説明

油圧緩衝器の減衰力調整構造

【課題】 油圧緩衝器の減衰力調整構造において、フロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートすること。
【解決手段】 油圧緩衝器10の減衰力調整構造であって、エンドキャップ65の孔80にフィルター90を設けてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧緩衝器の減衰力調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧緩衝器の減衰力調整構造として、特許文献1に記載の如く、シリンダの油室に油液を収容し、シリンダに挿入されたピストンロッドの挿入端に設けたピストンをシリンダに摺動可能に嵌挿し、ピストンの摺動によって加圧される一方の油室から他方の油室への油液の流れを、該ピストンに設けた減衰バルブにより制御して減衰力を発生させるものであり、減衰バルブの背面側に、加圧された一方の油室にピストンロッドに設けたバイパス路及びオリフィスを介して連通する背圧室を設け、背圧室は、ピストンロッドに取付けられるバルブハウジングと、バルブハウジングに結合されたエンドキャップのバルブシートに接離可能に支持されるフロートバルブにより、他方の油室に対して区画されるものがある。
【0003】
このとき、フロートバルブは背圧室の圧力を受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの弾性撓み部をエンドキャップの撓み規制面との間で弾性変形させる。フロートバルブの弾性撓み部が背圧室の圧力によりエンドキャップのバルブシートの内周側に段差をなすように設けた撓み規制面(段差面)によって許容される作動量(最大撓み量)だけ撓み、背圧室の圧力の立ち上りをその撓み分だけ遅れさせる。
【0004】
これにより、ピストンの動きが通常の低周波大ストローク域にあるときには、例えば伸側行程で、加圧された油室の圧力はオリフィスによる圧力伝搬遅れをほとんど伴なうことなく背圧室に伝わり、背圧室の高圧力を受ける減衰バルブを開き難くし、減衰バルブの減衰力を高くする。
【0005】
車両が路面の凹凸に乗り、ピストンの動きが高周波微小ストローク域に入ると、加圧された油室の圧力はオリフィスによる圧力伝搬遅れを伴なうことに加え、フロートバルブの弾性撓み部の上述の撓みに起因する背圧室の体積増加により、背圧室の圧力の立ち上りを遅れさせ、減衰バルブを開き易くして減衰力を低くする。
【0006】
また、フロートバルブは、例えば圧側行程で、他方の油室の加圧時に、該他方の油室の圧力をエンドキャップに設けた孔から受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートから剥離させ、該他方の油室の圧力を背圧室に導入可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-133348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の油圧緩衝器の減衰力調整構造には以下の問題点がある。
油圧緩衝器の内部には、製造過程で混入する無数のコンタミネーション(不純物)が存在する。前述の例えば圧側行程で、加圧された他方の油室の圧力が、エンドキャップの孔を経由してフロートバルブをエンドキャップのバルブシートから剥離し、背圧室に導入されるとき、他方の油室に混入していたコンタミネーションがフロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートとの間に噛み込むおそれがある。
【0009】
フロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートとの間にコンタミネーションが噛み込むと、伸側行程で、フロートバルブの被支持部がエンドキャップのバルブシートに密着して背圧室の油をシールできなくなり、背圧室の圧力上昇が得られなくなる。従って、低周波大ストローク域の高い減衰力が得られなくなってしまう。
【0010】
本発明の課題は、油圧緩衝器の減衰力調整構造において、フロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートとの間にコンタミネーションが噛み込むことを防止し、減衰力の周波数応答特性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、シリンダの油室に油液を収容し、シリンダに挿入されたピストンロッドの挿入端に設けたピストンをシリンダに摺動可能に嵌挿し、ピストンの摺動によって加圧される一方の油室から他方の油室への油液の流れを、該ピストンに設けた減衰バルブにより制御して減衰力を発生させるものであり、減衰バルブの背面側に、加圧された一方の油室にピストンロッドに設けたバイパス路及びオリフィスを介して連通する背圧室を設け、背圧室は、ピストンロッドに取付けられるバルブハウジングと、バルブハウジングに結合されたエンドキャップのバルブシートに接離可能に支持されるフロートバルブにより、他方の油室に対して区画され、フロートバルブは背圧室の圧力を受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの弾性撓み部をエンドキャップの撓み規制面との間で弾性変形させ、フロートバルブは他方の油室の加圧時に、該他方の油室の圧力をエンドキャップに設けた孔から受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートから剥離させ、該他方の油室の圧力を背圧室に導入可能にする油圧緩衝器の減衰力調整構造であって、エンドキャップの前記孔にフィルターを設けてなるようにしたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記フロートバルブが板ばねからなり、該フロートバルブの外周の被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの中央の弾性撓み部をエンドキャップのバルブシートに囲まれる撓み規制面との間で弾性変形させるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において更に、前記フロートバルブの外周が支持ばねによりエンドキャップのバルブシートに着座されて支持されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)
(a)エンドキャップに設けられ、加圧された他方の油室の圧力を背圧室に導入する孔に、フィルターを設けた。従って、例えば圧側行程で、加圧された他方の油室の圧力をエンドキャップの孔からフロートバルブに及ぼし、このフロートバルブをエンドキャップのバルブシートから剥離し、背圧室に導入するとき、他方の油室に混入していたコンタミネーションはその孔に設けたフィルターにより捕捉され、背圧室に侵入しない。製造過程でコンタミネーションが混入していても、フロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートとの間にコンタミネーションが噛み込むおそれがなくなる。これにより、伸側行程で、フロートバルブの被支持部はエンドキャップのバルブシートに確実に密着して背圧室の油をシールし、背圧室の圧力を上昇させて減衰バルブを開き難くし、低周波大ストローク域の減衰バルブの減衰力を高くする。即ち、減衰力の周波数応答特性を向上する。
【0015】
(請求項2)
(b)前記フロートバルブが板ばねからなり、該フロートバルブの外周の被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの中央の弾性撓み部をエンドキャップのバルブシートに囲まれる撓み規制面との間で弾性変形させるようにした。フロートバルブの弾性撓み部がエンドキャップの撓み規制面に対する作動量(最大撓み量)を安定化できる。背圧室の圧力の立ち上り遅れが変化しないものになり、減衰力の周波数応答特性のばらつきを生じない。
【0016】
(請求項3)
(c)前記フロートバルブの外周が支持ばねによりエンドキャップのバルブシートに着座されて支持される。コンパクトな構造により、フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートに安定的に接離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は油圧緩衝器を示す模式断面図である。
【図2】図2は減衰力調整手段を示す断面図である。
【図3】図3は図2の要部拡大断面図である。
【図4】図4は油圧緩衝器の油液の流れを示し、(A)は伸側行程の低周波大ストローク域を示す模式図、(B)は伸側行程の高周波微小ストローク域を示す模式図、(C)は圧側行程を示す模式図である。
【図5】図5はスリットバルブを示す平面図である。
【図6】図6はスプリングを示す平面図である。
【図7】図7はフロートバルブを示す斜視図である。
【図8】図8は支持ばねを示す斜視図である。
【図9】図9はエンドキャップに設けたフィルターの作用を示す模式図である。
【図10】図10は減衰力調整手段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
減衰力調整式油圧緩衝器10は、図1に示す如く、ダンパチューブ11にシリンダ12を内蔵した二重管からなる複筒式であり、油液を収容したシリンダ12にピストンロッド13を挿入し、ダンパチューブ11の下部に車軸側取付部を備えるとともに、ピストンロッド13の上部に車体側取付部14を備え、車両の懸架装置を構成する。
【0019】
油圧緩衝器10は、ダンパチューブ11の外周の下スプリングシート15と、ピストンロッド13の上端部の車体側取付部14に設けられた上スプリングシート(不図示)の間に懸架ばね16を介装する。
【0020】
油圧緩衝器10は、シリンダ12に挿入されるピストンロッド13のためのロッドガイド17、ブッシュ18、オイルシール19を、ダンパチューブ11の上端加締部11Aとシリンダ12の上端部の間に挟圧固定している。
【0021】
減衰力調整式油圧緩衝器10は、ピストンバルブ装置20とボトムバルブ装置40を有する。ピストンバルブ装置20とボトムバルブ装置40は、ピストンロッド13のシリンダ12への挿入端に設けた後述するピストン24がシリンダ12を摺動することによって生ずる油液の流れを制御して減衰力を発生させ、それらが発生する減衰力により、懸架ばね16による衝撃力の吸収に伴うピストンロッド13の伸縮振動を制振する。尚、ピストンロッド13は、大径部13Aと小径部13Bを有し、ピストンロッド13のシリンダ12への挿入端を小径部13Bとし、大径部13Aと小径部13Bの境界に段差状肩部13Cを設けている。
【0022】
(ピストンバルブ装置20)
ピストンバルブ装置20は、図2、図3に示す如く、シリンダ12に挿入されたピストンロッド13の小径部13Bの外周に、ストッパピース22、23、ピストン24、バルブストッパ25を挿着し、これらを小径部13Bの先端螺子部21に螺着される、サブ伸側減衰バルブ60のためのバルブハウジング61により、ピストンロッド13の肩部13Cとの間に挟圧固定する。尚、ストッパピース22は、ピストンロッド13の後述するバイパス路51に連通してシリンダ12のロッド側油室12Aに開口する流路22Aを備える。
【0023】
ピストン24は、シリンダ12に摺動可能に嵌挿され、伸側流路31と圧側流路32を設け、ピストン24とバルブストッパ25の間にディスクバルブ状のメイン伸側減衰バルブ33の環状中央部を挟圧し、ピストン24とストッパピース23の間にディスクバルブ状の圧側減衰バルブ34の環状中央部を挟圧する。即ち、ピストンバルブ装置20は、ピストン24によりシリンダ12内をロッド側室12A(上油室)とピストン側室12B(下油室)に区画し、ロッド側室12Aとピストン側室12Bはピストン24に設けた伸側流路31及び該伸側流路31を開閉するメイン伸側減衰バルブ33と、圧側流路32及び該圧側流路32を開閉する圧側減衰バルブ34のそれぞれを介して連通される。
【0024】
従って、伸長時には、ロッド側室12Aの油が、ピストン24の伸側流路31を通り、メイン伸側減衰バルブ33を撓み変形させて開き、ピストン側室12Bに導かれ、伸側減衰力を発生させる。また、圧縮時には、ピストン側室12Bの油が、ピストン24の圧側流路32を通り、圧側減衰バルブ34を撓み変形させて開き、ロッド側室12Aに導かれ、圧側減衰力を発生させる。
【0025】
(ボトムバルブ装置40)
油圧緩衝器10は、ダンパチューブ11とシリンダ12の間隙をリザーバ室12Cとし、このリザーバ室12Cの内部を油室とガス室に区画している。そして、ボトムバルブ装置40は、シリンダ12の内部のピストン側室12Bとリザーバ室12Cとを仕切るボトムピース41をシリンダ12の下端部とダンパチューブ11の底部との間に配置し、ダンパチューブ11の底部とボトムピース41の間の空間をボトムピース41に設けた流路によりリザーバ室12Cに連絡可能にする。
【0026】
ボトムバルブ装置40は、ボトムピース41に設けた圧側流路41Aと伸側流路(不図示)をそれぞれ開閉するボトムバルブとしての、ディスクバルブ42とチェックバルブ43を備える。
【0027】
そして、伸長時には、シリンダ12から退出するピストンロッド13の退出容積分の油が、チェックバルブ43を押し開き、リザーバ室12Cからボトムピース41の伸側流路(不図示)経由でピストン側室12Bに補給される。圧縮時には、シリンダ12に進入するピストンロッド13の進入容積分の油が、ピストン側室12Bからボトムピース41の圧側流路41Aを通ってディスクバルブ42を撓み変形させて開き、リザーバ室12Cへ押出され、圧側減衰力を得る。
【0028】
尚、油圧緩衝器10にあっては、シリンダ12のロッド側室12Aに位置するピストンロッド13まわりで、ピストン24の側(下側)に固定されたリバウンドシート46の上に、ピストンロッド13の伸切り時(油圧緩衝器10の最伸長状態)に圧縮変形せしめられるリバウンドラバー47を備えている。
【0029】
しかるに、油圧緩衝器10は、ピストンバルブ装置20の減衰力、本実施例では伸側減衰力を調整するための伸側減衰力調整装置50を以下の如くに備える。
【0030】
伸側減衰力調整装置50は、図2、図3に示す如く、メイン伸側減衰バルブ33をバイパスしてロッド側室12Aとピストン側室12Bを連通するバイパス路51をピストンロッド13の外面の長手方向に設け、このバイパス路51にサブ伸側減衰バルブ60(減衰力調整部)を設ける。ピストンロッド13の小径部13Bに挿着されているメイン伸側減衰バルブ33のバルブストッパ25の下端中央環状突出部と、ピストンロッド13の小径部13Bの先端螺子部21に螺着されるバルブハウジング61の本体61Aの上端中央環状突出部との間にディスクバルブ状のサブ伸側減衰バルブ60の環状中央部を挟圧する。即ち、伸側減衰力調整装置50は、バイパス路51の一端をロッド側室12Aに開口するとともに、バイパス路51の他端をバルブストッパ25に設けたサブ流路25Aに開口し、サブ伸側減衰バルブ60によりこのサブ流路25Aをピストン側室12Bに対して開閉する。
【0031】
伸側減衰力調整装置50は、サブ伸側減衰バルブ60をバルブストッパ25に添設し、バルブストッパ25のピストンラウンド25Bに対して接離させる。そして、伸側減衰力調整装置50は、サブ伸側減衰バルブ60の背面側に、ロッド側室12A(伸長時に加圧される一方の油室)にスリットバルブ62のオリフィス62Aを介して連通する背圧室63を設け、背圧室63を一枚以上の積層板ばね71からなるフロートバルブ70により閉じる。スリットバルブ62は、サブ伸側減衰バルブ60の背面に添設され、メイン伸側減衰バルブ33のバルブストッパ25の下端中央環状突出部とバルブハウジング61の本体61Aの上端中央環状突出部との間に環状中央部を挟圧される。スリットバルブ62は、図5に示す如く、環状中央部の内周にスリットを備え、各スリットをオリフィス62Aとする。
【0032】
伸側減衰力調整装置50は、バルブハウジング61をピストンロッド13の小径部13Bの先端螺子部21に螺着される本体61Aからなるものとし、本体61Aの螺子部21に螺着される円板部aの外周側の下部に環状部bを突設し、本体61Aの環状部bの内周にエンドキャップ65を螺着結合して一体に備える。バルブハウジング61は本体61Aの円板部aの周方向複数位置に複数の連絡孔61Bを設け、バルブハウジング61の内部で軸方向の両側に背圧室63を連続可能にする。
【0033】
背圧室63は、サブ伸側減衰バルブ60のバルブハウジング61と、バルブハウジング61の本体61Aの円板部aの外周に摺動可能に設けられてスプリング66によりサブ伸側減衰バルブ60の背面に当接するように付勢されるバックアップカラー67と、エンドキャップ65における背圧室63に臨む上面であるバルブシート68Aに接離可能に支持されるフロートバルブ70により、ピストン側油室12B(他方の油室)に対して区画される。バックアップカラー67はバルブハウジング61の本体61Aの円板部aの外周の環状溝に装填したシール材61Cに液密に上下に摺動し、バックアップカラー67の上端面をサブ伸側減衰バルブ60の背面に衝合する。スプリング66は、図6に示す如く、環状中央部の外周に十字状の張り出し部66Aを備え、環状中央部をバルブハウジング61の本体61Aの上端中央環状突出部まわりの上面に着座して支持され、張り出し部66Aの先端部の上にバックアップカラー67を支持する。
【0034】
即ち、伸側減衰力調整装置50は、サブ伸側減衰バルブ60の背面側に、ピストンロッド13に取付けられるバルブハウジング61と、バルブハウジング61の外周に摺動可能に設けられてサブ伸側減衰バルブ60の背面に押当てられるバックアップカラー67と、バルブハウジング61の内部をシリンダ12のピストンロッド13が挿入されないピストン側室12Bに対して区画するフロートバルブ70とにより区画形成される背圧室63を設ける。そして、背圧室63の内部で、バルブハウジング61の本体61Aの円板部aの上面に着座して支持されるスプリング66により、バックアップカラー67の上端面をサブ伸側減衰バルブ60の背面に付勢して押当てる。
【0035】
フロートバルブ70は、図7に示す如く、孔なし円板状の板ばね71からなり、板ばね71の外周(外縁側端面)の被支持部71Aが支持ばね72によりエンドキャップ65のバルブシート68Aの上に着座されて支持される。支持ばね72は、本実施例では、図8に示す如く、薄板環状ばねであり、板状円環部72Aの外周において一定の間隔を介する周方向複数位置に、各複数の上向きばね脚72Bと下向きばね脚72Cとを設け、それらのばね脚72Bとばね脚72Cを円環部72Aの外周から交互に斜め上向きと斜め下向きに延在してなる。支持ばね72の上向きばね脚72Bをバルブハウジング61の本体61Aの円板部aの下端面であるばね担持面69Aに担持させ、下向きばね脚72Cによりフロートバルブ70の板ばね71の被支持部71Aをエンドキャップ65のバルブシート68Aの上に着座させて支持する。
【0036】
フロートバルブ70の板ばね71の外周はエンドキャップ65のバルブシート68A上にて固定保持されることなく、バルブシート68Aの面に沿って滑り移動自由とされ、板ばね71のばね定数を低く設定している。フロートバルブ70の支持ばね72もバルブハウジング61のばね担持面69Aに沿って滑り移動自由とされている。
【0037】
フロートバルブ70は、背圧室63の圧力により押し込まれて湾曲状に撓む板ばね71の中央の弾性撓み部71Bの撓み量を規制するばね撓み規制面68Bをエンドキャップ65に設けている。ばね撓み規制面68Bは、エンドキャップ65におけるバルブシート68Aに囲まれる内周側に、該バルブシート68Aに対する一定の段差をなすように設けられる。本発明における撓み規制面68Bはバルブシート68Aとの境界部に設けられるテーパ状の下り勾配面68Cと、下り勾配面68Cの内周側に連なる平坦面68Dとからなり、バルブシート68Aに対して平坦面68Dの深さ分の段差をなす。本発明におけるバルブシート68A及び撓み規制面68Bは円形状をなし、下り勾配面68Cは円錐状テーパ面をなす。バルブシート68A上に着座する板ばね71はこの段差分だけ撓んでその中央の弾性撓み部71Bをばね撓み規制面68Bに衝接し、それ以上の撓みを制止される。
【0038】
フロートバルブ70は、伸側行程では、加圧されるロッド側室12Aの圧力がバイパス路51からオリフィス62Aを介して印加される背圧室63の圧力を受ける。伸側行程では、フロートバルブ70は、背圧室63の圧力を受け、該フロートバルブ70の板ばね71の被支持部71Aをエンドキャップ65のバルブシート68Aに着座させるとともに、該フロートバルブ70の板ばね71の弾性撓み部71Bをエンドキャップ65の撓み規制面68Bとの間で弾性撓み変形させ、板ばね71の最大撓みを規制する。逆の圧側行程では、加圧されるピストン側室12Bの圧力がエンドキャップ65の中央面に設けてある連通孔80からフロートバルブ70の板ばね71に及び、支持ばね72が撓み、フロートバルブ70の板ばね71の被支持部71Aをエンドキャップ65のバルブシート68Aから剥離させ、ピストン側室12Bの圧力を背圧室63に導入可能にする。フロートバルブ70は、上述の伸側行程と圧側行程を繰り返し、伸側行程では背圧室63の体積を増加させてロッド側室12Aの圧力の伝搬に遅れを生じさせる。板ばね71と支持ばね72のばね定数を互いに独立に設定でき、板ばね71の積層枚数を少なくして伸側を弱く設定することによりロッド側室12Aから背圧室63への圧力伝搬遅れを発生させ、ピストンバルブ装置20及び伸側減衰力調整装置50の減衰力の応答速度を調整できる。
【0039】
伸側減衰力調整装置50は、フロートバルブ70の押し込みストロークをエンドキャップ65のバルブシート68Aに対するばね撓み規制面68Bの段差量により規制し、その押し込みストロークを0.3〜2mm程度の微小ストロークにすることができ、伸・圧行程の切換わり時の応答性を向上できる。尚、エンドキャップ65に設けた連通孔80をオリフィスとすることもできる。
【0040】
従って、油圧緩衝器10は、伸側減衰力調整装置50を備えて以下の如くに動作する。
(1)伸側行程で、油圧緩衝器10のピストンの動きが通常の低周波大ストローク域にあるときには、図4(A)に示す如く、加圧されたロッド側室12Aの圧力は、オリフィス62Aによる圧力伝搬遅れをほとんど伴なうことなく背圧室63に伝わり、板ばね71からなるフロートバルブ70を押し込みストロークさせた後、背圧室63の圧力が上昇すると、この背圧室63の圧力を受けたサブ伸側減衰バルブ60は開くことなく、メイン伸側減衰バルブ33が開いて減衰力を発生させる。メイン伸側減衰バルブ33は通常走行時の操安性を良好とするように、サブ伸側減衰バルブ60よりも高い撓み剛性を備えていて通常必要な減衰力を発生させる。
【0041】
(2)伸側行程で、車両が路面の凹凸に乗り、ピストンの動きが高周波微小ストローク域に入ると、図4(B)に示す如く、加圧されたロッド側室12Aの圧力はオリフィス62Aによる圧力伝搬遅れを伴ない、背圧室63の圧力を上昇させず、サブ伸側減衰バルブ60は開き易くなって減衰力を低くする。
【0042】
(3)圧側行程では、図4(C)に示す如く、圧側減衰バルブ34が開いて減衰力を発生させる。
【0043】
油圧緩衝器10は、伸側減衰力調整装置50により以下の減衰力特性を具備する。
(a)ピストンの動きの低周波大ストローク域で、板ばね71により付勢されているフロートバルブ70の押し込みストロークは大きく、背圧室63の圧力の上昇は早く、伸・圧行程の切換わり時にも違和感なく応答でき、応答速度が速い。また、板ばね71は占有スペースが小さく、ばねの積層枚数の調整によりばね力の設定も容易である。
【0044】
サブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に対する受圧面積、オリフィス62Aの流路面積、又はフロートバルブ70の板ばね71のばね定数の変更により、油圧緩衝器10が発生する減衰力の周波数特性を容易に調整できる。
【0045】
(b)メイン伸側減衰バルブ33とサブ伸側減衰バルブ60を備え、サブ伸側減衰バルブ60の背面側に背圧室63を設ける。メイン伸側減衰バルブ33の撓み剛性をサブ伸側減衰バルブ60の撓み剛性よりも大きくすることにより、ピストンの動きが低周波大ストローク域にある通常時には、前述(1)により、メイン伸側減衰バルブ33によって高い減衰力を得ることができ、カーブ走行中のフワフワ感をなくすことができる。ピストンの動きが高周波微小ストローク域に入ったときには、前述(2)により、サブ伸側減衰バルブ60が開き易くなって減衰力を低くし、悪路走行時の微振動のゴツゴツ感をなくすことができる。即ち、通常の低周波大ストローク域ではメイン伸側減衰バルブ33がピストンの動きの低速〜高速の広い範囲で安定した減衰力を提供して操安性を確保し、高周波微振動はサブ伸側減衰バルブ60が開くことによって吸収し、乗心地性を確保できる。
【0046】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)前記フロートバルブ70が板ばね71からなり、該フロートバルブ70の外周の被支持部71Aをエンドキャップ65のバルブシート68Aに着座させるとともに、該フロートバルブ70の中央の弾性撓み部71Bをエンドキャップ65のバルブシート68Aに囲まれる撓み規制面68Bとの間で弾性変形させるようにした。フロートバルブ70の弾性撓み部71Bがエンドキャップ65の撓み規制面68Bに対する作動量(最大撓み量)を安定化できる。背圧室63の圧力の立ち上り遅れが変化しないものになり、減衰力の周波数応答特性のばらつきを生じない。
【0047】
(b)前記フロートバルブ70の外周が支持ばね72によりエンドキャップ65のバルブシート68Aに着座されて支持される。コンパクトな構造により、フロートバルブ70の被支持部71Aをエンドキャップ65のバルブシート68Aに安定的に接離させることができる。
【0048】
尚、油圧緩衝器10の伸側減衰力調整装置50は、ピストンの大ストローク域ではサブ伸側減衰バルブ60を確実に閉じ、高周波微小ストローク域ではサブ伸側減衰バルブ60を開き易くし、減衰力の周波数依存特性を安定にするため、以下の構成を具備する。
【0049】
(i)サブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に対する受圧面積A2が、サブ伸側減衰バルブ60のサブ流路25A(ロッド側室12A)に対する受圧面積A1より大きくなるように設定する。A1はバルブストッパ25のピストンラウンド25Bの内径により規定され、A2はバルブハウジング61の外周に摺接するバックアップカラー67の内径により規定される(図3)。
A2は、好適には、A1の1.1倍から1.5倍の範囲内に入るように設定される。
【0050】
(ii)バックアップカラー67におけるサブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に臨む背面に対する当接位置が、バルブストッパ25のピストンラウンド25Bがサブ伸側減衰バルブ60のサブ流路25A(ロッド側室12A)に臨む正面に対する当接位置より、サブ伸側減衰バルブ60の内周側に配置される。
【0051】
バックアップカラー67は、図3に示す如く、バルブハウジング61の外周に摺接する筒状部67Aと、筒状部67Aの上部から該筒状部67Aの内周よりすぼめられる環状部67Bを有する。バックアップカラー67は、環状部67Bの先端部(上端部)をサブ伸側減衰バルブ60の背面に当接するものであり、筒状部67Aの上部外周から環状部67Bの先端部までの外周をテーパ状に縮径し、環状部67Bの先端部の直径をバルブストッパ25のピストンラウンド25Bの直径より小径とする。これにより、バックアップカラー67は、サブ伸側減衰バルブ60の背面に当接する環状部67Bの先端部を、バルブストッパ25のピストンラウンド25Bがサブ伸側減衰バルブ60の正面に当接する位置より該サブ伸側減衰バルブ60の内周側に配置する。
【0052】
尚、バックアップカラー67は、筒状部67Aの上部内周からすぼめられる環状部67Bの基部内周を、該筒状部67Aの内周に概ね直交する段差面とし、スプリング66の張り出し部66Aの先端部の上にバックアップカラー67における環状部67Bの基部内面を支持させる。
【0053】
これにより、本実施例では以下の作用効果を奏する。
(a)サブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に対する受圧面積A2が、サブ伸側減衰バルブ60の加圧されたロッド側室12Aに対する受圧面積A1より大きくなるように設定される。従って、ピストン24の大ストローク域で、加圧されたロッド側室12Aの圧力が先にサブ伸側減衰バルブ60の正面に作用し、その後オリフィス62Aによる圧力伝搬遅れをほとんど伴なうことなくサブ伸側減衰バルブ60の背面に作用するとき、サブ伸側減衰バルブ60のピストンラウンド25Bが規定する正面の受圧面積A1と、バックアップカラー67の内周が規定する背面の受圧面積A2の差により、背圧室63の圧力がバックアップカラー67を介してサブ伸側減衰バルブ60を閉じる力の方が確実に大きくなる。従って、背圧室63を構成するバックアップカラー67の摺動部等における圧力のリークやフリクションがあっても、サブ伸側減衰バルブ60を確実に閉じ、サブ伸側減衰バルブ60の減衰力を確実に高くする。
【0054】
(b)バックアップカラー67のサブ伸側減衰バルブ60の背面に対する当接位置が、ピストン24のピストンラウンド25Bがサブ伸側減衰バルブ60の正面に対する当接位置より、該サブ伸側減衰バルブ60の0.2〜1.0mm内周側に配置される。従って、背圧室63の圧力がバックアップカラー67の内面に及ぼす荷重が、サブ伸側減衰バルブ60のピストンラウンド25Bに対する当接位置より内側に作用し、サブ伸側減衰バルブ60を開き易くするものになる。このことは、前述(a)の如くにサブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に対する受圧面積を大きく設定した場合であっても、ピストン24の微小ストローク域で、背圧室63の圧力が上昇しないことと相まって、サブ伸側減衰バルブ60を一層開き易くすることを意味し、サブ伸側減衰バルブ60の減衰力を低く、乗り心地を向上する。
【0055】
(c)サブ伸側減衰バルブ60の背圧室63に対する受圧面積が、該サブ伸側減衰バルブ60の前記加圧されたロッド側室12Aに対する受圧面積の1.1倍から1.5倍の範囲内に入るように設定される。従って、前述(a)のピストン24の大ストローク域で、サブ伸側減衰バルブ60を一層確実に閉じ、サブ伸側減衰バルブ60の減衰力を確実に高くすることができる。
【0056】
(d)バックアップカラー67がバルブハウジング61の外周に摺動可能に設けられる。従って、バックアップカラー67が設けられるバルブハウジング61の外周サイズを小型にし、減衰力調整構造のコンパクトを図ることができる。また、バルブハウジング61を鍛造成形するとき、バルブハウジング61にバックアップカラー67が摺動可能になる内周凹部を絞り加工する必要がなく、バルブハウジング61の形状を簡素にし、加工コストを低減できる。
【0057】
しかるに、油圧緩衝器10にあっては、エンドキャップ65の撓み規制面68Bがバルブシート68Aに対して一定の段差をなすものであり、フロートバルブ70が背圧室63の圧力を受け、板ばね71の弾性撓み部71Bをエンドキャップ65の撓み規制面68Bとの間で弾性撓み変形し、弾性撓み部71Bの中央部を撓み規制面68Bに衝接させるに至ったとき、フロートバルブ70と、エンドキャップ65の撓み規制面68Bにおけるバルブシート68Aとの段差状境界部との間に、空間S(図9(A))を生ずる。本実施例では、撓み規制面68Bがバルブシート68A寄りの勾配面68Cと、勾配面68Cの内周側の平坦面68Dとからなり、上述の空間Sは図9(A)において概ね三角断面状をなす。
【0058】
このような油圧緩衝器10において、圧側行程で、加圧されたピストン側油室12Bの圧力を、伸側行程で撓んでエンドキャップ65の撓み規制面68Bに当接していたフロートバルブ70に印加し、該フロートバルブ70をエンドキャップ65のバルブシート68Aから剥離させて復元させようとするとき、フロートバルブ70の張り付きを生じないようにするため、エンドキャップ65の前述の連通孔80を撓み規制面68Bの中心に対して偏心する位置にて該撓み規制面68B内に開口した。本実施例において、エンドキャップ65の前述の孔80を、ピストン側油室12Bに開口する大径中心孔81と、撓み規制面68Bに開口する小径偏心孔82とを互いに連通させて形成し、中心孔81をエンドキャップ65の中心(撓み規制面68Bの中心でもある)に配置し、偏心孔82を撓み規制面68Bにおける勾配面68C、又は勾配面68Cの直近に位置する平坦面68Dに開口した。中心孔81は正確には、ピストン側油室12Bに直に開口する第1の孔と、第1の孔に連通する第2の孔とからなり、第2の孔は第1の孔より小径、偏心孔82より大径をなし、偏心孔82に連通する。本実施例において後述するフィルター90は中心孔81の第2の孔に設けられる。
【0059】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)エンドキャップ65に設けられ、加圧されたピストン側油室12Bの圧力を背圧室63に導入する孔80を、エンドキャップ65の撓み規制面68Bの中心に対して偏心する位置に開口した。従って、例えば圧側行程で、加圧されたピストン側油室12Bの圧力を、伸側行程で撓んでエンドキャップ65の撓み規制面68Bに当接していたフロートバルブ70に印加し、該フロートバルブ70をエンドキャップ65のバルブシート68Aから剥離させて復元させようとするとき、図9(A)に示す如く、エンドキャップ65の孔80からフロートバルブ70に作用する圧力Pは、エンドキャップ65の撓み規制面68Bにおけるバルブシート68Aとの段差状境界部の側に及ぶものになる。これにより、フロートバルブ70と、エンドキャップ65の撓み規制面68Bにおけるバルブシート68Aとの段差状境界部との間に、閉ざされた空間Sを生ずるところがなく、フロートバルブ70の上述の復元に対する吸盤効果を及ぼすところがない。フロートバルブ70はエンドキャップ65の撓み規制面68Bに張り付かず、剥離時の異音(コトコト音)を生ずることがない。
【0060】
尚、図9(B)はエンドキャップ65の孔80を撓み規制面68Bの中心に配置した場合を示すものであり、上述の空間Sが閉ざされ、この空間Sがフロートバルブ70に対して吸盤効果を及ぼすものになることを示す。
【0061】
(b)前記エンドキャップ65が撓み規制面68Bにおけるバルブシート68Aとの境界部を勾配面68Cとし、前記孔80をこの勾配面68C又はその直近に開口した。エンドキャップ65が撓み規制面68Bにおけるバルブシート68Aとの段差状境界部を勾配面68Cとするとき、エンドキャップ65の孔80からフロートバルブ70に作用する圧力Pをこの勾配面68Cに及ぼすものになり、この勾配面68Cとフロートバルブ70との間の空間Sを閉ざすことがなく、吸盤効果を生じさせることがない。
【0062】
また、油圧緩衝器10にあっては、フロートバルブ70の被支持部71Aとエンドキャップ65のバルブシート68Aとの間にコンタミネーションが噛み込むことを防止し、減衰力の周波数応答特性を向上するため、エンドキャップ65の前述の連通孔80にフィルター90を設けた。本実施例では、フィルター90を孔80の中心孔81(偏心孔82でも可)に設けた。フィルター90は、環状枠体91の枠内にメッシュ92を張り付けたものであり、枠体91を孔81(又は82)に圧入等して挿着固定される。
【0063】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)エンドキャップ65に設けられ、加圧されたピストン側油室12Bの圧力を背圧室63に導入する孔80に、フィルター90を設けた。従って、例えば圧側行程で、加圧されたピストン側油室12Bの圧力をエンドキャップ65の孔80からフロートバルブ70に及ぼし、このフロートバルブ70をエンドキャップ65のバルブシート68Aから剥離し、背圧室63に導入するとき、ピストン側油室12Bに混入していたコンタミネーションはその孔80に設けたフィルター90により捕捉され、背圧室63に侵入しない。製造過程でコンタミネーションが混入していても、フロートバルブ70の被支持部71Aとエンドキャップ65のバルブシート68Aとの間にコンタミネーションが噛み込むおそれがなくなる。これにより、伸側行程で、フロートバルブ70の被支持部71Aはエンドキャップ65のバルブシート68Aに確実に密着して背圧室63の油をシールし、背圧室63の圧力を上昇させてサブ伸側減衰バルブ60を開き難くし、低周波大ストローク域の伸側減衰バルブ33、60の減衰力を高くする。即ち、減衰力の周波数応答特性を向上する。
【0064】
図10に示す油圧緩衝器10が、図1〜図9に示した油圧緩衝器10と異なる点は、エンドキャップ65の連通孔80をピストン側油室12Bに開口する大径孔81と、撓み規制面68Bに開口する小径孔82とを互いに連通させて形成し、大径孔81と小径孔82の両者をエンドキャップ65の中心(撓み規制面68Bの中心でもある)に配置し、この連通孔80の小径孔82(大径孔81でも可)にフィルター90を設けたことにある。前述した図1〜図9の油圧緩衝器10において、連通孔80にフィルター90を設けたことによると同様の作用効果を奏する。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明において用いられる支持ばねとして、皿ばね、円錐コイルばね等を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、シリンダの油室に油液を収容し、シリンダに挿入されたピストンロッドの挿入端に設けたピストンをシリンダに摺動可能に嵌挿し、ピストンの摺動によって加圧される一方の油室から他方の油室への油液の流れを、該ピストンに設けた減衰バルブにより制御して減衰力を発生させるものであり、減衰バルブの背面側に、加圧された一方の油室にピストンロッドに設けたバイパス路及びオリフィスを介して連通する背圧室を設け、背圧室は、ピストンロッドに取付けられるバルブハウジングと、バルブハウジングに結合されたエンドキャップのバルブシートに接離可能に支持されるフロートバルブにより、他方の油室に対して区画され、フロートバルブは背圧室の圧力を受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの弾性撓み部をエンドキャップの撓み規制面との間で弾性変形させ、フロートバルブは他方の油室の加圧時に、該他方の油室の圧力をエンドキャップに設けた孔から受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートから剥離させ、該他方の油室の圧力を背圧室に導入可能にする油圧緩衝器の減衰力調整構造であって、エンドキャップの前記孔にフィルターを設けた。これにより、油圧緩衝器の減衰力調整構造において、フロートバルブの被支持部とエンドキャップのバルブシートとの間にコンタミネーションが噛み込むことを防止し、減衰力の周波数応答特性を向上することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 油圧緩衝器
12 シリンダ
12A ロッド側室
12B ピストン側室
13 ピストンロッド
24 ピストン
25 バルブストッパ(ピストン)
25A サブ流路
33 メイン伸側減衰バルブ
34 圧側減衰バルブ
50 伸側減衰力調整装置
51 バイパス路
60 サブ伸側減衰バルブ(減衰バルブ)
61 バルブハウジング
62 スリットバルブ
62A オリフィス
63 背圧室
65 エンドキャップ
68A バルブシート
68B 撓み平面
70 コントロールバルブ
71 板ばね
71A 被支持部
71B 弾性撓み部
72 支持ばね
80 連通孔
90 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの油室に油液を収容し、シリンダに挿入されたピストンロッドの挿入端に設けたピストンをシリンダに摺動可能に嵌挿し、ピストンの摺動によって加圧される一方の油室から他方の油室への油液の流れを、該ピストンに設けた減衰バルブにより制御して減衰力を発生させるものであり、
減衰バルブの背面側に、加圧された一方の油室にピストンロッドに設けたバイパス路及びオリフィスを介して連通する背圧室を設け、
背圧室は、ピストンロッドに取付けられるバルブハウジングと、バルブハウジングに結合されたエンドキャップのバルブシートに接離可能に支持されるフロートバルブにより、他方の油室に対して区画され、
フロートバルブは背圧室の圧力を受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの弾性撓み部をエンドキャップの撓み規制面との間で弾性変形させ、
フロートバルブは他方の油室の加圧時に、該他方の油室の圧力をエンドキャップに設けた孔から受け、該フロートバルブの被支持部をエンドキャップのバルブシートから剥離させ、該他方の油室の圧力を背圧室に導入可能にする油圧緩衝器の減衰力調整構造であって、
エンドキャップの前記孔にフィルターを設けてなる油圧緩衝器の減衰力調整構造。
【請求項2】
前記フロートバルブが板ばねからなり、該フロートバルブの外周の被支持部をエンドキャップのバルブシートに着座させるとともに、該フロートバルブの中央の弾性撓み部をエンドキャップのバルブシートに囲まれる撓み規制面との間で弾性変形させる請求項1に記載の油圧緩衝器の減衰力調整構造。
【請求項3】
前記フロートバルブの外周が支持ばねによりエンドキャップのバルブシートに着座されて支持される請求項2に記載の油圧緩衝器の減衰力調整構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−202786(P2011−202786A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73131(P2010−73131)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】