説明

波付き管計尺装置及び計尺切断装置

【課題】
計尺精度が高く、しかも計尺ロールを交換することなく波形ピッチの異なる各種の波付き管の計尺を行える波付き管計尺装置を提供する。
【解決手段】
テーパー状外周面に、その外周面を周方向に等分するように多数の突条18を形成してなる計尺ロール12と、この計尺ロール12と相対して計尺ロール12との間に波付き管10を挟み付ける受けロール14と、計尺ロール12と受けロール14の間を通過する波付き管10を、当該波付き管10の波形の谷部と計尺ロール12の突条とが噛み合う位置を通過するように案内するガイドロール16とを備える。計尺する波付き管10の外径、波形ピッチが変更になるときは、計尺ロール12の上下位置、ガイドロール16の間隔、ガイドロール16の左右方向の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波付き管の長さを測定する波付き管計尺装置と、計尺された波付き管を所定の長さの所で切断する波付き管計尺切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のワイヤーハーネス等では、電線束を保護するため、プラスチック製の波付き管が用いられる。波付き管は、長尺のものをコイル状に巻いた状態で供給されるため、これをワイヤーハーネス等の保護管として使用する場合には、波付き管の長さを測定して、所要の長さに切断する必要がある。
【0003】
従来、波付き管の長さを測定する計尺装置としては、長手方向に送られる波付き管に計尺ロールを押し付けて、計尺ロールの外周長と回転数から長さを求めるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−141291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の波付き管計尺装置は、計尺ロールが外周面の滑らかな円板状のものであるため、計尺ロールが波付き管上でスリップするおそれがあり、計尺精度を高めることが難しい。
【0006】
計尺ロールと波付き管のスリップを無くすためには、計尺ロールを歯車状にして波付き管の波形と噛み合うようにすることが考えられる。しかし、波付き管には、外径や波形ピッチの異なる多数の種類があるため、歯車状の計尺ロールを使用すると、計尺する波付き管の波形ピッチが変わる度に計尺ロールを交換しなければならないという問題が生じる。
【0007】
また、従来の計尺装置は波付き管の送りを手作業で行う方式であり、作業効率を高めることが難しい。
【0008】
本発明の第一の目的は、計尺精度が高く、しかも計尺ロールを交換することなく波形ピッチの異なる各種の波付き管の計尺を行える波付き管計尺装置と、それを用いた波付き管計尺切断装置を提供することにある。
【0009】
本発明の第二の目的は、波付き管の計尺を自動的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る波付き管計尺装置は、長手方向に送られる波付き管の長さを測定するものであって、テーパー状外周面に、その外周面を周方向に等分するように多数の突条を形成してなる計尺ロールと、この計尺ロールと相対して計尺ロールとの間に波付き管を挟み付ける受けロールと、前記計尺ロールと受けロールの間を通過する波付き管を、当該波付き管の波形の谷部と計尺ロールの突条とが噛み合う位置を通過するように案内するガイドロールとを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る波付き管計尺装置は、前記計尺ロールと受けロールの間隔を波付き管の外径に合うように調整する第一の間隔調整機構と、前記ガイドロールの間隔を波付き管の外径に合うように調整する第二の間隔調整機構と、前記ガイドロールの位置を、波付き管の波形の谷部と計尺ロールの突条とが噛み合う位置に調整する位置調整機構とをさらに備えているものであることが好ましい。
【0012】
また本発明に係る波付き管計尺装置は、計尺ロールを回転させるモーターが設けられ、計尺ロールの回転により波付き管が長手方向に送られるようになっているものであることが好ましい。
【0013】
また本発明に係る波付き管計尺装置は、受けロールが、計尺ロールと同じ形状のロールからなり、計尺ロールと同期回転するようになっているものであってもよい。
【0014】
また本発明に係る波付き管計尺切断装置は、以上のような構成の計尺装置と、その計尺装置で計尺された波付き管が所定の長さに達した所で波付き管を切断する切断装置とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、計尺ロールの外周面に形成された多数の突条が波付き管の波形の谷部と噛み合うので、計尺ロールが波付き管に対してスリップすることがなくなる。したがって計尺ロールの突条本数及び回転数と波付き管の波形ピッチとから、計尺ロールと受けロールの間を通過する波付き管の長さを正確に求めることができる。また計尺ロールは外周面がテーパー状になっていて、周方向の突条のピッチが軸線方向に漸次変化しているため、波付き管を通す位置を、波付き管の波形と計尺ロールの突条が噛み合う位置に調整するだけで、計尺ロールを交換することなく波形ピッチの異なる各種の波付き管の計尺を行うことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、計尺する波付き管を、異なるサイズ(外径、波形のピッチ)に変更するときに、計尺ロール及びガイドロールの調整を簡単に効率よく行うことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、波付き管の送りを計尺ロールによって行いことができるので、波付き管の計尺を自動で行うことができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、計尺ロールと受けロールの両方で波付き管を送ることができるので、計尺ロールの突条と波付き管の波形の谷部との噛み合いが外れるおそれがなくなり、波付き管の計尺をより正確に行うことができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、波付き管を所定の長さに計尺して切断する作業を正確に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔実施形態1〕 図1ないし図4は本発明に係る波付き管計尺装置の一実施形態を示す。図1及び図2は計尺する波付き管が比較的細い場合を、図3及び図4は比較的太い場合を示している。図において、10は計尺する波付き管、12は計尺ロール、14は受けロール、16は2本1組のガイドロールである。
【0021】
計尺ロール12は、外周面がテーパー状で、その外周面を周方向に等分するように多数の突条18が形成されているものである。つまり突条18は、計尺ロール12の外径が小さくなるに従いピッチ(隣り合う突条の間隔)が狭くなるように形成されている。
【0022】
受けロール14は、前記計尺ロール12と相対して計尺ロール12と共に波付き管10を挟み付けるものである。図示の例では、受けロール12が2本平行に設けられているが、受けロール12は1本であってもよい。計尺ロール12は、2本の受けロール14の中間線と対向する1本の突条18が受けロール14と平行になるように、軸線を傾斜させて配置されている。
【0023】
ガイドロール16は、前記計尺ロール12と受けロール14の間を通過する波付き管10を、当該波付き管10の波形の谷部20と計尺ロール12の突条18とが噛み合う位置を通過するように案内するものである。
【0024】
受けロール14は、その両端を軸受22に回転自在に支持され、水平に保たれている。一方、計尺ロール12は前述のように軸線を傾斜させた状態で、その両端を軸受24に回転自在に支持され、この二つの軸受24は第一の支持フレーム26に支持されている。また第一の支持フレーム26は、その中間部で垂直ねじ棒28とねじ結合しており、垂直ねじ棒28は図示しない固定部材に支持された上下位置調整モーター30によって回転するようになっている。したがって、垂直ねじ棒28をモーター30により正転、逆転させると、計尺ロール12が上下に移動することになる。つまり、前記第一の支持フレーム26、垂直ねじ棒28及びモーター30は、計尺ロール12と受けロール14の間隔を波付き管10の外径に合うように調整する第一の間隔調整機構を構成している。
【0025】
また計尺ロール12は、その一端に接続されたモーター32によって回転駆動されるようになっている。計尺ロール12が回転すると、計尺ロール12の突条18と波付き管10の谷部20との噛み合いにより、波付き管10が長手方向に送られることになる。
【0026】
また、一対のガイドロール16はそれぞれ、垂直軸受34によって回転自在に支持され、この二つの垂直軸受34はそれぞれ、ねじのらせん方向が左右で異なる左右逆ねじ棒36の左右のねじ部にねじ結合している。また左右逆ねじ棒36の両端は軸受38に回転自在に支持され、この二つの軸受38は第二の支持フレーム40に支持されている。さらに左右逆ねじ棒36はその一端側に設けられたハンドル42によって回転するようになっている。したがって、ハンドル42を正転、逆転させると、ガイドロール16の間隔が広くなったり狭くなったりすることになる。つまり、左右逆ねじ棒36、軸受38、第二の支持フレーム40及びハンドル42は、ガイドロール16の間隔を波付き管10の外径に合うように調整する第二の間隔調整機構を構成している。なお左右逆ねじ棒36は、ハンドル42ではなくモーターで回転させてもよい。
【0027】
また、前記第二の支持フレーム40は、その中間部に設けられた突起部で水平ねじ棒44とねじ結合しており、この水平ねじ棒44はその両端を軸受46(図示しない固定部材に固定)により回転自在に支持されている。また水平ねじ棒44の一端側にはモーター48が接続されている。したがって水平ねじ棒44をモーター48により正転、逆転させると、ガイドロール16が左右に移動することになる。つまり、第二の支持フレーム40、水平ねじ棒44、軸受46及びモーター48は、一対のガイドロール16の中間位置を、波付き管10の波形の谷部20と計尺ロール12の突条18とが噛み合う位置に調整する位置調整機構を構成している。
【0028】
以上のように構成された波付き管計尺装置は次のように使用される。まず、ガイドロール16で波付き管10を左右から挟み付けた状態で、水平ねじ棒44を回転させ、ガイドロール16の位置を、波付き管10の波形の谷部20と計尺ロール12の突条18とが噛み合う位置(波付き管10の波形のピッチと計尺ロール12の突条18のピッチが合致する位置)に調整する。その後、計尺ロール12を下降させ、計尺ロール12と受けロール14で上下から挟み付け、計尺ロール12の突条18と波付き管10の谷部20とを噛み合わせる。この状態で計尺ロール12をモーター32によって回転させると、計尺ロール12の突条18と波付き管10の谷部20との噛み合いにより、波付き管10が長手方向に走行する。したがって波付き管10の波形のピッチと、計尺ロール12の突条18の本数と、計尺ロール12(モーター32)の回転数を掛け算すれば、計尺ロール12によって送り出された波付き管10の長さを求めることができる。
【0029】
またこの計尺装置は、計尺ロール12の突条18と波付き管10の谷部20とが噛み合っているので、計尺ロール12が波付き管10に対してスリップすることがなく、波付き管の長さを正確に測定することができる。
【0030】
さらに、計尺する波付き管のサイズ(外径、波形のピッチ)が変わるときは、例えば図1から図3のように、ガイドロール16の間隔及び左右方向の位置並びに計尺ロール12の上下方向の位置を調整することで対応できる。このため、計尺ロールを交換する手間がかからず、計尺ロールを波付き管のサイズ別に用意する必要もない。
【0031】
〔実施形態2〕 図5は本発明に係る波付き管計尺装置の他の実施形態を示す。この実施形態が実施形態1と異なる点は、受けロール14が、計尺ロール12と同じ形状のロールで構成され、モーター50によって計尺ロール12と同期回転するようになっていることである。それ以外の構成は、実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
このような構成にすると、計尺ロール12と受けロール14の両方で波付き管10に送りをかけることができるため、計尺ロール12の突条と波付き管10の谷部との噛み合いが外れるおそれがなくなり、波付き管10の計尺をより正確に行うことができる。
【0033】
〔実施形態3〕 図6は本発明に係る波付き管計尺切断装置の一実施形態を示す。この装置は、波付き管10の計尺装置52と切断装置54を組み合わせたものである。計尺装置52は実施形態1の計尺装置と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。切断装置54は計尺装置52から波付き管10が送り出される側に設置され、計尺装置52で計尺された波付き管10が所定の長さに達した所で作動し、波付き管を切断するものである。切断装置54は波付き管10を切断できるものであればどのようなタイプでもよく、例えばギロチン型のもの(特許文献1参照)、電動のこぎり型のものなどを使用できる。
【0034】
なお、自動車用ワイヤーハーネスの保護管等に使用される波付き管10には通常、長手方向に割り56が入っているので、計尺装置52の手前には、この割り56に入る位置決めガイド58を設置しておくとよい。このような位置決めガイド58を設置しておくと、計尺切断する波付き管10のねじれを防止することができる。
【0035】
また、計尺装置52としては、実施形態2の計尺装置を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る波付き管計尺装置の一実施形態を示す正面図。
【図2】図1の計尺装置の要部の断面図。
【図3】図1の計尺装置で図1の場合より太い波付き管を計尺する状態を示す正面図。
【図4】図3の計尺状態の要部の断面図。
【図5】本発明に係る波付き管計尺装置の他の実施形態を示す正面図。
【図6】本発明に係る波付き管計尺切断装置の一実施形態を示す(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は(A)のC−C線断面図。
【符号の説明】
【0037】
10:波付き管
12:計尺ロール
14:受けロール
16:ガイドロール
18:突条
20:波形の谷部
26:第一の支持フレーム
28:垂直ねじ棒
30:上下位置調整モーター
32:計尺ロール駆動モーター
36:左右逆ねじ棒
40:第二の支持フレーム
42:ハンドル
44:水平ねじ棒
48:ガイドロール位置調整モーター
50:受けロール駆動モーター
52:計尺装置
54:切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に送られる波付き管の長さを測定する波付き管計尺切断装置であって、
テーパー状外周面に、その外周面を周方向に等分するように多数の突条を形成してなる計尺ロールと、
この計尺ロールと相対して計尺ロールとの間に波付き管を挟み付ける受けロールと、
前記計尺ロールと受けロールの間を通過する波付き管を、当該波付き管の波形の谷部と計尺ロールの突条とが噛み合う位置を通過するように案内するガイドロールと、
を備えていることを特徴とする波付き管計尺装置。
【請求項2】
前記計尺ロールと受けロールの間隔を波付き管の外径に合うように調整する第一の間隔調整機構と、
前記ガイドロールの間隔を波付き管の外径に合うように調整する第二の間隔調整機構と、
前記ガイドロールの位置を、波付き管の波形の谷部と計尺ロールの突条とが噛み合う位置に調整する位置調整機構と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の波付き管計尺装置。
【請求項3】
計尺ロールを回転させるモーターが設けられ、計尺ロールの回転により波付き管が長手方向に送られるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の波付き管の計尺装置。
【請求項4】
受けロールが、計尺ロールと同じ形状のロールからなり、計尺ロールと同期回転するようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の波付き管計尺装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の計尺装置と、その計尺装置で計尺された波付き管が所定の長さに達した所で波付き管を切断する切断装置とを備えていることを特徴とする波付き管計尺切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−17210(P2007−17210A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197072(P2005−197072)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】