波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ
【課題】溶接に起因する品質低下を抑制する。
【解決手段】XY調整用ホルダ(7)にレンズホルダ(4)を溶接したときにレンズホルダ(4)が基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、第二高調波(Lo)を実測しながら、レンズホルダ(4)を基本波の光軸の方向にオフセットする。その後、XY調整用ホルダ(7)にレンズホルダ(4)を溶接する。
【効果】第二高調波(Lo)を実測しながら、レンズホルダ(4)を基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った適正なオフセットを行うことができ、溶接に起因する品質低下を抑制できる。
【解決手段】XY調整用ホルダ(7)にレンズホルダ(4)を溶接したときにレンズホルダ(4)が基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、第二高調波(Lo)を実測しながら、レンズホルダ(4)を基本波の光軸の方向にオフセットする。その後、XY調整用ホルダ(7)にレンズホルダ(4)を溶接する。
【効果】第二高調波(Lo)を実測しながら、レンズホルダ(4)を基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った適正なオフセットを行うことができ、溶接に起因する品質低下を抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置に関し、さらに詳しくは、溶接に起因する品質低下を抑制できる波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザから出射した基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定する際に、溶接に起因する光軸方向のズレをキャンセルできるように溶接前にレンズホルダの位置を光軸方向にオフセットしておくことが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115933号公報(段落[0041])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、レンズホルダの位置を光軸方向にオフセットする方法が開示されていないが、μmオーダーのオフセット量であるため、マイクロメータの応用によるレンズホルダの機械的移動方法が考えられる。
しかし、マイクロメータの応用によるレンズホルダの機械的移動方法では、レンズホルダの嵌め合い等の公差や製造上のバラツキがあるため、個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことが出来ず、溶接に起因する品質低下を十分に抑制できるない問題点があった。例えば、レンズホルダを所定量だけオフセットしたつもりでも、実際には、オフセット量に過不足が生じていることがあった。
そこで、本発明の目的は、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、溶接に起因する品質低下を十分に抑制できる波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、半導体レーザから出射された基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定するときに、前記波長変換素子からの第二高調波出力が最大になるように前記半導体レーザと前記レンズホルダと前記波長変換素子とを配置し、前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレ量を第二高調波の出力低下分に換算し、その出力低下分を前記第二高調波を実測して確認しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットし、次いで前記レンズホルダを溶接することを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
上記第1の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第二高調波を実測しながら、レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った適正なオフセットを行うことができ、溶接に起因する品質低下を抑制できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能なXY調整用ホルダと、基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持し且つ前記XY調整用ホルダに対して基本波の光軸の方向に移動可能なレンズホルダと、先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記XY調整用ホルダと前記レンズホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第一工程と、前記波長変換素子ホルダに前記XY調整用ホルダを溶接する第二工程と、前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、前記第二高調波を実測しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットする第三工程と、前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接する第四工程と、溶接した前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを、波長変換素子格納モジュールに収容して固定する第五工程と、前記波長変換素子格納モジュールと該波長変換素子格納モジュールに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能な連結ホルダとを当接し、前記連結ホルダに前記球面座ホルダの前記先端部を当接し、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記連結ホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第六工程と、前記波長変換素子格納モジュールに前記連結モジュールを溶接する第七工程と、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記球面座ホルダの角度を調整する第八工程と、前記連結ホルダに前記球面座ホルダを溶接する第九工程と、を含むことを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
【0007】
上記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第一工程において、第二高調波が実測上最大出力になるようにXY調整用ホルダとレンズホルダと球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第二工程において、波長変換素子ホルダにXY調整用ホルダを好適に溶接することが出来る。また、第三工程において、第二高調波を実測しながら、レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合ったオフセットを行うことができ、第四工程において、XY調整用ホルダにレンズホルダを好適に溶接することが出来る。また、第六工程において、第二高調波が実測上最大出力になるように連結ホルダと球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第七工程において、波長変換素子格納モジュールに連結モジュールを好適に溶接することが出来る。さらに、第八工程において、第二高調波が実測上最大出力になるように球面座ホルダの角度を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第九工程において、連結ホルダに球面座ホルダを好適に溶接することが出来る。これらにより、溶接に起因する品質低下を十分に抑制して、波長変換型レーザ装置を製造できる。
【0008】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記第二高調波の出力が所定の値まで低下するように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
レンズホルダをオフセットしたときに生じる第二高調波の出力低下量は計算により予測できる。
そこで、上記第3の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第二高調波の出力低下量を実測してオフセットするので、正しく所定量だけレンズホルダをオフセットすることが出来る。
【0009】
第4の観点では、本発明は、前記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記球面座ホルダを基本波の光軸の方向に所定量だけオフセットした状態で前記第二高調波の出力が最大になるように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
レンズホルダをオフセットした位置で第二高調波の出力が最大になる球面座ホルダの位置は計算により予測できる。
そこで、上記第4の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、計算された位置に球面座ホルダを移動し、第二高調波の出力が実測上最大となるようにレンズホルダをオフセットするので、正しく所定量だけレンズホルダをオフセットすることが出来る。
【0010】
第5の観点では、本発明は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに溶接されたXY調整用ホルダと、前記XY調整用ホルダに溶接され且つ基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持したレンズホルダと、前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを収容した波長変換素子格納モジュールと、前記波長変換素子格納モジュールに溶接された連結ホルダと、前記連結ホルダに溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを具備し、前記XY調整用ホルダは前記波長変換素子ホルダに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記レンズホルダは前記XY調整用ホルダに対して溶接前は基本波の光軸の方向に移動可能であり、前記連結ホルダは前記波長変換素子格納モジュールに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記球面座ホルダは前記連結ホルダに対して溶接前は前記先端部を前記連結ホルダに当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能であることを特徴とする波長変換型レーザ装置を提供する。
上記第5の観点による波長変換型レーザ装置では、前記第2から第4の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法を好適に実施できる。さらに、先端部を球面座に形成した球面座ホルダに半導体レーザを保持したので、半導体レーザから出射する基本波の光軸角度の調整が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置によれば、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことが出来るため、溶接に起因する品質低下を十分に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る波長変換型レーザ装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】実施例1に係る波長変換型レーザ装置の製造方法を示すフロー図である。
【図4】第一工程を示す断面図である。
【図5】設計された最適位置の説明図である。
【図6】第二工程を示す断面図である。
【図7】第三工程を示す断面図である。
【図8】第四工程を示す断面図である。
【図9】第五工程を示す断面図である。
【図10】第六工程を示す断面図である。
【図11】第七工程を示す断面図である。
【図12】第八工程を示す断面図である。
【図13】第九工程を示す断面図である。
【図14】本発明に係る波長変換型レーザ装置における溶接に起因する出力低下の数値例を示す図表である。
【図15】基本波と波長変換素子の結合面を示す概念図である。
【図16】基本波の光軸と波長変換素子の光軸がズレたときの出力低下を示す概念図である。
【図17】基本波と波長変換素子の結合面が光軸方向にズレたときの出力低下を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る波長変換型レーザ装置100を示す平面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。なお、光軸をZ軸とし、光軸に垂直な面をXY面とする。
この波長変換型レーザ装置100は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子5を押え部材6aで押えるように保持した波長変換素子ホルダ6と、波長変換素子ホルダ6に溶接されたXY調整用ホルダ7と、XY調整用ホルダ7に溶接され且つ基本波を集光して波長変換素子5に入射するレンズ3を保持したレンズホルダ4と、波長変換素子ホルダ6及びXY調整用ホルダ7及びレンズホルダ4を収容した波長変換素子格納モジュール8と、波長変換素子格納モジュール8に溶接された連結ホルダ9と、連結ホルダ9に溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つレンズ3に向けて基本波を出射する半導体レーザ1を保持した球面座ホルダ2とを具備している。
【0015】
なお、説明の複雑化を避けるために、半導体レーザ1やレンズ3を単一部品として表現するが、これらは複数の単一部品の組み合わせからなる複合部品であってもよい。
また、黒三角を用いて溶接に係る部分を示しているが、これは単なるシンボルであって、溶接部分の断面を示したものではない。
【0016】
XY調整用ホルダ7は、波長変換素子ホルダ6に対して、溶接前は、基本波の光軸に垂直な面内で移動可能である。
レンズホルダ4は、XY調整用ホルダ7に対して、溶接前は、基本波の光軸の方向に移動可能である。
連結ホルダ9は、波長変換素子格納モジュール8に対して、溶接前は、基本波の光軸に垂直な面内で移動可能である。
球面座ホルダ2は、連結ホルダ9に対して、溶接前は、先端部を連結ホルダ9に当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能である。
【0017】
波長変換素子5は、四角柱形状であり、モードフィールド径が4μm以下の導波路型波長変換素子である。
波長変換素子ホルダ6は、L形ブロック形状であり、コバール製である。押え部材6aは、L形板形状であり、コバール製である。
XY調整用ホルダ7は、円筒形状であり、SUS304製である。
レンズ3は、石英製である。
レンズホルダ4は、XY調整用ホルダ7に嵌合しうる円筒形状であり、SUS430製である。
波長変換素子格納モジュール8は、四角い箱形状であり、箱の側面はコバール製,底面は銅タングステン製である。また、箱,蓋とも半田,蓋閉め用の金メッキを施している。蓋板8aを外せば、上面を開放できる。また、基本波の透過窓8bと第二高調波の透過窓8cとが穿設されてる。透過窓8bは、気密を保つため、サファイア板8dで塞がれている。透過窓8cは、気密を保つため、サファイア板8eで塞がれている。
連結ホルダ9は、円筒形状であり、SUS430製である。
球面座ホルダ2は、先端部が球面に形成された円筒形状であり、SUS304製である。
【0018】
図3は、波長変換型レーザ装置100の製造方法を示すフロー図である。
ステップS1では、図4に示すように、端面がXY面に平行になるように波長変換素子ホルダ6を立て、波長変換素子ホルダ6の端面上にXY調整用ホルダ7を乗せ、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を嵌合し、レンズホルダ4の上方に球面座ホルダ2を配置する。そして、治具を用いて、XY調整用ホルダ7のXY位置(=XY面上での位置)、レンズホルダ4のZ位置(=Z軸上での位置)、球面座ホルダ2のXY位置およびZ位置およびZ軸に対する角度を、図5に例示する如き所定の関係に保持する。なお、図5において、2waはレンズ3に入射する基本波のビームウエスト位置での有効径、2wbは波長変換素子5の入射面での基本波の有効径、zaはレンズ3に入射する基本波のビームウエスト位置からレンズ3までの距離、zbはレンズ3から波長変換素子5の入射面までの距離であり、これらは設計上の位置である。
【0019】
次に、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、XY調整用ホルダ7のXY位置と、レンズホルダ4のZ位置と、球面座ホルダ2の角度とを、治具を用いて、調整する。
【0020】
ステップS2では、図6に示すように、溶接用レーザビームBwを当てて、波長変換素子ホルダ6にXY調整用ホルダ7を、スポット溶接する。溶接箇所の数や位置は、溶接に起因する位置ズレがなるべく残らないように配慮して選択する。
【0021】
ステップS3では、図7に示すように、第二高調波Loを実測して確認しながら、レンズホルダ4の溶接により生じると予測される位置ずれδだけ逆方向にレンズホルダ4の位置を、治具を用いて、オフセットする。
【0022】
ステップS3の第1具体例では、レンズホルダ4をオフセットしたときに生じる第二高調波Loの出力低下量を計算しておき、第二高調波の出力低下量を実測して、第二高調波Loの出力低下が計算値となるようにレンズホルダ4をオフセットする。
【0023】
ステップS3の第2具体例では、レンズホルダ4をオフセットした位置で第二高調波の出力が最大になる球面座ホルダ2の位置を計算しておき、その計算した位置に球面座ホルダ2を移動し、第二高調波Loの出力が実測上最大となるようにレンズホルダ4をオフセットする。
【0024】
ステップS4では、図8に示すように、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を溶接する。
【0025】
ステップS5では、図9に示すように、溶接した波長変換素子ホルダ6とXY調整用ホルダ7とレンズホルダ4とを、波長変換素子格納モジュール8に収容し、半田付けし、一体化する。
【0026】
ステップS6では、図10に示すように、端面がXY面に平行になるように波長変換素子格納モジュール8を立て、波長変換素子格納モジュール8の端面上に連結ホルダ9を乗せ、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を当接する。そして、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、治具を用いて、連結ホルダ9のXY位置、球面座ホルダ2のZ軸に対する角度を調整する。
【0027】
ステップS7では、図11に示すように、波長変換素子格納モジュール8に連結ホルダ9を溶接する。
【0028】
ステップS8では、図12に示すように、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、治具を用いて、球面座ホルダ2のZ軸に対する角度を調整する。
【0029】
ステップS9では、図13に示すように、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を溶接する。このとき、溶接歪みを利用して、半導体レーザ1から出射される基本波の出射方向の微調整を行う。
【0030】
図14は、上記のようにして製造した製品10個についての、溶接に起因する出力低下の数値例を示す図表である。
数値は、各製品の、レンズホルダ4を溶接する前の第二高調波Loの出力値に対する、製品となった後の第二高調波Loの出力値の比である。
すべての製品が98%以上の第二高調波出力を維持している。
【0031】
図15は、基本波と波長変換素子5の結合面を示す概念図である。
図16は、基本波の光軸と波長変換素子5の光軸がズレた(=XY方向軸ズレ)ときの出力低下(計算値)を示す概念図である。
図17は、基本波と波長変換素子5の結合面が光軸方向にズレた(=Z方向ズレ)ときの出力低下(計算値)を示す概念図である。
【0032】
実施例1に係る波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置100によれば次の効果が得られる。
(1)ステップS1において、第二高調波Loが実測上最大出力になるようにXY調整用ホルダ7とレンズホルダ4と球面座ホルダ2の各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS2において、波長変換素子ホルダ6にXY調整用ホルダ7を好適に溶接できる。
(2)ステップS3において、第二高調波Loを実測しながら、レンズホルダ4を基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合ったオフセットを行うことができ、ステップS4において、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を好適に溶接できる。
(3)ステップS6において、第二高調波Loが実測上最大出力になるように連結ホルダ9と球面座ホルダ2の各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS7において、波長変換素子格納モジュール8に連結モジュール9を好適に溶接できる。
(4)ステップS8において、第二高調波Loが実測上最大出力になるように球面座ホルダ2の角度を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS9において、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を好適に溶接できる。
(5)以上により、溶接に起因する品質低下を十分に抑制して、波長変換型レーザ装置100を製造できる。
(6)先端部を球面座に形成した球面座ホルダ2に半導体レーザ1を保持したので、半導体レーザ1から出射する基本波の光軸角度の調整が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置は、例えば光通信モジュールなどに利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体レーザ
2 球面座ホルダ
3 レンズ
4 レンズホルダ
5 波長変換素子
6 波長変換素子ホルダ
6a 押え部材
7 XY調整用ホルダ
8 波長変換素子格納モジュール
8a 蓋板
8b,8c 透過窓
8d,8e 石英板
9 連結ホルダ
100 波長変換型レーザ装置
Lo 第二高調波
Bw 溶接用レーザビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置に関し、さらに詳しくは、溶接に起因する品質低下を抑制できる波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザから出射した基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定する際に、溶接に起因する光軸方向のズレをキャンセルできるように溶接前にレンズホルダの位置を光軸方向にオフセットしておくことが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115933号公報(段落[0041])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、レンズホルダの位置を光軸方向にオフセットする方法が開示されていないが、μmオーダーのオフセット量であるため、マイクロメータの応用によるレンズホルダの機械的移動方法が考えられる。
しかし、マイクロメータの応用によるレンズホルダの機械的移動方法では、レンズホルダの嵌め合い等の公差や製造上のバラツキがあるため、個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことが出来ず、溶接に起因する品質低下を十分に抑制できるない問題点があった。例えば、レンズホルダを所定量だけオフセットしたつもりでも、実際には、オフセット量に過不足が生じていることがあった。
そこで、本発明の目的は、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、溶接に起因する品質低下を十分に抑制できる波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、半導体レーザから出射された基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定するときに、前記波長変換素子からの第二高調波出力が最大になるように前記半導体レーザと前記レンズホルダと前記波長変換素子とを配置し、前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレ量を第二高調波の出力低下分に換算し、その出力低下分を前記第二高調波を実測して確認しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットし、次いで前記レンズホルダを溶接することを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
上記第1の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第二高調波を実測しながら、レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った適正なオフセットを行うことができ、溶接に起因する品質低下を抑制できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能なXY調整用ホルダと、基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持し且つ前記XY調整用ホルダに対して基本波の光軸の方向に移動可能なレンズホルダと、先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記XY調整用ホルダと前記レンズホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第一工程と、前記波長変換素子ホルダに前記XY調整用ホルダを溶接する第二工程と、前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、前記第二高調波を実測しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットする第三工程と、前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接する第四工程と、溶接した前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを、波長変換素子格納モジュールに収容して固定する第五工程と、前記波長変換素子格納モジュールと該波長変換素子格納モジュールに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能な連結ホルダとを当接し、前記連結ホルダに前記球面座ホルダの前記先端部を当接し、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記連結ホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第六工程と、前記波長変換素子格納モジュールに前記連結モジュールを溶接する第七工程と、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記球面座ホルダの角度を調整する第八工程と、前記連結ホルダに前記球面座ホルダを溶接する第九工程と、を含むことを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
【0007】
上記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第一工程において、第二高調波が実測上最大出力になるようにXY調整用ホルダとレンズホルダと球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第二工程において、波長変換素子ホルダにXY調整用ホルダを好適に溶接することが出来る。また、第三工程において、第二高調波を実測しながら、レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合ったオフセットを行うことができ、第四工程において、XY調整用ホルダにレンズホルダを好適に溶接することが出来る。また、第六工程において、第二高調波が実測上最大出力になるように連結ホルダと球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第七工程において、波長変換素子格納モジュールに連結モジュールを好適に溶接することが出来る。さらに、第八工程において、第二高調波が実測上最大出力になるように球面座ホルダの角度を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、第九工程において、連結ホルダに球面座ホルダを好適に溶接することが出来る。これらにより、溶接に起因する品質低下を十分に抑制して、波長変換型レーザ装置を製造できる。
【0008】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記第二高調波の出力が所定の値まで低下するように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
レンズホルダをオフセットしたときに生じる第二高調波の出力低下量は計算により予測できる。
そこで、上記第3の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、第二高調波の出力低下量を実測してオフセットするので、正しく所定量だけレンズホルダをオフセットすることが出来る。
【0009】
第4の観点では、本発明は、前記第2の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記球面座ホルダを基本波の光軸の方向に所定量だけオフセットした状態で前記第二高調波の出力が最大になるように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法を提供する。
レンズホルダをオフセットした位置で第二高調波の出力が最大になる球面座ホルダの位置は計算により予測できる。
そこで、上記第4の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法では、計算された位置に球面座ホルダを移動し、第二高調波の出力が実測上最大となるようにレンズホルダをオフセットするので、正しく所定量だけレンズホルダをオフセットすることが出来る。
【0010】
第5の観点では、本発明は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに溶接されたXY調整用ホルダと、前記XY調整用ホルダに溶接され且つ基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持したレンズホルダと、前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを収容した波長変換素子格納モジュールと、前記波長変換素子格納モジュールに溶接された連結ホルダと、前記連結ホルダに溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを具備し、前記XY調整用ホルダは前記波長変換素子ホルダに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記レンズホルダは前記XY調整用ホルダに対して溶接前は基本波の光軸の方向に移動可能であり、前記連結ホルダは前記波長変換素子格納モジュールに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記球面座ホルダは前記連結ホルダに対して溶接前は前記先端部を前記連結ホルダに当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能であることを特徴とする波長変換型レーザ装置を提供する。
上記第5の観点による波長変換型レーザ装置では、前記第2から第4の観点による波長変換型レーザ装置の製造方法を好適に実施できる。さらに、先端部を球面座に形成した球面座ホルダに半導体レーザを保持したので、半導体レーザから出射する基本波の光軸角度の調整が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置によれば、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことが出来るため、溶接に起因する品質低下を十分に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る波長変換型レーザ装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】実施例1に係る波長変換型レーザ装置の製造方法を示すフロー図である。
【図4】第一工程を示す断面図である。
【図5】設計された最適位置の説明図である。
【図6】第二工程を示す断面図である。
【図7】第三工程を示す断面図である。
【図8】第四工程を示す断面図である。
【図9】第五工程を示す断面図である。
【図10】第六工程を示す断面図である。
【図11】第七工程を示す断面図である。
【図12】第八工程を示す断面図である。
【図13】第九工程を示す断面図である。
【図14】本発明に係る波長変換型レーザ装置における溶接に起因する出力低下の数値例を示す図表である。
【図15】基本波と波長変換素子の結合面を示す概念図である。
【図16】基本波の光軸と波長変換素子の光軸がズレたときの出力低下を示す概念図である。
【図17】基本波と波長変換素子の結合面が光軸方向にズレたときの出力低下を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る波長変換型レーザ装置100を示す平面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。なお、光軸をZ軸とし、光軸に垂直な面をXY面とする。
この波長変換型レーザ装置100は、基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子5を押え部材6aで押えるように保持した波長変換素子ホルダ6と、波長変換素子ホルダ6に溶接されたXY調整用ホルダ7と、XY調整用ホルダ7に溶接され且つ基本波を集光して波長変換素子5に入射するレンズ3を保持したレンズホルダ4と、波長変換素子ホルダ6及びXY調整用ホルダ7及びレンズホルダ4を収容した波長変換素子格納モジュール8と、波長変換素子格納モジュール8に溶接された連結ホルダ9と、連結ホルダ9に溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つレンズ3に向けて基本波を出射する半導体レーザ1を保持した球面座ホルダ2とを具備している。
【0015】
なお、説明の複雑化を避けるために、半導体レーザ1やレンズ3を単一部品として表現するが、これらは複数の単一部品の組み合わせからなる複合部品であってもよい。
また、黒三角を用いて溶接に係る部分を示しているが、これは単なるシンボルであって、溶接部分の断面を示したものではない。
【0016】
XY調整用ホルダ7は、波長変換素子ホルダ6に対して、溶接前は、基本波の光軸に垂直な面内で移動可能である。
レンズホルダ4は、XY調整用ホルダ7に対して、溶接前は、基本波の光軸の方向に移動可能である。
連結ホルダ9は、波長変換素子格納モジュール8に対して、溶接前は、基本波の光軸に垂直な面内で移動可能である。
球面座ホルダ2は、連結ホルダ9に対して、溶接前は、先端部を連結ホルダ9に当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能である。
【0017】
波長変換素子5は、四角柱形状であり、モードフィールド径が4μm以下の導波路型波長変換素子である。
波長変換素子ホルダ6は、L形ブロック形状であり、コバール製である。押え部材6aは、L形板形状であり、コバール製である。
XY調整用ホルダ7は、円筒形状であり、SUS304製である。
レンズ3は、石英製である。
レンズホルダ4は、XY調整用ホルダ7に嵌合しうる円筒形状であり、SUS430製である。
波長変換素子格納モジュール8は、四角い箱形状であり、箱の側面はコバール製,底面は銅タングステン製である。また、箱,蓋とも半田,蓋閉め用の金メッキを施している。蓋板8aを外せば、上面を開放できる。また、基本波の透過窓8bと第二高調波の透過窓8cとが穿設されてる。透過窓8bは、気密を保つため、サファイア板8dで塞がれている。透過窓8cは、気密を保つため、サファイア板8eで塞がれている。
連結ホルダ9は、円筒形状であり、SUS430製である。
球面座ホルダ2は、先端部が球面に形成された円筒形状であり、SUS304製である。
【0018】
図3は、波長変換型レーザ装置100の製造方法を示すフロー図である。
ステップS1では、図4に示すように、端面がXY面に平行になるように波長変換素子ホルダ6を立て、波長変換素子ホルダ6の端面上にXY調整用ホルダ7を乗せ、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を嵌合し、レンズホルダ4の上方に球面座ホルダ2を配置する。そして、治具を用いて、XY調整用ホルダ7のXY位置(=XY面上での位置)、レンズホルダ4のZ位置(=Z軸上での位置)、球面座ホルダ2のXY位置およびZ位置およびZ軸に対する角度を、図5に例示する如き所定の関係に保持する。なお、図5において、2waはレンズ3に入射する基本波のビームウエスト位置での有効径、2wbは波長変換素子5の入射面での基本波の有効径、zaはレンズ3に入射する基本波のビームウエスト位置からレンズ3までの距離、zbはレンズ3から波長変換素子5の入射面までの距離であり、これらは設計上の位置である。
【0019】
次に、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、XY調整用ホルダ7のXY位置と、レンズホルダ4のZ位置と、球面座ホルダ2の角度とを、治具を用いて、調整する。
【0020】
ステップS2では、図6に示すように、溶接用レーザビームBwを当てて、波長変換素子ホルダ6にXY調整用ホルダ7を、スポット溶接する。溶接箇所の数や位置は、溶接に起因する位置ズレがなるべく残らないように配慮して選択する。
【0021】
ステップS3では、図7に示すように、第二高調波Loを実測して確認しながら、レンズホルダ4の溶接により生じると予測される位置ずれδだけ逆方向にレンズホルダ4の位置を、治具を用いて、オフセットする。
【0022】
ステップS3の第1具体例では、レンズホルダ4をオフセットしたときに生じる第二高調波Loの出力低下量を計算しておき、第二高調波の出力低下量を実測して、第二高調波Loの出力低下が計算値となるようにレンズホルダ4をオフセットする。
【0023】
ステップS3の第2具体例では、レンズホルダ4をオフセットした位置で第二高調波の出力が最大になる球面座ホルダ2の位置を計算しておき、その計算した位置に球面座ホルダ2を移動し、第二高調波Loの出力が実測上最大となるようにレンズホルダ4をオフセットする。
【0024】
ステップS4では、図8に示すように、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を溶接する。
【0025】
ステップS5では、図9に示すように、溶接した波長変換素子ホルダ6とXY調整用ホルダ7とレンズホルダ4とを、波長変換素子格納モジュール8に収容し、半田付けし、一体化する。
【0026】
ステップS6では、図10に示すように、端面がXY面に平行になるように波長変換素子格納モジュール8を立て、波長変換素子格納モジュール8の端面上に連結ホルダ9を乗せ、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を当接する。そして、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、治具を用いて、連結ホルダ9のXY位置、球面座ホルダ2のZ軸に対する角度を調整する。
【0027】
ステップS7では、図11に示すように、波長変換素子格納モジュール8に連結ホルダ9を溶接する。
【0028】
ステップS8では、図12に示すように、半導体レーザ1を駆動して第二高調波Loの出力を実測し、第二高調波Loの出力が最大になるように、治具を用いて、球面座ホルダ2のZ軸に対する角度を調整する。
【0029】
ステップS9では、図13に示すように、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を溶接する。このとき、溶接歪みを利用して、半導体レーザ1から出射される基本波の出射方向の微調整を行う。
【0030】
図14は、上記のようにして製造した製品10個についての、溶接に起因する出力低下の数値例を示す図表である。
数値は、各製品の、レンズホルダ4を溶接する前の第二高調波Loの出力値に対する、製品となった後の第二高調波Loの出力値の比である。
すべての製品が98%以上の第二高調波出力を維持している。
【0031】
図15は、基本波と波長変換素子5の結合面を示す概念図である。
図16は、基本波の光軸と波長変換素子5の光軸がズレた(=XY方向軸ズレ)ときの出力低下(計算値)を示す概念図である。
図17は、基本波と波長変換素子5の結合面が光軸方向にズレた(=Z方向ズレ)ときの出力低下(計算値)を示す概念図である。
【0032】
実施例1に係る波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置100によれば次の効果が得られる。
(1)ステップS1において、第二高調波Loが実測上最大出力になるようにXY調整用ホルダ7とレンズホルダ4と球面座ホルダ2の各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS2において、波長変換素子ホルダ6にXY調整用ホルダ7を好適に溶接できる。
(2)ステップS3において、第二高調波Loを実測しながら、レンズホルダ4を基本波の光軸の方向にオフセットするので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合ったオフセットを行うことができ、ステップS4において、XY調整用ホルダ7にレンズホルダ4を好適に溶接できる。
(3)ステップS6において、第二高調波Loが実測上最大出力になるように連結ホルダ9と球面座ホルダ2の各位置および姿勢の一方または両方を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS7において、波長変換素子格納モジュール8に連結モジュール9を好適に溶接できる。
(4)ステップS8において、第二高調波Loが実測上最大出力になるように球面座ホルダ2の角度を調整するので、溶接前に個々の製品のそれぞれに合った調整を行うことができ、ステップS9において、連結ホルダ9に球面座ホルダ2を好適に溶接できる。
(5)以上により、溶接に起因する品質低下を十分に抑制して、波長変換型レーザ装置100を製造できる。
(6)先端部を球面座に形成した球面座ホルダ2に半導体レーザ1を保持したので、半導体レーザ1から出射する基本波の光軸角度の調整が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の波長変換型レーザ装置の製造方法および波長変換型レーザ装置は、例えば光通信モジュールなどに利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体レーザ
2 球面座ホルダ
3 レンズ
4 レンズホルダ
5 波長変換素子
6 波長変換素子ホルダ
6a 押え部材
7 XY調整用ホルダ
8 波長変換素子格納モジュール
8a 蓋板
8b,8c 透過窓
8d,8e 石英板
9 連結ホルダ
100 波長変換型レーザ装置
Lo 第二高調波
Bw 溶接用レーザビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザから出射された基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定するときに、前記波長変換素子からの第二高調波出力が最大になるように前記半導体レーザと前記レンズホルダと前記波長変換素子とを配置し、前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレ量を第二高調波の出力低下分に換算し、その出力低下分を前記第二高調波を実測して確認しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットし、次いで前記レンズホルダを溶接することを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項2】
基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能なXY調整用ホルダと、基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持し且つ前記XY調整用ホルダに対して基本波の光軸の方向に移動可能なレンズホルダと、先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記XY調整用ホルダと前記レンズホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第一工程と、
前記波長変換素子ホルダに前記XY調整用ホルダを溶接する第二工程と、
前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、前記第二高調波を実測しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットする第三工程と、
前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接する第四工程と、
溶接した前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを、波長変換素子格納モジュールに収容して固定する第五工程と、
前記波長変換素子格納モジュールと該波長変換素子格納モジュールに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能な連結ホルダとを当接し、前記連結ホルダに前記球面座ホルダの前記先端部を当接し、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記連結ホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第六工程と、
前記波長変換素子格納モジュールに前記連結モジュールを溶接する第七工程と、
前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記球面座ホルダの角度を調整する第八工程と、
前記連結ホルダに前記球面座ホルダを溶接する第九工程と、
を含むことを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記第二高調波の出力が所定の値まで低下するように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記球面座ホルダを基本波の光軸の方向に所定量だけオフセットした状態で前記第二高調波の出力が最大になるように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項5】
基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに溶接されたXY調整用ホルダと、前記XY調整用ホルダに溶接され且つ基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持したレンズホルダと、前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを収容した波長変換素子格納モジュールと、前記波長変換素子格納モジュールに溶接された連結ホルダと、前記連結ホルダに溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを具備し、前記XY調整用ホルダは前記波長変換素子ホルダに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記レンズホルダは前記XY調整用ホルダに対して溶接前は基本波の光軸の方向に移動可能であり、前記連結ホルダは前記波長変換素子格納モジュールに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記球面座ホルダは前記連結ホルダに対して溶接前は前記先端部を前記連結ホルダに当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能であることを特徴とする波長変換型レーザ装置。
【請求項1】
半導体レーザから出射された基本波を集光して波長変換素子に入射するためのレンズを保持したレンズホルダを溶接により固定するときに、前記波長変換素子からの第二高調波出力が最大になるように前記半導体レーザと前記レンズホルダと前記波長変換素子とを配置し、前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレ量を第二高調波の出力低下分に換算し、その出力低下分を前記第二高調波を実測して確認しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットし、次いで前記レンズホルダを溶接することを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項2】
基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能なXY調整用ホルダと、基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持し且つ前記XY調整用ホルダに対して基本波の光軸の方向に移動可能なレンズホルダと、先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記XY調整用ホルダと前記レンズホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第一工程と、
前記波長変換素子ホルダに前記XY調整用ホルダを溶接する第二工程と、
前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接したときに前記レンズホルダが基本波の光軸の方向に位置ズレすると予測されるズレをキャンセルできるように、前記第二高調波を実測しながら、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットする第三工程と、
前記XY調整用ホルダに前記レンズホルダを溶接する第四工程と、
溶接した前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを、波長変換素子格納モジュールに収容して固定する第五工程と、
前記波長変換素子格納モジュールと該波長変換素子格納モジュールに対して基本波の光軸に垂直な面内で移動可能な連結ホルダとを当接し、前記連結ホルダに前記球面座ホルダの前記先端部を当接し、前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記連結ホルダと前記球面座ホルダの各位置および姿勢の一方または両方を調整する第六工程と、
前記波長変換素子格納モジュールに前記連結モジュールを溶接する第七工程と、
前記第二高調波を実測しながら、前記第二高調波が実測上最大出力になるように、前記球面座ホルダの角度を調整する第八工程と、
前記連結ホルダに前記球面座ホルダを溶接する第九工程と、
を含むことを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記第二高調波の出力が所定の値まで低下するように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の波長変換型レーザ装置の製造方法において、前記第三工程では、前記球面座ホルダを基本波の光軸の方向に所定量だけオフセットした状態で前記第二高調波の出力が最大になるように、前記レンズホルダを基本波の光軸の方向にオフセットすることを特徴とする波長変換型レーザ装置の製造方法。
【請求項5】
基本波を第二高調波に変換し出射する波長変換素子を保持した波長変換素子ホルダと、前記波長変換素子ホルダに溶接されたXY調整用ホルダと、前記XY調整用ホルダに溶接され且つ基本波を集光して前記波長変換素子に入射するレンズを保持したレンズホルダと、前記波長変換素子ホルダ及び前記XY調整用ホルダ及び前記レンズホルダを収容した波長変換素子格納モジュールと、前記波長変換素子格納モジュールに溶接された連結ホルダと、前記連結ホルダに溶接され且つ先端部が球面座に形成され且つ前記レンズに向けて基本波を出射する半導体レーザを保持した球面座ホルダとを具備し、前記XY調整用ホルダは前記波長変換素子ホルダに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記レンズホルダは前記XY調整用ホルダに対して溶接前は基本波の光軸の方向に移動可能であり、前記連結ホルダは前記波長変換素子格納モジュールに対して溶接前は基本波の光軸に垂直な面内で移動可能であり、前記球面座ホルダは前記連結ホルダに対して溶接前は前記先端部を前記連結ホルダに当接した状態を保って基本波の光軸に対する角度を変更可能であることを特徴とする波長変換型レーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−189729(P2012−189729A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52272(P2011−52272)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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