説明

活性因子を凍結乾燥するための方法

【課題】溶液を凍結乾燥するための方法を提供すること。
【解決手段】容器内において、活性薬剤の溶液(50)を凍結乾燥するためのプロセスが提供される。活性薬剤の溶液は、容器内に入れられ、この容器は、カバープレート(60)で覆われ、凍結乾燥装置内に配置される。凍結乾燥は、放射か、対流か、もしくはその両方によって乾燥するように行われ得る。このプロセスによって作製されるデバイス(活性薬剤−プラスチック投与デバイス(例えば、シリンジ(20))であり、凍結乾燥ケークの形態で活性薬剤を含む)、およびこのような投与デバイスのアレイも、また提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
凍結乾燥は、溶液から液体を抽出して、液体よりも室温において安定でかつ保存が容易な、顆粒状の固体または粉末を形成するプロセスである。凍結乾燥は、フリーズドライによって行われるか、または、より具体的には、凍結に続いて昇華(これは、最初に中間の液体相を通ることのない、固体のガス状の状態への転移である)させることによって、実施される。凍結乾燥は、単純に容器(例えば、シリンジ)を固体形態の活性因子で充填する代わりに使用される。なぜなら、既存の粉末充填器は、いくつかの強力な活性因子(種々の医薬品を含む)にとって必要な正確な許容範囲で充填し得ないからである。凍結乾燥プロセスは、より多くの重量の活性因子および溶媒を容器に充填することを可能にし、これによって、粉末充填よりも高い精度を可能にする。
【0002】
凍結乾燥は、他の乾燥技術および保存技術と比較して、多くの利点を有する。凍結乾燥は、昇華の間、物質が凝固点より低い温度にとどまるので、保存された物質の量を維持する。得られた凍結乾燥物質は、通常冷蔵なしで保存され、物質の保存および輸送の費用を下げ、そして製品に必要な保存空間を減少させる。凍結乾燥はまた、凍結乾燥製品の重量を減少させ、同様に輸送および関連する費用を減少させる。さらに、凍結乾燥物質は、多くの場合、それらが凍結乾燥されて保存される、正にその容器の中で、使用前に再構成される。
【0003】
凍結乾燥は、種々の医薬品の保存および保管のために、特に有用である。なぜなら、凍結乾燥は、それらの医薬品の保存期間を延ばすからである。例えば、凍結乾燥がシリンジ中で行われる場合、凍結乾燥された医薬は、シリンジ中に保管され得る。次いでその医薬の再構成のために、希釈液がそのシリンジに添加され、そしてその医薬はそのシリンジから患者へと投与される。
【0004】
凍結乾燥は、伝統的に、ガラスバイアルまたはアンプル中で行われてきたが、シリンジでは行われていなかった。しかし、シリンジは、その最終的使用がシリンジからである活性因子のための凍結乾燥のために、好ましい手段である。なぜなら、その活性因子は、それが凍結乾燥されたシリンジ中で再構成されて、最終的に使用され得るからである。一方で、バイアルまたはアンプル中における凍結乾燥は、再構成された活性因子の、バイアルまたはアンプルからシリンジへの移送を必要とする。シリンジにおける凍結乾燥についての特に有用な適用は、注入可能な医薬品に対する適用である。
【0005】
シリンジにおける凍結乾燥は、米国特許第5,320,603号、同第5,184,450号、同第5,080,649号、同第4,874,381号および欧州特許出願番号0664137A2において考察および開示されるように、公知であるが、この公知技術には問題および欠点が存在する。米国特許第5,320,603号で考察されるように、一般的に、凍結乾燥のために、2つの型のシリンジが存在する。第一の型の一回使用のためのシリンジは、凍結乾燥された医薬を含み、それに対して希釈液を添加して、薬物を注入可能にする。このようなシリンジの例は、欧州特許出願番号0664137A2に開示される。
【0006】
第二の型のシリンジは、2つのピストンを備える。つまり、シリンジの外筒内部を2つのチャンバー(一方は凍結乾燥された医薬を含み、他方は希釈液を含む)へと分離する、前面ピストンまたは遠位ピストンを含む。このピストンは、軸方向への移動によって、希釈液を一方のチャンバーから他方へとバイパスさせる。この内容物は混合されて、そして第二の背面プランジャー型ピストンまたは近位プランジャー型ピストンが用いられて、再構成された薬物を放出および分注する。この型のシリンジの例は、米国特許第5,320,603号および同第4,874,381号に開示される。
【0007】
米国特許第5,320,603号において指摘されるように、どちらのシステムにおいても、シリンジは、凍結乾燥されるべき溶媒中のある量の医薬でシリンジ外筒を充填することによって調製される。シリンジ外筒の遠位端は、無菌性を保つために蓋をされる。シリンジ外筒の近位端は、ピストンまたはプランジャーを含み、これは、凍結乾燥中の上記の通過および漏れを可能にする。シリンジは、凍結乾燥されて蒸発した溶媒を除去し、この溶媒は、シリンジ外筒の遠位端を通して抜ける。次いで、シリンジは、医薬の投与の前に希釈液によって再構成される状態となる。
【0008】
これらの使い捨てシリンジは、容易に大量生産が可能なわけではない。なぜなら、これらは、公知の方法によって製造するには費用がかかるからである。公知の製造方法は、米国特許第5,184,450号に説明されるように、一般的に多くの工程か、特別な器具か、またはその両方の使用を必要とする。費用と関係なく、現行の製造はまた、無菌性を保つために凍結乾燥の間にシリンジの遠位端に蓋をする工程に関する問題のために、困難でもある。
【0009】
さらに、プラスチックシリンジ、およびガラスシリンジ中での凍結乾燥のための方法が公知であるが(例えば、欧州特許出願番号0664137A2A)、医薬の凍結乾燥のためのプラスチックシリンジの、現行での商業的利用はない。ガラスシリンジは、特に実用的な活性因子送達デバイスとして向かない。注入可能な活性因子(医薬品を含む)のための好ましい手段は、プラスチックシリンジによる手段である。この手段は、ガラスシリンジに対して多くの利点を有する。最も明白であることには、プラスチックシリンジは、ガラスシリンジもより安価であり、より軽量であり、そしてより安全である。
【0010】
プラスチックがこのような市販の凍結乾燥のために使用されない一つの理由は、プラスチックが、ガラスよりも凍結乾燥容器に適切でないからである。注目に値すべきなのは、凍結乾燥の冷却プロセスに関する熱負荷は、ある種のプラスチックのこのプロセスに持ちこたえる可能性を限定する。そしてこれらのプラスチックは、ガラスが無傷の状態である温度で壊れやすい傾向がある。結果として、凍結乾燥は、ほとんどプラスチックを用いては行われない。これらの問題が克服されるのであれば、プラスチックシリンジ中での凍結乾燥を実現することが望ましい。
【0011】
一選択肢において、凍結乾燥は、予め滅菌され、予め包装されたプラスチックシリンジを用いることによって大量生産される。これは、凍結乾燥プロセスに適応するための何らかの特別なプランジャーまたはあらゆる他の独特のシリンジ構造を必要としない。一般的に医薬品を投与するために使用されるシリンジと同じ型のシリンジを、凍結乾燥法のために使用することが望ましい。さらに、プラスチック槽中のプラスチックラック内の、予め滅菌されて予め包装されたシリンジのアレイにおいて製造される、標準的な型のシリンジを使用することによって、この槽全体を、直接的に、凍結乾燥のために凍結乾燥装置に入れることができ、それによって大量生産向きとなる。
【0012】
さらに、凍結乾燥は、代表的に、伝導によって行われるが、放射か、対流か、もしくはその両方によって凍結乾燥を行うことによって、凍結乾燥の容易さおよび製造効率を高めることが望ましい。凍結乾燥されるべき物質を含む容器が、凍結乾燥装置のあらゆる冷却表面上にあってそれらに接触せずに、凍結乾燥装置内に吊られ得ることは示されていなかった。このような手段による凍結乾燥は、放射か、対流か、もしくはその両方によって起こる。放射か、対流か、もしくはその両方による凍結乾燥は、伝導による凍結乾燥よりも容易である。なぜなら、前者の方法による凍結乾燥は、単に容器を槽にロードし、次いで、この槽が凍結乾燥装置に配置されることによって実行されるからである。しかし、伝導による凍結乾燥は、手動でこの容器を凍結乾燥装置内に配置することを必要とする。
【0013】
本発明のこれらおよび他の利点は、本明細書中における好ましい実施形態の詳細な説明を参照することによって明らかとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要旨)
本明細書において記載される種々の実施形態は、活性因子の凍結乾燥のための方法に関する。本明細書において提供される教示は、先に述べられた問題および本明細書において述べられない他の問題を解決する。
【0015】
本発明は、溶液を凍結乾燥するための方法を提供する。この方法は、一以上の容器内に溶液を入れる工程、および、表面から突出してこの一以上の容器の開口部に並ぶ一以上の突起を備えるカバープレートを配置する工程、を包含する。この一以上の突起は、上記一以上の容器の少なくとも一部分の内側にはめるために適合される。この方法は、一般的に、上記一以上の容器およびカバープレートを凍結乾燥装置内に配置する前に、この一以上の容器をカバープレートで覆う工程、またはこの一以上の容器およびカバープレートを凍結乾燥装置内に配置した後に、この一以上の容器をカバープレートで覆う工程を包含する。上記一以上の突出した突起は、上記一以上の容器の少なくとも一部分の内側に係合される。上記溶液は、この溶液を冷却する工程およびこの溶液に減圧を適用する工程によって、少なくとも部分的に凍結乾燥される。この溶液を少なくとも部分的に凍結乾燥させる工程は、上記一以上の突起の各々と上記一以上の容器の各々の側壁との間の環状の間隙を通じて蒸気が逃げることを可能にする。
【0016】
この要旨は、本出願のいくつかの教示の概要であって、本発明の対象物の排他的または網羅的な処理であることを意図されない。本発明の対象物についてのさらなる詳細は、詳細説明および添付の特許請求の範囲において見出される。本発明の他の局面は、以下の詳細説明を読み、理解すること、および以下の詳細説明の一部をなす図を見ることで、当業者に明らかである(これらの詳細説明および図の各々は、限定的な意味で捉えられるべきではない)。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義される。種々の実施形態は、付随する図の図面において、例として示され、限定としては示されない。図面において、同様の参照は、同様の要素を示す。
(項目1)
溶液を凍結乾燥するための方法であって、該方法は、以下:
一以上の容器内に溶液を入れる工程;
カバープレートを配置する工程であって、該カバープレートは、表面から突出して該一以上の容器の開口部に並ぶ一以上の突起を備え、該一以上の突起は、該一以上の容器の少なくとも一部分の内側にはめるために適合される、工程;
該一以上の容器および該カバープレートを凍結乾燥装置内に配置する前に、該一以上の容器を該カバープレートで覆う工程、または該一以上の容器および該カバープレートを該凍結乾燥装置内に配置した後に、該一以上の容器を該カバープレートで覆う工程であって、該一以上の突出した突起は、該一以上の容器の少なくとも一部分の内側に係合される、工程;ならびに
該溶液を冷却する工程および該溶液に減圧を適用する工程によって、該溶液を、少なくとも部分的に凍結乾燥させる工程であって、ここで、該溶液を少なくとも部分的に凍結乾燥させる工程は、該一以上の突起の各々と該一以上の容器の各々の側壁との間の環状の間隙を通じて蒸気が逃げることを可能にする、工程、
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、槽内にラックを吊るす工程をさらに包含し、該ラックは、該槽内において上記一以上の容器を吊るすために適合される、方法。
(項目3)
項目2に記載の方法であって、上記ラックを槽内に吊るす工程が、上記一以上の容器が上記凍結乾燥装置の冷却源と接触する状態になることを防止する、方法。
(項目4)
項目3に記載の方法であって、上記一以上の容器が上記冷却源と接触する状態になることを防止する工程が、該一以上の容器が冷却棚と接触する状態になることを防止する、方法。
(項目5)
項目1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を上記一以上の容器内に入れる工程が、該溶液を一以上のシリンジに入れる工程を包含する、方法。
(項目6)
項目1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、上記一以上の容器を上記カバープレートで覆う工程が、上記凍結乾燥プロセスの間に該一以上の容器から凍結乾燥物が逃げるのを防止する蓋を形成する、方法。
(項目7)
項目1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、上記一以上の容器を上記カバープレートで覆う工程が、二以上の容器が同時に凍結乾燥される場合、一つの容器からの凍結乾燥物の、別の容器からの凍結乾燥物による汚染を防止する、方法。
(項目8)
項目1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、約20mg/ml〜約80mg/mlの酢酸ロイプロリドを含有する溶液を調製する工程をさらに包含する、方法。
(項目9)
項目1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、約38mg/mlの酢酸ロイプロリドを含有する溶液を調製する工程をさらに包含する、方法。
(項目10)
項目1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を上記一以上の容器内に入れる工程が、約0.1ml〜約1.0mlの酢酸ロイプロリドを含有する溶液を該一以上の容器の各々に入れる工程を包含する、方法。
(項目11)
項目1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を上記一以上の容器内に入れる工程が、約0.3mlの酢酸ロイプロリドを含有する溶液を該一以上の容器の各々に入れる工程を包含する、方法。
(項目12)
項目1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を冷却する工程が、該溶液を対流によって冷却する工程を包含する、方法。
(項目13)
項目1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を冷却する工程が、該溶液を放射によって冷却する工程を包含する、方法。
(項目14)
項目1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を冷却する工程が、該溶液を対流および放射によって冷却する工程を包含する、方法。
(項目15)
項目1〜14のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を冷却する工程が、該溶液を約0℃と約−50℃との間の温度に冷却する工程を包含する、方法。
(項目16)
項目1〜15のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を凍結乾燥させる工程が、各容器内に、約5.0mg〜約25.0mgの凍結乾燥物を生成する、方法。
(項目17)
項目1〜16のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液を凍結乾燥させる工程が、各容器内に、約11.4mgの凍結乾燥物を生成する、方法。
(項目18)
項目1〜17のいずれか一項に記載の方法であって、上記溶液の凍結乾燥後に上記一以上の容器から上記カバープレートを除去する工程を、さらに包含する、方法。
(項目19)
項目18に記載の方法であって、保持された凍結乾燥物について、上記カバープレートの表面を検査する工程、および該凍結乾燥物が由来する上記一以上の容器を廃棄する工程をさらに包含する、方法。
(項目20)
項目1〜19のいずれか一項に記載の方法であって、上記少なくとも部分的に凍結乾燥された医薬品を含む上記一以上の容器を密閉する工程を、さらに包含する、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法であって、上記一以上の容器を密封する工程が、一以上のシリンジの各開口部内にプランジャーを挿入する工程を包含する、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、一以上のシリンジの各開口部内にプランジャーを挿入する工程が、シリンジ対シリンジアセンブリの、一以上のメスのシリンジの各開口部内にプランジャーを挿入する工程を包含する、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、一以上のシリンジの各開口部内にプランジャーを挿入する工程が、シリンジ対シリンジアセンブリの、一以上のオスのシリンジの各開口部内にプランジャーを挿入する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、一実施形態に従って提供される、槽中の複数の吊るされたシリンジの透視図である。
【図2】図2は、一実施形態に従って提供される、シリンジの透視図である。
【図3】図3は、一実施形態に従って提供されるラックの部分段面図である。
【図4】図4は、一実施形態に従って提供される、槽中の複数の吊るされたシリンジの部分段面図であり、溶液が一つのシリンジに入れられている。
【図5】図5は、一実施形態に従って提供される、槽中の複数の吊るされたシリンジ上に合わせられたカバープレートの部分段面図である。
【図6】図6は、一実施形態に従って提供される、槽中の複数の吊るされたシリンジの段面図であって、これらはカバープレートによって覆われている。
【図7】図7は、一実施形態に従って提供される、槽中の複数の吊るされたシリンジの前面部分段面図であって、これらは凍結乾燥装置内部でカバープレートによって覆われている。
【図8】図8は、一実施形態に従って提供されるシリンジの透視図である。
【図9】図9は、一実施形態に従って提供される、2つのシリンジの側面図である。
【図10】図10は、一実施形態に従って提供される、2つの連結されたシリンジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細説明)
以下の詳細な説明において、参照は、本明細書の一部を形成する付随する図に対してなされ、そしてこれらの図において、本発明が実施され得る特定の実施形態が、説明として示される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施し得るのに十分に、詳細に記載される。そして、他の実施形態が利用され得ること、および構造の変更が本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが、理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられるべきではなく、本出願の対象物の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0019】
一実施形態において、容器19としては、槽10内に、単一の封入区画または複数の封入区画が挙げられる。容器19の一例は、シリンジ20である。図1は、複数のシリンジ20を示し、これらの各々は、槽10から取り外し可能である。槽10は、種々の形状(例えば、四角形、長方形)に作られた上部18および底部12を備える。一選択肢において、第一のレッジ14は、槽10の上部18の末端で内部16の周囲に伸び、そして第二のレッジ15は、槽10の内部16の周囲に伸び、かつ第一のレッジ14と並行して、第一のレッジ14の下部にある。取り外し可能なラック40は、槽10内の第二のレッジ15と接触し、そして槽10内の一以上の容器19(例えば、シリンジ)を吊るすように適合される。一選択肢において、ラック40は、各取り外し可能なシリンジ20を、吊るされた正立位置に固定し、これによって各シリンジ20の近位端30の開口部32は、槽10の上部18に面する。取り外し可能なラック40は、種々の材料(例えば、プラスチック)を含む。複数の取り外し可能なシリンジ20は、一選択肢において、槽10内において予め包装され、予め滅菌されている。このようなシリンジ20のアレイの一例としては、Becton DickinsonおよびCompanyによって製造されて「Hypak」構造として知られ、かつ米国特許第4,758,230号で開示される、予め包装されて予め滅菌された、プラスチックシリンジ20のアレイが挙げられる。
【0020】
図2は、シリンジ20の一実施形態を示す。各シリンジ20は、シリンジ外筒22を備え、これらの中は、流体を保有するためのチャンバー24である。シリンジ外筒22の遠位端26は、シリンジキャップ28で蓋をされている。シリンジ外筒22の近位端30は、開口部32を備え、これは、一選択肢において、プランジャー先端34およびプランジャー棒33を備えるプランジャー35を受ける。一選択肢において、プランジャー先端34は、プランジャー棒33のネジ端83上にねじ込まれる。プランジャー先端34は、プランジャー棒33が、プランジャー頭部36によって、シリンジ外筒22の近位端30に向かって引かれる場合かまたはシリンジ外筒22の遠位端26に向かって押される場合、シリンジ外筒22内で動かされる。プランジャー頭部36は、シリンジ外筒22の遠位端26に向かって押される場合、シリンジフランジ31と結合する。一選択肢において、プランジャー先端34およびプランジャー35は、シリンジ外筒22から取り外される。別の選択肢において、シリンジ外筒22は、シリンジ外筒22の遠位端26に向かってより小さな直径を有し、かつシリンジ外筒22の近位端30に向かってより大きな直径を有するように構成される。なお別の選択肢において、シリンジ外筒22は、ベベルを備える。
【0021】
取り外し可能なラック40は、図3に示される。一選択肢において、ラック40は、槽10の末端で内部16の周りに固定される。ラック40は、槽10の形状に合うように適合された種々の形状(例えば、四角形、長方形、円形)を包含する。ラック40は、複数のスリーブ100を備え、これらのスリーブは、各シリンジ20のシリンジ外筒22を収納する(図1参照)。各取り外し可能なシリンジ20は、正立位置に吊るされて固定され、これによって各シリンジ20の近位端30の開口部32は、槽10の上部18に面し、そして各シリンジ20の遠位端26は、槽10の底部12に面する(図1参照)。一選択肢において、シリンジ外筒22の遠位端26に向かうより小さな直径は、ラック40のスリーブ100と接し、それを通過する。シリンジ外筒22の近位端30に向かうより大きな直径は、ラック40の上部110と接し、スリーブ100をシリンジ20全体が通過するのを防ぎ、それによって、シリンジ20を正立位置に吊るされた状態に固定する。別の選択肢において、シリンジ外筒22のベベルは、スリーブ100をシリンジ20全体が通過するのをさらに防止し、シリンジ20を正立位置に吊るされた状態に固定する。別の選択肢において、スリーブ100は、ベベルが付けられて、少なくとも一つの直径を有するシリンジ20の一部分が、ラック40スリーブ100と接してかつそれを通過することを可能にし、シリンジ20を正立位置に吊るされた状態に固定する。
【0022】
図4は、一実施形態を示し、ここで、各容器19は、槽10内のラック40内に垂直にロードされ、したがって溶液50(例えば、医薬品)は、槽10の底部12に面し、そして各容器19の開口部32は上を向く。ラック40は、各容器19を吊るされた正立位置に固定し、これによって、溶液50は、容易に容器19の近位端30の開口部32内に入れられる。
【0023】
シリンジの場合、シリンジ20は、槽10内のラック40にロードされ、これによってシリンジ外筒22の遠位端26(図2参照)は、シリンジキャップ28によって覆われ(図2参照)、槽10の底部12に面し、そしてシリンジ外筒22の近位端30は、その中にプランジャー35をはめた場合、上方向を向く。活性因子の溶液50を含む一以上のシリンジ20は、同時に凍結乾燥されるべきであり、複数のシリンジ20が、槽10内のラック40にロードされる。
【0024】
一選択肢において、容器19(例えば、シリンジ20)は、槽10内のラック40内にロードされる前に、溶液50を充填される。別の選択肢において、容器19(例えば、シリンジ20)は、溶液50を充填される前に、最初にラック40にロードされて、槽10内に配置される。複数の容器19(例えば、シリンジ20)が同時に凍結乾燥される場合、一選択肢においては、複数の容器19が槽10内のラック40にロードされる前に溶液50を充填され、かつ別の選択肢においては、複数の容器19が槽10内のラック40にロードされた後に溶液50を充填されるということを、理解すべきである。
【0025】
図5は、別の実施形態を示し、ここで、カバープレート60は、槽10の上部18の末端で内部16の周囲に伸びる第一のレッジ14上に配置され、少なくとも一つの容器19の開口部32と整列するように、表面に一以上の近接するカバープレート突起38を備える。ユーザーは、裏面39表面から突出し、少なくとも一つの容器19と整列する少なくとも一つの近接する突起38を備える、裏面39表面を有するカバープレート60を配置する。カバープレート60の裏面表面39から突出する一以上の突起38は、一以上の容器19の一部の内部にはまるように適合される。カバープレート突起38は、容器19の開口部32の内部にはまるように適合される種々の形状(例えば、円錐形、球形、円筒形)を包含する。一例において、カバープレート60は、実質的に平面形状の蓋であり、溶液50がその中に入れられた後に複数の容器19(例えば、シリンジ20)の開口部32を覆うために使用される、複数の近接したカバープレート突起38を備える(図4参照)。
【0026】
一選択肢において、取り外し可能なラック40は、槽10内の第二のレッジ15上に置かれて各取り外し可能なシリンジ20を、吊るされた正立状態に固定し、これによって各シリンジ20の近位端30の開口部32は、槽10の上部18に面する。近接したカバープレート突起38は、カバープレート60の裏面39に取り付けられて、シリンジ20のシリンジ外筒22の開口部32の内部にはまるように適合される。一実施形態において、複数の近接したカバープレート突起38は、カバープレート60の裏面39に取り付けられて、シリンジ20のシリンジ外筒22の開口部32の内部にはまるように適合される。カバープレート60は、槽10の上部18のための蓋として働く。
【0027】
カバープレート60は、蓋として働き、一例においては、近接した円形のカバープレート突起38を備える。この突起は、容器19(例えば、シリンジ20)の開口部32の内部にはまり、これは、容器19からの蒸気の通過を可能にするが、凍結乾燥の間、凍結乾燥物が逃げるのを防ぐのに十分に安全にはまる。別の例において、カバープレート60は、複数の容器19(例えば、シリンジ20)の同時凍結乾燥の間に使用されるために、カバープレート突起38のアレイを備える。カバープレート60は、本質的に、各容器19の開口部32の上部にキャップを、そして槽10の上部に蓋を形成する。カバープレート60が容器19に蓋をする限り、このカバープレート60が、容器19がロードされる槽10の上部18の末端の内部16上の第一のレッジ14にはまるように適合される種々の形状(例えば、四角形、長方形、円形)を包含することを、理解すべきである。
凍結乾燥の間、カバープレート60に接触するあらゆる凍結乾燥物は、その上に保持される。凍結乾燥は、比較的少量の活性因子を、その最終的な用途のために単離するために行われる。したがって、任意の量の活性因子が容器19(例えば、シリンジ20)を離れて、容器19を覆うカバープレート60に捕獲される場合、容器19内に残る凍結された活性因子の量は、未知である。したがって、カバープレート60によって捕獲された何らかの凍結乾燥物を失ったあらゆる容器19は、廃棄されなければならない。
【0028】
カバープレート60の一機能は、凍結乾燥の間に容器19からの蒸気の漏れを可能にし、一方で、凍結乾燥物の漏れを防止することである。カバープレート60のよって捕獲された凍結乾燥された活性因子を失っている任意の容器19(例えば、シリンジ20)の同定に加えて、カバープレート60は、複数の容器19が、密接して同時に凍結乾燥される場合、ある容器19の凍結乾燥物の、別の容器19からの凍結乾燥物による汚染を防止する。
【0029】
図6は、カバープレート60で複数の容器19を覆うカバープレート10の、一実施形態を示す。複数のカバープレート突起38は、複数の送達容器19の一部の内部にかみ合う。一選択肢において、カバープレート突起38は、各カバープレート突起38の全長が各容器19の内壁90の内部にあるように、配置される。別の選択肢において、カバープレート突起38は、各カバープレート突起38の少なくとも一部の長さが各容器19の内壁90の内部にあるように、配置される。なお別の選択肢において、各カバープレート突起38は、各容器19の内壁90内にはまるように適合されたテーパー部分を備える。
【0030】
図7は、凍結乾燥装置70内部の棚72上に配置された、複数の容器19を覆うカバープレート60を有する槽10を示す。一選択肢において、容器19(例えば、シリンジ20)は、容器(例えば、シリンジ20)およびカバープレート60を凍結乾燥装置70の内部に配置する前に、カバープレート60で覆われる。別の選択肢において、容器19(例えば、シリンジ20)は、容器(例えば、シリンジ20)およびカバープレート60を凍結乾燥装置70の内部に配置した後に、カバープレート60で覆われる。各シリンジ20の遠位端26は、槽10の底部12に面する。槽10の底部12は、凍結乾燥装置70の棚72上に配置される。次いで、凍結乾燥装置70が閉じられ、そして溶液50(示さず)が、放射か、対流か、もしくはその両方によって、溶液50が凍結固体に転換するまで冷却される。例えば、溶液50は、約0℃と約−50℃との間の温度に冷却される。槽10内部のラック40(図3参照)は、槽10の底部12の表面上にシリンジ20を吊るし、シリンジ20が凍結乾燥装置70のあらゆる冷却表面(例えば、棚72)に接触した状態になるのを防止する。冷却後、各シリンジ20のシリンジ外筒22のチャンバー24および各シリンジ20の外部を含む凍結乾燥装置70の内部に、減圧器55が適用され、材料を乾燥させる(図2参照)。溶液を冷却する工程および溶液に減圧を適用する工程によって、溶液50を凍結乾燥させるかまたは部分的に凍結乾燥させる工程は、少なくとも一つのカバープレート突起38の各々と一以上の容器19の各々の側壁59との間の環状の間隙57を通じて、蒸気を逃がす(図6参照)。
【0031】
対流か、放射か、もしくはその両方による凍結乾燥は、伝導による凍結乾燥に対して有利である。なぜなら、これらの技術は、同時に複数の容器19を凍結乾燥させる工程の経済性を高めるからである。伝導による凍結乾燥は、医薬を含む容器を、凍結乾燥装置70の冷却表面(例えば、棚72)と密接な物理的接触の状態に配置することによって起こる。これは、物理的接触の結果としての熱伝達による冷却を可能にする。凍結乾燥は、慣習的には、伝導によって達成される。なぜなら、伝導は、熱伝達の有効な手段であるからである。
【0032】
一実施形態において、凍結乾燥は、対流か、放射か、もしくはその両方によって生じ、凍結乾燥の間に同時に多数の容器19が冷却される容易さを高める。対流による冷却は、冷却される材料の周りに循環する空気を冷却することによって起こる。放射による冷却は、波または粒子の形態による放射エネルギーの放出によって起こる。対流による冷却も放射による冷却も、容器19と凍結乾燥装置70の冷却表面との物理的接触によっては生じず、したがって、これらの手段による冷却は、このような接触なしで起こる。一実施形態において、対流か、放射か、もしくはその両方による凍結乾燥は、容器19(例えば、シリンジ20)を吊るし、凍結乾燥装置70の冷却表面(例えば、棚72)上で凍結乾燥させることによって行われる。一選択肢において、容器19は、槽10内部のラック40によって吊るされ、凍結乾燥装置70内に配置される。
【0033】
この冷却工程は、本発明のプロセスを、伝導による凍結乾燥冷却よりも容易に実施させ、そして、概して、より使用者に使い易くさせる。伝導による凍結乾燥が、各容器19を凍結乾燥装置70の冷却棚72上に手動で配置することを要求する一方、一選択肢における凍結乾燥は、単に各容器19を槽10内へロードすることによって行われ、これは、単一の工程による複数の容器19の凍結乾燥を可能にする。これは、伝導による凍結乾燥に対して、本発明の凍結乾燥の経済性を大いに高める。
【0034】
対流か、放射か、もしくはその両方による冷却は、伝導による冷却をもはや必要としなくてもよい。しかし、溶液50の冷却時間は、それほど長くなく、そして溶液50の冷却によって現実化される有効性は、上記の実施形態に関して、冷却時間の増加を上回り得る。
【0035】
溶液50が凍結固体へと冷却された後、減圧器55が、凍結乾燥装置70に適用されて、容器19の内部および容器19の外部、しかしさらに凍結乾燥装置70の内部に少なくとも部分的な減圧を提供する。減圧器55は、溶液50を乾燥させるように適用されるか、または溶液50葉、少なくとも部分的に凍結乾燥される。一例において、凍結乾燥された溶液50の水含有量は、水1%未満である。別の例において、凍結乾燥された溶液50の水含有量は、水5%未満である。冷却および減圧のプロセスは、昇華によって、低温において溶液50中の活性因子から液体を除去するように、実施される。このプロセスは、熱によって活性因子を変性、変質または他の点で損傷させないために、他の方法に対して使用される。
【0036】
昇華が乾燥を起こした後、槽10、容器19(例えば、シリンジ20)およびカバープレート60は、凍結乾燥装置70から取り出される。カバープレート60は、容器19の近位端30(図5参照)から取り外され、凍結乾燥物の何らかの保有について検査される。カバープレート60が、何らかのこのような凍結乾燥物を含む場合、その凍結乾燥物が由来する各容器19は、廃棄される。
【0037】
一選択肢において、溶液50の凍結乾燥の後、全ての廃棄されない容器19の開口部32(図5参照)は、保管のため、および使用に先立って密閉される。容器19は、容器19を密閉するための公知の器具によって密閉される。例えば、容器19がシリンジ20である場合、シリンジ外筒22の開口部32は、一選択肢において、シリンジ20のプランジャー35によって密閉される。
【0038】
別の選択肢において、プランジャー先端34は、各残ったシリンジ20のシリンジ外筒22の近位端30(図2参照)内に挿入される。例えば、Becton Dickinson and Companyの、予め包装されたシリンジ20である「Hypak」構造の使用によって、カバープレート60が凍結乾燥後に取り外された後、各プランジャー先端34は、対応するシリンジ20のシリンジ外筒22内に、一工程で挿入される。「Hypak」配置は、二次元の格子またはアレイに接続されたプランジャー先端34を提供し、このプランジャー先端34が、単一工程で、対応するシリンジ20の各外筒22内から取り外されるか、そこに再配置されることを可能にする。各プランジャー棒33は、その後、対応するプランジャー先端34内にねじ込まれる(図2参照)。これは、この実施形態に従う凍結乾燥が生じる効率をさらに高める。
【0039】
一実施形態において、凍結乾燥された医薬80が使用できる状態である場合、この密閉は、容器19から取り除かれ、そして希釈液が、再構成のため容器19に添加される。次いで、凍結乾燥された活性因子が、使用できる状態となる。図8は、送達容器19がシリンジ20である一実施形態を示す。シリンジ外筒22の遠位端26を覆うシリンジキャップ28(図2参照)が取り外され、針85、カニューレ、または他の送達機構が、例えば、シリンジ外筒22の遠位端26に組み込まれたネジ端82へのねじ込みによって、この遠位端26に挿入される。次いで、シリンジ20の針85が、希釈液を含む容器(receptacle)に挿入され、そして適量の希釈液が再構成のためにシリンジ20の中に引きこまれるまで、プランジャー35のプランジャー頭部36を引いてシリンジフランジ31から離すことによって、シリンジ20のプランジャー35がシリンジ外筒22の近位端30に向かって引かれる。シリンジ20は、希釈液を含む容器から引き抜かれ、シリンジ20の内容物は、凍結乾燥された医薬80が希釈液中で溶解されるかまたは懸濁されるまで、攪拌によって混合される。ここで、再構成された活性因子は、投与可能な状態となる。
【0040】
凍結乾燥された医薬80の再構成はまた、瞬時の溶解、攪拌、または均質な懸濁液が作製されるまで凍結乾燥物/希釈液混合物を2つのシリンジ20の間で通過させることによって生じる。この溶解または懸濁された内容物は、針85、カニューレ、または他の送達機構を通して、シリンジ20から患者へと投与される。
【0041】
図9は、凍結乾燥された医薬80を再構成する工程の別の実施形態を示す。第一のシリンジ20は、開口した近位端30、遠位端26、およびそれらの間に伸びる実質的に円筒形のチャンバー24の内壁90を有する、第一のシリンジ外筒22を備える。第一のプランジャー35は、第一のシリンジ外筒22の遠位端26に向かって伸びる、第一のプランジャー先端34に接続されたプランジャー棒33を備える。円筒形のチャンバー24の内壁90は、スライド可能に配置された第一のプランジャー先端34を取り囲み、円筒形のチャンバー24の内壁90との流体密閉性の結合を維持する。
【0042】
一選択肢において、第一のシリンジ外筒22のチャンバー24に導入された、凍結乾燥された医薬80は、凍結乾燥された医薬80の無菌性を維持するために、第一のシリンジ外筒22の遠位端26と第一のプランジャー先端34の遠位端48との間で移動する。第一のシリンジ外筒22の遠位端26は、それを通って軸方向に伸び、シリンジ外筒22のチャンバー24と連絡するオスのルアーロック接続62を備える。オスのルアーロック接続62は、ネジ端82である。シリンジキャップ28(図2参照)は、第一のシリンジ20の凍結乾燥された医薬80の無菌性を維持するため、包装の間に、第一のシリンジ外筒22のオスのルアーロック接続62の上に挿入される。
【0043】
第二のシリンジ120は、開口した近位端130、遠位端126、およびそれらの間に伸びる実質的に円筒形のチャンバー124の内壁91を有する、第二のシリンジ外筒122を備える。第二のプランジャー35は、第二のシリンジ外筒122の遠位端126に向かって伸びる、第二のプランジャー先端134に接続されたプランジャー棒133を備える。円筒形のチャンバー124の内壁91は、スライド可能に配置された第二のプランジャー先端134を取り囲み、円筒形のチャンバー124の内壁91との流体密閉性の結合を維持する。
【0044】
一選択肢において、溶液180(例えば、希釈液)は、チャンバー124内に導入されて、溶液180(例えば、希釈液)の無菌性を維持するために、第二のシリンジ外筒122の遠位端126と第二のプランジャー先端134の遠位端148との間を移動する。第二のシリンジ外筒122の遠位端126は、それを通って軸方向に伸び、シリンジ外筒122のチャンバー124と連絡するメスのルアーロック接続162を備える。メスのルアーロック接続162は、ネジ受け端182である。第二のシリンジキャップ(示さず)は、第二のシリンジ外筒122の溶液180(例えば、希釈液)の無菌性を維持するため、包装の間に、第二のシリンジ外筒122のメスのルアーロック接続162の上に挿入される。
【0045】
図10は、別の実施形態を示し、ここで、第一のシリンジ20は、第二のシリンジ120と取り外し不可能に連結される。具体的には、シリンジキャップ28(図2参照)は、オスのルアーロック接続62から取り外されて、第一のシリンジ外筒22のネジ端82を露出させ、そして第二のシリンジキャップ(示さず)は、メスのルアーロック接続162から取り外されて、第二のシリンジ外筒122のネジ受け端182を露出させる。第一のシリンジ外筒22のオスのルアーロック接続62のネジ端82は、オスのルアーロック接続62のネジ端82とメスのルアーロック接続162のネジ受け端182とを接続し、そしてネジ端82か、ネジ受け端182か、もしくはその両方を、流体密閉性の結合のためのロック位置に回すことによって、第二のシリンジ外筒122のメスのルアーロック接続162のネジ受け端182と結合する。
【0046】
一旦第一のシリンジ20が第二のシリンジ120と連結された場合、第一のシリンジ外筒22の遠位端26に置かれた凍結乾燥された医薬80は、第二のシリンジ外筒122の遠位端126に置かれた溶液180(例えば、希釈液)と流体混合される。凍結乾燥された医薬80と溶液180との混合は、第一のシリンジ外筒22の第一の円筒形の内壁90に沿ってスライドする第一のプランジャー35による第一のプランジャー先端34の、交代性の、流体密閉性の動き、および第二のシリンジ外筒122の円筒形の内壁91に沿ってスライドする第二のプランジャー135による第二のプランジャー先端134の、交代性の、流体密閉性の動きによって達成される。
【0047】
第一のシリンジ外筒22のチャンバー24と第二のシリンジ外筒122のチャンバー124との間の交代性の、流体密閉性の動きは、第二のプランジャー棒133のプランジャー頭部136を押す(これは、相互接続された第二のプランジャー先端134の遠位端148を、第二のシリンジ外筒122の遠位端126に向かって、円筒形の内壁91に沿って強制的に押す)ことによって達成される。第二のプランジャー135の、第二のシリンジ外筒122の遠位端126に向かうスライド式の動きは、溶液180(例えば、希釈液)を、第二のシリンジ外筒122のチャンバー124から進ませ、そして第一のシリンジ外筒22のチャンバー24を強制的に通す。第二のプランジャー先端134により、第二のシリンジ外筒122のチャンバー124から第一のシリンジ外筒22のチャンバー24への溶液180を押すことは、第一のプランジャー35を遠位方向に押して第一のシリンジ外筒22の近位端30から離している第一のシリンジ外筒22の近位端30に向かって、第一のプランジャー先端34を強制的に押し戻す。
【0048】
その後、第一のプランジャー棒33のプランジャー頭部36を押し、これは、相互接続された第一のプランジャー先端34の遠位端48を、円筒形の内壁90に沿って、第一のシリンジ外筒22の遠位端26に向かって強制的に押す。第一のプランジャー先端34の、第一のシリンジ外筒22の遠位端26に向かうスライド式の動きは、混合された医薬(例えば、凍結乾燥された医薬80および溶液180)を、第一のシリンジ外筒22のチャンバー24から第二のシリンジ外筒122のチャンバー124に押し戻す。第一のプランジャー35によって、混合された医薬(例えば、凍結乾燥された医薬80および溶液180)を第一のシリンジ外筒22の円筒形の内壁90から第二のシリンジ外筒122に押すことは、第二のプランジャー135を遠位方向に押して第二のシリンジ外筒122の近位端130から離している第二の空の外筒122の近位端130に向かって、第二のプランジャー先端134を強制的に押し戻す。第一のシリンジ20の第一のプランジャー35の押し引きの交代、およびその後の第二のシリンジ120の第二のプランジャー135の押し引きの交代は、医薬の均一な混合のために繰り返される。
【0049】
(例)
一実施形態の使用例は、この実施形態のプロセスによる酢酸ロイプロリドの凍結乾燥である。水中におよそ38mg/mlの酢酸ロイプロリドを含有する溶液50を、水中で酢酸ロイプロリドを溶解するまで混合することによって、調製する。シリンジ20の槽10を、各シリンジ20の近位端30の開口部32が露出されるように開く。およそ0.3ミリリットルの酢酸ロイプロリド溶液を、ピペットを用いて、各シリンジ20の近位端30の開口部32を通じて各シリンジ20内に充填する。全てのシリンジ20を薬物溶液50で充填する場合、複数のシリンジ20を含む槽10を、凍結乾燥装置70の棚72上に配置する。次いで、シリンジ20をカバープレート60で覆う。凍結乾燥装置70の棚72は、棚72内に冷媒循環を備え、温度を制御する。棚72の温度は、各シリンジ20中の溶液50が0℃以下で十分凍結するまで、放射による冷却および/または対流冷却によって、およそ−50℃に下げる。減圧器55をチャンバーに適用し、そして棚72の温度を、シリンジ20中の水が昇華によって除去されるまで、ゆっくりと室温に上げる。各シリンジ20中に、およそ11.4ミリグラムの凍結乾燥された粉末を得る。
【0050】
槽10を、凍結乾燥装置70から取り出す。カバープレート60シリンジ20の開口部32から取り外す。捕獲した凍結乾燥物についてカバープレート60の各領域を調べ、そして何らかのそのような捕獲された凍結乾燥物が由来するシリンジ20を廃棄する。プランジャー先端34をシリンジ20の近位端30の開口部32に取り付け、プランジャー棒33を対応するプランジャー先端34にねじ込む。これで、シリンジ20は、再構成可能な状態である。
【0051】
(活性因子)
活性因子は、任意の薬学的に活性な因子、および凍結乾燥される可能のある賦形剤を含む。賦形剤は、凍結乾燥のため、かつ凍結乾燥の間の、薬学的に活性な因子の安定性ならびに懸濁および再構成の容易性を高める。賦形剤の例示的なカテゴリとしては、イオン性および非イオン性の(両性の)界面活性剤が挙げられ、その具体的な例としては、ポリソルベー、クレモフォア(cremophore)およびチロキソポール(tyloxopol)が挙げられる。例示的賦形剤の別の型としては、充填剤が挙げられ、その具体的な例としては、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、ならびに炭水化物(例えば、デキストロース、マンニトールおよびデキストラン)が挙げられる。例示的賦形剤のさらなる型は、分散保護剤(lyoprotectant)(グルコース、カタラーゼ、マルトース、マルトトリオースおよびマルトヘキソースが挙げられる)である。
【0052】
治療的活性因子の例としては、動物もしくはヒトにおいて全身性に、または不良な部位において局所的に、感染を予防し得る物質が挙げられる(例えば、抗細菌剤(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、バシトラシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、キノリン、ネオマイシン、クリンダマイシン、カナマイシン、およびメトロニダゾール);抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、およびプレドニゾン);駆虫剤(例えば、キナクリン、クロロキン、およびビダルビン(vidarbine));抗真菌剤(例えば、ニスタチン);抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、リバリビン(ribarivin)、およびインターフェロン);抗アレルギー剤(例えば、サリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、フルルビプロフェン、およびモルフィン);局所麻酔剤(例えば、コカイン、リドカイン、ブピバカインおよびベンゾカイン);肝炎、インフルエンザ、麻疹、風疹、破傷風、ポリオ、および狂犬病に対する抗体を刺激するための免疫原(ワクチン);ペプチド(例えば、酢酸ロイプロリド(LH−RHアゴニスト)、ナファレリン(nafarelin)、ガニレリクス(ganirelix)、およびゴセレリン))。
【0053】
細胞および組織の成長および生存を促進し得るかもしくは細胞の機能を増強し得る物質、またはその代謝前駆体も、また使用される(例えば、神経成長促進物質(例えば、ガングリオシドもしくは神経成長因子);硬質もしくは軟質組織成長促進因子(例えば、フィブロネクチン(FN)、ヒト成長ホルモン(HGH)、コロニー刺激因子、骨形態形成タンパク質、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン由来成長因子(IGF−I、IGF−II)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インターロイキン−1(IL−1)、ならびにプロスタグランジン(例えば、PGEI、PGE2およびPGD2);骨誘導因子または骨成長促進物質(例えば、骨片もしくは脱灰骨材料);そして抗新生物剤(例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(fluouracil)、adriamycin、ビンブラスチン、シスプラチン、毒物と結合した腫瘍特異性抗体、および腫瘍壊死因子)。
【0054】
他の活性因子としては、以下が挙げられる:ホルモン(例えば、プロゲステロン、テストステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)(出産制御および受精能増強のために使用される)、インシュリン、およびソマトトロピン);抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミンおよびクロルフェンクラミン(chlorphencramine));心血管系薬剤(例えば、ジギタリス、ニトログリセリン、パパベリンおよびストレプトキナーゼ);抗潰瘍剤(例えば、塩酸シメチジン、およびヨウ化イソプロパミド);気管支拡張剤(例えば、硫酸メタプロテレノール(metaproternal)およびアミノフィリン);血管拡張剤(例えば、テオフィリン、ナイアシンおよびミノキシジル);中枢神経系剤(例えば、トランキライザー、β−アドレナリン作動性遮断剤、およびドパミン);抗精神病剤(例えば、リスペリドン(risperidone)およびオランザピン(olanzapine));麻薬拮抗剤(例えば、ナルトレキソン、ナロキソンおよびブプレノルフィン)。
【0055】
活性因子のさらなる例は、米国特許第5,234,529号に提供される(この開示は、本明細書において参考として援用される)。
【0056】
(容器)
容器19としては、活性因子がその中で凍結乾燥され、再構成され、そして最終的に使用される、任意の容器(receptacle)が挙げられる。
【0057】
例示的な送達容器19は、シリンジ20である。凍結乾燥のためのガラスバイアルまたはガラスアンプルの使用はかなり一般的ではあるが、凍結乾燥のためのシリンジ20の使用は、一般的ではない。しかし、シリンジ20は、その最終的な使用がシリンジ20からである活性因子の凍結乾燥のための、好ましい手段である、なぜなら、活性因子は、例えば、それが凍結乾燥されたシリンジ20中での再構成後に、その最終的用途のために、使用されるからである。一方で、バイアルまたはアンプル中での凍結乾燥は、再構成された活性因子を、そのバイアルまたはアンプルからシリンジ20に移すことを必要とする。シリンジ20は、例えば、注入可能な医薬を凍結乾燥するために有用である。なぜなら、その医薬は、そのシリンジ中で最終的に投与されるからである。
【0058】
プラスチックシリンジ20は、ガラスシリンジ20に対して、好ましい容器19である。なぜなら、プラスチックシリンジ20は、注入可能な医薬のための最適な薬物送達ビヒクルであるからである。ガラスシリンジ20は、破損しやすく、プラスチックシリンジ20よりも脆弱である。あるいは、プラスチックシリンジ20はより強く、したがって医療専門家にとって、注入可能な医薬を再構成することおよび投与することの両方に用いるために、より安全である。プラスチックシリンジ20はまた、ガラスシリンジ20より軽量であり、かつより安価である。
【0059】
さらに、市販のガラスシリンジ20の径の大きさは、代表的に非常に小さく、このことは、このシリンジ20を使用するために、大きな径の大きさのものを用いるよりも、大量の力を必要とする。プラスチックはガラスよりも強いので、プラスチックシリンジ20の径の大きさは、一選択肢において、同等のガラスシリンジ20の大きさよりも大きく、このことは、このシリンジ20を使用するための力を減少させる。
【0060】
シリンジ20のためのプラスチックは、一般的に、ガラスよりも軽く、より安価で、かつより強い。プラスチックシリンジ20はまた、ガラスシリンジ20よりも製造が安価であり、このことは、さらに本発明の利点を付け加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194322(P2010−194322A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40932(P2010−40932)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【分割の表示】特願2006−507209(P2006−507209)の分割
【原出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(505340973)キューエルティー ユーエスエー,インコーポレイテッド. (8)
【Fターム(参考)】