説明

油性化粧料基剤および油性化粧料

【課題】 低粘度域から高粘度域にわたる硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、安定性や使用感に優れた油性化粧料を提供すること。また、顔料などが固有に有する色彩に及ぼす影響が少なく、鮮やかな色を呈することができる油性化粧料を提供すること。
【解決方法】 (A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド、
(B)2質量%の(A)を溶解して生成したゲルの20℃におけるゲル降伏値が0.5 N/cm2以上となる油剤、および
(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマー
を含む油性化粧料基剤ならびにそれを含む油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性化粧料基剤に関する。詳細には、本発明は、N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドと油剤と(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーとを含む容易に粘度調整が可能な油性化粧料基剤、ならびに、さらに顔料などの化粧料成分を含む容易に粘度調整が可能な油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料には、その適用形態に応じて、リップスティック、ファンデーションなどのように常温で固形状のものから、リップクリーム、アイカラー、リップグロス、オイルクレンジングなどのように、常温で半固形ないしゲル状のものまで種々の形態のものが存在する。
【0003】
従来、このような固形ないしゲル状の油性化粧料を調製するために、ワックスや、デキストリン脂肪酸エステル、アミノ酸系ゲル化剤または微粒子無水ケイ酸などのゲル化剤が用いられて化粧料の粘性が調整されている。
しかしながら、ワックスを用いた場合には低粘度域における安定性に優れた油性化粧料を調製するのが困難になる。一方、高粘度域においては、融点が高くなり、化粧料自体が硬くなってしまい、リップスティック等に使用した場合、塗布性が悪い等の使用性の低下が生じる。また、化粧料が不透明になって配合される顔料などの色彩にも悪影響を及ぼし、美しい外観を表現することができない。
また、デキストリン脂肪酸エステルを用いた場合にはワックスを用いた場合よりも粘度調整が容易であり、透明性が高い油性化粧料を調製することができるが、低粘度域における安定性に劣るという欠点がある。
また、微粒子無水ケイ酸を用いた場合にはパサパサした仕上がりとなってしまったり、塗布時の伸びが重くなる等の使用感が悪くなり、また高粘度の油性化粧料を調製するためには多量に配合する必要があった。
さらに、アミノ酸系ゲル化剤を用いた場合には油性化粧料を透明にすることが可能となるが、低粘度域における安定性が十分ではないという欠点があった(特許文献1−3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−316971号公報
【特許文献2】特開昭51−19139号公報
【特許文献3】特開2010−100608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、低粘度域から高粘度域にわたる硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、安定性や使用感に優れた油性化粧料が望まれていた。
さらに、配合する顔料などが固有に有する色彩に及ぼす影響が少なく、鮮やかな色を呈することができる油性化粧料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、上記の課題のもとに鋭意検討した結果、従来から用いられているアミノ酸系ゲル化剤によりゲル化した油剤を、(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーと組み合わせることにより低粘度域から高粘度域の全域にわたって硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、しかも安定性や使用感に優れた油性化粧料基剤が得られ、その基剤から同様の効果を有する油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、かかる油性化粧料基剤は特定の油剤を選択することにより透明な基剤とできるため、上記した特性に加えて鮮やかな顔料の色彩を呈することができる油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1](A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド、
(B)2質量%の(A)を溶解して生成したゲルの20℃におけるゲル降伏値が0.5 N/cm2以上となる油剤、および
(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマー
を含む油性化粧料基剤;
[2](A)がN−2−エチルヘキサノイルグルタミン酸ジブチルアミドおよびN−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドのいずれか一方または両方である前記[1]記載の油性化粧料基剤;
[3](B)がホホバ油、水添ポリイソブテン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリエチルヘキサノイン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールおよびラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)よりなる群から選択される1種または2種以上の成分である前記[1]または[2]に記載の油性化粧料基剤;
[4](C)が(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーおよびトリコンタニル・ポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種または2種以上の成分である前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の油性化粧料基剤;
[5](A)および(C)を質量比にて(A):(C)=1:1〜500:1で含む前記[1]ないし[4]のいずれか1に記載の油性化粧料基剤;
[6](A)および(C)を質量比にて(A):(C)=2:1〜200:1で含む前記[5]に記載の油性化粧料基剤;および
[7]さらに、(A)を150℃以下で溶解することができる溶剤を含む前記[1]ないし[6]のいずれか1に記載の油性化粧料基剤;
[8]溶剤がオクチルドデカノールである前記[7]に記載の油性化粧料基剤;
[9]前記[1]ないし[8]のいずれか1に記載の油性化粧料基剤を含む油性化粧料を提供する。
【0008】
本発明によれば、低粘度域から高粘度域にわたって硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、しかも安定性や使用感に優れた油性化粧料基剤およびそれを含む油性化粧料を提供することができる。
【0009】
本発明は、第1の態様において、(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド、(B)2質量%の(A)を溶解して生成したゲルの20℃におけるゲル降伏値が0.5 N/cm2以上となる油剤および(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーを含む油性化粧料基剤を提供する。
【0010】
本発明の油性化粧料基剤に用いる(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドは、一般式I:
【化1】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜26の炭化水素基であり、R3は炭素数5〜17の炭化水素基である]で表されるグルタミン酸誘導体であり、好ましくはN−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドおよびN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドである。これらのグルタミン酸誘導体は、1種または2以上を油性化粧料基剤の全量に対して約0.1〜5.0質量%、好ましくは約0.2〜3.0質量%、より好ましくは約0.3〜3.0質量%、最も好ましくは約0.5〜2.0質量%配合することができる。N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドの配合量が約0.1質量%未満である場合は油性化粧料基剤の硬さ・粘性・ゲル強度の調整が困難となる、一方約5.0質量%を超える場合は油性化粧料基剤の安定性が悪くなるため好ましくない。
【0011】
本発明の油性化粧料基剤に用いる(B)油剤は、N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドで十分に固化、粘度上昇できることが必要である。(B)油剤は、上記N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドを2質量%で溶解して生成したゲルの20℃におけるゲル降伏値が0.5 N/cm2以上となるものであれば特に限定されるものではない。
ここで定義するゲル降伏値は、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを2質量%で溶解した油剤30gを30mLのジャー容器に充填し、20℃で24時間以上静置した後、不動工業株式会社製レオメーター2020ND−Dを用いて、テーブルスピード30cm/min、15mmないし25mm径を有する円盤状の押し型で測定し、進入開始時点から15mm進入するまでに測定される応力の最大値である。
【0012】
このような油剤には、例えば、1,3−ブチレングリコールなどのポリオール、ホホバ油などの植物油(液状ロウ)、水添ポリイソブテンなどの炭化水素油(流動イソパラフィンないし重質流動イソパラフィン)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、トリエチルヘキサノイン(トリグリセリド)、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)などのエステル油、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンなどのシリコーン油などが含まれる。これらの油剤は、1種または2種以上を油性化粧料基剤の全量に対して約10〜99質量%、好ましくは約30〜95質量%、より好ましくは約40〜95質量%、最も好ましくは約50〜95質量%配合することができる。油剤の配合量が約10質量%未満である場合や約99質量%を超える場合は、油性化粧料基剤の硬さ・粘性・ゲル強度の調整が困難となるため好ましくない。
【0013】
本発明の油性化粧料基剤に用いる(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーは、炭素原子数12〜36のα−オレフィンとビニルピロリドンとから合成されるコポリマーであり、好ましくはISP Japan株式会社からAntaron(登録商標)V-220として販売されている(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、同社からAntaron(登録商標)V-216として販売されている(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーおよび同社からAntaron(登録商標)WP-660として販売されているトリコンタニル・ポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1または2種以上である。これらのコポリマーは、いずれか1種または2種以上を油性化粧料基剤の全量に対して約0.002〜1.0質量%、好ましくは約0.005〜0.5質量%、より好ましくは約0.01〜0.3質量%、最も好ましくは約0.02〜0.2質量%配合することができる。
また、本発明の油性化粧料基剤は、(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドと(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーとを質量比にて(A):(C)=約1:1〜約500:1、好ましくは約2:1〜約200:1で用いる。(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーが上記の油性化粧料基剤の全量に対する配合比率や(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドとの配合比の範囲外となる場合は、油性化粧料基剤の硬さ・粘性・ゲル強度の調整が困難となるため好ましくない。
【0014】
さらに、本発明の油性化粧料基剤には、(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドの溶解を容易にするために溶剤を用いることができる。かかる溶剤を配合することにより油性化粧料基剤の製造工程における取扱い性をさらに向上することができる。
本発明の油性化粧料基剤に用いる溶剤は、150℃以下で(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドを溶解し得るものであれば特に限定されるものではないが、好ましくはオクチルドデカノールである。
【0015】
本発明の油性化粧料基剤は、例えば、(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドを、約150℃以下の温度で(B)油剤に溶解させてから、その溶液に(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーを加えて約100〜120℃にて溶解または均一に分散させるか、または(B)油剤および(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーの混合物に加えて約100〜120℃にて溶解または均一に分散させた後、脱泡して、放冷または水冷で80〜90℃程度に冷却し、十分に流動性がある状態で容器に流し込み、その後固まるまで冷却することにより製造することができる。
あるいは、(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドは、所望により、溶剤に溶解した後に、(B)油剤に、または(B)油剤および(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーの混合物に加えることにより、より低い温度で溶解または均一に分散させることができ、製造工程における取扱い性を向上することができる。
【0016】
また、本発明は、第2の態様において、前記した油性化粧料基剤に化粧料成分を加えて調製される油性化粧料を提供する。
本発明の油性化粧料に用いる化粧料成分は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されるものではないが、顔料ないし粉体、(A)以外のゲル化剤、(B)以外の油剤、(C)以外のポリマー、(A)を150℃以下で溶解することができる溶剤以外の溶剤、または酸化防止剤などである。
【0017】
顔料ないし粉体としては、例えば、形状や粒子径、粒子構造によって特に限定されることはなく球状、板状、針状あるいは微粒子、多孔質、無孔質等のものも使用することができ、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等、通常化粧品に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができる。
具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成金雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、無水ケイ酸等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等の光輝性粉体、ポリアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、赤色201号、赤色202号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色104号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体等が挙げられる。
【0018】
これらの顔料ないし粉体は、1種または2種以上を用いることができ、必要に応じて、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、水素添加レシチン、コラーゲン等を用いて、公知の方法により表面処理を施したものであってもよい。
【0019】
また、(B)以外の油剤としては、例えば、植物油、合成油や固形油、半固形油等性状や起源を問わず、種々の炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等を使用することができる。
具体的には、ワセリン、パラフィンワックス、セレシン、ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、等の炭化水素類、モクロウ、等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類等を使用することができる。
【0020】
また、オクチルドデカノール以外の溶剤としては、例えば、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコールやプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール類を使用することができる。
【0021】
さらに、(C)以外のポリマーとしては、例えば、ポリエチレンワックス等を使用することができる。
酸化防止剤としては、天然ビタミンEやd−δ−トコフェロール等のトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソール等を使用することができる。
【0022】
それ以外にも、界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0023】
さらに、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0024】
本発明の油性化粧料は、前記した任意の化粧料成分を、化粧料基剤の製造において(B)油剤および(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーと一緒に混合することによって製造することができる。また、任意の化粧料成分が高温で酸化/分解などを受け易い成分である場合は、適当な温度、例えば約40℃〜80℃の温度まで冷却してからその成分のみを加えることができる。
【0025】
本発明の油性化粧料は、リップスティック、リップクリームもしくはリップバーム、リップグロス、アイカラー、アイライナー、アイシャドウ、アイブロー、マスカラ、おしろい、フェイスパウダー、固形粉末状ファンデーション、油性ファンデーション、クリーム状ファンデーション、液体ファンデーション、チークカラー、コンシーラー、オイルクレンジング、マッサージオイルなどの商品とすることができる。また、本発明の油性化粧料は、粘性の調整が容易に行えることからチューブに充填して使用する形態の商品とすることができる。
【0026】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、別段指摘しない限り、実施例の処方において表す配合率の単位は質量%である。
【実施例】
【0027】
実施例1 (α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーがゲル降伏値に及ぼす影響の検討
以下の表1の処方にしたがって油性化粧料を調製し、下記の方法によりゲル降伏値を測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド(A)および油剤(B)を150℃にて加熱して溶解し、それに(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー(C)を120℃にて加えて溶解し、その他の成分を加え混合し、室温まで冷却してゲル化させた後に以下の方法によってゲル降伏値を測定した。
30gの調製した各油性化粧料1〜3を30mLのジャー容器に充填し、20℃にて24時間以上静置した。
レオメーター(不動工業株式会社製)2020ND−Dを用い、円盤状の押し型アダプター(15mmまたは25mm径)、テーブルスピード30cm/minの条件でゲル降伏値を測定し、進入開始時点から15mm進入するまでの最大剪断応力を測定してゲル降伏値とした。
その結果を以下の表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例2 (α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーがゲル降伏値に及ぼす影響の検討
以下の表3の処方にしたがって油性化粧料を調製し、下記の方法によりゲル降伏値を測定した。
【0032】
【表3】

【0033】
N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド(A)およびオクチルドデカノールを120〜140℃に加熱して溶解し、それに(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー(C)および油剤(B)を100〜120℃にて加えて溶解し、室温まで冷却してゲル化させた後に以下の方法によってゲル降伏値を測定した。
30gの調製した各油性化粧料4〜6を30mLのジャー容器に充填し、20℃にて24時間以上静置した。
レオメーター(不動工業株式会社製)2020ND−Dを用い、円盤状の押し型アダプター(15mmまたは25mm径)、テーブルスピード30cm/minの条件でゲル降伏値を測定し、進入開始時点から15mm進入するまでの最大剪断応力を測定してゲル降伏値とした。
その結果を以下の表4に示す。
【0034】
【表4】

−:低粘度であったため測定不可能
【0035】
表4に示すように、N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミドおよび油剤のゲル組成物に配合した(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー濃度が増加するにしたがって油性化粧料のゲル降伏値は低下した。また、ゲル降伏値の低下はN−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを配合した油性化粧料4において最も著しく、次いでN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを配合した油性化粧料5において著しく、両方のゲル化剤を1:1の混合比で配合した油性化粧料6は最も温和なゲル降伏値の低下を示した。
【0036】
実施例3 種々の(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーがゲル降伏値に及ぼす影響の検討
つぎに、実施例2において最も温和なゲル降伏値の低下を示したN−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドおよびN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを配合した油性化粧料において、種々の(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーがゲル降伏値の低下に及ぼす影響を検討した。
以下の表5の処方にしたがって、実施例2と同様の方法で油性化粧料を調製し、ゲル降伏値を測定した。
その結果を表6に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

−:低粘度であったため測定不可能
【0039】
表6に示すように、N−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドおよびN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドの両方を配合した油性化粧料において、供試したすべての(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーについて油性化粧料のゲル降伏値が低下した。また、油性化粧料のゲル降伏値低下の程度は、配合する(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーの種類によって異なり、実施例2において温和なゲル降伏値の低下を示した(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマーよりも(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーまたはトリコンタニル・ポリビニルピロリドンを配合した油性化粧料8または9がさらに温和なゲル降伏値の低下を示した。
したがって、これらの(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーにより、硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、しかも安定性や使用感に優れた油性化粧料が得られることが判明した。
【0040】
実施例4 油剤の違いによるアミノ酸系ゲル化剤のゲル化効果の検討
つぎに、基剤として用いる油剤の選択方法を検討した。
下記の表7に示す各種油剤にN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを2質量%溶解し、ゲル降伏値(N/cm)を測定した。
その結果を表7に示す。
【0041】
【表7】

【0042】
表7に示すように、植物油、炭化水素油、エステル油、シリコーン油など広範囲の油剤にN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドを用いて、十分にゲル化させることができることが判明した。なお、本発明の油性化粧料においては、0.5N/cm2以上のゲル降伏値となる油剤を用いた場合に、硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、しかも安定性や使用感に優れた油性化粧料基剤およびそれから調製される油性化粧料が得られることが判明した。
【0043】
実施例5 ゲル化剤および(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーが外観に及ぼす影響の検討
ゲル化剤および(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーが油性化粧料基剤の外観に及ぼす影響を検討した。
下記の表8に示す処方にしたがって油性化粧料基剤を調製し、以下の方法によって吸光度を測定した。
調製した油性化粧料基剤を光路1cmのプラスチックセルに充填し、20℃にて1時間以上静置した。その試料を分光光度計 SHIMADZU UV-2450を用いて波長660nmの吸光度を測定し、次式によって透過度を算出した。
A=−log10T (式中、吸光度:A、透過度:T)
その結果を以下の表8に示す。
【0044】
【表8】

【0045】
表8に示すように、N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド(A)と(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマーとを組み合わせて調製した油性化粧料基剤は、従来使用されていた油剤とゲル化剤から調製したゲルと比較して高い透明性を示した。したがって、このような油性化粧料基剤を用いて調製した油性化粧料は配合する顔料などの固有の色彩に影響が少なく、鮮やかな成分の色を呈することが示された。なお、本発明の油性化粧料基剤においては、透過度が90%以上となる場合に、それから調製される油性化粧料における顔料などの固有の色彩に影響が少なく、鮮やかな成分の色を呈することが判明した。
【0046】
実施例6 リップグロス
【0047】
【表9】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜10の成分を添加して100℃以上で溶解または均一に分散し、脱泡して充填した。
得られたリップグロスは、透明性が高く、50℃以下の環境下においてパール剤が沈まない、温度安定性に優れたものであった。
【0048】
実施例7 リップバーム
【0049】
【表10】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜9の成分を添加して100℃以上で溶解し、脱泡して充填した。
得られたリップバームは、温度経時安定性に優れ、保湿効果に優れたものであった。また、得られたリップバームは、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマーによる粘性の調整が容易であり、所望のテクスチャーに調整しやすいものであった。
【0050】
実施例8 流し込みリップスティック
【0051】
【表11】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜12の成分を添加して100℃以上で溶解または均一に分散し、脱泡して充填した。
得られたリップスティックは保湿効果に優れたものであった。また、得られたリップスティックは、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマーによる粘性の調整が容易であり、所望のテクスチャーに調整しやすいものであった。
【0052】
実施例9 アイシャドウ
【0053】
【表12】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜9の成分を添加して100℃以上で溶解または均一に分散し、脱泡して充填した。
得られたアイシャドウは彩度が高く、美しい発色が可能であった。また、保湿効果に優れたものであった。
【0054】
実施例10 チークカラー
【0055】
【表13】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜9の成分を添加して100℃以上で溶解または均一に分散し、脱泡して充填した。
得られたチークは彩度が高く、美しい発色が可能であった。また、保湿効果に優れたものであった。
【0056】
実施例11 オイルクレンジング
【0057】
【表14】

1〜3の成分を120℃以上で溶解した後、それに4〜7の成分を添加して100℃以上で溶解し、70℃以下まで冷却した後に8および9の成分を徐々に添加し、脱泡して充填した。
得られたオイルクレンジングは、手からこぼれ落ちない程度の粘性を有し、使用性に優れ、テクスチャーに優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の油性化粧料基剤および油性化粧料は、リップスティック、リップクリームもしくはリップバーム、リップグロス、アイカラー、アイライナー、アイシャドウ、アイブロー、マスカラ、おしろい、フェイスパウダー、固形粉末状ファンデーション、油性ファンデーション、クリーム状ファンデーション、液体ファンデーション、チークカラー、コンシーラー、オイルクレンジング、マッサージオイルなどの化粧料として利用することができる。
本発明は、低粘度域から高粘度域にわたる硬さ・粘性・ゲル強度の調整が容易で、安定性や使用感に優れるこれらの油性化粧料基剤および油性化粧料に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N−アシル−L−グルタミン酸ジアルキルアミド、
(B)2質量%の(A)を溶解して生成したゲルの20℃におけるゲル降伏値が0.5 N/cm2以上となる油剤、および
(C)(α−オレフィン/ビニルピロリドン)コポリマー
を含む油性化粧料基剤。
【請求項2】
(A)がN−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドおよびN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドのいずれか一方または両方である請求項1記載の油性化粧料基剤。
【請求項3】
(B)がホホバ油、水添ポリイソブテン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリエチルヘキサノイン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールおよびラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)よりなる群から選択される1種または2種以上の成分である請求項1または2に記載の油性化粧料基剤。
【請求項4】
(C)が(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーおよびトリコンタニル・ポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種または2種以上の成分である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性化粧料基剤。
【請求項5】
(A)および(C)を質量比にて(A):(C)= 1:1〜500:1で含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性化粧料基剤。
【請求項6】
(A)および(C)を質量比にて(A):(C)= 2:1〜200:1で含む請求項5記載の油性化粧料基剤。
【請求項7】
さらに、(A)を150℃以下で溶解することができる溶剤を含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性化粧料基剤。
【請求項8】
溶剤がオクチルドデカノールである請求項7に記載の油性化粧料基剤。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の油性化粧料基剤を含む油性化粧料。

【公開番号】特開2012−214410(P2012−214410A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80840(P2011−80840)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】