説明

活性物質を含有するオルガノポリシロキサン組成物

本発明は、組成物において所望の効果を有するように選択した香料、日焼け防止剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒または冷却剤のような活性物質を含有するオルガノポリシロキサン(シリコーン)組成物に関する。活性物質は一般にケイ素含有でない有機物質である。本発明は、特に活性物質の組成物からの放出を抑制または制御するような組成物に関する。活性物質を、ワックスとワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物に混和する。オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合することにより、安定なワックスシリコーン分散体が得られ、これは香料のような活性物質の迅速な混和を可能にし、香料のみを徐々に放出し、香料または他の活性物質を所望の環境において放出するのを制御することができることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物が所望の効果を有するように選択した香料、日焼け防止剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒または冷却剤のような活性物質を含有するオルガノポリシロキサン(シリコーン)組成物に関する。活性物質は、通常ケイ素含有でない有機物質である。とくに本発明は、組成物からの活性物質の放出を抑制または制御するような組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量シリコーンは、家庭用ケア、パーソナルケアまたは織物加工用途に香料または精油のような上述の有機活性物質成分と併せて用いられることが多い。しかしながら、シリコーンは多くの有機成分と相溶性(混和性)でなく、微細かつ安定な分散体を得る上で問題となる。さらにしばしば、相当量の高価な香料が塗布中に浪費されて最終使用者の利益に貢献しない。シリコーンが有機活性物質と相溶性でない場合、活性物質を組成物中に保持する傾向は少ない。
【0003】
国際公開第01/25389号公報は、香料粒子を含む家庭用ケア製品を開示し、ここで香料粒子は香料組成物および少なくとも10℃の融点を有する少なくとも1つのシリコーンポリマーを含むが、ただしシリコーンポリマー中のシリコーン原子の少なくとも20%は炭素原子16個の置換基を有する。かかる長鎖炭素置換基を有するシリコーンは香料を保護することができ、長期間にわたる香料の制御された放出を可能にする。
【0004】
国際公開第2004/084844号公報は、香料、日焼け防止剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒および冷却剤から選択した活性物質を洗浄組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品または繊維加工組成物に添加する前に活性物質およびワックス状シリコーン物質を混合することにより活性物質の洗浄組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品または繊維加工組成物からの放出を制御する方法を記載する。ワックス状シリコーン物質は、12個以上の炭素原子を有する炭化水素置換基により置換されたシクロポリシロキサンである。
【0005】
国際公開第2006/106362号公報は、縮合性基を含むシロキサン含有モノマーおよび/またはオリゴマーをオルガノポリシロキサンおよび/または有機物系希釈物質、適切な触媒、任意で末端ブロック剤の存在下で重縮合することによりポリマー含有希釈オルガノポリシロキサンを調製することと、所要に応じて重合プロセスを急冷することを記載する。希釈物質は生成する希釈オルガノポリシロキサン中に実質的に保持される。希釈剤はオルガノポリシロキサンと相溶性であることが必要であり、そうでなければ時間とともに組成物から発散する。国際公開第2008/045427号公報は、1つ以上の界面活性剤を希釈オルガノポリシロキサンに導入して均質な油相を形成するステップと、0.1〜10重量パーセントの水を均質な油相に添加して油中水型エマルジョンを形成するステップと、せん断を油中水型エマルジョンに加えて油中水型エマルジョンを水中油型エマルジョンに反転させるステップと、任意でさらに水を添加することにより水中油型エマルジョンを希釈するステップとを備えるシリコーン水中油型エマルジョンの製造方法を記載する。
【発明の概要】
【0006】
本発明に係る香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒および冷却剤から選択した活性物質のオルガノポリシロキサン含有組成物からの放出を制御する方法において、活性物質はワックスとワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物中に混和される。
【0007】
本発明に係る組成物はオルガノポリシロキサンと、香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒および冷却剤から選択した活性物質とを含み、活性物質がワックスとオルガノポリシロキサンとの混合物中に混和され、オルガノポリシロキサンがワックスの存在下での重合により形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明は、香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒および冷却剤から選択した活性物質の、ポリオルガノシロキサンを含有する洗浄組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品または繊維加工組成物からの放出を制御するためのワックスの使用であって、オルガノポリシロキサンをワックスおよび活性物質との混合物中で重合し、ワックスが重合中に溶融することを特徴とする。
【0009】
本発明者らは、溶融ワックスとの混合物中でオルガノポリシロキサンを重合することにより安定なワックスシリコーン分散体が得られ、これは香料のような活性物質の迅速な混和を可能にし、香料のみを徐々に放出し、また香料または他の活性物質を所望の環境において放出するために制御し得ることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適な方法において、オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合してワックスと増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物を形成し、活性物質をオルガノポリシロキサンおよびワックスの混合物に重合前、重合中または重合後だが、反応生成物をペーストもしくは固体まで冷却または乳化する前に添加する。
【0011】
オルガノポリシロキサン出発物質は、好ましくは少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンであり、好適にはシロキサン縮合を含むプロセスにより重合される。オルガノポリシロキサン出発物質は、例えば平均2つ以上のケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基、好ましくは末端ヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンとすることができる。オルガノポリシロキサンは例えば一般式
−A’−X (1)
を有することができ、式中のXおよびXは独立してヒドロキシルまたは加水分解性置換基を含有するケイ素含有基から選択され、A’はポリマー鎖を表す。ヒドロキシルおよび/または加水分解性置換基を含むXまたはX基の例は、下記に示すように終端する基を含む。
【0012】
−Si(OH)、−(R)Si(OH)、−(RSiOH、−RSi(OR、−Si(OR、−RSiORまたは−RSi−R−SiR(OR3−p、式中の各Rは独立して一価のヒドロカルビル基、例えば特に1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(好適にはメチル基)を表し;RおよびR基はそれぞれ独立してアルキルまたはアルコキシ基であり、アルキル基は適切には最大6個の炭素原子を有し;Rは最大6個のケイ素原子を有する1つ以上のシロキサンスペーサにより遮断し得る二価の炭化水素基であり;pは0、1または2の値を有する。式−(RSiOHの末端ブロック基がとくに好ましい。線状オルガノポリシロキサンは少量、例えば20%未満の式RSiO1/2の非反応性末端ブロック基を含むことができる。
【0013】
ポリマー鎖A’は次式(2):
−(RSiO)− (2)
のシロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサン鎖であるのが好ましく、式中の各Rは独立して1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基または最大18個の炭素原子を有する炭化水素オキシ基のような有機基である。
【0014】
炭化水素基Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、シクロへキシル、フェニルおよびトリル基が挙げられる。置換炭化水素基は、炭化水素基中の一つ以上の水素を別の置換基、例えば塩素、フッ素、臭素もしくはヨウ素のようなハロゲン原子、アクリル、メタクリル、アルコキシもしくはカルボキシルのような酸素原子含有基、アミノ、アミドもしくはシアノ基のような窒素原子含有基、またはメルカプト基のような硫黄原子含有基で置き換えたものである。置換炭化水素基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、クロロフェニル、β−(ペルフルオロブチル)エチルまたはクロロシクロへキシル基のような塩素またはフッ素で置換したプロピル基が挙げられる。好適には少なくともいくつか、より好適にはほぼすべての基Rはメチルである。好適にはポリジオルガノシロキサンはポリジアルキルシロキサン、もっとも好適にはポリジメチルシロキサンである。
【0015】
式(2)の単位を含むポリジオルガノシロキサンはホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。異なるポリジオルガノシロキサンの混合物も適している。ポリジオルガノシロキサンコポリマーの場合、ポリマー鎖は上記式(2)で表した単位の鎖からなるブロックの組み合わせを含むことができ、ここで2つのR基は:
ともにアルキル基(好適にはともにメチルまたはエチル)、
アルキルおよびフェニル基、
アルキルおよびフルオロプロピル、
アルキルおよびビニル、または
アルキルおよび水素基
である。一般に、少なくとも1つのブロックはR基が両方アルキル基であるシロキサン単位を含む。
【0016】
少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサン出発物質は、通常粘度が5mPa.s〜5000mPa.s、好適には10mPa.s〜500mPa.sとなるような重合度を有する。好適には、実質的に線状のオルガノポリシロキサンはケイ素に結合した末端ヒドロキシル基を有し、10mPa.s〜500mPa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである。
【0017】
実質的に線状のポリオルガノシロキサン出発物質として用いるポリマー(A)は、あるいは上記式(2)中で表したタイプのシロキサン基の少なくとも1つのブロックと、任意適当な有機ポリマー鎖を含む少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマー骨格を有することができる。適当な有機ポリマー鎖の例は、ポリアクリル、ポリイソブチレンおよびポリエーテル鎖である。
【0018】
少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、例えばシロキサン結合を形成するためのヒドロキシルまたは加水分解性基の触媒縮合により重合することができる。実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、実質的に用いた唯一のオルガノポリシロキサン出発物質とすることができる。
【0019】
あるいはまた、オルガノポリシロキサン出発物質は、環状オルガノポリシロキサンとすることができ、これは環状オルガノポリシロキサンを開環してシロキサン結合を形成する触媒プロセスにより重合することができる。かかるプロセスに用いる環状オルガノポリシロキサンは、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンまたはデカメチルシクロペンタシロキサンとすることができる。
【0020】
環状オルガノポリシロキサンは、重合反応におけるただ1つのシロキサン物質とすることができ、または開環環状オルガノポリシロキサンと反応する有機ケイ素物質、例えば少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有するシランまたはシロキサン物質とともに用いることができる。このシランまたはシロキサン物質は、例えば少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンのようなオルガノポリシロキサンとすることができる。こうした少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンと、環状オルガノポリシロキサンとを一緒に重合する場合、これらは例えば重合反応混合物中に10:1〜1:5の重量比で存在することができる。重合は、環状オルガノポリシロキサンの開環の触媒プロセスおよび開環生成物の実質的に線状のオルガノポリシロキサンまたは少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する他のシランもしくはシロキサン物質との縮合により進む。
【0021】
オルガノポリシロキサン出発物質は、あるいはまた少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均3つ以上のSi結合アルコキシ基を有するアルコキシシランとの混合物とすることができる。かかる混合物を実質的に線状のオルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの触媒シロキサン縮合により重合して、分岐オルガノポリシロキサン構造を形成することができる。
【0022】
線状オルガノポリシロキサンと反応するアルコキシシランは、一般に1分子当たり平均3個以上のケイ素結合アルコキシ基を含有する。アルコキシ基はそれぞれ1〜4個の炭素原子を有するのが好ましく、もっとも好適にはメチルまたはエチル基である。アルコキシシランは、例えば式R’Si(OR)のトリアルコキシシランを含むことができ、式中のRは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R’は1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素または置換炭化水素基を表す。かかる基R’の例としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ラウリルまたはステアリル;シクロアルキル基、例えばシクロペンチルまたはシクロへキシル;アルケニル基、例えばビニル、アリルまたはヘキセニル;アリール基、例えばフェニルまたはトリル;アラルキル基、例えば2−フェニルエチル;および前記有機基中の水素のすべてまたは一部をハロゲンで置換することにより得た基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピルが挙げられる。好適なトリアルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよび3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。例えば6〜18個の炭素原子を有する長鎖アルキル基R’を有するトリアルコキシシラン、例えばn−オクチルトリメトキシシランは、線状オルガノポリシロキサンと反応して、分岐点に長鎖アルキル基、例えばオクチル基を有する分岐オルガノポリシロキサンを形成する。かかる長鎖アルキル基の存在は、分岐オルガノポリシロキサンの有機物質、例えば炭化水素溶剤または有機ポリマーとの相溶性を向上させる。
【0023】
アルコキシシランはまた、テトラエトキシシラン(テトラエチルオルソシリケート)のようなテトラアルコキシシランとすることができる。線状オルガノポリシロキサンのテトラアルコキシシランとの反応は、ポリシロキサン鎖にSi−アルコキシ官能基および分岐を有する分岐オルガノポリシロキサンを形成することができる。
【0024】
アルコキシシランは、いくつかのアルコキシ基が加水分解および縮合してシロキサン結合を形成し、いくつかのアルコキシ基がケイ素に結合したままである部分縮合アルコキシシランとすることができる。かかる部分縮合アルコキシシランは、好適には1分子あたり平均3つ以上のケイ素に結合したアルコキシ基を含有する。アルコキシシランは、例えばオリゴマー部分縮合トリアルコキシシランとすることができる。かかるオリゴマーは、分岐構造並びにさらなる分岐部位をもたらすSi−アルコキシ基を有することができる。テトラアルコキシシランはまた、部分縮合形態で用いることができ、例えばSiO分岐単位を含有する部分縮合テトラエトキシシランが広く入手可能である。
【0025】
アルコキシシランと、少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンとを、アルコキシシラン中のSi結合アルコキシ基の実質的に線状のオルガノポリシロキサン中のヒドロキシルまたは加水分解性基に対するモル比が1:100〜1:1、より好適には1:40〜1:2となる量で反応させる。
【0026】
オルガノポリシロキサンの重合用触媒はホスファゼン触媒であるのが好ましい。ホスファゼン触媒は、シロキサン縮合および環状オルガノポリシロキサンの開環重合の両方に有効な触媒である。ホスファゼン触媒は、通常少なくとも1つの−(N=P<)−単位を含有し、最大10個のホスファゼン単位、例えば平均1.5〜5個のホスファゼン単位を有するオリゴマーである。ホスファゼン触媒は、例えばハロホスファゼン、とくにクロロホスファゼン(塩化ホスホニトリル)、酸素含有ハロホスファゼン、ホスファゼン塩基またはホスファゼニウム塩のようなホスファゼンのイオン誘導体、とくにペルクロロオリゴホスファゼニウム塩のようなハロゲン化ホスホニトリルのイオン誘導体とすることができる。
【0027】
1つのとくに適切なタイプのホスファゼン触媒は、酸素含有ハロホスファゼン、とくに酸素含有クロロホスファゼンである。かかる酸素含有クロロホスファゼンは、例えば式Cl(PCl=N)−P(O)ClまたはHO(PCl=N)−P(O)Clを有することができる。nの平均値は、例えば1〜10、とくに1〜5の範囲内とすることができる。触媒はまた、式HO(PCl=N)−P(O)Clの触媒の互変異性体を含むことができる。別のタイプの適切な酸素含有クロロホスファゼンは、式Z’O(PCl=N)−P(O)Clを有し、式中のZ’は酸素を介してリンに結合した有機ケイ素ラジカルを表わし、例えば式R”SiO(PCl=N)−P(O)Clのホスファゼン触媒を有し、ここで各R”は1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素または置換炭化水素基を表す。触媒はまた、かかる有機ケイ素含有ホスファゼンの縮合物とすることができる。好ましくはないが、上記酸素含有ホスファゼンのいずれかにおける塩素原子のすべてまたはいくつかをラジカルQにより置換することができ、ここでQはヒドロキシル基、アルコキシラジカルまたはアリールオキシラジカルのような一価の有機ラジカル、塩素以外のハロゲン原子、有機ケイ素ラジカルおよびリン含有ラジカルを表す。
【0028】
別の適切なタイプのホスファゼン触媒は式
[ClP−(N=PClCl]
のペルクロロオリゴホスファゼニウム塩であり、式中のnは1〜10の範囲内の平均値を有し、Zはアニオンを表す。アニオンは錯アニオンであるのが好ましく、例えば式MXv+1とすることができ、式中のMは1.0〜2.0のポーリングスケール上の電気陰性度および価数vを有する元素であり、Xはハロゲン原子である。元素Mは、例えばリンまたはアンチモンとすることができる。アニオンZはまた、米国特許第5457220号に記載されたような式[MXv−y+1の錯アニオンとすることができ、式中のRは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、yは0〜vの値を有する。
【0029】
ホスファゼン触媒はまた、米国特許第6001928号、同第6054548号または同第6448196号に記載されるようなホスファゼン塩基、とくにアミノ化ホスファゼンとすることができる。かかるホスファゼン塩基は、ペルクロロオリゴホスファゼニウム塩の第二級アミンとの反応およびその後の塩基性求核剤とのイオン交換反応により形成することができる。第二級アミンは、例えば式HNRを有し、クロロホスファゼンオリゴマーのいくつかまたはすべてが−NR基により置き換えられる。
【0030】
ホスファゼン触媒は、一般にオルガノポリシロキサン出発物質の重量に対して100万分の1または2〜200部、例えば100万分の5〜50部で存在する。ホスファゼン触媒は、重合生成物中の望ましくない低分子量環状シリコーンの含有量が低いという利点を有する。
【0031】
オルガノポリシロキサン重合に用い得る代替触媒は、プロトン酸、ルイス酸、有機および無機塩基、金属塩および有機金属錯体のようなシロキサン縮合を触媒することが既知のあらゆるものを含む。縮合特異性触媒が好ましい。これらとしては式R20SOHの酸性縮合触媒が挙げられ、式中のR20は例えばヘキシルもしくはドデシル基のような好適には6〜18個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基のようなアリール基、またはジノニル−もしくはジドデシル−ナフチルのようなアルカリール基を表し、例えば触媒はドデシルベンゼンスルホン酸とすることができる。他の縮合特異性触媒としては、n−ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジン、ルビジウムまたはセシウムのカルボン酸塩、およびマグネシウム、カルシウムまたはストロンチウムの水酸化物が挙げられる。
【0032】
さらなる代替触媒としては、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウムまたはゲルマニウムおよびジルコニウムを含む縮合触媒が挙げられる。例として、金属トリフラート、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ−2−エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエートのような有機スズ金属触媒およびジオルガノスズ塩、とくにジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、またはジメチルスズビスネオデカノエートのようなジオルガノスズジカルボキシレート化合物が挙げられる。
【0033】
チタネートまたはジルコネート系触媒、例えば一般式Ti[OR22による化合物を用いることができ、式中の各R22は同じかまたは異なっていてもよく、1〜10個の炭素原子を含有する線状または分岐であってもよい一価の第一級、第二級または第三級脂肪族炭化水素基を表す。チタネートは、例えばメチルまたはエチルアセチルアセトネートのようなアルキルアセチルアセトネートでキレート化することができる。
【0034】
本発明において触媒として用い得るさらなる代替触媒は、少なくとも1つの四置換ホウ素原子と、国際公開第01/79330号公報に定義されるような少なくとも1つのシラノール基と相互作用することができるプロトンとを含むアニオン給源、例えばテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを付与する任意適当な化合物である。
【0035】
あるいはまた、オルガノポリシロキサンの重合は、適切な触媒の存在下での不飽和有機基、例えばアルケニルまたはアルキニル基とSi−H基との間のヒドロシリル化反応とすることができる。このルートにおいて、適当なシランならびにシロキサン含有モノマーおよび/またはオリゴマーを用いることができる。よってオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応によりSi−H基を有するシランもしくはシロキサン物質と重合するアルケニルもしくはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサン、またはヒドロシリル化反応により少なくとも2つのアルケニルもしくはアルキニル基を含有する有機化合物と重合するSi−H基を有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。ヒドロシリル化反応は、通常白金族触媒の存在下で行う。
【0036】
アルケニルまたはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンは、線状または分岐とすることができ、一般に1〜18個の炭素原子を有する炭化水素または置換炭化水素基であるSi結合有機基を含み、その少なくとも2つがアルケニルまたはアルキニル基である。オルガノポリシロキサンは、例えばアルケニルまたはアルキニル基を末端基として含有することができる。各アルキニルまたはアルケニル基は末端二重結合を有するのが好ましい。好適なアルケニル基の例は、HC=CH−、HC=CHCH−、HC=C(CH)CH−、HC=CHCHCH−、HC=CHCHCHCH−およびHC=CHCHCHCHCH−である。アルキニル基の例は、HC≡C−およびHC≡CCH−を含む。オルガノポリシロキサンの他の有機基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシルのようなアルキル基;シクロへキシルのようなシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチルのようなアリール;および3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピルおよびジクロロフェニルのようなハロゲン化炭化水素基から選択することができる。メチル基が好適であることが多い。オルガノポリシロキサンは、例えばアルケニル末端線状または分岐ポリジメチルシロキサンとすることができる。
【0037】
Si−H基を有するオルガノポリシロキサンは線状または分岐とすることができる。オルガノポリシロキサンの他の有機基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシルのようなアルキル基;シクロへキシルのようなシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよび2−フェニルエチルのようなアリール;ならびに3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピルおよびジクロロフェニルのようなハロゲン化炭化水素基から選択することができる。メチル基が好適であることが多い。Si−H基は末端とすることができ、例えばオルガノポリシロキサンはジメチルシリル末端基を有することができ、および/またはSi−H基はポリマー鎖に沿って存在することができ、例えばオルガノポリシロキサンはメチル水素シロキサン単位を含むことができる。Si−H基を有するオルガノポリシロキサンは、例えばポリ(メチル水素)シロキサンまたはジメチルシロキサンメチル水素シロキサンコポリマーとすることができる。
【0038】
ヒドロシリル化による重合を用いる場合、上述のようなアルケニルまたはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンを上述のようなSi−H基を有するオルガノポリシロキサンと反応させるのが好ましい。
【0039】
アルケニルまたはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンはまた、さらには少なくとも1つのSi−H基を含有するシランと重合することができる。かかるシランの例としては、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシランおよびフェニルジクロロシランのようなハロシラン、ならびにトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシランおよびフェニルジメトキシシランのようなアルコキシシランが挙げられる。
【0040】
Si−H基を含有するオルガノポリシロキサンはまた、さらには少なくとも2つのアルケニルまたはアルキニル基を含有する有機化合物と重合することができる。アルケニルまたはアルキニル基は共役させるべきでなく、好適には末端基である。適当な有機化合物としては、例えば1,5−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエンが挙げられる。
【0041】
ヒドロシリル化反応用の触媒は、一般に白金族触媒、すなわち白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくはルテニウムから選択される金属、またはそれら金属の1つの化合物である。白金を含む触媒の例としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸およびジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、炭素担体上に吸着させた白金微粒子、Pt(Al)のような金属酸化物担体上に支持された白金、白金黒、白金アセチルアセトネート、PtCl、PtCl、Pt(CN)に代表されるハロゲン化白金、ならびにハロゲン化白金とエチレン、プロピレンおよびオルガノビニルシロキサンに代表される不飽和化合物との錯体が挙げられる。1つの好適な白金触媒はKarsted触媒で、これは通常トルエンのような溶剤中に1重量%の白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。別の好適な白金触媒は、米国特許第3,419,593号に記載されるような塩化白金酸と、末端脂肪族不飽和を含有する有機ケイ素化合物との反応生成物である。さらなる好適な触媒は、米国特許第5,175,325号に記載されるような塩化白金およびジビニルテトラメチルジシロキサンの中性錯体である。
【0042】
ルテニウムを含むヒドロシリル化触媒の例としては、RhCl(BuS)および1,1,1−トリフルオロアセチルアセトネート、ルテニウムアセチルアセトネートおよびトリルテニウムドデカカルボニルまたはルテニウム1,3−ケトエノレートのようなルテニウムカルボニル化合物が挙げられる。ロジウム触媒の例としては、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)およびRh(CO)[PhP](C)が挙げられる。イリジウム触媒の例としては、Ir(COOCCHおよびIr(C)Sが挙げられる。
【0043】
組成物中のヒドロシリル化触媒の濃度は、通常オルガノポリシロキサンに対し少なくとも100万分の1重量部相当の元素白金族金属をもたらすことができる。100万分の約3〜50部相当の元素白金族金属をもたらす触媒濃度が一般的に好適な量である。
【0044】
一般に、ヒドロシリル化重合は約1:1のSi−H基のアルケニルアルキニル基に対するモル比を用いて行われる。アルケニル基を含有する物質をわずかに過剰に用いて、すべてのSi−Hが反応に消費されるのを確実にすることができる。
【0045】
溶融ワックスとの混合物における重合の度合いは、生成する分子量の増加したオルガノポリシロキサンが出発オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の少なくとも5倍、より好適には少なくとも10倍の重量平均分子量Mwを有するほどとするのが好ましい。Mwはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。生成する分子量の増加したオルガノポリシロキサンのMwは、好ましくは少なくとも10,000、より好ましくは少なくとも100,000であり、1,000,000以上であってもよい。
【0046】
ワックスは、15〜20℃の温度で可塑性または可鍛性であり、少なくとも20℃の融点を有し、溶解時に低粘度を有する物質を意味する。ワックスの例は、カークオスマー化学技術百科事典(Claude Leray、John Wiley & Sons,Inc.によるArticle on Waxes、2006年)に記載されている。
【0047】
オルガノポリシロキサン重合中に存在するワックスは、30〜100℃、より好適には40〜90℃の融点を有するのが好ましい。ワックスはケイ素を含有しない有機ワックス、またはシリコーンワックスとすることができる。オルガノポリシロキサン生成物の有機物質との相溶性を向上させることが重要である用途について、有機ワックスが通常好ましいが、長鎖有機置換基を含有するシリコーンワックスも相溶性を向上させることができる。
【0048】
ワックスは、例えば石油由来ワックスのような炭化水素ワックス、とくにパラフィンワックスもしくは微結晶ワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックスまたはそれらの混合物とすることができる。パラフィンワックスは主に炭素原子20〜30個の平均鎖長を有する直鎖炭化水素を含有する。パラフィンワックスの例は、Parafflex4750A顆粒およびParafflex4797Aのような商標ParafflexでIgiWaxより販売されている。微結晶ワックスはより高い割合の分岐炭化水素およびナフテン系炭化水素を含有する。微結晶ワックスの例は、商標Microsere、例えばMicrosere5981AでIgiWaxより販売されている。用い得る他の有機炭化水素ワックスは、モンタンワックス(亜炭ワックスとしても既知)、オゾケライトワックスまたはスラグワックスである。
【0049】
ワックスはまた、カルボン酸エステルを含むワックスとすることができる。ビーワックス、ラノリン、タロウ、カルナバおよびカンデリラのような多くの天然ワックス、トリベヘニンならびにパームワックス、米ぬかワックスまたは大豆ワックスのような植物の種子、果実、堅実または核種に由来するワックスは、遊離酸および/またはアルコールでのエステルの混合物を含む。エステルワックスの例は、IgiWaxより商品名RD2778AおよびRD2779Aで販売されるパーム油由来のパームワックスである。より軟質のワックスのいくつかは「バター」と称される。これらタイプの製品は、よくスキンケア用途に用いられ、例えばマンゴバター、シアバターまたはココナツバターとして油糧種子から得られる。他の例はイリッペ、クプアス、ムルムル、サルおよびコクムバターである。かかる油糧種子バターは、本発明のワックスのすべてまたは一部として用いることができ、ただしワックスは少なくとも20℃の融点を有する。一般に、バターは40.5℃未満で20℃より高い滴定点を有することにより定義することができる(AOCS法Tr 1a−64Tに従ったJ.O’Lenickによる『Oil of nature』)。
【0050】
ワックスはまた、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、長鎖脂肪アミン、長鎖脂肪アミド、エトキシル化脂肪酸もしくは脂肪アルコール、または長鎖アルキルフェノールとすることができる。一般に、脂肪酸、アルコール、アミンまたはアミドの長鎖は少なくとも12個、好ましくは16個の炭素原子、しばしば最大30個以上の炭素原子を有するアルキル基である。
【0051】
ワックスはまた、ポリエーテルワックス、例えばBASFより商標Lumax Vで販売されるような固体ポリエーテルポリオールもしくはワックス状ポリビニルエーテル、またはポリエーテルエステルとすることができる。
【0052】
シリコーンワックスの例は、12個以上の炭素原子を有する炭化水素置換基を含有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは、メチルアルキルシロキサン単位((CH)(R)SiO/2)を含むポリジオルガノシロキサンであるのが好ましく、式中のRは12個以上、好ましくは16〜100個の炭素原子を有する長鎖アルキル基であり、任意でジメチルシロキサン単位または式((CH)(R)SiO/2)の単位も含み、式中のRはエチルのような1〜11個の炭素原子を有するアルキル基、2−シクロへキシルエチルのようなシクロアルキル基、ハロアルキル基、フェニルのようなアリール基または2−フェニルプロピル、2−フェニルエチルもしくは2−(t−ブチルフェニルエチル)のようなアラルキル基である。上記シロキサン単位のメチル基は、所望に応じてエチルまたは別の低級アルキル基により置換することができる。長鎖アルキル基Rは、任意にアミノ、アミド、アルコール、アルコキシまたはエステル基のような極性置換基により置換することができる。シリコーンワックス中のケイ素原子の好ましくは少なくとも20%、もっとも好適には少なくとも50%は、16〜100個の炭素原子、もっとも好適には20〜36個の炭素原子を有するアルキル置換基を有する。
【0053】
異なるタイプのワックスの混合物、例えばエステルワックスと炭化水素ワックスとの混合物を用いることができる。
【0054】
ワックスは、活性物質をワックスシリコーン混合物の直面する温度または環境の変化に応じて放出するように選択することができる。例えば、ワックスの融点は、ワックスシリコーン混合物をアイロンがけ補助用製品に用いる際に香料をアイロンがけ温度より高い温度で放出するように選択することができる。あるいはまた、ワックスシリコーン混合物を水中で用いる製品、例えば柔軟剤に用いる際に香料を緩徐に放出するようにワックスが水に難溶性とすることができる。例えば、ポリエチレングリコールポリエーテルワックスは水に難溶性である。
【0055】
ワックスは重合中にオルガノポリシロキサンに対し1または5%からオルガノポリシロキサンに対し150または200%までのいずれかの量で存在することができる。好適には、重合中に存在するオルガノポリシロキサン対ワックスの重量比は95:5〜40:60である。ワックスはオルガノポリシロキサンに接触する前に溶融することができるか、または固体ワックスをオルガノポリシロキサンと混合し、せん断を混合物に印加しながら加熱してワックスを溶融することができる。
【0056】
オルガノポリシロキサンの重合を、ワックスの融点より高い温度で行う。重合温度はワックスの融点より5〜30℃高いのが好ましく、例えば重合温度は50℃〜120℃の範囲とすることができる。ほとんどのワックス、とくに炭化水素ワックスおよびエステルワックスのような有機ワックスは、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンのようなオルガノポリシロキサンと混和性でない。従って、ワックスおよびシリコーンは液/液分散体として存在するので、重合は分散重合である。
【0057】
重合反応は、所望の重合度に達した際に終了することができる。これは、例えば重合反応混合物の粘度またはそれを混合するのに要するトルクを測定することにより決定することができる。好適なホスファゼン触媒により触媒される重合は、米国特許第5457220号に記載される触媒の場合中和剤、例えばトリヘキシルアミンのようなトリアルキルアミンを添加することにより終了することができる。重合を行う時間は、幅広い範囲内、例えば1または2分から10時間以上まで変動し得る。好適なホスファゼン触媒により触媒される重合は、通常2〜150分間行う。
【0058】
活性物質の1つの例は香料組成物(香料)である。香料組成物は固体または液体であってもよく、単一の香料化合物または天然香油であっても、または香料化合物および/または天然油の混合物であってもよい。かかる天然油および香料化合物の例は国際公開第01/25389号公報に記載されている。
【0059】
香料は一般に溶融有機ワックスに容易に溶解する。香料をワックスと混合し、次いで加熱してワックスを溶融することができるか、またはワックスを溶融し、次いで香料と混合することができるか、若しくは溶融ワックスをオルガノポリシロキサン出発物質と混合し、次いで香料と混合することができる。あるいはまた、香料を重合反応中、すなわち触媒を添加した後にポリシロキサンおよびワックスと混合するか、またはワックスがまだ溶融している間に反応生成物と混合することができる。
【0060】
ワックスシリコーン組成物中に混和し得る活性物質の代替タイプとしては、日焼け防止物質、抗酸化剤、ビタミン、害虫忌避剤および加温効果または冷却剤(皮膚に温感または冷感を与える物質)が挙げられる。日焼け防止剤の例としては、パラアミノ安息香酸誘導体およびケイ皮酸エステル、例えばメトキシケイ皮酸オクチルまたはp−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチルのような約290〜320ナノメーター(UV−B領域)の紫外線を吸収するもの;ならびにベンゾフェノンおよびブチルメトキシジベンゾイルメタンのような320〜400ナノメーター(UV−A領域)の範囲内の紫外線を吸収するものが挙げられる。ビタミンの例はビタミンAおよびE、レチノールならびにトコフェロールである。メントールは冷却剤の例である。
【0061】
ワックスシリコーン混合物中に混和し得る活性物質のさらなる代替タイプは、例えば混合物を含む組成物の細菌による分解からの長期間の保護をもたらすか、または組成物を塗布した基材に長期間の殺生物効果をもたらすための殺生物剤である。
【0062】
ワックスシリコーン混合物中に混和し得る活性物質のさらなる代替タイプは触媒、例えば合成樹脂組成物を硬化するための触媒である。
【0063】
不活性液体希釈剤は、所望に応じてオルガノポリシロキサンの重合中に存在することができる。希釈剤はシリコーン系および/または有機物系希釈剤とすることができ、一般にオルガノポリシロキサンと反応する基を有さないように選択される。希釈剤は、用いる場合、その存在が生成するワックスシリコーン混合物を基にした最終製品処方における増量剤または可塑剤として望ましい物質から通常選択される。
【0064】
任意適当な希釈剤または希釈剤の組み合わせを反応混合物に用いることができる。一般に、国際公開第2006/106362号公報に用いられる増量剤のいずれかを用いることができる。これらは、以下に列挙したもの単独でまたは他のものとの組み合わせを含む:
線状(例えばn−パラフィン系)鉱油、分岐(イソパラフィン系)鉱油および/または環状(いくつかの従来技術ではナフテン系と称される)鉱油を含む鉱油留分のような炭化水素油で、1分子当たり5〜25個の炭素原子を含む油留分中の炭化水素;
アルキル基が好適にはメチル基であり、各アルキル基が同じまたは異なっていてもよく、1〜6個の炭素原子を含むが好適にはメチル基であり、好適には25℃で100〜100000mPa.s、もっとも好適には25℃で1000〜60000mPa.sの粘度を有するトリアルキルシリル末端ポリジアルキルシロキサン;
ポリイソブチレン(PIB);
トリオクチルホスフェートのようなホスフェートエステル;
ポリアルキルベンゼン、重アルキレートのような線状および/または分岐アルキルベンゼン、ドデシルベンゼン、ならびに他のアルキルアレーン;
脂肪族モノカルボン酸のエステル;
8〜25個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルケンまたはその混合物のような線状または分岐モノ不飽和炭化水素;
天然油およびその誘導体。
【0065】
好適な希釈剤としては、鉱油留分、アルキル脂環式化合物およびポリアルキルベンゼンを含むアルキルベンゼンが挙げられる。任意適当な鉱油留分の混合物を希釈剤として用いることができるが、例えば220より高い分子量を有する高分子量増量剤がとくに好ましい。例としては、220より高い分子量のアルキルシクロヘキサン、パラフィン系炭化水素ならびに1〜99%、好適には15〜80%のn−パラフィン系および/またはイソパラフィン系炭化水素(線状分岐パラフィン系)、1〜99%、好適には85〜20%の環状炭化水素(ナフテン系)、および最大3%、好適には最大1%の芳香族炭素原子を含有するそれらの混合物が挙げられる。環状パラフィン系炭化水素(ナフテン系)は環状および/または多環式炭化水素を含有することができる。
【0066】
多くの製品中に増量剤または可塑剤として保持するのに適した好適な代替希釈剤は、非鉱物系天然油、すなわち石油からではなく、動物、種子または堅果から得られる油を含む。かかる天然油は、一般に脂肪酸の混合物、とくにいくつかの不飽和脂肪酸を含有する混合物のトリグリセリドである。天然油を含有する希釈剤は、例えばいくつかのパーソナルケア製品に用いるのに好適であり得る。希釈剤はエステル交換植物油、ボイル天然油、吹込天然油またはスタンド油(熱重合油)のような天然油の誘導体とすることができる。
【0067】
希釈剤の量は、用いる場合、例えばワックス、オルガノポリシロキサンおよび希釈剤の総重量の最大60%、通常5〜40%とすることができる。希釈剤はシロキサン、溶融ワックス相、もしくは活性物質と、またはそれらのいずれか2つと、またはそれらのすべてと混和性とすることができる。多くの希釈剤はワックスと混和性であり、ワックスの融点を低減するが、希釈剤の量は好適にはワックスおよび希釈剤の混合物が25℃より低い融点を有するほど多くない。
【0068】
重合反応を完了させた後、反応生成物をワックスの凝固温度より低い温度、例えば室温まで冷却することができる。これはシリコーン対ワックスの比、ワックスの硬度およびオルガノシロキサンの分子量に応じてワックスおよび重合オルガノポリシロキサンのペースト状固体混合物をもたらす。オルガノポリシロキサンの比率が高いと、例えばASTM D217−97に従って針入度計により測定して高い針入度値を有する軟らかいペーストを形成する傾向がある。ワックスの比率が高いと、低い針入度値を有する硬いペースト状固体を形成する。
【0069】
ペーストまたは固体はオルガノポリシロキサンにおけるワックスの非常に密接な分散体であり、または逆も同様である。分散体は驚くほど安定している。本発明者らは、本発明により生成した多くの分散体がワックスの融点より高い温度に再加熱する際にマクロ相分離に対して安定であることを見出した。本発明者らは、分散体が非常に微細(低粒径)なので、溶融ワックスがシリコーンマトリックスに凝集し得ないと考える。ワックスに分散したシリコーンの場合について、本発明者らは、シリコーンの高分子量(従って高粘度)が凝集を防止すると考える。このマクロ分離に対する安定性は、製造業者が分散体を使用および製剤することを可能にする運動現象である。最終的には加熱されると、分散体は熱力学的により安定な2つのマクロ相系に分離するだろう。活性物質は、ケイ素を含有しない有機物質である場合、通常ワックスと混和性であり、ペースト状固体混合物のワックス相中に存在する。
【0070】
ポリオルガノシロキサン、ワックスおよび活性物質の分散体を化粧品製剤に用いることができる。例えば、ワックス中のポリオルガノシロキサンの固体分散体は、リップスティックのようなカラー化粧品の基礎原料として、適当な染料および/または顔料ならびに任意で香料との混合物において用いることができる。ペーストまたは固体形態のシリコーンワックス分散体は、アイライナー、頬紅またはマスカラのような他のカラー化粧品の基礎原料として用いることができる。一般に、化粧品は含水または無水タイプのいずれかとすることができる。本発明のプロセスを用いて、かかるカラー化粧品製剤からの香料の制御された放出をもたらすことができる。
【0071】
天然油および香料化合物を含有するワックスシリコーン分散体はまた、家庭用またはパーソナル用途の洗浄組成物、例えば粉末もしくは液体洗濯洗剤、柔軟剤もしくはアイロンがけ補助剤、または芳香剤に用いるのに適している。あるてはまた、香料組成物はスキンクリーム、シャンプーもしくはフェイスクリームのようなパーソナルケア製品に混入するための香料であってもよく、または例えば食品または食品パッケージングに用いる香味もしくは芳香化合物であってもよい。香料組成物はまた、香料化合物の反応生成物のような化学的に保護された香料化合物を含むことができる。
【0072】
日焼け防止物質、抗酸化剤、ビタミン、害虫忌避剤および加温または冷却剤をパーソナルケア製品に用いることができる。日焼け防止剤およびビタミンはスキンクリームおよびローションに用いられ、本発明に係るワックスシリコーン混合物中に混和される場合、徐々に放出される。ワックスシリコーン混合物に混和した冷却剤をスキンケア組成物に用いて、組成物を皮膚に擦り込まる際に冷却剤の長期放出をもたらすことができる。害虫忌避パーソナルケア製品は、例えばクリーム、スティックまたはスプレーの形態とすることができ、製品を皮膚に塗布した後に害虫忌避剤のパーソナルケア製品からの制御された放出を必要とする。
【0073】
本発明を用い、薬剤を本発明に係るワックスシリコーン混合物に混和し、この混合物を経皮送達により薬剤を投与するため皮膚に塗布する組成物に用いることによる薬剤(医薬活性物質)の制御された放出をもたらすこともできる。
【0074】
触媒、とくに合成樹脂用の硬化触媒を混和したワックスシリコーン混合物を、例えば制御された放出が有利であるコーティングまたは接着剤に用いて、著しく急速に硬化することなく完全な硬化をもたらすることができる。
【0075】
ポリオルガノシロキサンおよびワックスの分散体を含有する製剤は、シリコーン製剤に既知の各種添加剤、例えば充填剤、染料、顔料およびシマーのような着色剤、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、殺菌剤または殺生物剤ならびに上述のような活性物質を含有することができる。かかる添加剤をポリオルガノシロキサンおよびワックスの分散体に、ワックスシリコーン分散体と熱可塑性樹脂との混合前、混合後または混合中に混和することができる。
【0076】
代替方法では、ワックスとワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物に混和する活性物質を、界面活性剤の存在下で水に乳化することができる。重合反応により生成したワックスおよびシリコーンの混合物は、ワックスが溶融する際に乳化される。反応生成物をペーストまたは固体まで冷却する前に、反応生成物を乳化するのが好ましい。反応生成物は、あらゆるマクロ相分離が起こる前に乳化される。
【0077】
フェイス、ハンドおよびボディクリーム、カラー化粧品、マスカラ、ファンデーション、シャンプーならびに日焼け防止製剤のような多くのパーソナルケア製品は、エマルジョンまたは他の分散体である。それらは水中油(o/w)または油中水(w/o)型のいずれかとすることができる。本発明者らは、シリコーンを有機ワックスの存在下で重合し、活性物質、例えば香料を生成したシリコーン/有機物分散体に混和することにより、エマルジョン形態で安定で、香料の制御された放出をもたらし得るシリコーン/有機物分散体を得ることができることを見出した。
【0078】
任意適当な界面活性剤または界面活性剤の組み合わせをワックスシリコーン分散体を乳化するのに用いることができる。界面活性剤は、一般に非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤とすることができる。界面活性剤の使用量は、界面活性剤に応じて変動するが、一般にポリジオルガノシロキサンに対し最大約30重量%、例えば0.2〜20%である。
【0079】
非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドとC4〜16アルコールのような長鎖脂肪アルコールもしくは脂肪酸との縮合物、エチレンオキシドとアミンもしくはアミドとの縮合物、エチレンおよびプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロールのエステル、スクロース、ソルビトール、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フルオロ界面活性剤、脂肪アミンオキシド、ポリエチレングリコール長鎖(12〜14C)アルキルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマーおよびアルキルポリサッカリド、例えば米国特許第5,035,832号に記載されるような構造R24O−(R25O)−(G)の物質が挙げられ、式中のR24は線状もしくは分岐アルキル基、線状もしくは分岐アルケニル基またはアルキルフェニル基を表し、R25はアルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、sは0または正の整数を表し、tは正の整数の表す。代替非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルメチルエーテルのようなポリマー界面活性剤が挙げられる。ケイ素原子を含有する界面活性剤を用いることもできる。
【0080】
適当な市販の非イオン性界面活性剤の代表例としては、Uniqema(ICI Surfactants)社より商品名BRIJで販売されるポリオキシエチレン脂肪アルコールが挙げられる。いくつかの例は、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして既知のエトキシル化アルコールであるBRIJ35液体、およびポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして既知の別のエトキシル化アルコールであるBRIJ30がある。同様の物質がCroda Europe社より商標Volpo L23およびVolpo L4で販売されている。いくつかの追加の非イオン性界面活性剤としては、The Dow Chemical社より商標TERGITOLで販売されるTERGITOL TMN−6のようなエトキシル化アルコール、エトキシル化トリメチルノナノールとして既知のエトキシル化アルコール;および各種エトキシル化アルコール、すなわち、商標TERGITOL15−S−5、TERGITOL15−S−12、TERGITOL15−S−15およびTERGITOL15−S−40で販売されるC12〜C14第二級アルコールエトキシレートが挙げられる。
【0081】
適当な両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩およびベタインが挙げられる。具体的例としては、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシ硫酸コカミドプロピル、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノ酪酸およびイミダゾリニウムカルボキシル化合物が挙げられる。
【0082】
カチオン性界面活性剤の例としては、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロウトリメチルアンモニウムおよび水酸化ココトリメチルアンモニウムのような第四級アンモニウム水酸化物、ならびにこれらの物質の対応する塩、脂肪アミンおよび脂肪酸アミドならびにこれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリンの第四級アンモニウム塩基ならびにポリプロパノールポリエタノールアミンが挙げられる。適当なカチオン性界面活性剤の他の代表例としては、アルキルアミン塩、スルホニウム塩、およびホスホニウム塩が挙げられる。
【0083】
適当なアニオン性界面活性剤の例としては、硫酸ラウリルのようなアルキル硫酸塩;アクリル酸/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーのようなポリマー;ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸およびミリスチルベンゼンスルホン酸のようなアルキルベンゼンスルホン酸および塩;モノアルキルポリオキシエチレンエーテルの硫酸エステル;アルキルナフチルスルホン酸;アルカリ金属スルホリシネート;ココナツ油酸のスルホン化モノグリセリドのような脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル;スルホン化一価アルコールエステルの塩;アミノスルホン酸のアミド;脂肪酸ニトリルのスルホン化物;スルホン化芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物;オクタヒドロアントラセン硫酸ナトリウム;アルカリ金属アルキル硫酸塩;硫酸エステル;ならびにアルカリールスルホン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属石鹸;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩;長鎖脂肪アルコール硫酸塩;硫酸オレフィンおよびスルホン酸オレフィン;硫酸モノグリセリド;硫酸エステル;スルホン酸エトキシル化アルコール;スルホコハク酸エステル;アルカンスルホン酸塩;リン酸エステル;アルキルイセチオン酸塩;アルキルタウリン酸塩;ならびにアルキルサルコシン酸塩が挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤の1つの例は、商品名Bio−SoftN−300で市販されている。これは、Stephan社より販売されるスルホン酸トリエタノールアミン線状アルキレート組成物である。
【0084】
上記界面活性剤は単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0085】
重合触媒はさらに界面活性剤、すなわち乳化プロセスに含まれる界面活性剤の1つとすることができる。界面活性剤として作用し得る触媒のファミリーは式R20SOHの酸性縮合触媒、例えばドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0086】
本発明に係る1つの好適な乳化方法において、乳化は反応生成物を0.5〜20重量%の水と1〜30重量%の界面活性剤の存在下で混合し、乳化したワックスオルガノポリシロキサン混合物の所望の濃度を水中で達するまで生成したエマルジョンを水と混合する少なくとも1つのステップにより行われる。乳化の初期混合ステップ中に存在する水の量は、例えば重合反応生成物に対し1〜10%とすることができる。極少量の水をまず重合反応生成物に添加する方法では、とくに水の量が5%未満である場合、連続ワックス/シリコーン相および分散水相を含有する油中水型エマルジョンを形成することができる。油中水型エマルジョンにせん断を加えることにより、油中水型エマルジョンの粘稠な水中油型エマルジョンへの位相反転がもたらされる。高せん断混合は、歯科用ミキサーのような粘度の高いペーストを扱うように設計されたミキサー中で行うのが好ましい。高せん断混合による少量の水のさらなる添加は任意でより多くの水を低せん断下で添加することにより水中油型エマルジョンを希釈する前に行うことができる。
【0087】
エマルジョンの粒径は、例えば0.1〜100μmの範囲内とすることができる。初期位相反転プロセスに用いる水および界面活性剤の量は最終エマルジョンの粒径に影響を与えることができる。例えば、2つの例においてエマルジョンが同量の水で形成されるが、第1の例では位相反転ステップ前に多量の水が混合され、第2の例では位相反転ステップ前に少量の水が混合された後、位相反転ステップ後に残った追加の水が混合される場合、第1エマルジョンは一般に第2のものより大きい粒径を有するだろう。どのように水が添加されようと、水の合計使用量は一般にエマルジョンの重量に対し約1〜99重量%、好ましくは約6〜約99重量%である。
【0088】
所望に応じて、他の物質をエマルジョンに添加することができる。これらとしては、香料、日焼け防止剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒および冷却剤または充填剤、弛緩剤、着色剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、凍結融解安定剤もしくはpHを中和する無機塩のような「活性物質」を挙げることができる。しかしながら、活性物質のエマルジョン組成物からの制御された放出が望ましい場合、香料のような活性物質をワックスシリコーン相中に混入してワックスと増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物を形成するのが好ましく、本発明によれば活性物質をオルガノポリシロキサンおよびワックスの混合物にオルガノポリシロキサンの溶融ワックスとの混合物の重合前、重合中または重合後だが、反応生成物をペーストもしくは固体まで冷却または乳化する前に添加する。
【0089】
本発明に従って混入した活性物質を含むエマルジョンは、毛髪、皮膚、粘膜または歯のようなパーソナルケア用途に有用である。これらの用途では、シリコーンが滑らかであり、スキンクリーム、スキンケアローション、モイスチャライザー、にきびまたはしわ除去剤のようなフェイシャルトリートメント、シャワージェル、液体石鹸、ハンドサニタイザーおよびワイプのようなパーソナルおよびフェイシャルクレンザー、バスオイル、香水、香料、オーデコロン、サシェット、デオドラント、サンプロテクションクリーム、ローションおよびワイプ、セルフタンニングクリーム、ローションおよびワイプ、ファンデーションおよびマスカラのようなカラー化粧品、プレシェーブおよびアフターシェーブローション、アフターサンローションおよびクリーム、発汗抑制スティック、軟質固体およびロールオン、ひげそり石鹸およびひげそり泡の特性を向上させるだろう。同様に、これは、例えばスタイリングおよびコンディショニング上の利点をもたらすため、ヘアシャンプー、洗い流すタイプおよび洗い流さないタイプのヘアコンディショナー、スプレー、ムースおよびジェルのようなヘアスタイリング助剤、染毛剤、縮毛矯正剤、パーマネント、脱毛剤、およびキューティクルコートに用いることができる。化粧品では、シリコーンがメイクアップ、カラー化粧品、コンパクトジェル、クリームおよびリキッドファンデーション(油中水型および水中油型エマルジョン、または無水ローション)、頬紅、アイライナー、アイシャドー、マスカラおよびメイクアップリムーバーにおける顔料の均染および展着剤として機能する。シリコーンおよびワックスのエマルジョンは、これらおよび他の製品においてビタミン、香料、皮膚軟化剤、着色剤、有機日焼け防止剤または医薬品のような油溶性および水溶性物質の制御された送達システムとして有用である。エマルジョンをパーソナルケア製品に用いる場合、ポリオルガノシロキサンは一般にパーソナルケア製品の約0.01〜約50重量パーセント、好適には0.1〜25重量パーセントを構成する。
【0090】
本発明に従って生成したエマルジョンはまた、活性物質の制御された送達を必要とする場合、塗料、水性コーティング、織物繊維トリートメント、皮革用潤滑剤、柔軟剤、洗濯用途における仕上げ剤、ホームケア、剥離剤および石油ドラッグ低減のような他の用途、ならびにシリコーンエマルジョンを従来用いる他の領域において有用である。例としては、仕上げ剤、皮革用潤滑剤およびホームケアにおける香料の制御された放出、ならびに塗料およびコーティングにおける硬化触媒の制御された放出がある。
【実施例】
【0091】
本発明を以下の実施例により示し、ここで部および%は重量による。触媒のレベルをppmで示し、ポリシロキサン含量に基づく。
【0092】
混合物中のシロキサンの分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した。分析は、トリプル検出(屈折率検出器、粘度計および光散乱検出器)および溶剤としてトルエンを用いるGPC(Alliance Waters 2690)により行った。分子量平均は、ポリスチレン狭標準(Mw 70,950g/mol)を用いて単一点上で行ったトリプル検出較正に対する汎用較正により求めた。
【0093】
混合物の稠度はASTM D217−97に従って針入度計を用いて25℃で試験し、結果はmm/103秒で示す。
【0094】
(実施例1)
56℃の融点を有する20部のパラフィンワックス(IgiWax社より販売されるParaflex4750A顆粒)を70℃で溶融し、80部のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(Brookfield LV DV−E粘度計により測定して25℃で70mPa.sの粘度と、2500g/モルのMnおよび3500g/モルのMwを有する)と70℃で混合して、液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した20ppmのイオンホスファゼン[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加し、重合を1リットルのガラス反応器において70℃で真空下行った。触媒添加の3分後、5部の香料を添加した(fraicheur des sommets)。5分の総重合時間後、重合を0.008部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。ワックス、香料および増加した分子量を有するポリジメチルシロキサンポリマーの液/液分散体を得た。分散体中の重合ポリジメチルシロキサンは、Mn101kg/モルおよびMw149kg/モルを有する。分散体は164mm/103秒の針入度を有した。
【0095】
生成した分散体を室温まで冷却し、ワックス、香料および高分子量ポリジメチルシロキサンの分散体を形成した。かかる生成物は、香料の発散なく室温で安定していた。ペーストを約56℃(ワックスの融点)より高い温度で加熱する場合、香料の発散が検出された。かかる分散体は、例えば56℃より高い温度で用いることを意図したアイロンがけ助剤または柔軟剤組成物に用いることができる。
【0096】
(実施例2)
18部のParaflex4750Aのパラフィンワックスを72部の実施例1のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンと70℃で混合、溶融して液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した10ppmの[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加し、重合を1リットルのガラス反応器において70℃で真空下行った。重合を、5分後0.004部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。10部の香料(Aldrich社より供給されるラベンダー油)を熱い分散体に撹拌下添加した。ワックス、香料および増加した分子量を有するポリジメチルシロキサンポリマーの液/液分散体を得た。生成した分散体を室温まで冷却し、ワックス、分散した香料および高分子量ポリジメチルシロキサンの分散体を形成した。分散体中の重合ポリジメチルシロキサンは、Mn147kg/モルおよびMw215kg/モルを有する。分散体は38mm/103秒の針入度を有した。
【0097】
分散体をワックスの融点より高い温度で再加熱した場合、香料の制御された放出を検出することができた。
【0098】
(実施例3)
18部のパームワックス(IgiWax社より販売されるR2778A)を72部の実施例1のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンと70℃で混合、溶融して、液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した10ppmの[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加し、重合を1リットルのガラス反応器において70℃で真空下行った。重合を6分(総重合時間)後、0.004部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。10部の香料(Aldrich社より供給されるラベンダー油)を熱い分散体に撹拌下添加した。ワックス、香料および増加した分子量を有するポリジメチルシロキサンポリマーの液/液分散体を得た。生成した分散体を室温まで冷却し、ワックス、分散した香料および高分子量ポリジメチルシロキサンの分散体を形成した。分散体中の重合ポリジメチルシロキサンは、Mn111kg/モルおよびMw167kg/モルを有する。分散体は149mm/103秒の針入度を有した。
【0099】
分散体をワックスの融点より高い温度で再加熱した場合、香料の制御された放出を検出することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒、天然抽出物、ペプチド、加温効果および冷却剤から選択した活性物質のオルガノポリシロキサン含有組成物からの放出を制御するに当たり、該活性物質をワックスと該ワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物中に混和することを特徴とする方法。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合して、ワックスと増加した分子量を有するオルガノポリシロキサンとの混合物を形成し、前記活性物質をオルガノポリシロキサンおよびワックスの混合物に重合前、重合中または重合後だが、反応生成物をペーストもしくは固体まで冷却または乳化する前に添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンが、
a.少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンであり、ヒドロキシルまたは加水分解基の触媒縮合により重合してシロキサン結合を形成するか、
b.環状オルガノポリシロキサンを含み、該環状オルガノポリシロキサンの開環の触媒プロセスにより重合してシロキサン結合を形成するか、または
c.少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシルまたは加水分解基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均3つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシランとの混合物であり、前記実質的に線状のオルガノポリシロキサンのアルコキシシランとの触媒シロキサン縮合により重合して分岐オルガノポリシロキサン構造を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記実質的に線状のオルガノポリシロキサンが、ケイ素に結合した末端ヒドロキシル基を有し、10mPa.s〜500mPa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重合が、ホスファゼン触媒、ルイス酸または塩基により触媒されることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記オルガノポリシロキサンが、Si−H基を有するオルガノポリシロキサンを含み、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンおよび/または少なくとも2つのアルケニル基を含有する有機化合物を用いて白金族触媒の存在下ヒドロシリル化反応により重合されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ワックスが30〜80℃の範囲内の融点を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ワックスが、炭化水素ワックス、エステルワックスまたはシリコーンワックスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記重合中に存在するオルガノポリシロキサン対ワックスの重量比が、95:5〜40:60であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記活性物質が、香料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記反応生成物を冷却して、前記ワックス、重合したオルガノポリシロキサンおよび活性物質の混合物を含むペーストまたは固体を形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記反応生成物を、ペーストまたは固体まで冷却する前、かつあらゆるマクロ相分離が起こる前に、該反応生成物を界面活性剤の存在下水に乳化させることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
オルガノポリシロキサンと、香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒、天然抽出物、ペプチド、加温効果および冷却剤から選択される活性物質とを含む組成物であって、前記活性物質をワックスとオルガノポリシロキサンとの混合物中に混和し、該オルガノポリシロキサンをワックスの存在下での重合により形成し、好適には該オルガノポリシロキサンが少なくとも100,000の重量平均分子量を有することを特徴とする組成物。
【請求項14】
香料、日焼け防止剤、抗酸化剤、ビタミン、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒、天然抽出物、ペプチド、冷却剤および加温効果から選択される活性物質をポリオルガノシロキサンを含有する洗浄組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品または織物加工組成物から放出するのを制御するためのワックスの使用であって、該オルガノポリシロキサンをワックスおよび活性物質との混合物中で重合し、該ワックスを重合中に溶融することを特徴とするワックスの使用。
【請求項15】
前記活性物質を混合物中に大気温度で実質的に保持し、前記混合物をワックスの融点より高い温度で加熱することにより前記組成物に放出することを特徴とする請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2012−522031(P2012−522031A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502642(P2012−502642)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054219
【国際公開番号】WO2010/115781
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】