説明

波型状屋根部材及びスレート屋根の改修方法

【課題】既設のスレート屋根との交換作業用に適し、しかも、幅の変化への対応を容易に行うことができるばかりでなく、材料コストを削減することができる波型状屋根材を提供する。
【解決手段】両側縁部に下側に開口する嵌合凹部21aを有する山型状金属部材21と、両側縁部に上側に突出する嵌合凸部22aを有する谷型状金属部材22とを備え、上記山型状金属部材21と谷型状金属部材22の嵌合凹部21aと嵌合凸部22aとを係合させて上記山型状金属部材21と谷型状金属部材22とを交互に配置して波形に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波型状屋根部材及びこの波型状屋根材を利用したスレート屋根の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、駅のプラットホーム等には波型状のスレート屋根を施工したものが知られている。
【0003】
また、このようなスレート屋根は、粘板岩や頁岩等の薄板、石綿にセメントを混ぜ込んだセメント板や無石綿セメント板等を用いているが、経年時変化により耐水性能や対衝撃性能が劣化してしまうため交換工事を行う。
【0004】
しかしながら、上述した駅のプラットホーム等に施工されたスレート屋根の場合、終電から始発までの限られた時間内での交換工事を余儀なくされてしまうため、スレート屋根の交換工事は部分的に行われることが多い。
【0005】
従って、全てのスレート屋根の交換が完了するまでは、既設のスレート屋根と葺き替え後のスレート屋根とが混在することになるが、その境界部分の処理には気密性(特に水密性)の確保が余儀なくされるため、一般には同じ材料並びに形状のものを使用しているのが実情である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、このような既設のスレート屋根と同材料・同形状のものを使用した場合、耐久性も変わらず、強度耐久性も変わらないことから、交換時期により耐久性の高いものと交換したいという要望に応えることができなかった。
【0007】
そこで、既設のスレート屋根はそのままとし、新たにカバールーフで覆うといった工法もある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図18及び図19は、このような既設のスレート屋根を新たなカバールーフで覆った工法の一例を示し、図18は葺き替え後の要部の断面図、図19はブラケットの斜視図である。
【0009】
図18において、1は屋根(全体図省略)の骨格を構成する梁、2は梁1に固定された既設のスレート屋根、3は既設のスレート屋根2の表面(上面)側を覆う新規のスレート屋根としての金属単板からなるカバールーフ、4はカバールーフ3を既設のスレート屋根2に固定するための固定具ユニットである。
【0010】
固定具ユニット4は、既設のスレート屋根2とカバールーフ3との間に配置されたブラケット5と、カバールーフ3の表面からブラケット5を経由して梁1までを貫通するドリルビス6と、ドリルビス6の中途部に螺合するナット7と、ドリルビス6の頭部とカバールーフ3との間に介装されたパッキン8と、ナット7と既設のスレート屋根2との間に介装されたパッキン9とを備えている。
【0011】
また、ブラケット5は、図19に示すように、正面視略逆U字状に形成されており、平面視長方形状の頂部5aと、頂部5aの両側縁部から垂下した左右の脚部5bと、頂部5aを挟むように上方に開放する座部5cとが一体に形成されている。
【0012】
座部5c間には、ドリルビス6の中途部が貫通状態で係合する座金部10aを有するプレート10が固定されている。
【特許文献1】特開2001−207654号公報
【特許文献2】特開2000−336851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記の如く構成された既設のスレート屋根2の表面にカバールーフ3を設ける構成では、経年劣化したままのスレート屋根2を残しておくことから、耐強度性に問題を残したままであるうえ、その経年劣化したスレート屋根2にドリルビス6を貫通させてブラケット5を固定するため、耐強度性がより一層悪化してしまうという問題が生じていた。
【0014】
しかも、カバールーフが金属製であることから、スレート屋根2への荷重も大きく、この観点からも耐強度性を悪化させる要因となってしまう。
【0015】
また、カバールーフ3がある程度の幅を有していないとブラケット5の数が増えてしまうことから、カバールーフ3の幅は比較的幅広となっていると想定されるが、このような幅広のものでは、実際の既設の屋根2の全長と合致しない場合があるといった問題も生じていた。
【0016】
さらに、既設のスレート屋根2に対して波型のカバールーフ3を取り付けることから、全体的な厚みが増し、例えば、建物の一部がオーバーハングしているような場所への増設が困難となるといった問題も生じるうえ、複雑な形状で且つ強度を確保した高価なブラケット5を使用する分だけ材料コストが高騰するといった問題も生じていた。
【0017】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、既設のスレート屋根との交換作業用に適し、しかも、幅の変化への対応を容易に行うことができるばかりでなく、材料コストを削減することができる耐久性の高い波型状屋根部材及びこの波型状屋根材を利用したスレート屋根の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の波型状屋根部材は、両側縁部に嵌合部を有する山型状金属部材と、両側縁部に嵌合部を有する谷型状金属部材とよりなり、上記山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置した際に隣接する山型状金属部材と谷型状金属部材の側縁部に形成された嵌合部同士が互いに嵌合され、波形に形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の波型状屋根部材は、両側縁部に下側に開口する嵌合凹部を有する山型状金属部材と、両側縁部に上側に突出する嵌合凸部を有する谷型状金属部材とを備え、上記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部とを係合させて上記山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置して波形に形成したことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の波型状屋根部材は、両側縁部に下側に開口する嵌合凹部を有する山型状金属部材と、両側縁部に上側に突出する嵌合凸部を有する谷型状金属部材とを備え、上記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部とを係合させて上記山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置して波形に形成するとともに、一端には山型状金属部材を、他端には谷型状金属部材とを配置し、上記一端の山型状金属部材と他端の谷型状金属部材とを互いに重合可能な形状に形成したことを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材および/または前記谷型状金属部材の少なくとも上面側に乱反射用凹凸面を形成したことを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材および/または前記谷型状金属部材の少なくとも上面側に乱反射用塗膜処理が施されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合位置を中立軸より上側に移動したことを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材の嵌合凹部の外側の側面が垂直に形成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材の稜線付近と前記谷型状金属部材の谷線付近の肉厚を他の部位よりも厚肉としたことを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の波型状屋根部材は、前記各金属部材をアルミニウム合金の押出成形により成形したことを特徴とする。
【0027】
請求項10に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材と谷型状金属部材の稜線と谷線に対して直交する方向に折り曲げ加工を施したことを特徴とする。
【0028】
請求項11に記載の波型状屋根部材は、前記山型状金属部材の稜線付近に形成した肩部に嵌合した屋根板用カバー材を取り付けたことを特徴とする。
【0029】
請求項12に記載のスレート屋根の改修方法は、既設のスレート屋根の鼻先部の改修部を除去した後に、残置したスレート屋根の一部に前記請求項10または請求項11の波型状屋根材を重複させて施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の波型状屋根部材によれば、全体として山型状金属部材と谷型状金属部材の幅ピッチの応じた幅で屋根施工ができ、新設の屋根に利用できる他既設のスレート屋根等の波形状と同じピッチで山型状金属部材と谷型状金属部材を準備しておくことにより、既存屋根の改修・部分交換作業用にも適し、しかも、耐久性の高い屋根を提供することができる。波型状屋根部材を構成することができる。
【0031】
請求項2に記載の波型状屋根部材によれば、新設の屋根への利用の他、任意数の山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置することにより既設のスレート屋根の幅の変化への対応を容易に行うことができるので既設の屋根の交換作業に適し、耐久性の高い屋根屋根を提供することができる。また、山型状金属部材の両側縁部には下側に開口する嵌合凹部が形成され、谷型状金属部材の両側縁部の両側縁部には上側に突出する嵌合凸部が形成されるので、この嵌合部分での水密効果が高まる波型状屋根部材を構成することができる。
【0032】
請求項3に記載の波型状屋根部材によれば、同じ構成の屋根部材の端部の金属部材とを重合することにより、全体として任意幅の山型状金属部材と谷型状金属部材とが交互に配置された屋根板部材同士を連続して施工することができ波型状屋根部材を構成することができる。
【0033】
請求項4に記載の波型状屋根部材によれば、乱反射用凹凸面が山型状金属部材および/または谷型状金属部材の少なくとも上面側に形成されることにより、太陽光の表面反射を少なくし得て防眩性を向上させることができる。これにより特にプラットホームの屋根にこの波型状屋根部材を利用した場合に車両の運転手に対する防眩効果が向上する。
【0034】
請求項5に記載の波型状屋根部材によれば、乱反射用塗膜処理が山型状金属部材および/または谷型状金属部材の少なくとも上面側に施されることにより、太陽光の表面反射を少なくし得て請求項4と同様防眩性を向上させることができる。
請求項6に記載の波型状屋根部材によれば、山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合位置を中立軸より上側に移動したことにより、折り曲げ時の割れ、座屈を防止でき、屋根の鼻先部を折り曲げて構成する場合に折り曲げ加工性の向上が図れる。
【0035】
請求項7に記載の波型状屋根部材によれば、前記山型状金属部材の嵌合凹部の外側の側面が垂直に形成されていることにより、折り曲げ加工時の離型性が向上される。
【0036】
請求項8に記載の波型状屋根部材によれば、山型状金属部材の稜線付近と谷型状金属部材金属部材の谷線付近のそれぞれの肉厚は他の部位よりも厚肉とされることにより、折り曲げ加工を施す際の肉厚変形に対応することが可能となる。
【0037】
請求項9に記載の波型状屋根部材の成形方法によれば、アルミニウムを主成分とした合金材料の押し出し成形により各金属部材が成形されることにより、強度性並びに加工性が向上される。
【0038】
請求項10に記載の波型状屋根材によれば、前記波型状屋根部材を稜線と谷線とに対して直交する方向に曲げ線を有するように折り曲げ加工が施されることにより、折り曲げ加工を施した波型屋根材を提供することができる。
【0039】
請求項11に記載の波型状屋根材によれば、前記山型状金属部材の稜線付近に形成した肩部に嵌合した屋根板用カバー材を取り付けることにより、フックボルト用のナットの緩みを防止することができる。
【0040】
請求項12に記載のスレート屋根の改修方法によれば、既設のスレート屋根の鼻先部の改修部を除去した後に、残置したスレート屋根の一部に前記請求項11の波型状屋根材を重複させて施工することにより、部分的なスレート屋根の葺き替えが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る波型状屋根部材およびこの波型状屋根材を利用したスレート屋根の改修方法について、図面を参照して説明する。
【0042】
図17は電車11が停車する駅のプラットホーム12の上方を覆う屋根で波形のスレート材が葺かれたスレート屋根13を形成している。この際、図17に示したスレート屋根13は、プラットホーム12の略中央から立設された柱19を中心としてプラットホーム12の番線側に向うほど上方に傾斜して施工されている。また、スレート屋根13は、柱19を中心として番線側でそれぞれ葺き替えが可能となるよう、異なったユニット状態となっている。さらに、ここで使用されているスレート屋根13は、番線側に下方へと折り曲げられた屈曲部13aが形成されている。
この既存のスレート屋根13は経年変化により屈曲部13aが脆弱になっており、またこの部分は風圧等を受けやすい部分であり、他の屋根部分に較べて早めの改修が望まれる部分である。
【0043】
図1(A)は、このようなスレート屋根13の改修に適切な金属性波型状屋根材14を示す。
図1(A)(B)において、21は稜線に沿う両側縁部に嵌合凹部21aを有する山型状金属部材、22は谷線に沿う両側縁部に嵌合凸部22aを有する谷型状金属部材、23は一側縁部に雌形の当接部23bを有する端末用の山型状金属部材、24は一側縁部に雄形の当接部24bを有する端末用の谷型状金属部材である。
【0044】
なお、図1(A)では、各金属部材21〜24を1つ隣接して設けた例を示したが、山型状金属部材21と谷型状金属部材22とは交互に複数配置することができ、これらの嵌合凹部と嵌合凸部同士を嵌合させ、これにより各金属部材21〜24で構成される波型状屋根材14の幅(図17で示した紙面の奥行き方向、即ち、電車11の前後方向)を適宜選択することができる。この際、山型状金属部材21と谷型状金属部材22とは同数である。ちなみに、既設の一般的なスレート屋根を構成する粘板岩や頁岩等の薄板或いは石綿にセメントを混ぜ込んだセメント板や無石綿セメント板等の幅を考慮した場合、波型状屋根材14の1スパンでは山型状金属部材21と谷型状金属部材22とが各2枚隣接して交互に配置され、且つ、その両端に端末用の山型状金属部材23と谷型状金属部材24とが配置され、構成される。
【0045】
山型状金属部材21は、図2に示すように、その両端に下方に向けて開放する略C字形状またはあり溝形状を呈する案内溝構造の嵌合凹部21a(23a)が形成されている。また、山型状金属部材21の中央稜線付近の肉厚は他の部位よりも厚肉な厚肉部21bとなっている。なお、嵌合凹部21a、23aは、図3(A)に示すように、その端面(表面)を垂直面21cとすることにより、後述する曲げ加工時における、部材のズレや離型性(図示矢印方向に離型方向を統一することができる)を向上することができる。また、図3(B)に示すように、垂直面21cにヒケ防止並びに押出成形時の容易性確保のための凹部21dを形成しても良い。
【0046】
谷型状金属部材22は、図4に示すように、その両端に断面略T字形状の嵌合凸部22aが形成されている。また、谷型状金属部材22の中央稜線付近の肉厚は他の部位よりも厚肉な厚肉部22bとなっている。
【0047】
これにより、図1(B)に示すように、各嵌合凹部21aと嵌合凸部22aが互いに係合し、山型状金属部材21と谷型状金属部材22とを結合することができる。この際、各嵌合凹部21aと嵌合凸部22aは、後述する曲げ加工を考慮して若干の隙間が両者間で形成されている。また、これらの嵌め合いは、例えば、山型状金属部材21の稜線に沿って谷型状金属部材22を移動させることによりその全長にわたって容易に実現することができる。
【0048】
端末用の山型状金属部材23は、図5に示すように、その一端に下方に向けて開放する略C字形状を呈する案内溝構造の嵌合凹部23aが形成されている。また、端末用の山型状金属部材23の他端には端部を下方(内面)に屈曲させた雌形の当接部23bが形成されている。さらに、端末用の山型状金属部材23の中央稜線付近の肉厚は他の部位よりも厚肉な厚肉部23cとなっている。
【0049】
端末用の谷型状金属部材24は、図6に示すように、その一端に断面略T字形状の嵌合凸部24aが形成されている。また、端末用の谷型状金属部材24の他端には端部を上側(表側)に突出させた雄形の当接部24bが形成されている。さらに、端末用の谷型状金属部材24の中央稜線付近の肉厚は他の部位よりも厚肉な厚肉部24cとなっている。
【0050】
これにより、1スパン毎に波型状屋根材14を隣接して配置することができ、工事時間に応じたスパン数の工事を実現することができる。
【0051】
また、図1(C)に示すように、端末用の山型状金属部材23の端部を下方(内面)に屈曲させた雌形の当接部23bと端末用の谷型状金属部材24の端部を上側(表側)に突出させた雄形の当接部24bとを見込みの重なり部25を設けた形状とすることにより、折り曲げ加工時の当接状態の向上、水密性の向上が良好となる。
【0052】
ところで、上述した各嵌合凹部21a、23a、嵌合凸部22a、24aの形状は、上記に限定されるものではない。例えば、図7〜図11に示した各金属部材31、32、33、34において、金属部材31は金属部材21に、金属部材32は金属部材22に、金属部材33は金属部材23に、金属部材34は金属部材24に相当するものであるが、その各嵌合凹部31a、33aはC字形、嵌合凸部32a、34aは先端膨突として互いに嵌合する形状としている。なお、これらに記載した嵌合部嵌合部21a、23a、22a、24aは山型状金属部材31、33と谷型状金属部材32、34を嵌合させて施工した際にからの水密性が保持されて雨水の漏水が生じない形状としたが、嵌合部にシールを施す等により水密性を保持する場合等には、山型状金属部材31、33と谷型状金属部材間32、34が嵌合すれば足りるので、嵌合部の形状は自由に選定できる。
【0053】
なお、図7〜図11において、符号31b、32b、33c、34cは厚肉部、33b、34bは当接部である。また、各金属部材21〜24及び金属部材31〜34の少なくとも上面側、即ち、プラットホーム12に施工した状態での上面側には、太陽光の入射光束を乱反射させるための表面処理が施されている。この表面処理には、例えば、各金属部材21〜24及び金属部材31〜34をアルミニウムを主成分とした合金の押し出し成形で構成した場合、ブラスト等の機械的前処理や、酸又はアルカリ溶液を使用する化学的処理により梨地処理を行った後、硫酸等の水溶液中で陽極酸化皮膜(アルマイト)を表面に形成する。
【0054】
その後、ニッケル、錫、銅などの金属塩を含む水溶液中で電解着色し、アクリル系の水溶性塗料中で電着塗装を行うことで塗膜形成したものが適当である。なお、この他にも、下地処理後にアクリル系やフッ素系の有色塗装処理を行ってもよい。
【0055】
また、このような塗膜処理の他、金属部材31〜34に示したように、上面側に線状(又は点状)の凹(凸)部35(図7(B)参照)を多数形成し、太陽光の入射光を乱反射させてもよい。なお、この光を乱反射させる為の処理は山型状金属部材31、33の表面側にのみ施すのみでもよく、山型状金属部材31、33と谷型状金属部材32、34の双方に施すことがさらに効果を向上させる。
【0056】
次に、このような構成とされた波型状屋根材14は、押出成形した各金属部材21〜24を所定寸法に切断した後、並列に交互に配列して端部揃えを行った状態でその端部を嵌合する。そして、屋根13がフラットな場合には、波型状屋根材14同士をポンチ等でカシメるか、スタッド溶接、接着剤による接着等によって固定する。
【0057】
また、図17に示したような屋根13の屈曲部13aの改修に波型状屋根材14を適用するには、図12に示すようにベンダー装置40を利用して折り曲げ加工される。
【0058】
通常は、図1のように各嵌合凹部21a、23a、嵌合凸部22a、24aの嵌合位置は、中立軸pに配されるが、ベンダー装置40にて、より折り曲げ加工しやすくするために図7のように各嵌合凹部31a、33aはC字形、嵌合凸部32a、34aの嵌合位置を中立軸qで示すように、図1の中立軸pより上側(表側)に移動することが良い。
【0059】
このベンダー装置40は、所定枚数組み合わされた波型状屋根材14をサンドイッチ状に挟持する一対の金型41、42と、少なくとも一方の金型41を軸43を中心として回転させる基台44とを備え、金型41の屈曲面41aに沿って波型状屋根材14が屈曲される。
【0060】
なお、金型42が固定であるか、金型41と同方向又は逆方向に移動するかは波型状屋根材14が固定されているか移動するかといった条件によって異なる。
【0061】
このような構成において、既設のスレート屋根13の一部を葺き替える場合、屈曲部分(鼻先R部)を示す図15、図14および図15のA―A断面を示す図13に示すように、既設のスレート屋根13を除去した後、既設の梁1に新規の波型状屋根材14をドリルビス6で固定する。この際、ドリルビス6は、山型状金属部材21(23)の厚肉部21b(23c)に位置し、図14に示すように、パッキン9が介装される。また図15に示すように既設のスレート屋根13の鼻先部を除去し直線部分に残置されたスレート屋根13と金属製の波形状屋根部材とをオーバーラップさせる。
【0062】
また、屈曲部分(鼻先R部)に関しても図15に示すように、梁1に固定したL字状のブラケット15にスライドブラケット16を介してフックボルト17で固定する。
【0063】
ところで、フックボルト17等で波型状屋根材14を固定する場合、図16(a)のように、波型状屋根材14を構成する金属部材31(他の金属部材21、22、23、24等でもよい)の稜線付近の肩部の上方にあり溝状の取付溝35を形成し、この取付溝35にフックボルト17の六角ナット36に係合する屋根板用カバー材37を取り付けるのが好ましい。カバー材37には上記取付溝35に嵌合する脚片38と六角ナット36が緩んで上動するのを防止する緩み止め片39を形成する。カバー材37は回転しないので、この内側の六角ナット36が緩み方向に回転するのを防止することができる。45はゴムパッキン、46は平パッキンである。カバー材37の取付溝35は同図(b)のように、厚肉部31bの側面に開口するように形成し、この取付溝35にカバー材37の脚片38を嵌合させる構成であってもよい。
【0064】
上記図13、図14又は図15に示すように、山型状金属部材21(23)を固定する場合も同様にするのが好ましい。
【0065】
なお、一部のスレート屋根13の葺き替えであるので、プラットホームの長手方向に既存のスレート屋根13を残した部分と新規の波型状屋根材14部分との接続部分はその一部のスレート屋根13に波型状屋根材14を2山分程度重ね合わせて施工すればよい。
このことは屈曲部分も同様である。
【0066】
本発明の金属製波形屋根は上記のとおりの既存のスレート屋根の部分的改修に用いることができることは当然であるが、新規の施工や、既存のスレート屋根をそっくり取り除いての取り替えにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の波型状屋根材を示し、(A)は波型状屋根材の正面図、(B)は嵌合部の拡大断面図、(C)は端末と端末の拡大断面図である。
【図2】本発明の波型状屋根材を示し、山型状金属部材の拡大正面図である。
【図3】本発明の波型状屋根材を示し、(A)(B)は嵌合部の変形例の拡大断面図である。
【図4】本発明の波型状屋根材を示し、谷型状金属部材の拡大正面図である。
【図5】本発明の波型状屋根材を示し、端末用の山型状金属部材の拡大正面図である。
【図6】本発明の波型状屋根材を示し、端末用の谷型状金属部材の拡大正面図である。
【図7】本発明の波型状屋根材の変形例を示し、(A)は波型状屋根材の正面図、(B)は嵌合部の拡大断面図、(C)は端末と端末の拡大断面図である。
【図8】本発明の波型状屋根材の変形例を示し、山型状金属部材の拡大正面図である。
【図9】本発明の波型状屋根材の変形例を示し、谷型状金属部材の拡大正面図である。
【図10】本発明の波型状屋根材の変形例を示し、端末用の山型状金属部材の拡大正面図である。
【図11】本発明の波型状屋根材の変形例を示し、端末用の谷型状金属部材の拡大正面図である。
【図12】本発明の波型状屋根材を示し、ベンダー装置の斜視図である。
【図13】本発明の波型状屋根材を示し、施工状態の1スパンの断面図で、図15のA―A線上の断面図である。
【図14】本発明の波型状屋根材を示し、施工状態の要部の拡大断面図である。
【図15】本発明の波型状屋根材を示し、施工状態の屈曲部分の拡大断面図である。
【図16】屋根板用カバー材の取付状態を示す要部の断面図である。
【図17】プラットホームとスレート屋根との関係を示す説明図である。
【図18】従来の波型状屋根材の改修構造を示し、要部の拡大断面図である。
【図19】従来の波型状屋根材の改修構造を示し、ブラケットの斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
14 波型状屋根材
21 山型状金属部材
21a 嵌合凹部
21b 厚肉部
22 谷型状金属部材
22a 嵌合凸部
22b 厚肉部
23 端末用の山型状金属部材
23a 嵌合凹部
23b 当接部
23c 厚肉部
24 端末用の谷型状金属部材
24a 嵌合凸部
24b 当接部
24c 厚肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側縁部に嵌合部を有する山型状金属部材と、両側縁部に嵌合部を有する谷型状金属部材とよりなり、上記山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置した際に隣接する山型状金属部材と谷型状金属部材の側縁部に形成された嵌合部同士が互いに嵌合され、波形に形成したことを特徴とする波型状屋根部材。
【請求項2】
両側縁部に下側に開口する嵌合凹部を有する山型状金属部材と、両側縁部に上側に突出する嵌合凸部を有する谷型状金属部材とを備え、上記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部とを係合させて上記山型状金属部材と谷型状金属部材とを交互に配置して波形に形成したことを特徴とする波型状屋根部材。
【請求項3】
両側縁部に下側に開口する嵌合凹部を有する山型状金属部材と、両側縁部に上側に突出する嵌合凸部を有する谷型状金属部材とを備え、上記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部とを係合させて上記山型状金属部材
と谷型状金属部材とを交互に配置して波形に形成するとともに、一端には山型状金属部材を、他端には谷型状金属部材とを配置し、上記一端の山型状金属部材と他端の谷型状金属部材とを互いに重合可能な形状に形成したことを特徴とする波型状屋根部材。
【請求項4】
前記山型状金属部材および/または前記谷型状金属部材の少なくとも上面側に乱反射用凹凸面を形成したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の波型状屋根部材。
【請求項5】
前記山型状金属部材および/または前記谷型状金属部材の少なくとも上面側に乱反射用塗膜処理が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の波型状屋根部材。
【請求項6】
前記山型状金属部材と谷型状金属部材の嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合位置を中立軸より上側に移動したことを特徴とする請求項2〜5の何れか一つに記載の波型状屋根部材。
【請求項7】
前記山型状金属部材の嵌合凹部の外側の側面が垂直に形成されていることを特徴とする請求項2〜6の何れか一つに記載の波型状屋根部材。
【請求項8】
前記山型状金属部材の稜線付近と前記谷型状金属部材の谷線付近の肉厚を他の部位よりも厚肉としたことを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の波型状屋根部材。
【請求項9】
前記各金属部材をアルミニウム合金の押出成形により成形したことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の波型状屋根部材。
【請求項10】
前記山型状金属部材と谷型状金属部材の稜線と谷線に対して直交する方向に折り曲げ加工を施したことを特徴とする請求請求項1〜9の何れか一つに記載の波型状屋根材。
【請求項11】
前記山型状金属部材の稜線付近に形成した肩部に嵌合した屋根板用カバー材を取り付けたことを特徴とする請求請求項1〜10の何れか一つに記載の波型状屋根材。
【請求項12】
既設のスレート屋根の鼻先部の改修部を除去した後に、残置したスレート屋根の一部に前記請求項10または請求項11の波型状屋根材を重複させて施工することを特徴とするスレート屋根の改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−46392(P2007−46392A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233598(P2005−233598)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】