説明

活性ジエステル及びポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法

【課題】従来のポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の合成法は、迂遠であること、多量の副生成物や廃液を処理する必要があるという問題点があった。
【解決手段】構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸および構造式Y−OHで表される化合物に触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、これらの混合物と溶け合わない有機液体を共存させ、これらを加熱・還流させながら水を系外に溜去させることを特徴とする活性ジエステルの製造方法(ここでXは炭素数2以上の2価の有機基、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香族基または不飽和複素環基)、及び該活性ジエステルを用いるポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリベンゾオキサゾ−ルの前駆体であるポリアミドの原料として有用な活性ジエステルの製造方法、及び該活性ジエステルを用いるポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体保護膜用感光性耐熱材料としては、従来溶剤現像できるネガ型の感光性ポリイミドが良く知られている(非特許文献1参照)。
一方、近年アルカリ水溶液で現像可能な感光性ポリベンゾオキサゾ−ルも広く使用されている。感光性ポリベンゾオキサゾ−ルの代表例としては、オルト位にヒドロキシ基が置換された芳香族ポリアミド、即ちポリ(o−ヒドロキシアミド)とキノンジアジドを含む組成物が知られている。この組成物を基材に塗布し、UV光を照射後アルカリ水溶液で処理すると露光部が溶解除去され微細パタ−ンを得る事ができる。その後高温処理をすることにより、電気特性や耐熱性に優れたポリベンゾオキサゾ−ルからなる保護膜を形成する事ができる。感光性ポリイミドや感光性ポリベンゾオキサゾ−ルは、これらの特徴を生かして半導体の保護膜として広く利用されている(非特許文献2参照)。
【0003】
ポリ(o−ヒドロキシアミド)はジカルボン酸とビス(o−アミノフェノ−ル)を縮合させる事により得られる。しかし、単にこれらを混合加熱するだけでは縮合物を得る事は出来ず、ジカルボン酸を活性化する必要がある。具体的には以下の2種類の製造方法が知られている。
第一の方法は、ジカルボン酸を酸塩化物に変換し、ビス(o−アミノフェノ−ル)と反応させる方法である。この方法においては、反応により生成したポリベンゾオキサゾ−ル前駆体に半導体用途では好ましくない塩素イオンが混入するため、該前駆体の精製を十分行う必要がある。また、副生する塩化水素に由来する酸性廃液の処理も必要となる。
【0004】
第二の方法は、1,1’−カルボニルオキシジベンゾトリアジン等の活性エステル試薬を用いてジカルボン酸の活性ジエステルを調製する方法である。例えば、1,1’−カルボニルオキシジベンゾトリアゾ−ルは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ルとホスゲンから調製され、それをジカルボン酸と反応させる事により、活性ジエステルを生成させる。次にこの活性ジエステルとジアミンを重縮合させポリベンゾオキサゾ−ル前駆体を得る。また特許文献1には4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’−ジカルボン酸と1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ルもしくは4−ニトロフェノ−ルの混合溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(縮合剤)を加えて活性ジエステルを調製することが開示されている。これらの方法は反応が迂遠であること、上記活性エステル試薬が高価である事、さらにこれらの反応では 1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ルが副生するため効率が悪い事、副生物の処理が必要である等の問題がある。
なお、活性エステルとは、カルボン酸のカルボキシル基に電子吸引性の置換基を導入してカルボキシル基のアミノ基との反応を高めた構造のエステルをいう(非特許文献3参照)。
【0005】
【非特許文献1】上田、「感光性ポリイミド」、日本写真学会誌、日本写真学会、2003年06巻、4号、p367−375
【非特許文献2】池田、水野、「初歩から学ぶ感光性樹脂」、工業調査会、2002年4月10日、p125−142
【非特許文献3】泉屋、加藤、青柳、脇、「ペプチド合成の基礎と実験」、丸善、1985年1月20日、p91−100
【特許文献1】特開2002−69187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の活性ジエステルやポリベンゾオキサゾ−ル前駆体であるポリ(o−ヒドロキシアミド)の合成法は、迂遠であること、あるいは多量の副生成物や廃液を処理する必要があることという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、簡潔なプロセスでジカルボン酸の活性ジエステルを調製する方法を鋭意検討した結果、ジカルボン酸およびp−ニトロフェノ−ル等の水酸基含有化合物の混合物に、触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、さらにこれらの混合物及び水の両方と溶け合わない有機液体を加え、その混合物を加熱・還流させながら水を系外に溜去させる事により活性ジエステルを製造する事を見出すに至った。そして、この活性ジエステルを用いて、全体として簡潔なプロセスでポリベンゾオキサゾ−ル前駆体を製造することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸および構造式Y−OHで表される化合物に触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、これらの混合物及び水の両方と溶け合わない有機液体を共存させ加熱して還流させながら水を系外に溜去させることを特徴とする活性ジエステルの製造方法(ここでXは炭素数2以上の2価の有機基、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香族基、または不飽和複素環基)を提供するものである。
また、本発明は、上記活性ジエステルをビス(o−アミノフェノ−ル)と反応させ、ポリベンゾオキサゾ−ル前駆体であるポリ(o−ヒドロキシアミド)を製造する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性ジエステルの製造方法によれば 安価な薬品を用い、1段の反応でジカルボン酸から活性ジエステルを得る事ができる。また副生成物の水は反応の進行に伴ない簡単に分離できるという特徴を有し、副生成物の廃棄処理も必要ではない。
また、本発明のポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法によれば、上記活性ジエステルをビス(o−アミノフェノ−ル)と反応させ、半導体用材料としては好ましくない塩素イオンの含有の極めて少ないポリベンゾオキサゾ−ル前駆体であるポリ(o−ヒドロキシアミド)を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本願発明について具体的に説明する。
構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸としては、Xは炭素数2以上の2価の有機基である化合物が好ましい。これに相当するものとしては マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、イタコン酸、グルタコン酸、及び1,4’−ジカルボキシシクロヘキサン等の脂肪族ジカルボン酸、並びにフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシビス安息香酸、4,4’(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス安息香酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、1,4−ビス(3−カルボキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−カルボキシエチル)ジフェニルメタン、及び3−アミノイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。好ましくは、Xは下記式(1)から選ばれたものである。
【0011】
【化1】

(式中、Aは、−CH −、−O−、−S−、−SO −、−CO−、−NHCO−、−C(CF −、及び単結合からなる群から選択される2価の基を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、不飽和基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
【0012】
構造式Y−OHで表される化合物において、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香環、または不飽和複素環である化合物である。電子吸引性の置換基とは、ハメットのσとよばれる置換基定数がプラスである置換基と定義される(例えば、『「化学便覧基礎編」、改定3版、丸善、1984年6月25日、pII−364−365』参照)。
【0013】
該当化合物としては 例えば、4−ニトロフェノ−ル、3−ニトロフェノ−ル、1−ニトロフェノ−ル、2、4−ジニトロフェノ−ル、4−フルオロフェノ−ル、3−フルオロフェノ−ル、パ−フルオロフェノ−ル、4−トリフルオロメチルフェノ−ル、3−トリフルオロメチルフェノ−ル、4−クロロフェノ−ル、2,4,5−トリクロロフェノ−ル、2,4,6−トリクロロフェノ−ル、パ−クロロフェノ−ル、4−シアノフェノ−ル、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3’− ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、3−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸イソアミル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4−ヒドロキシ安息香酸ドデシル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾイル酢酸メチル、4−ヒドロキシアントラキノン、4’−ヒドロキシアセトアニリド、3’−ヒドロキシアセトアニリド、4−ヒドロキシベンズアミド、4−シアノフェノ−ル、4−(シアノメチル)フェノ−ル、4−ヒドロキシベンゼンスルホアミド、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−ペンチルフェノ−ル、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル、及び4−エトキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の水酸基置換芳香族化合物類、並びに1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、3−ヒドロキシ−1,2−ベンゾイソオキサゾ−ル、オルト−スルホベンゾイミド、2−ヒドロキシベンズイミダゾ−ル、N−ヒドロキシフタルイミド、8−ヒドロキシキノリン、5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシピリジン等の水酸基含有複素環化合物等が挙げられる。
【0014】
触媒として用いるルイス酸としては、例えば、AlCl, BCl, FeCl, SnCl等の塩化物、(CF−SOMで表されるトリフレ−ト(OTf と略す)が挙げられるが、好ましくはSc(OTf)、Y(OTf)、Yb(OTf)等のトリフレ−ト化物、スカンジウムトリフルオロエタンスルホンイミド等である。
触媒として用いるプロトン酸としては、トリフルオロ酢酸、トリクロル酢酸、およびスルホン酸が好ましい。スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン
酸、o−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、イソブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0015】
反応に使用する構造式Y−OHで表される化合物の量は、ジカルボン酸1モルに対して、2ないし8モルが好ましく、2.5ないし5モルがより好ましい。触媒の量は、ルイス酸の場合、好ましくはジカルボン酸1モルに対して0.005ないし0.2モルであり、さらに好ましくは0.01ないし0.1モルである。プロトン酸の場合は好ましくは0.01ないし0.4モル、さらに好ましくは0.02ないし0.3モルである。
有機液体としては、前述した混合物及び水の両方と溶け合わない有機溶媒であって、沸点60ないし250℃の液体が好ましく、より好ましくは水より比重の小さな液体である。さらに好ましくは沸点90ないし210℃の炭化水素であり、例えば、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン、テトラリン等が挙げられる。反応に使用する有機液体の量は、好ましくはジカルボン酸、構造式Y−OHで表される化合物、触媒の合計重量の1.5ないし8倍、さらに好ましくは2ないし5倍である。
「これらの混合物及び水の両方と溶け合わない」とは、これらの混合物と有機液体を該有機液体の沸点において共存させた時に、例えば液体と液体のように、二以上の相に分離して全体が均一な反応溶液とはならないこと、及び水と該有機液体を室温(23℃)で静置した時に液体と液体の二相に分離することを意味する。上述の混合物と有機液体が溶け合わないことによって、混合物が有機液体によって希釈されず反応が収率良く進む。また、水と有機液体が溶け合わないことによって、後述する水分離機によって容易に水を除去することが可能となる。
またこの有機液体にその重量の20%までのN−メチルピロリドン等のアプロティック極性溶媒を加える事もできる。
【0016】
反応を実施する場合には、例えばディ−ンスタ−ク(Dean−Stark)型の水分離器を装着した還流冷却器を備えたフラスコにこれらの化合物を入れ、磁気攪拌子を用いて強く攪拌しながら加熱することが好ましい。前述の有機液体は反応によって生じた水と共沸しながら還流し始める。この水はディ−ンスタ−ク水分離器により反応系外に溜去される。フラスコ内は窒素等の不活性ガス雰囲気にしておくことが望ましい。
反応時間は、好ましくは12ないし72時間、さらに好ましくは18ないし60時間である。反応の終了は水の溜去が終了してから反応混合物をサンプリングし赤外吸収スペクトル法等で確認することができる。
【0017】
反応が終了したら還流された有機液体が反応系に戻らない条件で溜去を続け、次に真空ポンプ等を用いて有機液体を反応系から除去する。得られた反応混合物をテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、Nメチルピロリドン等の良溶媒に溶かし、その溶液を多量の炭酸水素ナトリウムもしくはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に加えて未反応のフェノ−ル類およびジカルボン酸を中和除去する。得られた固形物をロ別し真空乾燥法等により乾燥し生成物を得ることができる。逆に上記溶液にアルカリ水溶液を加えてもかまわない。
得られた活性ジエステルをさらに精製するには再結晶法、カラムクロマトグラフィ−法が好ましい。
【0018】
次にポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法について述べる。
まず、既に記載したように、構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸および構造式Y−OHで表される化合物に触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、これらの混合物と溶け合わない有機液体を共存させ、これらを加熱・還流させながら水を系外に溜去させることにより活性ジエステルを生成させる。
次にこの活性ジエステルと構造式Z(NH(OH)で表されるビス(o−アミ
ノフェノ−ル)を有機溶媒中で反応させることでポリベンゾオキサゾ−ル前駆体であるポリ(o−ヒドロキシアミド)を得ることができる(ここでXは炭素数2以上の2価の有機基、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香族基または不飽和複素環基、Zは2以上の炭素を有する4価の有機基である)。
【0019】
Z(NH(OH)で表されるビス(o−アミノフェノ−ル)としては、例えば、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、及び1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらのビスアミノフェノ−ルは単独あるいは混合して使用してもよい。
これらのZ(NH(OH) の構造を有するビスo−アミノフェノ−ルのうち特に好ましいものは、Zが下記式(2)から選ばれる芳香族基の場合である。
【0020】
【化2】

【0021】
ここで、上記のような方法で得られた活性ジエステルを精製、乾燥させて単離したのち、有機溶媒中でビス(o−アミノフェノ−ル)と反応させることが好ましいが、ここで開示した反応混合物から有機液体を分離して得た粗活性ジエステルに有機溶媒を加えそこにビス(o−アミノフェノ−ル)を加えて反応させることもできる。 ビス(o−アミノフェノ−ル)の量は活性ジエステルに対して0.8ないし1.3倍モル、好ましくは0.9ないし1.1倍モルである。
【0022】
活性ジエステルとビス(o−アミノフェノ−ル)を全量有機溶媒に溶かし加熱することもできるし、活性ジエステルを有機溶媒に溶解した溶液を加熱し、そこにビス(o−アミノフェノ−ル)の溶液を滴下しながら反応させることもできる。
反応温度に制限はないが、好ましくは40ないし120℃ より好ましくは60ないし100℃である。反応の終結は反応混合物を液体クロマトグラフィ−や薄層クロマトグラフィ−で追跡することで判断できる。
【0023】
ここで用いられる有機溶媒としては非プロトン性極性溶媒がこのましく たとえばN−
メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ガンマブチロラクトン、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジン等が挙げられる。また反応を加速するために塩たとえば塩化リチウムを加えることも推奨される。また、水酸基を有する不飽和複素環化合物たとえば1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを触媒量添加することも反応を加速するので推奨される。
ポリ(o−ヒドロキシアミド)を得るには反応混合物を水に滴下して固形分を濾別または遠心分離機で単離する。もしくはアルコ−ル等のポリマ−の貧溶媒で原料を溶かす溶媒に反応混合物を加え得られた固形分を上記非プロトン性極性溶媒等ポリマ−の良溶媒に溶かし、その溶液を水に滴下しポリ(o−ヒドロキシアミド)を得る事ができる。得られたポリマ−を風乾もしくは真空乾燥、凍結乾燥で乾燥する。
以下、実施例をもって具体的実施態様を示す。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
ディ−ンスタ−ク水分離器を装着した還流冷却管と温度計を備えた50mLのフラスコに、ジカルボン酸としてイソフタル酸 1.66g(10.0ミリモル)と4−ニトロフェノ−ル4.23g(30.5ミリモル)、触媒としてスカンジウムトリフレ−ト0.306g(0.622ミリモル)、を入れ、有機溶媒としてオクタン(沸点125.7℃)を25mL(17.6g)加え磁気攪拌子を用いてバスの温度を165℃に保ちながら強く攪拌し、42時間還流を続け反応によって生成した水を除去した。その後ディ−ンスタ−ク水分離器からオクタンがフラスコに戻らないような受器に替え蒸留を続けてオクタンを除去した。真空ポンプで減圧することによって残っているオクタンを除去した後冷却し反応混合物に50mLのテトラヒドロフランを加え均一な溶液とした。この溶液を約500mLの炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液にあけ未反応の4−ニトロフェノ−ルとイソフタル酸を溶解した。その後生成物をロ別し真空乾燥を行い生成物のイソフタル酸ジ4−ニトロフェニルエステルを1.70g単離した。別途イソフタル酸ジクロライドと4−ニトロフェノ−ルを反応させて得た標品と同じ化合物である事を赤外線スペクトル法で確認した。収率は42%であった。
【0025】
[実施例2]
ジカルボン酸として4,4’−オキシビス安息香酸2.59g(10.0ミリモル)を用い48時間還流させる以外は、実施例1と同様の方法でオキシビス安息香酸ジ4−ニトロフェニルエステルを4.62g(収率92%)得た。構造はプロトンNMRで確認された。
[実施例3]
ディ−ンスタ−ク水分離器を装着した還流冷却管と温度計を備えた50mLのフラスコに、ジカルボン酸として 4,4’−オキシビス安息香酸2.59g(10.0ミリモル)、p−ニトロフェノ−ル5.58g(40.1ミリモル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物0.349g(2.03ミリモル)を入れ、有機溶媒としてシクロオクタン(沸点148℃)を25mL(21.0g)加え バスの温度を185℃に保ちながら磁気攪拌子で強く攪拌を続けた。24時間還流を続け反応によって生成した水を除去した後冷却したのち、反応混合物に50mLのテトラヒドロフランを加え均一な溶液とした。この溶液を約500mLの炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液にあけ未反応の4−ニトロフェノ−ルとイソフタル酸を溶解した。その後生成物をロ別し真空乾燥を行い、生成物であるオキシビス安息香酸ジ4−ニトロフェニルエステルを4.55g単離した。構造はプロトンNMRで確認された。収率は91%であった。
【0026】
[実施例4]
実施例3とまったく同じ操作を行い生成物をトルエンにて再結晶し2.80g の結晶生成物を得た。収率は56%であった。
[実施例5]
ディ−ンスタ−ク水分離器を装着した還流冷却管と温度計を備えた50mLのフラスコに、ジカルボン酸としてイソフタル酸1.67g(10.1ミリモル)、4−ニトロフェノ−ル5.56g(40.0ミリモル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物0.357g(2.03ミリモル)を入れ 有機溶媒としてオクタンを25mL(17.6g)加え、バスの温度を165℃に保った。24時間還流を続け反応によって生成した水を除去した後冷却し、実施例1と同様な方法で生成物であるイソフタル酸ジ4−ニトロフェニルエステルを1.25g単離した。構造はプロトンNMRで確認された。収率は31%であった。
【0027】
[実施例6]
攪拌機を装着した 50mLの三口フラスコに17.5mL(18.03g)の脱水N−メチルピロリドンを入れ、活性ジエステルとして実施例3で調製したオキシビス安息香酸ジ4−ニトロフェニルエステルを2.53g(5.05mmol)、ビス(o−アミノフェノ−ル)として4,4’(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(o−アミノフェノ−ル)1.84g(5.00mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル0.15g(1.1mmol)、塩化リチウム 0.52g(12.4mmol)を加えた。内温を70℃に保ち24時間攪拌を続け、反応混合物を水に滴下して得たポリマ−(ポリベンゾオキサゾ−ル前駆体)を乾燥した。GPCで測定した重量平均分子量は14000であった。プロトンNMRにより得られたポリマ−の構造は下記式(3)である事が確認された。
【0028】
【化3】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、半導体の保護膜として使用するのに適したポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸および構造式Y−OHで表される化合物に触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、これらの混合物及び水の両方と溶け合わない有機液体を共存させ加熱して還流させながら水を系外に溜去させることを特徴とする活性ジエステルの製造方法(ここでXは炭素数2以上の2価の有機基、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香族基、または不飽和複素環基)。
【請求項2】
触媒が(CF−SOMで表される化合物(ここでMはSc,Yb,Yである)もしくはスルホン酸である事を特徴とする請求項1に記載の活性ジエステルの製造方法。
【請求項3】
有機液体が沸点60〜250℃の炭化水素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性ジエステルの製造方法。
【請求項4】
ジカルボン酸が下記式(1)に示される構造を有する芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性ジエステルの製造方法。
【化1】

(式中、Aは、−CH −、−O−、−S−、−SO −、−CO−、−NHCO−、−C(CF −、及び単結合からなる群から選択される2価の基を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、不飽和基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
【請求項5】
構造式X(COOH)で表されるジカルボン酸および構造式Y−OHで表される化合物に触媒としてルイス酸もしくはプロトン酸を加え、これらの混合物及び水の両方と溶け合わない有機液体を共存させ加熱して還流させながら水を系外に溜去させることにより活性ジエステルを生成させ、次にこの活性ジエステルと構造式Z(NH(OH)で表されるビスo−アミノフェノ−ルを反応させる事を特徴とするポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法(ここでXは炭素数2以上の2価の有機基、Yは電子吸引基が置換された炭素数6以上の芳香族基、または不飽和複素環基、Zは2以上の炭素を有する4価の有機基である)。
【請求項6】
触媒が(CF−SOMで表される化合物(ここでMはSc,Yb,Yである)もしくはスルホン酸である事を特徴とする請求項5に記載のポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法。
【請求項7】
有機液体が沸点60〜250℃の炭化水素であることを特徴とする請求項5又は6に記載のポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法。
【請求項8】
ジカルボン酸が下記式(1)に示される構造を有する芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のポリベンゾオキサゾ−ル前駆体の製造方法。
【化2】

(式中、Aは、−CH −、−O−、−S−、−SO −、−CO−、−NHCO−、−C(CF −、及び単結合からなる群から選択される2価の基を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、不飽和基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を示し、kは0〜4の整数を示す。)

【公開番号】特開2007−161948(P2007−161948A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363067(P2005−363067)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】