説明

油性基剤およびそれを含有する外用剤

【解決すべき課題】 適度な硬度および粘性を有し、展延性に優れた油性基剤、その製造方法および油性基剤を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】 本発明の油性基剤は、ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物を含有する油性基剤であって、前記ポリグリセリンおよび前記脂肪族モノカルボン酸のそれぞれのヒドロキシル基と前記水素化ダイマー酸が縮合した三次元網目状構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な硬度および粘性を有し、展延性に優れた油性基剤、および該油性基剤を含有する外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料等に使用する油性基剤として種々のエステル化合物が報告されている。例えば特開2004−256539号(特許文献1)には炭素数1〜7の少なくとも1種の液状脂肪相と、脂肪相中に分散したポリマー粒子の分散体と、少なくとも1種のカルボン酸および少なくとも4個のヒドロキシル基を含有する多価アルコールとの少なくとも1種のエステルとを含む化粧品組成物が記載されている。しかし、上記のエステル化合物は粘性、展延性等の特性が不十分であり、化粧料等の外用剤に用いる油性基剤として満足できるものではない。
【0003】
化粧料に用いるエステル化合物としては、ダイマー酸と一価または多価のアルコールを反応させて得られるエステル化合物が検討されている。例えば、特開2004−256515号(特許文献2)にはダイマー酸と二価以上のアルコールとのオリゴマーエステルを、一価のアルコール又は/及び一価のカルボン酸でエステル化したエステル、もしくはダイマージオールと二価以上のカルボン酸とのオリゴマーエステルを、一価のアルコール又は/及び一価のカルボン酸でエステル化したエステルを含有する油性基剤が記載され、特開2005−132729号(特許文献3)にはポリグリセリンにダイマー酸と、炭素数12〜22の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸とをエステル化反応させて得られる混合脂肪酸エステルが記載されている。しかし、これらのエステル化合物は艶、色素分散性等の改善または抱水性の改善を目的としたものであり、皮膚に適用したときに滑らかな展延性、付着性等を示すものではない。
【0004】
また、特開2005−36005号(特許文献4)には、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステルとポリカルボン酸とのエステル化により得られる少なくとも1のポリエステル、およびポリエステル以外の少なくとも1の炭化水素系エステルを含む、化粧品として許容される媒体を含む化粧品組成物が記載されている。しかし、上記文献は具体例として水添ヒマシ油と2量体ジリノール酸とのポリエステルを示すのみであり、かかるポリエステルは特開2003−238332号(特許文献5)に記載されているように、適度な油性感、粘着性またはエモリント性等の効果を奏するものの、滑らかな展延性、べたつき感を抑えたさっぱり感等の効果は得られない。
【0005】
一方、特開2005−179377号(特許文献6)においてジグリセリン、イソステアリン酸およびダイマー酸を縮合反応して得られるヒドロキシ化合物が提案されている。しかし、このヒドロキシ化合物は乳化剤、液剤等には優れた効果を示すが、固形剤に使用するための適度な粘性、すべり性、展延性等の点で十分でない。また、特開平11−128713号(特許文献7)には、グリセリン重合物と、12−ヒドロキシステアリン酸および/またはリシノール酸のこれらのうちの1種または2種以上の混合物、およびこれらの脂肪酸の分子間オリゴエステル化物と、炭素数9〜20の脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物が記載されている。しかし、このエステル化生成物は乳化安定化剤を目的としたものであり、化粧料等の外用剤としての特性は記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−256539号公報
【特許文献2】特開2004−256515号公報
【特許文献3】特開2005−132729号公報
【特許文献4】特開2005−36005号公報
【特許文献5】特開2003−238332号公報
【特許文献6】特開2005−179377号公報
【特許文献7】特開平11−128713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、適度な硬度および粘性を有し、展延性に優れた油性基剤および該油性基剤を含有する外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物が三次元網目状構造を有し、それにより適度な硬度、粘性、滑らかな展延性等の特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物を含有する油性基剤であって、前記ポリグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸のそれぞれのヒドロキシル基が水素化ダイマー酸と縮合した三次元網目状構造を有する、前記油性基剤に関する。
【0010】
また本発明は、エステル縮合した12−ヒドロキシステアリン酸の少なくとも一部が自己縮合し、12−ヒドロキシステアリン酸のオリゴマーが形成されている、前記油性基剤に関する。
【0011】
さらに本発明は、ポリグリセリンが平均重合度2〜4のポリグリセリンである、前記油性基剤に関する。
【0012】
また本発明は、エステル縮合物が、ポリグリセリンと12−ヒドロキシステアリン酸を反応させ、得られたエステル化合物と水素化ダイマー酸を反応させることにより得られる、前記油性基剤に関する。
【0013】
さらに本発明は、ポリグリセリンがジグリセリンであって、ジグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との比率(ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸)が、モル当量比で1:1〜3:0.3〜0.8である、前記油性基剤に関する。
【0014】
さらに本発明は、前記油性基剤を含有する外用剤に関する。
【0015】
また本発明は、化粧料である前記外用剤に関する。
【0016】
さらに本発明は、化粧料が油性固形化粧料である、前記外用剤に関する。
【0017】
本発明の油性基剤を構成するエステル縮合物は、ポリグリセリンおよびポリグリセリンに縮合した12−ヒドロキシステアリン酸のそれぞれのヒドロキシル基と水素化ダイマー酸が縮合し、それにより水素化ダイマー酸を介して隣接するエステル化合物が架橋されて三次元網目状構造が形成されている。通常、三次元網目状構造が形成されるとゲル化により固化した状態となるが、本発明の油性基剤では、驚くべきことに上記の3種の構成成分により三次元網目状構造がバランスよく形成され、オイル中において可溶性または分散性を示すとともに、適度な硬度および粘性を有する。本発明の油性基剤が有する前記の作用についてそのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば本発明の油性基剤を化粧料とした場合、三次元網目状構造内に液状オイルが保持され、皮膚に適用したときに結晶の碧開が少なく、網目状構造によって保持された液状オイルが滲出し、滑らかな展延性等を示すものと考えられる。
【0018】
本発明の油性基剤は、エステル縮合物のカルボン酸として水素化ダイマー酸と12−ヒドロキシステアリン酸の両方を用いているため、反応の制御が比較的容易であり、所望の硬度および粘性を有するエステル縮合物を調製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の油性基剤は、ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物を含有し、適度な三次元網目状構造を有する。そのため、適度な硬度、粘性、展延性等を有し、べたつきがなく化粧料等の外用剤に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[1]油性基剤
本発明の油性基剤は、ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物を含有する油性基剤であり、ポリグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸のそれぞれのヒドロキシル基と水素化ダイマー酸とが縮合した三次元網目状構造を有する。
【0021】
三次元網目状構造を有する油性基剤とするためには、例えばポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸を反応させ、次に得られたエステル化合物と水素化ダイマー酸を反応させるのが効果的である。ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸を縮合すると、得られたエステル化合物にはポリグリセリンの残存するヒドロキシル基およびエステル化した12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基が存在する(エステル化合物のヒドロキシル基の数は3個以上が好ましい)。このエステル化合物と水素化ダイマー酸を反応させると、水素化ダイマー酸を介した隣接するエステル化合物との架橋反応により、三次元に分岐した星型構造が得られる。分岐したエステル鎖はさらに互いに縮合または近接し、三次元網目状構造が形成される。
【0022】
本発明では、ポリグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基の両方のヒドロキシル基と、水素化ダイマー酸のカルボキシル基が縮合することにより、適度な大きさの網目を有する網目状構造が得られ、外用剤に適用した場合、三次元網目状構造に液状オイル等が保持され、滑らかな展延性、付着性等の好ましい効果を奏する。さらに、エステル縮合物において、12−ヒドロキシステアリン酸の少なくとも一部が自己縮合し、オリゴマーを形成しているのがより好ましい。12−ヒドロキシステアリン酸のオリゴマー構造を導入することにより、より適度な三次元網目状構造が形成され、油性基剤としてより好ましい効果を奏する。
【0023】
(A)ポリグリセリン
本発明に用いるポリグリセリンは、好ましくは平均重合度が2〜15、より好ましくは平均重合度が2〜10、さらに好ましくは平均重合度が2〜4のポリグリセリンであり、特に好ましくはジグリセリンである。ポリグリセリンは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。ポリグリセリンの重合度が1(すなわち、グリセリン)であると、グリセリンと縮合する12−ヒドロキシステアリン酸と水素化ダイマー酸が互いに接近しすぎて適度な三次元網目状構造が形成されにくくなる。一方、ポリグリセリンの重合度が大きすぎると、水素化ダイマー酸が12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基よりもポリグリセリンのヒドロキシル基に優先的に反応し、12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基と反応する水素化ダイマー酸が少なくなるため、適度な三次元網目状構造が形成されにくくなる。
【0024】
(B)水素化ダイマー酸
本明細書においてダイマー酸とは、炭素原子数18の不飽和脂肪酸を2量化して得られる、二重結合を有する炭素原子数36の脂肪族2塩基酸を意味し、主にダイマージオレイン酸またはダイマージリノール酸である。また、水素化ダイマー酸とは、上記ダイマー酸の水素添加還元により、ダイマー酸内の二重結合を還元した炭素数36の飽和脂肪族2塩基酸を意味する。ダイマー酸は、通常オレイン酸またはリノール酸を主体とする炭素数18の不飽和脂肪酸を用いて製造され、副生成物として得られるモノマー酸、トリマー酸等を含む多くの化合物からなる混合物として得られる。本発明に用いる水素化ダイマー酸はこのような混合物から得られる2種以上の水素化物であってもよい。また、水素化ダイマー酸はダイマー酸の二重結合が完全に水素化されているのが好ましいが、一部に二重結合が残っていてもよい。なお、本明細書においては水素化ダイマー酸を化粧品の表示名称により、単にダイマージリノール酸と記すこともある。
【0025】
油性基剤の数平均分子量は、好ましくは2000〜10000g/mol、より好ましくは2500〜6000g/mol、さらに好ましくは3500〜4500g/molである。本明細書において、数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の相対分子量分布の測定により得られる分子量を意味する。数平均分子量を上記の範囲に調整することにより、適度な融点、脂溶性等が得られ、外用剤とした場合に適度な硬度、粘性等の効果を付与することができる。
【0026】
本発明の油性基剤の水酸基価は好ましくは50〜300であり、より好ましくは100〜200である。水酸基価を上記範囲にすることにより抱水性が高く、保湿性および湿潤性に優れた外用剤が得られる。また粘度(60℃)は好ましくは500〜12000(mPa・s)であり、より好ましくは1000〜5000(mPa・s)である。粘度を上記範囲にすることにより、例えばリップスティック等の油性固形化粧料に用いた場合に適度な粘性を示し、皮膚に適用したときに優れた官能特性が得られる。
【0027】
本発明の油性基剤は、エステル縮合物の末端部分のカルボン酸がエステル化されているのが好ましい。エステル縮合物内の遊離のカルボン酸量が多いと外用剤として適用した場合に皮膚刺激の原因となる場合がある。
【0028】
本発明の油性基剤をその好ましい実施形態の一つであるジグリセリン、12−ヒドロキシステアリン酸および水素化ダイマー酸からなるエステル縮合物(以下HSDAとも記す)によりさらに詳細に説明する。
【0029】
HSDAを構成する基本構造単位(オリゴエステル化物)の一例を、上記特許文献6に記載のジグリセリン、イソステアリン酸および水素化ダイマー酸のエステル縮合物(以下ISDAとも記す)のそれと対比して以下に示す。
【化1】

【0030】
HSDAのオリゴエステル化物は、ジグリセリンに少なくとも1個の12−ヒドロキシステアリン酸(HOR’COOH)が縮合しており(この例ではジグリセリンの2個のヒドロキシル基に12−ヒドロキシステアリン酸が縮合している)、12−ヒドロキシステアリン酸によりエステル化されていないジグリセリンのフリーのヒドロキシル基および12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基に水素化ダイマー酸(X)が縮合している。ジグリセリンに縮合した12−ヒドロキシステアリン酸はさらに12−ヒドロキシステアリン酸と縮合(自己縮合)していてもよい。ジグリセリンに残存するヒドロキシル基(2個以上残存しているのが好ましい)および12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基に水素化ダイマー酸が縮合し、星型の分岐構造を形成している。
【0031】
一方、ISDAはジグリセリンにイソステアリン酸(RCOOH)が縮合しており(この例ではジグリセリンの2個のヒドロキシル基にイソステアリン酸が縮合している)、イソステアリン酸によりエステル化されていないジグリセリンのフリーのヒドロキシル基に水素化ダイマー酸(X)が縮合している。ISDAではイソステアリン酸にヒドロキシル基が存在しないため、イソステアリン酸が自己縮合することはない。またHSDAのように12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基に水素化ダイマー酸(X)が縮合することもない。
【0032】
上記の構造から明らかなように、HSDAでは、ジグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸の両方にフリーのヒドロキシル基を有し、水素化ダイマー酸との縮合により星型に分岐し、さらに水素化ダイマー酸を介して三次元網目状構造を形成する。これに対し、ISDAでは水素化ダイマー酸との反応により直鎖状に重合するため、三次元網目状構造は形成されない。
【0033】
下記式に示すHSDAの構造単位(AB)において、ジグリセリン(DG)に結合する12−ヒドロキシステアリン酸(HS)およびその自己縮合物の数(結合度)aは好ましくは1〜3である。また12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合の重合度bは好ましくは0〜2であり、より好ましくはHSDAの少なくとも一部において12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合構造(b=1〜2)を有する。オリゴエステル化物(AB)同士の重合度nは好ましくは1〜3であり、12−ヒドロキシステアリン酸(HS)と水素化ダイマー酸(DA)のモル当量比、HS:DAは好ましくは約1:0.3〜0.8である。
【0034】
【化2】

【0035】
[2]油性基剤の製造方法
本発明の油性基剤の製造方法は任意の方法を適用してよいが、ポリグリセリンと12−ヒドロキシステアリン酸を反応させ、得られたエステル化合物と水素化ダイマー酸を逐次的に反応させるのが、適度な三次元網目状構造を有するエステル縮合物を効率的に得る上で好ましい。
【0036】
三次元網目状構造を得るには、ポリグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸を反応させて得られるエステル化合物が、ポリグリセリンのヒドロキシル基および12−ヒドロキシステアリン酸の両方のヒドロキシル基を有することが重要である。これによりエステル縮合したときに星型の分岐鎖が生じ、三次元網目状構造が形成される。ポリグリセリンと水素化ダイマー酸を先に反応させ、後から12−ヒドロキシステアリン酸を反応させた場合には、ポリグリセリンと水素化ダイマー酸による環化縮合が起きるため、隣接するエステル化物と縮合しにくくなる。また、水素化ダイマー酸の反応性が高く、先に添加した水素化ダイマー酸が完全に反応してしまうため、後から添加する12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基は水素化ダイマー酸と縮合せずに残る。このためエステル化合物が星型に分岐せず、三次元網目状構造を形成しない。また、ポリグリセリン、12−ヒドロキシステアリン酸および水素化ダイマー酸を同時に反応させた場合にも星型に分岐し得るが、ポリグリセリンに対して水素化ダイマー酸と12−ヒドロキシステアリン酸が競合して反応するため、適度な三次元網目状構造を形成するのは容易でない。
【0037】
このように、三次元網目状構造を形成するためにはポリグリセリンのヒドロキシル基と水素化ダイマー酸の反応だけでなく、エステル縮合した12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基と水素化ダイマー酸との反応が重要である。ポリグリセリンのヒドロキシル基と、ポリグリセリンから分岐した12−ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシル基の両方に水素化ダイマー酸が反応することにより適度な硬度および粘性を示す三次元網目状構造が形成されやすくなる。
【0038】
適度な網目状構造とするためには、エステル縮合に用いるポリグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸のモル当量比を1:1〜5:0.3〜2.5とするのが好ましく、1:1〜3:0.3〜1.5とするのがより好ましい。ポリグリセリンとしてジグリセリンを用いる場合は、1:1〜3:0.3〜0.8とするのが好ましく、1:1〜3:0.5〜0.6とするのがより好ましい。また、ポリグリセリンとしてトリグリセリンを用いる場合は、1:1〜4:0.3〜2.0とするのが好ましい。原材料の仕込み比を調整することにより、反応が過剰に進んでゲル化するのを抑制し、適度な網目状構造を形成することができる。
【0039】
エステル縮合の反応条件は特に制限されないが、所望の三次元網目状構造とするため、使用する原材料等に応じて反応条件を適宜選択するのが望ましい。エステル縮合の反応温度は、好ましくは170〜200℃である。触媒としては、水酸化ナトリウム、p−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素、フッ化水素、塩化スズ、亜鉛、チタン、水酸化カリウム、鉱酸(硫酸、塩酸等)、塩化亜鉛、次亜リン酸、ジブチル酸化スズ等が挙げられ、p−トルエンスルホン酸、次亜リン酸等を用いるのが好ましい。また無触媒で行うこともできる。反応溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、トルエン、キシレン等を用いるのが好ましい。また無溶媒で行うこともできる。
【0040】
本発明の製造方法の好ましい態様の一つは、まずポリグリセリンと12−ヒドロキシステアリン酸による第一段階のエステル縮合反応を、p−トルエンスルホン酸の存在下、非極性溶媒(ベンゼン、トルエン等)中で生成する水を留去しながら170〜190℃で行ない、得られたオリゴエステル化物と水素化ダイマー酸による第二段階のエステル縮合反応を、生成する水を留去しながら180〜200℃で行う。第二段階のエステル縮合反応は、第一段階のエステル縮合反応に引き続いて、そのまま反応混合物中に水素化ダイマー酸を添加して行うことができるが、第一段階で生成したエステル化物を取り出して行ってもよい。本発明の製造方法は上記の態様に限定されるものではなく、原料となるポリグリセリンの種類、所望する油性基剤の物性等により適宜反応条件を調整するのが望ましい。
【0041】
[3]外用剤
本発明の外用剤は、皮膚、毛髪、粘膜、創傷部等に適用可能な、油性基剤を含有する外用剤であれば特に限定されず、各種化粧料、医薬部外品、医薬品等を含む。
【0042】
化粧料としては、例えば乳液、クリーム(スキンクリーム、リップ用クリーム、ヘアクリーム等)、リキッドファンデーション、アイライナー、マスカラ、アイシャドウゲル、リップスティック、リップバーム、リップグロス、アイグロス、アイカラー、チーク、ボディーグロス、軟膏、石鹸、ムース、トニック、ゲル等が挙げられる。
【0043】
医薬品または医薬部外品としては、ローション、クリーム、軟膏、スプレー、アエロゾル、スキンパッチ、ゲル等が挙げられる。有効薬剤の例としては抗感染性剤(抗ウイルス剤等)、鎮痛薬または鎮痛薬混合物、関節炎薬、抗抑制薬、糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、偏頭痛製剤、制吐薬、抗腫瘍剤、痒み止め、精神病薬、キサンチン誘導体、カルシウム通路遮断薬、ベータ−遮断薬、抗不整脈剤、抗高血圧症剤、利尿薬、心臓脈管製剤、ホルモン、免疫抑制剤、筋肉弛緩剤、血管収縮薬、血管拡張薬、傷治癒促進剤、アレルギー阻害剤、抗アクネ剤、老化防止剤、咳止め、痒み止め、痔薬、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗感染性剤、炎症阻害剤、制吐薬、抗コリン剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の外用剤は、目的または必要に応じて美白剤、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、ビタミン類、ホルモン剤、酵素、血行促進剤、アミノ酸類、UV吸収剤、サンスクリーン剤、日焼け剤、育毛用薬剤(抜け毛防止剤、毛髪成長促進剤等)、動植物抽出物、しわ防止剤、防腐剤、毛髪軟化剤、毛髪加湿剤、メークアップ製剤、ヘアコンディショナ、スキンコンディショナ、毛髪白色化剤、キレート剤、細胞交代促進剤、着色剤、皮膚軟化剤または皮膚加湿剤、消臭剤または制汗剤等を含有してもよい。
【0045】
美白剤としては、ハイドロキノン誘導体[α−D−グルコース、ハイドロキノンβ−D−グルコース(アルブチン)、ハイドロキノンα−L−グルコース、ハイドロキノンβ−L−グルコース、ハイドロキノンα−D−ガラクトース、ハイドロキノンβ−D−ガラクトース、ハイドロキノンα−L−ガラクトース、ハイドロキノンβ−L−ガラクトース等のハイドロキノン配糖体等]、コウジ酸またはその誘導体、L−アスコルビン酸またはその誘導体[L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−硫酸エステル等のL−アスコルビン酸モノエステル類、L−アスコルビン酸2−グルコシド等のL−アスコルビン酸グルコシド類またはそれらの塩等]、トラネキサム酸またはその誘導体[トラネキサム酸の二量体(塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(トランス−4−アミノメチルシクロへキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸またはその塩等)、トラネキサム酸のアミド体(トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミドまたはその塩等)]、エラグ酸またはその誘導体、サリチル酸またはその誘導体[3−メトキシサリチル酸またはその塩、4−メトキシサリチル酸またはその塩、5−メトキシサリチル酸またはその塩等]、レゾルシノール誘導体[4−n−ブチルレゾルシノールなどのアルキルレゾルシノールまたはそれらの塩等]、美白作用を有する植物抽出物等が挙げられる。
【0046】
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸塩(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等)、アラントイン、これらの混合物等が挙げられる。
【0047】
抗菌剤としては、レゾルシン、イオウ、サリチル酸、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトビロックス、ヒノキチオール、バシトラシン、エリスロマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、ベンゼトニウム・クロライド、フェノール、これらの混合物等が挙げられる。
【0048】
ビタミン類としては、ビタミンA、C、D、EまたはK、ビタミンAパルミテート、チアミン、ビタミンB、ビタミンB塩酸塩等のビタミンB誘導体、ビタミンB、ビタミンB12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のニコチン酸誘導体、パントテン酸、パントテニールエチルエーテル、ピリドキシン、イノシトール、カルニチン等のビタミンB複合物、パンテノール、これらの混合物等が挙げられる。
【0049】
ホルモン剤としては、オキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニン等が挙げられる。
【0050】
酵素としては、トリプシン、塩化リゾチーム、キモトリプシン、キモトリプシン様酵素、トリプシン、アスパラギン酸プロテイナーゼ、セミアルカリプロテナーゼ、セラペプターゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ等が挙げられる。
【0051】
抗酸化剤としては、チオタウリン、グルタチオン、カテキン、アルブミン、フェリチン、メタロチオネイン、上記のL−アスコルビン酸またはその誘導体等が挙げられる。
【0052】
血行促進剤としては、アセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルブロニウム等が挙げられる。
【0053】
アミノ酸類としては、ステアリル・アセチル・グルタメート等の両性アミノ酸、カプリロイル・シルク・アミノ酸、カプリロイル・コラーゲン・アミノ酸、カプリロイル・ケラチン・アミノ酸、カプリロイル・ピー・アミノ酸、ココジモニウム・ヒドロキシプロピル・シルク・アミノ酸、コーン・グルテン・アミノ酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、毛髪・ケラチン・アミノ酸、アスパラギン酸等の毛髪アミノ酸、トレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、ハーフ−シスチン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、システイン酸、リジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、トリプトファン、シトルリン、リジン、シルクアミノ酸、小麦アミノ酸、これらの混合物等が挙げられる。
【0054】
UV吸収剤としては、ベンゾフェノン、ボルネロン、ブチル・パーバ、シンナミドプロピル・トリメチル・アンモニウム・クロライド、ジソジウム・ジスチリルビフェニル・ジスルホネート、パーバ、ポタシウム・メトキシシンナメート、これらの混合物等が挙げられる。
【0055】
サンスクリーン剤としては、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、オクチルサリチレート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、エチル・ヒドロキシプロピルアミノベンゾエート、メンチルアントラニレート、アミノ安息香酸、シノキセート、ジエタノールアミンメトキシシンナメート、グリセリル・アミノベンゾエート、二酸化チタン、二酸化亜鉛、オキシベンゾン、パジメート−O、レッド・ペトロラタム、これらの混合物等が挙げられる。
【0056】
育毛用薬剤としては、センブリエキス、アセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルプロニウム等の血行促進剤、トウガラシチンキ、カンタリスエキス、ノニル酸バニルアミド等の局所刺激剤、ピリドキシン若しくはその誘導体等の抗脂漏剤、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトピロックス、ヒノキチオール等の抗菌剤、感光素301号、プラセンタエキス、ビオチン等の代謝賦活剤、セリン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸類、ビタミンB2、B12、パントテン酸またはその誘導体等のビタミン類等が挙げられる。
【0057】
動植物抽出物のうち植物抽出物としては、茶エキス、イザヨイバラエキス、オウゴンエキス、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、海藻エキス、キューカンバエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグルマギクエキス、ハマメリスエキス、カンゾウエキス、イチョウエキス、イチヤクエキス、センブリエキス、トウガラシチンキエキス、カンタリスエキス等が挙げられる。また、動物抽出物としては、プラセンタエキス、コラーゲン等が挙げられる。
【0058】
本発明の外用剤は、本発明の油性基剤以外の他の油性成分を含有していてもよい。他の油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、および固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、例えば炭化水素類、シリコーン油、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等を用いることができる。具体的には、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ等の天然ワックス類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等を用いることができる。
【0059】
本発明の外用剤は油性基剤、上記の成分等に加え、必要に応じて保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、香料、増粘剤、防腐剤、体質顔料、着色顔料等の色剤、pH調整剤等、通常外用剤に用いる成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有してよい。
【0060】
本発明の外用剤の形態は特に制限されず、その使用目的に応じて液剤、乳化剤、半固形剤、固形剤等であってよい。乳化剤は特に制限されず、油中水型(W/O型)または水中油型(O/W型)であっても、W/O/W型、O/W/O型等であってもよい。例えば油中水型の乳化化粧料の場合、油性基剤に水および水溶性成分(水相成分)を加えて調製する。油性基剤および水相成分の含有比は乳化剤の所望する性状に合わせて調整可能であり特に限定されない。
【0061】
本発明の油性基剤は、化粧料、特に油性固形化粧料として用いる場合に特に効果的である。油性固形化粧料の具体例として、リップスティックは、例えば本発明の油性基剤を必要に応じて他の油性成分とともに加熱融解した後、色剤、酸化防止剤等の成分を添加して攪拌混合し、この混合物を型に流し込んで冷却し、スティック状に成型することにより製造することができる。本発明の油性基剤は他の油性基剤との相溶性が高く、また展延性に優れているため、化粧料として皮膚に適用したときに滑らかに延び、べたつき感もない。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0063】
本実施例において、数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、下記の条件によりポリスチレン換算の相対分子量分布から測定した。
測定機種 東ソー(株)製 SC−8010システム
カラム Shodex KF−800D+KF−805L×2本
溶離液 THF
温度 カラム恒温槽 40℃
流速 1.0mL/分
濃度 約0.2wt%/vol%
注入量 100μL
溶解性 完全溶解
検出器 示差屈折計(R1)
【0064】
粘度はブルックフィールド粘度計、DV−II+ (スピンドルNo.3、12rpm、60℃)により測定した。
【0065】
酸価および水酸基価は、化粧品原料基準(新訂版、平成11年8月30日第1刷発行)、一般試験法18.酸価測定法及び24.水酸基価測定法により測定した。
【0066】
実施例1
油性基剤1の合成
撹拌装置、温度計、ディーンスターク水分分離器および窒素吹き込み管を装着した四ツ口フラスコに、ジグリセリン166g(1.0mol)および12−ヒドロキシステアリン酸452g(1.5mol)を仕込み、溶剤としてトルエン80ml、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込み量全量に対して0.05質量%添加し、窒素ガスを流しながら190〜210℃で酸価が2以下になるまで約6時間反応させた。反応終了後80℃まで冷却した後、水素化ダイマー酸337g(0.6mol)を追加し、再度200〜210℃で酸価が2以下となるまで5時間反応を続けた(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:1.5:0.6)。得られた反応物に活性白土を2質量%添加し、100℃で1時間撹拌した後、ろ過して白土を除き、150℃に加熱して真空下に窒素を吹き込み溶剤を除いて本発明のオリゴマー型油性基剤811gを得た(油性基剤1)。この油性基剤は酸価1.6、水酸基価181であった。結果を表1に示す。
【0067】
実施例2
油性基剤2の合成
ジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸482g(1.6mol)および水素化ダイマー酸269g(0.48mol)(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.0:0.6)を用いた以外、実施例1と同様にしてオリゴマー型油性基剤751gを得た(油性基剤2)。この油性基剤は酸価1.6、水酸基価170であった。結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
油性基剤3の合成
ジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸542g(1.8mol)および水素化ダイマー酸269g(0.48mol)(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.25:0.6)を用いた以外、実施例1と同様にしてオリゴマー型油性基剤802gを得た(油性基剤3)。この油性基剤は酸価1.6、水酸基価155であった。結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
油性基剤4の合成
ジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸602g(2.0mol)および水素化ダイマー酸269g(0.48mol)(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.5:0.6)を用いた以外、実施例1と同様の方法でオリゴマー型油性基剤853gを得た(油性基剤4)。この油性基剤は酸価1.8、水酸基価136であった。結果を表1に示す。
【0070】
実施例5
油性基剤5の合成
ジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸602g(2.0mol)および水素化ダイマー酸180g(0.32mol)(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.0:0.4)を用いた以外、実施例1と同様にしてオリゴマー型油性基剤725gを得た(油性基剤5)。この油性基剤は酸価1.3、水酸基価118であった。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例6
油性基剤6の合成
実施例1と同様の装置にジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸482g(1.8mol)および水素化ダイマー酸269g(0.48mol)を同時に仕込み(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.0:0.4)、トルエン80ml、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込み量全量に対して0.05質量%添加し、200〜210℃で酸価が2以下となるまで反応を続け、得られた反応物に活性白土を2質量%添加し、100℃で1時間撹拌し、ろ過した後150℃に加熱し、真空下に窒素を吹き込み、溶剤を除いて1段階の反応によりオリゴマー型油性基剤728gを得た(油性基剤6)。
【0073】
実施例7
油性基剤7の合成
ジグリセリン133g(0.8mol)、12−ヒドロキシステアリン酸482g(2.0mol)および水素化ダイマー酸404g(0.72mol)(仕込み原料モル比 ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸=1.0:2.0:0.9)を用いた以外、実施例1と同様にして2段階の反応によりオリゴマー合成反応を行ったが、本合成例では水素化ダイマー酸追加後約2時間の反応で反応液の粘度が上昇し、撹拌困難になったため反応を中止した。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例8
リップバームの製造
表3に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで、適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップバームを調製した。
【表3】

【0076】
実施例9
リップバームの製造
表4に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで、適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップバームを調製した。
【0077】
【表4】

【0078】
実施例10
リップバームの製造
表5に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで、適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップバームを調製した。
【0079】
【表5】

【0080】
実施例11
リップバームの製造
表6に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで、適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップバームを調製した。
【表6】

【0081】
実施例12
リップバームの製造
表7に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで、適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップバームを調製した。
【表7】

【0082】
実施例13
リップスティックの製造
表8に示す成分8および成分10〜12は、予め三本ローラにより均一に分散した。残りの全成分と上記分散物を95〜100℃で均一に溶解し、脱泡した。次いで適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップスティックを調製した。
【表8】

【0083】
実施例14
リップスティックの製造
表9に示す成分9および成分11〜14は、予め三本ローラにより均一に分散した。残りの全成分と上記分散物を95〜100℃で均一に溶解し、脱泡した。次いで適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップスティックを調製した。
【0084】
【表9】

【0085】
実施例15
リップグロスの製造
表10に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで冷却してリップグロスを調製した。
【0086】
【表10】

【0087】
実施例16
リップグロスの製造
表11に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで冷却してリップグロスを調製した。
【0088】
【表11】

【0089】
実施例17
リップグロスの製造
表12に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで冷却してリップグロスを調製した。
【0090】
【表12】

【0091】
実施例18
リップグロスの製造
表13に示す全成分を95〜100℃において均一に溶解し、脱泡した。次いで冷却してリップグロスを調製した。
【0092】
【表13】

【0093】
実施例19
リップグロスの製造
表14に示す成分5および成分9〜11は、予め三本ローラにより均一分散した。残りの全成分と上記分散物を95〜100℃で均一に溶解し、脱泡した。次いで適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップグロスを調製した。
【0094】
【表14】

【0095】
実施例20
リップグロスの製造
表15に示す成分6および成分11〜14は、予め三本ローラにより均一分散した。残りの全成分と上記分散物を95〜100℃で均一に溶解し、脱泡した。次いで適当な金型に流し込んだ後、冷却してリップグロスを調製した。
【0096】
【表15】

【0097】
実施例21
スキンクリーム(O/W型クリーム)の製造
表16に示す組成物Aおよび組成物Bをそれぞれ別個に75〜80℃で均一に溶解した。組成物Bを組成物Aに撹拌しながら添加し、ホモミキサーにより乳化した。次いで該混合物を撹拌しながら30℃まで冷却してスキンクリームを調製した。
【0098】
【表16】

【0099】
実施例22
エモリエントクリーム(W/O型クリーム)の製造
表17に示す組成物A、組成物Bおよび組成物Cをそれぞれ別個に75〜80℃で均一に溶解した。組成物Bを組成物Aに撹拌しながら添加し、得られた混合物(ゲル相)に組成物Cを撹拌しながら徐々に添加した後、ホモミキサーにより乳化した。次いで該混合物を撹拌しながら30℃まで冷却してエモリエントクリームを調製した。
【0100】
【表17】

【0101】
実施例23
乳化型ファンデーション(W/O型ファンデーション)の製造
予め、ホモミキサーを用いて、表18に示した成分9〜13を成分5および6に分散した。組成物A、組成物Bおよび組成物Cをそれぞれ別個に75〜80℃で均一に溶解した。次いで、組成物Bを組成物Aに撹拌しながら徐々に添加した後、ホモミキサーにより乳化した。次いで、該混合物を撹拌しながら30℃まで冷却して、乳化型ファンデーションを調製した。
【表18】

【0102】
実施例24
ヘアワックスの製造
表19に示す組成物Aおよび組成物Bをそれぞれ別個に75〜80℃で均一に溶解した。組成物Aを組成物Bに撹拌しながら添加し、ホモミキサーにより乳化した。次いで該混合物を撹拌しながら30℃まで冷却してヘアワックスを調製した。
【0103】
【表19】

【0104】
実施例25
アイグロスの製造
表20に示す成分4および8は、予め三本ローラにより均一分散した。残りの全成分と上記分散物を95〜100℃で均一に溶解し、脱泡した。次いで、冷却してアイグロスを調製した。
【0105】
【表20】

【0106】
比較例1
リップバームの製造
実施例1に記載の油性基剤の代わりに特許文献5に記載のオリゴマーを用いた以外、実施例8と同様にしてリップバームを調製した。
【0107】
【表21】

【0108】
比較例2
リップバームの製造
実施例1に記載の油性基剤の代わりに特許文献6に記載のヒドロキシ化合物を用いた以外、実施例8と同様にしてリップバームを調製した。
【表22】

【0109】
比較例3
リップバームの製造
実施例1に記載の油性基剤の代わりに特許文献7の合成例1に記載のエステル化生成物を用いた以外、実施例8と同様にしてリップバームを調製した。
【表23】

【0110】
(特性試験)
実施例8および比較例1〜3のリップバームについて、以下の項目について特性試験を行った。各試験結果は、◎:非常に良い、○:良い、△:やや劣る、×:劣るにより評価した。なお、リップバームはすべて繰り出し容器に充填したものを使用した。
(1)硬度
硬度計EZ−Test−20N((株)島津製作所製)を用いて測定した。針径1.0mmφ、試験速度10mm/分、25℃の条件下で、針入深度10mmの応力値を測定した。平均値を硬度(N)とした。
【0111】
【表24】

【0112】
(2)形状保持特性
低温(5℃)、常温(25℃)および高温(35℃)にそれぞれ保存したリップバームの硬度を測定することにより評価した。硬度(形状保持特性−1)の測定は上記(1)と同様の条件において行った。形状保持特性−1は、各温度での硬度が所定の範囲内にあり、低温〜常温〜高温での硬度変化が小さい方が優れているといえる。変化率(形状保持特性−2)は下記式により算出される変化率の値により比較した。
変化率−1=5℃での硬度/室温での硬度
変化率−2=25℃での硬度/5℃での硬度
【表25】

【0113】
【表26】

【0114】
(3)折損強度
硬度計EZ−Test−20N((株)島津製作所製)を用いて測定した。容器を水平に固定し、荷重用の治具を繰り出したスティックの受け皿の端より10mmの位置でスティックの側面に合せ、速度50mm/分の条件で荷重した。折損時の応力(N)、折損点(針を進入させた際の折損位置(mm))を測定し、折損強度(N)、折損点(mm)とした。
【0115】
【表27】

【0116】
(4)すべり特性
摩擦感テスター(カトーテック製)と口紅固定治具および人工皮革(出光石油化学(株)製)を用いて測定した。口紅容器からスティックを繰り出し、その中間部を切断し、その中間部を切断し、サンプルとした。口紅容器を固定治具で垂直に下向きに固定し、切断面(直径12.5mm)を35℃、1mm/秒の速度で人工皮革の表面の同一部位に1往復塗布して、その平均摩擦係数(MIU)を測定した。1往復の動きを3回繰り返し、平均値をすべり性とした。なお、試料台および人工皮革を35℃とした。
【0117】
【表28】

【0118】
(5)付着性
摩擦感テスター(カトーテック製)と、口紅固定治具、人工皮革(出光石油化学(株)製)および分析天秤XS205DU(メトラートレド製)を用いて測定した。口紅容器からスティックを繰り出し、その中間部を切断し、サンプルとした。口紅容器を固定治具で垂直に下向きに固定し、切断面(直径12.5mm)を35℃、1mm/秒の速度で人工皮革の表面の同一部位に1往復塗布して、その付着量(mg)を測定した。1往復の動きを3回繰り返し、各々の値の平均値を付着性とした。なお、試料台および人工皮革を35℃とした。
【0119】
【表29】

【0120】
(6)
結晶状態
外観の目視観察と合わせて光学顕微鏡BX−51(オリンパス(株)製)を用い、1000倍に拡大した結晶状態を観察した。評価基準は、下記のとおりである。結晶状態は、発汗(スティックの表面に染み出る油滴)、使用感に影響を与える。
【0121】
【表30】

【0122】
【表31】

【0123】
以上の実施例8および比較例1〜3についての評価結果を以下にまとめて示す。
【表32】

【0124】
上記の(1)〜(6)の試験結果から、化粧料の性能が油性基剤の特性に大きく依存することが分かる。本発明の油性基剤を用いた実施例8では、リップバームに必要とされる項目(硬度、折損強度、すべり特性、付着性、結晶状態)の全てにおいて非常に満足する結果が得られた。これに対し、特許文献5に記載のオリゴマーを用いた比較例1では、硬度および付着性においてわずかに劣り、特許文献6に記載のヒドロキシ化合物を用いた比較例2では、すべり特性および結晶状態において劣る結果が得られた。比較例1および2に記載の油性基剤は本発明の油性基剤と構成成分を異にするだけでなく、三次元網目状構造を有していないことが性能に影響を与えているものと考えられる。また、比較例3に記載のエステル化生成物は、乳化安定化を目的としたものであり、本発明の油性基剤とは構成成分および構造が異なり、リップバーム等の化粧料に要求される性能を満たしていないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施例8に記載のリップバームの結晶状態を示す顕微鏡写真である。
【図2】比較例1に記載のリップバームの結晶状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】比較例2に記載のリップバームの結晶状態を示す顕微鏡写真である。
【図4】比較例3に記載のリップバームの結晶状態を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との反応により得られるエステル縮合物を含有する油性基剤であって、前記ポリグリセリンおよび12−ヒドロキシステアリン酸のそれぞれのヒドロキシル基が水素化ダイマー酸と縮合した三次元網目状構造を有する、前記油性基剤。
【請求項2】
エステル縮合した12−ヒドロキシステアリン酸の少なくとも一部が自己縮合し、12−ヒドロキシステアリン酸のオリゴマーが形成されている、請求項1に記載の油性基剤。
【請求項3】
ポリグリセリンが平均重合度2〜4のポリグリセリンである、請求項1または2に記載の油性基剤。
【請求項4】
エステル縮合物が、ポリグリセリンと12−ヒドロキシステアリン酸を反応させ、得られたエステル化合物と水素化ダイマー酸を反応させることにより得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の油性基剤。
【請求項5】
ポリグリセリンがジグリセリンであって、ジグリセリンと、12−ヒドロキシステアリン酸と、水素化ダイマー酸との比率(ジグリセリン:12−ヒドロキシステアリン酸:水素化ダイマー酸)が、モル当量比で1:1〜3:0.3〜0.8である、請求項1〜4のいずれかに記載の油性基剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の油性基剤を含有する外用剤。
【請求項7】
化粧料である、請求項6に記載の外用剤。
【請求項8】
化粧料が油性固形化粧料である、請求項7に記載の外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284371(P2007−284371A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112229(P2006−112229)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(391066319)高級アルコール工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】