注入管装置および注入工法
【課題】低圧注入の下で可能な限り多くの注入材を可能な限り広範囲に効率的に注入することができる注入管装置および注入工法を提供する。
【解決手段】削孔1内に注入材吐出口8aを備えた注入外管8を建て込む。当該注入外管8内に注入内管9を建て込む。注入外管8に注入材吐出口8aを開閉する逆止弁5と、当該逆止弁5を含む管軸方向の一定範囲Lを覆う柱状空間導水部材6をそれぞれ取り付ける。削孔1と注入外管8との間の間隙3内にシールグラウト4を充填する。シールグラウト4としてセメントまたはベントナイトを充填する。
【解決手段】削孔1内に注入材吐出口8aを備えた注入外管8を建て込む。当該注入外管8内に注入内管9を建て込む。注入外管8に注入材吐出口8aを開閉する逆止弁5と、当該逆止弁5を含む管軸方向の一定範囲Lを覆う柱状空間導水部材6をそれぞれ取り付ける。削孔1と注入外管8との間の間隙3内にシールグラウト4を充填する。シールグラウト4としてセメントまたはベントナイトを充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入管装置および注入工法に関し、低圧注入の下で可能な限り大容量の注入材を可能な限り広範囲に均一に注入することができる。
【背景技術】
【0002】
薬液注入による地盤改良は、削孔内に挿入された注入管を用いてセメント系の固化材や水ガラス系の薬液や気泡混入溶液を地盤中に注入する方法であり、主に地盤の止水性向上、強度増加、液状化防止、空洞部の充填等を目的に行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、図13に図示するように、先端に、注入材吐出口20aと当該注入材吐出口20aにおける注入材の逆流を防止する逆止弁(図省略)を備えた複数の独立した注入管20を、吐出口20aが管軸方向に互いに間隔をおいて位置するように削孔21内に挿入し、各注入管20を介して地盤中に注入材を注入したときの注入圧によって、逆止弁が押し広げられて吐出口20aが開口することにより注入材が周囲の地盤中に吐出されるように構成された注入管装置に関する記載が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、図14(a),(b)に図示するように削孔21内に設置された注入外管22と注入外管22内に挿入された注入内管23とからなる注入管装置に関する記載が開示されている。
【0005】
注入外管22は、管軸方向に所定間隔をおいて形成された複数の注入材吐出口22aと、各注入材吐出口22aを挟んでその上下両側に取り付けられた袋体からなる外管パッカー22b,22bとを備え、各外管パッカー22bは、袋体にセメント系固化材などを充填することにより削孔21の内径より大きい径に膨張するように形成されている(図14(a)参照)。
【0006】
また、注入材吐出口22aの上下両側において削孔21の孔壁と注入外管22との間隙を外管パッカー22b,22bが塞ぐことにより、削孔21の孔壁と注入外管22との間に管軸方向に一定長連続する柱状浸透源24が形成されるよう構成されている。
【0007】
注入内管23は、先端に注入材吐出口23aと注入材吐出口23aを挟んでその上下両側に内管パッカー23b,23bを備え、内管パッカー23bは、地上からエアまたは流体を充填することにより膨張して注入外管22と注入内管23との間隙を注入材吐出口22aおよび23aの上下両側で塞ぐことにより、注入内管23を介して注入材浸透源24内に注入材を供給できるように構成されている(図14(b)参照)。
【0008】
そして、注入ステージA,B,Cにおいて、注入内管23を介して地上から柱状浸透源24内に注入材を供給することにより、大きな吐出速度で注入しても削孔21の孔壁から周囲の地盤中に低圧で浸透注入(土粒子間浸透)させることができる(図14(b)参照)。
【0009】
さらに、特許文献3には、図14(c)に図示するように、図14(a),(b)に図示する注入管装置において、上下の外管パッカー22b,22b間に形成された空間からなる柱状浸透源24内に透水性孔壁保護部材25を設置して孔壁崩壊を防止するようにした注入管装置に関する記載が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、図15に図示するように複数の注入口から注入材を同時注入する注入システムと注入工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2852721号
【特許文献2】特許第3509744号
【特許文献3】特許第3889408号
【特許文献4】特許第3724644号
【特許文献5】特許第2700614号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1,4に記載された注入管装置は、高圧ポンプ、圧力・流量管理装置、そしてこれらの監視制御する管理システムを用いて、予め設定された地点に注入材を点注入する装置であるため(図13,図16(a))、大きな吐出速度で注入すると、高圧注入となり脈状注入に陥り、地盤全体に注入材を均一注入することは困難であり、このため、少量の吐出で低圧注入を強いられるため多くの注入時間を必要とし、1本の注入管当りの注入効率がわるいものであった。
【0013】
特許文献2および特許文献3に記載された注入管装置は(図14,図17)、注入管の周囲に管軸方向に一定長連続する空間からなる柱状浸透源を形成し、柱状浸透源を介して周囲の地盤中に注入材を浸透注入させる装置であるが、これまでの柱状浸透源は、注入管と孔壁との間の柱状空間を外管パッカーによって管軸方向に一定区間密閉することにより形成するため、装置の構造が複雑化し、かつ作業手順が増える等の課題があり、また、透水性の異なる土層が細かく体積している地盤では、注入ステージを細かく組んで最適の注入を行うことが難しい等の理由により柱状浸透源を形成することが面倒であった。
【0014】
また、他の注入ステージ、或いは他の削孔内に注入された注入材が柱状浸透空間内に回り込んで空間を充填してしまい、その後の柱状注入ができなくなってしまうことがあった。
【0015】
ところで、地盤は通常、各層毎に透水係数や間隙率が異なるため、各層毎に地盤状況が異なるものである。この種の地盤への薬液注入に際しては、図16(a),(b)に図示するように、地盤中に注入管26を単独で注入しながら引き上げるか、或いは図13に図示するように複数本間隔をあけて挿入し、これら注入管26を通して注入ステージを上または下に移向しながら順次に注入材を注入していた。
【0016】
また、図16(c)〜(e)に図示するように、ケーシングaを用いたボーリングによって削孔した後、シールグラウト29内に設置した注入管(ダブルパッカー内管)26を挿入してゴムスリーブからなる逆止弁26aを通してシールグラウト29を突き破りながら注入ステージを上下に移行して注入材を注入していた。
【0017】
これらは、いずれも図16(a)に図示する点注入を基本にしているため、上述するような点注入の欠点があった。
【0018】
しかし、薬液注入などの注入工法において最も大きな課題は、透水係数の小さな微細砂層への浸透、或いは異なる土層からなる地盤への均質な浸透にある。
【0019】
微細砂層への透水性は通常、k=10-3〜10-4cm/秒であり、このような土層に対して地盤の破壊を起こさないように薬液を注入するには、浸透理論上、毎分1リットル以下〜数リットルの低吐出量で低圧注入しなければならないとされている。
【0020】
しかし、上述の公知の注入工法では、一本の注入管に対して、それぞれ一セットの注入ポンプを使用するが、工期をできるだけ短くしたいという経済性の面から、また、ポンプの性能限界の面から毎分10〜20リットルの吐出量とせざるを得ず、注入圧が高くなって地盤の破壊を起こすことがあり、このため、地盤が隆起したり、微細な土層の浸透固結が不充分となってしまうことがあった。
【0021】
また、異なる土層の地盤に対する注入では、土層が変化した際に、この土層変化に対応して注入速度を変化させたり、注入量をコントロールすることは実用上難しく、このため、ある層では注入材が多量に拡がったり、また、ある層では僅かしか浸透しなかったりすることが起こり、このような注入状態では、隣接する固結体同志の連続性が得られないという課題があった。
【0022】
なお、特許文献4は、複数の注入管を地盤中に配置し、これら複数の注入管を通してそれぞれの吐出口から地盤改良材を地盤中に注入するに当たり、一プラント中に多数のユニットポンプを備え、これら多数のユニットポンプを同時に作動する多連装ポンプにより前記改良材を各注入管に圧送し、吐出口から地盤中に注入するものである。
【0023】
上述の公知技術では、注入孔間隔を長くとり(1.5m〜4.0m)、広範囲の固結径を得るには低粘土で10時間以上のゲルタイムの注入材を用いる必要があった。
【0024】
ところが、長いゲルタイムの時間の注入材は一度地表面、或いは、地盤中の粗い層に逸脱を始めるとゲル化時間を短縮できないため注入を中止せざるを得ず、その間に注入細管内でグラウトがゲル化してしまう等の不都合さの問題があった。
【0025】
したがって、一つの注入ポイントから大きな吐出量で注入しても土粒子間浸透し、かつ各注入ポイント毎に最適の注入圧、注入速度で注入を行える注入工法が望まれていた。
【0026】
なお、図16(a),(b)は、点注入工法の原理を示し、図において、注入管26によって地盤中に注入された注入材は、注入管26の先端から地盤中に均等に注入されるのが理想であるが、注入材吐出口からの点注入であるため球状浸透となり、吐出量を多くすると高圧注入になり、脈状注入になりやすい。
【0027】
図16(c)〜(e)は、従来使用されている二重管ダブルパッカー工法である。ケーシングaで削孔した後(図16(c))、吐出口26aがゴムスリーブからなる逆止弁26bで覆われた注入外管26をケーシングa内に挿入し(図16(d))、シールグラウト29を充填しながら(図16(e))、ケーシングaを引き抜く。
【0028】
そして、シールグラウト29の固化を待って後、注入外管26内にダブルパッカーを有する注入内管を挿入して注入材を地盤内に注入する(図省略)。注入内管に注入材を注入すると、その注入圧で逆止弁26bが開くことにより地盤内に注入材が注入される。このため、注入が点注入で行われ、図16(a),(b)と同様の課題があった。
【0029】
また、図17(a),(b)は柱状注入工法の原理を示したものであり、図において、注入管26によって地盤中に注入された注入材は、上下の外管パッカー27,27間に所定長に形成された柱状浸透源28内に吐出され、この柱状浸透源28から周囲の地盤中に浸透注入される。その際、柱状浸透源28の孔壁から周囲の地盤中に注入材を均等に浸透注入させることができる。
【0030】
しかし、他の注入ステージからの注入材、或いは隣接した注入ステージからの注入材が外管パッカー27を迂回して柱状浸透源に注入してくるおそれがあった。
【0031】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、低圧注入下で可能な限り大容量の注入材を可能な限り広域な地盤に均一に注入でき、しかも柱状注入の可能な注入管装置および注入工法を提供することを目的とするものである。
【0032】
また、吐出量を大きくしても土粒子間浸透が可能なため、注入孔間隔を大きくとり、ゲルタイムも極端に長くしても(10数時間〜数十時間)、数時間のゲルタイムが可能になり、また長いゲル化時願でも隣接する吐出口に逆流する心配がなく、対象地盤が複雑でも土層毎に、或いは注入ステージ毎に確実な注入を可能にした注入管装置および注入工法を提供することを目的とするものである。
【0033】
さらに、これまでに開発されている広域な地盤に対する注入材の低圧浸透注入による多点注入ポンプの利点を生かしながら、低圧注入による土粒子間浸透を保ちながら各注入管の注入状況に応じて、それぞれのユニットポンプによる注入速度、注入圧、注入の中止、再開、ゲル化時間等を任意に管理し得、しかも多数のユニットポンプの作動を同時に管理して注入状況の全体を把握管理することを可能にした注入管装置および注入工法をすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
請求項1記載の注入管装置は、削孔内に設置された、注入材吐出口と逆止弁を備えた注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備えてなることを特徴とするものである(図1)。
【0035】
本発明は、吐出口を覆う逆止弁の外側に位置して柱状空間導水部材からなる柱状浸透源を注入管の管軸方向に一定長設けて、孔壁と注入管との間にシールグラウトを充填することにより、周囲の地盤中に柱状浸透源から大容量の注入材を低圧下で浸透注入できるようにしたものである。
【0036】
注入管には鋼管や硬質塩ビ管、或いは生分解性注入管などを用いることができ、また、柱状空間導水部材は注入管外周部の、注入材吐出口を有する部分を含む管軸方向の一定範囲に柱状浸透源を構成し得るもので、一定の厚さを有し、網状またはスポンジ状で、透水性と弾力性に富む素材から筒状または帯状に形成されたものが望ましいが、他に織布、不織布、透水性合成樹脂材、各種ドレーン材、さらには、全体に複数の注入材吐出口や注入材吐出スリットを有するチューブ、袋体或いは樹脂繊維などからなる網状体またはかご状体、さらには合成樹脂テープ等を用いることができる。また、これら柱状空間導水部材は、注入材吐出口と注入材吐出口における注入材の逆流を防止する逆止弁を含む注入管の管軸方向の一定範囲を覆うように取り付けるだけでよい。
【0037】
シールグラウトには、注入管を介して地中に注入材を注入する際に、注入材吐出口から吐出する注入材の注入圧によって容易にひび割れし、砕けるような低強度に固化するセメント材、ベントナイト、ベントナイト・セメント材、或いは石灰、石膏などを用いることができる。
【0038】
このシールグラウトによって削孔壁の崩壊が防止され、かつ注入管の各注入材吐出口が柱状空間導水部材の内側において逆止弁によって閉塞されていることにより、隣接する注入管の吐出口から吐出された注入材が吐出口から注入管内に逆流する心配がない。
【0039】
従来工法の特許文献5には、スパイラルテープが注入管の吐出口を覆う構造が記載されているが、このスパイラルテープはそれ自体が逆止弁として用いられるもので、隣接する吐出口からの注入材はスパイラルテープの隙間から吐出口に逆流してくるので、注入管として効果的に機能しない。
【0040】
柱状空間導水部材の長さは、通常0.1m〜3.0m程度、好ましくは0.2〜1.0mであり、注入管孔径よりも長く、その長さは対象とするステージの土層の厚さ、土層構造、透水性、毎分吐出量、注入圧力、材質や構造などによってきめればよい。
【0041】
なお、注入管装置として、注入材吐出口と当該注入材吐出口における注入材の逆流を防止する逆止弁を備え、かつ前記注入材吐出口が管軸方向に間隔をおいて位置するように削孔内に設置された複数の注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間の間隙内に充填されたシールグラウトとを備えた構成としてもよい。
【0042】
この場合の注入管は削孔内に個々に独立して挿入されてもよく、また一つに束ねて挿入されてもよい。また、各注入管の注入材吐出口の間隔と柱状空間導水部材の設置長さは、地盤の性状に応じて任意に設定することができる。
【0043】
柱状空間導水部材は、注入材吐出口と逆止弁を有する部分の一定範囲を覆うように個々に筒状に取り付けてもよく、または注入材吐出口と逆止弁を有する部分の一定範囲を覆うように管軸方向に螺旋状に連続して取り付けてもよい(図2,3,4参照)。
【0044】
請求項2記載の注入管装置は、削孔内に設置された注入外管と、当該注入外管内に設置された注入内管と、前記削孔の孔壁と前記注入外管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備え、前記注入外管は注入材吐出口および逆止弁と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材とを備えなることを特徴とするものである (図5〜図8参照)。
【0045】
なお、注入材吐出口、逆止弁および柱状空間導水部材は、注入外管の管軸方向に所定間隔おきに複数設けてもよい。
【0046】
この実施形態によれば、注入内管として図9(a)に図示する注入内管を用いることにより、注入外管内で注入内管を上下方向に移動させて柱状空間導水部材の注入ステージ毎に注入材を注入することができ、また、図9(b)に図示する注入内管を用いることにより、一つの注入地点において複数の注入ステージ内に注入材を同時に注入することができる。
【0047】
請求項3記載の注入管装置は、請求項1または2記載の注入管装置において、柱状空間導水部材の上下両側、またはいずれか一側にパッカーを備えてなることを特徴とするものである。
【0048】
本発明は、孔壁と注入管との間の間隙をシールグラウトで充填した上、さらに各注入材吐出口の上下両側を土中パッカーによって塞ぐことにより、注入材の他のステージへの逸送を確実に防止し、特定の注入ステージの地層内に注入材確実に浸透注入させることができる(図5(b)参照)。
【0049】
外管パッカーをその間隔を狭めて設置してその間にゲル化タイムの短いグラウトや懸濁型グラウトを粗詰め注入してもよい。
【0050】
請求項4記載の注入管装置は、請求項1〜3のいずれかひとつに記載された複数の注入管装置を用いた注入装置において、各注入管装置に導管を介して接続された注入材貯蔵タンクと、各導管に接続され、かつそれぞれ独立した駆動源で作動するように構成され、注入材を前記貯蔵タンクから各注入管装置にそれぞれ圧送する複数のユニットポンプと、各導管に接続され、注入材の流量と圧力を検出する流量圧力検出器と、各導管に接続され、注入材の圧送を開始および遮断するバルブと、各ユニットポンプに接続されたユニットポンプの回転数変則機と、前記ユニットポンプ、流量圧力検出器、バルブおよび回転変則機を制御する集中管理装置とを備え、前記注入管装置の注入管はそれぞれ複数の注入地点に所定間隔をおいて形成された削孔内に挿入され、各注入地点における流量および/または圧力データの信号が前記流量圧力検出器から集中管理装置に送信され、各注入地点における注入状況を前記集中管理装置で一括監視しながら前記貯蔵タンクから複数の注入地点の注入管にそれぞれ各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力、注入量で圧送し、複数の注入地点に同時に、或いは選択的に注入するように構成されてなることを特徴とするものである。
【0051】
本発明によれば、複数の注入地点において複数の地層内に注入材を同時に、或いは選択的に注入することができる。また、図4および図10〜図12に図示するように、複数の注入管から同時に、或いは任意に注入することができる。
【0052】
なお、各注入管装置の注入内管を昇降させる注入管昇降装置と注入内管の注入ステージを管理する注入ステージ管理装置を設置することもできる(図10〜12)。
【0053】
注入内管として図9(a)に図示するような注入内管を用い、かつ各注入地点において、注入管昇降装置によって注入内管を昇降させることにより、複数の注入地点に同時に、かつ各注入地点の各地層内に順に注入材を注入することができる。
【0054】
請求項5記載の注入工法は、請求項1に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入管を挿入する工程と、削孔の孔壁と注入管との間の空隙内にシールグラウトを充填する工程と、注入管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とするものである。
【0055】
請求項6記載の注入工法は、請求項2または3に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入外管を、当該注入外管内に注入内管をそれぞれ挿入する工程と、前記削孔と注入外管との間の間隙内にシールグラウトを充填する工程と、前記注入内管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とするものである。
【0056】
請求項7記載の注入工法は、請求項5または請求項6に記載の注入工法において、注入材として酸性から中性領域のシリカ溶液を注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0057】
本発明は以上の構成からなり、削孔内に建て込まれた注入管に当該注入管に設けられた注入材吐出口を開閉する逆止弁と、当該逆止弁を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材をそれぞれ取り付け、かつ前記削孔壁と前記注入管との間の間隙内にシールグラウトを充填することにより構成され、特に削孔壁と注入管との間のシールグラウトで覆われた柱状空間導水部材からなる柱状浸透源が管軸方向に一定範囲に形成されることにより、削孔の孔壁から周囲の地盤中に大容量の注入材を注入しても、注入材は柱状空間導水部材で覆われた一定長さの範囲からシールグラウトを破って柱状注入により低圧注入することができる。また、柱状浸透源はシールグラウト内に柱状空間導水部材によって容易に形成することができる。
【0058】
また、各柱状空間導水部材(柱状浸透源)からの注入材の注入圧によってシールグラウトは、一定長破壊されてそれぞれの柱状空間導水部材から独立して所定の注入ステージに最適の注入が行われる。
【0059】
また、各注入ステージでは、シールグラウトと柱状空間導水部材と注入管の注入材吐出口を覆う逆止弁によって他の注入ステージ、或いは他の注入管からの注入材が注入管内に逆流したり、吐出口を塞いだりすることなく、また未注入の柱状空間や注入材吐出口はシールグラウトの存在によって閉塞されることがないので、計画通りの注入、或いは繰り返し注入が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は注入管の正面図、(b),(c)はその要部拡大断面図である。
【図2】図1に図示する注入管装置の配置例を示す概要図である。
【図3】(a)〜(c)は、削孔内に注入管を設置する手順を示す断面図である。
【図4】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は複数の注入管を結束して設置した場合の正面図、(b),(c)はその要部拡大断面図である。
【図5】注入管装置の一実施形態を示し、(a),(b)はは注入管の正面図である。
【図6】図5に図示する注入管装置の要部を示し、(a),(b)は要部拡大断面図である。
【図7】スリットを有する柱状空間導水部材を有する注入管装置の一実施形態を示し、(a),(b)は注入管の正面図、(c)は(a),(b)における横断面図である。
【図8】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は透水性マットやネットを筒状やかご状にして注入管を覆った柱状空間導水部材の断面図、(b)は透水性マットを注入管に螺旋状に巻きつけた柱状空間導水部材の断面図、(c)は(a),(b)における横断面図である。
【図9】(a),(b)は、注入内管の一例を示す一部破断正面図である。
【図10】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図11】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の複数の注入ステージの地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図12】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の注入ステージの地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図13】従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図14】(a),(b),(c)は、従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図15】従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図16】注入工法の原理を示す説明図である。
【図17】注入工法の原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1(a),(b),(c)は、本発明の一実施形態を示し、図において、削孔1内に注入管2が建て込まれている。注入管2は鋼管、硬質塩ビ管、或いは合成樹脂製チューブ、さらには生分解性管などから形成されている。
【0062】
削孔1の孔壁と注入管2との間隙3内には、シールグラウト4が削孔1の全長に渡って、或いは注入材の注入領域に部分的に充填されている。
【0063】
シールグラウト4は、削孔1内で固化することにより注入管2を削孔1内に固定し、削孔1の孔壁崩壊を防止し、かつ削孔1内に注入された注入材が孔壁と注入管2間の間隙3内を注入管2の管軸方向に逸送するのを防止する働きを有するものであり、固化しても注入材の吐出圧で容易に砕かれるような低強度のセメントモルタルやベントナイト、或いは低アルカリ性セメント、石灰、石膏などが用いられている。
【0064】
注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に一個または複数の注入材吐出口2aが側方に開口して形成されている。注入材吐出口2aはゴムスリーブ等の注入圧で膨張し、加圧されなければ閉じる弾力性のある管体や袋体などからなる逆止弁5によって塞がれている。
【0065】
逆止弁5は注入管2を介して地上から注入された注入材が吐出口2aから地中に吐出する際の吐出圧によって押し広げられることにより、吐出口2aが開くように取り付けられている。
【0066】
注入管2の先端には柱状空間導水部材6が取り付けられている。柱状空間導水部材6は、注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む注入管2先端の外周を注入管2の管軸方向に一定区間Lを覆うように取り付けられている。
【0067】
そして、削孔1内の孔壁と注入管2間の間隙3内にシールグラウト4が充填されると、注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含むその上下方向の一定区間L内に、シールグラウト4によって覆われた柱状浸透源7が構成される。
【0068】
柱状空間導水部材6は一定厚さを有し、かつ透水性を有する網状体などから筒状に形成されている。そして、柱状空間導水部材6は図1(a),(b)に図示するように、注入管2の先端に注入材吐出口2aを有する部分を含む注入管2先端の外周を注入管2の管軸方向に一定区間Lを覆うように取り付けられている。
【0069】
なお、柱状空間導水部材6は、他に織布、不織布、スリットを有する合成樹脂膜材や帯状合成樹脂材、或いはかごや各種ドレーン材などから注入管2の外周を覆う管状、または図1(c)に図示するような注入管2の外周に沿って連続する螺旋状に形成されている。
【0070】
いずれの場合においても、柱状空間導水部材6は素材自体が透水性であるか、素材自体は不透水性であっても隙間やスリットを有することにより透水性を有して形成されている。
【0071】
そして、注入管2に注入された注入材は、注入材吐出口2aから逆止弁5を押し広げて柱状浸透源7としての柱状空間導水部材6内に吐出され、かつ注入材の吐出圧力によって柱状空間導水部材6の外側に押し出され、シールグラウト4を破壊して周辺の地盤中に浸透注入される。
【0072】
なお、注入材吐出口2aは逆止弁5によって覆われているため、一度破壊されたシールグラウト4の割れ目から他の注入ステージに吐出された注入材、または他の注入材吐出口から吐出された注入材が注入管2内に逆流することはない。また、同じ注入材吐出口2aから繰り返し注入することができる。
【0073】
また、柱状空間導水部材6の網目は、シールグラウト4が入り込まないような網目状に形成され、また、シールグラウト4は粘性が大きいため、注入材が柱状浸透導水部材6の網目やスリット、或いは螺旋状の隙間から注入管2内に逆流することはないので、柱状浸透源7の機能を保持することができる。
【0074】
このような構成において、注入管2を介して注入された注入材は、注入材の注入圧によって逆止弁5を押し広げ、注入材吐出口2aから柱状空間導水部材6内に、或いは柱状空間導水部材6と注入管との間に吐出されて柱状浸透源7を形成する。
【0075】
そして、注入材は柱状浸透源7から周囲に押し出され、その吐出圧によってシールグラウト4を破り、削孔1の孔壁から周囲の地盤中に浸透注入(土粒子間浸透)される。
【0076】
その際、削孔1の孔壁と注入管2との間隙3内は、その全長、或いは所定の注入深度の範囲がシールグラウト4によって充填されていることにより、注入材が管軸方向に逸送することはない。また、注入管2の管軸方向に隣接した柱状浸透源7内に、或いは隣接した他の注入管内に注入材が流入することもない。
【0077】
図2は、図1(a),(b),(c)に図示する注入管装置の設置例を示したものであり、図示するように複数の注入管2が地盤中に注入深さを変えて、一定間隔おきに設置されている。
【0078】
このような配置で注入を行うことにより、地盤に長さLに対応した大きな固結体を効率的に形成することができ、地盤改良を急速に行うことができる。
【0079】
本発明は、柱状浸透源7の長さLを大きくすることにより、吐出量を大きくしても低圧で注入することができると、注入孔間隔Dを大きくすることができるため、大きな浸透の固結体を形成して効果的でかつ経済的に広範囲の地盤改良を行うことができるため、液状化対策工に適している。
【0080】
特に、近年の液状化工法の性能設計では、液状化しやすい層を完全に固結しなくても、図2に図示するように未固結部を残して経済性を得ることができる。このような目的のために長いゲル化時間と耐久性にすぐれた弱アルカリ性、中性、酸性領域(pH1〜10)のシリカ溶液を注入するのが望ましい。
【0081】
このようなグラウトは水ガラスのアルカリを酸で中和したシリカゾルグラウト、或いは水ガラスをイオン交換樹脂やイオン交換膜で処理したシリカグラウト、或いはこれらの混合物などを上げることができる。
【0082】
図3(a)〜(c)は、注入管2を地盤中に設置する方法を示したものであり、最初にケーシングaと掘削機bを用いて削孔1を形成する。次に、先端に吐出口2aを有し、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6が取り付けられた注入管2を削孔1のケーシングa内に建て込む。
【0083】
そして、削孔1のケーシングa内にシールグラウト4を充填しながらケーシングaを徐々に引き抜く。以上の手順により削孔1内に注入管2を建て込むことができる。
図4(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示し、削孔1内に複数の注入管2が建て込まれている。
【0084】
各注入管2の先端は、図1(b),(c)で説明した注入管1の先端と同じように構成されている。すなわち、注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口2aが形成され、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。柱状空間導水部材6は、管状または螺旋状に形成されている(図2(b),(c))。
【0085】
さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。そして、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が削孔1の全長にわたって充填されている。
【0086】
このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに形成されている。そして、複数の注入管2に注入材を同時に注入することにより、複数の注入ステージA,B,C,D内に注入材を同時に注入することができる。
【0087】
図5(a),(b)と図6、並びに図7は、同じく本発明の他の実施形態を示し、削孔1内に注入外管8が建て込まれ、各注入外管8内に注入内管9が建て込まれている。
【0088】
注入外管8と注入内管9はいずれも鋼管または硬質塩ビ管、または生分解性注入管などから形成されている。また、削孔1の孔壁と注入外管8との間隙3内にシールグラウト4が削孔1の全長、或いは地盤改良領域区間内にわたって充填されている。
【0089】
注入外管8の先端は閉塞され、その側部に複数の注入材吐出口8aが注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに形成されている。また、各吐出口8aに逆止弁5が取り付けられ、さらにその外側に管状(図6(a))または螺旋状(図6(b))またはスリットが設けられたチューブ状(図7(a),(b))の柱状空間導水部材6が取り付けられている。
【0090】
柱状空間浸透部材6は、図6(a),(b)や図7(a),(b)に図示するように各吐出口8aを含む注入外管8の外周を注入外管8の管軸方向に一定区間Lを覆うように、かつ注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに複数取り付けられている。
【0091】
また、柱状空間導水部材6は、吐出口8aと逆止弁5を覆うように注入外管8の外周に螺旋状に取り付けられる場合もある。
【0092】
このように構成されていることにより、図6(a)の実施形態においては、孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている。
【0093】
また、図6(b)の実施形態においては、各区間L内を孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向に螺旋状に連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている。
【0094】
また特に、図5(b)に図示する実施形態において、注入外管8の各柱状空間導水部材6,6間に袋体やゴムチューブ等からなる外管パッカー8bが取り付けられている。これらの外管パッカー8bは、袋体やゴムチューブ等からなる袋体に地上からセメント系固化材や薬液などを充填することにより削孔1の内径より大きい径に膨張するように形成されている。
【0095】
そして、各柱状空間導水部材6の上下両側において削孔1の孔壁と注入外管8との間隙を外管パッカーが膨張して塞ぐことにより、削孔1の孔壁と注入外管8との間の間隙3を管軸方向に複数に区画することができるようになっている。
【0096】
また、外管パッカー8bを二段形成し、その間から瞬結性グラウトや懸濁型グラウトを注入して粗い土層や軟らかい注入材が逸送しやすい土層に順次注入してから、柱状空間導水部材から浸透性グラウトを注入してもよい。
【0097】
本発明によれば、孔壁と注入外管8との間の間隙をシールグラウト4で充填した上、さらに各注入材吐出口8aの上下両側を外管パッカー8b,8bによって塞ぐことにより、注入材の他のステージへの逸送を確実に防止し、特定の注入ステージの地層内に注入材を確実に浸透注入させることができる。
【0098】
図7(a),(b),(c)は、同じく本発明の他の実施形態を示し、特に柱状空間導水部材6が透水性の織布やスリットを有する合成樹脂膜材などから管軸方向に連続する袋状またはチューブ状に形成された注入管装置を示したものである。
【0099】
そのうち、図7(a)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む管軸方向の一定長を覆う定長さに形成され、各注入材吐出口2aを有する部分を覆うように個々に取り付けられ、かつその上下両端部が注入管2に密着した状態に固着されている。
【0100】
また、図7(b)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が複数の注入材吐出口2aを覆うように注入管1の管軸方向に連続して形成され、注入管1の管軸方向に連続して取り付けられ、かつ各注入材吐出口2aを有する部分の上下両側部6a,6aにおいて、接着材などにより注入管1に密着した状態に固着されている。なお、図7(c)は、図7(a),(b)における横断面図である。
【0101】
図8(a),(b),(c)は、同じく本発明の他の実施形態を示し、特に柱状空間導水部材6が透水性網材から注入管2の管軸方向に連続する管状または注入管2の管軸方向に連続する螺旋状に形成された注入管装置を示したものである。
【0102】
そのうち、図8(a)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む管軸方向の一定長を覆う管状に形成され、各注入材吐出口2aを有する部分を覆うように個々に取り付けられ、かつその上下両端部6a,6aが注入管2に接着材などによって密着した状態に固着されている。
【0103】
また、図8(b)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が複数の注入材吐出口2aを覆うように注入管1の管軸方向に螺旋状に連続して形成され、注入管1の管軸方向に連続して取り付けられている。なお、図8(c)は、図8(a),(b)における横断面図である。
【0104】
図9(a),(b)は特に注入内管を示し、注入内管9の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口9aが形成され、当該吐出口9aを挟んでその上下両側に一組のパッカー9b,9bが取り付けられている。パッカー9bは、注入外管8と注入内管9との間隙内においてエアまたは流体を注入することにより膨張し、吐出口8aの上下両側を密閉し得るように構成されている。
【0105】
このような構成において、注入内管9の吐出口9aと注入外管8の吐出孔8aが同一レベルに位置するように注入内管9を注入外管8内にセットすると共に、パッカー9bを膨張させて注入外管8と注入内管9との間隙に注入内管9から柱状浸透源7に連通じる注入材流路を形成する。
【0106】
そして、注入内管9を介して地中に注入材を注入すると、注入材は、その注入圧によって逆止弁5を開け、吐出口8aから柱状浸透源7内に吐出される。そして、柱状浸透源7からシールグラウト4を破り、掘孔1の孔壁から周囲の地盤中に浸透注入することができる。
【0107】
なお、注入内管は単管でも複数の管を有していてもよく、内管パッカーを形成するためのパッカー流路を有していてもよく、或いは内管流路を通る注入材の流体圧でパッカーが作動してもよい。
【0108】
また、注入外管8内で注入内管9を管軸方向に移動することにより、各注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順に浸透注入させることができる。
【0109】
なお、地盤状況に応じて柱状空間導水部材6の長さを調整することができる。例えば、透水性の小さい層に対しては、柱状空間導水部材6の長さを長くすれば、低圧下でも多くの注入材を注入することができ、また大きな固結径を得たい場合は、柱状空間導水部材6の長さを長くして削孔1の間隔を大きくすればよい。
【0110】
図9(b)に図示する注入内管9は、注入材吐出口9aと注入材吐出口9aを挟んでその上下両側に一組の内管パッカー9b,9bが管軸方向に複数組設けられており、この注入内管を用いることにより、複数の注入ステージの地盤中に注入材を同時に注入することができる。
【0111】
図10〜図12は、対象地盤の複数地点に注入材を同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0112】
図10において、対象地盤の複数の地点に削孔1が所定間隔をおいて形成され、各削孔1内に図1(a),(b)に図示する注入管装置の注入管2が建て込まれている。
【0113】
各注入管2には注入材が貯蔵された注入材貯蔵タンク10が導管11を介してそれぞれ接続され、各導管11には注入材貯蔵タンク10から各注入管2に注入材を圧送するためのユニットポンプ12、各注入地点における注入材の流量と圧力を検出するための流量圧力検出器13、さらに注入材の圧送を開始および遮断するためのバルブ14がそれぞれ接続されている。
【0114】
各ユニットポンプ12は、インバータ等の回転数変速機15を備え、かつモータ等の独立した駆動源16によって個々に作動するように構成されている。また、各ユニットポンプ12、回転数変速機15、流量圧力検出器13およびバルブ14は、それぞれ集中管理装置17に接続され、すべて集中管理装置17によって個々に制御されるようになっている。
【0115】
このような構成において、流量圧力検出器13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10から各注入管2にそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により注入材が任意の注入速度、注入圧力および注入量で圧送される。
【0116】
そして、複数の注入地点において、注入材が各注入管2の注入材吐出口2aから注入材浸透源7に同時に或いは選択的に吐出され、さらに注入材浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入される。
【0117】
図11は、図10の実施形態において、さらに複数の注入地点において複数の注入ステージA,B,C,Dに注入材を同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0118】
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図4に図示する注入管装置の注入管2が建て込まれ、各注入管2の先端は、図1で説明した注入管2の先端と同一に構成されている。
【0119】
すなわち、注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口2aが形成され、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。また、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が所定区間長にわたって充填されている。このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに構成されている。
【0120】
また、注入材貯蔵タンク10、導管11、ユニットポンプ12、流量圧力検出器13などを備えている点等の、その他の構成は図10に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0121】
そして、各注入地点の注入管2に注入材を同時に或いは選択的に注入することにより、複数の注入地点の複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を同時に注入することができる。
【0122】
図12は、図5,6の実施形態において、さらに複数の注入地点の複数において注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順にまたは同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0123】
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図5,6に図示する注入管装置の注入外管8が建て込まれ、各注入外管8内に注入内管9が建て込まれている。
【0124】
また、注入内管9を昇降させて注入ステージを変える注入内管昇降装置18と注入内管9の注入ステージを管理する注入ステージ管理装置19がそれぞれ取り付けられている。
【0125】
その他の構成、すなわち、各注入外管8の先端が閉塞され、その側部に複数の注入材吐出口8aが形成され、さらに各吐出口8aに逆止弁5がそれぞれ取り付けられ、その外側に柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている等の点は、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0126】
また、柱状空間浸透部材6は、各吐出口8aを含む注入外管8の外周を注入外管8の管軸方向に一定区間Lを覆うように、かつ注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに取り付けられていることにより、削孔1の孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向にシールグラウト内に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0127】
また、注入内管9の先端が閉塞され、先端の側部に注入材吐出口9aが形成され、かつ当該吐出口9aを挟んでその上下両側に一組のパッカー9b,9bが取り付けられている等の点、さらに、パッカー9bは、注入外管8と注入内管9との間隙内においてエアまたは流体を注入することにより膨張し、吐出口8aの上下両側を密閉し得るように構成されている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0128】
また、注入材貯蔵タンク10、導管11、ユニットポンプ12、流量圧力検出器13などを備えている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0129】
このような構成において、流量圧力検出器13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10内の注入材がそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により任意の注入速度、注入圧力および注入量で各注入内管9に圧送される。
【0130】
そして、複数の注入地点において、注入材が各注入外管8の複数の注入材吐出口8aから複数の柱状浸透源7内にそれぞれ吐出され、さらに各注入地点において柱状浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入される。
【0131】
その際、各注入地点における注入内管8が、集中管理装置17からの信号による指示によって注入内管昇降装置18が作動することにより、注入外管8内を注入内管9が上昇することにより、複数の注入地点の各注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順に注入することができる。
【0132】
また特に、図9(b)に図示する注入内管9を用いることにより、複数の注入地点における複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を同時に浸透注入することができる。
【0133】
図10〜図12に図示する実施形態において、ユニットポンプ12は通常、5〜100台を1セットとして多連装注入装置を構成し、1セット中でこれらのユニットポンプ12を横、縦或いは三次元として配置することができる。
【0134】
また、ユニットポンプ12はいずれもそれぞれがモータ等の駆動源16で作動させることができる。さらに、各駆動源16は集中管理装置17で制御されるインバータ等の回転数変速機15によって作動させることができる。
【0135】
したがって、この実施形態によれば、多数のユニットポンプ12で構成しながら全体として容量が小さい、コンパクトな、一体化した1セットの注入装置として構成することができる。
【0136】
このため、一セットの多連装装置はユニットポンプ12としてプランジャポンプを用いると、吐出量が50HZで1〜30リットル/分で、例えば10台を用いた場合、集中管理装置17からの指示でインバータにより所定の注入ポイントに最適の注入速度、注入圧力を保持しながら、多数の吐出口(例えば、50個の吐出口)からの全体の注入を集中管理装置17によって、全吐出量が(1〜30)×10=5〜300リットル/分の範囲で一括管理され、低圧、低吐出量による粒子間浸透が可能となり、しかも急速施工による工期の短縮が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、複数の注入地点の複数の注入ステージに柱状浸透源を個々に独立に形成し、各柱状浸透源から注入材を地盤中に順にまたは同時に注入することができ、かつ柱状浸透により大きな注入速度でも低圧で土粒子間浸透せしめることができ、さらに大きな固結径を得ることができて、大容量土の経済的地盤改良が要求される液状化防止注入工に適した注入管装置を提供する。
【符号の説明】
【0138】
1 削孔
2 注入管
3 間隙
4 シールグラウト
5 逆止弁
6 柱状空間導水部材
7 柱状浸透源
8 注入外管
9 注入内管
10 注入材貯蔵タンク
11 導管
12 ユニットポンプ
13 流量圧力検出器
14 逆止弁
15 回転数変速機
16 駆動源
17 集中管理装置
18 注入内管昇降装置
19 注入ステージ管理装置
20 外管パッカー
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入管装置および注入工法に関し、低圧注入の下で可能な限り大容量の注入材を可能な限り広範囲に均一に注入することができる。
【背景技術】
【0002】
薬液注入による地盤改良は、削孔内に挿入された注入管を用いてセメント系の固化材や水ガラス系の薬液や気泡混入溶液を地盤中に注入する方法であり、主に地盤の止水性向上、強度増加、液状化防止、空洞部の充填等を目的に行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、図13に図示するように、先端に、注入材吐出口20aと当該注入材吐出口20aにおける注入材の逆流を防止する逆止弁(図省略)を備えた複数の独立した注入管20を、吐出口20aが管軸方向に互いに間隔をおいて位置するように削孔21内に挿入し、各注入管20を介して地盤中に注入材を注入したときの注入圧によって、逆止弁が押し広げられて吐出口20aが開口することにより注入材が周囲の地盤中に吐出されるように構成された注入管装置に関する記載が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、図14(a),(b)に図示するように削孔21内に設置された注入外管22と注入外管22内に挿入された注入内管23とからなる注入管装置に関する記載が開示されている。
【0005】
注入外管22は、管軸方向に所定間隔をおいて形成された複数の注入材吐出口22aと、各注入材吐出口22aを挟んでその上下両側に取り付けられた袋体からなる外管パッカー22b,22bとを備え、各外管パッカー22bは、袋体にセメント系固化材などを充填することにより削孔21の内径より大きい径に膨張するように形成されている(図14(a)参照)。
【0006】
また、注入材吐出口22aの上下両側において削孔21の孔壁と注入外管22との間隙を外管パッカー22b,22bが塞ぐことにより、削孔21の孔壁と注入外管22との間に管軸方向に一定長連続する柱状浸透源24が形成されるよう構成されている。
【0007】
注入内管23は、先端に注入材吐出口23aと注入材吐出口23aを挟んでその上下両側に内管パッカー23b,23bを備え、内管パッカー23bは、地上からエアまたは流体を充填することにより膨張して注入外管22と注入内管23との間隙を注入材吐出口22aおよび23aの上下両側で塞ぐことにより、注入内管23を介して注入材浸透源24内に注入材を供給できるように構成されている(図14(b)参照)。
【0008】
そして、注入ステージA,B,Cにおいて、注入内管23を介して地上から柱状浸透源24内に注入材を供給することにより、大きな吐出速度で注入しても削孔21の孔壁から周囲の地盤中に低圧で浸透注入(土粒子間浸透)させることができる(図14(b)参照)。
【0009】
さらに、特許文献3には、図14(c)に図示するように、図14(a),(b)に図示する注入管装置において、上下の外管パッカー22b,22b間に形成された空間からなる柱状浸透源24内に透水性孔壁保護部材25を設置して孔壁崩壊を防止するようにした注入管装置に関する記載が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、図15に図示するように複数の注入口から注入材を同時注入する注入システムと注入工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2852721号
【特許文献2】特許第3509744号
【特許文献3】特許第3889408号
【特許文献4】特許第3724644号
【特許文献5】特許第2700614号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1,4に記載された注入管装置は、高圧ポンプ、圧力・流量管理装置、そしてこれらの監視制御する管理システムを用いて、予め設定された地点に注入材を点注入する装置であるため(図13,図16(a))、大きな吐出速度で注入すると、高圧注入となり脈状注入に陥り、地盤全体に注入材を均一注入することは困難であり、このため、少量の吐出で低圧注入を強いられるため多くの注入時間を必要とし、1本の注入管当りの注入効率がわるいものであった。
【0013】
特許文献2および特許文献3に記載された注入管装置は(図14,図17)、注入管の周囲に管軸方向に一定長連続する空間からなる柱状浸透源を形成し、柱状浸透源を介して周囲の地盤中に注入材を浸透注入させる装置であるが、これまでの柱状浸透源は、注入管と孔壁との間の柱状空間を外管パッカーによって管軸方向に一定区間密閉することにより形成するため、装置の構造が複雑化し、かつ作業手順が増える等の課題があり、また、透水性の異なる土層が細かく体積している地盤では、注入ステージを細かく組んで最適の注入を行うことが難しい等の理由により柱状浸透源を形成することが面倒であった。
【0014】
また、他の注入ステージ、或いは他の削孔内に注入された注入材が柱状浸透空間内に回り込んで空間を充填してしまい、その後の柱状注入ができなくなってしまうことがあった。
【0015】
ところで、地盤は通常、各層毎に透水係数や間隙率が異なるため、各層毎に地盤状況が異なるものである。この種の地盤への薬液注入に際しては、図16(a),(b)に図示するように、地盤中に注入管26を単独で注入しながら引き上げるか、或いは図13に図示するように複数本間隔をあけて挿入し、これら注入管26を通して注入ステージを上または下に移向しながら順次に注入材を注入していた。
【0016】
また、図16(c)〜(e)に図示するように、ケーシングaを用いたボーリングによって削孔した後、シールグラウト29内に設置した注入管(ダブルパッカー内管)26を挿入してゴムスリーブからなる逆止弁26aを通してシールグラウト29を突き破りながら注入ステージを上下に移行して注入材を注入していた。
【0017】
これらは、いずれも図16(a)に図示する点注入を基本にしているため、上述するような点注入の欠点があった。
【0018】
しかし、薬液注入などの注入工法において最も大きな課題は、透水係数の小さな微細砂層への浸透、或いは異なる土層からなる地盤への均質な浸透にある。
【0019】
微細砂層への透水性は通常、k=10-3〜10-4cm/秒であり、このような土層に対して地盤の破壊を起こさないように薬液を注入するには、浸透理論上、毎分1リットル以下〜数リットルの低吐出量で低圧注入しなければならないとされている。
【0020】
しかし、上述の公知の注入工法では、一本の注入管に対して、それぞれ一セットの注入ポンプを使用するが、工期をできるだけ短くしたいという経済性の面から、また、ポンプの性能限界の面から毎分10〜20リットルの吐出量とせざるを得ず、注入圧が高くなって地盤の破壊を起こすことがあり、このため、地盤が隆起したり、微細な土層の浸透固結が不充分となってしまうことがあった。
【0021】
また、異なる土層の地盤に対する注入では、土層が変化した際に、この土層変化に対応して注入速度を変化させたり、注入量をコントロールすることは実用上難しく、このため、ある層では注入材が多量に拡がったり、また、ある層では僅かしか浸透しなかったりすることが起こり、このような注入状態では、隣接する固結体同志の連続性が得られないという課題があった。
【0022】
なお、特許文献4は、複数の注入管を地盤中に配置し、これら複数の注入管を通してそれぞれの吐出口から地盤改良材を地盤中に注入するに当たり、一プラント中に多数のユニットポンプを備え、これら多数のユニットポンプを同時に作動する多連装ポンプにより前記改良材を各注入管に圧送し、吐出口から地盤中に注入するものである。
【0023】
上述の公知技術では、注入孔間隔を長くとり(1.5m〜4.0m)、広範囲の固結径を得るには低粘土で10時間以上のゲルタイムの注入材を用いる必要があった。
【0024】
ところが、長いゲルタイムの時間の注入材は一度地表面、或いは、地盤中の粗い層に逸脱を始めるとゲル化時間を短縮できないため注入を中止せざるを得ず、その間に注入細管内でグラウトがゲル化してしまう等の不都合さの問題があった。
【0025】
したがって、一つの注入ポイントから大きな吐出量で注入しても土粒子間浸透し、かつ各注入ポイント毎に最適の注入圧、注入速度で注入を行える注入工法が望まれていた。
【0026】
なお、図16(a),(b)は、点注入工法の原理を示し、図において、注入管26によって地盤中に注入された注入材は、注入管26の先端から地盤中に均等に注入されるのが理想であるが、注入材吐出口からの点注入であるため球状浸透となり、吐出量を多くすると高圧注入になり、脈状注入になりやすい。
【0027】
図16(c)〜(e)は、従来使用されている二重管ダブルパッカー工法である。ケーシングaで削孔した後(図16(c))、吐出口26aがゴムスリーブからなる逆止弁26bで覆われた注入外管26をケーシングa内に挿入し(図16(d))、シールグラウト29を充填しながら(図16(e))、ケーシングaを引き抜く。
【0028】
そして、シールグラウト29の固化を待って後、注入外管26内にダブルパッカーを有する注入内管を挿入して注入材を地盤内に注入する(図省略)。注入内管に注入材を注入すると、その注入圧で逆止弁26bが開くことにより地盤内に注入材が注入される。このため、注入が点注入で行われ、図16(a),(b)と同様の課題があった。
【0029】
また、図17(a),(b)は柱状注入工法の原理を示したものであり、図において、注入管26によって地盤中に注入された注入材は、上下の外管パッカー27,27間に所定長に形成された柱状浸透源28内に吐出され、この柱状浸透源28から周囲の地盤中に浸透注入される。その際、柱状浸透源28の孔壁から周囲の地盤中に注入材を均等に浸透注入させることができる。
【0030】
しかし、他の注入ステージからの注入材、或いは隣接した注入ステージからの注入材が外管パッカー27を迂回して柱状浸透源に注入してくるおそれがあった。
【0031】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、低圧注入下で可能な限り大容量の注入材を可能な限り広域な地盤に均一に注入でき、しかも柱状注入の可能な注入管装置および注入工法を提供することを目的とするものである。
【0032】
また、吐出量を大きくしても土粒子間浸透が可能なため、注入孔間隔を大きくとり、ゲルタイムも極端に長くしても(10数時間〜数十時間)、数時間のゲルタイムが可能になり、また長いゲル化時願でも隣接する吐出口に逆流する心配がなく、対象地盤が複雑でも土層毎に、或いは注入ステージ毎に確実な注入を可能にした注入管装置および注入工法を提供することを目的とするものである。
【0033】
さらに、これまでに開発されている広域な地盤に対する注入材の低圧浸透注入による多点注入ポンプの利点を生かしながら、低圧注入による土粒子間浸透を保ちながら各注入管の注入状況に応じて、それぞれのユニットポンプによる注入速度、注入圧、注入の中止、再開、ゲル化時間等を任意に管理し得、しかも多数のユニットポンプの作動を同時に管理して注入状況の全体を把握管理することを可能にした注入管装置および注入工法をすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
請求項1記載の注入管装置は、削孔内に設置された、注入材吐出口と逆止弁を備えた注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備えてなることを特徴とするものである(図1)。
【0035】
本発明は、吐出口を覆う逆止弁の外側に位置して柱状空間導水部材からなる柱状浸透源を注入管の管軸方向に一定長設けて、孔壁と注入管との間にシールグラウトを充填することにより、周囲の地盤中に柱状浸透源から大容量の注入材を低圧下で浸透注入できるようにしたものである。
【0036】
注入管には鋼管や硬質塩ビ管、或いは生分解性注入管などを用いることができ、また、柱状空間導水部材は注入管外周部の、注入材吐出口を有する部分を含む管軸方向の一定範囲に柱状浸透源を構成し得るもので、一定の厚さを有し、網状またはスポンジ状で、透水性と弾力性に富む素材から筒状または帯状に形成されたものが望ましいが、他に織布、不織布、透水性合成樹脂材、各種ドレーン材、さらには、全体に複数の注入材吐出口や注入材吐出スリットを有するチューブ、袋体或いは樹脂繊維などからなる網状体またはかご状体、さらには合成樹脂テープ等を用いることができる。また、これら柱状空間導水部材は、注入材吐出口と注入材吐出口における注入材の逆流を防止する逆止弁を含む注入管の管軸方向の一定範囲を覆うように取り付けるだけでよい。
【0037】
シールグラウトには、注入管を介して地中に注入材を注入する際に、注入材吐出口から吐出する注入材の注入圧によって容易にひび割れし、砕けるような低強度に固化するセメント材、ベントナイト、ベントナイト・セメント材、或いは石灰、石膏などを用いることができる。
【0038】
このシールグラウトによって削孔壁の崩壊が防止され、かつ注入管の各注入材吐出口が柱状空間導水部材の内側において逆止弁によって閉塞されていることにより、隣接する注入管の吐出口から吐出された注入材が吐出口から注入管内に逆流する心配がない。
【0039】
従来工法の特許文献5には、スパイラルテープが注入管の吐出口を覆う構造が記載されているが、このスパイラルテープはそれ自体が逆止弁として用いられるもので、隣接する吐出口からの注入材はスパイラルテープの隙間から吐出口に逆流してくるので、注入管として効果的に機能しない。
【0040】
柱状空間導水部材の長さは、通常0.1m〜3.0m程度、好ましくは0.2〜1.0mであり、注入管孔径よりも長く、その長さは対象とするステージの土層の厚さ、土層構造、透水性、毎分吐出量、注入圧力、材質や構造などによってきめればよい。
【0041】
なお、注入管装置として、注入材吐出口と当該注入材吐出口における注入材の逆流を防止する逆止弁を備え、かつ前記注入材吐出口が管軸方向に間隔をおいて位置するように削孔内に設置された複数の注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間の間隙内に充填されたシールグラウトとを備えた構成としてもよい。
【0042】
この場合の注入管は削孔内に個々に独立して挿入されてもよく、また一つに束ねて挿入されてもよい。また、各注入管の注入材吐出口の間隔と柱状空間導水部材の設置長さは、地盤の性状に応じて任意に設定することができる。
【0043】
柱状空間導水部材は、注入材吐出口と逆止弁を有する部分の一定範囲を覆うように個々に筒状に取り付けてもよく、または注入材吐出口と逆止弁を有する部分の一定範囲を覆うように管軸方向に螺旋状に連続して取り付けてもよい(図2,3,4参照)。
【0044】
請求項2記載の注入管装置は、削孔内に設置された注入外管と、当該注入外管内に設置された注入内管と、前記削孔の孔壁と前記注入外管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備え、前記注入外管は注入材吐出口および逆止弁と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材とを備えなることを特徴とするものである (図5〜図8参照)。
【0045】
なお、注入材吐出口、逆止弁および柱状空間導水部材は、注入外管の管軸方向に所定間隔おきに複数設けてもよい。
【0046】
この実施形態によれば、注入内管として図9(a)に図示する注入内管を用いることにより、注入外管内で注入内管を上下方向に移動させて柱状空間導水部材の注入ステージ毎に注入材を注入することができ、また、図9(b)に図示する注入内管を用いることにより、一つの注入地点において複数の注入ステージ内に注入材を同時に注入することができる。
【0047】
請求項3記載の注入管装置は、請求項1または2記載の注入管装置において、柱状空間導水部材の上下両側、またはいずれか一側にパッカーを備えてなることを特徴とするものである。
【0048】
本発明は、孔壁と注入管との間の間隙をシールグラウトで充填した上、さらに各注入材吐出口の上下両側を土中パッカーによって塞ぐことにより、注入材の他のステージへの逸送を確実に防止し、特定の注入ステージの地層内に注入材確実に浸透注入させることができる(図5(b)参照)。
【0049】
外管パッカーをその間隔を狭めて設置してその間にゲル化タイムの短いグラウトや懸濁型グラウトを粗詰め注入してもよい。
【0050】
請求項4記載の注入管装置は、請求項1〜3のいずれかひとつに記載された複数の注入管装置を用いた注入装置において、各注入管装置に導管を介して接続された注入材貯蔵タンクと、各導管に接続され、かつそれぞれ独立した駆動源で作動するように構成され、注入材を前記貯蔵タンクから各注入管装置にそれぞれ圧送する複数のユニットポンプと、各導管に接続され、注入材の流量と圧力を検出する流量圧力検出器と、各導管に接続され、注入材の圧送を開始および遮断するバルブと、各ユニットポンプに接続されたユニットポンプの回転数変則機と、前記ユニットポンプ、流量圧力検出器、バルブおよび回転変則機を制御する集中管理装置とを備え、前記注入管装置の注入管はそれぞれ複数の注入地点に所定間隔をおいて形成された削孔内に挿入され、各注入地点における流量および/または圧力データの信号が前記流量圧力検出器から集中管理装置に送信され、各注入地点における注入状況を前記集中管理装置で一括監視しながら前記貯蔵タンクから複数の注入地点の注入管にそれぞれ各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力、注入量で圧送し、複数の注入地点に同時に、或いは選択的に注入するように構成されてなることを特徴とするものである。
【0051】
本発明によれば、複数の注入地点において複数の地層内に注入材を同時に、或いは選択的に注入することができる。また、図4および図10〜図12に図示するように、複数の注入管から同時に、或いは任意に注入することができる。
【0052】
なお、各注入管装置の注入内管を昇降させる注入管昇降装置と注入内管の注入ステージを管理する注入ステージ管理装置を設置することもできる(図10〜12)。
【0053】
注入内管として図9(a)に図示するような注入内管を用い、かつ各注入地点において、注入管昇降装置によって注入内管を昇降させることにより、複数の注入地点に同時に、かつ各注入地点の各地層内に順に注入材を注入することができる。
【0054】
請求項5記載の注入工法は、請求項1に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入管を挿入する工程と、削孔の孔壁と注入管との間の空隙内にシールグラウトを充填する工程と、注入管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とするものである。
【0055】
請求項6記載の注入工法は、請求項2または3に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入外管を、当該注入外管内に注入内管をそれぞれ挿入する工程と、前記削孔と注入外管との間の間隙内にシールグラウトを充填する工程と、前記注入内管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とするものである。
【0056】
請求項7記載の注入工法は、請求項5または請求項6に記載の注入工法において、注入材として酸性から中性領域のシリカ溶液を注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0057】
本発明は以上の構成からなり、削孔内に建て込まれた注入管に当該注入管に設けられた注入材吐出口を開閉する逆止弁と、当該逆止弁を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材をそれぞれ取り付け、かつ前記削孔壁と前記注入管との間の間隙内にシールグラウトを充填することにより構成され、特に削孔壁と注入管との間のシールグラウトで覆われた柱状空間導水部材からなる柱状浸透源が管軸方向に一定範囲に形成されることにより、削孔の孔壁から周囲の地盤中に大容量の注入材を注入しても、注入材は柱状空間導水部材で覆われた一定長さの範囲からシールグラウトを破って柱状注入により低圧注入することができる。また、柱状浸透源はシールグラウト内に柱状空間導水部材によって容易に形成することができる。
【0058】
また、各柱状空間導水部材(柱状浸透源)からの注入材の注入圧によってシールグラウトは、一定長破壊されてそれぞれの柱状空間導水部材から独立して所定の注入ステージに最適の注入が行われる。
【0059】
また、各注入ステージでは、シールグラウトと柱状空間導水部材と注入管の注入材吐出口を覆う逆止弁によって他の注入ステージ、或いは他の注入管からの注入材が注入管内に逆流したり、吐出口を塞いだりすることなく、また未注入の柱状空間や注入材吐出口はシールグラウトの存在によって閉塞されることがないので、計画通りの注入、或いは繰り返し注入が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は注入管の正面図、(b),(c)はその要部拡大断面図である。
【図2】図1に図示する注入管装置の配置例を示す概要図である。
【図3】(a)〜(c)は、削孔内に注入管を設置する手順を示す断面図である。
【図4】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は複数の注入管を結束して設置した場合の正面図、(b),(c)はその要部拡大断面図である。
【図5】注入管装置の一実施形態を示し、(a),(b)はは注入管の正面図である。
【図6】図5に図示する注入管装置の要部を示し、(a),(b)は要部拡大断面図である。
【図7】スリットを有する柱状空間導水部材を有する注入管装置の一実施形態を示し、(a),(b)は注入管の正面図、(c)は(a),(b)における横断面図である。
【図8】注入管装置の一実施形態を示し、(a)は透水性マットやネットを筒状やかご状にして注入管を覆った柱状空間導水部材の断面図、(b)は透水性マットを注入管に螺旋状に巻きつけた柱状空間導水部材の断面図、(c)は(a),(b)における横断面図である。
【図9】(a),(b)は、注入内管の一例を示す一部破断正面図である。
【図10】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図11】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の複数の注入ステージの地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図12】注入管装置の一実施形態を示し、注入材を複数地点の注入ステージの地盤中に同時に或いは選択的に注入できるように構成された注入管装置の概要図である。
【図13】従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図14】(a),(b),(c)は、従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図15】従来の注入管装置の一例を示す断面図である。
【図16】注入工法の原理を示す説明図である。
【図17】注入工法の原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1(a),(b),(c)は、本発明の一実施形態を示し、図において、削孔1内に注入管2が建て込まれている。注入管2は鋼管、硬質塩ビ管、或いは合成樹脂製チューブ、さらには生分解性管などから形成されている。
【0062】
削孔1の孔壁と注入管2との間隙3内には、シールグラウト4が削孔1の全長に渡って、或いは注入材の注入領域に部分的に充填されている。
【0063】
シールグラウト4は、削孔1内で固化することにより注入管2を削孔1内に固定し、削孔1の孔壁崩壊を防止し、かつ削孔1内に注入された注入材が孔壁と注入管2間の間隙3内を注入管2の管軸方向に逸送するのを防止する働きを有するものであり、固化しても注入材の吐出圧で容易に砕かれるような低強度のセメントモルタルやベントナイト、或いは低アルカリ性セメント、石灰、石膏などが用いられている。
【0064】
注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に一個または複数の注入材吐出口2aが側方に開口して形成されている。注入材吐出口2aはゴムスリーブ等の注入圧で膨張し、加圧されなければ閉じる弾力性のある管体や袋体などからなる逆止弁5によって塞がれている。
【0065】
逆止弁5は注入管2を介して地上から注入された注入材が吐出口2aから地中に吐出する際の吐出圧によって押し広げられることにより、吐出口2aが開くように取り付けられている。
【0066】
注入管2の先端には柱状空間導水部材6が取り付けられている。柱状空間導水部材6は、注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む注入管2先端の外周を注入管2の管軸方向に一定区間Lを覆うように取り付けられている。
【0067】
そして、削孔1内の孔壁と注入管2間の間隙3内にシールグラウト4が充填されると、注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含むその上下方向の一定区間L内に、シールグラウト4によって覆われた柱状浸透源7が構成される。
【0068】
柱状空間導水部材6は一定厚さを有し、かつ透水性を有する網状体などから筒状に形成されている。そして、柱状空間導水部材6は図1(a),(b)に図示するように、注入管2の先端に注入材吐出口2aを有する部分を含む注入管2先端の外周を注入管2の管軸方向に一定区間Lを覆うように取り付けられている。
【0069】
なお、柱状空間導水部材6は、他に織布、不織布、スリットを有する合成樹脂膜材や帯状合成樹脂材、或いはかごや各種ドレーン材などから注入管2の外周を覆う管状、または図1(c)に図示するような注入管2の外周に沿って連続する螺旋状に形成されている。
【0070】
いずれの場合においても、柱状空間導水部材6は素材自体が透水性であるか、素材自体は不透水性であっても隙間やスリットを有することにより透水性を有して形成されている。
【0071】
そして、注入管2に注入された注入材は、注入材吐出口2aから逆止弁5を押し広げて柱状浸透源7としての柱状空間導水部材6内に吐出され、かつ注入材の吐出圧力によって柱状空間導水部材6の外側に押し出され、シールグラウト4を破壊して周辺の地盤中に浸透注入される。
【0072】
なお、注入材吐出口2aは逆止弁5によって覆われているため、一度破壊されたシールグラウト4の割れ目から他の注入ステージに吐出された注入材、または他の注入材吐出口から吐出された注入材が注入管2内に逆流することはない。また、同じ注入材吐出口2aから繰り返し注入することができる。
【0073】
また、柱状空間導水部材6の網目は、シールグラウト4が入り込まないような網目状に形成され、また、シールグラウト4は粘性が大きいため、注入材が柱状浸透導水部材6の網目やスリット、或いは螺旋状の隙間から注入管2内に逆流することはないので、柱状浸透源7の機能を保持することができる。
【0074】
このような構成において、注入管2を介して注入された注入材は、注入材の注入圧によって逆止弁5を押し広げ、注入材吐出口2aから柱状空間導水部材6内に、或いは柱状空間導水部材6と注入管との間に吐出されて柱状浸透源7を形成する。
【0075】
そして、注入材は柱状浸透源7から周囲に押し出され、その吐出圧によってシールグラウト4を破り、削孔1の孔壁から周囲の地盤中に浸透注入(土粒子間浸透)される。
【0076】
その際、削孔1の孔壁と注入管2との間隙3内は、その全長、或いは所定の注入深度の範囲がシールグラウト4によって充填されていることにより、注入材が管軸方向に逸送することはない。また、注入管2の管軸方向に隣接した柱状浸透源7内に、或いは隣接した他の注入管内に注入材が流入することもない。
【0077】
図2は、図1(a),(b),(c)に図示する注入管装置の設置例を示したものであり、図示するように複数の注入管2が地盤中に注入深さを変えて、一定間隔おきに設置されている。
【0078】
このような配置で注入を行うことにより、地盤に長さLに対応した大きな固結体を効率的に形成することができ、地盤改良を急速に行うことができる。
【0079】
本発明は、柱状浸透源7の長さLを大きくすることにより、吐出量を大きくしても低圧で注入することができると、注入孔間隔Dを大きくすることができるため、大きな浸透の固結体を形成して効果的でかつ経済的に広範囲の地盤改良を行うことができるため、液状化対策工に適している。
【0080】
特に、近年の液状化工法の性能設計では、液状化しやすい層を完全に固結しなくても、図2に図示するように未固結部を残して経済性を得ることができる。このような目的のために長いゲル化時間と耐久性にすぐれた弱アルカリ性、中性、酸性領域(pH1〜10)のシリカ溶液を注入するのが望ましい。
【0081】
このようなグラウトは水ガラスのアルカリを酸で中和したシリカゾルグラウト、或いは水ガラスをイオン交換樹脂やイオン交換膜で処理したシリカグラウト、或いはこれらの混合物などを上げることができる。
【0082】
図3(a)〜(c)は、注入管2を地盤中に設置する方法を示したものであり、最初にケーシングaと掘削機bを用いて削孔1を形成する。次に、先端に吐出口2aを有し、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6が取り付けられた注入管2を削孔1のケーシングa内に建て込む。
【0083】
そして、削孔1のケーシングa内にシールグラウト4を充填しながらケーシングaを徐々に引き抜く。以上の手順により削孔1内に注入管2を建て込むことができる。
図4(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示し、削孔1内に複数の注入管2が建て込まれている。
【0084】
各注入管2の先端は、図1(b),(c)で説明した注入管1の先端と同じように構成されている。すなわち、注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口2aが形成され、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。柱状空間導水部材6は、管状または螺旋状に形成されている(図2(b),(c))。
【0085】
さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。そして、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が削孔1の全長にわたって充填されている。
【0086】
このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに形成されている。そして、複数の注入管2に注入材を同時に注入することにより、複数の注入ステージA,B,C,D内に注入材を同時に注入することができる。
【0087】
図5(a),(b)と図6、並びに図7は、同じく本発明の他の実施形態を示し、削孔1内に注入外管8が建て込まれ、各注入外管8内に注入内管9が建て込まれている。
【0088】
注入外管8と注入内管9はいずれも鋼管または硬質塩ビ管、または生分解性注入管などから形成されている。また、削孔1の孔壁と注入外管8との間隙3内にシールグラウト4が削孔1の全長、或いは地盤改良領域区間内にわたって充填されている。
【0089】
注入外管8の先端は閉塞され、その側部に複数の注入材吐出口8aが注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに形成されている。また、各吐出口8aに逆止弁5が取り付けられ、さらにその外側に管状(図6(a))または螺旋状(図6(b))またはスリットが設けられたチューブ状(図7(a),(b))の柱状空間導水部材6が取り付けられている。
【0090】
柱状空間浸透部材6は、図6(a),(b)や図7(a),(b)に図示するように各吐出口8aを含む注入外管8の外周を注入外管8の管軸方向に一定区間Lを覆うように、かつ注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに複数取り付けられている。
【0091】
また、柱状空間導水部材6は、吐出口8aと逆止弁5を覆うように注入外管8の外周に螺旋状に取り付けられる場合もある。
【0092】
このように構成されていることにより、図6(a)の実施形態においては、孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている。
【0093】
また、図6(b)の実施形態においては、各区間L内を孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向に螺旋状に連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている。
【0094】
また特に、図5(b)に図示する実施形態において、注入外管8の各柱状空間導水部材6,6間に袋体やゴムチューブ等からなる外管パッカー8bが取り付けられている。これらの外管パッカー8bは、袋体やゴムチューブ等からなる袋体に地上からセメント系固化材や薬液などを充填することにより削孔1の内径より大きい径に膨張するように形成されている。
【0095】
そして、各柱状空間導水部材6の上下両側において削孔1の孔壁と注入外管8との間隙を外管パッカーが膨張して塞ぐことにより、削孔1の孔壁と注入外管8との間の間隙3を管軸方向に複数に区画することができるようになっている。
【0096】
また、外管パッカー8bを二段形成し、その間から瞬結性グラウトや懸濁型グラウトを注入して粗い土層や軟らかい注入材が逸送しやすい土層に順次注入してから、柱状空間導水部材から浸透性グラウトを注入してもよい。
【0097】
本発明によれば、孔壁と注入外管8との間の間隙をシールグラウト4で充填した上、さらに各注入材吐出口8aの上下両側を外管パッカー8b,8bによって塞ぐことにより、注入材の他のステージへの逸送を確実に防止し、特定の注入ステージの地層内に注入材を確実に浸透注入させることができる。
【0098】
図7(a),(b),(c)は、同じく本発明の他の実施形態を示し、特に柱状空間導水部材6が透水性の織布やスリットを有する合成樹脂膜材などから管軸方向に連続する袋状またはチューブ状に形成された注入管装置を示したものである。
【0099】
そのうち、図7(a)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む管軸方向の一定長を覆う定長さに形成され、各注入材吐出口2aを有する部分を覆うように個々に取り付けられ、かつその上下両端部が注入管2に密着した状態に固着されている。
【0100】
また、図7(b)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が複数の注入材吐出口2aを覆うように注入管1の管軸方向に連続して形成され、注入管1の管軸方向に連続して取り付けられ、かつ各注入材吐出口2aを有する部分の上下両側部6a,6aにおいて、接着材などにより注入管1に密着した状態に固着されている。なお、図7(c)は、図7(a),(b)における横断面図である。
【0101】
図8(a),(b),(c)は、同じく本発明の他の実施形態を示し、特に柱状空間導水部材6が透水性網材から注入管2の管軸方向に連続する管状または注入管2の管軸方向に連続する螺旋状に形成された注入管装置を示したものである。
【0102】
そのうち、図8(a)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が注入管2の注入材吐出口2aを有する部分を含む管軸方向の一定長を覆う管状に形成され、各注入材吐出口2aを有する部分を覆うように個々に取り付けられ、かつその上下両端部6a,6aが注入管2に接着材などによって密着した状態に固着されている。
【0103】
また、図8(b)に図示する注入管装置は、柱状空間導水部材6が複数の注入材吐出口2aを覆うように注入管1の管軸方向に螺旋状に連続して形成され、注入管1の管軸方向に連続して取り付けられている。なお、図8(c)は、図8(a),(b)における横断面図である。
【0104】
図9(a),(b)は特に注入内管を示し、注入内管9の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口9aが形成され、当該吐出口9aを挟んでその上下両側に一組のパッカー9b,9bが取り付けられている。パッカー9bは、注入外管8と注入内管9との間隙内においてエアまたは流体を注入することにより膨張し、吐出口8aの上下両側を密閉し得るように構成されている。
【0105】
このような構成において、注入内管9の吐出口9aと注入外管8の吐出孔8aが同一レベルに位置するように注入内管9を注入外管8内にセットすると共に、パッカー9bを膨張させて注入外管8と注入内管9との間隙に注入内管9から柱状浸透源7に連通じる注入材流路を形成する。
【0106】
そして、注入内管9を介して地中に注入材を注入すると、注入材は、その注入圧によって逆止弁5を開け、吐出口8aから柱状浸透源7内に吐出される。そして、柱状浸透源7からシールグラウト4を破り、掘孔1の孔壁から周囲の地盤中に浸透注入することができる。
【0107】
なお、注入内管は単管でも複数の管を有していてもよく、内管パッカーを形成するためのパッカー流路を有していてもよく、或いは内管流路を通る注入材の流体圧でパッカーが作動してもよい。
【0108】
また、注入外管8内で注入内管9を管軸方向に移動することにより、各注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順に浸透注入させることができる。
【0109】
なお、地盤状況に応じて柱状空間導水部材6の長さを調整することができる。例えば、透水性の小さい層に対しては、柱状空間導水部材6の長さを長くすれば、低圧下でも多くの注入材を注入することができ、また大きな固結径を得たい場合は、柱状空間導水部材6の長さを長くして削孔1の間隔を大きくすればよい。
【0110】
図9(b)に図示する注入内管9は、注入材吐出口9aと注入材吐出口9aを挟んでその上下両側に一組の内管パッカー9b,9bが管軸方向に複数組設けられており、この注入内管を用いることにより、複数の注入ステージの地盤中に注入材を同時に注入することができる。
【0111】
図10〜図12は、対象地盤の複数地点に注入材を同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0112】
図10において、対象地盤の複数の地点に削孔1が所定間隔をおいて形成され、各削孔1内に図1(a),(b)に図示する注入管装置の注入管2が建て込まれている。
【0113】
各注入管2には注入材が貯蔵された注入材貯蔵タンク10が導管11を介してそれぞれ接続され、各導管11には注入材貯蔵タンク10から各注入管2に注入材を圧送するためのユニットポンプ12、各注入地点における注入材の流量と圧力を検出するための流量圧力検出器13、さらに注入材の圧送を開始および遮断するためのバルブ14がそれぞれ接続されている。
【0114】
各ユニットポンプ12は、インバータ等の回転数変速機15を備え、かつモータ等の独立した駆動源16によって個々に作動するように構成されている。また、各ユニットポンプ12、回転数変速機15、流量圧力検出器13およびバルブ14は、それぞれ集中管理装置17に接続され、すべて集中管理装置17によって個々に制御されるようになっている。
【0115】
このような構成において、流量圧力検出器13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10から各注入管2にそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により注入材が任意の注入速度、注入圧力および注入量で圧送される。
【0116】
そして、複数の注入地点において、注入材が各注入管2の注入材吐出口2aから注入材浸透源7に同時に或いは選択的に吐出され、さらに注入材浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入される。
【0117】
図11は、図10の実施形態において、さらに複数の注入地点において複数の注入ステージA,B,C,Dに注入材を同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0118】
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図4に図示する注入管装置の注入管2が建て込まれ、各注入管2の先端は、図1で説明した注入管2の先端と同一に構成されている。
【0119】
すなわち、注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に注入材吐出口2aが形成され、かつ逆止弁5と柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。また、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が所定区間長にわたって充填されている。このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに構成されている。
【0120】
また、注入材貯蔵タンク10、導管11、ユニットポンプ12、流量圧力検出器13などを備えている点等の、その他の構成は図10に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0121】
そして、各注入地点の注入管2に注入材を同時に或いは選択的に注入することにより、複数の注入地点の複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を同時に注入することができる。
【0122】
図12は、図5,6の実施形態において、さらに複数の注入地点の複数において注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順にまたは同時に注入できるように構成された注入管装置を示したものである。
【0123】
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図5,6に図示する注入管装置の注入外管8が建て込まれ、各注入外管8内に注入内管9が建て込まれている。
【0124】
また、注入内管9を昇降させて注入ステージを変える注入内管昇降装置18と注入内管9の注入ステージを管理する注入ステージ管理装置19がそれぞれ取り付けられている。
【0125】
その他の構成、すなわち、各注入外管8の先端が閉塞され、その側部に複数の注入材吐出口8aが形成され、さらに各吐出口8aに逆止弁5がそれぞれ取り付けられ、その外側に柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている等の点は、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0126】
また、柱状空間浸透部材6は、各吐出口8aを含む注入外管8の外周を注入外管8の管軸方向に一定区間Lを覆うように、かつ注入外管8の管軸方向に所定間隔おきに取り付けられていることにより、削孔1の孔壁と注入外管8との間隙3内に管軸方向にシールグラウト内に一定区間L連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に一定間隔おきに形成されている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0127】
また、注入内管9の先端が閉塞され、先端の側部に注入材吐出口9aが形成され、かつ当該吐出口9aを挟んでその上下両側に一組のパッカー9b,9bが取り付けられている等の点、さらに、パッカー9bは、注入外管8と注入内管9との間隙内においてエアまたは流体を注入することにより膨張し、吐出口8aの上下両側を密閉し得るように構成されている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0128】
また、注入材貯蔵タンク10、導管11、ユニットポンプ12、流量圧力検出器13などを備えている等の点も、図5,6に図示する実施形態と同一に構成されている。
【0129】
このような構成において、流量圧力検出器13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10内の注入材がそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により任意の注入速度、注入圧力および注入量で各注入内管9に圧送される。
【0130】
そして、複数の注入地点において、注入材が各注入外管8の複数の注入材吐出口8aから複数の柱状浸透源7内にそれぞれ吐出され、さらに各注入地点において柱状浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入される。
【0131】
その際、各注入地点における注入内管8が、集中管理装置17からの信号による指示によって注入内管昇降装置18が作動することにより、注入外管8内を注入内管9が上昇することにより、複数の注入地点の各注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を順に注入することができる。
【0132】
また特に、図9(b)に図示する注入内管9を用いることにより、複数の注入地点における複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に注入材を同時に浸透注入することができる。
【0133】
図10〜図12に図示する実施形態において、ユニットポンプ12は通常、5〜100台を1セットとして多連装注入装置を構成し、1セット中でこれらのユニットポンプ12を横、縦或いは三次元として配置することができる。
【0134】
また、ユニットポンプ12はいずれもそれぞれがモータ等の駆動源16で作動させることができる。さらに、各駆動源16は集中管理装置17で制御されるインバータ等の回転数変速機15によって作動させることができる。
【0135】
したがって、この実施形態によれば、多数のユニットポンプ12で構成しながら全体として容量が小さい、コンパクトな、一体化した1セットの注入装置として構成することができる。
【0136】
このため、一セットの多連装装置はユニットポンプ12としてプランジャポンプを用いると、吐出量が50HZで1〜30リットル/分で、例えば10台を用いた場合、集中管理装置17からの指示でインバータにより所定の注入ポイントに最適の注入速度、注入圧力を保持しながら、多数の吐出口(例えば、50個の吐出口)からの全体の注入を集中管理装置17によって、全吐出量が(1〜30)×10=5〜300リットル/分の範囲で一括管理され、低圧、低吐出量による粒子間浸透が可能となり、しかも急速施工による工期の短縮が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、複数の注入地点の複数の注入ステージに柱状浸透源を個々に独立に形成し、各柱状浸透源から注入材を地盤中に順にまたは同時に注入することができ、かつ柱状浸透により大きな注入速度でも低圧で土粒子間浸透せしめることができ、さらに大きな固結径を得ることができて、大容量土の経済的地盤改良が要求される液状化防止注入工に適した注入管装置を提供する。
【符号の説明】
【0138】
1 削孔
2 注入管
3 間隙
4 シールグラウト
5 逆止弁
6 柱状空間導水部材
7 柱状浸透源
8 注入外管
9 注入内管
10 注入材貯蔵タンク
11 導管
12 ユニットポンプ
13 流量圧力検出器
14 逆止弁
15 回転数変速機
16 駆動源
17 集中管理装置
18 注入内管昇降装置
19 注入ステージ管理装置
20 外管パッカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔内に設置された、注入材吐出口と逆止弁を備えた注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備えてなることを特徴とする注入管装置。
【請求項2】
削孔内に設置された注入外管と、当該注入外管内に設置された注入内管と、前記削孔の孔壁と前記注入外管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備え、前記注入外管は注入材吐出口および逆止弁と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材とを備えなることを特徴とする注入管装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の注入管装置において、柱状空間導水部材の上下両側、またはいずれか一側にパッカーを備えてなることを特徴とする注入管装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載された複数の注入管装置を用いた注入装置において、各注入管装置に導管を介して接続された注入材貯蔵タンクと、各導管に接続され、かつそれぞれ独立した駆動源で作動するように構成され、注入材を前記貯蔵タンクから各注入管装置にそれぞれ圧送する複数のユニットポンプと、各導管に接続され、注入材の流量と圧力を検出する流量圧力検出器と、各導管に接続され、注入材の圧送を開始および遮断するバルブと、各ユニットポンプに接続されたユニットポンプの回転数変則機と、前記ユニットポンプ、流量圧力検出器、バルブおよび回転変則機を制御する集中管理装置とを備え、前記注入管装置の注入管はそれぞれ複数の注入地点に所定間隔をおいて形成された削孔内に挿入され、各注入地点における流量および/または圧力データの信号が前記流量圧力検出器から集中管理装置に送信され、各注入地点における注入状況を前記集中管理装置で一括監視しながら前記貯蔵タンクから複数の注入地点の注入管にそれぞれ各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力、注入量で圧送し、複数の注入地点に同時に、或いは選択的に注入するように構成されてなることを特徴とする注入装置。
【請求項5】
請求項1に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入管を挿入する工程と、削孔の孔壁と注入管との間の空隙内にシールグラウトを充填する工程と、注入管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とする注入工法。
【請求項6】
請求項2または3に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入外管を、当該注入外管内に注入内管をそれぞれ挿入する工程と、前記削孔と注入外管との間の間隙内にシールグラウトを充填する工程と、前記注入内管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とする注入工法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の注入工法において、注入材として酸性から中性領域のシリカ溶液を注入することを特徴とする注入工法。
【請求項1】
削孔内に設置された、注入材吐出口と逆止弁を備えた注入管と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように前記注入管に取り付けられた柱状空間導水部材と、前記削孔の孔壁と前記注入管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備えてなることを特徴とする注入管装置。
【請求項2】
削孔内に設置された注入外管と、当該注入外管内に設置された注入内管と、前記削孔の孔壁と前記注入外管との間隙内に充填されたシールグラウトとを備え、前記注入外管は注入材吐出口および逆止弁と、前記注入材吐出口および逆止弁を有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材とを備えなることを特徴とする注入管装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の注入管装置において、柱状空間導水部材の上下両側、またはいずれか一側にパッカーを備えてなることを特徴とする注入管装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載された複数の注入管装置を用いた注入装置において、各注入管装置に導管を介して接続された注入材貯蔵タンクと、各導管に接続され、かつそれぞれ独立した駆動源で作動するように構成され、注入材を前記貯蔵タンクから各注入管装置にそれぞれ圧送する複数のユニットポンプと、各導管に接続され、注入材の流量と圧力を検出する流量圧力検出器と、各導管に接続され、注入材の圧送を開始および遮断するバルブと、各ユニットポンプに接続されたユニットポンプの回転数変則機と、前記ユニットポンプ、流量圧力検出器、バルブおよび回転変則機を制御する集中管理装置とを備え、前記注入管装置の注入管はそれぞれ複数の注入地点に所定間隔をおいて形成された削孔内に挿入され、各注入地点における流量および/または圧力データの信号が前記流量圧力検出器から集中管理装置に送信され、各注入地点における注入状況を前記集中管理装置で一括監視しながら前記貯蔵タンクから複数の注入地点の注入管にそれぞれ各ユニットポンプの作動により任意の注入速度、注入圧力、注入量で圧送し、複数の注入地点に同時に、或いは選択的に注入するように構成されてなることを特徴とする注入装置。
【請求項5】
請求項1に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入管を挿入する工程と、削孔の孔壁と注入管との間の空隙内にシールグラウトを充填する工程と、注入管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とする注入工法。
【請求項6】
請求項2または3に記載された注入管装置、または請求項4に記載された注入装置を用いて地盤中に注入材を注入する注入工法において、削孔内に注入外管を、当該注入外管内に注入内管をそれぞれ挿入する工程と、前記削孔と注入外管との間の間隙内にシールグラウトを充填する工程と、前記注入内管を介して地盤中に注入材を注入する工程とからなることを特徴とする注入工法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の注入工法において、注入材として酸性から中性領域のシリカ溶液を注入することを特徴とする注入工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−153401(P2011−153401A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290642(P2009−290642)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】
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