説明

洗浄装置および加工装置

【課題】適合する洗浄仕様が異なる被洗浄物の場合であっても流体噴出ノズルの交換作業を必要とせず1台のマシンで効率よく対応できるようにする。
【解決手段】洗浄流体噴出部412が、噴射特性の異なる高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aを備え、被洗浄物の種類に応じて高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aのいずれか一方を選択使用することで、適合する洗浄仕様(高圧洗浄仕様、2流体洗浄仕様)が異なる被洗浄物の場合であってもノズル交換作業を必要とせず1台のマシンで効率よく対応できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能な保持手段に保持された被洗浄物に対して洗浄流体を噴射することにより被洗浄物を洗浄する洗浄装置および該洗浄装置を備える加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI等のデバイスが複数形成されたウエーハは、裏面が研削されて所定の厚さに形成され、ダイシング装置等の加工装置によって個々のデバイスに分割されて携帯電話、パソコン等の電子機器に利用される。加工装置には、加工後に切断中に被加工物表面に付着した切削屑等のコンタミネーションを洗い流すために、スピンナ洗浄装置が内蔵されている。スピンナ洗浄装置には、洗浄流体が被加工物に向かって垂直に噴射する流体噴出ノズルが、スピンナテーブルの回転中心を通るように配設され、被加工物を保持したスピンナテーブルが数百rpmの速度で回転しているところへ、流体噴出ノズルが揺動しながら洗浄流体を噴射して、被洗浄物表面の洗浄を行うようにしている。
【0003】
ここで、この種の洗浄装置は、洗浄仕様として、洗浄水を高圧で噴射させる高圧洗浄仕様と、洗浄水に空気、窒素ガス等の気体を合流させて噴射させる2流体洗浄仕様の2種類を標準的に使用している。このような洗浄方法は、被加工物の種類によって使い分けるようにしている。例えば、Si屑のように比較的比重の軽い(加工ブレードのダイヤモンド粒径が微細なため、切削屑も細かくなる)コンタミネーション洗浄の場合には2流体洗浄を行う一方、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)基板の切削屑のように比較的比重の重い(加工ブレードのダイヤモンド粒径が比較的大きく、被加工物自体も金属、樹脂などからなるため、切削屑が大きく重たくなる)コンタミネーション洗浄の場合には高圧洗浄を行うようにしている。このような2流体洗浄や高圧洗浄に際しては、流体噴出ノズル、噴射手段ともに異なった機構のものを使用する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特許第3410385号公報
【特許文献2】特開2000−33346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スピンナ洗浄装置における洗浄部の仕様として、高圧洗浄仕様と2流体洗浄仕様とでは機構が異なるが、従来にあっては、いずれか一方の仕様機構で構成されているため、被洗浄物の変更に伴う洗浄仕様の変更の際には、流体噴出ノズルを付け替える作業を必要としている。このようなノズル交換作業は、一般にオペレータが簡単に行える作業ではなく、サービスマンが時間をかけて行っているものである。よって、高圧洗浄が適するワークや2流体洗浄が適するワークなどの様々なワーク加工に伴う洗浄に対応するために、流体噴出ノズルの交換に時間や費用がかかってしまい、効率の悪い現状にある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適合する洗浄仕様が異なる被洗浄物の場合であっても流体噴出ノズルの交換作業を必要とせず1台のマシンで効率よく対応することができる洗浄装置および該洗浄装置を備える加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る洗浄装置は、被洗浄物を回転可能に保持する保持手段と、該保持手段に保持された被洗浄物に洗浄流体を噴射する洗浄流体噴出部と、該洗浄流体噴出部を前記保持手段の回転中心を通る軌跡上に揺動可能に支持するアーム部とを備える洗浄装置であって、前記洗浄流体噴出部は、第1の流体噴出ノズルと、該第1の流体噴出ノズルとは噴射特性の異なる第2の流体噴出ノズルとを備え、被洗浄物を洗浄する際に前記第1の流体洗浄ノズルと前記第2の流体洗浄ノズルのいずれか一方が選択されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る洗浄装置は、上記発明において、前記第1の流体噴出ノズルは、高圧ポンプに連結されて高圧水を噴射する高圧洗浄ノズルであり、前記第2の流体噴出ノズルは、洗浄水供給源と気体供給源とに連結され洗浄水と気体とを合流させて噴射する2流体洗浄ノズルであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る加工装置は、洗浄前の被洗浄物をデバイスデータに従い切断加工する加工手段と、該加工手段による切断加工の条件として入力されたデバイスデータを記憶する記憶手段と、前記加工手段で切断加工された被洗浄物を洗浄する請求項1または2に記載の洗浄装置と、該洗浄装置で被洗浄物を洗浄する際に、前記記憶手段に記憶されたデバイスデータに基づき前記第1の流体噴出ノズルと前記第2の流体噴出ノズルのいずれか一方を選択する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る洗浄装置および加工装置によれば、洗浄流体噴出部が、噴射特性の異なる第1の流体噴出ノズルと第2の流体噴出ノズルとを備え、被洗浄物に応じて第1の流体噴出ノズルと第2の流体噴出ノズルのいずれか一方を選択使用することで、適合する洗浄仕様が異なる被洗浄物の場合であっても流体噴出ノズルの交換作業を必要とせず1台のマシンで効率よく対応することができるという効果を奏する。特に、第1の流体噴出ノズルを高圧洗浄ノズルとし、第2の流体噴出ノズルを2流体洗浄ノズルとすることで、高圧洗浄仕様が適合する被洗浄物の洗浄と、2流体洗浄仕様が適合する被洗浄物の洗浄とを、1台の洗浄装置で簡単に対応することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態である洗浄装置および加工装置について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態の洗浄装置が内蔵された加工装置の構成例を示す外観斜視図である。本実施の形態の加工装置10は、半導体ウエーハ、QFN等の洗浄前の被洗浄物を分割予定ラインに沿って切断加工するための切削装置である。ここで、切削対象となる被洗浄物11としては、例えばSiウエーハ等のようなラウンド形状(円形形状)のワーク11aと、例えばQFN基板等のようなスクエア形状(矩形形状)のワーク11bとの2種類がある。これらのワーク11a,11bは、いずれもワーク11a,11bが保持テープTを介してフレームFと一体となった状態でカセット部12に複数収納される。また、これらのワーク11a,11bは、いずれも表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって複数の矩形領域が区画されたもので、環状のフレームFに装着された保持テープTに表面を上側にして裏面が貼付される。
【0013】
また、本実施の形態の加工装置10は、搬出入手段13、搬送手段14、洗浄装置15、搬送手段16とともに、フレームFと一体となったワーク11aまたは11bからなる被洗浄物11を保持するチャックテーブル17と、アライメント用のカメラ18と、チャックテーブル17に保持された被洗浄物11を切削加工する加工手段19と、を備える。
【0014】
搬出入手段13は、カセット部12に収納された被洗浄物11(ワーク11aまたは11b)を搬送手段14が搬送可能な載置領域に搬出するとともに、切断加工処理および洗浄処理済みの被洗浄物11をカセット部12に搬入するものである。搬送手段14は、搬出入手段13によって載置領域に搬出された被洗浄物11をチャックテーブル17上に搬送するものである。また、洗浄装置15は、後述するような構成によってワーク11aまたは11bが加工手段19による切断加工処理済みの被洗浄物11を洗浄するものである。搬送手段16は、切断加工処理済みの被洗浄物11をチャックテーブル17上から洗浄装置15へ搬送するものである。
【0015】
また、チャックテーブル17は、図示しない駆動源に連結されて回転可能である。また、チャックテーブル17は、ボールネジ、ナット、パルスモータ等による送り機構によってX軸方向に移動可能に設けられている。カメラ18は、チャックテーブル17に保持されたウエーハWの表面を撮像するためのものであり、図示しないアライメント部は、カメラ18によって取得した画像を基に切削すべき領域部分を検出し、加工手段19による切断加工動作の位置づけに供する。
【0016】
加工手段19は、チャックテーブル17に保持された被洗浄物11中のワーク11aまたは11bを切削ブレード20によって切断加工するもので、ボールネジ、ナット、パルスモータ等による図示しない切り込み送り機構によってZ軸方向に昇降移動可能に設けられ、また、ボールネジ、ナット、パルスモータ等による図示しない割り出し送り機構によってY軸方向に移動可能に設けられている。
【0017】
次いで、洗浄装置15の構成について説明する。図2は、洗浄装置15の一部を切り欠いて示す斜視図であり、図3は、保持手段を被洗浄物搬入・搬出位置に位置付けた状態を断面図的に示す説明図であり、図4は、保持手段を作業位置に位置付けた状態を断面図的に示す説明図であり、図5は、洗浄流体供給手段およびその制御系の原理的構成例を平面図的に示す説明図であり、図6は、洗浄流体噴出部の概略断面図である。
【0018】
本実施の形態の洗浄装置15は、スピンナ洗浄装置として構成され、スピンナテーブル機構21とスピンナテーブル機構21を包囲して配設された洗浄水受け手段31とを備えている。スピンナテーブル機構21は、スピンナテーブルによる保持手段211と、この保持手段211を回転駆動する電動モータ212と、この電動モータ212を上下方向に移動可能に支持する支持機構213とを備えている。保持手段211は、多孔性材料から形成された吸着チャックによる保持面211aを備え、この保持面211aが図示しない吸引手段に連通されている。したがって、保持手段211は、保持面211aに被洗浄物11を載置し図示しない吸引手段により負圧を作用させることにより保持面211a上に被洗浄物11を吸引保持する。電動モータ212は、その駆動軸212aの上端に保持手段211が連結されている。支持機構213は、複数本、例えば3本の支持脚213aと、これら支持脚213aをそれぞれ連結し電動モータ212に取り付けられた複数本、例えば3本のエアシリンダ213bとからなり、エアシリンダ213bを作動することにより電動モータ212および保持手段211を図3に示す上方位置である被洗浄物搬入・搬出位置と、図4に示す下方位置である作業位置とに位置付ける。
【0019】
また、洗浄水受け手段31は、洗浄水受け容器311と、この洗浄水受け容器311を支持する複数本、例えば3本の支持脚312と、電動モータ212の駆動軸212aに装着されたカバー部材313とを備えている。洗浄水受け容器311は、図3および図4に示すように、円筒状の外側壁311aと底壁311bと内側壁311cとからなる。底壁311bの中央部には電動モータ212の駆動軸212aが挿通する孔311dが形成され、この孔311dの周縁から上方に突出する内側壁311cが形成されている。また、図2に示すように、底壁311bには排液口311eが形成され、この排液口311eにドレンホース314が接続されている。カバー部材313は、円盤状に形成され、その外周縁から下方に突出するカバー部313aを備えている。このように構成されたカバー部材313は、電動モータ212および保持手段211が図4に示す作業位置に位置付けられると、カバー部313aが洗浄水受け容器311を構成する内側壁311cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0020】
また、本実施の形態の洗浄装置15は、保持手段211の保持面211a上に保持された切断加工後のワーク11aまたは11bを含む被洗浄物11に洗浄流体を供給して洗浄する洗浄流体供給手段41およびエアーを供給して乾燥させるエアー供給手段51を備えている。
【0021】
エアー供給手段51は、保持手段211の保持面211a上に保持された洗浄後のワーク11aまたは11bを含む被洗浄物11に向けてエアーを噴出するノズル部511aを先端に有するエアーノズル511と、このエアーノズル511を水平面内で揺動させる正転・逆転可能な電動モータ512とを備えており、エアーノズル511が図示しないエアー供給源に接続されている。
【0022】
また、洗浄流体供給手段41は、図3〜図5等に示すように、水平面内で揺動自在に設けられたアーム部411と、このアーム部411の先端に配設されて保持手段211の保持面211a上に保持された切断加工後のワーク11aまたは11bを含む被洗浄物11に向けて洗浄流体を鉛直方向に噴射する洗浄流体噴出部412と、保持面211aに保持されて保持手段211の所要速度の回転に伴って回転する被洗浄物11に対して洗浄流体噴出部412が保持手段211の回転中心を通るようにアーム部411を円弧状に揺動させる揺動手段413と、を備えている。
【0023】
アーム部411は、先端の洗浄流体噴出部412が保持手段211の回転中心を通るように保持手段211の半径相当の長さを有して水平に配設され、後端側が連結部411aを介して揺動手段413の上下方向に延びた揺動軸413aに連結され、駆動軸413a部分を回動軸心として図5に示すように水平面内で揺動自在に設けられている。駆動軸413a部分は、洗浄液受け容器311を構成する底壁311bに形成された図示しない挿通孔を挿通して回動自在に配設され、挿通孔周縁はシール部材によりシールされている。揺動手段413は、正転・逆転自在な電動モータからなり、アーム部411を洗浄液受け容器311内で往復揺動させる。揺動方向の切り換えは、アーム部411の下部に配設された図示しない機械的なスイッチの検知により行われる。
【0024】
ここで、本実施の形態の洗浄流体噴出部412は、図5および図6に示すように、互いに噴射特性の異なる第1の流体噴出ノズル417と第2の流体噴出ノズル418とを備える。第1の流体噴出ノズル417は、例えば高圧水を噴射する高圧洗浄ノズル417aからなり、第2の流体噴出ノズル418は、例えば洗浄水と気体とを合流させて噴射する2流体洗浄ノズル418aからなる。高圧洗浄ノズル417aは、高圧水パイプ42が連結されるパイプ連結部417bと高圧水噴出口417cとを有し、2流体洗浄ノズル418aは、洗浄水パイプ43、エアーパイプ44がそれぞれ連結されるパイプ連結部418b,418cと2流体噴出口418dとを有する。これらの高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aは、アーム部411の先端部でいずれのノズル417a,418aも噴出口417c,418dが保持手段211の回転中心を通る揺動軌跡Lに従う円弧方向に隣接配置させて一体的に設けられている。
【0025】
パイプ42〜44は、アーム部411と一体に配設され、連結部411aを介して洗浄液受け容器311外に配管されている。また、洗浄液受け容器311外には、高圧ポンプ45や図示しない洗浄水供給源や気体供給源(前述のエアー供給手段51のエアー供給源と共用でよい)が配設されている。高圧洗浄ノズル417aは、高圧水パイプ42、高圧ポンプ45および洗浄水パイプ46を介して洗浄水供給源に連結されている。また、2流体洗浄ノズル418aは、洗浄水パイプ43を介して洗浄水供給源に連結されるとともに、エアーパイプ44を介して気体供給源に連結されている。洗浄水供給源と高圧ポンプ45および洗浄水パイプ42との間には電磁弁47が配設され、気体供給源に連結されたエアーパイプ44上には電磁弁48が配設されている。
【0026】
さらに、本実施の形態の加工装置10は、図5に示すように、記憶手段61と制御手段62とを備える。記憶手段61は、加工手段19による切断加工の条件として操作部等を通じて入力されたデバイスデータを記憶するためのメモリである。ここで、デバイスデータは、ワーク11aまたは11bに対する切断加工の条件に関するデータであり、アライメントデータ、位置認識データ、加工速度データ、回転数データ等の他、例えば対象となる被洗浄物11の形状がワーク11a対応のラウンド形状であるか、ワーク11b対応のスクエア形状であるかといったワーク形状情報が含まれる。ラウンド形状とスクエア形状とでは、スループット向上のため、切断加工時の切削ブレード20のストロークを異ならせるためである。
【0027】
また、制御手段62は、被洗浄物11の洗浄の際に、記憶手段61に記憶されたデバイスデータに基づき対象となる被洗浄物11に適合する洗浄仕様を判断し高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aのいずれか一方を選択するように電磁弁47,48を切換え制御ないしは開閉制御するものである。具体的には、デバイスデータ中にスクエア形状のデータが含まれる場合には、制御手段62は、ワーク11bタイプの被洗浄物11であり、高圧洗浄仕様が適合すると判断し、電磁弁48は閉塞状態のままとし電磁弁47を高圧ポンプ45側に切換え、高圧ポンプ45および高圧洗浄ノズル417a側が稼動状態となるように制御する。一方、デバイスデータ中にラウンド形状のデータが含まれる場合には、制御手段62は、ワーク11aタイプの被洗浄物11であり、2流体洗浄仕様が適合すると判断し、電磁弁47を洗浄水パイプ43側に切換えるとともに、エアーパイプ44上の電磁弁48は開放させて2流体洗浄ノズル418aを洗浄水供給源および気体供給源に連通させて稼動状態となるように制御する。
【0028】
次に、本実施の形態の加工装置10の動作について説明する。まず、切断加工前の被洗浄物11は、切断加工面である表面を上側にしてカセット部12の所定位置に収容されている。そして、カセット部12に収容された被洗浄物11の切断加工に際して、その切断加工の条件としてデバイスデータを、操作部等を通じて入力し、記憶手段61に記憶させる。このデバイスデータ中にはワーク形状情報(スクエア形状またはラウンド形状)も含まれる。
【0029】
そして、カセット部12の所定位置に収容された加工前の被洗浄物11は、図示しない昇降手段によって上下動することにより搬出位置に位置付けられ、進退作動する搬出入手段13により載置領域に搬出される。載置領域に搬出された被洗浄物11は、中心位置合わせが行われた後、搬送手段14の旋回動作でチャックテーブル17上に搬送され、チャックテーブル17上に吸引保持される。被洗浄物11を吸引保持したチャックテーブル17は、送り機構によってX軸方向に移動し、カメラ18の直下に位置付けられる。
【0030】
チャックテーブル17がカメラ18の直下に位置付けられると、カメラ18および図示しない制御手段によってワーク11aまたは11bの所定方向に形成されている分割予定ラインSと切削ブレード20との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、切削位置のアライメントが遂行される。このアライメントは、アライメントデータに従い直交する分割予定ラインの両方向について遂行される。アライメント処理が遂行されると、チャックテーブル17を送り機構によって切削ブレード20が位置する切削領域に移動し、分割予定ラインに沿って切削ブレード20によって切削することで切断加工する。この切断加工処理は、一つの分割予定ラインの切断加工が終了する毎に切削ブレード20をY軸方向に1ライン分ずつ割り出し送りすることにより、同一方向の全ての分割予定ラインについて実行される。この後、チャックテーブル17を90°回転させ、直交する残りの分割予定ラインの全てについて同様の切断加工処理を繰り返す。
【0031】
全ての分割予定ラインについて切断加工処理が終了したら、被洗浄物11を吸引保持しているチャックテーブル17は、最初の吸引保持位置に戻され、被洗浄物11の吸引保持を解除する。そして、切断加工処理済みの被洗浄物11は搬送手段16によって洗浄装置15の保持手段211に搬送され、保持面211a上に吸引保持される。この際、アーム部411およびエアーノズル511は、図2および図3に示すように、保持手段211の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0032】
切断加工処理済みの被洗浄物11が保持手段211の保持面211a上に保持されると、洗浄工程が実行される。すなわち、図4に示すように、保持手段211を作業位置に位置付け、保持手段211を電動モータ212によって100〜3000rpm程度の所要速度で回転させることで、保持面211a上に吸引保持されている被洗浄物11を回転させる。これと並行して、図5に示すように、揺動手段413を駆動して洗浄流体噴出部412が保持手段211の回転中心を通るようにアーム部411を軌跡Lに従い揺動させるとともに、洗浄流体噴出部412から被洗浄物11に向かって鉛直方向に洗浄流体を噴射させる。
【0033】
ここで、図5に模式的に示すように、被洗浄物11の表面において洗浄流体噴出部412の直下で洗浄流体噴出部412から洗浄流体の噴射を受けた部分に存在する切削屑等のコンタミネーションは、保持手段211の回転方向に広がりながら遠心力で被洗浄物11の外部に排出される。この際、洗浄流体噴出部412による洗浄流体の噴射位置は、アーム部411の軌跡Lに従う揺動に伴い順次変化し、ワーク11aまたはワーク11bの外から回転中のワーク11aまたはワーク11bの回転中心を通るように横切って移動するので、ワーク11aまたはワーク11bの全域について漏れなく洗浄流体噴出部412から洗浄流体の噴射がなされ、コンタミネーションは全て洗浄される。
【0034】
このように洗浄装置15で被洗浄物11を洗浄する際、制御手段62は、記憶手段61に記憶されたデバイスデータ中のワーク形状情報に基づき高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aのいずれか一方を選択するように制御する。
【0035】
例えば、被洗浄物11としてワーク11bを用いる場合であれば、切断加工の条件であるデバイスデータ中にワーク形状情報としてスクエア形状のデータが含まれる。このようにデバイスデータ中にスクエア形状のデータが含まれる場合には、制御手段62は、ワーク11bタイプの被洗浄物11であり、高圧洗浄仕様が適合すると判断し、電磁弁48は閉塞状態のままとし電磁弁47を高圧ポンプ45側に切換え、高圧ポンプ45および高圧洗浄ノズル417a側が稼動状態となるように制御する。これにより、洗浄水供給源から供給される洗浄水を高圧ポンプ45で高圧水として高圧洗浄ノズル417aの高圧水噴出口417cからワーク11bに向けて噴射させる。この際、ワーク11bは比較的比重の重いコンタミネーションの洗浄となるが、高圧水噴射により良好に洗浄される。
【0036】
一方、被洗浄物11としてワーク11aを用いる場合であれば、切断加工の条件であるデバイスデータ中にワーク形状情報としてラウンド形状のデータが含まれる。このようにデバイスデータ中にラウンド形状のデータが含まれる場合には、制御手段62は、ワーク11aタイプの被洗浄物11であり、2流体洗浄仕様が適合すると判断し、電磁弁47を洗浄水パイプ43側に切換えるとともに、エアーパイプ44上の電磁弁48を開放させて、2流体洗浄ノズル418aを洗浄水供給源および気体供給源に連通させて稼動状態となるように制御する。これにより、洗浄水供給源から供給される洗浄水と気体供給源から供給されるエアーまたは窒素ガスなどの気体とを2流体洗浄ノズル418a内で合流させて2流体噴出口418dからワーク11aに向けて噴射させる。この際、ワーク11は比較的比重の軽いコンタミネーションの洗浄となるが、2流体噴射により良好に洗浄される。
【0037】
被洗浄物11の洗浄が完了したら、アーム部411を保持手段211の上方から離隔した待機位置に位置付けるとともに、電動モータ512の作動によりエアーノズル511を揺動させてノズル部511aを保持手段211の中心位置に位置付ける。そして、保持手段211を電動モータ212によって2000〜3000rpm程度の速度で高速回転させることで、保持面211a上に吸引保持されている被洗浄物11を回転させる。これと並行して、ノズル部511aから被洗浄物11の表面に向けてエアーを噴射させることで、被洗浄物11の表面を乾燥させる。
【0038】
被洗浄物11の乾燥が完了したら、保持手段211に保持されている被洗浄物11の吸引保持を解除する。そして、保持手段211上の被洗浄物11は、搬送手段14によって載置領域に搬出され、搬出入手段13によってカセット部12内の所定位置に収納される。
【0039】
このように、本実施の形態の加工装置10によれば、洗浄流体噴出部412が、噴射特性の異なる高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aとを備え、被洗浄物11に応じて高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aのいずれか一方を選択使用することで、適合する洗浄仕様(高圧洗浄仕様、2流体洗浄仕様)が異なるワーク11a,11bによる被洗浄物11の場合であってもノズル交換作業を必要とせず1台のマシンで効率よく対応することができる。特に、切断加工の条件として入力されたデバイスデータ中の、例えばワーク形状情報(スクエア形状、またはラウンド形状のデータ)に基づき制御手段62が適合するノズル417aまたは418aを自動的に選択するので、従来の加工装置の使い勝手のまま(新たな入力操作等を要せず)、選択自在な高圧洗浄ノズル417aと2流体洗浄ノズル418aとを有する洗浄装置15を適正に動作させることができる。
【0040】
なお、切断加工の条件として入力されたデバイスデータであるワーク形状情報に基づき選択するノズル417a,418aを制御手段62が間接的に判断する方式に限らず、例えば、デバイスデータ中に洗浄装置15による洗浄条件のデータとしてノズル417a,418aのいずれを使用するかの情報を含ませて記憶手段61に記憶させておき、該情報に基づき制御手段62が直接的に判断するようにしてもよい。さらには、記憶手段61を用いることなく、ノズル417a,418aのいずれを使用するかのノズル情報を直接入力設定して制御手段62で制御させるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、洗浄流体噴出部412を構成する第1の流体噴出ノズル417と第2の流体噴出ノズル418とを一体に設けるようにしたが、離間配置させてよい。さらには、第1の流体噴出ノズル417と第2の流体噴出ノズル418とを、洗浄水受け容器311内の空き空間を利用して、エアーノズル511のように独立させて別個の箇所に設けるようにしてもよい。この場合、アーム部も独立させて別個に設ければよい。
【0042】
また、本実施の形態では、洗浄装置15は、加工装置10の一部に内蔵される例で説明したが、加工装置とは別個に単体として設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態の洗浄装置が内蔵された加工装置の構成例を示す外観斜視図である。
【図2】洗浄装置の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】保持手段を被洗浄物搬入・搬出位置に位置付けた状態を断面図的に示す説明図である。
【図4】保持手段を作業位置に位置付けた状態を断面図的に示す説明図である。
【図5】洗浄流体供給手段およびその制御系の原理的構成例を平面図的に示す説明図である。
【図6】洗浄流体噴出部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 加工装置
11 被洗浄物
15 洗浄装置
19 加工手段
45 高圧ポンプ
61 記憶手段
62 制御手段
211 保持手段
411 アーム部
412 洗浄流体噴出部
417 第1の流体噴出ノズル
417a 高圧洗浄流体
418 第2の流体噴出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を回転可能に保持する保持手段と、該保持手段に保持された被洗浄物に洗浄流体を噴射する洗浄流体噴出部と、該洗浄流体噴出部を前記保持手段の回転中心を通る軌跡上に揺動可能に支持するアーム部とを備える洗浄装置であって、
前記洗浄流体噴出部は、第1の流体噴出ノズルと、該第1の流体噴出ノズルとは噴射特性の異なる第2の流体噴出ノズルとを備え、被洗浄物を洗浄する際に前記第1の流体洗浄ノズルと前記第2の流体洗浄ノズルのいずれか一方が選択されることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記第1の流体噴出ノズルは、高圧ポンプに連結されて高圧水を噴射する高圧洗浄ノズルであり、
前記第2の流体噴出ノズルは、洗浄水供給源と気体供給源とに連結され洗浄水と気体とを合流させて噴射する2流体洗浄ノズルであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
洗浄前の被洗浄物をデバイスデータに従い切断加工する加工手段と、
該加工手段による切断加工の条件として入力されたデバイスデータを記憶する記憶手段と、
前記加工手段で切断加工された被洗浄物を洗浄する請求項1または2に記載の洗浄装置と、
該洗浄装置で被洗浄物を洗浄する際に、前記記憶手段に記憶されたデバイスデータに基づき前記第1の流体噴出ノズルと前記第2の流体噴出ノズルのいずれか一方を選択する制御手段と、
を備えることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−80180(P2008−80180A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259541(P2006−259541)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】