波長多重伝送システム
【課題】誤り率が非常にゆっくりと変動する環境においても、RZ−OOK方式等の強度変調の方式によるチャネルからRZ−DPSK方式等の位相変調の方式によるチャネルに与えられるXPMによる劣化による誤り訂正ができない時間帯が生じる事態を避ける。
【解決手段】変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、上記偏波スクランブラを、(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部とを備える。
【解決手段】変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、上記偏波スクランブラを、(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)伝送装置におけるチャネル増設の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信のトラフィックの増大に伴い、海底光ケーブルシステムの伝送容量増大の要求がある。このような場合、一般には次のような対応がとられる。
(1)新たに海底光ケーブルを敷設し、海底端局を建設する。
(2)ダークファイバと呼ばれる、敷設済みで使われていない海底光ケーブルに、新たに海底端局を追加する。
(3)既に納入された光通信装置に対し、新たにチャネルを追加する(アップグレード(UPGRADE)手法)。この場合、新たに海底光ケーブルや海底端局を追加する必要がないため、低価格で伝送容量を大きくすることができる点で望ましい。
【0003】
更に、(3)のアップグレード手法は、
(i)既に送受信側にある合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法。
(ii)既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法。
がある。
【0004】
ここで、(i)の合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法は、当然ながら空ポートがある場合にしか適用することはできず、汎用的な伝送容量増大の手法として用いることはできない。従って、(ii)の光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法が望ましい。ただし、空ポートがある場合には(i)の手法は有効であり、その適用を否定するものではない。
【0005】
図1は光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法によるチャネル増設の例を示す図である。(a)はチャネル増設前の状態を示しており、光ケーブル1の一端に送信側の既存光端局2Aが接続され、他端に受信側の既存光端局2Bが接続されている。既存光端局2Aは、チャネルch1〜ch4が割り当てられたトランスポンダ21−1A〜21−4Aと、その光出力を合波する合分波器22Aと、その光出力を増幅して光ケーブル1に伝える光増幅器23Aとを備えている。受信側の既存光端局2Bも同様な構成となっている。
【0006】
(b)はチャネル増設が行われた状態を示しており、光ケーブル1と送信側の既存光端局2Aの間に新規光端局3Aが挿入され、光ケーブル1と受信側の既存光端局2Bの間に新規光端局3Bが挿入されている。新規光端局3Aは、新たなチャネルch5〜ch8が割り当てられたトランスポンダ31−1A〜31−4Aと、その光出力を合波する合分波器32Aと、その光出力を増幅する光増幅器33Aと、その光出力のレベルを調整する可変光減衰器34Aと、既存光端局2Aの光出力のレベルを調整する可変光減衰器35Aと、可変光減衰器34Aの光出力と可変光減衰器35Aの光出力を合成する光カプラ36Aと、その光出力を増幅して光ケーブル1に伝える光増幅器37Aとを備えている。受信側の新規光端局3Bも同様な構成となっている。なお、(c)は各チャネルの波長の例を示しており、ここでは、既存のチャネルch1〜ch4は特性の良好な中心部分に配置され、新規のチャネルch5〜ch8はその外側に配置されている。ただし、この配置に限定されるものではなく、任意の配置でよい。
【0007】
一方、陸上光通信システムでは通常、符号化方式としてNRZ(Non Return to Zero)方式が用いられているのに対し、海底通信向けの光変調方式はRZ−OOK(Return to Zero On Off Keying)方式が使われている。RZ方式は送信機の構成が複雑になる代わりに、受信感度に優れ、また、光ファイバを長距離としても伝送による信号劣化(伝送劣化)が比較的小さいという利点があるためである。
【0008】
ここで、伝送劣化となるものは光ファイバの非線形効果に起因するものであり、自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation)と相互位相変調(XPM:Cross
Phase Modulation)とがある。SPMは、自己のチャネルの光パワーに応じて光ファイバの屈折率が変化し、自分自身に位相変調がかかるものである。この位相変調によって光スペクトルが広がることで、伝送ファイバの分散特性によって光波形が歪むものである。XPMは、隣接するチャネルの光パワーによって光ファイバの屈折率が変化し、位相変調がかかり、伝送ファイバの分散特性によって光波形が歪むものである。この他に光ファイバの非線形効果として四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)があるが、これはWDM信号のチャネル間の伝播速度に適度の差をつけることで回避することができる。具体的には、波長分散を−2〔ps/nm/km〕程度の光ファイバを用いることで回避することができる。
【0009】
近年さらに受信感度を改善するために、光の位相に信号を載せるRZ−DPSK(Differential Phase Shift Keying)方式の適用が検討されている(非特許文献1参照。)。このRZ−DPSK方式では、送受信機はRZ−OOK方式に比べて更に複雑になるが、受信感度はRZ−OOK方式に比べほぼ3dB改善することが期待されている。これは、受信側に1bit遅延光干渉計を設けることで光信号の「1」「0」に応じて出力経路を分け、1対のバランストフォトダイオードでそれぞれ受光する構成とすることができることにより、受信感度を約2倍にできるためである。
【0010】
以上の点より、既存の海底光ケーブルシステムにチャネル増設を行なう場合は、アップグレード手法のうち、既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法が望ましく、更に、新規に追加するチャネルにはRZ−DPSK方式を用いることが望ましいことがわかる。なお、アップグレード手法のうち、合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法にあっても、新規に追加するチャネルにはRZ−DPSK方式を用いることが望ましい。
【0011】
アップグレード手法においてRZ−DPSK方式を用いることで以下の利点が予想される。
(I)RZ−OOK方式よりもスペクトル広がりが小さいため、高密度にチャネルを実装することができる。
(II)累積分散が大きくRZ−OOK方式では大きなペナルティ(誤り率の悪化)が生じて伝送品質を確保できない場合でも、受信感度がよいために採用できる可能性がある。
【特許文献1】特開平10−285144号公報
【特許文献2】特開2001−103006号公報
【特許文献3】特開2005−65273号公報
【非特許文献1】JORNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.23,NO.1,JANUARY2005,pp95-103,”RZ-DPSK Field Trial Over 13100 km of Installed Non-Slope-MatchedSubmarine Fibers”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のアップグレード手法((i)(ii)の両者を含む)において、波長領域で隣接した、既存のトランスポンダがRZ−DPSK方式ではなく、RZ−OOK方式である場合、両者の相互作用により新規のトランスポンダの特性が劣化する可能性がある。RZ−DPSK方式は新たに用いられる方式であるのに対し、既存のトランスポンダはRZ−OOK方式である場合がほとんどであるため、RZ−OOK方式のチャネルとRZ−DPSK方式のチャネルが波長領域で隣接する可能性は高く、このような状況が発生する可能性は高い。
【0013】
図2はRZ−OOK方式のチャネルからRZ−DPSK方式のチャネルに与える影響の例を示す図である。図2において、RZ−OOK方式のチャネルは光強度に情報を載せており、光の位相に情報は載せられていない。一方、RZ−DPSK方式のチャネルは光の位相に情報を載せており、光強度は同じ波形の繰り返しとなる。従って、RZ−OOK方式のチャネルの光強度に依存したXPMがRZ−DPSK方式のチャネルに加わり、大きな信号劣化が生じる。
【0014】
ここで問題になっているXPMは、二つの信号光の相対的な偏波関係に依存する。すなわち、偏波が互いに直交する場合、XPMは最小になり、平行の場合に最大になる。さらに、実システムでは二つの信号光の相対的な偏波関係は端局装置の環境条件によって、非常にゆっくりと変動し(数秒以上の周期)、最悪偏波状態が数秒以上続いてバースト誤りになる。
【0015】
信号品質劣化に対しては、前方向符号誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)が用いられているが、FECは誤り率の悪い状態(訂正可能バースト誤り率を超える状態)がある一定の時間(最長はFECの訂正フレーム長)続いた場合、誤り訂正ができないことが知られている。このような状態になった場合、FEC後の出力の誤リ率は改善されないか、あるいは更に悪くなる。また、バースト誤りを訂正するにあたり、少なくとも2箇所以上、バースト誤りが生じていない部分が訂正フレーム内に存在する必要がある。これは、バースト誤りの生じている部分を補完するにあたり、その前後にバースト誤りの生じていない部分が必要だからである。
【0016】
図3は誤り率の変動周期と訂正フレーム周期の相対関係による誤り訂正の状態の例を示す図である。(a)は誤り率(BER:Bit Error Rate)の変動により訂正可能バースト誤り率を超える期間よりも訂正フレーム周期が短い場合を示しており、この場合、誤り訂正を行うと、誤り訂正不能状態が発生する。一方、(b)は誤り率の変動周期よりも訂正フレーム周期が長い場合を示しており、この場合、訂正可能バースト誤り率を超える期間があっても、訂正フレーム内に少なくとも2箇所以上(バースト誤りが全く発生していない場合を除く)のバースト誤りが生じていない部分が存在することで、バースト誤りの生じている部分の補完が行われ、誤り訂正の効果が期待できる。
【0017】
前述したように、誤り率の変動は端局装置の環境条件による二つの信号光の相対的な偏波関係によって生じるものであって、その変動周期を予め予測したり制御したりすることは困難であり、数秒以上の周期で非常にゆっくりと変動する場合がしばしば生ずることから、そのような場合に誤り訂正不能状態が発生する事態を防止することが望まれる。なお、RZ−OOK方式のチャネルの光強度に依存したXPMがRZ−DPSK方式のチャネルに加わる影響について説明したが、RZ−OOK方式以外の強度変調による方式(NRZ方式等)のチャネルが、RZ−DPSK方式以外の位相変調による方式(DPSK方式、DQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、RZ−DQPSK方式等)のチャネルに与える影響も同様になる。
【0018】
一方、特許文献1には、光学素子により誘起される偏光依存性によるフェージングおよびS/N比の変動を防止し、かつ高密度波長多重を行うために、入力光の偏波をスクランブルする技術が開示されているが、既存の光端局にチャネル増設する場合を想定したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0019】
また、特許文献2には、光送信装置に新たにチャネルを増設するにあたり、予め分散補償した偏波直交法のWDM方式信号を生成する技術が開示されているが、上述した強度変調によるチャネルの光強度に依存したXPMが位相変調によるチャネルに加わる影響を考慮したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0020】
また、特許文献3には、光通信システムでの偏波モード分散、偏波依存損失および偏波依存利得により生じるペナルティを緩和する技術が開示されているが、上述した強度変調によるチャネルの光強度に依存したXPMが位相変調によるチャネルに加わる影響を考慮したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0021】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、誤り率が非常にゆっくりと変動する環境においても、RZ−OOK方式等の強度変調の方式によるチャネルからRZ−DPSK方式等の位相変調の方式によるチャネルに与えられるXPMによる劣化による誤り訂正ができない時間帯が生じる事態を避けることのできる波長多重伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するため、このシステムでは、変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する場合に、上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に偏波スクランブラを挿入し、この偏波スクランブラを(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2以上の繰り返し周波数で駆動するようにしている。
【0023】
なお、このシステムは、アップグレード手法のうち、既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法に限らず、合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法にも適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
開示のシステムにあっては、変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムにおいて、強度変調のチャネルから位相変調のチャネルに与える影響により誤り率が非常にゆっくりと変動する環境においても、バースト誤りの長さが訂正フレーム周期より短くなり、更に、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上とすることができ、誤り訂正不能状態が発生することを避け、信号品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
図4は本発明の第1の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【0027】
図4において、送信側の既存光端局2Aの構成は図1(b)に示したものと同様である。ただし、既存のチャネルch1〜ch4は全て強度変調のRZ−OOK方式であるものとしている。受信側の既存光端局(2B)も同様な構成となっている。
【0028】
送信側の新規光端局3Aは、新規のチャネルch5〜ch8を全て位相変調のRZ−DPSK方式としており、既存のチャネルch1〜ch4との波長の関係は図1(c)に示したものを想定している。新規光端局3Aの構成は図1(b)に示したものとほぼ同様であるが、既存のチャネルch1、ch4からXPMの影響を受ける隣接する新規のチャネルch6、ch7のトランスポンダ31−2A、31−3Aの直後に偏波スクランブラ301−2、301−3が挿入され、その駆動のための信号発生部302および駆動部303が設けられる点が異なる。偏波スクランブラ301−2、301−3は、それぞれトランスポンダ31−2A、31−3Aの光出力に対して駆動部303から与えられる駆動信号に応じて偏波を変化させるものであり、偏波の周期は駆動信号の周期となり、偏波の変動幅は駆動信号の振幅に応じたものとなる。なお、受信側の新規光端局(3B)の構成は図1(b)に示したものと同様であり、この実施形態では偏波スクランブラの追加等は行わない。
【0029】
駆動部303から偏波スクランブラ301−2、301−3に与える駆動信号の駆動周波数は、以下のように決定する。すなわち、偏波スクランブラ301−2、301−3で偏波を変化させ、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上、生じさせ、誤り訂正ができるようにするものであることから、
駆動周波数 ≧ (位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
とする。ここで、(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)は、訂正フレームが位相変調信号のビットレートで運ばれるものであることから、訂正フレームの繰り返し周波数を示す。そして、これを2倍することで、訂正フレーム内に少なくとも2周期分の偏波の変化が生じることになる。これにより、バースト誤りの長さが訂正フレーム周期より短くなり、更に、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上とすることができ、誤り訂正不能状態が発生することを避けることができる。
【0030】
なお、偏波スクランブラ301−2、301−3は強度変調のチャネルch1、ch4と位相変調のチャネルch6、ch7の相対的な偏波状態を変化させることに意味があるので、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301−2、301−3に代え、既存光端局2Aのチャネルch1、ch4に対応するトランスポンダ21−1A、21−4Aの直後に偏波スクランブラを挿入するようにしてもよい。この場合、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301−2、301−3を残して新規光端局3Aと既存光端局2Aの両者で偏波スクランブルを行ってもよいが、その場合は駆動周波数を異ならせる必要がある。ちなみに、位相変調信号と強度変調信号の両方を合波した後(図では光カプラ36Aの後)に偏波スクランブラを配置しては効果がない。
【0031】
また、位相変調としてRZ−DPSK方式を例にあげたが、DPSK方式、DQPSK方式、RZ−DQPSK方式に対しても適用することができる。強度変調についても、RZ−OOK方式を例にあげたが、NRZ方式等に対しても適用することができる。
【0032】
また、説明の例ではチャネルch1→ch6とチャネルch4→ch7の影響のみを考えたが、累積波長分散が小さい場合は、他の新規のチャネルch5、ch8への影響を考慮する必要がある場合がある。その場合も同様に対応することができる。更に、図1(c)に示したような、RZ−OOK方式のチャネルch1〜ch4の両側にRZ−DPSK方式のチャネルch5〜ch8を配置した例につき説明したが、逆に、RZ−DPSK方式のチャネルの両側にRZ−OOK方式のチャネルを配置した場合も同様に対応が可能である。更に、任意の波長の割り当てに対しても対応が可能である。
【0033】
また、波長領域で位相変調信号と強度変調信号の2グループが存在する場合を示したが、3グループ以上の場合でも適用することができる。3グループ以上の場合、位相変調信号と強度変調信号の組み合わせに着目して同様に適用すればよい。
【0034】
<第2の実施形態>
図5は本発明の第2の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図であり、既存のチャネルからXPMの影響を受ける隣接する新規のチャネルの個々に偏波スクランブラを挿入するのではなく、合波した後の経路内に偏波スクランブラを挿入するようにしたものである。すなわち、偏波スクランブラは強度変調信号と位相変調信号の相対的な偏波状態を変化させることで効果があるので、このようにしても効果は同じになる。
【0035】
図5において、新規のチャネルch5〜ch8が割り当てられたトランスポンダ31−1A〜31−4Aの光出力はそのまま合分波器32Aに入力され、合分波器32A後段の光増幅器33Aの後に偏波スクランブラ301が挿入されている。その他の構成は図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0036】
なお、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301に代え、既存光端局2Aの光増幅器23Aの直後に偏波スクランブラを挿入するようにしてもよい。この場合、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301を残して新規光端局3Aと既存光端局2Aの両者で偏波スクランブルを行ってもよいが、その場合は駆動周波数を異ならせる必要がある。ちなみに、位相変調信号と強度変調信号の両方を合波した後(図では光カプラ36Aの後)に偏波スクランブラを配置しては効果がない。
【0037】
また、位相変調としてRZ−DPSK方式を例にあげたが、DPSK方式、DQPSK方式、RZ−DQPSK方式に対しても適用することができる。強度変調についても、RZ−OOK方式を例にあげたが、NRZ方式等に対しても適用することができる。
【0038】
また、説明の例ではチャネルch1→ch6とチャネルch4→ch7の影響のみを考えたが、累積波長分散が小さい場合は、他の新規のチャネルch5、ch8への影響を考慮する必要がある場合がある。その場合も同様に対応することができる。更に、図1(c)に示したような、RZ−OOK方式のチャネルch1〜ch4の両側にRZ−DPSK方式のチャネルch5〜ch8を配置した例につき説明したが、逆に、RZ−DPSK方式のチャネルの両側にRZ−OOK方式のチャネルを配置した場合も同様に対応が可能である。更に、任意の波長の割り当てに対しても対応が可能である。
【0039】
また、波長領域で位相変調信号と強度変調信号の2グループが存在する場合を示したが、3グループ以上の場合でも適用することができる。3グループ以上の場合、位相変調信号と強度変調信号の組み合わせに着目して同様に適用すればよい。
【0040】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、受信側の新規光端局(3B)のトランスポンダの受信部に偏波依存性がある場合への対処を行ったものである。図6はRZ−DPSK方式に対応した受信側トランスポンダの受信部の構成例を示す図であり、光入力に対して1bit遅延光干渉計を設けて光信号の「1」「0」に応じて出力経路を分け、1対のバランストフォトダイオード(PD)でそれぞれ受光し、増幅を経て識別再生回路に入力する構成となっている。ここで、1bit遅延光干渉計は一般に基板上に薄い光導波路を形成する構造となっているため、入力光の偏波によって導波性能が異なり、その結果、偏波スクランブラの影響によりバランストフォトダイオードでの受光レベルに変動を与え、誤検出を引き起こす可能性がある。
【0041】
図7は本発明の第3の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図であり、図4に示した第1の実施形態の構成に対し、受信側の新規光端局3Bの合分波器32Bとチャネルch6、ch7に対応するトランスポンダ31−2B、31−3Bの間に偏波スクランブラ304−2、304−3をそれぞれ挿入し、送信側と同期して偏波スクランブラ304−2、304−3を逆符号で駆動することにより、偏波の変化を打ち消すようにしている。その他の構成は図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0042】
図8は受信側で偏波スクランブラ304−2、304−3の駆動信号を生成するための構成例を示す図であり、偏波スクランブラ304−2(偏波スクランブラ304−3でも可)の前段に光カプラ305を設けて光電変換器306に光信号を分岐し、光電変換器306の出力信号からクロック抽出部307によりクロック信号を抽出し、そのクロック信号を駆動部308の入力として偏波スクランブラ304−2、304−3を駆動するようにしている。受信光から駆動周波数を検出できるのは、偏波スクランブラで微弱な位相変調がのっており、これが光ファイバを伝送中に強度変調に変化しているからである。
【0043】
また、図5のように送信側の新規光端局3Aにおける合波した後の経路内に偏波スクランブラを挿入するようにした場合にあっては、受信側の新規光端局3Bの分波の前(合分波器32Bの前)に偏波を打ち消すための偏波スクランブラを挿入すればよい。
【0044】
なお、送信側の新規光端局3Aにおける偏波スクランブラに偏光依存性があると、適切な偏波スクランブルがかからず、受信側の新規光端局3Bでの打ち消しが十分に行えない場合がある。この場合は図9に示すような偏光無依存の偏波スクランブラを送信側と受信側で用いることにより、打ち消しの効果を高めることができる。図9において、偏光無依存の偏波スクランブラは、LiNbO3等の基板上の導波路の途中に1/2波長板が設けられ、入力端から1/2波長板までと、1/2波長板から出力端までのそれぞれに、導波路を挟んで接地電極と駆動電極の対が設けられている。二つの駆動電極には同じ駆動信号が与えられる。この構造によれば、1/2波長板を通過することで偏光面が90度回転するため、前半部分で有効に位相変調がかからなかった偏光成分が、後半部分では有効に位相変調がかかるようになり、適切な偏波スクランブルをかけることができる。
【0045】
また、既存光端局(2A)側に偏波スクランブラを挿入する場合(チャネル毎に挿入する場合と合波後に挿入する場合の両者を含む)にあっては、増設した新規のチャネルに偏波の変化は現れないため、特に対策を施す必要はない。
【0046】
<第4の実施形態>
図10は本発明の第4の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図であり、送信側の各トランスポンダの直後に予め偏波スクランブラをそれぞれ接続しておき、チャネルデータテーブルの設定内容に応じて必要なチャネルについてのみ偏波スクランブラを有効にするようにしたものである。基本的な動作原理からは、図4に示した第1の実施形態の発展形ということができる。
【0047】
図10において、チャネルデータテーブル4には各チャネルについて波長、変調方式、設定出力等が設定されており、既存光端局2Aのトランスポンダ21−1A〜21−4Aおよび新規光端局3Aのトランスポンダ31−1A〜31−4Aは、チャネルデータテーブル4の設定内容に従って波長、変調方式、出力を設定する。また、新規光端局3Aの駆動部303はチャネルデータテーブル4の波長、変調方式、設定出力に基づいて、強度変調信号から位相変調信号へのXPMの影響があるチャネルを特定し、偏波スクランブラ301−1〜301−4のうちのそのチャネルに対応するものに駆動信号を与えることで偏波スクランブルをかける。
【0048】
なお、受信側の新規光端局(3B)にも同様の構成を適用することで、偏波依存性による影響を打ち消すようにすることができる。
【0049】
また、既存光端局2Aにも同様の構成を適用することができる。
【0050】
<第5の実施形態>
図11は本発明の第5の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図であり、受信側の符号誤り情報に基づいて送信側の偏波スクランブラの駆動周波数および駆動振幅を制御することで、最適な信号品質となるように調整するものである。なお、図4に示した構成をベースにしているが、既存光端局2A側に偏波スクランブラを設ける場合や、合波後に偏波スクランブラを設ける場合(図5)や、複数のチャネルに予め偏波スクランブラを設ける場合(図10)にも適用することができる。
【0051】
図11において、監視回路5は受信側の新規光端局3Bから符号誤り情報を取得し、それが適切な符号誤り率となるように、送信側の新規光端局3Aの信号発生部302の駆動周波数(発信周波数)および駆動部303の駆動振幅を制御する。なお、新規光端局3Bからの符号誤り情報の取得は、新規光端局3B側から新規光端局3A側へ向かう他の回線を用いて行う。
【0052】
図12は監視回路5の処理例を示すフローチャートである。図12において、監視回路5は処理を開始すると(ステップS1)、偏波スクランブラ301−2、301−3の駆動周波数を新たに信号発生部302に設定し(ステップS2)、駆動振幅を新たに駆動部303に設定する(ステップS3)。
【0053】
次いで、誤り率を計測して記憶し(ステップS4)、駆動振幅の可変範囲の全ての設定を行ったかどうか判断し(ステップS5)、全ての設定を行っていない場合(ステップS5のNO)は駆動振幅の新たな設定(ステップS3)に移行する。
【0054】
また、駆動振幅の可変範囲の全ての設定を行った場合(ステップS5のYES)は、駆動周波数の可変範囲の全ての設定を行ったかどうか判断し(ステップS6)、全ての設定を行っていない場合(ステップS6のNO)は駆動周波数の新たな設定(ステップS2)に移行する。
【0055】
駆動周波数の可変範囲の全ての設定を行った場合(ステップS6のYES)は、現状の駆動周波数および駆動振幅を最適な駆動周波数および駆動振幅に設定し(ステップS7)、処理を終了する(ステップS8)。
【0056】
このような処理を定期的に行うことで、環境変化に対して適切な状態を維持する。
【0057】
<総括>
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0058】
<付記>
(付記1)
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、
上記偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部と
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記2)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記3)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記4)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記5)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記6)
付記2に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラが挿入された位相変調のチャネルに対応する、受信側の光端局の分波後からトランスポンダの信号経路に挿入された偏波スクランブル打ち消し用の他の偏波スクランブラ
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記7)
付記4に記載の波長多重伝送システムにおいて、
受信側の光端局の位相変調のチャネルの分波前の信号経路に挿入された偏波スクランブル打ち消し用の他の偏波スクランブラ
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記8)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラは、偏光に依存しない性質を有する
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記9)
付記2に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラは、送信側の光端局の位相変調のチャネルの各トランスポンダの出力端から合波前の信号経路にそれぞれ挿入され、
チャネルデータテーブルの設定に応じて上記偏波スクランブラが有効化される
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記10)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
受信側の符号誤り情報に基づいて上記駆動部の駆動周波数および駆動振幅を制御する監視回路
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記11)
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムの制御方法であって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する
ことを特徴とする波長多重伝送制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法によるチャネル増設の例を示す図である。
【図2】RZ−OOK方式のチャネルからRZ−DPSK方式のチャネルに与える影響の例を示す図である。
【図3】誤り率の変動周期と訂正フレーム周期の相対関係による誤り訂正の状態の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図6】RZ−DPSK方式に対応した受信側トランスポンダの受信部の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図8】受信側で偏波スクランブラの駆動信号を生成するための構成例を示す図である。
【図9】偏光無依存の偏波スクランブラの構成例を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図12】監視回路の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 光ケーブル
2A、2B 既存光端局
21−1A〜21−4A トランスポンダ
22A 合分波器
23A 光増幅器
3A、3B 新規光端局
31−1A〜31−4A、31−1B〜31−4B トランスポンダ
32A、32B 合分波器
33A、33B 光増幅器
34A、34B、35A、35B 可変光減衰器
36A、36B 光カプラ
37A、37B 光増幅器
301、301−1〜301−4 偏波スクランブラ
302 信号発生部
303 駆動部
304−2、304−3 偏波スクランブラ
305 光カプラ
306 光電変換器
307 クロック抽出部
308 駆動部
4 チャネルデータテーブル
5 監視回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)伝送装置におけるチャネル増設の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信のトラフィックの増大に伴い、海底光ケーブルシステムの伝送容量増大の要求がある。このような場合、一般には次のような対応がとられる。
(1)新たに海底光ケーブルを敷設し、海底端局を建設する。
(2)ダークファイバと呼ばれる、敷設済みで使われていない海底光ケーブルに、新たに海底端局を追加する。
(3)既に納入された光通信装置に対し、新たにチャネルを追加する(アップグレード(UPGRADE)手法)。この場合、新たに海底光ケーブルや海底端局を追加する必要がないため、低価格で伝送容量を大きくすることができる点で望ましい。
【0003】
更に、(3)のアップグレード手法は、
(i)既に送受信側にある合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法。
(ii)既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法。
がある。
【0004】
ここで、(i)の合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法は、当然ながら空ポートがある場合にしか適用することはできず、汎用的な伝送容量増大の手法として用いることはできない。従って、(ii)の光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法が望ましい。ただし、空ポートがある場合には(i)の手法は有効であり、その適用を否定するものではない。
【0005】
図1は光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法によるチャネル増設の例を示す図である。(a)はチャネル増設前の状態を示しており、光ケーブル1の一端に送信側の既存光端局2Aが接続され、他端に受信側の既存光端局2Bが接続されている。既存光端局2Aは、チャネルch1〜ch4が割り当てられたトランスポンダ21−1A〜21−4Aと、その光出力を合波する合分波器22Aと、その光出力を増幅して光ケーブル1に伝える光増幅器23Aとを備えている。受信側の既存光端局2Bも同様な構成となっている。
【0006】
(b)はチャネル増設が行われた状態を示しており、光ケーブル1と送信側の既存光端局2Aの間に新規光端局3Aが挿入され、光ケーブル1と受信側の既存光端局2Bの間に新規光端局3Bが挿入されている。新規光端局3Aは、新たなチャネルch5〜ch8が割り当てられたトランスポンダ31−1A〜31−4Aと、その光出力を合波する合分波器32Aと、その光出力を増幅する光増幅器33Aと、その光出力のレベルを調整する可変光減衰器34Aと、既存光端局2Aの光出力のレベルを調整する可変光減衰器35Aと、可変光減衰器34Aの光出力と可変光減衰器35Aの光出力を合成する光カプラ36Aと、その光出力を増幅して光ケーブル1に伝える光増幅器37Aとを備えている。受信側の新規光端局3Bも同様な構成となっている。なお、(c)は各チャネルの波長の例を示しており、ここでは、既存のチャネルch1〜ch4は特性の良好な中心部分に配置され、新規のチャネルch5〜ch8はその外側に配置されている。ただし、この配置に限定されるものではなく、任意の配置でよい。
【0007】
一方、陸上光通信システムでは通常、符号化方式としてNRZ(Non Return to Zero)方式が用いられているのに対し、海底通信向けの光変調方式はRZ−OOK(Return to Zero On Off Keying)方式が使われている。RZ方式は送信機の構成が複雑になる代わりに、受信感度に優れ、また、光ファイバを長距離としても伝送による信号劣化(伝送劣化)が比較的小さいという利点があるためである。
【0008】
ここで、伝送劣化となるものは光ファイバの非線形効果に起因するものであり、自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation)と相互位相変調(XPM:Cross
Phase Modulation)とがある。SPMは、自己のチャネルの光パワーに応じて光ファイバの屈折率が変化し、自分自身に位相変調がかかるものである。この位相変調によって光スペクトルが広がることで、伝送ファイバの分散特性によって光波形が歪むものである。XPMは、隣接するチャネルの光パワーによって光ファイバの屈折率が変化し、位相変調がかかり、伝送ファイバの分散特性によって光波形が歪むものである。この他に光ファイバの非線形効果として四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)があるが、これはWDM信号のチャネル間の伝播速度に適度の差をつけることで回避することができる。具体的には、波長分散を−2〔ps/nm/km〕程度の光ファイバを用いることで回避することができる。
【0009】
近年さらに受信感度を改善するために、光の位相に信号を載せるRZ−DPSK(Differential Phase Shift Keying)方式の適用が検討されている(非特許文献1参照。)。このRZ−DPSK方式では、送受信機はRZ−OOK方式に比べて更に複雑になるが、受信感度はRZ−OOK方式に比べほぼ3dB改善することが期待されている。これは、受信側に1bit遅延光干渉計を設けることで光信号の「1」「0」に応じて出力経路を分け、1対のバランストフォトダイオードでそれぞれ受光する構成とすることができることにより、受信感度を約2倍にできるためである。
【0010】
以上の点より、既存の海底光ケーブルシステムにチャネル増設を行なう場合は、アップグレード手法のうち、既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法が望ましく、更に、新規に追加するチャネルにはRZ−DPSK方式を用いることが望ましいことがわかる。なお、アップグレード手法のうち、合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法にあっても、新規に追加するチャネルにはRZ−DPSK方式を用いることが望ましい。
【0011】
アップグレード手法においてRZ−DPSK方式を用いることで以下の利点が予想される。
(I)RZ−OOK方式よりもスペクトル広がりが小さいため、高密度にチャネルを実装することができる。
(II)累積分散が大きくRZ−OOK方式では大きなペナルティ(誤り率の悪化)が生じて伝送品質を確保できない場合でも、受信感度がよいために採用できる可能性がある。
【特許文献1】特開平10−285144号公報
【特許文献2】特開2001−103006号公報
【特許文献3】特開2005−65273号公報
【非特許文献1】JORNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.23,NO.1,JANUARY2005,pp95-103,”RZ-DPSK Field Trial Over 13100 km of Installed Non-Slope-MatchedSubmarine Fibers”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のアップグレード手法((i)(ii)の両者を含む)において、波長領域で隣接した、既存のトランスポンダがRZ−DPSK方式ではなく、RZ−OOK方式である場合、両者の相互作用により新規のトランスポンダの特性が劣化する可能性がある。RZ−DPSK方式は新たに用いられる方式であるのに対し、既存のトランスポンダはRZ−OOK方式である場合がほとんどであるため、RZ−OOK方式のチャネルとRZ−DPSK方式のチャネルが波長領域で隣接する可能性は高く、このような状況が発生する可能性は高い。
【0013】
図2はRZ−OOK方式のチャネルからRZ−DPSK方式のチャネルに与える影響の例を示す図である。図2において、RZ−OOK方式のチャネルは光強度に情報を載せており、光の位相に情報は載せられていない。一方、RZ−DPSK方式のチャネルは光の位相に情報を載せており、光強度は同じ波形の繰り返しとなる。従って、RZ−OOK方式のチャネルの光強度に依存したXPMがRZ−DPSK方式のチャネルに加わり、大きな信号劣化が生じる。
【0014】
ここで問題になっているXPMは、二つの信号光の相対的な偏波関係に依存する。すなわち、偏波が互いに直交する場合、XPMは最小になり、平行の場合に最大になる。さらに、実システムでは二つの信号光の相対的な偏波関係は端局装置の環境条件によって、非常にゆっくりと変動し(数秒以上の周期)、最悪偏波状態が数秒以上続いてバースト誤りになる。
【0015】
信号品質劣化に対しては、前方向符号誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)が用いられているが、FECは誤り率の悪い状態(訂正可能バースト誤り率を超える状態)がある一定の時間(最長はFECの訂正フレーム長)続いた場合、誤り訂正ができないことが知られている。このような状態になった場合、FEC後の出力の誤リ率は改善されないか、あるいは更に悪くなる。また、バースト誤りを訂正するにあたり、少なくとも2箇所以上、バースト誤りが生じていない部分が訂正フレーム内に存在する必要がある。これは、バースト誤りの生じている部分を補完するにあたり、その前後にバースト誤りの生じていない部分が必要だからである。
【0016】
図3は誤り率の変動周期と訂正フレーム周期の相対関係による誤り訂正の状態の例を示す図である。(a)は誤り率(BER:Bit Error Rate)の変動により訂正可能バースト誤り率を超える期間よりも訂正フレーム周期が短い場合を示しており、この場合、誤り訂正を行うと、誤り訂正不能状態が発生する。一方、(b)は誤り率の変動周期よりも訂正フレーム周期が長い場合を示しており、この場合、訂正可能バースト誤り率を超える期間があっても、訂正フレーム内に少なくとも2箇所以上(バースト誤りが全く発生していない場合を除く)のバースト誤りが生じていない部分が存在することで、バースト誤りの生じている部分の補完が行われ、誤り訂正の効果が期待できる。
【0017】
前述したように、誤り率の変動は端局装置の環境条件による二つの信号光の相対的な偏波関係によって生じるものであって、その変動周期を予め予測したり制御したりすることは困難であり、数秒以上の周期で非常にゆっくりと変動する場合がしばしば生ずることから、そのような場合に誤り訂正不能状態が発生する事態を防止することが望まれる。なお、RZ−OOK方式のチャネルの光強度に依存したXPMがRZ−DPSK方式のチャネルに加わる影響について説明したが、RZ−OOK方式以外の強度変調による方式(NRZ方式等)のチャネルが、RZ−DPSK方式以外の位相変調による方式(DPSK方式、DQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、RZ−DQPSK方式等)のチャネルに与える影響も同様になる。
【0018】
一方、特許文献1には、光学素子により誘起される偏光依存性によるフェージングおよびS/N比の変動を防止し、かつ高密度波長多重を行うために、入力光の偏波をスクランブルする技術が開示されているが、既存の光端局にチャネル増設する場合を想定したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0019】
また、特許文献2には、光送信装置に新たにチャネルを増設するにあたり、予め分散補償した偏波直交法のWDM方式信号を生成する技術が開示されているが、上述した強度変調によるチャネルの光強度に依存したXPMが位相変調によるチャネルに加わる影響を考慮したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0020】
また、特許文献3には、光通信システムでの偏波モード分散、偏波依存損失および偏波依存利得により生じるペナルティを緩和する技術が開示されているが、上述した強度変調によるチャネルの光強度に依存したXPMが位相変調によるチャネルに加わる影響を考慮したものではなく、上記の問題を解決することはできない。
【0021】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、誤り率が非常にゆっくりと変動する環境においても、RZ−OOK方式等の強度変調の方式によるチャネルからRZ−DPSK方式等の位相変調の方式によるチャネルに与えられるXPMによる劣化による誤り訂正ができない時間帯が生じる事態を避けることのできる波長多重伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するため、このシステムでは、変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する場合に、上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に偏波スクランブラを挿入し、この偏波スクランブラを(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2以上の繰り返し周波数で駆動するようにしている。
【0023】
なお、このシステムは、アップグレード手法のうち、既に納入された光通信装置の送信側および受信側に光分岐を設け、新規の光端局を設置する手法に限らず、合分波の空ポートにトランスポンダを追加する手法にも適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
開示のシステムにあっては、変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムにおいて、強度変調のチャネルから位相変調のチャネルに与える影響により誤り率が非常にゆっくりと変動する環境においても、バースト誤りの長さが訂正フレーム周期より短くなり、更に、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上とすることができ、誤り訂正不能状態が発生することを避け、信号品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
図4は本発明の第1の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【0027】
図4において、送信側の既存光端局2Aの構成は図1(b)に示したものと同様である。ただし、既存のチャネルch1〜ch4は全て強度変調のRZ−OOK方式であるものとしている。受信側の既存光端局(2B)も同様な構成となっている。
【0028】
送信側の新規光端局3Aは、新規のチャネルch5〜ch8を全て位相変調のRZ−DPSK方式としており、既存のチャネルch1〜ch4との波長の関係は図1(c)に示したものを想定している。新規光端局3Aの構成は図1(b)に示したものとほぼ同様であるが、既存のチャネルch1、ch4からXPMの影響を受ける隣接する新規のチャネルch6、ch7のトランスポンダ31−2A、31−3Aの直後に偏波スクランブラ301−2、301−3が挿入され、その駆動のための信号発生部302および駆動部303が設けられる点が異なる。偏波スクランブラ301−2、301−3は、それぞれトランスポンダ31−2A、31−3Aの光出力に対して駆動部303から与えられる駆動信号に応じて偏波を変化させるものであり、偏波の周期は駆動信号の周期となり、偏波の変動幅は駆動信号の振幅に応じたものとなる。なお、受信側の新規光端局(3B)の構成は図1(b)に示したものと同様であり、この実施形態では偏波スクランブラの追加等は行わない。
【0029】
駆動部303から偏波スクランブラ301−2、301−3に与える駆動信号の駆動周波数は、以下のように決定する。すなわち、偏波スクランブラ301−2、301−3で偏波を変化させ、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上、生じさせ、誤り訂正ができるようにするものであることから、
駆動周波数 ≧ (位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
とする。ここで、(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)は、訂正フレームが位相変調信号のビットレートで運ばれるものであることから、訂正フレームの繰り返し周波数を示す。そして、これを2倍することで、訂正フレーム内に少なくとも2周期分の偏波の変化が生じることになる。これにより、バースト誤りの長さが訂正フレーム周期より短くなり、更に、訂正フレーム内でバースト誤りが生じていない部分を2箇所以上とすることができ、誤り訂正不能状態が発生することを避けることができる。
【0030】
なお、偏波スクランブラ301−2、301−3は強度変調のチャネルch1、ch4と位相変調のチャネルch6、ch7の相対的な偏波状態を変化させることに意味があるので、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301−2、301−3に代え、既存光端局2Aのチャネルch1、ch4に対応するトランスポンダ21−1A、21−4Aの直後に偏波スクランブラを挿入するようにしてもよい。この場合、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301−2、301−3を残して新規光端局3Aと既存光端局2Aの両者で偏波スクランブルを行ってもよいが、その場合は駆動周波数を異ならせる必要がある。ちなみに、位相変調信号と強度変調信号の両方を合波した後(図では光カプラ36Aの後)に偏波スクランブラを配置しては効果がない。
【0031】
また、位相変調としてRZ−DPSK方式を例にあげたが、DPSK方式、DQPSK方式、RZ−DQPSK方式に対しても適用することができる。強度変調についても、RZ−OOK方式を例にあげたが、NRZ方式等に対しても適用することができる。
【0032】
また、説明の例ではチャネルch1→ch6とチャネルch4→ch7の影響のみを考えたが、累積波長分散が小さい場合は、他の新規のチャネルch5、ch8への影響を考慮する必要がある場合がある。その場合も同様に対応することができる。更に、図1(c)に示したような、RZ−OOK方式のチャネルch1〜ch4の両側にRZ−DPSK方式のチャネルch5〜ch8を配置した例につき説明したが、逆に、RZ−DPSK方式のチャネルの両側にRZ−OOK方式のチャネルを配置した場合も同様に対応が可能である。更に、任意の波長の割り当てに対しても対応が可能である。
【0033】
また、波長領域で位相変調信号と強度変調信号の2グループが存在する場合を示したが、3グループ以上の場合でも適用することができる。3グループ以上の場合、位相変調信号と強度変調信号の組み合わせに着目して同様に適用すればよい。
【0034】
<第2の実施形態>
図5は本発明の第2の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図であり、既存のチャネルからXPMの影響を受ける隣接する新規のチャネルの個々に偏波スクランブラを挿入するのではなく、合波した後の経路内に偏波スクランブラを挿入するようにしたものである。すなわち、偏波スクランブラは強度変調信号と位相変調信号の相対的な偏波状態を変化させることで効果があるので、このようにしても効果は同じになる。
【0035】
図5において、新規のチャネルch5〜ch8が割り当てられたトランスポンダ31−1A〜31−4Aの光出力はそのまま合分波器32Aに入力され、合分波器32A後段の光増幅器33Aの後に偏波スクランブラ301が挿入されている。その他の構成は図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0036】
なお、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301に代え、既存光端局2Aの光増幅器23Aの直後に偏波スクランブラを挿入するようにしてもよい。この場合、新規光端局3Aの偏波スクランブラ301を残して新規光端局3Aと既存光端局2Aの両者で偏波スクランブルを行ってもよいが、その場合は駆動周波数を異ならせる必要がある。ちなみに、位相変調信号と強度変調信号の両方を合波した後(図では光カプラ36Aの後)に偏波スクランブラを配置しては効果がない。
【0037】
また、位相変調としてRZ−DPSK方式を例にあげたが、DPSK方式、DQPSK方式、RZ−DQPSK方式に対しても適用することができる。強度変調についても、RZ−OOK方式を例にあげたが、NRZ方式等に対しても適用することができる。
【0038】
また、説明の例ではチャネルch1→ch6とチャネルch4→ch7の影響のみを考えたが、累積波長分散が小さい場合は、他の新規のチャネルch5、ch8への影響を考慮する必要がある場合がある。その場合も同様に対応することができる。更に、図1(c)に示したような、RZ−OOK方式のチャネルch1〜ch4の両側にRZ−DPSK方式のチャネルch5〜ch8を配置した例につき説明したが、逆に、RZ−DPSK方式のチャネルの両側にRZ−OOK方式のチャネルを配置した場合も同様に対応が可能である。更に、任意の波長の割り当てに対しても対応が可能である。
【0039】
また、波長領域で位相変調信号と強度変調信号の2グループが存在する場合を示したが、3グループ以上の場合でも適用することができる。3グループ以上の場合、位相変調信号と強度変調信号の組み合わせに着目して同様に適用すればよい。
【0040】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、受信側の新規光端局(3B)のトランスポンダの受信部に偏波依存性がある場合への対処を行ったものである。図6はRZ−DPSK方式に対応した受信側トランスポンダの受信部の構成例を示す図であり、光入力に対して1bit遅延光干渉計を設けて光信号の「1」「0」に応じて出力経路を分け、1対のバランストフォトダイオード(PD)でそれぞれ受光し、増幅を経て識別再生回路に入力する構成となっている。ここで、1bit遅延光干渉計は一般に基板上に薄い光導波路を形成する構造となっているため、入力光の偏波によって導波性能が異なり、その結果、偏波スクランブラの影響によりバランストフォトダイオードでの受光レベルに変動を与え、誤検出を引き起こす可能性がある。
【0041】
図7は本発明の第3の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図であり、図4に示した第1の実施形態の構成に対し、受信側の新規光端局3Bの合分波器32Bとチャネルch6、ch7に対応するトランスポンダ31−2B、31−3Bの間に偏波スクランブラ304−2、304−3をそれぞれ挿入し、送信側と同期して偏波スクランブラ304−2、304−3を逆符号で駆動することにより、偏波の変化を打ち消すようにしている。その他の構成は図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0042】
図8は受信側で偏波スクランブラ304−2、304−3の駆動信号を生成するための構成例を示す図であり、偏波スクランブラ304−2(偏波スクランブラ304−3でも可)の前段に光カプラ305を設けて光電変換器306に光信号を分岐し、光電変換器306の出力信号からクロック抽出部307によりクロック信号を抽出し、そのクロック信号を駆動部308の入力として偏波スクランブラ304−2、304−3を駆動するようにしている。受信光から駆動周波数を検出できるのは、偏波スクランブラで微弱な位相変調がのっており、これが光ファイバを伝送中に強度変調に変化しているからである。
【0043】
また、図5のように送信側の新規光端局3Aにおける合波した後の経路内に偏波スクランブラを挿入するようにした場合にあっては、受信側の新規光端局3Bの分波の前(合分波器32Bの前)に偏波を打ち消すための偏波スクランブラを挿入すればよい。
【0044】
なお、送信側の新規光端局3Aにおける偏波スクランブラに偏光依存性があると、適切な偏波スクランブルがかからず、受信側の新規光端局3Bでの打ち消しが十分に行えない場合がある。この場合は図9に示すような偏光無依存の偏波スクランブラを送信側と受信側で用いることにより、打ち消しの効果を高めることができる。図9において、偏光無依存の偏波スクランブラは、LiNbO3等の基板上の導波路の途中に1/2波長板が設けられ、入力端から1/2波長板までと、1/2波長板から出力端までのそれぞれに、導波路を挟んで接地電極と駆動電極の対が設けられている。二つの駆動電極には同じ駆動信号が与えられる。この構造によれば、1/2波長板を通過することで偏光面が90度回転するため、前半部分で有効に位相変調がかからなかった偏光成分が、後半部分では有効に位相変調がかかるようになり、適切な偏波スクランブルをかけることができる。
【0045】
また、既存光端局(2A)側に偏波スクランブラを挿入する場合(チャネル毎に挿入する場合と合波後に挿入する場合の両者を含む)にあっては、増設した新規のチャネルに偏波の変化は現れないため、特に対策を施す必要はない。
【0046】
<第4の実施形態>
図10は本発明の第4の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図であり、送信側の各トランスポンダの直後に予め偏波スクランブラをそれぞれ接続しておき、チャネルデータテーブルの設定内容に応じて必要なチャネルについてのみ偏波スクランブラを有効にするようにしたものである。基本的な動作原理からは、図4に示した第1の実施形態の発展形ということができる。
【0047】
図10において、チャネルデータテーブル4には各チャネルについて波長、変調方式、設定出力等が設定されており、既存光端局2Aのトランスポンダ21−1A〜21−4Aおよび新規光端局3Aのトランスポンダ31−1A〜31−4Aは、チャネルデータテーブル4の設定内容に従って波長、変調方式、出力を設定する。また、新規光端局3Aの駆動部303はチャネルデータテーブル4の波長、変調方式、設定出力に基づいて、強度変調信号から位相変調信号へのXPMの影響があるチャネルを特定し、偏波スクランブラ301−1〜301−4のうちのそのチャネルに対応するものに駆動信号を与えることで偏波スクランブルをかける。
【0048】
なお、受信側の新規光端局(3B)にも同様の構成を適用することで、偏波依存性による影響を打ち消すようにすることができる。
【0049】
また、既存光端局2Aにも同様の構成を適用することができる。
【0050】
<第5の実施形態>
図11は本発明の第5の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図であり、受信側の符号誤り情報に基づいて送信側の偏波スクランブラの駆動周波数および駆動振幅を制御することで、最適な信号品質となるように調整するものである。なお、図4に示した構成をベースにしているが、既存光端局2A側に偏波スクランブラを設ける場合や、合波後に偏波スクランブラを設ける場合(図5)や、複数のチャネルに予め偏波スクランブラを設ける場合(図10)にも適用することができる。
【0051】
図11において、監視回路5は受信側の新規光端局3Bから符号誤り情報を取得し、それが適切な符号誤り率となるように、送信側の新規光端局3Aの信号発生部302の駆動周波数(発信周波数)および駆動部303の駆動振幅を制御する。なお、新規光端局3Bからの符号誤り情報の取得は、新規光端局3B側から新規光端局3A側へ向かう他の回線を用いて行う。
【0052】
図12は監視回路5の処理例を示すフローチャートである。図12において、監視回路5は処理を開始すると(ステップS1)、偏波スクランブラ301−2、301−3の駆動周波数を新たに信号発生部302に設定し(ステップS2)、駆動振幅を新たに駆動部303に設定する(ステップS3)。
【0053】
次いで、誤り率を計測して記憶し(ステップS4)、駆動振幅の可変範囲の全ての設定を行ったかどうか判断し(ステップS5)、全ての設定を行っていない場合(ステップS5のNO)は駆動振幅の新たな設定(ステップS3)に移行する。
【0054】
また、駆動振幅の可変範囲の全ての設定を行った場合(ステップS5のYES)は、駆動周波数の可変範囲の全ての設定を行ったかどうか判断し(ステップS6)、全ての設定を行っていない場合(ステップS6のNO)は駆動周波数の新たな設定(ステップS2)に移行する。
【0055】
駆動周波数の可変範囲の全ての設定を行った場合(ステップS6のYES)は、現状の駆動周波数および駆動振幅を最適な駆動周波数および駆動振幅に設定し(ステップS7)、処理を終了する(ステップS8)。
【0056】
このような処理を定期的に行うことで、環境変化に対して適切な状態を維持する。
【0057】
<総括>
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0058】
<付記>
(付記1)
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、
上記偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部と
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記2)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記3)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記4)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記5)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記6)
付記2に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラが挿入された位相変調のチャネルに対応する、受信側の光端局の分波後からトランスポンダの信号経路に挿入された偏波スクランブル打ち消し用の他の偏波スクランブラ
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記7)
付記4に記載の波長多重伝送システムにおいて、
受信側の光端局の位相変調のチャネルの分波前の信号経路に挿入された偏波スクランブル打ち消し用の他の偏波スクランブラ
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記8)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラは、偏光に依存しない性質を有する
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記9)
付記2に記載の波長多重伝送システムにおいて、
上記偏波スクランブラは、送信側の光端局の位相変調のチャネルの各トランスポンダの出力端から合波前の信号経路にそれぞれ挿入され、
チャネルデータテーブルの設定に応じて上記偏波スクランブラが有効化される
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記10)
付記1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
受信側の符号誤り情報に基づいて上記駆動部の駆動周波数および駆動振幅を制御する監視回路
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
(付記11)
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムの制御方法であって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する
ことを特徴とする波長多重伝送制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】光分岐を設けて新規の光端局を設置する手法によるチャネル増設の例を示す図である。
【図2】RZ−OOK方式のチャネルからRZ−DPSK方式のチャネルに与える影響の例を示す図である。
【図3】誤り率の変動周期と訂正フレーム周期の相対関係による誤り訂正の状態の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図6】RZ−DPSK方式に対応した受信側トランスポンダの受信部の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図8】受信側で偏波スクランブラの駆動信号を生成するための構成例を示す図である。
【図9】偏光無依存の偏波スクランブラの構成例を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態にかかるシステムの送信側の構成例を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【図12】監視回路の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 光ケーブル
2A、2B 既存光端局
21−1A〜21−4A トランスポンダ
22A 合分波器
23A 光増幅器
3A、3B 新規光端局
31−1A〜31−4A、31−1B〜31−4B トランスポンダ
32A、32B 合分波器
33A、33B 光増幅器
34A、34B、35A、35B 可変光減衰器
36A、36B 光カプラ
37A、37B 光増幅器
301、301−1〜301−4 偏波スクランブラ
302 信号発生部
303 駆動部
304−2、304−3 偏波スクランブラ
305 光カプラ
306 光電変換器
307 クロック抽出部
308 駆動部
4 チャネルデータテーブル
5 監視回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、
上記偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部と
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項6】
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムの制御方法であって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する
ことを特徴とする波長多重伝送制御方法。
【請求項1】
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムであって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラと、
上記偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する駆動部と
を備えたことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルのトランスポンダの出力端から合波前の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の位相変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の波長多重伝送システムにおいて、
送信側の光端局の強度変調のチャネルの合波後の信号経路に上記偏波スクランブラが挿入されてなる
ことを特徴とする波長多重伝送システム。
【請求項6】
変調フォーマットが強度変調のチャネルと、変調フォーマットが位相変調のチャネルとが混在する波長多重伝送システムの制御方法であって、
上記二つのチャネルのどちらか一方の信号経路に挿入された偏波スクランブラを、
(位相変調信号のビットレート)/(訂正フレーム長)×2
以上の繰り返し周波数で駆動する
ことを特徴とする波長多重伝送制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−152728(P2009−152728A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327229(P2007−327229)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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