26は、戻り油の全量を用いた回生モータ18の動力が油圧ポンプ16、17による動力よりも大きい場合、又は、ブームシリンダ12からの戻り油の流量が回生モータ18の最大吸収流量(最大容量×回転数)よりも大きい場合に、戻り油の全量を回生不可能であると判定する。ここで、戻り油の全量が回生可能であると判定されると、コントローラ26は、回生側切換弁23を全開にするとともに排出側切換弁24を全閉にする。一方、戻り油の全量が回生不可能であると判定されると、余剰量の戻り油が排出側切換弁24を流れるように、排出側切換弁24の開度を調整する。また、コントローラ26は、非回生期間であると判定した場合、回生側切換弁23及び排出側切換弁24の双方を全閉にする。
【0050】
以下、図3を参照して、コントローラ26により実行される油圧ポンプ16、17及び回生モータ18の流量制御について説明する。なお、図3中、符号P1及びP4は、操作レバーが操作されていない無操作期間であり、符号P2は、ブーム下げの操作が行われているブーム下げ期間であり、符号P3は、ブーム下げ以外の操作(例えば、アーム引き操作)が行われているアーム引き期間である。つまり、期間P2が回生可能期間であり、期間P1、P3、P4が非回生期間である。
【0051】
コントローラ26は、各期間P1〜P4にわたり、戻り油の流量F3よりも回生モータ18の流量F2が小さくなるように、油圧ポンプ16、17の容量及び/又は回生モータ18の容量を制御する。以下、各期間P1〜P4ごとに説明する。
【0052】
無操作期間P1、P4において、コントローラ26は、油圧ポンプ16、17の容量を予め設定された基本容量に設定する。また、コントローラ26は、回生モータ18の容量を予め設定された非回生用容量に設定する。前記基本容量及び非回生用容量は、油圧ポンプ16、17の流量F1が回生モータ18の流量F3よりも大きくなるように設定されている。なお、無操作期間P1、P4においては、油圧ポンプ16、17から吐出された作動油は仕事をしていないため、油圧ポンプ16、17の流量F1と戻り油の流量F2とは同等である。
【0053】
ブーム下げ期間P2において、コントローラ26は、操作レバー27の操作量に応じて油圧ポンプ16、17の容量をブーム下げ容量(流量F1)に調整する。戻り油の流量F2は、ブームシリンダ12のロッド側室とヘッド側室との受圧面積の比に対応して油圧ポンプ16、17の吐出流量F1よりも大きくなる。コントローラ26は、回生モータ18の容量を前記非回生用容量よりも大きな回生用容量に設定する。前記ブーム下げ容量及び非回生容量は、回生モータ18の流量F3が戻り油の流量F2よりも小さくなるように設定されている。
【0054】
アーム引き期間P3において、コントローラ26は、操作レバー27の操作量に応じて油圧ポンプ16、17の容量をアーム引き容量(流量F1)に調整する。戻り油の流量F2は、アームシリンダ13のロッド側室とヘッド側室との受圧面積の比に対応して油圧ポンプ16、17の吐出流量F1よりも小さくなる。コントローラ26は、回生モータ18の容量を前記非回生用容量に設定する。前記アーム引き容量及び非回生用容量は、回生モータ18の流量F3が戻り油の流量F2よりも小さくなるように設定されている。
【0055】
以下、前記油圧制御装置6の動作について説明する。
【0056】
ブーム下げ動作が実行期間中(回生可能期間中)には、回生側切換弁23が所定の開度に調整される(許容状態に切り換えられる)。これにより、回生側切換弁23の開度に応じてブームシリンダ12からの戻り油が回生モータ18に供給される。
【0057】
ブーム下げ動作以外の期間中(非回生期間中)には、回生側切換弁23及び排出側切換弁24が全閉とされる(回生側絞り23が規制状態に切り換えられる)。この状態では、回生モータ18の容量が非回生容量(最小の容量)に設定されるが、回生側切換弁23を介した戻り油が供給されないため、回生モータ18がキャビテーションを起こし得る状況となる。ここで、本実施形態では、回収油路R7から連結油路R9を介して回生油路R8内に作動油を導くことができるため、回生モータ18のキャビテーションの発生が抑制される。
【0058】
そして、回生可能期間中及び非回生期間中にタンクTに回収される作動油は、オイルクーラ20によって冷却される。オイルクーラ20に導かれる作動油が過剰な場合、クーラ保護弁25が開放することによりオイルクーラ20が保護される。
【0059】
以上説明したように、前記実施形態では、回収油路R7と回生油路R8とを連結する連結油路R9に設けられ、回収油路R7から回生モータ18に向かう作動油の流れを許容するとともにその逆向きの流れを規制する回生側チェック弁21を備えている。これにより、回生が行われていない状態、つまり、回生油路R8を介してブームシリンダ12からの戻り油が回生モータ18に供給されていない状態であっても、回生側チェック弁21を介して回収油路R7から回生モータ18へ作動油を供給することができる。したがって、回生期間中にブームシリンダ12からの戻り油を用いた回生を行いながら、非回生期間中に回生モータ18のキャビテーションを抑制することができる。
【0060】
特に、前記実施形態では、油圧アクチュエータ11〜14からタンクTに回収される作動油、つまり、本来仕事を行うことを予定していない比較的低圧の作動油を回生モータ18に供給することができる。そのため、パイロットポンプから導出される作動油を回生モータ18に供給する場合と比較して、動力の損失を大幅に低減することができる。
【0061】
また、回生側チェック弁21には、回生油路R8から回収油路R7への作動油の流れを規制する機能が要求される。しかし、回収油路R7は、タンクTに接続された比較的低圧の油路であるため、従来のようにパイロット回路との間に設けられるチェック弁と比較して、回生側チェック弁21の開放圧を低く設定することができる。これによっても、動力の損失を低減することができる。
【0062】
したがって、本発明によれば、動力の損失を低減しつつ、油圧アクチュエータ11〜14が持つエネルギーを回生するための回生モータ18のキャビテーションを抑制することができる。
【0063】
なお、前記実施形態では、回生アクチュエータの一例としてブームシリンダ12を例示したが、これに限定されない。位置エネルギーや慣性エネルギーを再生できることを条件として、他の油圧アクチュエータ(例えば、旋回モータ11、アームシリンダ13、バケットシリンダ14)を回生アクチュエータとすることもできる。
【0064】
また、前記実施形態では、回収側チェック弁22が回収油路R7に設けられているとともに、回生側チェック弁21が回収側チェック弁22の設定圧と同等又はこれよりも低い圧力で開放する。これにより、ブームシリンダ12からの戻り油が回生油路R8に供給されていない場合に、回収油路R7からの戻り油を確実に回生モータ18に導きながら、余剰の戻り油をタンクに回収することができる。そのため、回生モータ18のキャビテーションをより確実に抑制することができる。
【0065】
前記実施形態では、回生期間中に回生側切換弁23を許容状態に切換操作する一方、回生期間以外の期間中に回生弁を規制状態に切換操作するコントローラ26を備えている。そのため、回生期間中にはブームシリンダ12からの戻り油を回生モータ18に導く一方、回生期間以外の期間中には回収油路R7からの戻り油を回生モータ18に導くことができる。
【0066】
前記実施形態では、排出油路R10に排出側切換弁24が設けられている。これにより、ブームシリンダ12からの戻り油のうち余剰の戻り油を排出油路R10及び排出側切換弁24を介して回収油路R7に導くことができる。
【0067】
以下、本発明の別の実施形態について図4を参照して説明する。なお、前記実施形態と同様の構成について同じ符号を付してその説明を省略する。
【0068】
前記実施形態に係る油圧制御装置6は、コントロールバルブ15の上流側に設けられた回生油路R8(図2参照)を有しているが、図4に示す油圧制御装置6は、コントロールバルブ15の下流側に設けられた回生油路R81を有している。
【0069】
具体的に、回生油路R81は、前記回生側切換弁23を介してコントロールバルブ15と回生モータ18とを接続する。また、排出油路R10は、回生油路R81のうち回生側切換弁23よりも上流側(コントロールバルブ15側)の位置と回収油路R7とを連結する。つまり、前記実施形態と異なり、コントロールバルブ15は、回収油路R7に対して直接接続されていない。
【0070】
この実施形態において、コントロールバルブ15が切換位置Bに切り換えられてブーム下げ動作が行われると、ブームシリンダ12のヘッド側から導出された作動油のうち必要量が回生モータ18へ導かれるとともに、余剰量がタンクTに回収される。具体的に、コントローラ26によって、回生側切換弁23及び排出側切換弁24の開度が調整される。
【0071】
一方、コントロールバルブ15が切換位置Cに切り換えられてブーム上げ動作が行われると、ブームシリンダ12のロッド側から導出された作動油は、回収油路R7を経由してタンクTに回収される。具体的に、コントローラ26によって、回生側切換弁23の開度が全閉に設定されるとともに、排出側切換弁24の開度が全開に設定される。
【0072】
そして、ブーム下げ動作以外の期間中には、回生側切換弁23の開度が全閉とされる。この状態では、回生モータ18の容量が非回生容量(最小の容量)に設定されるが、回生側切換弁23を介した戻り油が回生モータ18に供給されないため、回生モータ18がキャビテーションを起こし得る状態となる。ここで、本実施形態においても、回収油路R7から連結油路R9を介して回生油路R8内に作動油を導くことができるため、回生モータ18のキャビテーションの発生が抑制される。
【符号の説明】
【0073】
R7 回収油路
R8 回生油路
R81 回生油路
R9 連結油路
R10 排出油路
T タンク
1 油圧ショベル(作業機械の一例)
2 下部走行体(ベースマシンの一例)
3 上部旋回体(ベースマシンの一例)
5 作業アタッチメント
6 油圧制御装置
7 エンジン
7a 出力軸
11 旋回モータ(油圧アクチュエータの一例)
12 ブームシリンダ(回生アクチュエータの一例)
13 アームシリンダ(油圧アクチュエータの一例)
14 バケットシリンダ(油圧アクチュエータの一例)
16 油圧ポンプ
17 油圧ポンプ
18 回生モータ
21 回生側チェック弁
22 回収側チェック弁
23 回生側切換弁(回生弁の一例)
24 排出側切換弁(排出弁の一例)
26 コントローラ(制御部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧制御装置であって、
エンジンの出力軸が回転することにより駆動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから作動油が供給されることにより作動するとともに、導出される戻り油が回生の対象となる回生アクチュエータを含む少なくとも1つの油圧アクチュエータと、
前記少なくとも1つの油圧アクチュエータ及び前記油圧ポンプから導出された作動油をタンクに回収するための回収油路と、
作動油の供給に応じて前記エンジンの出力軸を回転させ、かつ、前記エンジンの出力軸が回転することにより回転駆動する回生モータと、
前記回生アクチュエータからの戻り油を前記回収油路を経由せずに前記回生モータに導くための回生油路と、
前記回収油路と前記回生油路とを連結する連結油路と、
前記連結油路に設けられ、前記回収油路から前記回生モータへ向かう作動油の流れを許容するとともに前記回生モータから前記回収油路へ向かう作動油の流れを規制する回生側チェック弁とを備えている、油圧制御装置。
【請求項2】
前記回収油路のうち前記連結油路との連結位置よりも下流側に設けられ、通常閉鎖するとともに上流側の圧力が設定圧以上である場合に上流側から下流側への作動油の流れを許容する回収側チェック弁をさらに備え、
前記回生側チェック弁は、前記回収側チェック弁の設定圧と同等又はこれよりも低い圧力で開放する、請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記回生油路のうち前記連結油路との連結位置よりも上流側に設けられ、前記回生油路を介した戻り油の流れを許容する許容状態と戻り油の流れを規制する規制状態との間で切換可能な回生弁と、
前記回生アクチュエータからの戻り油の回生が可能な回生期間中には、前記回生弁を前記許容状態に切換操作する一方、前記回生期間以外の期間である場合には、前記回生弁を前記規制状態に切換操作する制御部とをさらに備えている、請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
【請求項4】
前記回生油路のうち前記連結油路との連結位置よりも上流側の位置と前記回収油路とを連結する排出油路と、
前記排出油路に設けられ、前記回生アクチュエータからの戻り油のうち前記回生モータに供給すべき戻り油以外の戻り油を前記回収油路に導くための排出弁とをさらに備えている、請求項1〜3の何れか1項に記載の油圧制御装置。
【請求項5】
作業機械であって、
ベースマシンと、
前記ベースマシンに対して起伏可能に取り付けられたブームと、
前記ベースマシンに対して前記ブームを起伏動作させるブームシリンダと、
請求項1〜4の何れか1項に記載の油圧制御装置とを備え、
前記油圧制御装置は、前記回生アクチュエータとして前記ブームシリンダを含む、作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87831(P2013−87831A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227749(P2011−227749)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】