説明

洗浄剤

【課題】フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤の提供。
【解決手段】ムクロジ果皮とグリセリンを質量比1:9〜1:1の割合で配合し、ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出することにより、フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィトケミカル(phytochemical)からなる保存安定性を有する洗浄剤に関する。さらに詳しくは、植物由来の成分を主とし、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、使用制限成分を最大配合量以上含まない洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フィトケミカルは植物性食品に含まれる物質の総称であり、広義には植物由来の化合物を指す。近年、このような植物由来の成分を主として含有する無毒無害の食品、化粧品、洗浄剤等が世間の関心を集めている。
このような食品等の提供にあたり、米国の自然製品協会(NPA,Natural Products Association)は、原料の95%以上が植物由来の成分であり、かつ、従来の使用禁止成分、使用規制成分(非特許文献1、参照)に加えて、次の表1に示す成分を使用していないことを基準としている。
日本では、自然化粧品とオーガニックコスメの認証基準がまだ確立されていないが、化粧品基準(非特許文献2、参照)における使用禁止成分や、使用規制成分を最大配合量以上含まないことに加えて、現在ではパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、アルコール、シリコン、鉱物油、プロピレングリコールおよびオイルを使用しないことを基準としている(ウィキペディア・フリー百科事典、「オーガニック化粧品」参照)。
以下、非特許文献2における使用規制成分(102品(タール系着色剤(赤219、黄色204)と別表2、3、4の化合物)を本発明において「旧表示指定成分」と慣称することがある。
ウィキペディア・フリー百科事典、「オーガニック化粧品」:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81
【0003】
【表1】

【0004】
これらの基準に従い、植物由来の成分を主として含有する洗浄剤として、例えば、ヤシ油由来のアルキルグルコシド(化学式1)100%からなる洗浄剤等が開発されてきた(特許文献1)。しかし、ヤシ油由来のアルキルグルコシドは椰子油及び果糖由来の半合成化合物であるため、この洗浄剤は100%植物由来の成分からなるとは言えなかった。
【0005】
【化1】

【0006】
また、ダイズ、アズキ等の様々な植物に含まれるサポニン(saponin)も、水に溶けて石鹸様の発泡作用を示すことから、植物由来の成分として洗浄剤に利用されている。例えば、リニアアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)等の常用の洗浄成分に、サポニンを少量配合した食器用台所洗剤等(特許文献2〜4)や、大豆とアスバラガスから抽出したサポニンを含む身体用洗浄剤組成物(特許文献5)等が提供されている。しかし、これらの洗浄剤に含まれるサポニンはごく少量であり、いずれも植物由来の成分を主として含む洗浄剤とはいえなかった。
【0007】
様々な植物に含まれるサポニンのうち、ムクロジ[和名:無患子/別名:ソープナッツ/生薬名:延命皮/学名:Sapindus Mukorossi/インド現地名:Ritha、Reetha]の果皮に含まれるサポニン(化学式2)は生分解性を有し、高い洗浄力を示すことが知られている。
このサポニンの洗浄力は、代表的な合成界面活性剤の洗浄力と、臨界ミセル濃度(CMC)を基準として比較されている(非特許文献3,4参照)。その結果、表2にまとめられるように、アルキルポリグルコシド(R=C12)やTX−100以外のほとんどの合成界面活性剤と比べて明らかに小さいCMC値を示すことから、良好な洗浄力を有することが確認されている。
【0008】
【表2】

【0009】
【化2】

【0010】
このようなムクロジ果皮由来のサポニンを用い、様々な洗浄剤が提供されている。例えば、ムクロジ果皮を原料としたサポニンの水抽出液にペクチンとエタノールとを配合した洗剤(特許文献6)、ユッカ抽出物とムクロジ抽出物を含有する細胞賦活剤を配合した皮膚洗浄剤(特許文献7)やグリチルリチン酸、キラヤエキスおよびムクロジエキスの混合物を含有する洗浄剤(特許文献8)等が挙げられる。しかし、これらはいずれもエタノールや1,3−ブチレングルコール等の上述の使用禁止成分を防腐剤として配合するものであった。また、ムクロジ果皮抽出物および抗炎症剤を配合した皮膚洗浄剤(特許文献9)も開発されているが、ムクロジ果皮をアルコール等で抽出したものをムクロジエキスとして使用している。従って、ムクロジ果皮由来の成分を主として含みつつ、米国や日本における使用禁止成分を使用していない洗浄剤は得られておらず、その提供が望まれている。
【0011】
植物から水抽出したサポニンは常温下で腐敗しやすいため、一般的に防腐効果を有するグリセリン等を加えて冷蔵保存されている。しかし、洗浄剤として利用するには、常温保存が可能であることが望まれるため、ソルビン酸塩、パラベン、安息香酸塩等の防腐剤の添加が必須となる。しかし、ソルビン酸塩等は、環境中の亜硝酸と反応して発癌性物質になるため安全性に問題があり、パラベンと安息香酸塩も上述の使用禁止成分に該当する。
【0012】
グリセリンは無毒無害で防腐効果を有し、皮膚の水分と接触することによって水和熱を発生させることから、市販の温感マッサージ料に多用されている。また、温感性皮膚洗浄料の原料としても使用されている(特許文献10〜15)。しかし、これらの洗浄剤でも、エチレンオキシドなどの上述の使用禁止成分が配合されている。
【0013】
このように、植物由来の成分を主とし、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤は得られていないのが現状である。
本発明者らは、本発明において、植物由来の成分を主とし、無毒無害の成分と組み合わせて、常温保存が可能である洗浄剤の提供を試みている。このような成分を組み合わせたものとして、茶の粉末、植物成分からなる発泡剤としてムクロジ果皮、および植物成分からなる甘味剤、さらにグリセリンを配合する口腔用組成物が提案されている(特許文献16)。しかし、口腔用のため、ムクロジ果皮の配合量が少なく、洗浄効果が不十分であり、またムクロジ果皮の配合量を多くした場合の保存安定性は予測できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許US2010/0056416号公報
【特許文献2】特開平10−324893号公報
【特許文献3】特開平10−147796号公報
【特許文献4】特開平10−45566号公報
【特許文献5】特許第3226225号
【特許文献6】国際公開パンフレットWO2006/00741号
【特許文献7】特許第3904336号
【特許文献8】特開2007−326806号公報
【特許文献9】特開平9−263531号公報
【特許文献10】特開2010−106258号公報
【特許文献11】特開2010−100577号公報
【特許文献12】特開2010−37269号公報
【特許文献13】特許第3589514号
【特許文献14】特許公開2003−300839号公報
【特許文献15】特開平9−227361号公報
【特許文献16】特許第3287658号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Clinics in Dermatology, 2001, Volume 19, issue 4, pp 371−374
【非特許文献2】化粧品基準(平成12年9月29日、厚生省告示第331号)
【非特許文献3】The Journal of Physical Chemistry B, 2009, Volume 113, Issue 2, pp.474−481.
【非特許文献4】Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1961, Volume 24, No.2, pp.233−237.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ムクロジ果皮とグリセリンを質量比1:9〜1:1の割合で配合し、ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出することにより、フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の洗浄剤は、ムクロジ果皮に含まれるサポニンの抽出にあたり、従来使用されていた水またはメタノールを使用せず、グリセリンを使用するため防腐性が高められ、常温での保存が可能となる。また、グリセリンの使用によって温熱効果が現れ、洗浄力が高められた洗浄剤となる。
【0018】
すなわち、本発明は次の(1)〜(7)に示される洗浄剤等に関する。
(1)ムクロジ果皮とグリセリンを質量比1:9〜1:1の割合で配合し、ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出してなる洗浄剤。
(2)ムクロジ果皮をそのままスクラブ材として含むかサポニン抽出後に除去した上記(1)に記載の洗浄剤。
(3)防腐性能を有する植物エキスを添加した上記(1)または(2)に記載の洗浄剤。
(4)植物エキスが1以上のフェノール係数を示す植物エキスである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の洗浄剤。
(5)植物エキスがシトラール、ゲラニオール、オイゲノルまたはチモールから選ばれる一種以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の洗浄剤。
(6)ムクロジ果皮以外のスクラブ材を添加した上記(1)〜(5)のいずれかに記載の洗浄剤。
(7)さらに水溶性生体高分子、保湿成分、酸化防止剤、生理活性成分または天然香料を含む上記(1)〜(6)のいずれかに記載の洗浄剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって得られる洗浄剤は、フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤である。本発明の洗浄剤の洗浄力は、類似する合成・半合成界面活性剤からなる洗浄剤と比べて劣らず、温熱効果を有することから皮膚温感洗浄も可能である。さらに、食器洗い等においても無毒無害な洗浄剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】常温保存の防腐効果を示した図である(実施例1〜3)。
【図2】洗浄剤の洗浄効果を示した図である(実施例1)。
【図3】常温保存の防腐効果を示した図である(比較例1〜5)。
【図4】常温保存の防腐効果を示した図である(比較例6〜10)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の「洗浄剤」とはムクロジ果皮や、植物性グリセリン等の植物由来の成分(フィトケミカル)を主とし、常温保存が可能な保存安定性を有し、かつ上述のような米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤のことをいう。
ここで、「使用禁止成分」、「使用制限成分」とは、上述の[背景技術]にて示している成分(非特許文献1、2、表1等に挙げられている成分)を指し、使用制限成分の「最大配合量」とは、非特許文献2に挙げられているように、化粧品100gあたりに配合し得る最大量のことをいう。例えば、チモールであれば、「粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの」や「粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの」各100gに対し、0.05gを最大配合量として配合することができる(非特許文献2、参照)。
【0022】
このような本発明の「洗浄剤」は、ムクロジ果皮とグリセリンを質量比1:9〜1:1の割合で配合し、ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出してなる洗浄剤であればいずれのものであっても良く、ヒト等の哺乳類に無毒無害なその他の成分を含むものであっても良い。
ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出するには、従来知られているいずれの方法も用いることができるが、ムクロジ果皮を乾燥・粉砕したものをグリセリンに浸漬して抽出等することが好ましい。
【0023】
本発明の「洗浄剤」に含まれる「ムクロジ果皮」は、市販されているものでも、樹に生った、熟した実の果皮をそのまま、或いはそれをさらに乾燥して用いたものであっても良い。
この「ムクロジ果皮」は、本発明の「洗浄剤」に10〜50重量%となるように配合されることが好ましい。
サポニン抽出後、または抽出中のムクロジ果皮は、そのままスクラブ材として本発明の「洗浄剤」に含まれていても良い。この場合、ムクロジ果皮は20〜40重量%、好ましくは20〜30重量%、より好ましくは20〜25重量%となるように配合されることが好ましい。
また、サポニン抽出後に、濾過等によって除去してもよい。この場合、ムクロジ果皮は30〜50重量%、好ましくは30〜40重量%、より好ましくは30〜35重量%となるようにグリセリンに添加されることが好ましい。
【0024】
また、本発明の「洗浄剤」に含まれる「グリセリン」は、植物性グリセリンであることが好ましく、市販されているもの等を用いることができる。この「グリセリン」は、本発明の「洗浄剤」に50〜98重量%、好ましくは70〜80重量%、より好ましくは75重量%となるように、配合されることが好ましい。
【0025】
本発明の「洗浄剤」はさらに、防腐性能を有する「植物エキス」を添加してもよい。この「植物エキス」は、市販されているものでも、独自に植物を栽培して従来知られているいずれかの方法で抽出したものや、化学合成したものであっても良い。
この「植物エキス」は、添加するものの種類によるが、本発明の「洗浄剤」に0〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%となるように添加されることが好ましく、使用規制成分である場合は最大配合量を超えない範囲で添加されることが必須である。
【0026】
本発明の「植物エキス」は、1以上のフェノール係数を示す植物エキスであると、その防腐効果が相乗的促進されるため好ましい。フェノール係数の値は大きいほど抗菌能力が高く、表3に示すフェノール係数の値が5以上を示すシトラール、ゲラニオール、オイゲノルまたはチモール等の植物エキスを一種以上用いることが特に好ましい。
なお、チモールは米国FDAでは使用制限されておらず、NPAで使用可の天然原料とされている植物エキスである(参考文献1,2、参照)。
参考文献1:Natural Products Associations Standard and Certification for Personal Care Products, 2010.9.1., The Natural Standard
参考文献2:Natural Products Associations Standard and Certification for Personal Care Products,Appendix I, Illustrative “Positive list” of ingredients
【0027】
【表3】

【0028】
本発明の「洗浄剤」は、ムクロジ果皮そのものを「スクラブ材」として含むものであっても良く、さらに「スクラブ材」としてムクロジ果皮以外の植物粉砕物を添加したものであっても良い。このような植物粉砕物として、例えば杏仁等の粉砕物である杏仁粉(杏種子粉)、玉蜀黍粉、米糠粉、くるみ粒、あずき、きな粉、蒟蒻粉または海草等が挙げられる。また、塩等もスクラブ材として使用することができる。
これらのスクラブ材は、サポニンの抽出に用いたムクロジ果皮そのものを単体として用いても良く、それに、これら植物粉砕物を組み合わせて添加したものでも、ムクロジ果皮を取り除いた後、これらの植物粉砕物を単体で添加したものであっても良い。この場合、ムクロジ果皮は、遠心分離機(例えば、回転数4000rpm,1時間以上)等で沈降させた後、上澄み液を金属製網篩(850μmより小さいものが通過するサイズの篩)で再濾過する等によって、取り除くことができる。
本発明の「洗浄剤」にこれらのスクラブ材を含む場合は、含まれる量が、本発明の「洗浄剤」に対し、1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%となるようにすることが好ましい。
【0029】
本発明の「洗浄剤」は、さらに、レシチンなどの天然界面活性剤、ヒアルロン酸ナトリウムなどの水溶性生体高分子、アミノ酸類などの保湿成分、アミノ酸類などの生理活性成分またはジャスミンなどの天然香料を含んでいても良い。
【0030】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、これらの実施例により本発明は何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
本実施例1〜3では、ムクロジ果皮を真空乾燥機(V−30型、株式会社東洋製作所)で50℃、6時間真空乾燥した。乾燥後の果皮を家庭用粉砕機(ミルミキサ‐FM50、サン株式会社)で粉砕し、金属製網篩(目の開き850μm)で篩過した。これによって得られたムクロジ果皮(乾燥)の粉砕粉をグリセリン(常温)に添加・撹拌して充分に分散させた後、必要に応じて表4に記載の植物エキスを添加し、撹拌した。得られた溶液を常温で2日間以上置き、サポニンを抽出した。各実施例の成分表を表4に示した。
【0032】
【表4】

【0033】
各実施例の洗浄剤(常温で1ヶ月以上保存)は、図1に示すように、実施例3の洗浄剤を調製後、常温で1日保存したもの(対照例)と同様の状態を保持しており、腐敗・沈殿が生じなかった。
また、図2に示したように、(1)自転車チェーン油汚れを手のひらに付け、(2)油汚れを示し、(3)(2)の手のひらに実施例1の洗浄剤を付けて押し揉んだ後、(4)水洗いした、その結果、実施例1の洗浄剤は良好な洗浄効果を示した。実施例2と3も実施例1と同様な洗浄力を示した。
【0034】
実施例1の洗浄剤を手掌に軽く押し揉むと、その直後の皮膚の表面温度が34.6℃から36.4℃または33.4℃から35.0℃に変化して1.5℃以上を上昇し、洗浄剤の温熱効果が確実に現れた(n=2)。実施例2と3も実施例1と同様な温熱効果を示した。皮膚表面温度の測定はRaytek(登録商標)MINITEMP 赤外線温度計(非接触携帯温度計)を使用した。
【0035】
[比較例1〜5]
実施例で使用したのと同じムクロジ果皮(乾燥)の粉砕粉を水に(常温)に添加・撹拌して充分に分散させた後、必要に応じて表5に記載の増粘剤、防腐剤等を添加し、撹拌した。得られた溶液を常温で4日間以上置いた後、抽出液からムクロジ細粉を濾過・除去した。得られた溶液の成分表を表5に示した。
【0036】
【表5】

【0037】
比較例1〜5(常温で1ヶ月以上保存)は、図3に示すように腐敗が生じた。比較例1は腐敗が進み、懸濁液になった。また、比較例2〜5は沈殿が生じたことが確認された。対照例としてムクロジ粉末水溶液(ムクロジ:水=16:84)を調製した直後のものを示した。
【0038】
[比較例6〜9]
実施例で使用したのと同じムクロジ果皮(乾燥)の粉砕粉をメタノール(常温)に3日間浸漬後、不溶ムクロジ細粉を濾過・除去した。得られたろ液からエバポレーターでメタノールを除去し、未精製サポニン粉末を得た。得られたサポニン粉末を水(常温)に添加・撹拌して充分に分散させた後、必要に応じて表6に記載の増粘剤、防腐剤等を添加し、撹拌した。得られた溶液の成分表を表6に示した。
【0039】
【表6】

【0040】
比較例6〜9(常温で1ヶ月以上保存)は、図4に示すように腐敗が生じた。比較例9は腐敗が進み懸濁液になった。また、比較例6,7,8,10は沈殿が生じたことが確認された。対照例としてサポニン粉末水溶液(サポニン:水=4:96)を調製した直後のものを示した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、フィトケミカルからなる、常温保存が可能であり、かつ米国や日本における使用禁止成分を含まず、また、使用制限成分を最大配合量以上含まない状態で洗浄力や防腐性を維持できる洗浄剤を提供することが可能となった。本発明の洗浄剤は、皮膚洗浄のためのシャンプー、ボディーソープ等の身体用や食器洗い等のための無毒無害な洗浄剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムクロジ果皮とグリセリンを質量比1:9〜1:1の割合で配合し、ムクロジ果皮に含まれるサポニンをグリセリンによって抽出してなる洗浄剤。
【請求項2】
ムクロジ果皮をそのままスクラブ材として含むかサポニン抽出後に除去した請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
防腐性能を有する植物エキスを添加した請求項1または2に記載の洗浄剤。
【請求項4】
植物エキスが1以上のフェノール係数を示す植物エキスである請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤。
【請求項5】
植物エキスがシトラール、ゲラニオール、オイゲノルまたはチモールから選ばれる一種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄剤。
【請求項6】
ムクロジ果皮以外のスクラブ材を添加した請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄剤。
【請求項7】
さらに水溶性生体高分子、保湿成分、酸化防止剤、生理活性成分または天然香料を含む請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77037(P2012−77037A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224503(P2010−224503)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】