注意喚起照射装置
【課題】人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことが可能な注意喚起照射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ライト駆動装置175は、自車両から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光を路面に照射するように、配光可変ライト180を制御する。
【解決手段】ライト駆動装置175は、自車両から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光を路面に照射するように、配光可変ライト180を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注意喚起照射装置に係り、特に、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことができる車両用注意喚起照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向車両のドライバを幻惑することがないように、照射光を照射することにより車両外の人物及び自車両のドライバに対して注意喚起を行う警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の警報装置は、人物が対向車両領域外に存在する場合には、人物に対して、所定のマーク(パターン)、例えば、三角形のマークの照射光を照射する。また、人物が対向車両領域内に存在する場合には、対向車両領域外で、人物と自車両との間で照射光により路面上に形成したスポットを往復移動させる。
【特許文献1】特開2005−324679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人物が対向車両領域外に存在した場合に、人物に対して所定のパターンを照射しても、人物の着衣が黒色である場合には、光が着衣に吸収されることから、照射されたパターンが認識され難くなるため、ドライバは危険である人物を認識し難くなる。
【0005】
また、人物が対向車両領域内に存在した場合に、スポットを往復移動させると、復路では、パターンが自分に向かってくるので、違和感を感じるドライバも存在する。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことが可能な注意喚起照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の注意喚起照射装置は、人物を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された人物の自車両に対する危険度を推定する危険度推定手段と、前記危険度推定手段によって推定された危険度に基づいて、前記検出手段によって検出された人物が自車両に対して危険であるか否かを推定する危険推定手段と、光を照射する照射手段と、前記危険推定手段によって危険であると推定された場合に、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように前記照射手段を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0008】
本発明の注意喚起照射装置によれば、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が照射手段から路面に照射されるので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明の制御手段は、自車両から危険であると推定された人物に向かって、路面上の照射位置が移動するように照射手段を制御することができる。これにより、ドライバ及び危険であると推定された人物に対して注意喚起が行われた際に、照射された光がドライバに向かってくることがないので、ドライバは違和感を感じずにすむ。
【0010】
また、本発明の制御手段は、危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、照射位置の移動速度が速くなるように照射手段を制御することができる。
【0011】
また、本発明の制御手段は、更に、危険であると推定された人物の移動方向を表示する光が路面に照射されるように、照射手段を制御することができる。
【0012】
また、本発明の制御手段は、以下の何れかのように、照射手段を制御することができる。
・危険であると推定された人物の移動方向を示すように、路面上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように前記照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向を示す、自車両から該人物に延びる光のラインと、自車両から該人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインとを照射するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動し、該人物の手前に到達した時点で、該照射光が分離し、分離した照射光の各々の路面上の照射位置が左右に移動するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインと、該人物の方向を示すように、自車両から該人物に向かって路面上の照射位置が移動する少なくとも1つの照射光とを照射するように照射手段を制御する。
【0013】
また、本発明の制御手段は、危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように照射手段から照射された光の色、光の照射パターン、光の点滅状態、及び光の照射位置の移動軌跡の少なくとも1つを制御することができる。このように制御することにより、ドライバ及び危険であると推定された人物は、心理的に照射位置を認識し易くなる。
【0014】
また、本発明の注意喚起照射装置は、自車両の環境状態を検出する環境検出手段を更に含み、前記制御手段は、更に、前記環境検出手段によって検出された環境状態に基づいた所定の光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。これにより、自車両の環境状態に対応する光が照射され、ドライバ及び人物の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記環境検出手段を、前記路面の路面状態または天候を検出するようにし、前記制御手段を、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【0016】
また、前記環境検出手段を、前記路面の路面状態または天候を検出するようにし、前記制御手段を、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、一定時間の間、光が照射され続けるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【0017】
また、前記環境検出手段を、自車両周辺の明るさを検出するようにし、前記制御手段を、検出された明るさに基づいて、該明るさが所定値以下の場合には、照射強度が所定値以下の光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の注意喚起照射装置によれば、自車両から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び危険であると推定された人物の両者に対して注意喚起を行うことができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の注意喚起照射装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1(1)、(2)及び図2に示すように、車両100に取り付けられた第1の実施の形態に係る注意喚起照射装置1には、暗視カメラ120、距離センサ140、操舵角センサ150、車速センサ160、及び制御装置190が設けられている。
【0021】
暗視カメラ120は、例えば、赤外線カメラが用いられ、自車両100の前方を撮影し、撮影により得られた熱画像を熱画像データとして出力する。この暗視カメラ120は、制御装置190と接続されている。
【0022】
制御装置190は、CPU、各種処理ルーチンのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAMを含んだマイクロコンピュータで構成されている。制御装置190は、以下で説明する制御ルーチンを実行するマイクロコンピュータを機能ブロックで表すと、人物判断部130及び危険度推定部170で表すことができる。人物判断部130には、暗視カメラ120が接続され、危険度推定部170には、距離センサ140、操舵角センサ150、車速センサ160、及びライト駆動装置175が接続されている。
【0023】
人物判断部130は、暗視カメラ120からの熱画像データに基づいてパターンマッチング等の画像処理を行うことによって、人物の特徴(例えば、温度や形状等)を検出することにより、自車両100の前方に位置する歩行者や二輪車に乗車している乗車者等の人物を検出する。人物判断部130は、危険度推定部170と接続されている。
【0024】
距離センサ140は、例えば、ミリ波レーダが用いられ、人物判断部130によって検出された人物までの距離を検出する。検出した距離から、人物の相対移動速度、及び相対位置(自車両100から該人物までの距離、及び自車両100に対する該人物が位置する方向)を求めることができる。
【0025】
操舵角センサ150は、ステアリングの操舵角を検出する。検出した操舵角からは、自車両100の移動方向を求めることができる。また、車速センサ160は、車輪の回転数を検出する。検出した車輪の回転数からは、自車両100の移動速度を求めることができる。
【0026】
危険度推定部170は、距離センサ140からの距離信号に基づいて、自車両100に対する該人物の相対移動速度及び相対移動方向を演算する。危険度推定部170は、演算した該人物の相対移動速度と車速センサ160からの検出信号に基づいて演算された自車両100の移動速度との差から、該人物の移動速度を算出する。また、危険度推定部170は、演算した該人物の相対移動方向と操舵角センサ150からの舵角信号に基づいて演算された自車両100の移動方向との差から、該人物の移動方向を算出する。
【0027】
また、危険度推定部170は、演算された自車両100の移動速度及び移動方向、並びに算出された人物の移動速度及び移動方向に基づいて、自車両100に対する人物の危険度を推定する。
【0028】
また、危険度推定部170は、推定した危険度と基準値とを比較することによって、自車両100に対して人物が危険であるか否かを推定する。
【0029】
この危険度推定部170には、配光可変ライト180に接続されたライト駆動装置175が接続されている。ライト駆動装置175は、危険度推定部170からの指示に基づいて、配光可変ライト180から照射される光の配光(照射形態)を制御する。
【0030】
また、危険度推定部170は、人物判断部130によって検出された人物が危険であると推定した場合に、ドライバ及び危険であると推定された人物の両者に対して注意喚起を行うための光、例えば、自車両100から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光を路面に照射する指示を、ライト駆動装置175に出力する。
【0031】
配光可変ライト180は、ランプとランプから照射された光の配光を制御する配光制御装置とで構成されている。配光制御装置は、ランプの光を反射することによって配光を制御するDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等の反射型空間光変調素子、またはランプの光を透過することによって配光を制御する液晶表示素子等の透過型空間光変調素子で構成することができる。
【0032】
この配光可変ライト180では、所定の配光が得られるように配光制御装置を駆動してランプを点灯するか、またはランプを点灯した状態で所定の配光が得られるように配光制御装置を駆動することにより所定の配光を得ることができる。
【0033】
図3は、本実施形態の注意喚起照射装置1の制御装置190のCPUが行う制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0034】
この制御ルーチンは、注意喚起照射装置1の電源(図示せず)が投入されると実行され、ステップS20で、暗視カメラ120を駆動し、自車両100の前方の撮影により得られた熱画像を熱画像データとして取り込み、次のステップS30で熱画像データに基づいて自車両100の前方に位置する人物の検出を行う。
【0035】
次のステップS40で、ステップS30で人物が検出されたか否かを判定し、否定判定がされた場合はステップS20に戻って人物の検出を継続し、肯定判定がされた場合は、次のステップS50に進む。
【0036】
ステップS50で、距離センサ140から出力された距離信号を取り込み、ステップ30で検出された人物の自車両100に対する相対移動速度、及び相対位置を演算する。
【0037】
次のステップS60で、操舵角センサ150から出力された舵角信号を取り込んで、自車両100の移動方向の演算を開始すると共に、車速センサ160で検出された自車両100の移動速度を示す検出信号を取り込んで、自車両100の移動速度の演算を開始する。
【0038】
次のステップS70で、これらの演算された自車両100の移動方向及び移動速度、並びに該人物の相対移動速度及び相対位置に基づいて、該人物の移動速度及び移動方向を算出する。そして、算出した該人物の移動速度及び移動方向、並びに演算された自車両100の移動方向及び移動速度に基づいて、自車両100に対する該人物の危険度を推定する。そして、推定した危険度と基準値とを比較することにより、自車両100に対して該人物が危険であるか否かを推定する。
【0039】
ここで、危険でないと推定した場合は、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、危険であると推定した場合は、次のステップS80に進む。
【0040】
ステップS80で、ステップS70で危険であると推定された人物の相対移動速度及び相対位置に基づいて、ドライバ200及び該人物に対して注意喚起を行うために、以下で説明する図6乃至図14に図示した光、例えば、自車両100から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように、ライト駆動装置175に対して指示を出力する。
【0041】
ここで、ステップS70及びステップS80で行われる処理について、例をあげて、説明する。
【0042】
図4に図示されるように、自車両V1が左カーブに差しかかり、その前方に人物H1、及びH2が存在する状況を例として説明する。
【0043】
このとき、ステップS50で、制御装置190のCPUは、距離センサ140からの距離信号に基づいて、検出された人物H1及びH2の相対移動速度及び相対位置を演算する。そして、演算された相対移動速度及び相対位置、並びに演算された自車両100の移動方向及び移動速度に基づいて、人物H1及びH2の移動速度及び移動方向を繰り返し演算し、人物H1及びH2の距離の変化及び位置の変化を求める。そして、求めた距離の変化及び位置の変化に基づいて、人物H1及びH2の移動速度と移動方向とを推測する。
【0044】
また、ステップS60で、制御装置190のCPUは、操舵角センサ150から取り込んだ舵角信号に基づいて、自車両V1の移動方向を繰り返し演算し、自車両V1の移動方向の変化を求める。また、車速センサ160から取り込んだ検出信号に基づいて、自車両V1の移動速度を繰り返し演算し、自車両V1の移動速度の変化を求める。そして、これらの自車両V1の移動方向の変化及び移動速度の変化に基づいて、自車両V1の移動速度と移動方向とを推測する。
【0045】
そして、ステップS70で、推測した人物H1及びH2の移動速度及び移動方向、並びに推測した自車両V1の移動速度及び移動方向に基づいて、人物H1及びH2と自車両V1とが衝突する確率を求め、求めた確率と所定値とを比較することにより、人物H1及びH2が自車両V1に対して危険であるか否か推定する。例えば、図5に図示されるように、自車両V1と人物H2とが、所定時間tmax以内となる時間t後に、例えば、6秒後に地点Xで衝突する確率が高いと推定された場合、すなわち、自車両V1に対して人物H2が危険であると推定された場合にはステップ80で以下の処理を行う。すなわち、ステップS80で、人物H2の移動速度及び移動方向、及び自車両V1から人物H2までの距離及び人物H2の方向に基づいて、ドライバ200及び人物H2に対して注意喚起を行うために、以下で説明する図6乃至図14に図示した光、例えば、自車両V1から危険であると推定された人物H2の方向及び人物H2までの距離を表示する光が配光可変ライト180により照射されるように、ライト駆動装置175に指示を出力する。なお、推定された衝突するまでの時間tは、危険度を表しており、数値が小さくなるに従って、危険度が高くなる。
【0046】
次のステップS90では、ステップS80で行われた注意喚起により、危険であると推定された人物が自車両100の接近に気づき危険を回避したか否かを判定する。この判定は、例えば、暗視カメラ120により取り込んだ危険であると推定された人物の熱画像データの位置の移動を検出することで、該人物が静止したり、危険を回避する方向に移動したことを検知した場合は、危険を回避したと判定し、該人物が静止せず同じ方向に移動していることを検知した場合は、危険を回避していないと判定することにより行われる。ここで、人物が静止したり、危険を回避する方向に移動したことを検知した場合、すなわち、危険を回避したと判定した場合は、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、静止せずに同じ方向に移動していることを検知した場合、すなわち、危険を回避していないと判定した場合は、次のステップS100に進む。
【0047】
ステップS100で、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避したか否かの判定を行う。この判定は、例えば、自車両100に対してステップS70で危険であると推定された人物がいまだ危険であるか否か推定し、その推定結果に基づいて危険を回避したか否かを判定することにより行われる。
【0048】
ここで、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避した場合、例えば、ドライバ200が自車両100の速度を減速させたり、走行方向を変更させたりすることにより、自車両100に対するステップ70で危険であると推定された人物の危険度が下がり、自車両100に対して該人物が危険でないと推定された場合は、危険を回避したと判定して、ステップS80で開始された注意喚起のための配光可変ライト180による光の照射を停止するように、ライト駆動装置175に指示を出力し、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、自車両100に対するステップS70で危険であると推定された人物の危険度が下がることなく、いまだ危険であると推定された場合は、危険を回避していないと判定して、ステップS110に進む。
【0049】
ステップS110で、ドライバ200に対して、自車両100に人物が接近していることを報知するために、警報を発する指示を、警報装置(図示せず)に出力する。
【0050】
次のステップS120では、ステップS110で警報装置により発せられた警報によって、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避したか否かの判定を行う。例えば、ドライバ200が自車両100の速度を減速させたり、走行方向を変更させたりすることにより、自車両100に対するステップS70で危険であると推定された人物の危険度が下がり、自車両100に対して該人物が、危険でないと推定された場合は、危険を回避したと判定し、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、自車両100に対する該人物の危険度が下がることなく、いまだ危険であると推定された場合は、危険を回避していないと判定し、次のステップS130に進む。
【0051】
ステップS130で、自車両100の車速を制御する車速制御部(図示せず)に対して、自車両100の速度を低下させるために、所定の速度まで減速するように指示を出力する。
【0052】
そして、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。
【0053】
なお、本制御ルーチンのステップS20〜S40、及びS90は、人物判断部130で実行され、ステップS50〜S80、及びS100〜S130は、危険度推定部170で実行される。
【0054】
図6〜図14は、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190から指示が出力されたライト駆動装置175の制御によって配光可変ライト180から照射される光の各種の照射形態(照射形態1〜照射形態9)を示す図である。
【0055】
[照射形態1]
図6に示すように、人物500に向かって路面700にT字の形状の照射パターン400の照射光300が照射される。同図に示されるように、自車両100から人物500に延びるライン410は、自車両100から人物500の方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で横に延びるライン420は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンである。
【0056】
[照射形態2]
図7に示すように、人物500に向かって路面700にY字の形状の照射パターン430の照射光310が照射される。同図に示されるように、自車両100から人物500に延びるライン440は、自車両100から人物500の方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で横に延びるライン450は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンである。
【0057】
なお、図6または図7に示した照射パターン400の照射光300または照射パターン430の照射光310は、人物500の目の下方まで照らしてもよい。
【0058】
[照射形態3]
図8に示すように、危険度推定部170によって推定された人物500の移動方向を示す矢印の形状の照射パターン460の照射光320が路面700に照射される。同図に示すように、自車両100から人物500に延びるライン470は、自車両100から人物500の現時点での方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で曲がり、その先端に矢印があるライン480は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンであり、かつ、人物500の移動方向を示す照射パターンである。
【0059】
なお、図6〜図8に示した照射形態では、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が大きくなるに従って、ドライバ200が本能的に動いているものや目立つものに焦点を当てて見ようとする誘目性が高くなるように、すなわち、誘目効果が高くなるように、照射パターンの形状を大きくしたり、照射パターンの点滅状態の点滅周期を短くしたり、あるいは照射パターンの色を赤色に近づけたりする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力するようにしてもよい。
【0060】
また、図8に示した照射形態3における人物500の移動方向を示す矢印となる照射パターン460は、自車両100から人物500に向かって、照射光の路面700上の照射位置を移動させることにより得られる照射位置の移動軌道によって得られるものであってもよい。この場合、照射パターン460は、矢印に限られず、人物500の移動方向を示すスポットライトの移動軌跡等によって得られるものであってもよい。例えば、以下の[実施形態4]で詳細を説明するような照射パターンであってもよい。また、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が大きくなるに従って、誘目効果が高くなるように、その移動軌跡を大きくする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力するようにしてもよい。
【0061】
[照射形態4]
図9に示すように、単一のスポットライトの照射パターン465の照射光325は、自車両100から人物500に向かって、危険度推定部170によって推定された人物500の移動方向を示すように、路面700上の照射位置が、フック状に移動する。すなわち、本照射形態4では、制御装置190は、路面700上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように、ライト駆動装置175に指示を出力する。
【0062】
[照射形態5]
図10に示すように、単一のスポットライトの照射パターン520の照射光330は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。このような照射光330の路面700上の照射位置の移動は、ドライバ200への誘目効果が高く、危険であると推定された人物500を認識させる効果が高い。
【0063】
[照射形態6]
図11に示すように、矢印の照射パターン530の照射光340は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。このような照射光340の路面700上の照射位置の移動は、図10に示された照射光330の移動と同様に、ドライバ200への誘目効果が高く、危険であると推定された人物500を認識させる効果が高い。また、矢印の表示により、ドライバ200は瞬時に人物500が位置する方向が特定できる。
【0064】
[照射形態7]
図12に示すように、単一のスポットライトの照射パターン540の照射光350は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。そして、人物500の手前で分離し、路面700上の照射位置が左右に移動する。人物500の手前で分離した当該スポットライトの照射パターン550は、自車両100から人物500までの距離を示す。
【0065】
[照射形態8]
図13に示すように、照射形態8では、照射光360及び照射光370が配光可変ライト180から照射される。自車両100から人物500までの距離を示す照射パターン560の照射光360は、常時静止させて照射され、自車両100から人物500の方向を示す照射パターン570の照射光370は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。
【0066】
[照射形態9]
図14に示すように、複数のスポットライトを有する照射パターン580の照射光380は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。
【0067】
照射形態9は、図10で説明した照射形態5における単一のスポットライトを複数にしたものであるが、発明者は、この複数にした効果を実験により体験して見出した。以下に実験結果について説明する。単一のスポットライトの照射パターン520を自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置を移動させたところ、ドライバ200から見た場合、危険と推定された人物500を的確に認識することができたが、当該人物500から見た場合、単一のスポットライトが自車両100から当該人物500側に速い速度で向かってくるため、当該人物500は恐怖を感じることが分かった。そこで、複数のスポットライトを自車両100から人物500に向かった直線上に配置した照射パターン580の照射光380を自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置を移動させたところ、2番目、3番目のスポットライトの照射光380の存在により、単一のスポットライトの照射パターンに比べて、人物500は恐怖が低減することがわかった。
【0068】
なお、図9〜図14に示した照射光は、人物500の目の下方まで照らしてもよい。また、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように、路面700上の照射位置の移動速度を速くしたり、照射パターンの形状を大きくしたり、光の点滅状態の点滅周期を短くしたり、照射パターンの色を赤色に近づけたり、または光の照射位置の移動軌跡を大きくしたりする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力してもよい。
【0069】
例えば、制御装置190は、自車両100と人物500とが衝突するまでの時間tが第1の所定時間以下である場合、例えば、6秒以下である場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターン(スポットライトの照射パターン520、矢印の照射パターン530、スポットライトの照射パターン540、スポットライトの照射パターン570など)の数を1つにして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vfとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。また、例えば、制御装置190は、衝突するまでの時間tが第1の所定時間より大きく第2の所定時間以下である場合、例えば、6秒より大きく10秒以下である場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターンの数を1つにして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vsとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。また、例えば、制御装置190は、衝突するまでの時間tが第2の所定時間より大きい場合、例えば、10秒より大きい場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターンの数を複数にして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vsとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。ここで、所定速度Vfと所定速度Vsとの関係はVf>Vsで表せられる。
【0070】
また、本実施の形態では、操舵角センサ150を用いて自車両100の移動方向を演算する例について説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ジャイロや、GPS信号を受信して位置を算出するナビゲーション装置を用いて自車両100の移動方向を演算するようにしてもよい。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る注意喚起照射装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施の形態では、配光可変ライト180は、図15に示すように、光源2と、集光レンズ3と、近赤フィルター4と、カラーフィルター5と、光源2からの光を反射することによって配光を制御するMEMSミラーアレイ6と、集光レンズ7とを備えている。
【0073】
また、本実施の形態では、注意喚起照射装置11は、図16に示すように、上記で説明した第1の実施の形態の各構成に加えて、更に、照度センサ161と、カメラ162と、雨量センサ163とを備えている。
【0074】
照度センサ161は、自車両100周辺の照度(明るさ)を検出する。
【0075】
カメラ162は、例えば、光学式カメラが用いられ、自車両100が走行する路面700を撮影し、撮影により得られた画像を画像データとして出力する。
【0076】
雨量センサ163は、雨量を検出する。
【0077】
これら照度センサ161、カメラ162、及び雨量センサ163は、自車両100の周辺環境の状態を検出するために用いられる。
【0078】
また、第1の実施の形態では、制御装置190は、人物判断部130及び危険度推定部170を備えているが、本実施の形態では、更に、周辺環境検知部185を備えている。
【0079】
周辺環境検知部185は、照度センサ161からの検出信号に基づいて自車両100周辺の明るさを算出する。周辺環境検知部185は、この算出した明るさが所定値以下の場合には、照射される光の強度が所定値以下となるように、ライト駆動装置175に対して指示を出力する。これにより、制御装置190から指示が出力されたライト駆動装置175の制御によって配光可変ライト180から照射される光の強度が弱くなるため、省エネを図ることができる。
【0080】
また、周辺環境検知部185は、カメラ162からの路面700の画像データと、予めHDD(ハード ディスク ドライブ、図示しない)に記憶された良好な路面の画像データとを比較することにより、路面700の路面状態が良好であるのか、それとも路面状態が不良であるのかを判定する。なお、以下、路面状態が不良である路面のことを悪路と呼ぶ。ここで、悪路には、砂利や走行の妨げとなる石等が存在する路面が含まれる。
【0081】
また、周辺環境検知部185は、雨量センサ163の検出結果に基づいて、自車両100周辺の天候が雨天であるか否かを判定する。
【0082】
そして、周辺環境検知部185は、路面状態が不良であると判定した場合、すなわち自車両100が走行中の路面700が悪路であると判定した場合、または天候が雨天であると判定した場合には、上記の照射パターン465、520、530、540、570、及び580に代えて、図17(A)に示すような中心部801よりも周辺のリング模様のリング部802の輝度が高くなるような照射パターン800の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力する。この照射パターン800は、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい。これにより、ドライバ200及び人物500の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0083】
なお、悪路であると判定した場合または雨天であると判定した場合には、周辺環境検知部185は、図17(B)に示すような、リング部812のみ光が照射される照射パターン810の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。また、図17(C)に示すような、リング部822が細分化された照射パターン820の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。また、図17(D)に示すような、円形の照射パターン831を複数含んで構成される照射パターン830の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。
【0084】
なお、上記の照射パターン800は、図18(A)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよい。同様に、上記の照射パターン810は、図18(B)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよいし、上記の照射パターン820は、図18(C)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよい。
【0085】
また、周辺環境検知部185は、悪路であると判定した場合または雨天であると判定した場合には、上記の照射パターン465、520、530、540、570、及び580に代えて、上記の照射パターン400、430、460、又は図19に示すような自車両100から人物500に向かって幅が広くなる照射パターン840の光を所定時間の間、照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。これにより、悪路の場合や雨天の場合等において、ドライバ200及び人物500の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0086】
なお、本実施の形態において、カメラ162を用いて、路面状態を検出する例について説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、路面状態を検出することが可能な車両プローブ装置を用いて路面状態を検出してもよい。また、路面μ(スリップ率)センサを用いて路面状態を検出してもよい。なお、この場合には、スリップ率が所定値以上の場合に路面状態が不良であると判定する。また、タイヤ空気圧センサを用いて、このタイヤ空気圧センサによって検出されたタイヤの空気圧に基づいて路面状態を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の注意喚起照射装置のブロック図である。
【図3】本実施形態の注意喚起照射装置の制御装置のCPUが行う制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】上記フローチャートにおけるステップS70及びステップS80で行われる処理について説明するための図である。
【図5】上記フローチャートにおけるステップS70及びステップS80で行われる処理について説明するための図である。
【図6】照射形態1を示す図である。
【図7】照射形態2を示す図である。
【図8】照射形態3を示す図である。
【図9】照射形態4を示す図である。
【図10】照射形態5を示す図である。
【図11】照射形態6を示す図である。
【図12】照射形態7を示す図である。
【図13】照射形態8を示す図である。
【図14】照射形態9を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態の配光可変ライトを説明するための図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態の注意喚起照射装置のブロック図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の照射パターンを示す図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態の照射パターンの他の例を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態の照射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0088】
110 ヘッドライト
120 暗視カメラ
130 人物判断部
140 距離センサ
150 操舵角センサ
160 車速センサ
170 危険度推定部
175 ライト駆動装置
180 配光可変ライト
190 制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、注意喚起照射装置に係り、特に、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことができる車両用注意喚起照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向車両のドライバを幻惑することがないように、照射光を照射することにより車両外の人物及び自車両のドライバに対して注意喚起を行う警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の警報装置は、人物が対向車両領域外に存在する場合には、人物に対して、所定のマーク(パターン)、例えば、三角形のマークの照射光を照射する。また、人物が対向車両領域内に存在する場合には、対向車両領域外で、人物と自車両との間で照射光により路面上に形成したスポットを往復移動させる。
【特許文献1】特開2005−324679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人物が対向車両領域外に存在した場合に、人物に対して所定のパターンを照射しても、人物の着衣が黒色である場合には、光が着衣に吸収されることから、照射されたパターンが認識され難くなるため、ドライバは危険である人物を認識し難くなる。
【0005】
また、人物が対向車両領域内に存在した場合に、スポットを往復移動させると、復路では、パターンが自分に向かってくるので、違和感を感じるドライバも存在する。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことが可能な注意喚起照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の注意喚起照射装置は、人物を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された人物の自車両に対する危険度を推定する危険度推定手段と、前記危険度推定手段によって推定された危険度に基づいて、前記検出手段によって検出された人物が自車両に対して危険であるか否かを推定する危険推定手段と、光を照射する照射手段と、前記危険推定手段によって危険であると推定された場合に、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように前記照射手段を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0008】
本発明の注意喚起照射装置によれば、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が照射手段から路面に照射されるので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び人物の両者に対して注意喚起を行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明の制御手段は、自車両から危険であると推定された人物に向かって、路面上の照射位置が移動するように照射手段を制御することができる。これにより、ドライバ及び危険であると推定された人物に対して注意喚起が行われた際に、照射された光がドライバに向かってくることがないので、ドライバは違和感を感じずにすむ。
【0010】
また、本発明の制御手段は、危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、照射位置の移動速度が速くなるように照射手段を制御することができる。
【0011】
また、本発明の制御手段は、更に、危険であると推定された人物の移動方向を表示する光が路面に照射されるように、照射手段を制御することができる。
【0012】
また、本発明の制御手段は、以下の何れかのように、照射手段を制御することができる。
・危険であると推定された人物の移動方向を示すように、路面上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように前記照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向を示す、自車両から該人物に延びる光のラインと、自車両から該人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインとを照射するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動し、該人物の手前に到達した時点で、該照射光が分離し、分離した照射光の各々の路面上の照射位置が左右に移動するように照射手段を制御する。
・危険であると推定された人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインと、該人物の方向を示すように、自車両から該人物に向かって路面上の照射位置が移動する少なくとも1つの照射光とを照射するように照射手段を制御する。
【0013】
また、本発明の制御手段は、危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように照射手段から照射された光の色、光の照射パターン、光の点滅状態、及び光の照射位置の移動軌跡の少なくとも1つを制御することができる。このように制御することにより、ドライバ及び危険であると推定された人物は、心理的に照射位置を認識し易くなる。
【0014】
また、本発明の注意喚起照射装置は、自車両の環境状態を検出する環境検出手段を更に含み、前記制御手段は、更に、前記環境検出手段によって検出された環境状態に基づいた所定の光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。これにより、自車両の環境状態に対応する光が照射され、ドライバ及び人物の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記環境検出手段を、前記路面の路面状態または天候を検出するようにし、前記制御手段を、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【0016】
また、前記環境検出手段を、前記路面の路面状態または天候を検出するようにし、前記制御手段を、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、一定時間の間、光が照射され続けるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【0017】
また、前記環境検出手段を、自車両周辺の明るさを検出するようにし、前記制御手段を、検出された明るさに基づいて、該明るさが所定値以下の場合には、照射強度が所定値以下の光が照射されるように前記照射手段を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の注意喚起照射装置によれば、自車両から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるので、人物の着衣の色に係わらずドライバ及び危険であると推定された人物の両者に対して注意喚起を行うことができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の注意喚起照射装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1(1)、(2)及び図2に示すように、車両100に取り付けられた第1の実施の形態に係る注意喚起照射装置1には、暗視カメラ120、距離センサ140、操舵角センサ150、車速センサ160、及び制御装置190が設けられている。
【0021】
暗視カメラ120は、例えば、赤外線カメラが用いられ、自車両100の前方を撮影し、撮影により得られた熱画像を熱画像データとして出力する。この暗視カメラ120は、制御装置190と接続されている。
【0022】
制御装置190は、CPU、各種処理ルーチンのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAMを含んだマイクロコンピュータで構成されている。制御装置190は、以下で説明する制御ルーチンを実行するマイクロコンピュータを機能ブロックで表すと、人物判断部130及び危険度推定部170で表すことができる。人物判断部130には、暗視カメラ120が接続され、危険度推定部170には、距離センサ140、操舵角センサ150、車速センサ160、及びライト駆動装置175が接続されている。
【0023】
人物判断部130は、暗視カメラ120からの熱画像データに基づいてパターンマッチング等の画像処理を行うことによって、人物の特徴(例えば、温度や形状等)を検出することにより、自車両100の前方に位置する歩行者や二輪車に乗車している乗車者等の人物を検出する。人物判断部130は、危険度推定部170と接続されている。
【0024】
距離センサ140は、例えば、ミリ波レーダが用いられ、人物判断部130によって検出された人物までの距離を検出する。検出した距離から、人物の相対移動速度、及び相対位置(自車両100から該人物までの距離、及び自車両100に対する該人物が位置する方向)を求めることができる。
【0025】
操舵角センサ150は、ステアリングの操舵角を検出する。検出した操舵角からは、自車両100の移動方向を求めることができる。また、車速センサ160は、車輪の回転数を検出する。検出した車輪の回転数からは、自車両100の移動速度を求めることができる。
【0026】
危険度推定部170は、距離センサ140からの距離信号に基づいて、自車両100に対する該人物の相対移動速度及び相対移動方向を演算する。危険度推定部170は、演算した該人物の相対移動速度と車速センサ160からの検出信号に基づいて演算された自車両100の移動速度との差から、該人物の移動速度を算出する。また、危険度推定部170は、演算した該人物の相対移動方向と操舵角センサ150からの舵角信号に基づいて演算された自車両100の移動方向との差から、該人物の移動方向を算出する。
【0027】
また、危険度推定部170は、演算された自車両100の移動速度及び移動方向、並びに算出された人物の移動速度及び移動方向に基づいて、自車両100に対する人物の危険度を推定する。
【0028】
また、危険度推定部170は、推定した危険度と基準値とを比較することによって、自車両100に対して人物が危険であるか否かを推定する。
【0029】
この危険度推定部170には、配光可変ライト180に接続されたライト駆動装置175が接続されている。ライト駆動装置175は、危険度推定部170からの指示に基づいて、配光可変ライト180から照射される光の配光(照射形態)を制御する。
【0030】
また、危険度推定部170は、人物判断部130によって検出された人物が危険であると推定した場合に、ドライバ及び危険であると推定された人物の両者に対して注意喚起を行うための光、例えば、自車両100から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光を路面に照射する指示を、ライト駆動装置175に出力する。
【0031】
配光可変ライト180は、ランプとランプから照射された光の配光を制御する配光制御装置とで構成されている。配光制御装置は、ランプの光を反射することによって配光を制御するDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等の反射型空間光変調素子、またはランプの光を透過することによって配光を制御する液晶表示素子等の透過型空間光変調素子で構成することができる。
【0032】
この配光可変ライト180では、所定の配光が得られるように配光制御装置を駆動してランプを点灯するか、またはランプを点灯した状態で所定の配光が得られるように配光制御装置を駆動することにより所定の配光を得ることができる。
【0033】
図3は、本実施形態の注意喚起照射装置1の制御装置190のCPUが行う制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0034】
この制御ルーチンは、注意喚起照射装置1の電源(図示せず)が投入されると実行され、ステップS20で、暗視カメラ120を駆動し、自車両100の前方の撮影により得られた熱画像を熱画像データとして取り込み、次のステップS30で熱画像データに基づいて自車両100の前方に位置する人物の検出を行う。
【0035】
次のステップS40で、ステップS30で人物が検出されたか否かを判定し、否定判定がされた場合はステップS20に戻って人物の検出を継続し、肯定判定がされた場合は、次のステップS50に進む。
【0036】
ステップS50で、距離センサ140から出力された距離信号を取り込み、ステップ30で検出された人物の自車両100に対する相対移動速度、及び相対位置を演算する。
【0037】
次のステップS60で、操舵角センサ150から出力された舵角信号を取り込んで、自車両100の移動方向の演算を開始すると共に、車速センサ160で検出された自車両100の移動速度を示す検出信号を取り込んで、自車両100の移動速度の演算を開始する。
【0038】
次のステップS70で、これらの演算された自車両100の移動方向及び移動速度、並びに該人物の相対移動速度及び相対位置に基づいて、該人物の移動速度及び移動方向を算出する。そして、算出した該人物の移動速度及び移動方向、並びに演算された自車両100の移動方向及び移動速度に基づいて、自車両100に対する該人物の危険度を推定する。そして、推定した危険度と基準値とを比較することにより、自車両100に対して該人物が危険であるか否かを推定する。
【0039】
ここで、危険でないと推定した場合は、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、危険であると推定した場合は、次のステップS80に進む。
【0040】
ステップS80で、ステップS70で危険であると推定された人物の相対移動速度及び相対位置に基づいて、ドライバ200及び該人物に対して注意喚起を行うために、以下で説明する図6乃至図14に図示した光、例えば、自車両100から危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように、ライト駆動装置175に対して指示を出力する。
【0041】
ここで、ステップS70及びステップS80で行われる処理について、例をあげて、説明する。
【0042】
図4に図示されるように、自車両V1が左カーブに差しかかり、その前方に人物H1、及びH2が存在する状況を例として説明する。
【0043】
このとき、ステップS50で、制御装置190のCPUは、距離センサ140からの距離信号に基づいて、検出された人物H1及びH2の相対移動速度及び相対位置を演算する。そして、演算された相対移動速度及び相対位置、並びに演算された自車両100の移動方向及び移動速度に基づいて、人物H1及びH2の移動速度及び移動方向を繰り返し演算し、人物H1及びH2の距離の変化及び位置の変化を求める。そして、求めた距離の変化及び位置の変化に基づいて、人物H1及びH2の移動速度と移動方向とを推測する。
【0044】
また、ステップS60で、制御装置190のCPUは、操舵角センサ150から取り込んだ舵角信号に基づいて、自車両V1の移動方向を繰り返し演算し、自車両V1の移動方向の変化を求める。また、車速センサ160から取り込んだ検出信号に基づいて、自車両V1の移動速度を繰り返し演算し、自車両V1の移動速度の変化を求める。そして、これらの自車両V1の移動方向の変化及び移動速度の変化に基づいて、自車両V1の移動速度と移動方向とを推測する。
【0045】
そして、ステップS70で、推測した人物H1及びH2の移動速度及び移動方向、並びに推測した自車両V1の移動速度及び移動方向に基づいて、人物H1及びH2と自車両V1とが衝突する確率を求め、求めた確率と所定値とを比較することにより、人物H1及びH2が自車両V1に対して危険であるか否か推定する。例えば、図5に図示されるように、自車両V1と人物H2とが、所定時間tmax以内となる時間t後に、例えば、6秒後に地点Xで衝突する確率が高いと推定された場合、すなわち、自車両V1に対して人物H2が危険であると推定された場合にはステップ80で以下の処理を行う。すなわち、ステップS80で、人物H2の移動速度及び移動方向、及び自車両V1から人物H2までの距離及び人物H2の方向に基づいて、ドライバ200及び人物H2に対して注意喚起を行うために、以下で説明する図6乃至図14に図示した光、例えば、自車両V1から危険であると推定された人物H2の方向及び人物H2までの距離を表示する光が配光可変ライト180により照射されるように、ライト駆動装置175に指示を出力する。なお、推定された衝突するまでの時間tは、危険度を表しており、数値が小さくなるに従って、危険度が高くなる。
【0046】
次のステップS90では、ステップS80で行われた注意喚起により、危険であると推定された人物が自車両100の接近に気づき危険を回避したか否かを判定する。この判定は、例えば、暗視カメラ120により取り込んだ危険であると推定された人物の熱画像データの位置の移動を検出することで、該人物が静止したり、危険を回避する方向に移動したことを検知した場合は、危険を回避したと判定し、該人物が静止せず同じ方向に移動していることを検知した場合は、危険を回避していないと判定することにより行われる。ここで、人物が静止したり、危険を回避する方向に移動したことを検知した場合、すなわち、危険を回避したと判定した場合は、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、静止せずに同じ方向に移動していることを検知した場合、すなわち、危険を回避していないと判定した場合は、次のステップS100に進む。
【0047】
ステップS100で、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避したか否かの判定を行う。この判定は、例えば、自車両100に対してステップS70で危険であると推定された人物がいまだ危険であるか否か推定し、その推定結果に基づいて危険を回避したか否かを判定することにより行われる。
【0048】
ここで、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避した場合、例えば、ドライバ200が自車両100の速度を減速させたり、走行方向を変更させたりすることにより、自車両100に対するステップ70で危険であると推定された人物の危険度が下がり、自車両100に対して該人物が危険でないと推定された場合は、危険を回避したと判定して、ステップS80で開始された注意喚起のための配光可変ライト180による光の照射を停止するように、ライト駆動装置175に指示を出力し、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、自車両100に対するステップS70で危険であると推定された人物の危険度が下がることなく、いまだ危険であると推定された場合は、危険を回避していないと判定して、ステップS110に進む。
【0049】
ステップS110で、ドライバ200に対して、自車両100に人物が接近していることを報知するために、警報を発する指示を、警報装置(図示せず)に出力する。
【0050】
次のステップS120では、ステップS110で警報装置により発せられた警報によって、ドライバ200が人物の接近に気付き危険を回避したか否かの判定を行う。例えば、ドライバ200が自車両100の速度を減速させたり、走行方向を変更させたりすることにより、自車両100に対するステップS70で危険であると推定された人物の危険度が下がり、自車両100に対して該人物が、危険でないと推定された場合は、危険を回避したと判定し、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。一方、自車両100に対する該人物の危険度が下がることなく、いまだ危険であると推定された場合は、危険を回避していないと判定し、次のステップS130に進む。
【0051】
ステップS130で、自車両100の車速を制御する車速制御部(図示せず)に対して、自車両100の速度を低下させるために、所定の速度まで減速するように指示を出力する。
【0052】
そして、ステップS20に戻って上記で説明した処理を繰り返す。
【0053】
なお、本制御ルーチンのステップS20〜S40、及びS90は、人物判断部130で実行され、ステップS50〜S80、及びS100〜S130は、危険度推定部170で実行される。
【0054】
図6〜図14は、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190から指示が出力されたライト駆動装置175の制御によって配光可変ライト180から照射される光の各種の照射形態(照射形態1〜照射形態9)を示す図である。
【0055】
[照射形態1]
図6に示すように、人物500に向かって路面700にT字の形状の照射パターン400の照射光300が照射される。同図に示されるように、自車両100から人物500に延びるライン410は、自車両100から人物500の方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で横に延びるライン420は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンである。
【0056】
[照射形態2]
図7に示すように、人物500に向かって路面700にY字の形状の照射パターン430の照射光310が照射される。同図に示されるように、自車両100から人物500に延びるライン440は、自車両100から人物500の方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で横に延びるライン450は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンである。
【0057】
なお、図6または図7に示した照射パターン400の照射光300または照射パターン430の照射光310は、人物500の目の下方まで照らしてもよい。
【0058】
[照射形態3]
図8に示すように、危険度推定部170によって推定された人物500の移動方向を示す矢印の形状の照射パターン460の照射光320が路面700に照射される。同図に示すように、自車両100から人物500に延びるライン470は、自車両100から人物500の現時点での方向を示す照射パターンであり、人物500の手前で曲がり、その先端に矢印があるライン480は、自車両100から人物500までの距離を示す照射パターンであり、かつ、人物500の移動方向を示す照射パターンである。
【0059】
なお、図6〜図8に示した照射形態では、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が大きくなるに従って、ドライバ200が本能的に動いているものや目立つものに焦点を当てて見ようとする誘目性が高くなるように、すなわち、誘目効果が高くなるように、照射パターンの形状を大きくしたり、照射パターンの点滅状態の点滅周期を短くしたり、あるいは照射パターンの色を赤色に近づけたりする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力するようにしてもよい。
【0060】
また、図8に示した照射形態3における人物500の移動方向を示す矢印となる照射パターン460は、自車両100から人物500に向かって、照射光の路面700上の照射位置を移動させることにより得られる照射位置の移動軌道によって得られるものであってもよい。この場合、照射パターン460は、矢印に限られず、人物500の移動方向を示すスポットライトの移動軌跡等によって得られるものであってもよい。例えば、以下の[実施形態4]で詳細を説明するような照射パターンであってもよい。また、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が大きくなるに従って、誘目効果が高くなるように、その移動軌跡を大きくする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力するようにしてもよい。
【0061】
[照射形態4]
図9に示すように、単一のスポットライトの照射パターン465の照射光325は、自車両100から人物500に向かって、危険度推定部170によって推定された人物500の移動方向を示すように、路面700上の照射位置が、フック状に移動する。すなわち、本照射形態4では、制御装置190は、路面700上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように、ライト駆動装置175に指示を出力する。
【0062】
[照射形態5]
図10に示すように、単一のスポットライトの照射パターン520の照射光330は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。このような照射光330の路面700上の照射位置の移動は、ドライバ200への誘目効果が高く、危険であると推定された人物500を認識させる効果が高い。
【0063】
[照射形態6]
図11に示すように、矢印の照射パターン530の照射光340は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。このような照射光340の路面700上の照射位置の移動は、図10に示された照射光330の移動と同様に、ドライバ200への誘目効果が高く、危険であると推定された人物500を認識させる効果が高い。また、矢印の表示により、ドライバ200は瞬時に人物500が位置する方向が特定できる。
【0064】
[照射形態7]
図12に示すように、単一のスポットライトの照射パターン540の照射光350は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。そして、人物500の手前で分離し、路面700上の照射位置が左右に移動する。人物500の手前で分離した当該スポットライトの照射パターン550は、自車両100から人物500までの距離を示す。
【0065】
[照射形態8]
図13に示すように、照射形態8では、照射光360及び照射光370が配光可変ライト180から照射される。自車両100から人物500までの距離を示す照射パターン560の照射光360は、常時静止させて照射され、自車両100から人物500の方向を示す照射パターン570の照射光370は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。
【0066】
[照射形態9]
図14に示すように、複数のスポットライトを有する照射パターン580の照射光380は、自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置が移動する。この照射位置の移動方向は、自車両100から人物500の方向を示している。
【0067】
照射形態9は、図10で説明した照射形態5における単一のスポットライトを複数にしたものであるが、発明者は、この複数にした効果を実験により体験して見出した。以下に実験結果について説明する。単一のスポットライトの照射パターン520を自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置を移動させたところ、ドライバ200から見た場合、危険と推定された人物500を的確に認識することができたが、当該人物500から見た場合、単一のスポットライトが自車両100から当該人物500側に速い速度で向かってくるため、当該人物500は恐怖を感じることが分かった。そこで、複数のスポットライトを自車両100から人物500に向かった直線上に配置した照射パターン580の照射光380を自車両100から人物500に向かって、路面700上の照射位置を移動させたところ、2番目、3番目のスポットライトの照射光380の存在により、単一のスポットライトの照射パターンに比べて、人物500は恐怖が低減することがわかった。
【0068】
なお、図9〜図14に示した照射光は、人物500の目の下方まで照らしてもよい。また、危険度推定部170によって推定された人物500の危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように、路面700上の照射位置の移動速度を速くしたり、照射パターンの形状を大きくしたり、光の点滅状態の点滅周期を短くしたり、照射パターンの色を赤色に近づけたり、または光の照射位置の移動軌跡を大きくしたりする指示を、本制御ルーチンのステップS80で、制御装置190は、ライト駆動装置175に出力してもよい。
【0069】
例えば、制御装置190は、自車両100と人物500とが衝突するまでの時間tが第1の所定時間以下である場合、例えば、6秒以下である場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターン(スポットライトの照射パターン520、矢印の照射パターン530、スポットライトの照射パターン540、スポットライトの照射パターン570など)の数を1つにして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vfとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。また、例えば、制御装置190は、衝突するまでの時間tが第1の所定時間より大きく第2の所定時間以下である場合、例えば、6秒より大きく10秒以下である場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターンの数を1つにして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vsとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。また、例えば、制御装置190は、衝突するまでの時間tが第2の所定時間より大きい場合、例えば、10秒より大きい場合には、配光可変ライト180により照射される光の照射パターンの数を複数にして、該光の路面上の照射位置を移動する速度が所定速度Vsとなるように、ライト駆動装置175に指示を出力するようにしてもよい。ここで、所定速度Vfと所定速度Vsとの関係はVf>Vsで表せられる。
【0070】
また、本実施の形態では、操舵角センサ150を用いて自車両100の移動方向を演算する例について説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ジャイロや、GPS信号を受信して位置を算出するナビゲーション装置を用いて自車両100の移動方向を演算するようにしてもよい。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る注意喚起照射装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施の形態では、配光可変ライト180は、図15に示すように、光源2と、集光レンズ3と、近赤フィルター4と、カラーフィルター5と、光源2からの光を反射することによって配光を制御するMEMSミラーアレイ6と、集光レンズ7とを備えている。
【0073】
また、本実施の形態では、注意喚起照射装置11は、図16に示すように、上記で説明した第1の実施の形態の各構成に加えて、更に、照度センサ161と、カメラ162と、雨量センサ163とを備えている。
【0074】
照度センサ161は、自車両100周辺の照度(明るさ)を検出する。
【0075】
カメラ162は、例えば、光学式カメラが用いられ、自車両100が走行する路面700を撮影し、撮影により得られた画像を画像データとして出力する。
【0076】
雨量センサ163は、雨量を検出する。
【0077】
これら照度センサ161、カメラ162、及び雨量センサ163は、自車両100の周辺環境の状態を検出するために用いられる。
【0078】
また、第1の実施の形態では、制御装置190は、人物判断部130及び危険度推定部170を備えているが、本実施の形態では、更に、周辺環境検知部185を備えている。
【0079】
周辺環境検知部185は、照度センサ161からの検出信号に基づいて自車両100周辺の明るさを算出する。周辺環境検知部185は、この算出した明るさが所定値以下の場合には、照射される光の強度が所定値以下となるように、ライト駆動装置175に対して指示を出力する。これにより、制御装置190から指示が出力されたライト駆動装置175の制御によって配光可変ライト180から照射される光の強度が弱くなるため、省エネを図ることができる。
【0080】
また、周辺環境検知部185は、カメラ162からの路面700の画像データと、予めHDD(ハード ディスク ドライブ、図示しない)に記憶された良好な路面の画像データとを比較することにより、路面700の路面状態が良好であるのか、それとも路面状態が不良であるのかを判定する。なお、以下、路面状態が不良である路面のことを悪路と呼ぶ。ここで、悪路には、砂利や走行の妨げとなる石等が存在する路面が含まれる。
【0081】
また、周辺環境検知部185は、雨量センサ163の検出結果に基づいて、自車両100周辺の天候が雨天であるか否かを判定する。
【0082】
そして、周辺環境検知部185は、路面状態が不良であると判定した場合、すなわち自車両100が走行中の路面700が悪路であると判定した場合、または天候が雨天であると判定した場合には、上記の照射パターン465、520、530、540、570、及び580に代えて、図17(A)に示すような中心部801よりも周辺のリング模様のリング部802の輝度が高くなるような照射パターン800の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力する。この照射パターン800は、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい。これにより、ドライバ200及び人物500の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0083】
なお、悪路であると判定した場合または雨天であると判定した場合には、周辺環境検知部185は、図17(B)に示すような、リング部812のみ光が照射される照射パターン810の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。また、図17(C)に示すような、リング部822が細分化された照射パターン820の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。また、図17(D)に示すような、円形の照射パターン831を複数含んで構成される照射パターン830の光を照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。
【0084】
なお、上記の照射パターン800は、図18(A)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよい。同様に、上記の照射パターン810は、図18(B)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよいし、上記の照射パターン820は、図18(C)に示すように、照射パターン内の輝度が変化するものであってもよい。
【0085】
また、周辺環境検知部185は、悪路であると判定した場合または雨天であると判定した場合には、上記の照射パターン465、520、530、540、570、及び580に代えて、上記の照射パターン400、430、460、又は図19に示すような自車両100から人物500に向かって幅が広くなる照射パターン840の光を所定時間の間、照射するようにライト駆動装置175に対して指示を出力するようにしてもよい。これにより、悪路の場合や雨天の場合等において、ドライバ200及び人物500の両者に対して、より一層の注意喚起を行うことが可能となる。
【0086】
なお、本実施の形態において、カメラ162を用いて、路面状態を検出する例について説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、路面状態を検出することが可能な車両プローブ装置を用いて路面状態を検出してもよい。また、路面μ(スリップ率)センサを用いて路面状態を検出してもよい。なお、この場合には、スリップ率が所定値以上の場合に路面状態が不良であると判定する。また、タイヤ空気圧センサを用いて、このタイヤ空気圧センサによって検出されたタイヤの空気圧に基づいて路面状態を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の注意喚起照射装置のブロック図である。
【図3】本実施形態の注意喚起照射装置の制御装置のCPUが行う制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】上記フローチャートにおけるステップS70及びステップS80で行われる処理について説明するための図である。
【図5】上記フローチャートにおけるステップS70及びステップS80で行われる処理について説明するための図である。
【図6】照射形態1を示す図である。
【図7】照射形態2を示す図である。
【図8】照射形態3を示す図である。
【図9】照射形態4を示す図である。
【図10】照射形態5を示す図である。
【図11】照射形態6を示す図である。
【図12】照射形態7を示す図である。
【図13】照射形態8を示す図である。
【図14】照射形態9を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態の配光可変ライトを説明するための図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態の注意喚起照射装置のブロック図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の照射パターンを示す図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態の照射パターンの他の例を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態の照射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0088】
110 ヘッドライト
120 暗視カメラ
130 人物判断部
140 距離センサ
150 操舵角センサ
160 車速センサ
170 危険度推定部
175 ライト駆動装置
180 配光可変ライト
190 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された人物の自車両に対する危険度を推定する危険度推定手段と、
前記危険度推定手段によって推定された危険度に基づいて、前記検出手段によって検出された人物が自車両に対して危険であるか否かを推定する危険推定手段と、
光を照射する照射手段と、
前記危険推定手段によって危険であると推定された場合に、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように前記照射手段を制御する制御手段と、
を含む注意喚起照射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、自車両から危険であると推定された人物に向かって、路面上の照射位置が移動するように前記照射手段を制御する請求項1に記載の注意喚起照射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、前記照射位置の移動速度が速くなるように前記照射手段を制御する請求項2に記載の注意喚起照射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、更に、危険であると推定された人物の移動方向を表示する光が路面に照射されるように、前記照射手段を制御する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項5】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の移動方向を示すように、路面上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように前記照射手段を制御する請求項4に記載の注意喚起照射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向を示す、自車両から該人物に延びる光のラインと、自車両から該人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインとを照射するように前記照射手段を制御する請求項1に記載の注意喚起照射装置。
【請求項7】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項8】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動し、該人物の手前に到達した時点で、該照射光が分離し、分離した照射光の各々の路面上の照射位置が左右に移動するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項9】
前記制御手段は、危険であると推定された人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインと、該人物の方向を示すように、自車両から該人物に向かって路面上の照射位置が移動する少なくとも1つの照射光とを照射するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように、前記照射手段から照射された光の色、光の照射パターン、光の点滅状態、及び光の照射位置の移動軌跡の少なくとも1つを制御する請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項11】
自車両の環境状態を検出する環境検出手段を更に含み、
前記制御手段は、更に、前記環境検出手段によって検出された環境状態に基づいた所定の光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項12】
前記環境検出手段は、前記路面の路面状態または天候を検出し、
前記制御手段は、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【請求項13】
前記環境検出手段は、前記路面の路面状態または天候を検出し、
前記制御手段は、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、一定時間の間、光が照射され続けるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【請求項14】
前記環境検出手段は、自車両周辺の明るさを検出し、
前記制御手段は、検出された明るさに基づいて、該明るさが所定値以下の場合には、照射強度が所定値以下の光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【請求項1】
人物を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された人物の自車両に対する危険度を推定する危険度推定手段と、
前記危険度推定手段によって推定された危険度に基づいて、前記検出手段によって検出された人物が自車両に対して危険であるか否かを推定する危険推定手段と、
光を照射する照射手段と、
前記危険推定手段によって危険であると推定された場合に、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を表示する光が路面に照射されるように前記照射手段を制御する制御手段と、
を含む注意喚起照射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、自車両から危険であると推定された人物に向かって、路面上の照射位置が移動するように前記照射手段を制御する請求項1に記載の注意喚起照射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、前記照射位置の移動速度が速くなるように前記照射手段を制御する請求項2に記載の注意喚起照射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、更に、危険であると推定された人物の移動方向を表示する光が路面に照射されるように、前記照射手段を制御する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項5】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の移動方向を示すように、路面上の照射位置の移動軌跡が曲線的になるように前記照射手段を制御する請求項4に記載の注意喚起照射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向を示す、自車両から該人物に延びる光のラインと、自車両から該人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインとを照射するように前記照射手段を制御する請求項1に記載の注意喚起照射装置。
【請求項7】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項8】
前記制御手段は、危険であると推定された人物の方向及び該人物までの距離を示すように、少なくとも1つの照射光の路面上の照射位置が、自車両から該人物に向かって移動し、該人物の手前に到達した時点で、該照射光が分離し、分離した照射光の各々の路面上の照射位置が左右に移動するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項9】
前記制御手段は、危険であると推定された人物までの距離を示す、該人物の手前で横に延びる光のラインと、該人物の方向を示すように、自車両から該人物に向かって路面上の照射位置が移動する少なくとも1つの照射光とを照射するように前記照射手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の注意喚起照射装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記危険度推定手段によって推定された危険度が高くなるに従って、誘目効果が高くなるように、前記照射手段から照射された光の色、光の照射パターン、光の点滅状態、及び光の照射位置の移動軌跡の少なくとも1つを制御する請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項11】
自車両の環境状態を検出する環境検出手段を更に含み、
前記制御手段は、更に、前記環境検出手段によって検出された環境状態に基づいた所定の光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の注意喚起照射装置。
【請求項12】
前記環境検出手段は、前記路面の路面状態または天候を検出し、
前記制御手段は、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、縁の部分の照射強度が中央部の照射強度よりも大きい光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【請求項13】
前記環境検出手段は、前記路面の路面状態または天候を検出し、
前記制御手段は、検出された路面状態または天候に基づいて、該路面状態が不良である場合または該天候が雨天である場合には、一定時間の間、光が照射され続けるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【請求項14】
前記環境検出手段は、自車両周辺の明るさを検出し、
前記制御手段は、検出された明るさに基づいて、該明るさが所定値以下の場合には、照射強度が所定値以下の光が照射されるように前記照射手段を制御する請求項11に記載の注意喚起照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−143510(P2008−143510A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265379(P2007−265379)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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