説明

活性エネルギー線硬化性組成物および積層品

【課題】硬度が高く、耐磨耗性を有し、活性エネルギー線による硬化で短時間コーティングが出来るエラストマー樹脂成型品被覆用の活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)10〜100質量%を含む分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物(A)100質量部に対して、活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤(B)0.1〜20質量部を配合してなるエラストマー樹脂成型品被覆用の活性エネルギー線硬化性組成物;およびその組成物の硬化物層が設けられた積層品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー樹脂成型品被覆用の活性エネルギー線硬化性組成物、およびその組成物の硬化物層が設けられた積層品に関する。更に詳しくは、外観(光沢性、平滑性、意匠性)、密着性、折り曲げ性、耐磨耗性、硬度、高生産性などに優れ、かつ高い光沢性、意匠性を備えた積層品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業部品、スポーツ・レジャー等の分野において、例えば、ダストカバー、キャップ、靴のソールやポイント、イヤータッグ等の各種用途にエラストマー素材(軟質素材)が多用されている。エラストマー素材としては、例えば、ポリエステル系、スチレン系、ウレタン系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系、スチレン系、ナイロン系、ポリオレフィン系、ニトリルゴム(NBR)系、クロロプレン系等の各種素材が知られている。
【0003】
このようなエラストマー素材から成る樹脂成型品をコーティング材で被覆して、高い光沢性と意匠性を付与し、傷や劣化を防止し、あるいは耐久性を付与することが行なわれている。コーティング材としては、高光沢性、高耐久性などの要求性能を満たす各種の組成物が提案されている(特許文献1など)。
【特許文献1】特開2003−306562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーティング材は、折り曲げ性、耐磨耗性、意匠性、特に金属表面処理を施した場合の外観等の性能が必ずしも十分とは言えない。したがって、例えば、自動車エンブレム等の内装装飾部品、携帯電話、デジカメ等のIT機器ジャック、スイッチ部分等の用途においては、実用上の要求性能を十分に満たせない。
【0005】
本発明の目的は、硬度が高く、耐磨耗性を有し、活性エネルギー線による硬化で短時間コーティングが出来るエラストマー樹脂成型品被覆用活性エネルギー線硬化性組成物、およびその組成物の硬化物層が設けられた積層品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分を特定量配合することによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明は、環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)10〜100質量%を含む分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物(A)100質量部に対して、活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤(B)0.1〜20質量部を配合してなるエラストマー樹脂成型品被覆用の活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0008】
さらに本発明は、エラストマー樹脂成型品上に、上記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層が設けられた積層品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物をエラストマー樹脂成型品被覆の用途に用いれば、硬度が高く、耐磨耗性を有する硬化被膜(硬化物層)を形成できる。この組成物は、活性エネルギー線の照射により短時間で硬化する。そして、外観(光沢性、平滑性、意匠性)、密着性、折り曲げ性、耐磨耗性、硬度、高生産性などに優れ、かつ高い光沢性、意匠性を備えた積層品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物(A)は、環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)を少なくとも含む。環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)は、例えば、環構造およびグリシジル基を有する化合物とカルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られる。
【0011】
なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の総称であり、その他、「(メタ)アクリ・・・」も同様に「アクリル」や「メタクリル」から派生する基の総称である。
【0012】
環構造およびグリシジル基を有する化合物は、芳香族系化合物、脂環式脂肪族のどちらでも良い。芳香族系化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物等が挙げられる。脂環式脂肪族の具体例としては、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が挙げられる。また、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、アクリル酸、メタアクリル酸等が挙げられる。これら環構造およびグリシジル基を有する化合物、ならびに、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0013】
本発明において、成分(a−1)の含有量は、折り曲げ性などの点から、成分(A)100質量%中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、上限値は100質量%であり、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0014】
成分(A)中に、環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)と共に、ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)を含有させると、不連続薄膜金属層の密着性がさらに向上する。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)としては、(ポリ)アルキレングリコール(a−2−1)とアジピン酸(a−2−2)を反応させて得られるポリエステルジオールに、更にジイソシアネート化合物(a−2−3)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a−2−4)を反応させて得られるものが好ましい。
【0016】
「(ポリ)アルキレングリコール」とは、「ポリアルキレングリコール」と「アルキレングリコール」の総称である。(ポリ)アルキレングリコール(a−2−1)の具体例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。中でも、組成物の低粘度化の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましい。
【0017】
ジイソシアネート化合物(a−2−3)は、分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物であればよく、特に限定されない。その具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。中でも、合成時の反応性が高く、工業的に安価であり入手が容易なことから、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0018】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a−2−4)は、分子内に、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物であれば、特に限定されない。その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。中でも、組成物の低粘度化の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)の合成方法は特に限定されず、公知の合成方法が使用可能である。例えば、11.5モルの(ポリ)アルキレングリコール(a−2−1)と、11モルのアジピン酸(a−2−2)を200℃前後の温度で反応させ、脱水縮合することにより、0.5モルのポリエステルジオールを得る。または、既に合成されたポリエステルジオールを入手して使用してもよい。その後、0.5モルのポリエステルジオールとジラウリン酸ジ−n−ブチル錫等の触媒との混合物中に、1.0モルのジイソシアネート化合物(a−2−3)を50〜90℃の条件下で滴下して反応させてウレタンプレポリマーを得、それに1.0モルのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a−2−4)を反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)が得られる。または、予めジイソシアネート化合物(a−2−3)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a−2−4)を反応させて、その生成物をポリエステルジオールに反応させてもよい。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)の合成時における反応終点の判定手法は、特に限定されない。例えば、イソシアネート量の定量により判定可能である。ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)の合成時における反応率は、好ましくは97モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート(a−2)の数平均分子量は、得られる組成物の低粘度化の点から、好ましくは4,000〜6,000である。
【0022】
本発明において、成分(a−2)の含有量は、不連続薄膜金属層の密着性などの点から、成分(A)100質量%中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、折り曲げ性などの点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0023】
本発明の硬化性組成物の性能を低下させない範囲内であれば、成分(A)中に(a−1)成分とは異なる成分であって、(a−2)成分以外の(a−3)成分を含有させることができる。
【0024】
成分(a−3)としては、例えば、ビニル系モノマー、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー等の分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物が挙げられる。その具体例としては、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル等の6官能(メタ)アクリル酸エステル類;
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリル酸エステル等の5官能(メタ)アクリル酸エステル類;
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエトキシ変性テトラ(メタ)アクリル酸エステル等の4官能(メタ)アクリル酸エステル類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリル酸エステル類;
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸メチルペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチルペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(付加モル数;n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等のジ(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られるポリエステルジ(メタ)アクリレート類;
アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、スピログリコール化合物等の1種または2種以上の混合物からなるアルコール類の水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加し、残ったイソシアネート基に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させた前記成分以外のウレタンジ(メタ)アクリレート類;
スチレン、α−メチルスチレン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニル化合物類;
ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート等のアリル化合物類;等が挙げられる。
【0025】
中でも、アクリル酸テトラヒドロフルフリルが特に好ましい。これら分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
本発明において、成分(a−3)を含む場合の含有量は、成分(A)100質量%中、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。また、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0027】
本発明に用いる光重合開始剤(B)は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性に寄与する成分である。その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
本発明において、成分(B)の配合量は、折り曲げ性、硬度(耐磨耗性)、硬化性(高生産性)、基材および(不連続)薄膜金属層の密着性などの点から、成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、1質量部以上が好ましい。また、折り曲げ性、基材および(不連続)薄膜金属層の密着性などの点から、20質量部以下であり、12質量部以下が好ましい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、その性能を損なわない範囲で、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することも出来る。
【0030】
さらに、活性エネルギー線硬化性組成物を望ましい粘度に調整するために、有機溶剤を配合することが出来る。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物等が挙げられる。有機溶剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物100質量部当たり0〜900質量部が好ましい。
【0031】
また、本発明の活性エネルギー線組成物には、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、防雲剤、分散剤、増粘剤、タレ止め剤、乾燥剤、(シラン)カップリング剤、付着促進剤、皮膜改質剤、スリップ剤、擦り傷防止剤、可塑剤、艶消し剤、低収縮剤、防菌剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤、硬化促進剤、劣化防止剤、光重合促進剤、熱開始剤、金属付着付与剤(リン酸モノマー)、PP付着付与剤(塩素化PP)、チキソ剤、染料、顔料、微粒子、反応性微粒子、殺菌剤などの添加剤を加えてもよい。
【0032】
本発明の積層品は、エラストマー樹脂成型品上に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を設けられたものである。
【0033】
エラストマー樹脂成型品を構成するエラストマー素材(軟質素材)としては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等がある。ポリエステル系エラストマーの市販品の商品名としては、例えば、グリラックス(大日本インキ化学工業)、ペルプレン(東洋紡)、ハイトレル(東レ・デュポン)、ヌーベラン(帝人化成)が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーの市販品の商品名としては、例えば、サントプレーン(エーイーエスジャパン)、アクティマ(理研ビニル工業)、プリマロイ(三菱化学)、サーリンク(東洋紡)が挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品の商品名としては、例えば、セプトン(クラレ)が挙げられる。ポリウレタン系エラストマーの市販品の商品名としては、レザミン(大日精化工業)が挙げられる。中でも、ペルプレン(東洋紡)、ハイトレル(東レ・デュポン)等のポリエステル系エラストマー;プリマロイ(三菱化学)等のポリオレフィン系エラストマー;レザミン(大日精化工業)等のポリウレタン系エラストマーが、外観が良好なことから特に好ましい。
【0034】
本発明の積層品は、例えば、エラストマー樹脂成型品上に活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、次いで活性エネルギー線照射により硬化させて、成型品上に硬化物層を形成することにより製造できる。
【0035】
活性エネルギー線硬化性組成物の塗布方法としては、刷毛・ローラー・ムートン・モップ塗り、ロールコート、スプレーコート、スピンコート、フローコート、ディピング、静電塗装、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。特に、塗布作業性の点からスプレーコートが好ましい。
【0036】
塗膜厚は、硬化物層の厚さが1〜100μmの範囲内となるような厚さが好ましい。活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する際に、前述した有機溶剤を配合した場合には、通常は硬化させる前に溶剤を揮発させる。例えば、IRヒーターや温風等で60℃、3分間程度の条件で加温したり、あるいは室温で20分間程度放置して、有機溶剤を揮発させることが好ましい。
【0037】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。例えば高圧水銀灯を用いる場合は、照射される紫外線エネルギー量が50〜1,000mJ/cm2程度の条件が好ましい。
【0038】
以上のようにして形成した硬化物層の上に、指触性向上などを目的として更にコーティング層を設けてもよい。
【0039】
また、硬化物層の上に、意匠性向上などを目的として更に薄膜金属層を設けてもよい。薄膜金属層を形成する方法としては、アルミニウム、錫等の金属を真空蒸着する公知の方法を用いることができる。
【0040】
薄膜金属層は、不連続薄膜金属層であってもよい。不連続とは、樹脂表面に非導通の金属薄膜を形成したものであり、非導通膜のため電波干渉がなく、静電対策が不要となる利点がある。したがって、携帯電話の筐体・部品、各種製品の薄型・小型・高密度実装への対応、ファンクションキーなどの脱メッキなど、その応用性は多彩である。
【0041】
また、透明基材であればハーフミラーとなり、下が透けて見えたり、光を当てれば透過したりする。
【0042】
更に金属層の腐食防止を目的として、金属層表面に熱硬化型トップコートや硬化塗膜層などの紫外線硬化トップコートを形成したり、あるいはプラズマ重合膜等で処理してもよい。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明を詳しく説明する。また、実施例および比較例における各種の測定評価は次の方法で行った。
【0044】
[外観(光沢性、レベリング性または平滑性)]
組成物をスプレーコートにより塗布し、活性エネルギー線で硬化して得られた10μm厚の硬化塗膜(硬化物層)を目視にて評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:ほとんど外観異常が見られない。
「×」:はっきりとした外観異常(虹、ブツ等)が見られる。
【0045】
[密着性]
組成物をスプレーコートにより硬化塗膜の膜厚を10μmとなるよう塗布し、活性エネルギー線で硬化して得られた10μm厚の硬化塗膜と基材との密着性を、JIS K 5600−5−6に従い評価した。更に、硬化塗膜上に真空蒸着法により金属薄膜を形成し、この金属箔膜と硬化塗膜との密着性を同様に評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:10点。
「△」:6点以上10点未満。
「×」:6点未満。
【0046】
[折り曲げ性]
組成物をスプレーコートにより10cm×5cmの基材に塗布し、活性エネルギー線で硬化して得られた10μm厚の硬化塗膜を、JIS K 5600−5−1に従い評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「◎」:マンドレル2mm、折り曲げ角が180°で割れが見られない。
「○」:マンドレル8mm、折り曲げ角が180°で割れが見られない。
「△」:マンドレル8mm、折り曲げ角が180°で割れが見られる。
「×」:マンドレル8mm、折り曲げ角が90°で割れが見られる。
【0047】
[耐磨耗性(消しゴム法)]
組成物をスプレーコートにより塗布し、活性エネルギー線で硬化して得られた10μm厚の硬化塗膜を消しゴム試験機(田口ゴム工業製、16.1N、100往復)を用い、外観を目視評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:最大幅2mm以上の下地露出がない。
「×」:最大幅2mm以上の下地露出がある。
【0048】
[硬化性(生産性)]
組成物をスプレーコートにより塗布し、活性エネルギー線で硬化して得られた10μm厚の硬化塗膜を指触にて評価した。評価の判定は以下の基準で行った。
「○」:タック感がない。
「×」:タック感がある。
【0049】
[判定(総合)]
各評価結果をにして、以下の基準で総合判定を行った。
「○」:全ての評価結果が○以上である。
「△」:評価結果に△であるものがある。
「×」:評価結果に×であるものがある。
【0050】
<合成例1>[ウレタンアクリレート(UA1:成分A)の製造]
(1)蒸留塔を備え付けた3Lの4つ口フラスコに、アジピン酸1,606gとエチレングリコール589gとプロピレングリコール152gを仕込み、200℃で加熱しながら生成する水を留去した。水の流出が無くなり、酸価が1.0以下になった時点を終点とした。
【0051】
(2)3Lの4つ口フラスコに、トリレンジイソシアネート174g、およびジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.3gを仕込んでウオーターバスで内温が50℃になるように加熱した。
【0052】
(3)上記(1)にて合成したポリエステルジオール1,950gを側管付きの保温滴下ロート(60℃保温)に仕込んだ。次いで、上記(2)で調整したフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を50℃に保ちながら、滴下ロート内の液を4時間かけて等速滴下し、その後同温度で2時間攪拌して反応させた。
【0053】
(4)次いで、フラスコ内容物の温度を60℃に上げ、同温度で1時間攪拌した。また、2−ヒドロキシエチルアクリレート116g、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール0.3g、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.3gを均一に混合溶解させた液を別の滴下ロートに仕込んだ。フラスコ内温を75℃に保ちながら、この滴下ロート内の液を2時間かけて等速滴下し、その後同温度で4時間反応させて、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量が4,600となるウレタンアクリレートUA1を製造した。
【0054】
<実施例1>
表1に示す成分をステンレス容器に計量し、約30分間、全体が均一になるまで攪拌して混合液を調製した。次に、この混合液を、エラストマー基材(東洋紡績(株)製、商品名ペルプレンP−90BA14)からなる縦10cm、横5cm、厚さ3mmのテストピース上に、硬化塗膜の膜厚が10μmとなるようにスプレーコートにて塗装した。
【0055】
次に、60℃の乾燥機内に3分間放置して有機溶剤を揮発させ、その後空気中で高圧水銀灯を用い、波長340〜380nmの積算光量が1,000mJ/cm2の活性エネルギーを照射し、硬化塗膜を形成した。
【0056】
また、硬化塗膜上に、真空蒸着法によって厚み70nm(通電)のアルミニウム薄膜金属層を蒸着させて薄膜金属層を形成し、積層体を得た。
【0057】
また、硬化塗膜上に、真空蒸着法によって厚み70nm(非通電)のスズ薄膜金属層を蒸着させて不連続薄膜金属層を形成し、積層体を得た。
【0058】
評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例2〜6および比較例1〜5>
表1、表2に示す配合比で硬化液を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作および評価を行った。評価結果を表1、表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表中の各成分の配合量は質量部を基準とし、略号は以下の化合物を表わす。
・EA1:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(共栄社(株)製、商品名「エポキシエステル3000A」
・EA2:PO変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート(共栄社(株)製、商品名「エポキシエステル3002A」
・UA1:合成例1により合成したウレタンアクリレート
・AM1:アクリル酸テトラヒドロフルフリル
・AM2:EO変性ビスフェノールA型ジアクリレート(第一工業(株)製、商品名「ニューフロンティアBPE−4」
・BNP:ベンゾフェノン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)10〜100質量%を含む分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物(A)100質量部に対して、
活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤(B)0.1〜20質量部
を配合してなるエラストマー樹脂成型品被覆用の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
分子内に1つ以上のラジカル重合性2重結合を有する化合物(A)が、
環構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a−1)と、
(ポリ)アルキレングリコール(a−2−1)とアジピン酸(a−2−2)を反応させて得られるポリエステルジオールに、更にジイソシアネート化合物(a−2−3)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a−2−4)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(a−2)
とを含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
エラストマー樹脂成型品上に、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層が設けられた積層品。
【請求項4】
硬化物層上に、さらに薄膜金属層が設けられた請求項3記載の積層品。
【請求項5】
薄膜金属層が、不連続薄膜金属層である請求項4記載の積層品。

【公開番号】特開2008−189807(P2008−189807A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25616(P2007−25616)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】