説明

洗浄液槽用温度センサ

【課題】測温素子を内側に配置した石英管が万一割れた場合であっても細かな破片が洗浄液中に拡散することを防止し、しかも測温素子の応答特性を低下させることなく、常に安定した温度測定が可能になるようにした洗浄液槽用温度センサを提供する。
【解決手段】洗浄液槽の洗浄液に浸漬される石英管2の先端閉塞部2aの内部に測温素子3を配置して温度センサ1を構成する。そして石英管2の外側表面の全面にフッ素樹脂膜9を密着コーティングした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶用ガラス基板等の薄板状精密基板(以下、単に「基板」という。)の洗浄液を測温するための温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造過程では、基板表面に付着するパーティクルやコンタミネーション等の汚染物を除去するために基板洗浄処理が施される。この基板洗浄処理では、除去すべき汚染物の種類に応じて様々な洗浄液が使用されると共に、該洗浄液による洗浄効果を高めるために洗浄液が所定の温度を安定して保持するように温度管理することが必要であり、従来から洗浄液の温度測定が行われている。
【0003】
ところが、基板の製造過程で使用される洗浄液には金属に対して強い腐食作用を示すものもあり、測温素子を直接洗浄液中に浸漬して測温することはできない。そこで従来は耐腐食性に優れた石英管を使用し、その石英管の底部に測温素子を配置し、該石英管を洗浄液に浸漬して温度測定を行うようにした温度センサが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、石英管は割れ易いため、洗浄液に浸漬した状態で割れた場合には細かな破片が洗浄液中に拡散することになり、洗浄液を汚染するという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、万一、石英管が割れた場合であっても細かな破片が洗浄液中に拡散しないように、石英管にフッ素樹脂チューブを被覆して熱収縮させた温度センサを使用することもある。この場合、石英管が割れてしまってもフッ素樹脂チューブで覆われているので、破片が拡散することはない。ところが、石英管をフッ素樹脂チューブで被覆すると、石英管とフッ素樹脂チューブの間に空気層が介在するので、洗浄液からの熱伝達が低下し、石英管の内部に設けた測温素子の応答特性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような従来の課題を解決することを目的としてなされたものであり、石英管を使用し、万一その石英管が割れた場合であっても細かな破片が洗浄液中に拡散することを防止し、しかも測温素子の応答特性を低下させることなく、常に安定した温度測定が可能になるようにした温度センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明が解決手段として採用したところは、洗浄液槽の洗浄液に浸漬される石英管の先端閉塞部の内部に測温素子を配置した温度センサにおいて、前記石英管の外側表面の全面にフッ素樹脂膜を密着コーティングした点にある。かかる構成により、石英管とフッ素樹脂膜の間には空気層を介在することがなく、石英管をフッ素樹脂膜で被覆した温度センサを得ることができる。
【0008】
また上記構成とは別に、本発明が解決手段として採用したところは、洗浄液槽の洗浄液に浸漬される石英管の先端閉塞部の内部に測温素子を配置した温度センサにおいて、前記石英管の上端に該石英管を支持する支持管を取付け、該支持管を挿通して配線されたリード線を前記測温素子に接続しており、前記石英管の外側表面の全面から前記支持管の外側表面にわたり連続して一体的にフッ素樹脂膜を密着コーティングした点にある。これにより、石英管とフッ素樹脂膜の間には空気層を介在することがなく、石英管をフッ素樹脂膜で被覆した温度センサを得ることができると共に、石英管を支持する支持管の表面に対しても連続的にフッ素樹脂膜が一体形成された温度センサとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石英管の先端閉塞部に測温素子を配置し、その石英管を洗浄液に浸漬して温度を測定するように構成しつつも、石英管の表面にはフッ素樹脂膜を密着コーティングしているので、石英管とフッ素樹脂膜の間には空気層を介在することがない。そのため、測温素子の応答特性が低下することなく、常に安定した温度測定が可能になる。そして石英管はフッ素樹脂膜により強化されているので割れ難く、万一、石英管が割れた場合であっても破片の拡散はフッ素樹脂膜で防止されるので、洗浄液を汚染することがない。
【0010】
また、石英管の上端に該石英管を支持する金属製等の支持管を取り付けると共に、石英管と支持管の表面に対して一体的にフッ素樹脂膜を密着コーティングした構成とすることにより、支持管が石英管と継ぎ目なく一体的にフッ素樹脂膜によってコーティングされるので、支持管が洗浄液によって腐食されることを良好に防止できるようになり、温度センサの表面全体が耐腐食性を備えた構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。図1は本発明の一実施形態である洗浄液槽用温度センサ1の構成を示す断面図である。洗浄液槽用温度センサ1は、透明石英ガラスにより先端を断面U字状に閉塞した閉塞部2aを有する直径数ミリ程度の石英管2を備え、前記閉塞部2aの内側に測温抵抗体等の測温素子3を配置した構成であり、測温素子3に接続されるリード線4は石英管2の内部を通って上端開口2bから石英管2の外部に引き出される。尚、測温素子3は石英管2の内壁に対してほぼ隙間のない状態で配置されることが好ましい。
【0012】
石英管2の上部外面にはアルミナを主成分に含む耐熱接着剤5を介してステンレス等で構成される金属製の支持管6が設けられる。この支持管6は中間位置でL字状に折れ曲がった屈曲管として形成され、一端6aに石英管2を支持すると共に、他端6bに固定手段7が設けられ、図例では固定手段7がナットで構成される。支持管6の端部開口6cにはテフロン(登録商標)等で被覆されたケーブル8が固定手段7を介して接続固定され、該ケーブル8から延設されたリード線4が支持管6及び石英管2の内部に配線され、測温素子3に接続される。
【0013】
そして石英管2と支持管6の表面に対して均一且つ一体的にフッ素樹脂膜9を密着コーティングした構成である。このフッ素樹脂膜9は、耐腐食性及び耐熱性に優れたFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなり、石英管2及び支持管6の表面の保護コート膜となる。そして石英管2はフッ素樹脂膜9により強化され、割れ難くなる。
【0014】
図2は、上記洗浄液槽用温度センサ1の使用状態の一例を示す図である。洗浄液槽10には基板を洗浄するための洗浄液11が貯留されており、この洗浄液槽10の外部所定位置に設けられた取付部7aに対して例えば固定手段7又は支持管6を固定することにより、フッ素樹脂膜9がコーティングされた石英管2を、洗浄液槽10の洗浄液11中に浸漬させた状態で温度センサ1を設置する。そして石英管2の先端閉塞部2aの内側に設けられる測温素子3は、フッ素樹脂膜9及び石英管2を介して熱伝達される洗浄液11の温度を検知し、リード線4を介して出力する。尚、支持管6の内側から延設されるケーブル8の端部にはキャップ8aが設けられ、キャップ8aから延びる各リード線4には、洗浄液の温度調整を行う外部機器に接続するためのY端子8bが設けられる。
【0015】
本実施形態において石英管2を密着コーティングするフッ素樹脂9は耐腐食性に優れているので、洗浄液11に浸漬させた状態であってもフッ素樹脂膜9が浸食されることはなく、石英管2の保護機能は持続する。そして石英管2が衝撃等によりクラックを生じるような場合でも、フッ素樹脂膜9に被覆されているので、該クラックが成長し難く、石英管2が崩壊して破片を落下させることはない。また、石英管2がフッ素樹脂膜9と共に割れるような場合があっても、フッ素樹脂膜9に被覆された状態で石英管2が割れ、破片が比較的大きいので、洗浄液11中に細かな破片等が拡散することはなく、洗浄液11の汚染を防止できる。
【0016】
また石英管2の上部に設けた支持管6を石英管2と共に一体的にフッ素樹脂膜9で密着コーティングするので、例えば揮発性の洗浄液を使用する場合であっても、支持管6が洗浄液の気化成分によって腐食することがない。
【0017】
石英管2と支持管6の表面に対して一体的にフッ素樹脂膜9を密着形成するに際しては、公知のフッ素樹脂コーティング方法を採用することができる。はじめに石英管2の上部に対して耐熱接着剤5を介して支持管6を取り付け、石英管2と支持管6を固定する。測温素子3及びリード線4は予め石英管2の内側に配置しておいても良いし、石英管2と支持管6を固定した後に各管の内側に挿入して配置しても良い。そして石英管2と支持管6が固定された状態で、各管の表面に付着した油脂等を除去する脱脂工程を行った後、石英管2と支持管6の表面に対して液状のフッ素樹脂を塗布する塗布工程を行う。塗布工程では、スプレー式による塗布や、浸漬式による塗布等が適用され、石英管2と支持管6の表面だけでなく、石英管2と支持管6の継ぎ目部分にも均一にフッ素樹脂が塗布される。
【0018】
そして所定の膜厚でフッ素樹脂が塗布されると、次に乾燥・焼成工程が行われる。この乾燥・焼成工程では、フッ素樹脂膜9を定着させるために330℃程度の加熱処理が施される。このとき、石英管2と支持管6は互いに耐熱接着剤5で固定されているので、石英管2と支持管6の接着強度が低下することはない。そして乾燥・焼成工程が終了すると、石英管2と支持管6の表面に対して、空気層を介在することなく、硬化したフッ素樹脂膜9が密着コーティングされる。そのため、上記のようにして得られる洗浄液槽用温度センサ1を用い、石英管2を洗浄液11に浸漬して洗浄液の温度を測定する際には、空気層が介在しないので、フッ素樹脂膜9から石英管2への熱伝達が良好であり、石英管2の内部に設けた測温素子3の応答が良好になる。
【0019】
尚、本実施形態では石英管2の上部に支持管6を設ける場合を例示したが、これに限られるものではなく、例えば石英管自体に屈曲部を設け、その石英管を洗浄液槽10の外部所定位置に設けた取付部7aに対して直接取り付ける構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態である洗浄液槽用温度センサの構成を示す断面図である。
【図2】洗浄液槽用温度センサの使用状態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 洗浄液槽用温度センサ
2 石英管
3 測温素子
4 リード線
6 支持管
9 フッ素樹脂膜
10 洗浄液槽
11 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液槽の洗浄液に浸漬される石英管の先端閉塞部の内部に測温素子を配置した温度センサにおいて、
前記石英管の外側表面の全面にフッ素樹脂膜を密着コーティングしたことを特徴とする洗浄液槽用温度センサ。
【請求項2】
洗浄液槽の洗浄液に浸漬される石英管の先端閉塞部の内部に測温素子を配置した温度センサにおいて、
前記石英管の上端に該石英管を支持する支持管を取付け、該支持管を挿通して配線されたリード線を前記測温素子に接続しており、
前記石英管の外側表面の全面から前記支持管の外側表面にわたり連続して一体的にフッ素樹脂膜を密着コーティングしたことを特徴とする洗浄液槽用温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−155382(P2007−155382A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347675(P2005−347675)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000200091)川惣電機工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】