説明

泡吐出器

【課題】空気室に侵入した水をスムーズに排除させて、空気室に水が溜まったままの状態にならないようにする泡吐出器を提供する。
【解決手段】ベースキャップ部14に設けられたポンプヘッド部19を押圧することにより、加圧された液室30や空気室24から内容液や空気を送り出す第1流路32及び第2流路33を開放させて、送られた内容液と空気を混合室13で混合すると共に、発泡流路21で泡生成部材20により発泡させて内容液を吐出する泡吐出器10であって、空気室24の底面24aが、液導入室28に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、ポンプヘッド部19が押圧されていない状態で筒状ピストン部材15の密着摺動部15aが配置される液導入室28の空気室24と近接する部分には、ポンプヘッド部19が押圧された際の加圧によって内部に溜まった水を容器本体11に排除させる微細排水孔50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡吐出器に関し、特に、容器本体の口首部に取り付けて用いられ、収容された内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する泡吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液状の洗浄剤や毛髪剤等を収容し、容器を置いたままの状態でポンプヘッド部を押圧操作することにより、手等による撹拌などを使用者がおこなわずとも内容液を泡状にして吐出させるポンプフォーマー容器等の泡吐出容器が種々開発されている。このような泡吐出容器では、容器本体の口首部に、内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する泡吐出器が装着されている。泡吐出器は、例えば容器本体の口首部に装着されるベースキャップ部に、内容液の吸引、加圧、排出を行うピストンと、空気の吸引、加圧、排出を行うピストンとをそれぞれ同心状の直列配置にして組み入れた単一のシリンダ部からなるポンプが設けられている。そして、ベースキャップ部の上方に突出するポンプヘッド部の押し込みによりポンプの各ピストンを作動させ、内容液と空気をそれぞれ各シリンダ部内で加圧、排出して合流空間で相互に混合し、メッシュリング等の泡生成部材を通過させることで泡状にして内容液を外部に吐出させる構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ポンプフォーマー容器等の泡吐出容器は、例えば浴室や洗面台等の水周りで使用される機会が多いため、水に濡れることが多い。特に浴室においては、シャワー等の水が容器に直接かかる場合がある。さらに、ポンプヘッド部は、濡れた手で押すことが多いため、ポンプヘッド部の周囲は水に濡れる機会が多い。そして、泡吐出器は、ポンプヘッド部を押圧して内容液を泡状に吐出した後にこれの押圧を解除した際に、ポンプヘッド部が上方に押し戻されるのに伴って、シリンダ部の内部が負圧になり、例えばポンプヘッド部の縦方向流路となる中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間を介して、ポンプヘッド部やベースキャップ部の周囲の水が、外気と共にシリンダ部内の空気室に吸引されることになる。吸引された水が空気室に溜まると、雑菌を発生させたり、空気室内部が腐敗したりする要因になりやすい。特に、容器本体の内部に内容液が詰替え等により繰り返し収容されて、長期間に亘って使用される泡吐出容器においては、空気室に溜まった水が腐敗する確率が高くなる。
【0004】
このようなことから、ポンプヘッド部の中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間から、水が侵入しないように工夫した泡吐容器が種々開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2に記載のポンプフォーマーでは、ポンプヘッド部の中空パイプの外側に、ガイドステムの外周面に沿って摺動可能なスカート状カバーを設けて中空パイプとガイドステムとの間の隙間を覆うと共に、ポンプヘッド部の頭部をスカート状カバーの外側に大きく張り出させて、空気室への水の侵入を防止するようになっている。また、特許文献3に記載の泡噴出器では、ポンプヘッド部の中空パイプの外側に、ガイドステムの外周面に沿って摺動可能なスカート状カバーを設けて中空パイプとガイドステムとの間の隙間を覆うと共に、ガイドステムの最上端外面と、スカート状カバーの最下端内面のそれぞれに、ポンプヘッド部の初期姿勢において互いに近接して極僅かな微小隙間を形成する環状凸部を設けることにより、空気室への水の侵入を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−315463号公報
【特許文献2】特開2005−193972号公報
【特許文献3】特開2004−121898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の空気室への水の侵入を防止するようにしたポンプフォーマー等の泡吐出器では、吸い込みによる水の侵入を完全には遮断することができず、特に容器を倒してしまったり、容器の周囲を洗浄したりする環境下におかれると、空気室への水の侵入を回避することは困難である。
【0007】
本発明は、空気室に水が侵入した場合でも、溜まった水を空気室外へ排出することで、水の腐敗を防止できる泡吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器本体の口首部に装着したキャップ部に対し往復動可能に設けられるヘッド部を有し、該ヘッド部が押圧されることにより、加圧された液室から混合室に内容液を送る第1流路と、加圧された空気室から前記混合室に空気を送る第2流路とを開放し、前記混合室に送られた前記内容液と前記空気とを、前記混合室から吐出口に至る発泡流路において混合発泡させて吐出する泡吐出器であって、前記容器本体の口首部の内側に配置される、大径の前記空気室及び小径の液導入室からなるシリンダ部と、前記液導入室の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材及び該筒状ピストン部材から径方向外側に張り出して設けられて前記空気室の内周面に沿って摺動するエアピストン部材からなるピストン部とを備えており、前記空気室には、前記ヘッド部の押圧が解除されて前記ヘッド部が復帰する際に、内部が負圧となることにより開いて外気を取込み可能とする逆止弁が設けられていると共に、前記第2流路を閉塞する閉塞部が設けられており、且つ、前記空気室の底面が、前記液導入室に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、前記ヘッド部が押圧されていない状態で前記筒状ピストン部材の密着摺動部が配置される前記液導入室の前記空気室と近接する部分には、前記ヘッド部が押圧された際の加圧によって内部に溜まった水を前記容器本体に排除させる微細排水孔が、前記容器本体の内部と連通可能に設けられている泡吐出器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の泡吐出器によれば、空気室に水が侵入した場合でも、侵入した水をスムーズに排除させて、空気室に水が溜まったままの状態にならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器を容器本体の口首部に装着した状態の断面図である。
【図2】(a),(b)は、液導入室に設けた微細排水孔から空気室の内部に溜まった水を排除する状況を説明する図1のA部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、閉塞部により第2流路を開閉可能に閉塞する状況を説明する、図1のB部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器10は、いわゆるポンプフォーマー容器に取り付けて用いるポンプフォーマーであって、図1に示すように、従来のポンプフォーマーと同様に、容器本体11の口首部12に装着されて、内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する機能を備えている。すなわち、泡吐出器10は、容器本体11の口首部12に装着されるベースキャップ部14に取り付けられた、内容液の吸引、加圧、排出を行う筒状ピストン部材15と、空気の吸引、加圧、排出を行うエアピストン部材16をそれぞれ同心状の直列配置にして組み入れた単一のシリンダ部17からなるポンプ18を有している。そしてベースキャップ部14の上方に突出するポンプヘッド部19の押し込みによりポンプ18の各ピストン部材15,16を作動させ、内容液と空気をそれぞれシリンダ部17内で加圧、排出して、これらをポンプ出側に合流空間として設けた混合室13で混合し、泡状にして吐出口26から外部に吐出させる。
【0012】
従来のポンプフォーマーでは、ポンプヘッド部19を押圧して内容液を泡状にして吐出した後に押圧を解除した際に、ポンプヘッド部19が上方に押し戻されるのに伴って、シリンダ部17の内部が負圧になる。シリンダ部17が負圧になると、ポンプヘッド部19の中空パイプ22とベースキャップ部14のガイドステム23との間の隙間を介して、外気と共にポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水がシリンダ部17内に吸引されて、空気室24に水が溜まりやすい。このような水の吸引を回避するために、従来より種々の工夫がなされているが、例えば容器を水中へ落としてしまったり、容器の周囲を洗浄したりする環境下におかれると、水の侵入を完全に防止することは困難である。
【0013】
本実施形態の泡吐出器10は、ポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水がシリンダ17内に吸引されて空気室24に侵入した場合でも、侵入した水をポンプヘッド部19を押し下げる通常の操作の中でスムーズに排除する。結果として、空気室24に同じ水が長期間溜まったままの状態にならないので、空気室24の内部で雑菌が増殖したり、水が腐敗するのを効果的に回避できる。
【0014】
本実施形態の泡吐出器10は、容器本体11の口首部12に装着したベースキャップ部14に対し往復動可能に設けられるポンプヘッド部19を有し、このポンプヘッド部19が押圧されることにより、加圧減容された液室30から混合室13に内容液を送る第1流路32と、同じく加圧減容された空気室24から混合室13に空気を送る第2流路33とを開放し、混合室13に送られた内容液と空気とを混合させ、混合室13から吐出口26に至る発泡流路21において泡生成部材20により発泡させて吐出するポンプフォーマーであって、容器本体11の口首部12の内側に配置される、大径の空気室24及び小径の液導入室28からなるシリンダ部17と、液導入室28の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材15及びこの筒状ピストン部材15から径方向外側に張り出して設けられて空気室24の内周面に沿って摺動するエアピストン部材16からなるピストン部38とを備えている。また、空気室24には、ポンプヘッド部19の押圧が解除されてポンプヘッド部19が元の位置に復帰する際に、内部が負圧となることにより開いて外気取込み流路34を介して外気を取込み可能とする逆止弁35が設けられていると共に、第2流路33を閉塞する閉塞部36(図3(a)〜(c)参照)が設けられており、且つ、空気室24の底面24aが、液導入室28に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、ポンプヘッド部19が押圧されていない状態で筒状ピストン部材15の密着摺動部15aが配置される液導入室28の空気室24と近接する部分には、ポンプヘッド部19が押圧された際の加圧によって内部に溜まった水を容器本体11に排除させる微細排水孔50が、容器本体11の内部と連通可能に設けられている。
【0015】
さらに、本実施形態では、ベースキャップ部14は、円筒状のガイドステム23を天井部14aから立設させて、容器本体11の口首部12に装着されており、ポンプヘッド部19は、このベースキャップ部14のガイドステム23に摺動可能に挿入される中空パイプ22を有すると共に、上部先端部分に泡状にした内容液を吐出する吐出口26を備えている。またポンプヘッド部19は、中空パイプ22の下端部に嵌合連結された筒状ピストン部材15を介在させて、シリンダ部17の液導入室28に設けられたスプリング部材29の作用によって上方に付勢されるようになっている。
【0016】
本実施形態では、スプリング部材29の付勢力に抗してポンプヘッド部19を下方に押し下げることにより、ポンプ18の筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16も同時に押し下げられ、ボール弁31aが上方に移動して、第1流路32が開放される。これらによって、筒状ピストン部材15の内部に形成された液室30から、内容液が中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出される。また筒状ピストン部材15とエアピストン部材16との接合部分39及び中空パイプ22と筒状ピストン部材15との嵌合部分40に沿って形成された空気流路としての第2流路33(図3(a)〜(c)参照)を、閉塞部36を開放することにより流通可能として、空気室24の空気を中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出する。発泡流路21に向けて排出された内容液と空気は、合流空間としての混合室13において混合されることにより混合液を形成し、混合室13の下流側に設けられた泡生成部材20を通過して発泡した後に、ポンプヘッド部19の吐出口26から泡状に吐出される。
【0017】
ここで、ポンプヘッド部19の押圧を解除すれば、スプリング部材29の付勢力によってポンプヘッド部19が上方に押し上げられ、筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16も同時に押し上げられると共に、ボール弁31aが下方に移動することにより第1流路32を閉塞して、内容液の排出が遮断される。また、ボール弁31aの閉塞によって筒状ピストン部材15の内部の液室30が負圧になるので、ポペット弁31bが上方に移動することにより導入流路が開放されて、容器本体11内の内容液が吸引管27及び液導入室28を介して液室30に吸引供給される。さらに、エアピストン部材16の上昇により、空気室24が負圧になって吸引力を生じることになり、この吸引力によって、エアピストン部材16に設けられた逆止弁35が開放されると共に、外気取り込み流路34を介して、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を通過した外気が空気室24に取り込まれる。さらにまた、ポンプヘッド部19の上昇、及びこれに伴う筒状ピストン部材15とエアピストン部材16の上昇により、後述するように閉塞部36が閉塞されて、第2流路33を介した空気の流通が遮断される。
【0018】
なお、本実施形態では、泡吐出器10には、ポンプヘッド部19の中空パイプ22の外側に、これと同心状に配置されたスカート状カバー25がガイドステム23の外周面に沿って摺動可能に設けられている。スカート状カバー25によって中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を覆うことにより、ガイドステム23の外周面とスカート状カバー25の内周面との間の狭い隙間を介して空気が吸引されて中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間から外気と共にポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水が空気室24に流入するのを相当程度防止できる。
【0019】
そして、本実施形態の泡吐出器10では、図2(a),(b)にも拡大して示すように、空気室24の底面24aが、液導入室28に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、ポンプヘッド部19が押圧されていない状態で(図2(a)参照)、筒状ピストン部材15の密着摺動部15aが配置される液導入室28の空気室24と近接する部分には、微細排水孔50が設けられている。
【0020】
本実施形態では、微細排水孔50は、空気室24の底面24aの最下部に位置する中央部分と近接して、液導入室28の側面外周壁を貫通して側方に向けて開口形成されることにより、液導入室28の内部をこれの上端部分において容器本体11の内部と連通させるようになっている。また微細排水孔50は、ポンプヘッド部19を押圧して空気室24を加圧することにより閉塞部36を開放しつつ第2流路33を介して混合室13に送られる、空気の流れや空気量に影響を及ぼさないような大きさである必要があるため、例えばその孔径が0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.7mmであることが更に好ましく、0.5mmであることが特に好ましい。
【0021】
微細排水孔50の大きさが大きすぎると、発泡に必要な空気が容器内に流れ過ぎる為、吐出された泡は、水っぽく発泡倍率の低い泡となるという不具合が生じることになり、小さすぎると、空気室に溜まった水の排出が遅く滞留期間が長くなる為、菌汚染リスクが高くなるという不具合が生じることになる。一方、微細排水孔50の孔径が0.3〜0.7mmであることにより、良好な泡質を維持したまま、空気室に溜まった水をスムーズに排出できるという利点が得られる。なお、微細排水孔50は、空気室24の外周壁に1箇所又は複数箇所に設けることができる。微細排水孔50を複数箇所に設ける場合には、その開口面積の総和が0.07〜0.38mm2となっていることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態では、微細排水孔50は、例えばポンプフォーマー容器の非使用時におけるポンプヘッド部19が押圧されていない状態では、筒状ピストン部材15の密着摺動部15aによって覆われることにより閉塞されていて、液導入室28と容器本体11との連通が遮断されるようになっている(図2(a)参照)。ポンプヘッド部19が押圧されていない状態で微細排水孔50が閉塞されていていることにより、容器本体11が横に倒れたりした場合に微細孔から空気室内に内容液が流れ込むのを防ぐことができる。
【0023】
そして、ポンプフォーマー容器の使用時にポンプヘッド部19が押圧された際に、筒状ピストン部材15の密着摺動部15aが下方に移動して微細排水孔50が開放されることになり、また空気室24からの加圧力を受けて、傾斜面となった底面24aを流下して最下部の中央部分に集められた空気室24に侵入した水を、微細排水孔50を介して容器本体11の内部にスムーズに排除させることが可能になる(図2(b)参照)。
【0024】
さらに、本実施形態の泡吐出器10では、図3(a)〜(c)に示すように、ピストン部38の筒状ピストン部材15とエアピストン部材16との接合部分39に、第2流路33を開閉する閉塞部36が設けられており、この閉塞部36には、空気室24の内部が負圧となった際に、混合室13の内容液を空気室24に流入させる微細流路が形成される。
【0025】
すなわち、本実施形態では、筒状ピストン部材15は、嵌合部分40において中空パイプ22の下端部にその上端部を嵌合連結することにより、中空パイプ22と一体となって上下動する(図1参照)。一方、エアピストン部材16は、接合部分39において筒状ピストン部材15の外周面に密着状態で摺動可能に接する円筒部16aと、円筒部16aの上下方向中央部分から外側に張り出して円環階段状に設けられた張出し部16bと、張出し部16bの外周先端部分に設けられ、大径空気室24の内周面に密着状態で摺動可能に接する外周ピストン部16cとからなり、円筒部16aの筒状ピストン部材15の外周面への密着力よりも、外周ピストン部16cの大径空気室24の内周面への密着力の方が大きくなるように設定されている。
【0026】
また、筒状ピストン部材15の外周面には、閉塞用凹状リブ41が、外側に張り出すように突出して当該外周面に沿って円環状に設けられている。この閉塞用凹状リブ41に、エアピストン部材16の円筒部16aの下端面42を挿入して当接させることにより、筒状ピストン部材15とエアピストン部材16との接合部分39及び中空パイプ22と筒状ピストン部材15との嵌合部分40を縦断して、筒状ピストン部材15の外周面に上下に延設して形成された切欠き溝43による第2流路33を、その下端部において閉塞することが可能になる。すなわち、閉塞用凹状リブ41とエアピストン部材16の円筒部16aの下端面42とによって、本実施形態の閉塞部36が構成されている。
【0027】
さらに、本実施形態では、エアピストン部材16の円筒部16aは、張出し部16bよりも上方の部分が、筒状ピストン部材15が嵌合される中空パイプ22の下端部内側面を切り欠いて形成した段差凹部44に挿入可能に配置されている。
【0028】
そして、図3(a)に示すポンプヘッド部19の押圧前の状態では、閉塞用凹状リブ41にエアピストン部材16の円筒部16aの下端面42が密着当接して、切欠き溝43による第2流路33が閉塞されると共に、円筒部16aの上端面45と段差凹部44の段差端面44aとの間、及び中空パイプ22の下端面22aとエアピストン部材16の張出し部16bの基端部上面46との間には、各々間隔が保持される。
【0029】
図3(a)に示すポンプヘッド部19の押圧前の状態から、ポンプヘッド部19を下方に押し下げれば、エアピストン部材16の円筒部16aの筒状ピストン部材15の外周面への密着力よりも、外周ピストン部16cの空気室24の内周面への密着力の方が大きくなるように設定されていることから、まず図3(b)に示すように、中空パイプ22は、段差凹部44の段差端面44aが円筒部16aの上端面45に当接すると共に、中空パイプ22の下端面22aがエアピストン部材16の張出し部16bの基端部上面46に当接するまで、エアピストン部材16に対して相対的に下方にスライド移動する。これに伴って、中空パイプ22に嵌合連結された筒状ピストン部材15もまた、エアピストン部材16に対して相対的に下方にスライド移動するので、エアピストン部材16の円筒部16aの下端面42の閉塞用凹状リブ41への密着状態が解除されて、閉塞部36が開放され、第2流路33を空気が流通可能な状態となる。
【0030】
ポンプヘッド部19をさらに下方に押し下げれば、中空パイプ22を介して筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16が一体として押し下げられることにより、筒状ピストン部材15の内部に形成された液室30から、内容液が第1流路32を介して中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出されると共に、大径空気室24の空気が第2流路33を介して中空パイプ22内の発泡流路21に向けて排出される。また混合室13において加圧混合された内容液と空気との混合液が泡生成部材20を通過して発泡した後に、ポンプヘッド部19の吐出口26から泡状に吐出されることになる。
【0031】
一方、ポンプヘッド部19の押圧を解除すれば、まず図3(c)に示すように、スプリング部材29の付勢力によって、中空パイプ22及び筒状ピストン部材15がエアピストン部材16に対して相対的に上方にスライド移動すると共に、閉塞用凹状リブ41を、エアピストン部材16の円筒部16aの下端面42に密着当接させることにより閉塞部36を閉塞して、第2流路33を介した空気の流通が略遮断される。また、閉塞用凹状リブ41と円筒部16aの下端面42が密着して閉塞部36が閉塞した後は、筒状ピストン部材15とエアピストン部材16は一体として上昇する。筒状ピストン部材15とエアピストン部材16の上昇により、筒状ピストン部材15の内部の液室30が負圧になって、吸引管27及び小径液導入室28を介して液室30に内容液が吸引供給されると共に、大径空気室24が負圧になって吸引力を生じることにより、外気取り込み流路34を介して、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を通過した外気が、逆止弁35を開放しつつ大径空気室24に取り込まれる。これらによって、図3(a)に示すポンプヘッド部19の押圧前の状態に復帰する。
【0032】
ここで、本実施形態では、閉塞部36を構成する、筒状ピストン部材15の外周面から張り出して当該外周面の全周に設けられた円環状の閉塞用凹状リブ41は、その周方向の一部が僅かな幅で切り欠かれている(図示せず)。この閉塞用凹状リブ41の切り欠き部分によって、ポンプヘッド部19の押圧を解除した際に、混合室13に残った内容液を第2流路33から閉塞部36を通過させて負圧となった空気室24へ微少量流入させる微細流路が形成される。この微細流路は、空気室24から相当の吸引力を受けた時に混合液を通過させることが可能な小さな幅の微細な流路であり、ポンプヘッド部19の押圧を解除した際にエアピストン部材16の上昇によって生じる空気室24内の負圧の作用により、閉塞状態の閉塞部36を通過させて空気室24へ内容液を微少量だけ流入させる。
【0033】
ポンプヘッド部19の押圧を解除した際に、微細流路を介して混合室13から空気室24に内容液を微少量だけ流入させることにより、内容液に含まれる防腐剤や抗菌剤等の作用によって、空気室24の内部に雑菌が増殖したり、浸入した水が腐敗したりするのを、さらに効果的に防止する。
【0034】
なお、内容液に含まれる防腐剤や抗菌剤としては、例えば安息香酸、安息香酸パントテニルエチルエーテル、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジシン、グルコン酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、臭化アルキルイソキノリニウム、チモール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ポリリジン、亜鉛塩、銀塩等を含むことができ、複数組合わせて配合してもよい。
【0035】
そして、上述の構成を有する本実施形態の泡吐出器10によれば、空気室24に水が侵入した場合でも、侵入した水をスムーズに排除し、空気室24に水が溜まったままの状態になるのを容易に回避することが可能になる。
【0036】
すなわち、本実施形態によれば、空気室24の底面24aが、液導入室28に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、液導入室28の空気室24と近接する部分には、ポンプヘッド部19が押圧された際の加圧によって内部に溜まった水を容器本体11に排除させる微細排水孔50が設けられているので、空気室24に水が侵入した場合でも、侵入した水を液導入室28と近接する空気室24の最下端部に効率良く集積できると共に、泡吐出器10の使用時に行われる、内容液を泡状にして吐出させる通常のポンプヘッド部19の押圧操作の中で、空気室24内に侵入した水を微細排水孔50を介して容器本体11の内部に容易且つスムーズに排除することが可能になる。これによって、空気室24に水が長期間溜まったままの状態になるのを効果的に回避して、泡吐容器としてのポンプフォーマー容器をより衛生的に用いることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、閉塞部に、空気室の内部が負圧となった際に混合室の内容液を空気室に流入させる微細流路が形成されている必要は必ずしもない。
【符号の説明】
【0038】
10 泡吐出器
11 容器本体
12 容器本体の口首部
13 混合室
14 ベースキャップ部(キャップ部)
15 筒状ピストン部材
15a 筒状ピストン部材の密着摺動部
16 エアピストン部材
17 シリンダ部
19 ポンプヘッド部(ヘッド部)
20 泡生成部材
21 発泡流路
22 中空パイプ
23 ガイドステム
24 空気室
24a 空気室の底面
28 液導入室
32 第1流路
33 第2流路
34 外気取り込み流路
35 逆止弁
36 閉塞部
41 閉塞用凹状リブ(閉塞部)
42 エアピストン部材の円筒部の下端面(閉塞部)
50 微細排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口首部に装着したキャップ部に対し往復動可能に設けられるヘッド部を有し、該ヘッド部が押圧されることにより、加圧された液室から混合室に内容液を送る第1流路と、加圧された空気室から前記混合室に空気を送る第2流路とを開放し、前記混合室に送られた前記内容液を前記空気と前記混合室から吐出口に至る発泡流路において混合し発泡させて吐出する泡吐出器であって、
前記容器本体の口首部の内側に配置される、大径の前記空気室及び小径の液導入室からなるシリンダ部と、前記液導入室の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材及び該筒状ピストン部材から径方向外側に張り出して設けられて前記空気室の内周面に沿って摺動するエアピストン部材からなるピストン部とを備えており、
前記空気室には、前記ヘッド部の押圧が解除されて前記ヘッド部が復帰する際に、内部が負圧となることにより開いて外気を取込み可能とする逆止弁が設けられていると共に、前記第2流路を閉塞する閉塞部が設けられており、
且つ、前記空気室の底面が、前記液導入室に向けて下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、前記ヘッド部が押圧されていない状態で前記筒状ピストン部材の密着摺動部が配置される前記液導入室の前記空気室と近接する部分には、前記ヘッド部が押圧された際の加圧によって内部に溜まった水を前記容器本体に排除させる微細排水孔が、前記容器本体の内部と連通可能に設けられている泡吐出器。
【請求項2】
前記微細排水孔の孔径が0.2〜1.0mmである請求項1記載の泡吐出器。
【請求項3】
前記閉塞部には、前記空気室の内部が負圧となった際に、前記混合室の内容液を前記空気室に流入させる微細流路が形成されている請求項1又は2記載の泡吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−227822(P2010−227822A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78150(P2009−78150)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】