説明

波源探査装置、波源探査方法、及び波源推定方法

【課題】波源の有無を容易に探査する波源探査装置、波源探査方法、及び波源推定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積しておき、少なくとも各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信し、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する測定回数及び測定間隔に基づいて電磁波の受信強度を測定し、受信強度を測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを周波数範囲の各周波数に対して繰り返し、各周波数に夫々対応する各通報条件と、各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較し、平均受信強度が通報条件を満たす場合に波源の存在を通報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波源を探査する波源探査装置、波源探査方法、及び波源推定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子部品の技術が進み、最近では小型で安価なカメラやマイクなどが容易に入手できるため、これらの電子機器を利用した盗聴や盗撮などの犯罪が社会問題化している。これら犯罪は、被害者の私的情報や秘匿情報を盗み出して自らの利益のために使用することや、金銭などと引き換えに他者へ供与することを目的としている。例えば、銀行の現金自動預払機にカメラを設置し、利用者によって入力される暗証番号を撮影することで、キャッシュカードの暗証番号を盗取する犯罪が報告されている。
【0003】
このような犯罪の手口の一つとして、無線機を有する盗聴機や盗撮機を用いる手法を挙げることができる。具体的には、盗聴機又は盗撮機をある場所に予め設置しておき、マイクやカメラなどで採取した音声データ及び/又は映像データを無線機によって外部へ発信し、離れた場所に設置された受信機によって受信する手法である。この手法は、各データの採取時に犯罪しようとする者が現場に居る必要が無いため、その者にとって非常に利用性の高いものとなっている。また、設置された盗聴機や盗撮機が発見された場合であっても、指紋などの痕跡が残っていない限り設置した人物を即座に特定することが困難であることも利用性を高くする要因となっている。
【特許文献1】特開2002−168935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線機を有する盗聴機や盗撮機を用いる犯罪を発見し、又は未然に防止するため、無線機が放射する電磁波を検知する技術が開示されている。例えば、高々度で停泊可能な飛行船などに対して電磁波発信源検出装置を設置するシステムにおいて、高精度で電磁波の発信源(以降、単に「波源」と称する場合もある)を特定する技術が既に開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、居住空間などの屋内は非常に複雑な電磁波環境下に存在しているため、このような遠方から電磁波の発信源を探査するシステムを適用した場合であっても、波源を高精度で探知することは困難であるという問題があった。
【0006】
一方、屋内での波源探査手法としては、作業者が高指向性アンテナを有する電磁波受信機で構成される電波探知機を用いて探査する手法を挙げることができる。この手法は、盗聴機や盗撮機が存在する疑いのある領域に電波探知機を所持した作業者が入り、高指向性アンテナを任意の方向に向けながら盗撮機や盗聴機から発信される電磁波の有無を判断する。そして、電磁波を受信した場合は、その受信電力が最大となる方位を探査することにより、盗聴機や盗撮機が存在する場所を同定することができる。
【0007】
しかしながら、実環境における電磁波の伝搬状況は複雑であるため、高指向性アンテナを用いて探査対象領域を隈なく探査するには、作業者が電磁波伝搬に関する知識を有し、実務経験が豊富である必要がある。また、携帯電話や無線リモートコントローラーなどの電磁波を発信する機器と盗聴機及び盗撮機との誤認を防止するため、各機器から発信する周波数を記憶しておく必要がある。このように、盗撮機や盗聴機を用いて行う波源の探査は、高い専門技術と十分な時間とを必要とするという問題があった。また、盗聴機や盗撮機の有無を常時監視するために所定の領域に専門化を確保した場合には、その作業費が高くなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、波源の有無を容易に探査する波源探査装置、波源探査方法、及び波源推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積しておく蓄積手段と、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するアンテナと、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返す検波手段と、当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較する比較手段と、当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、波源の存在を通報する通報手段と、を有することを要旨とする。
【0010】
本発明にあっては、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積しておき、少なくとも各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信し、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する測定回数及び測定間隔に基づいて電磁波の受信強度を測定し、受信強度を測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを周波数範囲の各周波数に対して繰り返し、各周波数に夫々対応する各通報条件と、各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較し、平均受信強度が通報条件を満たす場合に波源の存在を通報するため、波源の有無を容易に探査可能な波源探査装置を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、前記アンテナが、前記周波数範囲の各周波数に対応して夫々設けられた複数のアンテナであって、前記検波手段は、当該複数のアンテナで夫々受信した電磁波の周波数に対して前記平均受信強度を夫々求める複数の検波手段であることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、前記アンテナが、無指向性のビームプロファイルを有する無指向性アンテナであることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の本発明は、前記アンテナが、指向性のビームプロファイルを有する指向性アンテナであることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、前記指向性のビームプロファイルを変化させる指向性変化手段と、当該ビームプロファイルの変化に従って、前記指向性アンテナの方位を変化させるアンテナ可動手段と、を更に有することを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の本発明は、前記通報手段が、前記アンテナ可動手段によって変化された前記指向性アンテナの方位についても通報することを要旨とする。
【0016】
請求項7に記載の本発明は、各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信するステップと、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、波源の存在を通報するステップと、を有することを要旨とする。
【0017】
請求項8に記載の本発明は、各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、指向性アンテナのビームプロファイルの方位を変化させながら、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するステップと、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度と前記ビームプロファイルの方位とを有する通報情報を通知するステップと、を有することを要旨とする。
【0018】
請求項9に記載の本発明は、波源を探索する複数の波源探査装置と、探索によって通知された情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定方法であって、前記各波源探査装置により、各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信するステップと、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度を有する通報情報を通知するステップと、を有し、前記波源推定装置により、前記各波源探査装置が配置された位置情報を位置情報蓄積手段に蓄積しておくステップと、前記各波源探査装置から通知された各通報情報を夫々受信して、通報情報格納手段に格納するステップと、前記各通報情報を前記通報情報格納手段から読み出して、当該各通報情報に含まれる各平均受信強度の大きさを比較するステップと、当該比較の結果、最も高い平均受信強度を有する通報情報を通知した波源探査装置に対応する位置情報を前記位置情報蓄積手段から読み出して、波源の位置として推定するステップと、を有することを要旨とする。
【0019】
請求項10に記載の本発明は、波源を探索する複数の波源探査装置と、探索によって通知された情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定方法であって、前記各波源探査装置により、各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、指向性アンテナのビームプロファイルの方位を変化させながら、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するステップと、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度と前記ビームプロファイルの方位とを有する通報情報を通知するステップと、を有し、前記波源推定装置により、前記各波源探査装置が配置された位置情報を位置情報蓄積手段に蓄積しておくステップと、前記各波源探査装置から通知された各通報情報を夫々受信して、通報情報格納手段に格納するステップと、前記各通報情報を前記通報情報格納手段から読み出すと共に、前記位置情報を前記位置情報格納手段から読み出して、当該各通報情報に含まれる各ビームプロファイルの方位と当該位置情報との関係に基づいて、波源の位置を推定するステップと、を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、波源の有無を容易に探査する波源探査装置、波源探査方法、及び波源推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。この波源探査装置100は、電磁波を受信する無指向性アンテナ11と、受信した電磁波の周波数に対する受信電力を測定する検波部13と、検波された受信電力と所定の通報条件とを比較する比較部31と、比較の結果に応じて波源の存在を通報する通報部33と、受信電力の測定回数や所定の通報条件等を予め蓄積しておく蓄積部35とを備えた構成である。
【0023】
無指向性アンテナ11は、無指向性のビームプロファイルを有し、全方位から到来する所定の周波数範囲(周波数f1〜周波数fn)の電磁波を受信して、電気信号として検波部13に出力する。このような無指向性アンテナとしては、例えば、探査領域が2次元的である場合、ダイポールアンテナを利用することができる。
【0024】
蓄積部35には、上記所定の周波数範囲(周波数f1〜周波数fn)の各周波数(f1,f2,…,fn)に対して、電磁波の受信電力を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔(以降、「インターバル時間」と称する)と、波源の存在を通報する通報条件とが夫々対応付けて蓄積されている。例えば、図2に示すように、無指向性アンテナ11で受信した周波数範囲の電磁波のうち、任意の周波数が2.413GHzの場合には、その周波数に対する電磁波の受信電力を測定する回数として「10回」、測定を行うインターバル時間として「1秒」が設定されているので、受信電力を1秒ごとに10回測定することを意味している。また、通報条件の一例としては、測定した受信電力が所定の範囲内であるか否かを示す判定値範囲を用いることが可能である。2.413GHzの周波数に対応する判定値範囲には「>−40dBm」が設定されているが、これは、その周波数に対する電磁波の受信電力が−40dBmよりも大きい場合には、利用者が知らない間に設置された可能性の高い何らかの波源が存在していることを意味するものである。なお、測定回数,インターバル時間,判定値範囲として設定する各値の決定方法については後述にて詳細に説明する。以降、本実施の形態に係る通報条件は、判定値範囲であるとして説明する。
【0025】
検波部13は、無指向性アンテナ11から出力された電磁波の電気信号を受信し、その周波数範囲(周波数f1〜周波数fn)に含まれる任意の周波数fに対応する測定回数及びインターバル時間を蓄積部35から読み出して、この測定回数及びこのインターバル時間に基づいて任意の周波数fに対する電磁波の受信電力(即ち、受信強度)を測定する。より正確には、各測定回数で測定された受信電力を測定回数で平均化した平均受信電力(即ち、平均受信強度)を計算する。そして、同検波部13は、計算した平均受信電力を比較部31へ出力する。同検波部13は、この周波数fを周波数f1から周波数fnまでの全ての周波数範囲内で掃引して、それら全ての各周波数に対する平均受信電力を同様の方法で夫々測定する。このような検波部13としては、例えば、周波数f1から周波数fnまでのローカル信号を発振する発振機と、ダウンコンバータや周波数フィルタなどを用いて実現することが可能である。
【0026】
比較部31は、検波部13で測定された周波数f1から周波数fnまでの各周波数に対する各平均受信電力を受信し、この各周波数に夫々対応する各判定値範囲を蓄積部35から読み出して、読み出した各判定値範囲と各周波数に対して夫々測定された各平均受信電力とを夫々比較する。
【0027】
通報部33は、測定された平均受信電力が判定値範囲内である場合に、波源の存在を通報する。また、同通報部33は、波源の存在を通報すると共に、計算した平均受信電力や、この平均受信電力に対応する周波数を有する通報情報を通知することも可能である。なお、通知情報に含まれる内容は、利用者によって選択的に適宜設定することができる。波源の存在のみ通報するか、若しくは、その通報と共に通報情報を通知するかは、利用者の利用形態に依存することになる。即ち、単に波源が存在するか否かを知りたい場合には前者の処理のみが可能となるよう予め設定しておき、通報情報を用いて何らかの処理を行う場合には後者の処理が可能となるよう予め設定しておくことになる。なお、波源の存在を通報及び通知する手段としては、例えば、スピーカーを用いて警戒音を鳴らすと共に、モニターによって通報情報を示す方法や、管理者に対して通報情報を含めた文章を電子メールで自動配信する方法などを挙げることができる。
【0028】
なお、このような波源探査装置100における各機能部の実装形態としては、図1に示すように、無指向性アンテナ11及び検波部13を無線端末としての基地局10に配置し、比較部31と通報部33と蓄積部35とを、通信ネットワーク(図示せず)を介して基地局10と相互通信が可能であって、演算処理が可能な演算装置30に配置することができる。無論、このような実装形態に限られることはなく、例えば、比較部31と通報部33とを異なる装置に配置してもよいし、蓄積部35のみを専用のデータベースに配置してもよい。また、このような演算装置30は、例えば、データテーブルが格納可能な記憶容量を持ち、且つ簡易なプログラミングが可能な組み込み型PCで実現してもよい。
【0029】
次に、蓄積部35に蓄積されている周波数ごとの測定回数,インターバル時間,判定値範囲として設定する各値の決定方法について説明する。この値は、市販の機器から発振する無線信号や電磁波と、盗聴機及び盗撮機から発振する電磁波とを誤認しないように定める必要がある。市販されている機器には、携帯電話のように無線信号を発振するものや、テレビ等の内部構造や動作に起因する特定の周波数の電磁波を放出するものがある。そのため、単純に1回の測定のみで受信電力を測定すると、そのような機器から発振する電磁波の受信電力を偶発的に測定する可能性がある。故に、テレビ等の内部構造や動作に起因して放出される電磁波であって偶発的なものについては、例えば、インターバル時間を1秒とし、電磁波の受信電力の測定回数を3回と決定し、測定回数を用いて平均化することで、これらの影響を小さくすることが可能となる。
【0030】
また、市販されている機器が偶発的に発振し得る周波数の受信電力も測定してしまう可能性がある場合には、市販の機器と盗聴機及び盗撮機との誤認を防止するため、政府や製造業者等が定める機器の品質管理規格で定められた規格値以上に判定値範囲を決定する必要がある。より具体的に言えば、市販されている機器は、他の無線機器との干渉を防止するため、政府や製造業者等が定める規格に従って小さな電磁波しか放出しないように設計されている。一方、盗聴機や盗撮機は、撮った画像データや音声データを外部へ伝送する必要があるため、先の規格よりも桁違いに大きな強度の電力を放出している。よって、判定値範囲を政府やメーカーなどが定める機器の品質管理規格よりも大きくすることで、盗聴機や盗撮機が放出する電磁波のみを探査することができる。なお、上述した携帯電話の場合だけではなく、家庭用コードレス電話等の場合であっても、政府や製造業者などによって定められた規格に従って周波数、通信方式、電力が定められているので、これらの情報に基づいて測定回数,インターバル時間,判定値範囲の各値を上記と同様の決定方法で決定することで、盗聴機や盗撮機が放出する電磁波のみを探査することができる。
【0031】
続いて、本実施の形態に係る波源探査装置100の動作処理について説明する。図3は、波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。なお、利用者は、図4に示すように、この波源探査装置100(特に、基地局10)を波源探査対象となる部屋の天井の中央付近に予め設置しておくこととする。
【0032】
最初に、基地局10の検波部13は、蓄積部35から周波数fに対する測定回数とインターバル時間を取得する(S101)。次に、同検波部13は、取得した測定回数とインターバル時間とを用いて、周波数fの受信電力を測定する(S102)。そして、同検波部13は、測定した受信電力を測定回数で平均化した平均受信電力を計算し、計算した平均受信電力を有する受信電力情報を演算装置30の比較部31に送信する(S103)。その後、同検波部13は、周波数fを周波数f1から周波数fnまでの周波数範囲内で掃引して、S101〜S103の各処理を周期的に繰り返す(S104)。即ち、同検波部13は、周波数f1から順次開始して周波数fnまで到達した場合には、周波数f1に戻って反復して繰り返し受信電力の測定を行う。
【0033】
演算装置30の比較部31は、検波部13から送信された受信電力情報、即ち、周波数fに対する平均受信電力を受信する(S105)。その後、同比較部31は、蓄積部35から周波数fに対応する判定値範囲を取得する(S106)。そして、同比較部31は、平均受信電力と判定値範囲とを比較する(S107)。平均受信電力が判定値範囲内である場合、通報部33が、周波数fの値と平均受信電力とを有する通報情報を外部へ通知する(S108)。
【0034】
本実施の形態では、測定回数,インターバル時間,判定値範囲として設定する各値の決定方法は、市販の機器から発する無線信号や電磁波と、無線機を有する盗聴機及び盗撮機から発振する電磁波とを誤認しないことを目的とするものとして説明した。しかし、これら各パラメータの各値を定める基準は、利用者によって適宜変更可能であることは言うまでも無い。即ち、例えば病院等において、機器の種類や使用法に関わらず、一定の電力以上の電磁波を一定時間以上発振している波源を探査する場合には、熱雑音により誤認を避けるため、測定回数を10回とし、インターバル時間を0.1秒とし、判定値範囲を医療機器が干渉を受ける大きさ以上に設定するという運用も可能である。本実施の形態に係る波源探査装置100は、何らかの波源からの受信電力を判定可能とするように判定値範囲を予め蓄積しておくことで、電磁波の伝搬や通常の機器から発する電磁波に関する知識が無い場合であっても、容易且つ正確に利用者の目的に合致した波源を探査することが可能となる。
【0035】
本実施の形態では、無指向性アンテナ11を用いて説明したが、指向性ビームプロファイルを有し、限定的な方位から到来する所定の周波数範囲の電磁波を受信する指向性アンテナを用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0036】
本実施の形態によれば、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積しておき、少なくとも各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信し、受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する測定回数及び測定間隔に基づいて電磁波の受信強度を測定し、受信強度を測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを周波数範囲の各周波数に対して繰り返し、各周波数に夫々対応する各通報条件と、各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較し、平均受信強度が通報条件を満たす場合に波源の存在を通報するので、蓄積部35に蓄積された所定の周波数範囲内において、無線機を有する盗聴機や盗撮機などの未知の電磁波の波源の有無を常時監視すると共に、波源の有無を容易に探査可能な波源探査装置を提供することができる。
【0037】
また、予め蓄積部35に蓄積された設定値を用いて測定された受信電力が判定値範囲よりも大きいか否かを判断するので、既存の無線機器から発せられる電磁波と未知の波源との誤認を防止することができる。従って、所定の周波数範囲内において、専門的な技能を用いることなく、無線機を有する盗聴機及び盗撮機からの未知の電磁波の有無を常時正確に監視することができる。
【0038】
〔第2の実施の形態〕
図5は、第2の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。この波源探査装置100は、電磁波を受信する指向性アンテナ12と、受信した電磁波の周波数に対する受信電力を測定する検波部13と、指向性アンテナ12を可動するアンテナ可動部15と、検波された受信電力と所定の通報条件とを比較する比較部31と、比較の結果に応じて波源の存在を通報する通報部33と、受信電力の測定回数や所定の通報条件等を予め蓄積しておく蓄積部35と、指向性アンテナ12のビームプロファイルを変化可能な指向性変化部37とを備えた構成である。
【0039】
指向性アンテナ12は、指向性のビームプロファイルを有し、図6に示すように、限定的な方位から到来する所定の周波数範囲(周波数f1〜周波数fn)の電磁波を受信して、電気信号として検波部13に出力する。
【0040】
指向性変化部37は、指向性アンテナ12のビームプロファイル、より具体的には、指向性ビーム方位を変化させる。このようなビームプロファイルの可変は、例えば、指向性アンテナを物理的に回転可能に構成することで実現することができる。
【0041】
アンテナ可動部15は、指向性変化部37による指向性アンテナ12のビームプロファイルを変化に従って、指向性アンテナ12の方位を変化させる。例えば、指向性アンテナ12がアレーアンテナの場合には、アレーアンテナ信号処理によって、電気的にビームプロファイルの方向、及び形状を変化させることができる。
【0042】
なお、蓄積部35,検波部13,比較部31,通報部33の有する各機能や、それら各機能部の実装形態や、蓄積部35に蓄積されている周波数ごとの測定回数,インターバル時間,判定値範囲として設定する各値の決定方法については、第1の実施の形態で説明したものと同様なので、ここでは重複説明は省略する。
【0043】
続いて、本実施の形態に係る波源探査装置100の動作処理について説明する。図7は、波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。なお、利用者は、図8に示すように、この波源探査装置100(特に、基地局10)を天井の中央付近に予め設置しておくこととする。
【0044】
最初に、基地局10の検波部13は、蓄積部35から周波数fに対する測定回数とインターバル時間を取得する(S201)。次に、同検波部13は、取得した測定回数とインターバル時間とを用いて、周波数fの受信電力を測定する(S202)。そして、同検波部13は、測定した受信電力を測定回数で平均化した平均受信電力を計算し、計算した平均受信電力を有する受信電力情報を演算装置30の比較部31に送信する(S203)。その後、同検波部13は、周波数fを周波数f1から周波数fnまでの周波数範囲内で掃引する(S204)。
【0045】
演算装置30の比較部31は、検波部13から送信された受信電力情報、即ち、周波数fに対する平均受信電力を受信する(S205)。その後、同比較部31は、蓄積部35から周波数fに対応する判定値範囲を取得する(S206)。そして、同比較部31は、平均受信電力と判定値範囲とを比較する(S207)。平均受信電力が判定値範囲内である場合、通報部33が、周波数fの値と平均受信電力とを有する通報情報を外部へ通知する(S208)。その後、指向性変化部37が、指向性アンテナ12の指向性ビーム方位を変化させる(S209)。
【0046】
基地局10のアンテナ可動部15は、指向性変化部37による指向性ビーム方位の変化に従って、指向性アンテナ12の方位等を変化させる(S210)。そして、同基地局10は、任意に定められた方位に指向性アンテナ12の指向性ビームを任意に定められた回数分変化させて、S202〜S204,S210の各処理を繰り返す。その後、基地局は、周波数f1から周波数fnの間で周期的にS201〜S204,S210の各処理を周期的に繰り返す。
【0047】
本実施の形態では、通知する通知情報に含まれる情報として周波数の値及び平均受信電力のみとして説明したが、周波数及び平均受信電力と共に、指向性アンテナの指向性ビーム方位についても通知情報に含めることが可能である。即ち、検波部13は、指向性アンテナ12が向いている方位から得られた指向性ビーム方位についても受信電力情報に含めることができる。そして、比較部31での比較において範囲外と判定される場合、即ち、波源が探査されない場合には、指向性変化部37からの指示に基づいて、アンテナ可動部15が、受信電力情報に含まれる指向性ビーム方位とは異なる方位に指向性アンテナ12の方位を変化させる。その後、検波部13は、それにより方位変化した指向性アンテナ12から出力された周波数範囲の電磁波に基づいて受信電力を測定し、平均化された平均受信電力と変化後の指向性ビーム方位とを有する受信電力情報を送信する。そして、比較部31での比較において範囲内と判定される場合、即ち、波源が探査された場合には、その指向性ビーム方位についても通知情報に含めて通知する。即ち、所定の方位間隔で波源が探査されるまで繰り返し行うことで、波源の有無だけではなく、波源探査装置から見た場合の波源の方位についても利用者に提供することができる。
【0048】
本実施の形態では、指向性アンテナを用いているので、波源探査の対象領域を限定することができる。即ち、金属板などの電磁波を遮蔽する物体を用いなくとも、限定した領域のみを対象とした電磁波探査や、病院などにおける手術室、集中治療室の出入り口付近のみを対象とした電磁波探査をすることが可能となる。
【0049】
〔第3の実施の形態〕
図9は、第3の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。この波源探査装置100は、異なる周波数の電磁波を夫々受信する第1の無指向性アンテナ11a〜第nの無指向性アンテナ11nと、受信した各電磁波の周波数に対する受信電力を夫々測定する第1の検波部13a〜第nの検波部13nと、検波された受信電力と所定の通報条件とを比較する比較部31と、比較の結果に応じて波源の存在を通報する通報部33と、受信電力の測定回数や所定の通報条件等を予め蓄積しておく蓄積部35とを備えた構成である。
【0050】
第1の無指向性アンテナ11a〜第nの無指向性アンテナ11nは、無指向性のビームプロファイルを有し、全方位から到来する所定の周波数範囲における各周波数(周波数f1〜周波数fn)の電磁波を夫々受信して、電気信号として第1の検波部13a〜第nの検波部13nに出力する。このような無指向性アンテナとしては、例えば、探査領域が2次元的である場合、ダイポールアンテナを利用することができる。
【0051】
第1の検波部13a〜第nの検波部13nは、第1の無指向性アンテナ11a〜第nの無指向性アンテナ11nから夫々出力された電磁波の電気信号を夫々受信し、各周波数fに対応する測定回数及びインターバル時間を蓄積部35から夫々読み出して、この測定回数及びこのインターバル時間に基づいて周波数fに対する電磁波の受信電力(即ち、受信強度)を夫々測定する。より正確には、各測定回数で測定された受信電力を測定回数で平均化した平均受信電力(即ち、平均受信強度)を夫々計算する。そして、同各検波部は、計算した平均受信電力を比較部31へ出力する。このような検波部13としては、例えば、周波数f1から周波数fnまでのローカル信号を発振する発振機と、ダウンコンバータや周波数フィルタなどを用いて実現することが可能である。
【0052】
なお、蓄積部35、比較部31、通報部33の有する各機能や、それら各機能部の実装形態や、蓄積部35に蓄積されている周波数ごとの測定回数,インターバル時間,判定値範囲として設定する各値の決定方法や、動作処理については、第1の実施の形態で説明したものと同様なので、ここでは重複説明は省略する。
【0053】
続いて、本実施の形態に係る波源探査装置100の動作処理について説明する。図10は、波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。最初に、基地局10の第1の検波部13a〜第nの検波部13nは、蓄積部35から各周波数に対する測定回数とインターバル時間を夫々取得する(S301)。次に、同各検波部は、取得した測定回数とインターバル時間とを用いて、各周波数の受信電力を夫々測定する(S302)。そして、同各検波部は、測定した受信電力を測定回数で平均化した平均受信電力を夫々計算し、計算した各平均受信電力を有する受信電力情報を演算装置30の比較部31に送信する(S303)。
【0054】
演算装置30の比較部31は、検波部13から送信された受信電力情報、即ち、各周波数に対する平均受信電力を受信する(S304)。その後、同比較部31は、蓄積部35から各周波数に対応する各判定値範囲を夫々取得する(S305)。そして、同比較部31は、各平均受信電力と各判定値範囲とを夫々比較する(S306)。平均受信電力が判定値範囲内である場合、通報部33が、該当する周波数の値と平均受信電力とを有する通報情報を外部へ通知する(S307)。
【0055】
本実施の形態によれば、異なる周波数範囲に応じた複数の無指向性アンテナ及び複数の検波部を備えているので、波源探査行う周波数範囲が広域な場合であっても、良好な波源探査を行うことができる。通常、検波部13として動作する検波回路やアンテナには適用可能な周波数範囲が決まっており、それを超えた周波数範囲では電磁波に対する感度が著しく劣化するという現象がある。また、広い帯域に渡って使用可能なアンテナや検波回路の設計や作成は一般的に非常に難しく、電磁波に対する感度等が劣る可能性があるが、本実施の形態では、探査を行う周波数範囲を分割し、それぞれの範囲に適したアンテナと検波回路を用意することにより、このような問題を解消できるという効果もある。
【0056】
本実施の形態では、第1の無指向性アンテナ11a〜第nの無指向性アンテナ11nを用いて説明したが、限定的な方位から到来する所定の周波数範囲の電磁波を受信する複数の第1の指向性アンテナ〜第nの指向性アンテナを用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。また、第1の無指向性アンテナ11a〜第nの無指向性アンテナ11nに代えて、第1の指向性アンテナ12a〜第nの指向性アンテナ12nを用いた場合には、図11に示すように、第2の実施の形態で説明したアンテナ可動部15及び指向性変化部37を本実施の形態に適用し、それら複数のアンテナの方位を夫々変化させても同様の効果を得ることができるのは言うまでも無い。
【0057】
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態では、第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した波源探査装置と、この波源探査装置の探査によって通知された通知情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定システムについて説明する。
【0058】
図12は、第4の実施の形態に係る波源推定システムの構成を示す構成図である。この波源探査システムは、無指向性アンテナが備えられた第1の波源探査装置〜第4の波源探査装置と、全ての波源探査装置と通信可能な波源推定装置200とを備えた構成である。なお、同図では、各波源探査装置に夫々対応する第1の基地局10a〜第4の基地局10dが記載され、無指向性アンテナや演算装置の記載については省略する。また、第1の基地局10a〜第4の基地局10dは、波源探査対象部屋の位置A〜位置Dに夫々設置されているものとし、この波源探査対象部屋の中央付近を位置Eとする。なお、第1の波源探査装置〜第4の波源探査装置の構成や処理動作については、第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明したものと同様なので、ここでは重複説明は省略する。
【0059】
波源推定装置200は、位置情報蓄積部51と、通報情報格納部53と、受信電力比較部55と、波源推定部57とを備えた構成である。まず、位置情報蓄積部51は、図13に示すように、第1の基地局10a(第1の波源探査装置)〜第4の基地局10d(第4の波源探査装置)が配置された位置情報を蓄積しておく。次に、通報情報格納部53は、各波源探査装置から送信された各通報情報を夫々受信して格納する。そして、受信電力比較部55は、各通報情報を通報情報格納部53から読み出して、各通報情報に含まれる各平均受信電力の大きさを比較する。その後、波源推定部57は、比較の結果、最も高い平均受信電力を有する通報情報を通知した波源探査装置に対応する位置情報を位置情報蓄積部51から読み出して、波源の位置として推定する。なお、このような波源推定装置200は、通報情報の受信が可能であり、データテーブルが格納可能な記憶容量を持ち、演算処理が可能なコンピュータ等で実現することが可能である。
【0060】
電磁波は、伝搬することにより自由空間伝搬減衰や大気減衰などの要因によって、伝搬距離に応じて減衰するという特性がある。例えば、位置Aのエリアに未知の波源があった場合、各基地局で受信される受信電力の大小関係は「第1の基地局>第2の基地局>第3の基地局>第4の基地局」となる。これは、未知の波源から発振された電磁波が各基地局へ到達する時の伝播距離が、第1の基地局の場合が最も短く、第4の基地局の場合が最も長いためである。同様に、例えば位置Bのエリアに未知の波源があった場合、その大小関係は「第2の基地局>第1の基地局>第4の基地局>第3の基地局」となる。一方、その未知の波源が位置Eのエリアにあった場合には、未知の波源から各基地局への伝搬距離が略等しいため、その大小関係は「第1の基地局≒第2の基地局≒第3の基地局≒第4の基地局」となる。故に、この特性を利用して、複数の基地局で受信した受信電力の大小を比較することにより、波源の位置を推定することができる。
【0061】
以上の説明は、各波源探査装置が無指向性アンテナ11を用いて場合について説明するものであるが、指向性について限定的要素があるものの、指向性アンテナ12を用いた場合であっても同様の効果を得ることが可能である。即ち、各基地局の指向性を図14に示すように調整する。例えば、位置Aのエリアに未知の波源があった場合、既に説明した伝搬距離の依存性に基づけば、各基地局で受信される受信電力の大小関係は「第1の基地局>第2の基地局>第4の基地局」となる。なお、第3の基地局10cは、位置Aに対する指向性が無いため、比較する大小関係には含まれないことになる。同様に、例えば位置Bのエリアに未知の波源があった場合には、その大小関係は「第2の基地局>第4の基地局」となる。また、例えば位置Cのエリアに未知の波源があった場合には、その大小関係は「第3の基地局>第1の基地局」となり、位置Dのエリアに未知の波源があった場合には、その大小関係は「第4の基地局>第3の基地局>第1の基地局」となる。即ち、指向性アンテナを用いることにより、各基地局で受信する受信電力が更に特徴的になるので、未知の波源をより容易に推定することができる。
【0062】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態では、第2の実施の形態において図5を用いて説明した波源探査装置と、この波源探査装置の探査によって通知された通知情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定システムについて説明する。
【0063】
図15は、第5の実施の形態に係る波源推定システムの構成を示す構成図である。この波源探査システムは、図5に示すような指向性アンテナが備えられた第1の波源探査装置及び第2の波源探査装置と、全ての波源探査装置と通信可能な波源推定装置200とを備えた構成である。なお、同図では、各波源探査装置に夫々対応する第1の基地局10a及び第2の基地局10bが記載され、指向性アンテナや演算装置の記載については省略する。なお、第1の波源探査装置及び第2の波源探査装置の構成や処理動作については、第2の実施の形態で説明したものと同様なので、ここでは重複説明は省略する。但し、第1の波源探査装置及び第2の波源探査装置は、周波数及び平均受信電力と共に、指向性アンテナの指向性ビーム方位を含めた通知情報を通知するものとして説明する。
【0064】
波源推定装置200は、位置情報蓄積部51と、通報情報格納部53と、方位計算部59とを備えた構成である。まず、位置情報蓄積部51は、図16に示すように、第1の基地局10a(第1の波源探査装置)及び第2の基地局10b(第2の波源探査装置)が配置された位置情報を蓄積しておく。次に、通報情報格納部53は、各波源探査装置から送信された各通報情報を夫々受信して格納する。そして、方位計算部59は、各通報情報を通報情報格納部53から読み出すと共に、位置情報を位置情報蓄積部51から読み出して、各通報情報に含まれる各指向性ビーム方位と位置情報との関係から波源を推定する。例えば、第1の基地局10aから通知された指向性ビーム方位が「北西」、第2の基地局10bから通知された指向性ビーム方位が「北東」であるとする。一方、第1の基地局は「A5−B6」の位置に設置され、第2の基地局は「A6−B2」の位置に設置されているので、各基地局の位置と各基地局から夫々通知された方位から、波源探査対象部屋における波源の位置を推定することができる。即ち、指向性ビーム方位も通知することにより、波源の有無だけではなく、波源探査装置から見た場合の波源の方位についても利用者に提供することができる。なお、このような波源推定装置200は、通報情報の受信が可能であり、データテーブルが格納可能な記憶容量を持ち、演算処理が可能なコンピュータ等で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。
【図2】蓄積部に蓄積された設定値の一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。
【図4】無指向性アンテナを有する基地局が天井の中央付近に設置された場合の状態を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。
【図6】指向性アンテナの指向性を説明する説明図である。
【図7】第2の実施の形態における波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。
【図8】指向性アンテナを有する基地局が天井の中央付近に設置された場合の状態を示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係る波源探査装置の構成を示す構成図である。
【図10】第3の実施の形態における波源探査装置の動作処理を示すフロー図である。
【図11】第2の実施の形態で説明した指向性アンテナを第3の実施の形態に適用した場合の構成を示す構成図である。
【図12】第4の実施の形態に係る波源推定システムの構成を示す構成図である。
【図13】位置情報蓄積部に蓄積された位置情報の一例を示す図である。
【図14】第2の実施の形態で説明した指向性アンテナを第4の実施の形態に適用した場合について説明する説明図である。
【図15】第5の実施の形態に係る波源推定システムの構成を示す構成図である。
【図16】位置情報蓄積部に蓄積された位置情報の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10,10a〜10d…基地局
11,11a,11b,11n…無指向性アンテナ
12,12a,12b,12n…指向性アンテナ
13,13a,13b,13n…検波部
15…アンテナ可動部
30…演算装置
31…比較部
33…通報部
35…蓄積部
37…指向性変化部
51…位置情報蓄積部
53…通報情報格納部
55…受信電力比較部
57…波源推定部
59…方位計算部
100…波源探査装置
S101〜S108…処理動作
S201〜S210…処理動作
S301〜S307…処理動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積しておく蓄積手段と、
少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するアンテナと、
受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返す検波手段と、
当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較する比較手段と、
当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、波源の存在を通報する通報手段と、
を有することを特徴とする波源探査装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記周波数範囲の各周波数に対応して夫々設けられた複数のアンテナであって、
前記検波手段は、当該複数のアンテナで夫々受信した電磁波の周波数に対して前記平均受信強度を夫々求める複数の検波手段であることを特徴とする請求項1に記載の波源探査装置。
【請求項3】
前記アンテナは、無指向性のビームプロファイルを有する無指向性アンテナであることを特徴とする請求項1又は2に記載の波源探査装置。
【請求項4】
前記アンテナは、指向性のビームプロファイルを有する指向性アンテナであることを特徴とする請求項1又は2に記載の波源探査装置。
【請求項5】
前記指向性のビームプロファイルを変化させる指向性変化手段と、
当該ビームプロファイルの変化に従って、前記指向性アンテナの方位を変化させるアンテナ可動手段と、
を更に有することを特徴とする請求項4に記載の波源探査装置。
【請求項6】
前記通報手段は、前記アンテナ可動手段によって変化された前記指向性アンテナの方位についても通報することを特徴とする請求項5に記載の波源探査装置。
【請求項7】
各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、
少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信するステップと、
受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、
当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、
当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、波源の存在を通報するステップと、
を有することを特徴とする波源探査方法。
【請求項8】
各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、
指向性アンテナのビームプロファイルの方位を変化させながら、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するステップと、
受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、
当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、
当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度と前記ビームプロファイルの方位とを有する通報情報を通知するステップと、
を有することを特徴とする波源探査方法。
【請求項9】
波源を探索する複数の波源探査装置と、探索によって通知された情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定方法であって、
前記各波源探査装置により、
各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、
少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波をアンテナで受信するステップと、
受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、
当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、
当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度を有する通報情報を通知するステップと、を有し、
前記波源推定装置により、
前記各波源探査装置が配置された位置情報を位置情報蓄積手段に蓄積しておくステップと、
前記各波源探査装置から通知された各通報情報を夫々受信して、通報情報格納手段に格納するステップと、
前記各通報情報を前記通報情報格納手段から読み出して、当該各通報情報に含まれる各平均受信強度の大きさを比較するステップと、
当該比較の結果、最も高い平均受信強度を有する通報情報を通知した波源探査装置に対応する位置情報を前記位置情報蓄積手段から読み出して、波源の位置として推定するステップと、
を有することを特徴とする波源推定方法。
【請求項10】
波源を探索する複数の波源探査装置と、探索によって通知された情報に基づいて波源の位置を推定する波源推定装置とを用いて行う波源推定方法であって、
前記各波源探査装置により、
各周波数に対して、電磁波の受信強度を測定する測定回数と、測定を行う測定間隔と、波源の存在を通報する通報条件とを夫々対応付けて蓄積手段に蓄積しておくステップと、
指向性アンテナのビームプロファイルの方位を変化させながら、少なくとも前記各周波数を含む周波数範囲の電磁波を受信するステップと、
受信した周波数範囲の電磁波のうち任意の周波数に対応する前記測定回数及び前記測定間隔を前記蓄積手段から読み出して、当該測定回数及び当該測定間隔に基づいて前記任意の周波数に対する電磁波の受信強度を測定し、当該受信強度を前記測定回数で平均化した平均受信強度を求めることを前記周波数範囲の各周波数に対して繰り返すステップと、
当該各周波数に夫々対応する各通報条件を前記蓄積手段から読み出して、当該各通報条件と、当該各周波数に対して夫々測定された各平均受信強度とを夫々比較するステップと、
当該平均受信強度が前記通報条件を満たす場合に、当該平均受信強度と前記ビームプロファイルの方位とを有する通報情報を通知するステップと、を有し、
前記波源推定装置により、
前記各波源探査装置が配置された位置情報を位置情報蓄積手段に蓄積しておくステップと、
前記各波源探査装置から通知された各通報情報を夫々受信して、通報情報格納手段に格納するステップと、
前記各通報情報を前記通報情報格納手段から読み出すと共に、前記位置情報を前記位置情報格納手段から読み出して、当該各通報情報に含まれる各ビームプロファイルの方位と当該位置情報との関係に基づいて、波源の位置を推定するステップと、
を有することを特徴とする波源推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−192323(P2009−192323A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32105(P2008−32105)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】