説明

油圧式パワーステアリング装置

【課題】アシスト力の制御の自由度が高い油圧式パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】車両のステアリング操作を油圧シリンダ21によってアシストする油圧式パワーステアリング装置は、油圧シリンダ21に対する作動油の給排量を変更可能な流量制御弁23と、操舵トルクセンサ、操舵角センサ及び車速センサと、これらセンサの検出結果に基づいて油圧シリンダ21に作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に応じて流量制御弁23を制御するECUとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング操作を油圧シリンダによってアシストする油圧式パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング操作を油圧シリンダによってアシストする油圧式パワーステアリング装置では、ステアリングシャフトからピニオン・ラック機構を介して転舵シャフトに伝達される操舵トルクの量に応じて油圧シリンダへの作動油の給排態様を制御する流量制御弁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような流量制御弁では、ステアリングシャフトに固定されたシャフトと、トーションバーを介してシャフトに連結されたロータリバルブとの相対位相差、すなわちトーションバーの捩り量に応じて油圧シリンダへの作動油の給排態様が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006―123580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした従来の油圧式パワーステアリング装置では、運転者のステアリング操作については適切にアシストすることができるとはいえ、そのアシスト力、換言すれば油圧シリンダへの作動油の給排態様がステアリングシャフトの捩りトルクによって一義的に決定されるため、その他の車両の運転状態に基づく種々の要求に応じてアシスト力を変更することはできない。すなわち、従来の油圧式パワーステアリング装置にあっては、油圧シリンダのアシスト力を種々の要求に見合うさらに高い自由度をもって変更するうえで改善の余地が残されている。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧シリンダのアシスト力を高い自由度をもって制御することのできる油圧式パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のステアリング操作を油圧シリンダによってアシストする油圧式パワーステアリング装置において、油圧シリンダに対する作動油の給排量を変更可能な流量制御弁と、車両の運転状態を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に応じて流量制御弁を制御する制御部とを含むことを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、油圧シリンダに作動油を給排する際の給排状態を車両の運転状態に基づいて設定し、その設定結果に基づいて流量制御弁を制御することにより、油圧シリンダに対する作動油の給排態様、換言すれば油圧シリンダのアシスト力をそのときどきの車両の運転状態に即したかたちで変更することができる。このため、運転者によるステアリングホイールの操作に応じて一義的に油圧シリンダにおける作動油の給排態様が決定される従来の油圧式パワーステアリング装置とは異なり、油圧シリンダのアシスト力をより高い自由度をもって制御することができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式パワーステアリング装置において、検出手段は操舵トルク及び操舵角並びに車速の少なくとも一つを車両の運転状態として検出することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の油圧式パワーステアリング装置において、制御部は、目標駐車位置と現在の車両位置との位置関係に応じた情報を取り込んで同情報と検出される車両の運転状態の検出結果とに基づいて油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に基づいて車両位置が目標駐車位置と一致するように流量制御弁を制御することを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、運転者によりステアリングホイールの操作がなされなくても、流量制御弁の制御を通じて油圧シリンダに対する給排態様を設定することで車両位置を目標駐車位置と一致させるように車輪の操舵角を調節することができ、車両をその目標駐車位置に駐車させる、いわゆる駐車支援制御を実行することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の油圧式パワーステアリング装置において、制御部は、路面の走行レーンにおける車両位置に応じた情報を取り込んで同情報と検出される車両の運転状態の検出結果とに基づいて油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に基づいて車両が走行レーン内に位置するように流量制御弁を制御することを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、運転者によりステアリングホイールの操作がなされなくても、流量制御弁の制御を通じて油圧シリンダに対する給排態様を設定することで車両が走行レーン内に位置するように車輪の操舵角を調節することができ、車両が走行レーンよりも外側に逸脱することを抑制する、いわゆるレーン逸脱抑制制御を実行することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧式パワーステアリング装置において、油圧シリンダは、転舵シャフトに設けられたピストンによりその内部が第1油圧室と第2油圧室とに区画されるものであり、流量制御弁は、作動油が供給される供給ポート、作動油が排出される排出ポート、第1油圧室に接続される第1ポート、第2油圧室に接続される第2ポートがそれぞれ周方向の異なる位置に形成されたハウジングと、このハウジングに回転可能に収容されるとともに、各ポートの連通状態を、供給ポートと第1ポートとを連通するとともに排出ポートと第2ポートとを連通する第1モードと、供給ポートと第2ポートとを連通するとともに排出ポートと第1ポートとを連通する第2モードとに切り替える弁部と、同弁部を回動駆動するモータとを含み、制御部は、設定された給排態様に応じて弁部の回動量をモータを通じて調節することにより第1モード及び第2モードの切り替えと、それら各態様における第1及び第2ポートの作動油の給排量を調節することを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の油圧式パワーステアリング装置において、流量制御弁はモータの駆動に基づく弁部の回動によって捻られるトーションバーを備え、同トーションバーは、モータが停止したとき、各ポートの連通状態を第1モードまたは第2モードから各ポートのいずれも閉鎖する状態に応じた位置に弁部を戻すことを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、トーションバーの復元力によりモータが停止したときに弁部を各ポートのいずれも閉鎖する状態に応じた位置に維持するため、モータの駆動により弁部を上記閉鎖する状態に応じた位置に維持する場合と比較して、容易な構成にて弁部を上記閉鎖する状態に応じた位置に維持することができる。また例えばモータの異常が生じた場合であっても、弁部が上記閉鎖する状態に応じた位置に自律的に復帰するため、油圧シリンダに意図しないアシスト力が発生することを抑制することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の油圧式パワーステアリング装置において、流量制御弁は前記モータの回転位置を検出するセンサを有し、センサにより検出されたモータの回動位置に基づいて弁部の位置が制御されることを要旨とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧式パワーステアリング装置において、油圧シリンダは、転舵シャフトに設けられたピストンによりその内部が第1油圧室と第2油圧室とに区画されるものであり、流量制御弁は、作動油が供給される供給ポート、作動油が排出される排出ポート、第1油圧室に接続される第1ポート、第2油圧室に接続される第2ポートがその長手方向の異なる位置にそれぞれ形成されたハウジングと、このハウジングに往復運動可能に収容されるとともに、各ポートの連通状態を、供給ポートと第1ポートとを連通するとともに排出ポートと第2ポートとを連通する第1モードと、供給ポートと第2ポートとを連通するとともに排出ポートと第1ポートとを連通する第2モードとに切り替える弁部と、同弁部を往復駆動する駆動機構とを含み、制御部は、設定された給排態様に応じて弁部を長手方向の移動量を駆動機構を通じて調節することにより第1モード及び第2モードの切り替えと、それら各態様における第1及び第2ポートの作動油の給排量を調節することを要旨とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置において、流量制御弁はモータの回動運動を往復運動に変換する変換機構を駆動機構として有するとともに、同変換機構を通じた弁部の往復動方向における移動量に応じて弾性変形する弾性部材を有し、制御部は弾性部材の弾性力に応じてモータに作用するトルクにより変化する同モータの電流値に基づいて弁部の往復動方向における位置を検知しつつその位置を制御することを要旨とする。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置において、流量制御弁はモータの回動運動を往復運動に変換する変換機構を駆動機構として有し、制御部は変換機構におけるモータの回動量と弁部の往復動方向における移動量との関係に基づいて弁部の往復動方向における位置を検出しつつその位置をモータの回動量に基づいて制御することを要旨とする。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置において、流量制御弁は、弁部の端部に設けられて同弁部をその電磁力により吸引駆動する電磁ソレノイドと同電磁ソレノイドの吸引力に抗して弁部を付勢する弾性部材とを含み、この電磁ソレノイドの電磁力を調節することにより弁部の往復動方向における位置を制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の油圧式パワーステアリング装置によれば、油圧シリンダのアシスト力を高い自由度をもって制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の油圧式パワーステアリング装置を具体化した第1実施形態について、同装置の全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の制御構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の流量制御弁の断面構造を示す断面図。
【図4】図3のA−A断面線に沿った流量制御弁の断面構造について、車両の直進時の流量制御弁の断面図。
【図5】図3のA−A断面線に沿った流量制御弁の断面構造について、(a)は車両の左旋回時の流量制御弁の断面図、(b)は車両の右旋回時の流量制御弁の断面図。
【図6】本発明の第2実施形態の油圧式パワーステアリング装置に搭載された流量制御弁の断面構造について、(a)は車両の直進時の流量制御弁の断面図、(b)は車両の左旋回時の流量制御弁の断面図、(c)は車両の右旋回時の流量制御弁の断面図。
【図7】本発明のその他の実施形態の油圧式パワーステアリング装置に搭載された流量制御弁の断面構造を示す断面図。
【図8】本発明のその他の実施形態の油圧式パワーステアリング装置に搭載された流量制御弁の断面構造を示す断面図。
【図9】本発明のその他の実施形態の油圧式パワーステアリング装置の制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、油圧式パワーステアリング装置1において、ステアリングホイール11が固定されたステアリングシャフト12と転舵シャフト16とは、それらに形成されたラック及びピニオンからなるピニオン・ラック機構15を介して連結されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフト12の回転は、このピニオン・ラック機構15により転舵シャフト16の往復直線運動に変換される。そして、このステアリングシャフト12の回転に伴う転舵シャフト16の往復直線運動が、同転舵シャフト16の両端に連結されたタイロッド17を介して図示しないナックルに伝達されることにより、操舵輪18の舵角が変更されるようになっている。
【0025】
また、油圧式パワーステアリング装置1は、ステアリング操作をアシストする機構として、転舵シャフト16と一体に設けられた油圧シリンダ21と、油圧シリンダ21に作動油を供給する電動ポンプ22と、油圧シリンダ21への作動油の給排態様を制御する流量制御弁23と、油圧シリンダ21から排出された作動油を貯留する貯留タンク24とを備えている。
【0026】
また、油圧シリンダ21、電動ポンプ22、流量制御弁23及び貯留タンク24は、第1油路25〜第5油路29により接続されている。第1油路25は、電動ポンプ22と流量制御弁23とを接続している。第2油路26及び第3油路27は、流量制御弁23と油圧シリンダ21とをそれぞれ接続している。第4油路28は、油圧シリンダ21と貯留タンク24とを接続している。第5油路29は、貯留タンク24と電動ポンプ22とを接続している。
【0027】
油圧シリンダ21のハウジング41には、転舵シャフト16が挿通されている。この転舵シャフト16には、ピストン42が設けられている。ハウジング41の内部には、このピストン42によって区画される第1油圧室43及び第2油圧室44が形成されている。また、第2油路26は第1油圧室43に接続され、第3油路27は第2油圧室44に接続されている。
【0028】
電動ポンプ22は、その動力源として一方向回転のみを行う3相コイルのブラシレスモータ(以下、「モータ45」)を内蔵している。また、電動ポンプ22には、モータ45の出力軸と連結する図示しない羽根車が設けられ、モータ45の回転に伴ってこの羽根車が回転することにより、第5油路29を介して貯留タンク24内の作動油を吸い上げるとともに、その作動油を第1油路25を介して流量制御弁23に向けて吐出する。
【0029】
また、電動ポンプ22及び流量制御弁23は制御部としての電子制御装置(以下、「ECU31」)により制御される。具体的には、ECU31には、検出手段としてのトルクセンサ32、操舵角センサ33及び車速センサ34が電気的に接続されており、ECU31は、これらセンサの出力信号に基づいて、車両の運転状態である操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vを検出する。
【0030】
次に、図2を参照して、油圧式パワーステアリング装置1の制御構成について説明する。
ECU31には、トルクセンサ32、操舵角センサ33及び車速センサ34の出力信号に基づいて算出した操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vに基づいて目標アシスト力ASを算出するとともに、この目標アシスト力ASに基づいて流量制御弁23の開度指令値TAを演算する開度演算部71が設けられている。そして、ECU31は、開度演算部71の開度指令値TAに基づいて、電動ポンプ22の流量Qと、流量制御弁23による油圧シリンダ21に対する作動油の給排態様を制御する。
【0031】
具体的には、開度指令値TAは、回転速度演算部72に入力される。そして回転速度演算部72では、開度指令値TA及び目標アシスト力ASに基づいてモータ45の回転速度指令値VAが演算される。この回転速度指令値VAはフィードバック制御部73に入力される。また、このフィードバック制御部73には、モータ54の実回転角度SRを検出する回転角検出部74の実回転角度SRと、回転速度検出部75の実回転速度VRとが入力される。なお、回転速度検出部75は、回転角検出部74により検出された実回転角度SRを微分することにより実回転速度VRを算出する。そして、フィードバック制御部73は、これら値に基づいて回転速度フィードバック制御を実行することによって生成したモータ制御信号を駆動回路76に出力する。これにより、電動ポンプ22の流量Qを制御する。
【0032】
一方、開度指令値TAは、開度制御部77にも入力される。この開度制御部77は、開度指令値TAに基づいて、流量制御弁23による油圧シリンダ21への作動油の給排態様を制御する。具体的には、開度指令値TAに基づいて、第1油圧室43及び第2油圧室44のいずれに作動油を供給するかを切り替えるとともに、流量制御弁23の実開度TRが開度指令値TAに一致するように制御する。これにより、切り替えられた油圧室に対して所定量の作動油が供給されるようになる。
【0033】
また、本実施形態にかかる装置では、車両の走行支援制御として駐車支援制御を行う。
駐車支援制御は、駐車時に車両に取り付けられたモニタからの情報に基づいて、自動的にステアリング操作を実行することにより予め設定した駐車位置に駐車するものである。この駐車支援制御では、まず、図示しない車両側のECUによって予め設定された目標駐車位置とモニタからの情報である現在の車両位置との位置関係に応じて駐車するためのトルク指令値τaが算出される。そして、このトルク指令値τaはECU31(開度演算部71)に入力されるとともに、開度演算部71は、トルク指令値τa、車速V及び操舵トルクτに基づいて、現在の車両位置が目標駐車位置と一致するような開度指令値TAを算出する。そして、この開度指令値TAに基づいて、上述のように電動ポンプ22の流量Q及び各油圧室43,44の作動油の供給の切り替え及び切り替えられた油圧室への作動油の供給量を制御する。
【0034】
図3〜図5を参照して、流量制御弁23の構成について説明する。
図3に示すように、有底円筒形状をなす流量制御弁23のハウジング51内には、油圧シリンダ21への作動油の供給を調整するための円環状の調整弁52が固定されている。この調整弁52内には、中空円筒形状の弁部53が挿通されている。この弁部53は、その軸方向の一端に取り付けられたモータ54によって回転するとともに、その軸方向においてハウジング51の両端に設けられた軸受部材55により回動可能に支持されている。
【0035】
また、流量制御弁23には、ハウジング51の底部と、弁部53の軸方向のモータ54側の端部とを連結するトーションバー56が設けられている。弁部53の回動に伴いトーションバー56は弁部53の周方向に弾性変形して捩れるようになる。
【0036】
調整弁52には、軸方向においてモータ54側から順に第1ポート61、供給ポート62及び第2ポート63が設けられている。第1ポート61は、第2油路26(第1油圧室43)に接続されている。供給ポート62は、第1油路25(電動ポンプ22)に接続されている。第2ポート63は、第3油路27(第2油圧室44)に接続されている。また、第1ポート61及び第2ポート63は、弁部53の径方向において、調整弁52の外側に設けられた円環溝61A,63Aと、調整弁52の内周面に形成された軸方向に延びる凹部61C,63Cと、円環溝61A,63Aと凹部61C,63Cとを連通する連通部61B,63Bとにより構成されている。また、供給ポート62は、弁部53の径方向において、調整弁52の外側に設けられた円環溝62Aと、この円環溝62Aと調整弁52の内周面とを連通する連通部62Bとにより構成されている。第1油路25〜第3油路27は、第1ポート61、供給ポート62、及び第2ポート63の円環溝61A,62A,63Aにそれぞれ接続されている。なお、連通部61B,62B,63B及び凹部61C,63Cはその周方向に等角度間隔を隔てて形成されている。
【0037】
また、流量制御弁23は、調整弁52と軸受部材55との軸方向における空間が排出ポート65として機能する。この排出ポート65は、第4油路28を介して貯留タンク24と連通している。
【0038】
弁部53には、その外周面に周方向に等角度間隔を隔てて8個の凹部68が設けられている。それら凹部68のうち、周方向に沿って1個目、3個目、5個目、7個目の凹部68は、弁部53に形成された第1連通部66によってその中空部64と連通されている。また、弁部53において、排出ポート65と軸方向において同位置には、同排出ポート65と弁部53の中空部64とを連通する第2連通路67が形成されている。
【0039】
流量制御弁23は、モータ54の回転に伴う弁部53の回転により、各ポート61,62,63,65の連通態様が以下の第1モード〜第3モードに切り替えられる。すなわち、第1モードは、供給ポート62と第1ポート61(第1油圧室43)とが連通するとともに排出ポート65と第2ポート63(第2油圧室44)とが連通する。第2モードは、供給ポート62と第2ポート63(第2油圧室44)とが連通するとともに排出ポート65と第1ポート61(第1油圧室43)とが連通する。第3モードは、各ポート61,62,63,65が全て閉鎖された状態となる。
【0040】
このような第1モード〜第3モードの切り替えは、調整弁52に対する弁部53の周方向の相対位相差に基づいて行われる。この相対位相差は、トーションバー56の捩れに対する復元力に応じてモータ54に作用するトルクの変化、すなわちモータ54の電流値に基づいて検出される。具体的には、現在の弁部53の位置に応じたモータ54の実電流値が検出されるとともに、この実電流値が目標位置に対応するモータ54の目標電流値と一致するようにモータ54の電流値が制御される。
【0041】
また、流量制御弁23は、モータ54の回転に伴う弁部53の回転により、第1モードのときの第2油路26(第1油圧室43)に供給する作動油の供給量及び第3油路27(第2油圧室44)から排出される作動油の排出量と、第2モードのときの第2油圧室44に供給する作動油の供給量及び第1油圧室43から排出される作動油の排出量をそれぞれ調節する。
【0042】
このような作動油の供給量の制御は、開度指令値TA(図2参照)に基づいて、第1モードにおける第1ポート61の開度、第2モードにおける第2ポート63の開度がそれぞれ制御されることにより実現される。すなわち、第1ポート61の要求開度及び第2ポート63の要求開度となるようにモータ54の電流量が制御される。これにより、各ポート61,63に対する作動油の給排量、換言すれば油圧シリンダ21の各油圧室43,44に対する作動油の給排量が調節される。
【0043】
第1モード及び第2モードからモータ54の電流供給が停止されたとき、トーションバー56の復元力により弁部53は各ポート61,62,63,65の全てが閉鎖した状態(図4の弁部53の位置、以下、「閉鎖状態」)に応じた位置に維持され、各ポート61,62,63,65の連通態様は第3モードとなる。
【0044】
次に、流量制御弁23内の作動油の流れについて説明する。
車両の直進走行時または停止時のようにステアリング操作を行わないとき、すなわち、閉鎖状態に維持されているとき、図4に示すように、弁部53の凹部68は、第1ポート61の凹部61C及び第2ポート63の凹部63Cのそれぞれと径方向に重ならない。すなわち、流量制御弁23は第3モードとなる。このとき、電動ポンプ22は停止する。
【0045】
車両が左旋回するようにステアリング操作したとき、図5(a)に示すように、弁部53が図中の矢印Y1のように回動することにより、供給ポート62と第1ポート61とが連通した状態、すなわち第1モードとなる。このとき、図中の矢印R1のように、供給ポート62から吐出された作動油は、第1ポート61を介して第1油圧室43(図3参照)に供給される。一方、図中の矢印R2のように、第2油圧室44(図3参照)から流量制御弁23に向けて排出された作動油は、第2ポート63から排出ポート65を流通するとともに第4油路28を介して貯留タンク24に排出される。
【0046】
車両が右旋回するようにステアリング操作したとき、図5(b)に示すように、弁部53が図中の矢印Y2のように回動することにより、供給ポート62と第2ポート63とが連通した状態、すなわち第2モードとなる。このとき、図中の矢印R3のように、供給ポート62から吐出された作動油は、第2ポート63を介して第2油圧室44に供給される。一方、図中の矢印R4のように、第1油圧室43から流量制御弁23に向けて排出された作動油は、第1ポート61から排出ポート65を流通するとともに第4油路28を介して貯留タンク24に排出される。
【0047】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ECU31が油圧シリンダ21への作動油の給排態様を開度指令値TAとして設定し、この開度指令値TAに基づいて流量制御弁23を制御することにより、油圧シリンダ21に対する作動油の給排態様、換言すれば油圧シリンダ21のアシスト力をそのときどきの車両の運転状態に即したかたちで変更することができる。このため、運転者によるステアリングホイールの操作に応じて一義的に油圧シリンダにおける作動油の給排態様が決定される従来の油圧式パワーステアリングと異なり、油圧シリンダのアシスト力をより高い自由度をもって制御することができるようになる。
【0048】
(2)また、流量制御弁23は、操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vに基づいて算出された開度指令値TAに基づいて制御されるため、上記従来の油圧式パワーステアリング装置と比較して、アシスト力を高精度に制御することができる。
【0049】
(3)本実施形態によれば、運転者によりステアリング操作がなされなくても、流量制御弁23の制御を通じて油圧シリンダ21に対する作動油の給排態様を設定することができるため、駐車支援制御を実行することができる。
【0050】
(4)本実施形態では、トーションバー56の復元力によりモータ54が停止したときに弁部53を閉鎖状態に応じた位置に維持するため、モータ54の駆動により弁部53を閉鎖状態に応じた位置に維持する場合と比較して、容易な構成にて弁部53を閉鎖状態に応じた位置に維持することができる。また例えばモータ54に異常が生じた場合であっても、弁部53が閉鎖状態に応じた位置に自動的に復帰するため、油圧シリンダ21に意図しないアシスト力が発生することを抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と比較して異なる部分について詳細に説明するとともに、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、流量制御弁の構成及び制御が異なる。
【0052】
図6に示すように、流量制御弁80のハウジング81内には、同ハウジング81の長手方向に往復動作する弁部82が収容されている。この弁部82の往復動方向において、弁部82の両端には、磁性体からなる鉄心部89が連結シャフト89Aによってそれぞれ固定されている。これにより、弁部82と鉄心部89とは一体に往復運動するようになる。
【0053】
また、ハウジング81には、その長手方向において異なる位置に、供給ポート83、及び2つの排出ポート84と、第2油路26(第1油圧室43、図1参照)に接続される第1ポート85及び第3油路27(第2油圧室44、図1参照)に接続される第2ポート86とがそれぞれ設けられている。また、往復動方向において、ハウジング81の両端には、コイル87がそれぞれ設けられている。これらコイル87の電磁力により各鉄心部89には吸引力が作用して弁部82とともに往復運動する。なお、コイル87と鉄心部89とにより駆動機構としての電磁ソレノイドが構成されている。
【0054】
各鉄心部89には、弾性部材としてのコイルばね88の一端が取り付けられている。これらコイルばね88の他端は、ハウジング81に取り付けられている。これらコイルばね88は鉄心部89をコイル87から離間させる弾性力を発生する。
【0055】
流量制御弁80は、各鉄心部89の往復運動に伴う弁部82の往復運動により、各ポート83,84,85,86の連通態様が以下の第1モード〜第3モードに切り替えられる。すなわち、第1モードは、供給ポート83と第1ポート85(第1油圧室43)とが連通するとともに排出ポート84と第2ポート86(第2油圧室44)とが連通する。第2モードは、供給ポート83と第2ポート86(第2油圧室44)とが連通するとともに排出ポート84と第1ポート85(第1油圧室43)とが連通する。第3モードは、各ポート83,84,85,86が全て閉鎖された状態となる。
【0056】
このような第1モード〜第3モードの切り替えは、弁部82の往復動方向の位置に基づいて行われる。この位置は、コイル87が鉄心部89を吸引する力を調節することにより制御される。すなわち、弁部82は、コイル87に供給される電流に基づいて上記位置が決定される。
【0057】
また、流量制御弁80は、各鉄心部89の往復運動に伴う弁部82の往復運動により、第1モードのときの第2油路26(第1油圧室43)に供給する作動油の供給量及び第3油路27(第2油圧室44)から排出される作動油の排出量と、第2モードのときの第2油圧室44に供給する作動油の供給量及び第1油圧室43から排出される作動油の排出量をそれぞれ調節する。
【0058】
このような作動油の供給量の制御は、開度指令値TA(図2参照)に基づいて、第1モードにおける第1ポート85の開度、第2モードにおける第2ポート86の開度がそれぞれ制御されることにより実現される。すなわち、第1ポート85の要求開度及び第2ポート86の要求開度となるように各コイル87の電流量が制御される。これにより、各ポート85,86に対する作動油の給排量、換言すれば油圧シリンダ21の各油圧室43,44に対する作動油の給排量が調節される。
【0059】
第1モード及び第2モードから各コイル87の電流供給が停止されたとき、コイルばね88の復元力により弁部82は閉鎖状態(図6(a)の弁部82の位置)に応じた位置に維持され、各ポート83,84,85,86の連通態様は第3モードとなる。
【0060】
次に、流量制御弁80内の作動油の流れについて説明する。
車両の直進走行時及び停止時のようなステアリング操作を行わないとき、すなわち弁部82が閉鎖状態に応じた位置に維持されるとき、図6(a)に示すように、弁部82は、第1ポート85及び第2ポート86の両方を塞ぐようになる。すなわち、流量制御弁80は第3モードとなる。このとき、電動ポンプ22は停止する。
【0061】
車両が左旋回するようにステアリング操作したとき、図6(b)に示すように、図中の左側のコイル87に電流を供給することにより弁部82が図中の矢印Y1のように移動して供給ポート83と第1ポート85とが連通した状態、すなわち第1モードとなる。このとき、図中の矢印R1のように、供給ポート83から吐出された作動油は、第1ポート85を介して第1油圧室43(図1参照)に供給される。一方、図中の矢印R2に示すように、第2油圧室44(図1参照)から流量制御弁80に向けて排出された作動油は、第2ポート86から排出ポート84を流通するとともに第4油路28を介して貯留タンク24(図1参照)に排出される。
【0062】
車両が右旋回するようにステアリング装置したとき、図6(c)に示すように、図中の右側のコイル87に電流を供給することにより弁部82が図中の矢印Y2のように移動して供給ポート83と第2ポート86とが連通した状態、すなわち第2モードとなる。このとき、図中の矢印R3のように、供給ポート83から吐出された作動油は、第2ポート86を介して第2油圧室44に供給される。一方、図中の矢印R4に示すように、第1油圧室43から流量制御弁80に向けて排出された作動油は、第1ポート85から排出ポート84を流通するとともに第4油路28を介して貯留タンク24に排出される。
【0063】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)〜(3)に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)本実施形態では、弁部82の往復動方向の両端に設けられたコイルばね88の復元力により、コイル87の電流供給が停止されたとき、弁部82は閉鎖状態に応じた位置に維持されるため、コイル87の電流供給のみで弁部82を位置制御する場合と比較して、容易な構成にて弁部82を閉鎖状態に応じた位置に維持することができる。また例えばコイル87に異常が生じた場合であっても、弁部82が閉鎖状態に応じた位置に自動的に復帰するため、油圧シリンダ21に意図しないアシスト力が発生することを抑制することができる。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明の油圧式パワーステアリング装置の具体的な構成は、上記各実施形態の内容に限定されるものではなく、例えば以下の変更が可能である。また、以下の変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0065】
・第1実施形態において、トーションバー56を省略することもできる。この場合、図7に示すように、モータ54の回動位置を検出するセンサ57がモータ54に設けられる。このようなセンサ57としては、モータ54に内蔵されたレゾルバやホール素子が挙げられる。そして、ECU31は、センサ57の出力信号に基づいてモータ54の回転方向及び回転量、すなわち回動位置を算出するとともに、この回動位置によって第1モード及び第2モードの切り替え及び第1ポート61及び第2ポート63の開度を制御する。
【0066】
・第2実施形態において、ハウジング81の往復動方向の両端に設けられたコイル87に変えて、図8に示すように、ハウジング81の往復動方向の一端に弁部82を往復させるためのモータ90を設けることもできる。具体的には、弁部82の往復動方向の両端には、連結シャフト89Aの一端が取り付けられる。連結シャフト89Aの他端には、取付部材95が固定されている。モータ90の出力軸91には、往復動方向に沿って延びるシャフト92が取り付けられている。このシャフト92には、雄ねじが形成されたねじ部93が設けられている。モータ90側の取付部材95には、シャフト92のねじ部93に噛み合う雌ねじが形成されたねじ穴94が設けられている。ねじ部93及びねじ穴94によりモータ90の回動運動を往復運動に変換する変換機構として機能する。
【0067】
モータ90が回転することに伴いシャフト92が一体に回転するため、シャフト92のねじ部93と弁部82のねじ穴94とが噛み合うことにより、取付部材95が往復運動するため、弁部82が往復運動するようになる。ここで、弁部82の往復動方向の位置は、上記変換機構におけるモータ90の回転量と弁部82の往復動方向の移動量との関係に基づいて弁部82の往復動方向の位置を検出しつつ、その位置をモータ90の回転量に基づいて制御している。具体的には、現在のモータ90の実回転量を検出するとともに、弁部82の目標位置に対応する目標回転量を算出する。そして、実回転量を目標回転量に一致させるようにモータ90の回転量を制御する。またこの場合、コイルばね88はその復元力により弁部82に往復動方向の力を付与するため、弁部82のがたを補正する役割を果たす。
【0068】
・また、弁部82の往復動方向の位置は、モータ90の回転量に代えて、コイルばね88の弾性力に応じてモータ90に作用するトルク変化によるモータ90の電流値に基づいて弁部82の往復動方向の位置を検出しつつ、その位置をモータ90の電流値に基づいて制御することもできる。具体的には、現在の弁部82の位置に応じたモータ90の実電流を検出するとともに、弁部82の目標位置に対応するモータ90の目標電流値を算出する。そして、実電流を目標電流値に一致させるようにモータ90の電流値を制御する。
【0069】
・第2実施形態において、コイルばね88に代えて板ばねを適用することもできる。要するに、弁部82を往復動方向に付勢することのできる弾性部材であればよい。
・上記各実施形態において、開度指令値TAに基づいて、電動ポンプ22はモータ45の回転速度により流量Qが制御されたが、これに代えて例えば図9に示すようにモータ45の電流値により電動ポンプ22の圧力Pを制御することもできる。すなわち、電流値演算部71Aは、操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vに基づいてモータ45に供給する電流指令値IAを算出する。そして、流量補正制御部78は、電流指令値IAに基づいて第1モード及び第2モードの切り替えと第1モード及び第2モードにおける油圧室へ供給する作動油の流量指令値QAとを算出する。この流量指令値QAはフィードバック制御部73に入力される。一方、フィードバック制御部73には、電流検出部79により検出された実電流IRと、回転角検出部74により検出された実回転角度SRとが入力される。そして、フィードバック制御部73は、流量指令値QAと、実電流IR及び実回転角度SRに基づく電流フィードバック制御とに基づいて駆動回路76に出力するモータ制御信号を生成する。これにより、電動ポンプ22の圧力Pが制御される。一方、流量指令値QAは、開度制御部77に入力される。開度制御部77は、第1実施形態と同様に、流量指令値QAに基づいて流量制御弁23の開度を制御する。
【0070】
・上記各実施形態において、操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vに基づいて開度指令値TAを算出したが、操舵トルクτ及び操舵角θに基づいて開度指令値TAを算出することもできる。また、操舵トルクτ及び車速Vに基づいて開度指令値TAを算出することもできる。また、操舵トルクτ、操舵角θ及び車速Vのいずれかのみに基づいて開度指令値TAを算出することもできる。
【0071】
・上記各実施形態において、油圧式パワーステアリング装置1は電動ポンプ22を制御するためのECUと、流量制御弁23を制御するためのECUとを各別に備えることもできる。この場合、各ECUは、CAN通信による接続がなされる。
【0072】
・上記各実施形態において、走行支援制御として駐車支援制御の他にレーン逸脱抑制制御を実行することもできる。レーン逸脱抑制制御は、走行時に車両に取り付けられるとともに路面の走行レーンを検出するレーン検出手段としてのモニタからの情報に基づいて、ステアリング操作を実行することにより車両が走行レーンから逸脱することを抑制する制御である。レーン逸脱抑制制御では、モニタからの情報である現在の走行レーンに対する車両位置に応じて車両が走行レーンから逸脱することを抑制するためのトルク指令値を算出する。そして、トルク指令値、車速V及び操舵トルクτに基づいて開度指令値TAを算出する。そして、その指令値TAに基づいて、電動ポンプ22の流量Q及び流量制御弁23による各油圧室43,44への作動油の供給の切り替え及び切り替えられた油圧室への作動油の流量を制御する。このような構成によれば、第1実施形態の効果(3)に準じた効果を奏することができる。
【0073】
・上記各実施形態では、電動ポンプ22を用いて油圧シリンダ21の各油圧室43,44に作動油を供給したが、電動ポンプ22に代えて車両のエンジンのクランクシャフトに取り付けられたポンプにより各油圧室43,44に作動油を供給してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…油圧式パワーステアリング装置、21…油圧シリンダ、23…流量制御弁、31…電子制御装置(ECU)、32…トルクセンサ、33…操舵角センサ、34…車速センサ、42…ピストン、43…第1油圧室、44…第2油圧室、51…ハウジング、53…弁部、54…モータ、56…トーションバー、57…センサ、61…第1ポート、62…供給ポート、63…第2ポート、65…排出ポート、81…ハウジング、82…弁部、83…供給ポート、84…排出ポート、85…第1ポート、86…第2ポート、87…コイル、88…コイルばね(弾性部材)、90…モータ、93…ねじ部、94…ねじ穴、τ…操舵トルク、θ…操舵角、V…車速。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリング操作を油圧シリンダによってアシストする油圧式パワーステアリング装置において、
前記油圧シリンダに対する作動油の給排量を変更可能な流量制御弁と、
前記車両の運転状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に応じて前記流量制御弁を制御する制御部とを含む
ことを特徴とする油圧式パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記検出手段は操舵トルク及び操舵角並びに車速の少なくとも一つを前記車両の運転状態として検出する
ことを特徴とする請求項1記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、目標駐車位置と現在の車両位置との位置関係に応じた情報を取り込んで同情報と前記検出される車両の運転状態の検出結果とに基づいて前記油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に基づいて前記車両位置が前記目標駐車位置と一致するように前記流量制御弁を制御する
請求項2に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記制御部は、路面の走行レーンにおける車両位置に応じた情報を取り込んで同情報と前記検出される車両の運転状態の検出結果とに基づいて前記油圧シリンダに作動油を給排する際の給排態様を設定し、その設定された給排態様に基づいて前記車両が前記走行レーン内に位置するように前記流量制御弁を制御する
請求項2または3に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記油圧シリンダは、転舵シャフトに設けられたピストンによりその内部が第1油圧室と第2油圧室とに区画されるものであり、
前記流量制御弁は、
作動油が供給される供給ポート、前記作動油が排出される排出ポート、前記第1油圧室に接続される第1ポート、前記第2油圧室に接続される第2ポートがそれぞれ周方向の異なる位置に形成されたハウジングと、このハウジングに回転可能に収容されるとともに、各ポートの連通状態を、前記供給ポートと前記第1ポートとを連通するとともに前記排出ポートと前記第2ポートとを連通する第1モードと、前記供給ポートと前記第2ポートとを連通するとともに前記排出ポートと前記第1ポートとを連通する第2モードとに切り替える弁部と、同弁部を回動駆動するモータとを含み、
前記制御部は、前記設定された給排態様に応じて前記弁部の回動量を前記モータを通じて調節することにより前記第1モード及び前記第2モードの切り替えと、それら各態様における前記第1及び第2ポートの作動油の給排量を調節する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧式パワーステアリング装置において、
前記流量制御弁は前記モータの駆動に基づく前記弁部の回動によって捻られるトーションバーを備え、
同トーションバーは、前記モータが停止したとき、各ポートの連通状態を前記第1モードまたは前記第2モードから前記各ポートのいずれも閉鎖する状態に応じた位置に前記弁部を戻す
ことを特徴とする油圧式パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項5に記載の油圧式パワーステアリング装置において、
前記流量制御弁は前記モータの回転位置を検出するセンサを有し、
前記センサにより検出された前記モータの回動位置に基づいて前記弁部の位置が制御される
ことを特徴とする油圧式パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記油圧シリンダは、転舵シャフトに設けられたピストンによりその内部が第1油圧室と第2油圧室とに区画されるものであり、
前記流量制御弁は、
作動油が供給される供給ポート、前記作動油が排出される排出ポート、前記第1油圧室に接続される第1ポート、前記第2油圧室に接続される第2ポートがその長手方向の異なる位置にそれぞれ形成されたハウジングと、このハウジングに往復運動可能に収容されるとともに、各ポートの連通状態を、前記供給ポートと前記第1ポートとを連通するとともに前記排出ポートと前記第2ポートとを連通する第1モードと、前記供給ポートと前記第2ポートとを連通するとともに前記排出ポートと前記第1ポートとを連通する第2モードとに切り替える弁部と、同弁部を往復駆動する駆動機構とを含み、
前記制御部は、前記設定された給排態様に応じて前記弁部を前記長手方向の移動量を前記駆動機構を通じて調節することにより前記第1モード及び前記第2モードの切り替えと、それら各態様における前記第1及び第2ポートの作動油の給排量を調節する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記流量制御弁はモータの回動運動を往復運動に変換する変換機構を前記駆動機構として有するとともに、同変換機構を通じた前記弁部の往復動方向における移動量に応じて弾性変形する弾性部材を有し、
前記制御部は前記弾性部材の弾性力に応じて前記モータに作用するトルクにより変化する同モータの電流値に基づいて前記弁部の往復動方向における位置を検知しつつその位置を制御する
請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項10】
前記流量制御弁はモータの回動運動を往復運動に変換する変換機構を前記駆動機構として有し、
前記制御部は前記変換機構における前記モータの回動量と前記弁部の往復動方向における移動量との関係に基づいて前記弁部の往復動方向における位置を検出しつつその位置をモータの回動量に基づいて制御する
請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置。
【請求項11】
前記流量制御弁は、前記弁部の端部に設けられて同弁部をその電磁力により吸引駆動する電磁ソレノイドと同電磁ソレノイドの吸引力に抗して前記弁部を付勢する弾性部材とを含み、この電磁ソレノイドの電磁力を調節することにより前記弁部の往復動方向における位置を制御する
請求項8に記載の油圧式パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−86791(P2012−86791A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237426(P2010−237426)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】