説明

治療用化合物および組成物の新規製造方法、それによって製造される化合物および組成物、並びにその使用

有機亜硝酸エステル類は、一価/多価アルコールまたはそのアルデヒドもしくはケトン誘導体である化合物を脱気した後に、NOガスを用いてそこから製造され、気体のNOで飽和させた環境中で保存されうる。本発明に従って製造された有機亜硝酸エステル類は、従来法で製造された亜硝酸エステル類と比較して、不純物が少なく、改善された保存安定性を示す。本発明の有機亜硝酸エステル類は、医薬組成物に容易に製剤化され、様々な症状の治療に有用性を有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボで気体の一酸化窒素を生成または放出することができる化合物、特に有機亜硝酸エステル、並びに前記化合物を含む医薬組成物または製剤の製造方法に関する。前記化合物または組成物は、改善された特性、例えば改善された安定性、亢進された生理学的許容性および低減された副作用を示す。本発明はまた、前記方法によって得られうる化合物および組成物、並びに医薬製剤の製造のためのその使用にも関する。本発明はまた、様々な疾患および症状の治療方法、例えば治療が必要な患者への前記化合物または医薬組成物の投与にも関する。
【0002】
背景技術
一酸化窒素
一酸化窒素(NO)はいくつかの生体系において重要な分子であり、肺において連続的に生成され、呼気においてppb(10億分の1)で測定されうる。呼気における内因性NOの発見、および炎症の診断マーカーとしてのその使用は、1990年代初期にさかのぼる(公開された国際特許出願WO 93/05709およびWO 95/02181を参照せよ)。今日、内因性NOの重要性は広く認識され、数年前から、臨床分析機器が市場で入手可能である(NIOX(登録商標)、喘息患者による定期的な臨床用途のための最初のテーラーメイドNO分析計、エアロクラインAB(AEROCRINE AB)、ソルナ、スウェーデン)。
【0003】
米国胸部学会(ATS)は、臨床NO測定についてのガイドラインを公開している(米国胸部学会、米国肺協会の医療部門:成人および子供において吐き出される下気道の一酸化窒素および鼻の一酸化窒素のオンラインおよびオフライン測定のための標準手続きについての勧告−1999、Am J Respir Crit Care Med, 1999; 160:2104-2117)。
【0004】
気体のNO分子の内因的な生成が、換気−灌流適合(ventilation-perfusion matching)を最適化するための肺血管緊張の調節に重要な役割を果たしていることが一般に認識されている(Persson et al. 1990)。健常成人において、NOは基礎肺血管抵抗(basal pulmonary vascular resistance)および体血管抵抗の制御に重要である(Stamler et al. 1994)。血流の局所調節は、健常成人の患者にNO合成酵素阻害剤を投与することによって影響を及ぼされる(Rimeika et al 2004)。出生後の肺循環における内因性NOの血管拡張効果は、出産時には、胎児肺の空気呼吸への適応に明らかに寄与している(Abman et al. 1990)。出生後の肺におけるNO生成は、例えば肺胞における機械的伸張、ずり応力の増加およびO2圧の増加によって刺激される(Heymann 1999)。呼気におけるNOの測定は、肺における内因性NOの生成または排出の変化をモニターするための良い方法である(Gustafsson et al. 1991)。
【0005】
さらに、米国特許5,670,177は、虚血の治療または予防方法であって、NO(該NOは虚血の治療または予防に有効な量で存在する)および二酸化炭素CO2を含むガス状混合物を血管内経路によって患者に投与することを特徴とする方法を開示する。米国特許6,103,769は、NOで飽和させた生理食塩水を用いる点で異なる、類似の方法を開示する。
【0006】
公開された国際出願WO 94/16740は、アルコール性肝傷害の治療または予防のための、NO運搬化合物、例えばS−ニトロソチオール類、チオ亜硝酸エステル類、チオ硝酸エステル類、シドノンイミン(sydnonimine)類、フロキサン(furoxan)類、有機硝酸エステル類、ニトロプルシド、ニトログリセリン、鉄−ニトロシル化合物などの使用を開示する。
【0007】
硝酸類は、現在、アンギナ(胸痛)の症状の治療に用いられる。硝酸類は、その作業負荷を減少させながら、血管を弛緩させ、血液および酸素の心臓への供給を増加させることによって働く。現在入手可能な硝酸薬の例には、以下が含まれる:
【0008】
ニトログリセリン(硝酸グリセリン)(1,2,3−プロパントリオール−硝酸エステル)(今日では大抵、アンギナの急性の発作を抑えるために舌下で服用される)。急速および通常の血管拡張効果に起因する強い頭痛およびめまいは、しばしば見られる副作用である。ニトログリセリン注入濃縮液もまた有用であり、静脈内注入のために、等張なグルコースまたは生理食塩水に希釈される。耐性の発現(Tolerance development)は、急性および長期の治療計画において問題となっている。
【0009】
モノ硝酸イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール−5−硝酸エステル)(狭心症に対する予防薬として服用される)。耐性の発現は、長期の治療計画において問題となっている。ニトログリセリンで見られるのと同様に、しばしば副作用には頭痛およびめまいが含まれる。
【0010】
二硝酸イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール−2,5−硝酸エステル)(狭心症および心不全に対して急遽、かつ予防的に服用される)。硝酸ペンタエリトリチル類(有機硝酸エステルの群)は、まだ同定されていない機序によって、長期の抗酸化効果およびアテローム産生抑制効果を発揮することが知られている。四硝酸ペンタエリトリチルは、硝酸エステル耐性(硝酸エステル治療における望ましくない発現)との関連で調査されており、肺高血圧症において実験的に試験される。
【0011】
多数の化合物、三硝酸グリセリン、亜硝酸エチル、硝酸イソブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソアミルおよび亜硝酸ブチルはインビボで試験されており、NOを生成することが発見されている(Cederqvist et al., 1994)。モデルウサギにおいて、NOのインビボ生成と血圧における効果との間でかなりの相関が得られた。
【0012】
したがって、米国5,646,181において、通常合成される特定の有機亜硝酸エステル(organic nitrite)類が、陰茎への局所投与または陰茎海綿体内投与(intracavernosal administration)を通して、男性のインポテンスおよび勃起不全の治療に有用性を有することが提案されている。
【0013】
無機硝酸塩および無機亜硝酸塩、例えば亜硝酸カリウムおよび亜硝酸ナトリウムは、食品防腐剤として長い間使用されている。硝酸塩および亜硝酸塩は、食物において、およびインビボでのヒトにおいて発癌性N−ニトロソ化合物の形成が理論的に可能なため、一般に有害なおそれがあると考えられている。最近、食物性硝酸エステルおよび食物性亜硝酸エステルの役割が、特にアルギニン−一酸化窒素系におけるNOの内因的な生成として再評価されており、宿主防御(host defence)におけるその役割が発見されている(Larsen et al., Effects of dietary nitrate on blood pressure in healthy volunteers, N Engl J Med 355, 2792-3 (2006))。
【0014】
最後に、L−アルギニン、およびそのエステル、例えばエチル−、メチル−およびブチル−L−アルギニンは、NOの内因的な生成を増大させるのに用いられている。WO 96/38136は、嫌気的条件下で気体の一酸化窒素を用いたタンパク質のニトロソ化を開示し、それによって、人体の中に導入されるべき装置の表面をコートするのに用いられる一酸化窒素付加体が形成される。関連特許は、米国6,352,709および国際特許公開WO 96/35416である。
【0015】
現在入手可能な化合物および組成物の中で、多くのものは望ましくない特性または副作用、例えば毒性の問題、安定性の問題、遅延作用、不可逆的作用または持続性作用などと関連している。NO供与化合物を注入の形態で投与する場合にしばしば直面する特定の問題の一つは、メトヘモグロビン(metHb)の生成である。
【0016】
本発明の背後にある一つの目的は、NO供与化合物、例えば有機亜硝酸エステル類の製造および操作、並びにこのような化合物を含む医薬製剤の製造または製剤化のための改善された方法を開発することであった。公知の有機亜硝酸エステルおよびその治療上の使用は、組成物中に存在している不純物および分解生成物に起因しやすい問題としばしば関連している。混合段階および用いられるベヒクルがさらに分解を誘発しうるので、有機亜硝酸エステル類を含む医薬製剤を製造することもまた困難である。同様に、NOの反応特性のため、このような製剤の保存特性は、満足のいかないことが多い。
【0017】
別の目的は、通常の治療および薬物に付随する副作用または耐性の発現なしに、NOを運搬するための新たな方法および組成物を同定することであった。別の目的は、新規NO供与化合物を同定および合成することであった。他の目的、すなわち、達せられる解決策およびそれに伴う利点は、本明細書および実施例の調査から明らかとなる。
【0018】
発明の概要
本発明者は、明細書、実施例および特許請求の範囲(本明細書によって引用される)で開示されるように、有機亜硝酸エステル類を合成および操作する新たな方法、並びに通常合成された有機亜硝酸エステル類を操作する新たな方法を開発した。
【0019】
本発明はまた、通常合成され、かつ製剤化された化合物および組成物と比較して有利な特性を示す有機亜硝酸エステル類からなる、またはそれを含む有用な化合物および組成物を調製し、並びにNOが有益な作用を発揮すると考えられる様々な徴候の治療のためのそれの使用を行う。特に、本発明は、以下の式IおよびII:
【化1】

を有する2つの新規NO供与体を利用可能とする。
【0020】
本発明はまた、その分解を予防または少なくとも著しく遅延させる有機亜硝酸エステル類のための改善された保存形態も利用可能とする。本発明のさらなる態様は、本明細書、実施例、特許請求の範囲および図面の調査から当業者にとって明らかとなる。
本発明の具体的な特徴はいくつかの態様で言及され、他の態様では言及されないが、これは便宜のためだけのものであり、各特徴は、本発明に従ったいずれの他の、またはすべての他の特徴とも組み合わされてもよい。
【0021】
発明の態様の説明
本明細書で開示された特定の形状(configuration)、工程段階、および物質は多少変化しうるので、本発明が開示および記載される前に、本発明が、このような形状、工程段階、および物質に限らないことは理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれと同等のものによってのみ限定されるので、本明細書で用いられる用語法が特定の態様のみを記載するために用いられ、これらに限るものと意図されないこともまた理解されるべきである。
【0022】
特に断りがなければ、本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」に複数の指示対象が含まれることは留意されなければならない。したがって、例えば、有機亜硝酸エステルへの言及には、一つ以上のこのような亜硝酸エステル、例えば本発明に従った方法を遂行した場合に形成される亜硝酸エステルの混合物への言及が含まれる。
【0023】
最初の比較実験において、本発明者は、生理食塩水に溶解した気体のNOを用いて、5mL/kg(体重)まで注入を行った。興味深いことに、呼気NOの増加が検出されないか、または非常に少量の増加だけが検出されうる(図1参照)。同様に、血液循環における変化は見られなかった。これは、生理食塩水に注入された際にNOが急速に分解するか、そうでなければ失活すること、またはそれが肺または全身の血管に到達していないことを示す。これは、生理食塩水にNOを注入する間、メトヘモグロビンの著しい形成が観察されること(図2参照)によってサポートされる。メトヘモグロビン形成は血液の酸素運搬能を減少させるので、それは非常に望ましくない効果である。
【0024】
本発明者は、次いで気体のNOの投与のための別の改善された組成物を見出したことを述べる。この研究において、NOが静脈内投与のための脂肪乳剤(lipid emulsion)として製剤化されうること、およびこの製剤によってNOの肺への到達が可能となることが発見された。内因性NO生成を阻害するL−NAMEを与えられた動物において、早くも0.1〜0.5mL/kg(体重)の注入が、呼気NOにおいて明らかに識別できる増加をもたらすことが実験によって示された(図1参照)。
【0025】
該結果はまた、NO注入が肺循環において血管拡張効果を発揮し、体循環において穏和な血管拡張効果のみを発揮し、またはこれらの効果の組合せを発揮することも示す。
【0026】
驚くべき観察結果は、脂肪乳剤にNOを注入する間、メトヘモグロビンがほとんど形成されないか、または形成されないことであった(図2参照)。他のヒドロキシル含有化合物(以下を参照)を用いたさらなる実験によって、メトヘモグロビンの形成が有利に少ないかまたは形成されないことが示された。
【0027】
本発明者は、次いで別の化合物を試験し、本発明の方法に付した。該結果は、以下の実験の節において与えられ、表1でまとめられる。
【0028】
該有機出発物質からなる、またはそれを含む最初の脱気溶液によって該化合物を製造した。本明細書で脱気とは、出発物質が実質的に酸素を含まないようにすることを意味する。これは、不活性ガスまたは気体の混合物、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどで媒質をパージするか、または平衡化することによって遂行されうる。あるいは、ガス交換システム、例えば酸素の除去と逆の方法で用いられる膜型人工肺に媒質を通す。窒素もしくは別の不活性ガスまたは気体の混合物の下で蒸留を行って、有機亜硝酸エステル類の製造のための脱気出発物質を製造する場合、適用可能であれば、本発明における出発物質を製造するための蒸留過程もまた用いられうる。揮発性出発物質について、脱気溶液はまた、出発物質を加熱することによっても製造されうる。
【0029】
気体のNOを出発物質に通すことによって、出発物質からなる、またはそれを含む脱気溶液を、次いでNOで飽和させる。これは、大気圧下または高圧下で行われうる。気体のNOによるこの処理は、出発物質が溶液で、または液体または半固形形態のようなものとして存在していることを前提としており、それによって気体のNOによる十分な混合を達成することが可能となる。
【0030】
驚くべきことに、該有機亜硝酸エステル類がこの方法で製造されうること、および多くの場合、生じた有機亜硝酸エステルが、通常製造され、市販品として入手可能な有機亜硝酸エステル類よりも純度が高いことが分かった。本明細書で製造される特定の有機亜硝酸エステル類は、以前は記載されていなかったようである。さらに、保存実験によって、本発明に従って製造された有機亜硝酸エステルが、通常製造された市販品の製剤よりも安定であることが示される。さらに、本発明に従って製造された有機亜硝酸エステルは、治療製剤へのさらなる処理、例えば生理学的に適したベヒクルに希釈するのにより適している。
【0031】
前記ベヒクルは、例えば注射または注入用の生理食塩水、溶液または乳濁液である。好ましい態様によれば、前記ベヒクルは、有機亜硝酸エステルと混合する前に脱気し、気体のNOで飽和させる。これによって、投与前に分解することなく有機亜硝酸エステル類を含む医薬製剤を製造することが可能となる。出発物質、気体のNOおよび有機亜硝酸エステル間の平衡状態が該組成物を安定化すると考えられる。
【0032】
その結果、有機亜硝酸エステル類が通常製造されるか、または本発明に従って合成されるかどうかにかかわらず、本発明によって、これらの合成方法、およびこれらのさらなる処理方法が利用可能となる。
【0033】
本発明の方法を用いた有機亜硝酸エステルの製造のために出発物質として適した化合物は、好ましくは少なくとも一つのヒドロキシル基を掲示する水混和性有機化合物である。より好ましくは、前記出発物質は、一価/多価アルコールまたはそのアルデヒド誘導体もしくはケトン誘導体、例えばアルコール類および単糖類もしくは多糖類である。
【0034】
一つの態様によれば、前記出発物質は炭水化物化合物またはその誘導体である。別の態様によれば、前記出発物質は単糖またはその誘導体である。好ましくは、前記出発物質はグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボースの中から選択される。例えばグルコースは、市販品として入手可能な炭水化物の注射液、例えば、これらに限らないが、リンゲル−グルコース(バクスター)、グルコース注射液(バクスター、ブラウン、フレゼニウス カービなどによって製造される)の形態で有利に用いられうる。
【0035】
別の態様によれば、前記出発物質は単糖アルコールであり、好ましくはソルビトールおよびマンニトールの中から選択される。例えばマンニトールは、市販品として入手可能な注射液、例えば、これらに限らないが、マンニトール バクスター バイアフロ(Viaflo)(登録商標)(バクスター)およびマンニトール(フレゼニウス カービ)の形態で有利に用いられうる。出発物質としての機能に加えて、このような注射液はまた、有機亜硝酸エステル類の生理学的に許容され、かつ治療上有効な製剤の製造のためのベヒクルとしても役立ちうる。本発明のこのような態様において、好ましくは、該ベヒクルもまた、有機亜硝酸エステルを加える前に脱気し、NOで飽和させる。
【0036】
別の態様によれば、前記出発物質は修飾された単糖、例えばフコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの中から選択される化合物である。
【0037】
さらに別の態様によれば、前記出発物質は単糖またはその誘導体の、二糖もしくは高次炭水化物ポリマーであり、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ソルビトール、マンニトール、フコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの二糖または高次多糖、あるいはショ糖、ラクトビオン酸、イヌリン、デキストラン、およびフコイダンの一つである。
【0038】
ショ糖、マンニトール、イヌリン、フコイダン、およびデキストランによって本明細書で例示される高分子化合物を用いて得られた肯定的な結果に基づいて、本発明が高分子化合物に適用できることは明らかである。したがって、複合糖質(complex carbohydrate)の別の製剤、例えば代用血液(blood substituent)および注射液として現在用いられているものは出発物質として用いられてもよく、本発明の範囲内に入る。これらに限らないが、例には、市販品として入手可能な製品、例えばマクロデックス(登録商標)およびレオマクロデックス(登録商標)(メダ(Meda))、リンゲル−デキストラン(登録商標)(ブラウン)、HAES−Steril、HyperHAES、およびボルベン(Voluven)(登録商標)(フレゼニウス カービ)およびヘモヘス(Hemohes)(登録商標)(ブラウン)が含まれる。出発物質としての機能に加えて、このような製品およびそれと同等のものはまた、有機亜硝酸エステル類の生理学的に許容され、かつ治療上有効な製剤の製造のためのベヒクルとしても役立ちうる。本発明のこのような態様において、好ましくは、該ベヒクルもまた、有機亜硝酸エステルを加える前に脱気し、NOで飽和させる。
【0039】
別の態様によれば、前記出発物質はアルコールまたはその誘導体である。この態様によれば、前記出発物質は一価アルコール、例えばエタノール、ブタノール、イソブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ソルビトール、およびマンニトールの中から選択されるアルコールである。別の態様によれば、前記出発物質は二価アルコール、例えば1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)または1,3−プロパンジオールである。さらに別の態様によれば、前記出発物質は三価アルコール、例えばグリセロールである。
【0040】
さらに別の態様によれば、前記出発物質はアルコール分子またはその誘導体のポリマー、例えば異なる分子量のポリエチレングリコールである。PEG400を用いた予備的調査によって、肯定的な結果が示されている。
【0041】
あるいは、前記出発物質はアルブミンである。したがって、本発明によれば、アルブミンベースの代用血液(albumin based blood substituent)、例えばこれらに限らないが、市販品として入手可能な代用血漿および血漿タンパク質注射液が用いられうる。これらに限らないが、例にはアルブミン注射液(バクスター、ベーリング、オクタファーマ(Octapharma)などによって製造される)が含まれる。出発物質としての機能に加えて、このようなアルブミン注射液はまた、有機亜硝酸エステル類の生理学的に許容され、かつ治療上有効な製剤の製造のためのベヒクルとしても役立ちうる。本発明のこのような態様において、好ましくは、該ベヒクルもまた、有機亜硝酸エステルを加える前に脱気し、NOで飽和させる。
【0042】
あるいは、前記出発物質は、脂肪乳剤、例えばイントラリピッド(登録商標)(フレゼニウス カービ)によって本明細書で例示される静脈栄養剤の乳濁液および溶液である。これらに限らないが、このような適当な乳濁液の例には、クライノレイク(Clinoleic)(登録商標)(バクスター)、オメガベン(Omegaven)(登録商標)、SMOFlipid(登録商標)およびストラクトリピッド(Structolipid)(登録商標)(フレゼニウス カービ)、およびバソリピッド(Vasolipid)(登録商標)(ブラウン)、並びにそれと同等の製品が含まれる。出発物質としての機能に加えて、このような乳濁液はまた、有機亜硝酸エステル類の生理学的に許容され、かつ治療上有効な製剤の製造のためのベヒクルとしても役立ちうる。本発明のこのような態様において、好ましくは、該ベヒクルもまた、有機亜硝酸エステルを加える前に脱気し、NOで飽和させる。
【0043】
本発明は、本発明の方法を用いて製造された化合物、並びにこのような化合物を含む組成物を利用可能にする。現在、新規であると考えられるこのような化合物の例には、以下の式IおよびII:
【化2】

を有する2つの新規NO供与体が含まれる。
【0044】
上記の化合物の構造は、本明細書の実験の節でより詳細に記載されるように、質量分析によって確認される。これら、および本発明の方法を用いて製造される他の化合物は、それ自体、または医薬組成物の一部として用いられうる。
【0045】
該組成物は、本発明に従った方法を用いて保存するために、適宜製造される。本発明に従った組成物は、好ましくは、局所、直腸、膣、子宮内、尿道内、直腸内、膀胱内、頚部内もしくは大腿骨頚部、子宮内、腹腔鏡下、術中(intrasurgical)、経鼻、眼球、舌下、バッカル、経口、腸内、静脈内、動脈内、気管内、筋肉内または皮下の投与、並びに吸入による投与のために製剤化される。
【0046】
好ましい態様によれば、本発明に従った組成物には、実質的に酸素が含まれない。さらに、別の好ましい態様によれば、前記組成物は、実質的に酸素の不存在下で有機亜硝酸エステルを含む注射用水溶性製剤(aqueous formulation)である。安定性の目的のため、該組成物が、気体のNOで飽和させた環境中、例えばNOで飽和させた環境中、または過剰の気体のNOの存在下もしくはNOのヘッドスペース(headspace)下で保存されることがさらに意図される。予備的な結果によって、有機亜硝酸エステル、対応の有機出発物質、および気体のNOが同時に存在している場合、該有機亜硝酸エステルが、分解および望ましくない反応産物の形成に対してより安定であることが示される。
【0047】
一つの好ましい態様は、有機亜硝酸エステルを含む吸入用水溶性製剤であり、通常の技術、例えば噴霧、エアロゾル化などを用いた投与に適している。好ましくは、前記製剤には、該有機亜硝酸エステル、対応の有機出発物質および気体のNOが含まれる。
【0048】
別の好ましい態様は、局所投与のための製剤、例えば、有機亜硝酸エステル、対応の有機出発物質および気体のNOを含む、ゲル、軟膏剤または溶液である。別の好ましい態様は、注入のための製剤、例えば、有機亜硝酸エステル、対応の有機出発物質および気体のNOを含む、無菌溶液または乳濁液である。
【0049】
さらに、本発明によって、NOを運搬することができる組成物が前記患者に与えられる、ヒトまたは動物の患者の器官における不十分な灌流(insufficient perfusion)の治療、軽減または予防方法が利用可能となる。不十分な灌流には、組織または器官における様々な原因の不十分な灌流の状態、例えば、これらに限らないが、虚血性の腫瘍組織、移植組織または器官、例えば移植用の器官または組織が含まれる。
【0050】
本発明の一つの態様に従って、前記の不十分な灌流は、肺塞栓症に起因する肺の区域の不十分な灌流である。肺塞栓症には、様々な原因の肺塞栓症、例えば、これらに限らないが、肺血栓塞栓症および肺ガス塞栓症が含まれる。
【0051】
本発明の組成物が単独、または一つ以上の薬剤と併用して用いられる他の適応症には、異なった起源(different genesis)の急性肺血管収縮、肺塞栓症、異なった起源の肺高血圧症、(例えば原発性高血圧症および二次性高血圧症)、異なった起源の全身性高血圧症、急性心不全、冠動脈心疾患、心筋梗塞、虚血性心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不整脈、アシドーシス、気道炎症、嚢胞性線維症、COPD、線毛運動不全症、肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性肺水腫、急性高山病、喘息、気管支炎、異なった起源の低酸素症、脳卒中、消化管の炎症、IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎、膀胱もしくは尿道路(urethral tract)の炎症、皮膚炎、糖尿病性潰瘍、糖尿病性神経障害、乾癬、異なった起源の炎症、創傷治癒、および平滑筋弛緩が必要な症状が含まれる。
【0052】
好ましい態様によれば、該適応症は喘息であり、本発明の組成物は吸入用製剤として製剤化される。該組成物はまた、低血圧法が望まれる場合の状況、例えば脳手術中の低血圧法においても用いられうる。
【0053】
本発明の組成物はまた、好ましくは、単独、またはトロンボサイト(trombocyte)凝集および血液凝固の阻害剤として作用する一つ以上の薬剤と併用して、例えば血管拡張剤と併用しても用いられる。
【0054】
本発明の組成物はまた、その取り込みを増大させるため、例えば局所的に投与される全身薬の全身的な取り込みを増大させるため、他の医薬活性剤のための補助剤として;
局所循環の増大が望まれる場合、注射のための添加剤として;
血管拡張効果が治療の抗腫瘍効果を増大させることができる場合、抗腫瘍薬のための補助剤として、および/または放射線療法と併用しても用いられる。抗菌剤、抗生物質など、および有機亜硝酸エステルの組合せ運搬(combined delivery)が意図される場合、別の適用は創傷治癒である。
【0055】
この使用の態様によれば、器官における前記の不十分な灌流は、肺塞栓症に起因する肺の区域の不十分な灌流である。肺塞栓症には、様々な原因の肺塞栓症、例えば、これらに限らないが、肺血栓塞栓症および肺ガス塞栓症が含まれる。肺高血圧症、例えば新生児の肺高血圧症、あるいは原発性もしくは突発性肺高血圧症または別の疾患もしくは低酸素症に続発する肺高血圧症もまた、本発明によって治療されうる。
【0056】
したがって、本発明はまた、本発明に従って製造された有機亜硝酸エステル類、並びに本発明に従って製造された有機亜硝酸エステル含有製剤の第一および第二医薬用途も利用可能とする。大まかに言えば、本発明は、NOの形成が有利な効果を有する症状の治療用医薬製剤の製造のための、有機亜硝酸エステル、または有機亜硝酸エステルを含む組成物の使用を可能とする。
【0057】
上記の第一または第二医薬用途において、前記有機亜硝酸エステルは、有機出発物質を本発明の方法に付す場合に形成される有機亜硝酸エステルであり、前記出発物質は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ソルビトール、マンニトール、フコース、2−デオキシリボース、1−O−メチルリボース、ショ糖、ラクトビオン酸、イヌリン、デキストラン、フコイダン、エタノール、ブタノール、イソブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ポリエチレングリコール、N−アセチル−システイン、アルブミン、およびその誘導体の中から選択される。
【0058】
本発明によれば、前記症状は、異なった起源の急性肺血管収縮、肺塞栓症、異なった起源の肺高血圧症、(例えば原発性高血圧症および二次性高血圧症)、異なった起源の全身性高血圧症、急性心不全、冠動脈心疾患、心筋梗塞、虚血性心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不整脈、アシドーシス、気道炎症、嚢胞性線維症、COPD、線毛運動不全症、肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性肺水腫、急性高山病、喘息、気管支炎、異なった起源の低酸素症、脳卒中、消化管の炎症、IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎、膀胱もしくは尿道路の炎症、皮膚炎、糖尿病性潰瘍、糖尿病性神経障害、乾癬、異なった起源の炎症、創傷治癒、および平滑筋弛緩が必要な症状の中から選択される。
【0059】
上記において、医薬製剤は、局所、直腸または膣投与のための、ギブスまたは包帯、ゲル、クリーム、軟膏剤、溶液、坐剤;
経鼻または眼球投与のための液滴添加用またはエアロゾル形成用溶液;
経口または腸内投与のための、溶液、乳濁液、液滴、カプセル剤または錠剤;
静脈内、動脈内、気管内、筋肉内もしくは皮下投与のための注射液もしくは乳濁液、または吸入用溶液のうちの一つである。
【0060】
本発明はまた、有機亜硝酸エステルの製造方法であって、実質的に酸素を含まなくなるまで、局所、直腸、膣、尿道内、膀胱内、直腸内、経鼻、眼球、舌下、バッカル、経口、腸内、静脈内、動脈内、気管内、筋肉内もしくは皮下投与、または吸入による投与に適した水溶液を脱気し、次いで目的のNO濃度に達するまで純粋なNOガスでパージする方法を利用可能とする。
【0061】
本発明に従った方法において、該有機亜硝酸エステルを製造するための前記出発物質は、好ましくは、少なくとも一つのヒドロキシル基を掲示する水混和性有機化合物である。好ましくは、前記出発物質は、一価/多価アルコールまたはそのアルデヒド誘導体もしくはケトン誘導体である。
【0062】
一つの態様によれば、前記出発物質は炭水化物化合物またはその誘導体である。別の態様によれば、前記出発物質は単糖またはその誘導体である。好ましくは、前記出発物質は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボースの中から選択される。別の態様によれば、前記出発物質は、単糖アルコール、好ましくはソルビトールおよびマンニトールの中から選択される。
【0063】
別の態様によれば、前記出発物質は、修飾された単糖、例えば、フコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの中から選択される化合物である。さらに別の態様によれば、前記出発物質は単糖またはその誘導体の、二糖もしくは高次炭水化物ポリマーであり、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ソルビトール、マンニトール、フコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの二糖または高次多糖、あるいはショ糖、ラクトビオン酸、イヌリン、デキストラン、およびフコイダンの一つである。
【0064】
上記のように、ショ糖、マンニトール、イヌリン、フコイダン、およびデキストランによって本明細書で例示される重合体の炭水化物を用いて得られた肯定的な結果に基づいて、代用血液および注射液として現在用いられる複合糖質の別の製剤が本発明の範囲内に入ることは明らかである。これらに限らないが、例にはマクロデックス(登録商標)およびレオマクロデックス(登録商標)(メダ)、リンゲル−デキストラン(登録商標)(ブラウン)、HAES−Steril、HyperHAES、およびボルベン(登録商標)(フレゼニウス カービ)およびヘモヘス(登録商標)(ブラウン)が含まれる。
【0065】
別の態様によれば、前記出発物質はアルコールまたはその誘導体である。この態様によれば、前記出発物質は、一価アルコール、例えば、エタノール、ブタノール、イソブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ソルビトール、およびマンニトールの中から選択されるアルコールである。別の態様によれば、前記出発物質は二価アルコール、例えば1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)または1,3−プロパンジオールである。さらに別の態様によれば、前記出発物質は三価アルコール、例えばグリセロールである。
【0066】
さらに別の態様によれば、前記出発物質は、アルコール分子またはその誘導体のポリマー、例えば異なる分子量のポリエチレングリコールである。PEG400を用いた予備的調査によって、肯定的な結果が示されている。
【0067】
あるいは、前記出発物質はアルブミンである。したがって、本発明によれば、アルブミンベースの代用血液、例えばこれらに限らないが、市販品として入手可能な代用血漿および血漿タンパク質注射液が用いられうる。これらに限らないが、例にはアルブミン注射液(バクスター、ベーリング、オクタファーマなどによって製造される)が含まれる。
【0068】
あるいは、前記組成物は、脂肪乳剤、例えばイントラリピッド(登録商標)(フレゼニウス カービ)によって本明細書で例示される静脈栄養剤の乳濁液および溶液である。これらに限らないが、このような適当な乳濁液の例には、クライノレイク(登録商標)(バクスター)、オメガベン(登録商標)、SMOFlipid(登録商標)およびストラクトリピッド(登録商標)(フレゼニウス カービ)、およびバソリピッド(登録商標)(ブラウン)、並びにそれと同等の製品が含まれる。
【0069】
本発明はまた、上記の方法によって得られうる、NOで飽和させ、実質的に酸素を含まない生理学的に許容される組成物も利用可能とする。
【0070】
本発明に従った組成物は、好ましくは、局所、直腸、膣、尿道内、直腸内または膀胱内投与のための、ギブスまたは包帯、ゲル、クリーム、軟膏剤、溶液、坐剤として製剤化される。それは、好ましくは、経鼻または眼球投与のための液滴添加用またはエアロゾル形成用溶液として製剤化される。それは、好ましくは、経口または腸内投与のための、溶液、乳濁液、液滴、カプセル剤または錠剤として製剤化される。それは、好ましくは、静脈内、動脈内、気管内、直腸内、筋肉内もしくは皮下投与のための注射液もしくは乳濁液、または吸入用製剤として製剤化される。
【0071】
有機亜硝酸エステルまたは本発明に従った有機亜硝酸エステルを含む製剤を製造する場合、出発物質および/または反応溶媒が、NOを加える前に脱気されることは重要である。本明細書で用語「脱気」とは、出発物質が実質的に酸素を含まないようにすることを意味する。これは、不活性ガスまたは気体の混合物、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどで媒質をパージするか、または平衡化することによって遂行されうる。あるいは、ガス交換システム、例えば酸素の除去と逆の方法で用いられる膜型人工肺に媒質を通す。窒素もしくは別の不活性ガスまたは気体の混合物の下で蒸留を行って、有機亜硝酸エステル類の製造のための脱気出発物質を製造する場合、適用可能であれば、本発明における出発物質を製造するための蒸留過程もまた用いられうる。揮発性出発物質について、脱気溶液はまた、出発物質を加熱することによっても製造されうる。
【0072】
好ましい態様によれば、有機亜硝酸エステルは、NOで飽和させた環境中、またはNOのヘッドスペース下で保存される。
【0073】
実際には、保存容器、バイアル、シリンジ、ビンまたは袋、並びに管およびカニューレは、酸素に対して非透過性であるか、または少なくとも酸素に対して透過性が低下されているべきである。当業者は、適当な包装材料を容易に特定しうる。この考慮すべき事柄を除けば、医薬品を投与するための通常の装置および慣行が用いられうる。
【0074】
利点
本発明の一つの重要な臨床的利点は、本発明に従った組成物における患者への投与の場合、低酸素組織において該有機亜硝酸エステルの効果が最も有意であることである。NO形成化合物が静脈内注入として与えられる場合、いわゆるプロキシマルスティール(proximal steal)の危険(すなわち、周辺の健康な血管で血流が増大すること)が回避される。これは血管拡張物質の共通の副作用であり、血圧の低下および関連する全身症状をもたらす。
【0075】
別の利点は、該有機亜硝酸エステル類の製造が容易で反復可能であり、組成物中に適宜存在する他の成分を変化させるかまたは損傷しうる厳しい条件を必要としないことである。別の利点は、本発明に従って製造された有機亜硝酸エステル類がより安定なようであり、生理学的担体またはベヒクルと混合するのにより適していることである。
【0076】
さらに別の利点は、灌流肺モデルを用いた実験に基づいて、NOの放出が非酵素的に見えることである。非酵素的放出機序によって、本発明に従った組成物が通常のNO供与組成物に付随する耐性の発現を回避することが示される。
【0077】
さらに別の利点は、特に、生理食塩水のみの中のNO、または二酸化炭素中のNOの投与と比較して、メトヘモグロビンの形成がかなり低下していることである。さらなる利点は、本明細書および実施例の調査から当業者にとって明らかとなる。
【0078】
実施例
1.液体溶媒に溶解したNOの静脈内注入
該実験は、動物実験における地方倫理委員会(local ethics committee)に認可された。オスのニュージーランド白ウサギを、実施例2で与えられるプロトコルのように、麻酔し、準備し、試験した。ウサギをL−NAME(30mg kg-1)で前処理し、担体を流さずに頚静脈の中にカテーテルを通して、標準生理食塩水に溶解したNOガスを1回注入し、脂肪乳剤(イントラリピッド(登録商標)、フレゼニウス カービ)に溶解したNOガスを1回注入した。注入速度は、両方の液体について0.5mL kg-1-1であった。2回の注入間に、約200分間の回復期があった。
【0079】
注入液を同様に作成した。最初に、不活性ガスを入れたゴム膜を有する気密ガラス容器(gas-tight glass chamber)中で、該液体を20分間脱気し;この場合、ヘリウムガスであったが、窒素、アルゴンなどもまた用いられうる。この後、以下の手順の間、酸素が該液体に入らないようにした。次いで該液体を純粋なNOで数分間パージした。次いで該液体を、針を有する気密シリンジ(gas-tight syringe)の中にゴム膜を通して採取し、このシリンジから、シリンジポンプ(864シリンジポンプ、ユニベンター社(Univentor LTD.)、ゼイトゥーン、マルタ)を用いて頚静脈カテーテルの中に注入した。
【0080】
薬物
ヘパリンはカービ(ヴィトルム(Vitrum)、ストックホルム、スウェーデン)から購入し、臭化パンクロニウム(パブロン(PAVULON)(登録商標))はオルガノン(オッス、オランダ)から購入し、ペントバルビタールナトリウムはアポテークスボラーゲット(Apoteksbolaget)(ストックホルム、スウェーデン)から購入し、およびデキストラン70(マクロデックス(登録商標))はファーマリンク(Pharmalink)(スポンガ、スウェーデン)から購入した。L−NAME(NG−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル)および通常の化学薬品はシグマケミカル社(セントルイス、ミズーリ、米国)から購入した。
【0081】
L−NAME注入の効果
L−NAME(30mg kg-1)を10分間注入することによって、呼気の一酸化窒素が減少し(19ppbから<1ppb、図1)、全身の平均動脈圧(MAP、103cmH2Oから128cmH2O(データは図示していない))が増加し、心拍数(HR、274回 分-1から258回 分-1(データは図示していない))が低下した。呼気終末CO2および関連する血液ガスパラメータは標準であった。
【0082】
標準生理食塩水に溶解したNOガスの注入
標準生理食塩水に溶解したNOガスをすばやく注入(30分間、0.5ml kg-1-1)することによって、MAPが減少し(128cmH2Oから75cmH2O(データは図示していない))、HRが増加し(258回 分-1から295回 分-1(データは図示していない))、呼気の一酸化窒素がわずかに増加した(0ppbから2.5ppb、図1)。メトヘモグロビン(metHb)画分が劇的に増加した(0.1%から20%、図2)。注入後約200分、該動物はほとんど完全に回復しており、呼気のNO、MAP、HRおよびmetHbは、それぞれ0.8ppb、123cmH2O、313回 分-1および2.5%であった。
【0083】
脂肪乳剤に溶解したNOガスの注入
脂肪乳剤に溶解したNOガスを注入(30分間、0.5mL kg-1-1)すると、呼気のNOが増加し(0.8ppbから32.5ppb、図1)、MAPが106cmH2Oから55cmH2Oに低下したが、HRおよびmetHb画分(図2)はほとんど影響を受けなかった。
【0084】
液体媒体に溶解したNOの静脈内注入についての考察
標準生理食塩水と比べて、NOを脂肪乳剤に溶解した場合、呼気のNOをモニターして、肺への血液循環による液体媒体に溶解したNOの投与が大量に増加(約15倍)していることが、該結果から明らかに示される。metHbが非常に増加しているという点で、脂肪乳剤と比べて、標準生理食塩水にNOを溶解することが著しく不利であることが本発明によって指摘される。動脈血酸素の飽和が低下している場合、例えば肺塞栓症のような肺高血圧症の条件下で、metHbの生成は深刻でありうる。この実験において、本発明者は非常に速い注入速度を用い、それゆえMAPは著しく減少したが、ずっと遅い注入速度でも、肺高血圧症または血栓塞栓症の条件下の肺で有利な効果を生み出すのに十分であり、全身動脈圧の大きな低下を引き起こすことなく、これを遂行しうると考えられる。呼気のNOが<1ppbから32.5ppbに増加したこと、および混合呼気におけるNOの正常濃度(normal level)が約20ppbであることに留意せよ。さらに、有利な効果はおそらく脈管構造にあるので、呼気ガスにおいてこれらの濃度を発生させることは必要でないかもしれない。MAPにおける低下の大きさはまた、内因性NO生成の阻害にも部分的に起因しうる。
【0085】
別の実験において、本発明者は、NO生成を阻害された動物において、脂肪乳剤に溶解したNOを用いて静脈のガス塞栓症を治療することに成功したが、同じ実験設定において、一酸化窒素を吸入して同じものを治療することは不可能であった。有利な効果は、肺の脈管構造における血管拡張の誘導、トロンボサイトの凝集の阻害および/または体循環の全体または一部における、例えば冠循環におけるわずかな血管拡張でありうる。
【0086】
2.NOを運搬する能力の評価についての動物試験
異なる化合物のNO運搬能を評価するために、一連の動物実験を行った。該実験は、地方動物倫理委員会に認可された。オスのニュージーランド白ウサギ(n=12)を、異なる用量で、NO置換溶液の異なる用量の静脈内注入に付した。いくつかの生理学的パラメータ、例えば混合呼気ガスにおけるNO濃度(FENO)を実験中に測定した。
【0087】
麻酔および最初の外科的処置
ペントバルビタールナトリウムの生理食塩水溶液(6mg ml-1)を用いて、耳静脈を通して該動物を麻酔した(40〜60mg kg-1)。サーモスタットにつないだ加温パッドによって、体温を38〜38.5℃に維持した。該動物を背臥位で置き、気管切開して(tracheotomise)、一定容量の人工呼吸器(モデル683、ハーバード アパレイタス(Harvard Apparatus)、南ナティック、MA、USA)を用いて人工呼吸させた。チャコールフィルター(charcoal filter)(110×11cm)を用いてNOを含まない空気を人工呼吸器に供給した。呼吸数は40分-1であり、ガス分析器(オスカーオキシ(Oscar-Oxy)、ダテックス(Datex)、ヘルシンキ、フィンランド)で決定されるように、呼気終末CO2(ETCO2)が4.5〜5.3%に保たれるように一回呼吸量を最初に調整し、それによって、ナフィオン(登録商標)サンプリングカテーテルを用いて、気管カニューレに連結した2つのサイドアーム(side-arm)のうちの一つからガスを試料採取した(150ml 分-1、分時換気量の15〜20%)。他方のサイドアームに圧力トランスデューサー(ステイサム(Statham)、ハトレイ(Hato Rey)、プエルトリコ)を連結して、吸入圧(insufflation pressure)(IP)をモニターした。人工呼吸器の出口からのガスを、1〜2cmH2Oまたは4〜5cmH2Oの呼吸終末陽圧(PEEP)を生成する2つのビーカーのいずれかに、切り替え弁を通して送った。人工呼吸を最適化し、無気肺の形成を防ぐために、実験の間、全体で10分の間隔で、より低いPEEP(9分)とより高いPEEP(1分)の間でガス流量を変えた。テルモ STC−521シリンジポンプ(テルモ、東京、日本)を用いて、グルコース(24.3g l-1)、デキストラン70(マクロデックス(登録商標) 26.5g l-1)、NaHCO3(6.2g l-1)、ペントバルビタールナトリウム(4.1g l-1)および臭化パンクロニウム(98mg l-1)を含む持続注入を、同じ耳静脈を通して5mL kg-1-1の速度で投与した。平均血圧(MAP)および心拍数(HR)の記録(ステイサム(Statham) 圧力トランスデューサー)、並びに動脈血サンプリングのために、左の総頚動脈にヘパリン化カテーテルを挿入した。注入の投与のために、右の頚静脈に別のカテーテルを挿入した。該動物に30〜60分のインターベンションを行わない時間(intervention-free period)を与えて、安定な循環条件および安定なFENO値を得た。
【0088】
呼気におけるNO測定
排気ベンチレーターに連結した混合室(mixing chamber)の終端で、100mL 分-1で化学発光ベースのシステム(NIOX(登録商標)、エアロクラインAB、ソルナ、スウェーデン)のサンプリングを用いて、FENOを連続的に測定した。呼気の混合の完了を、同じ容器内のCO2濃度をモニターすることによって断続的にチェックした。窒素中の認定(certified)NO標準ガス(AGA スペシャルガス(AGA Specialgas)、リディンゴ(Lidingoe)、スウェーデン)を用いてキャリブレーションを行った。
【0089】
NO置換溶液の製造
異なる出発物質または担体媒体溶液(carrier media solution)(表1)を溶解し、生理食塩水または水で希釈して、異なる濃度の溶液を得た。次いで溶液を気密容器中に置き、10分間ヘリウムを通気することによって脱酸素化した。次いで該ガラス容器に純粋な一酸化窒素ガスを3〜4分間供給した。
【0090】
実験プロトコル
安定期(stabilisation period)の後、該動物に対し、頚静脈カテーテルを通して、100μl kg-1-1の生理食塩水担体流(saline carrier flow)(864シリンジポンプ、ユニベンター社、ゼイトゥーン、マルタ)の中に、異なる注入速度で異なる溶液を静脈内注入(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)した。血液サンプルを採取し、血液ガスおよび酸塩基状態(ABL300、ラジオメーターA/S、コペンハーゲン、デンマーク)を断続的に分析した。実験中、FENO、ETCO2、HR、MAPおよびIPを、グラスポリグラフ(Grass Polygraph)(グラスインスツルメント社(Grass Instruments Co)、クインシー、マサチューセッツ、米国)において連続的にモニターした。
【0091】
薬物
ヘパリン(カービ ヴィトルム、ストックホルム、スウェーデン)、臭化パンクロニウム(パブロン(登録商標)、オルガノン、オッス、オランダ)、デキストラン70(マクロデックス(登録商標)、ファーマリンク、スポンガ、スウェーデン)およびペントバルビタールナトリウム(アポテークスボラーゲット)を、アポテークスボラーゲット、ストックホルム、スウェーデンから購入した。他の化学薬品は、シグマケミカル社(セントルイス、ミズーリ、米国)から購入した。
【0092】
統計解析
データは、平均±SEMとして与えられる。
【0093】
【表1】









【0094】
該結果によって、多くの試験化合物がNOの供給源として機能することが示され、特許請求の範囲で与えられる概念がサポートされる。生理食塩水の対照と比較して、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ソルビトール、マンニトール、フコース、2−デオキシリボース、1−O−メチルリボース、ショ糖、ラクトビオン酸、イヌリン、デキストラン、フコイダン、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ポリエチレングリコール、N−アセチル−システイン、およびアルブミンは顕著な効果を示した。
【0095】
無置換L−システインが脱酸素化され、NOガスに曝される場合、注入に適さない大量の沈殿が形成された。短鎖アルコールが試験された場合、1−プロパノールおよび2−プロパノールについて顕著な効果が記録された。化合物1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールもまた、実験においてNO運搬能を示した。さらに、ショ糖、イヌリン、デキストランおよびフコイダンを用いて得られた結果によって、本発明が高分子化合物に適用可能であることが示される。
【0096】
3.肺高血圧症モデルにおけるプロパンジオール−NOおよびグリセロール−NOの評価
麻酔および外科的処置
該実験は、地方動物倫理委員会に認可された。オスのニュージーランド白ウサギ(n=2)を、実施例2のように麻酔し、準備し、呼気のNOについて試験した。テルモ STC−521シリンジポンプ(テルモ、東京、日本)を用いて、グルコース(25.9g l-1)、デキストラン70(マクロデックス(登録商標)、28.2g l-1)、NaHCO3(6.6g l-1)、ペントバルビタールナトリウム(2.1g l-1)、および臭化パンクロニウム(パブロン(登録商標)、40mg l-1)を含む持続注入を、耳静脈を通して10ml kg-1-1の速度で投与した。平均動脈圧および心拍数の記録(ステイサム 圧力トランスデューサー)、並びに動脈血サンプリングのため、左の総頚動脈にヘパリン化カテーテルを挿入した。薬物の投与のため、右の頚静脈に別のカテーテルを挿入した。中央開胸術(mid thoracotomy)を行い、上行大動脈の周りにフロープローブ(T201 2−チャネル超音波血流計(T201 2-channel ultrasonic blood flow meter)に連結、トランソニックシステムズ社)を置いて、心臓の出力を測定した。右室壁を通して一つのカテーテルを導入し、ユニフロー(Uniflow) 圧力トランスデューサー(バクスター)を用いて肺動脈圧を測定するために、肺動脈に入れた。左心房壁を通して左心房に別のカテーテルを挿入し、圧力トランスデューサー(ステイサム、ハトレイ、プエルトリコ)を用いて左房圧を測定した。実験の間、これらのカテーテルを通してシリンジポンプ(ペルフゾル セキュア(Perfusor Secure)、B.ブラウン メルズンゲン AG、ドイツ)を用いて生理食塩水を低流量(3mL h-1)で流して、凝固を防いだ。肺血管抵抗を、共通の式を用いて計算した。手術後、該動物に30〜60分のインターベンションを行わない時間を与えて、安定な循環条件およびFENO値に達した。
【0097】
NO溶液の調製
1,2−プロパンジオールを25%(v/v)水溶液に溶解し、グリセロールを25%(v/v)水溶液に溶解し、気密シリンダーに入れた。溶液を、10分間ヘリウム通気によって脱酸素化し、次いで3分間純粋な一酸化窒素ガスで処理した。気密シリンダーから、溶液を静脈内注入用シリンジに移した。
【0098】
実験プロトコル
両方の動物において、トロンボキサン受容体アゴニストU46619(9,11−ジデオキシ−11α,9α−エポキシメタノプロスタグランジン F2α;ラロダンファインケミカルズAB(Larodan Fine Chemicals AB)、マルメー、スウェーデン)の静脈内注入(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)によって、肺高血圧症を誘導した。原液は、MH 55669 −33− 酢酸メチル中、10mg ml-1であり、注入前にそれを生理食塩水中、10μg ml-1に希釈した。頚静脈カテーテル中、U46619溶液を100ml 分-1の担体流の中に注入(30μl kg-1-1)して、肺動脈圧を約40cmH2Oに増加させ、この注入を実験の間ずっと継続した。肺高血圧症に対抗するNO溶液の能力を調査するため、U446619注入の間、その2つの動物に、異なる用量(10、30および100μl kg-1-1)でグリセロール−NO注入または1,2−プロパンジオール−NO注入を行った。頚静脈カテーテルを通して、該NO溶液を、注入ポンプ(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)を用いて生理食塩水担体流の中に注入した。動脈血サンプルを採取し、実験の間、血液ガスおよび酸塩基状態(ABL300、ラジオメーターA/S、コペンハーゲン、デンマーク)を断続的に分析した。実験中、呼吸パラメータおよび血行動態パラメータを、グラスポリグラフ(グラスインスツルメント社、クインシー、MA、米国)において連続的にモニターした。
【0099】
薬物
購入した薬物は:ヘパリン(カービ ヴィトルム、ストックホルム、スウェーデン)、臭化パンクロニウム(パブロン(登録商標)、オルガノン、オッス、オランダ)、デキストラン70(マクロデックス、ファーマリンク、スポンガ、スウェーデン)およびペントバルビタールナトリウム(アポテークスボラーゲット、ストックホルム、スウェーデン)であった。通常の化学薬品は、シグマケミカル社(セントルイス、MO、米国)から購入した。
【0100】
結果
グリセロール−NOおよび1,2−プロパンジオール−NO注入によって、U46619誘導肺高血圧症が用量依存的様式で軽減され(図8および9)、最高用量(100μl kg-1-1)によって、肺血管抵抗がほとんど正常化された。
【0101】
4.肺塞栓症モデルにおけるグリセロール−NOの評価
方法
麻酔および外科的処置
該実験は、地方動物倫理委員会に認可された。オスのニュージーランド白ウサギ(n=4)を、実施例3のように麻酔し、準備し、呼気のNOについて試験した。薬物および肺塞栓症物質の投与のため、カテーテルを右の頚静脈に挿入した。中央開胸術を行い、上行大動脈の周りにフロープローブ(T201 2−チャンネル超音波血流計に連結、トランソニックシステムズ社)を置いて、心臓の出力を測定した。肺動脈圧(ステイサム 圧力トランスデューサー、ステイサム、ハトレイ、プエルトリコ)および左房圧(ステイサム、上記)の測定のため、それぞれ左の頚静脈を通して肺動脈に、および左心房にヘパリン化カテーテルを入れた。肺血管抵抗を、共通の式を用いて計算した。右下後肢の前区画(anterior compartment)からの筋肉を切除し、生理食塩水に入れた。手術後、該動物に30〜60分のインターベンションを行わない時間を与えて、安定な循環条件およびFENO値に達した。
【0102】
NO溶液の調製
グリセロールを25%(v/v)水溶液に溶解し、気密シリンダーに入れた。溶液を、10分間ヘリウム通気によって脱酸素化し、3分間純粋な一酸化窒素ガスで処理した。気密シリンダーから、溶液を静脈内注入用シリンジに移した。
【0103】
筋肉塞栓(muscle emboli)の調製
筋組織の肺塞栓形成(MPE)のための物質を、先に記載した技術の変更によって調製した。したがって、切除された前脛骨骨格筋を目に見える結合組織から除去し、次いで均質化し、0.1g 筋肉 ml-1の濃度まで標準生理食塩水に溶解し、50 IE ヘパリン ml-1を混合物に加えた。該破砕物を0.5mm メッシュに通過させて、静脈カテーテルの三方活栓中での障害を防いだ。
【0104】
実験プロトコル
全グループにおいて、150μl kg-1-1の担体流(864シリンジポンプ、ユニベンター社、ゼイトゥーン、マルタ)の中に、150μl kg-1-1の流量でMPE物質(300μl kg-1、すなわち30mg kg-1)を静脈内注入(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)することによって、肺塞栓症を誘導した。3つの動物はいずれの処置も受けていなかったが(対照群)、1つの動物は30分間グリセロール−NO(100μl kg-1-1)の静脈内注入を受け、それは肺塞栓形成の20分後に開始した。頚静脈カテーテルを通して、100mL 分-1の生理食塩水担体流(864シリンジポンプ、ユニベンター社、ゼイトゥーン、マルタ)の中に、NO溶液を注入ポンプ(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)を用いて注入した。動脈血サンプルを採取し、実験の間、血液ガスおよび酸塩基状態(ABL300、ラジオメーターA/S、コペンハーゲン、デンマーク)を断続的に分析した。実験中、呼吸パラメータおよび血行動態パラメータを、グラスポリグラフ(グラスインスツルメント社、クインシー、MA、米国)において連続的にモニターした。
【0105】
薬物
購入した薬物は:ヘパリン(カービ ヴィトルム、ストックホルム、スウェーデン)、臭化パンクロニウム(パブロン(登録商標)、オルガノン、オッス、オランダ)、デキストラン70(マクロデックス、ファーマリンク、スポンガ、スウェーデン)およびペントバルビタールナトリウム(アポテークスボラーゲット、ストックホルム、スウェーデン)であった。通常の化学薬品は、シグマケミカル社(セントルイス、MO、米国)から購入した。
【0106】
結果
肺塞栓症の誘導によって、全動物において、肺血管抵抗が類似のレベルに増大した。グリセロール−NOの注入によって、処置した動物における肺血管抵抗が明らかに減少し、それによって肺塞栓症における肺高血圧を低下させるNO溶液の潜在能力が示された。図10参照。
【0107】
5.心筋虚血−再灌流傷害
麻酔および外科的処置
該実験は、地方動物倫理委員会に認可された。オスのニュージーランド白ウサギ(n=10)を、実施例3のように麻酔し、準備し、呼気のNOについて試験した。テルモ STC−521シリンジポンプ(テルモ、東京、日本)を用いて、グルコース(25.9g l-1)、デキストラン70(マクロデックス(登録商標)、28.2g l-1)、NaHCO3(6.6g l-1)、およびペントバルビタールナトリウム(3.1g l-1)を含む持続注入を、耳静脈を通して7.5mL kg-1-1の速度で投与した。平均動脈圧および心拍数の記録(ステイサム 圧力トランスデューサー)、並びに動脈血サンプリングのために、左の大腿動脈にヘパリン化カテーテルを挿入した。薬物の投与のために、右の頚静脈に別のカテーテルを挿入した。左室圧の測定(ステイサム 圧力トランスデューサー)および左心室dP/dtのオンライン計算のため、左の総頚動脈を通してヘパリン化カテーテルを左心室に入れた。実験中、第2誘導を示す表面心電図が表示された。第四肋間腔を通して左開胸術を行い、外科用縫合材料(5−0 ビクリル(Vicryl)(登録商標)、エチコン、製造者 ジョンソン&ジョンソン ユトランド(Jutl)、ブリュッセル、ベルギー)を用いて、心臓の基底から約1cmの左室壁における回旋動脈の大きな前下行枝の周りに冠状動脈の結紮糸(coronary ligature)を入れた。締めたりゆるめたりすることができる冠状動脈のスネア(coronary snare)を、結紮糸およびPE管を用いて作成した。手術後、該動物に30〜60分のインターベンションを行わない時間を与えて、安定な循環条件およびFENO値に達した。
【0108】
NO溶液の調製
1,2−プロパンジオールを25%(v/v)水溶液に溶解し、D−グルコースを水(60%、w/v)に溶解し、気密シリンダーに入れた。溶液を、10分間ヘリウム通気によって脱酸素化し、次いで3分間純粋な一酸化窒素ガスで処理した。気密シリンダーから、溶液を静脈内注入用シリンジに移した。
【0109】
実験プロトコル
全グループにおいて、インターベンションを行わない時間の後、冠状動脈のスネアを締めて、心電図においてST上昇によって確認される虚血を誘導した。虚血の30分後、冠状動脈のスネアを再び開いて、120分の再灌流を開始し、次いで実験を終えた。該動物を3つのグループに分割した:
(1)対照、
(2)30μl kg-1-1 グルコース−NOの静脈内注入による処置を虚血の15分で開始し、再灌流の60分後に停止、
(3)10μl kg-1-1 1,2−プロパンジオール−NOの静脈内注入による処置を虚血の15分後に開始し、再灌流の120分後に停止。頚静脈カテーテルを通して、100mL 分-1の生理食塩水担体流(864シリンジポンプ、ユニベンター社、ゼイトゥーン、マルタ)の中に、NO溶液を注入ポンプ(CMA/100、カーネギーメディシンAB、ストックホルム、スウェーデン)を用いて注入した。動脈血サンプルを採取し、実験中、血液ガスおよび酸塩基状態(ABL300、ラジオメーターA/S、コペンハーゲン、デンマーク)を断続的に分析した。実験中、呼吸パラメータおよび血行動態パラメータ、並びに心電図の第2誘導を連続してモニターし、コンピュータベースの収集システム(バイオパック(Biopac)、バイオパックシステムズ社(BIOPAC Systems Inc.)、ゴレタ、CA、米国)を用いてチャネルあたり1000Hzの速度で収集した。
【0110】
不整脈の分析
実験後、再灌流の間、不整脈に関してグループを分析した。再灌流の1分ごとに不整脈の心拍動について調査し、特定の分にこのような拍動が含まれていたら、この分を不整脈分(arrhythmic minute)と定義した。再灌流中のこれらの不整脈分をまとめて、各グループにおける累積不整脈分を得、次いで各グループの標本サイズに標準化した。
【0111】
薬物
購入した薬物は:ヘパリン(カービ ヴィトルム、ストックホルム、スウェーデン)、デキストラン70(マクロデックス、ファーマリンク、スポンガ、スウェーデン)およびペントバルビタールナトリウム(アポテークスボラーゲット、ストックホルム、スウェーデン)であった。通常の化学薬品は、シグマケミカル社(セントルイス、MO、米国)から購入した。
【0112】
結果
全グループにおいて、再灌流は不整脈を誘導した。しかしながら、図11に示されうるように、グルコース−NO(n=3)または1,2−プロパンジオール−NO(n=3)による処置によって、対照(n=4)と比較して不整脈の発生率が明らかに減少した。
【0113】
6.NOとヒドロキシル含有化合物(アルコール類、糖類)の間の相互作用からの反応生成物の化学分析
反応物の注入およびサンプリングのためのテフロン(登録商標)でコーティングしたゴム隔膜を備えたガラスシリンダー中で、全ての反応混合物および標準液の希釈液をそれぞれ調製した。
【0114】
HPLC
1mL/分の一定総流量を運搬する2つのLDC コンスタメトリックポンプ(Constametric pump)を用いて、C8、C18またはCNカラム(Waters社 ノバパック(登録商標) 4μm 粒径 8×100mm ラジアルコンプレッションカラム(radial compression column))における逆相クロマトグラフィーを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、反応混合物、並びに市販品の有機亜硝酸エステル類および有機硝酸エステル類の分析を行い、それは33分で0〜100% メタノール(溶離溶媒B)の直線勾配を生成するコンピュータ化グラジエント制御システムで制御され、pH 6でギ酸アンモニウム(5mM)を含む水性(aqueous)の初期溶離溶媒(溶媒A)中にサンプルを注入した1分後に開始した。溶離した化合物の分離を、210nmでLDC スペクトロモニター 可変(variable) UV モニターセットによって決定し、続いてファルマシア ウェーブスキャン 波長走査検出器によって、4秒の間隔で190と370nmの間のUVスキャンを生じ、それをコンピュータに保存し、各HPLCを実行した後に分析した。LDC スペクトロモニターからの出力を、ストリップチャートレコーダーにおいて連続して記録した。
【0115】
反応混合物の注入を、2ml ループを備えたレオダイン 注射器によって2.5〜100μlで行った。ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)によってさらに分析するピークを収集するため、10mLの反応混合物まで注入を繰り返し、次いでAからBのグラジエントを開始した。ウェーブスキャン検出器の直後に溶離流(elution flow)に連結したルアーコネクタを有する3方活栓によって、分画サンプリング(Fractional sampling)を嫌気的に行った。ガラス製注射器を用いて溶離液を収集して、収集したサンプルに空気が入るのを防ぎ、210nmに記録されたピークによって決定されるそれぞれの溶離化合物が溶離した後、コックの栓を閉じることによってそれを密封した。
【0116】
少数の実験において、アジレント バイナリポンプ+ダイオードアレイ検出器システムを有するアジレント 1100 クロマトグラフィーシステムを、反応生成物の分析のためにサーモ 3μm C18カラム(2.1×100mm)とともに用いた。溶媒の流量は0.5mL/分であり、溶離溶媒Aは酢酸アンモニウム(2mM)であった。100% メタノールへのグラジエントを15分で実行した。上記の溶離化合物の嫌気的サンプリングを遂行した。
【0117】
GC−MS
抽出したサンプルの実験:
溶離したピークを、小さな密封したサンプルバイアル中の等容積のトルエンで抽出し、簡単に振とうし、必要であれば遠心分離ですばやく分離した。トルエン相をオートサンプラーバイアルに入れ、1μl画分を、40℃の初期温度でアジレント DB−5MS(0.25mm i.d.、長さ30m、内面コーティング:95% メチルシリコンおよび5% フェニル)ガスクロマトグラフィーカラムに注入し、その後、200または250℃の温度に達するまで、カラムの温度を10℃/分ずつ上昇させた。溶離化合物の検出を、ヒューレット パッカード 5973 質量選択検出器(四重極MS)によって行った。ガスクロマトグラフは、ヒューレット パッカード エンハンスト パラメータ インジェクターシステムを有するヒューレット パッカード 6890 シリーズ GCシステムであった。データを収集し、質量スペクトルのワイリー 7n ライブラリ(Wiley 7n library)を有するエンハンスト ケムステーション G1701 BA コンピュータプログラムで解析した。
【0118】
直接注入実験:
一つの実験において、約100% プロパノールおよびNOガスからなる反応混合物(1マイクロリットル)の直接注入を、気密マイクロシリンジを用いてガスクロマトグラフィーカラムに直接注入することによって行い、抽出手順およびオートサンプリングシステムを迂回した。市販品の亜硝酸プロピルをトルエンに希釈し、比較のために同様に注入した。
【0119】
さらなる分析、例えば化学イオン化
1,2−プロパンジオール 25%または約100%のサンプルをNOガスで処理し、30mL/分の総He流量(分割画分(split fraction) 1:20)において0.5マイクロリットルで、アジレント DB−1701カラムを現在備えているGC−MSシステムに注入した。温度グラジエントは上記のとおりであった。メタン流が供給される化学イオン化インターフェースを用いて、電子衝撃(EI)モードで、または化学イオン化モード(CI)で質量分析を遂行した。
【0120】
化学分析の結果
HPLC:
すべての3つのノバパック カラムおよびサーモカラムにおいて、プロパノールとNOガスの間の反応から、単一ピークの生成物が70〜80% メタノールのグラジエント濃度で溶離した。ノバパック C18 システムにおいて、これは約28分の溶離時間に対応していた(図12、パネルC)。28分のピークは、ウェーブスキャン検出器で決定されるように、HPLC溶離液中、225nmで単一のUV最大吸収(UV absorbance max)を有していた。ガス型シリンダー(gas-type cylinder)において、1:1000で脱酸素化(10分 Heパージ)した水に希釈した亜硝酸プロピル(カール インダストリーズ社(Karl Industries Inc.)、オーロラ(Aurora)、OH、米国)の標準サンプルを注入した場合、225nmで同一のUV最大吸収を有する小さなピークが28分で得られた(図12、パネルA)。亜硝酸プロピルの希釈をNOガスで飽和させた水中で行った場合、28分のピークは5〜10倍の大きさであり(図12、パネルB)、やはり同じUVの特徴を示す。類似の結果がC8およびCNカラムにおいて得られ、C18システムと比較して多少短い保持時間であるが、単一の保持されたピークがプロパノールおよびNOからなる反応混合物から得られた。亜硝酸プロピルの市販品のサンプルもまたこれらのシステムにおいてプロパノール+NO 反応生成物の保持時間と一致するピークを生じ、より小さな大きさであるが、上記と同じUVの特徴を示した。硝酸プロピルの市販品のサンプルもまた、対照のためにCNカラムHPLCシステムにおいて調査し、亜硝酸プロピルの溶離時間と著しく異なった溶離時間を有しており、28分のピーク、またはプロパノール−NOもしくは亜硝酸プロピルクロマトグラムにおけるいずれの他のピークとも一致していなかった。
【0121】
GC−MSによって分析し、HPLC精製および抽出したサンプル:
C18 HPLCクロマトグラフィーから28分のピークを試料採取し、トルエン中で抽出し、GC−MSシステムに注入した際、いくつかのピークが溶離した。初めに(1.5分)、予期される空気ガスのピーク(例えばCO2および酸素−18)がNOピークとともに観察された。3分に、亜硝酸プロピルについての質量スペクトルの特徴を示すピークが、MSによって同定された。GC−MSシステムにおいて3.5分でプロパノールが溶離し、同定され、続いて5.5分で少量のベンゼン(トルエンの分解産物)、次いで8分で大きなトルエンのピークが同定された。
【0122】
GC−MS分析のための直接注入:
市販品の亜硝酸プロピルの直接のオンカラム注入によって、その溶離時間(3分)が確認され、プロパノール+NOガス 反応混合物から抽出されたピークにおいて観察され、C18 HPLCにおいて28分で溶離および収集される亜硝酸プロピルの質量スペクトルの特徴が確認された。気密反応容器から得られ、脱気トルエン中で直ちに希釈され、GC−MSに注入されたプロパノール+NOガス 混合物の直接のオンカラム注入によって、溶離の最前部にNOガスの初期ピーク、3分に亜硝酸プロピル、および3.2分からその後数分溶離するプロパノールの非常に大きなピーク、続いてトルエン(図13)が含まれていた。結論として、HPLCの実行から精製されたピークの分析によって、またはプロパノール+NOガス 反応混合物をGC−MSシステムに直接注入した後に、亜硝酸プロピルは、HPLC(市販品の基準との比較によって)とGC−MSの両方によって、プロパノール+NOガス 混合物中で同定された。
【0123】
GC−MSによるさらなる分析:
アジレント DB−1701カラムにおける自動注入を用いて、プロパンジオールおよびプロパンジオール−NOを同様に分析した。図14、15aおよび15bに示される結果によって、本発明に従った方法の後に生じる反応混合物には、亜硝酸1,2−プロパンジイルおよび未反応のプロパンジオールの2つのアイソフォームが含まれるという仮説がサポートされる。図14bは、マスフラグメント30(有機亜硝酸エステル類についての共通のフラグメント)の主要な強度が、化合物1および2についての2つのクロマトグラフィーピークに見られることを示す。図15aおよびbにおける質量スペクトルによって示される構造から予期されるように、図16aおよびbに示される化学イオン化を用いた質量分析によって、化合物1および2についての質量スペクトルにおけるM−1およびM+1分子イオンが示される。
【0124】
他のアルコール類およびNOを有する反応混合物と、有機亜硝酸エステル類の市販品のサンプルとの比較
亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル、および亜硝酸イソブチルの市販品のサンプル(シグマ−アルドリッチ)を上記のように嫌気的に希釈し、ノバパック C8またはCNカラムを用いてHPLCシステムに注入した。すべてのサンプルにおいて約225nmのUV最大吸収を有するピークが得られたが、それは化合物の親油性の鎖長から判断される予期される差異に対応する異なる保持時間で得られた。有機亜硝酸エステルの希釈が脱気NO飽和溶液中でなされた場合、すべてのこれらのピークはより大きかった。225nmでUV最大吸収を有するそれぞれのピークは、対応のアルコール(エタノール、ブタノール、イソブタノール)をNOガスで処理することによって得られる単一の類似のピークと一致している。これは、対応の有機一亜硝酸エステルが形成されている証拠と考えられた。
【0125】
NOガスとのグルコース、ショ糖およびグリセロール反応生成物のHPLCによる分析
グルコース、グリセロールまたはショ糖の25〜100%(重量/容積)水溶液が脱気され、NOガスで処理される場合、いくつかのピークが逆相クロマトグラフィーによるHPLCクロマトグラムにおいて同定された。これらのピークの中には、有機亜硝酸エステルが形成されていることを示唆する225nm UV吸収の特徴を示すものもあった。
【0126】
アルコール−NOおよび糖−NO反応生成物におけるNO供与能の確認:
HPLCシステムからの溶離液のサンプルを収集し、1% ヨウ化ナトリウムの熱酢酸溶液を含む反応容器の中に注入することによって、NO/亜硝酸エステル 含量について分析した。オゾンと化学発光反応させて一酸化窒素を検出し、放射された光子を数えることで「NO+オゾン−生成された励起NO2生成物」を決定するように最適化された化学発光分析計システムの中に、放出された一酸化窒素をパージした。
【0127】
結果
グルコースおよびプロパノールの処理からの、HPLCにおいて保持されたピークとして同定された反応生成物は、すべてこの比較的穏和な還元処理によってNOを生じることが示された。ニトログリセリン(三硝酸グリセリン)はこれらの条件下でNOの放出を生じず、それによって、グリセロールとNOの間の反応混合物には、有機硝酸エステルよりもむしろ有機亜硝酸エステルが含まれていることが確認された。
【0128】
本発明は、その好ましい態様に関して記載されており、それは本発明者に現在公知である最良の態様を構成するが、当業者にとって明らかな様々な変化および修正が、本明細書に添付した特許請求の範囲で説明した本発明の範囲からはずれることなく行われうることは理解されるべきである。
【0129】
引用文献
Abman SH, Chatfield BA, Hall SL & McMurtry IF (1990). Role of endothelium-derived relaxing factor during transition of pulmonary circulation at birth. Am J Physiol. 259: H1921-7
Cederqvist B. et al., Direct demonstration of NO formation in vivo from organic nitrites and nitrates, and correlation to effects on blood pressure and to in vitro effects, Biochemical Pharmacology, Vol. 47, No. 6, pp. 1047-1053, 1994.
Gustafsson LE, Leone AM, Persson MG, Wiklund NP & Moncada S (1991). Endogenous nitric oxide is present in the exhaled air of rabbits, guinea pigs and humans. Biochem Biophys Res Commun. 181: 852-7.
Heymann MA (1999). Control of the pulmonary circulation in the fetus and during the transitional period to air breathing. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 84: 127-32
Larsen et al., Effects of dietary nitrate on blood pressure in healthy volunteers, N Engl J Med 355, 2792-3 (2006)
Persson MG, Gustafsson LE, Wiklund NP, Moncada S & Hedqvist P (1990). Endogenous nitric oxide as a probable modulator of pulmonary circulation and hypoxic pressor response in vivo. Acta Physiol Scand. 140: 449-57
Rimeika D et al., Regulation of regional lung perfusion by nitric oxide, Am J Respir Crit Care Med 2004, 170(4):450-5
Stamler JS, Loh E, Roddy MA, Currie KE & Creager MA (1994). Nitric oxide regulates basal systemic and pulmonary vascular resistance in healthy humans. Circulation. 89: 2035-40.
【図面の簡単な説明】
【0130】
本発明は、上記の明細書、実施例および下記の添付図面においてさらに詳細に記載され、
【図1】図1は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギにおける、混合呼気の一酸化窒素(FENO)における変化を示すグラフであり、ここで、内因性NO生成を阻害(L−NAME 30mg kg-1)された動物に、生理食塩水または脂肪乳剤に溶解したNOガスを注入する。水平方向の棒は注入時間を示す。
【0131】
【図2】図2は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギにおける、動脈血中のメトヘモグロビン(MetHb)における変化を示すグラフであり、ここで、内因性NO生成を阻害(L−NAME 30mg kg-1)された動物に、生理食塩水または脂肪乳剤に溶解したNOガスを注入する。水平方向の棒は注入時間を示す。
【0132】
【図3】図3は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギ(n=4〜5)を用いた実験に関する3つのグラフからなる。該グラフは、25%−グリセロール−NOの静脈内注入(30マイクロリットル kg-1-1)に起因する、混合呼気の一酸化窒素(FENO)、平均動脈圧(MAP)および心拍数(HR)における変化を示す。水平方向の棒は注入時間を示す。
【0133】
【図4】図4は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギ(n=3〜5)を用いた実験に関する2つの図からなる。該棒は、25%−グリセロール−NOの静脈内注入前(白棒(open bar))および注入中(黒棒(filled bar))の、混合呼気の一酸化窒素(FENO)および平均動脈圧(MAP)を示す。
【0134】
【図5】図5は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギ(n=3〜5)を用いた実験に関する2つの図からなる。該棒は、25%−グリセロール−NOの静脈内注入前(白棒)および注入中(黒棒)の、心拍数(HR)および呼気終末CO2(ETCO2)を示す。
【0135】
【図6】図6は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギ(n=3〜5)を用いた実験に関する2つの図からなる。該グラフは、25%−グリセロール−NOの静脈内注入に起因する、混合呼気の一酸化窒素(FENO)、平均動脈圧(MAP)、心拍数(HR)および呼気終末CO2(ETCO2)の、用量と応答の関係を示す。
【0136】
【図7】図7は、人工呼吸器につながれ、ペントバルビタールで麻酔したウサギ(n=2〜3)を用いた実験に関する2つの図からなる。該棒は、異なった溶液への一酸化窒素(NO)置換体の静脈内注入前(白棒)および注入中(黒棒)の、混合呼気の一酸化窒素(FENO)および平均動脈圧(MAP)を示す。
【0137】
【図8】図8は、ペントバルビタール麻酔した人工呼吸器装着ウサギ(mechanically-ventilated rabbit)を用いた動物実験からの結果を示す。U46619誘導肺高血圧症における25% グリセロール−NO(それぞれ、10、30および100μl kg-1-1の用量)の効果。用いた略語:PAP−肺動脈圧;CO−心臓の出力;PVR−肺血管抵抗;MAP−平均全身動脈圧。
【0138】
【図9】図9は、ペントバルビタール麻酔した人工呼吸器装着ウサギを用いた動物実験からの結果を示す。U46619誘導肺高血圧症における1,2−プロパンジオール−NO(それぞれ30および100μl kg-1-1の用量)の効果。用いた略語:PAP−肺動脈圧;CO−心臓の出力;PVR−肺血管抵抗;MAP−平均全身動脈圧;FENO−混合呼気ガス中の一酸化窒素濃度。
【0139】
【図10】図10は、グリセロール−NOを用いて、ペントバルビタール麻酔した人工呼吸器装着ウサギにおける実験の肺塞栓症(PE)を治療した実験に関する図を示す。対照(白丸、n=3)および処置ウサギ(黒丸(solid circle)、n=1)に、時間0で肺塞栓症,PEを与えた。処置動物は、20〜50分の間の時点で、100μl kg-1-1 グリセロール−NO静脈内注入(脱酸素化および純粋な一酸化窒素ガスで処理した25% グリセロールの水溶液(v/v))を受けた。PVR−肺血管抵抗。
【0140】
【図11】図11は、ペントバルビタール麻酔した人工呼吸器装着ウサギにおける実験に関する図を示し、ここで、NO溶液の静脈内注入により、心筋虚血−再灌流傷害の再灌流段階の間に不整脈の発生率が低下した。対照群(実線、n=4)、グルコース−NO処置群(点線、n=3)、および1,2−プロパンジオール−NO処置群(長い破線、n=3)は30分間心筋虚血を受け(図に示されていない)、次いで120分間再灌流を受けた(図に示されている)。再灌流の15分前(すなわち虚血の15分後)に処置を開始し、グルコース−NO群において再灌流を60分間継続し、1,2−プロパンジオール−NO群において再灌流を120分間継続した。
【0141】
【図12】図12は、対応の実施例においてさらに詳細に記載されるように、亜硝酸プロピル、亜硝酸プロピル−NO、およびプロパノール−NO(パネルA、B、およびC)のHPLC分析からの3つのクロマトグラムを示す。
【0142】
【図13】図13は、脱気条件下(Heパージした気密ガラスシリンダー)でのプロパノール(約100%)とNOガスの間の反応のGC−MS分析を示す。プロパノール−NO反応混合物を、マイクロシリンジによってガラスシリンダーから試料採取し、等容積の脱気トルエンと混合し、希釈サンプル(1μL)を、40℃でアジレント DB−5 MS 0.25mm i.d.30m ガスクロマトグラフィーカラムに直接オンカラム注入し、一定流量のHe(1ml/分)で溶離し、10℃/分の温度グラジエントを同時に開始した。検出は、HP 5973 質量選択検出器(四重極)を用いた。示された化合物は、ワイリー 7n 質量スペクトルライブラリを用いたこれらのそれぞれの質量スペクトルの特徴によって検出した。
【0143】
【図14】図14は、NOガスで処理し、脱気した約100% 1,2−プロパンジオール(0.5マイクロリットル)を時間=0で自動(分割画分1:20)注入した後の、アジレント DB−1701 カラムを用いたEI質量分析検出によるガスクロマトグラムを示す。パネルAは、m/z範囲20〜320についての全イオンクロマトグラムを示し、パネルBは、有機亜硝酸エステル類についての共通断片であるm/z=30についての抽出したイオンクロマトグラムを示す。1および2で示されるピークは、図15および16において質量スペクトルでさらに評価される。1,2−プロパンジオールで示されるピークは、ワイリー質量スペクトルライブラリにおける対応のエントリー(entry)と同一であるが、ピーク1および2についてのスペクトルは、ワイリーライブラリまたは他のどこにも見られなかった。
【0144】
【図15a】図15aおよび15bは、図14に類似するクロマトグラフィーからのピーク1および2におけるEI質量スペクトルを示す図であり、図14における2つのピークに対応する2つの亜硝酸1,2−プロパンジオール類(亜硝酸2−ヒドロキシプロピルおよび亜硝酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)の仮定構造をサポートする。
【図15b】図15aおよび15bは、図14に類似するクロマトグラフィーからのピーク1および2におけるEI質量スペクトルを示す図であり、図14における2つのピークに対応する2つの亜硝酸1,2−プロパンジオール類(亜硝酸2−ヒドロキシプロピルおよび亜硝酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)の仮定構造をサポートする。
【0145】
【図16a】図16aおよび16bは、化学イオン化(メタンガス)を用いたアジレント DB−1701 カラムにおける、NOガスで処理し、脱気した約100% 1,2−プロパンジオールの反応混合物のクロマトグラフィー後に得られた質量スペクトルを示す。パネルAには、図14のピーク1に対応する、溶離されたピークについてのスペクトルが示され、パネルBには、図14のピーク2に対応する、溶離されたピークについてのスペクトルが示される。両方のパネルには、図15に記載される化合物についてのM−1およびM+1に対応する、質量ピークm/z=104および106が見出される。
【図16b】図16aおよび16bは、化学イオン化(メタンガス)を用いたアジレント DB−1701 カラムにおける、NOガスで処理し、脱気した約100% 1,2−プロパンジオールの反応混合物のクロマトグラフィー後に得られた質量スペクトルを示す。パネルAには、図14のピーク1に対応する、溶離されたピークについてのスペクトルが示され、パネルBには、図14のピーク2に対応する、溶離されたピークについてのスペクトルが示される。両方のパネルには、図15に記載される化合物についてのM−1およびM+1に対応する、質量ピークm/z=104および106が見出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価/多価アルコールまたはそのアルデヒド誘導体もしくはケトン誘導体である化合物からの有機亜硝酸エステルの製造方法であって、以下の段階:
a) 実質的に酸素を含まなくなるまで前記化合物または前記化合物の溶液を脱気すること、
b) 前記脱気溶液を気体の一酸化窒素(NO)でパージして、前記溶液中、有機亜硝酸エステルを形成すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶液が水溶液である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記溶液がそれ自身液体または半液体の形態の出発物質からなる、請求項1の方法。
【請求項4】
気体のNOによる前記パージが高圧下で行われる、請求項1の方法。
【請求項5】
形成された有機亜硝酸エステルを回収する段階をさらに含むことを特徴とし、該有機亜硝酸エステルがクロマトグラフ法を用いて回収される、請求項1の方法。
【請求項6】
該有機亜硝酸エステルが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて回収される、請求項5の方法。
【請求項7】
該有機亜硝酸エステルがクロマトグラフ法を用いて回収され、該出発物質自身またはそれの溶液を用いて溶離される、請求項5の方法。
【請求項8】
該有機亜硝酸エステルがクロマトグラフィー処理を繰り返すことによって濃縮される、請求項5の方法。
【請求項9】
回収および適宜濃縮した後に該有機亜硝酸エステルが結晶化される、請求項5の方法。
【請求項10】
前記出発物質が炭水化物またはその誘導体である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記出発物質が単糖またはその誘導体である、請求項1の方法。
【請求項12】
前記出発物質がグルコース、フルクトース、ガラクトース、およびリボースの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項13】
前記出発物質が単糖アルコールである、請求項1の方法。
【請求項14】
前記出発物質がソルビトールおよびマンニトールの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項15】
前記出発物質が修飾された単糖である、請求項1の方法。
【請求項16】
前記出発物質がフコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項17】
前記出発物質が単糖またはその誘導体の、二糖もしくは高次炭水化物ポリマーである、請求項1の方法。
【請求項18】
前記出発物質がグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ソルビトール、マンニトール、フコース、2−デオキシリボース、および1−O−メチルリボースの二糖または高次多糖である、請求項1の方法。
【請求項19】
前記出発物質がショ糖、ラクトビオン酸、イヌリン、デキストラン、およびフコイダンの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項20】
前記出発物質がアルコールまたはその誘導体である、請求項1の方法。
【請求項21】
前記出発物質が一価アルコールまたはその誘導体である、請求項1の方法。
【請求項22】
前記出発物質がエタノール、ブタノール、イソブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ソルビトール、およびマンニトールの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項23】
前記出発物質が二価アルコールである、請求項1の方法。
【請求項24】
前記出発物質が1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)および1,3−プロパンジオールの中から選択される、請求項1の方法。
【請求項25】
前記出発物質が三価アルコールである、請求項1の方法。
【請求項26】
前記出発物質がグリセロールである、請求項1の方法。
【請求項27】
前記出発物質がアルコール分子またはその誘導体のポリマーである、請求項1の方法。
【請求項28】
前記出発物質がポリエチレングリコールまたはその誘導体である、請求項1の方法。
【請求項29】
有機亜硝酸エステルが請求項1〜28のいずれか一つに従って製造される、前記有機亜硝酸エステルを含む生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物の製造方法。
【請求項30】
有機出発物質から合成される有機亜硝酸エステルを含む生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物の製造方法であって、
a) 実質的に酸素を含まなくなるまで前記出発物質の一定量を脱気し、
b) 前記脱気出発物質を気体のNOでパージし、
c) 前記有機亜硝酸エステルを前記脱気およびNOパージした出発物質に溶解して、有機亜硝酸エステルの対応の有機出発物質溶液を形成する方法。
【請求項31】
有機出発物質から合成される有機亜硝酸エステルの投与のための治療製剤の製造方法であって、
a) 実質的に酸素を含まなくなるまで前記出発物質の一定量を脱気し、
b) 前記有機亜硝酸エステルを前記出発物質に溶解して、有機亜硝酸エステルの対応の有機出発物質溶液を形成し、
c) 実質的に酸素を含まなくなるまで脱気し、NOガスでパージしたベヒクル中で、前記溶液を使用目的に適した濃度になるまで希釈する方法。
【請求項32】
前記出発物質が一価/多価アルコールまたはそのアルデヒド誘導体もしくはケトン誘導体である、請求項30および31のいずれか一つの方法。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一つの方法に従って製造された化合物または組成物。
【請求項34】
以下の式IおよびII:
【化1】

を有する化合物の中から選択される化合物。
【請求項35】
請求項1〜29のいずれか一つに従って製造された有機亜硝酸エステル、または請求項33もしくは34の化合物を含む生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物を含み、過剰のNOの存在下で保存される治療製剤。
【請求項36】
請求項30〜33のいずれか一つに従って製造された有機亜硝酸エステルを含む、生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物を含む治療製剤。
【請求項37】
気体のNOで飽和させた環境中で、有機亜硝酸エステルを含む生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物を含む投与用容器。
【請求項38】
気体のNOで飽和させた環境中で、請求項1〜29のいずれか一つに従って製造された有機亜硝酸エステルを含む、生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物を含む投与用容器。
【請求項39】
気体のNOで飽和させた環境中で、請求項30〜33のいずれか一つに従って製造された有機亜硝酸エステルを含む、生理学的に許容され、かつ治療上有効な組成物を含む投与用容器。
【請求項40】
請求項1〜29のいずれか一つの方法を通して得られうる化合物を、NOが有利な効果を有する症状の患者に投与する、前記症状の治療剤の製造方法。
【請求項41】
請求項30〜33のいずれか一つの方法を通して得られうる化合物または製剤を、NOが有利な効果を有する症状の患者に投与する、前記症状の治療剤の製造方法。
【請求項42】
前記症状が、異なった起源の急性肺血管収縮、肺塞栓症、異なった起源の肺高血圧症、(例えば原発性高血圧症および二次性高血圧症)、異なった起源の全身性高血圧症、急性心不全、冠動脈心疾患、心筋梗塞、虚血性心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不整脈、アシドーシス、気道炎症、嚢胞性線維症、COPD、線毛運動不全症、肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性肺水腫、急性高山病、喘息、気管支炎、異なった起源の低酸素症、脳卒中、消化管の炎症、IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎、膀胱もしくは尿道路の炎症、皮膚炎、糖尿病性潰瘍、糖尿病性神経障害、乾癬、異なった起源の炎症、創傷治癒、および平滑筋弛緩が必要な症状の中から選択される、請求項40または41の方法。
【請求項43】
請求項1〜29のいずれか一つの方法を通して得られうる化合物を、NOが有利な効果を有する症状の患者に投与する、前記症状の治療方法。
【請求項44】
請求項30〜33の方法を通して得られうる化合物または製剤を、NOが有利な効果を有する症状の患者に投与する、前記症状の治療方法。
【請求項45】
前記症状が、異なった起源の急性肺血管収縮、肺塞栓症、異なった起源の肺高血圧症、(例えば原発性高血圧症および二次性高血圧症)、異なった起源の全身性高血圧症、急性心不全、冠動脈心疾患、心筋梗塞、虚血性心疾患、狭心症、不安定狭心症、心不整脈、アシドーシス、気道炎症、嚢胞性線維症、COPD、線毛運動不全症、肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群、急性肺水腫、急性高山病、喘息、気管支炎、異なった起源の低酸素症、脳卒中、消化管の炎症、IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎、膀胱もしくは尿道路の炎症、皮膚炎、糖尿病性潰瘍、糖尿病性神経障害、乾癬、異なった起源の炎症、創傷治癒、および平滑筋弛緩が必要な症状の中から選択される、請求項43または44の方法。
【請求項46】
請求項1〜29、もしくは請求項30〜33の方法を通して得られうる有機亜硝酸エステル、および別の薬剤の併用投与を含むことを特徴とする方法であって、前記薬剤の作用が前記有機亜硝酸エステルの効果によって亢進される方法。
【請求項47】
癌の治療のための、請求項46の方法。
【請求項48】
糖尿病性潰瘍の治療のための、請求項46の方法。
【請求項49】
糖尿病性神経障害の治療のための、請求項46の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【公表番号】特表2009−534298(P2009−534298A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500332(P2009−500332)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050152
【国際公開番号】WO2007/106034
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508278549)
【氏名又は名称原語表記】Lars E. GUSTAFSSON
【出願人】(508278550)
【氏名又は名称原語表記】Dag LINNARSSON
【出願人】(508278561)
【氏名又は名称原語表記】Kristofer NILSSON
【Fターム(参考)】