説明

油脂廃棄物を処理するための方法および装置

本発明は、特に、脂肪画分(11)、水性画分(12)、および残りの画分(13)を基本的に含む脂肪廃棄物(1)を処理するための装置に関し、前記装置には、少なくとも1つのボイラー(2)、廃棄物(1)を収集するためのステーション(3)、分画ステーション(4)、収集ステーション(3)と分画ステーション(4)との間の廃棄物(1)流のための一定の利用容積を有するダクト(5)を含むループ、および廃棄物を加熱するための少なくとも1つの熱交換器(61から63)が含まれる。本発明によれば、各々の熱交換器(61から63)は前記ダクト(5)に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、環境に優しい技術に関する。
【0002】
より具体的には、第1の態様によれば、本発明は、脂肪画分、水性画分および残りの画分から実質的になる油脂廃棄物(fatty waste)の処理のための方法に関し、この方法は、それぞれ、廃棄物を少なくとも脂肪画分の溶融まで加熱すること、廃棄物を収集ステーションから分画ステーションへ一定の作業容積のダクトを含むループの中を流動させること、および、廃棄物の様々な画分を分離することである、加熱工程、流動工程、分画工程を含む。
【背景技術】
【0003】
そのような方法は、特にヒトまたは動物に由来する食品廃棄物の処理のために意図され、仏国特許第2720014号に詳細に記載される。
【0004】
この先行特許の対象として、本発明は、数ある中でも、農業食品産業により産出される
油脂廃棄物、および、特にこれらの産業のデカンテーション設備、製造時不合格品(manufacturing rejections)および洗浄廃液からの廃棄物に適用可能である。本発明はまた、レストランおよび食品調理施設から生じる廃棄物ならびに都市排水もしくは工業用廃水の下処理施設、例えばスキミングタンクおよび脱脂施設(degreaser)からの廃棄物に適用可能である。このような廃棄物は一般に、分離、保持および貯蔵施設の保全業務中に収集される。
【0005】
油脂廃棄物は、純粋または混合の、完全にまたは部分的に加水分解されているかまたは変化していない、実質的に3つの画分、
溶解もしくは懸濁した物質を含有する第1の水性画分;
第2の、脂肪からなる、乳化、拡散もしくは上清の微粒子有機画分、および
懸濁、上清または沈降した有機もしくは無機粒子(組織、食事の食べ残し、野菜堆積物、紙、プラスチック、ガラス、金属性の物体、特に、平食器、砂利、など)を含む第3もしくは残りの画分
を示す、動物性もしくは植物性脂肪を含む。
【0006】
これらの様々な画分のそれぞれの重量に基づくかまたは容積に基づく百分率は、特にそれらの起源、ならびに、場合により、廃棄物源が季節的活動に関連する場合には時季による。
【0007】
前述の先行特許に記載される方法および装置は、それらの利害およびなされる多大な尽力(service)にかかわらず、不動産に付帯する負担(encumbrance)および運営の見地から、ほとんど満たすことのできない多くの制約を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2720014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに関連して、本発明は、それらの実施により生じ、誘導される問題の解決のための優れた譲歩を示す、油脂廃棄物の処理のための方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明の方法は(さらに、上記序文によりそれに与えられる一般的定義に従うものであるが)、加熱工程が、前記一定の作業容積のダクトの中を廃棄物が流れている間に単にそれらを加熱することにより実行されることを実質的に特徴とする。
【0011】
実際に、仏国特許第2720014号に記載の公知の方法は、可変性の作業容積のバッファータンク内で少なくとも部分的に油脂廃棄物を加熱することが必要であるという仮定に基づいているが、本発明は、これらの廃棄物の処理は、このような一時的貯蔵がなくてもなされうるという知見に基づく。
【0012】
好ましくは、加熱工程は、予め分画された油脂廃棄物から生じる水性画分を用いて、処理される油脂廃棄物を再加熱することにより部分的に実行される。
【0013】
有利には、本発明の方法は、好ましくは加熱工程の前に実行される、選別および破砕工程をさらに含む。
【0014】
本方法はまた、分画された油脂廃棄物からの水性画分の凝固−凝集の工程、および予め精製された水および水和したスラリーをもたらす工程も含んでもよい。
【0015】
それでもなお、凝固工程は、同様に分画の前に実行されてもよい。
【0016】
また、本方法が、水和したスラリーで実行される相分離工程を含み、この相分離工程が、これらのスラリーの固相および液相を少なくとも部分的に分離することにあることは賢明であろう。
【0017】
本発明はまた、脂肪画分、水性画分および残りの画分から実質的になる油脂廃棄物の処理のための装置に関し、この装置は、少なくとも、ボイラー、廃棄物収集ステーション、分画ステーション、収集ステーションと分画ステーションの間の廃棄物を流動させるための一定の作業容積のダクトを含むループ、および少なくとも、廃棄物を加熱するための熱交換器を含み、この装置は、各々の熱交換器が前記ダクトに取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
この装置は、少なくとも1つの第1の型の交換器を含み、各々の第1の型の交換器は、ボイラーにより加熱された水を熱媒液として受け取る。
【0019】
好ましくは、この装置は、少なくとも1つの第2の型の交換器をさらに含み、各々の第2の型の交換器は、熱媒液として、予め分画された油脂廃棄物から生じる水性画分を受け取る。
【0020】
この装置にはまた、収集ステーションの上流に配置され、少なくとも油脂廃棄物選別手段を含む、前処理ユニットを備えてもよい。
【0021】
この装置にはまた、各々の交換器の上流に配置され、少なくとも油脂廃棄物破砕手段ならびに油脂廃棄物濾過手段を含む、上記と同じであってもよい前処理ユニットを備えてもよい。
【0022】
本発明の装置はまた、予め分画した油脂廃棄物から生じる水性画分の処理のための水性画分後処理ユニットを含んでよく、このユニットは、少なくとも動的分離手段を含む。
【0023】
好ましくは、後処理ユニットは、動的分離手段の上流に配置された凝固−凝集タンクをさらに含む。
【0024】
油脂廃棄物の処理から生じる脂肪画分が、単なる燃焼による熱の生成よりも有利な安定化運転に供される限りにおいて、ボイラーは、少なくともこの脂肪画分以外の燃料を燃焼することのできるよう設計されていることが好ましい。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明による装置の全体的な概略図である、特徴的な添付図面を参照して、限定的な例としてではなく提供される以下のその説明を読むことでさらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の全体を概略的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
既に言及したように、本発明は、脂肪画分、水性画分および残りの画分から実質的になる、油脂廃棄物1の処理のための装置、ならびにこの装置で実行される方法に関する。
【0028】
この装置は、少なくとも、既に言及した仏国特許第2720014号においてそれ自体公知の形で、ボイラー2、廃棄物1を収集するためのステーション3、分画ステーション4、ダクト5を含むループ、および1以上の熱交換器、例えば交換器61から63などを含む。
【0029】
収集ステーション3は、例えば、処理され、予め選別される廃棄物1を受け取る貯蔵タンク30、および場合により、凝固剤、タンク30の中に沈められ、ダクトの内部空間全体が廃棄物で占有されるように、廃棄物1をダクト5の内部で強制的に流動させることのできるポンプ31、ならびに1以上の混合装置32を含む。
【0030】
分画ステーション4は、例えば、3相の遠心デカンタから実質的になり、油脂廃棄物を脂肪有機相11、液相12、および固相13に分離することを可能にする。
【0031】
ボイラー2は、油脂廃棄物を少なくとも脂肪画分11が溶融するまで加熱するために必要な熱エネルギーを生じ、この熱エネルギーは熱交換器61から63を用いて廃棄物に伝達される。
【0032】
本発明によれば、各々の熱交換器は、ダクト5に取り付けられているので、処理される廃棄物は、このダクトの中を流動している間に単に加熱される。
【0033】
図示される装置には、3つの交換器、61、62および63が含まれ、それを通じてダクト5はこの順序で通過して廃棄物1を運ぶ。
【0034】
交換器63は、熱媒液として、ボイラー2により加熱された水を受け取り、一方交換器61および62の各々は、熱媒液として、予め分画された油脂廃棄物から生じる水性画分12を受け取る。
【0035】
廃棄物1は、典型的に、交換器61を横切る間に約20℃の温度から約40℃の温度までを通り越し、約60℃の温度で交換器62から出、約85℃で交換器63を出、この同じ温度で分画ステーション4に到達する。
【0036】
分画ステーション4からの水性画分12は、ダクト50を通って交換器62に運搬され、そこで約85℃の温度に達した後、約60℃の温度で交換器62を通り過ぎ、約35℃の温度で交換器61に運搬される。
【0037】
図に示されるように、本装置は有利にも、分画ステーションの上流、好ましくは、廃棄物の流れと同じ流れの方向で交換器61から63の上流に配置された事前処理ユニット7を含む。
【0038】
この事前処理ユニットの主な機能は、特に分画ステーション4およびダクト5の付着物を避けるために廃棄物を寸法規制することにある。
【0039】
この目的のため、事前処理ユニット7は、典型的に、自動詰まり除去(self-declogging)選別フィルター71ならびに油脂廃棄物破砕機72を含み、これらのフィルターおよび機械は例えば収集ステーションのタンク30の上流に配列される。
【0040】
好ましくは、本発明の装置は、予め分画された油脂廃棄物から生じる水性画分12を処理するための後処理ユニット8も含む。
【0041】
このユニットは、例えば、2つの連続する処理工程を行い、その結果、水性画分12の浄化、および、自然環境または下水設備のいずれかへのその廃棄がもたらされる。
【0042】
この目的のために、後処理ユニット8は、有利には、凝固−凝集タンク81、および、タンクの下流に配列され、凝固−凝集運転に供される水性画分12に最初に含まれた液相120と固相121を分離することを可能にする、動的分離手段82を含む。
【0043】
より正確には、タンク81の中で実行される後処理の第1の工程は、この水性画分12の中に含まれる粒子の凝固−凝集を確実にする生成物Pの導入によって、水性画分12の汚染を生理化学的に排除することにある。
【0044】
この第1の工程で、水和したスラリーと予め精製された水が得られ、後者はこのような水を廃棄する前に溶解した有機負荷を低減するために、補完的な生物学的浄化処理に供される。
【0045】
水和したスラリーで例えば遠心デカンタ82を用いて実行される、後処理の第2の工程で、適した出口に向かって排出される、脱水された生物学的および液体スラリーが得られ、また、予め精製された水と同じ補完的な浄化処理に供される、脱水水(dehydration water)が得られる。
【0046】
脂肪画分11は、場合によりボイラー2の中で燃やされてもよいが、外部の安定化プロセスに供してもよい。
【0047】
この場合、廃棄物を加熱することを目的とするボイラー2は、少なくとも脂肪画分11以外の燃料、例えば、ガソリンまたは燃料油を燃焼するように設計されていることが賢明であるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪画分(11)、水性画分(12)、および残りの画分(13)から実質的になる油脂廃棄物(1)を処理するための方法であって、
廃棄物を少なくとも脂肪画分(11)の溶融まで加熱する工程、
廃棄物(1)を収集ステーション(3)から分画ステーション(4)へ一定の作業容積のダクト(5)を含むループの中を流動させる工程、ならびに、
廃棄物の様々な画分(11から13)を分離する工程、の少なくとも加熱工程、流動工程および分画工程を含み、
前記加熱工程が、廃棄物を前記ダクト(5)の中に流動させている間に廃棄物を単に加熱する(61から63)ことにより実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、予め分画された油脂廃棄物から生じる水性画分(12)を用いて処理される油脂廃棄物(1)を再加熱することにより、部分的に実行されることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
好ましくは、前記加熱工程の前に実行される選別および破砕工程(72)をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
予め精製された水および水和したスラリーを取得するために、分画された油脂廃棄物から生じる前記水性画分(12)の凝固−凝集工程(81)をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
水和したスラリーで実行される相分離工程(82)をさらに含み、
前記相分離工程がこれら水和したスラリーの液相(120)および固相(121)を少なくとも部分的に分離することにあることを特徴とする、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
脂肪画分(11)、水性画分(12)、および残りの画分(13)から実質的になる油脂廃棄物(1)の処理のための装置であって、
前記装置が、少なくとも
ボイラー(2)、
廃棄物収集ステーション(3)、
分画ステーション(4)、
前記収集ステーション(3)と前記分画ステーション(4)との間の廃棄物(1)を流動させるための一定の作業容積のダクト(5)を含むループ、および
廃棄物を加熱するための少なくとも熱交換器(61から63)を含み、
各々の熱交換器(61から63)が前記ダクト(5)に取り付けられていることを特徴とする、装置。
【請求項7】
ボイラー(2)により加熱される熱媒液としての水を受け取る少なくとも1つの交換器(63)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
予め分画された油脂廃棄物から生じる熱媒液としての前記水性画分(12)を受け取る、少なくとも1つの交換器(61、62)を含むことを特徴とする、請求項6から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
各々の交換器(61から63)の上流に配置され、
少なくとも油脂廃棄物の選別および破砕手段(71)と、油脂廃棄物の濾過手段(72)と、廃棄物の凝固手段とを含む前処理ユニット(7)を含むことを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
予め分画された油脂廃棄物から生じる前記水性画分(12)の後処理のためのユニット(8)を含み、前記ユニットが少なくとも動的分離手段(82)を含むことを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記後処理ユニット(8)が、前記動的分離手段(82)の上流に配列された凝固−凝集タンク(81)をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
ボイラー(2)が、少なくとも、前記処理された油脂廃棄物から生じる前記脂肪画分(11)以外の燃料を燃焼することができるように設計されていることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−516443(P2010−516443A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545981(P2009−545981)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050026
【国際公開番号】WO2008/107576
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509203197)
【Fターム(参考)】