説明

活線警報器

【課題】 鉄道の保線現場での使用形態に適合し、必要とする鉄道架線のみを検出してスムーズな作業を実現する。
【解決手段】 鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出する活線警報器であって、鉄道架線への接近時にその鉄道架線との間に静電容量を形成する薄板短冊状の検出電極3を備え、その検出電極3は、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持ち、鉄道架線への接近方向に向く部位に曲成部1を備えた筐体2に内蔵され、その筐体2の曲成部1の内壁面に沿わせて円弧状に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の保線現場で使用され、充電状態にある鉄道架線に接近した時、その鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出し、作業者に警報して感電事故などを未然に防止する活線警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の保線現場などでは、作業者の錯誤や不注意により、充電状態にある鉄道架線への接触による感電事故で死亡したり重傷を受ける例が少なくない。このような感電事故を未然に防止する手段として、作業上の安全を図るために作業者が頭部に着用するヘルメットに取り付ける活線警報器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の活線警報器は、作業者が例えば絶縁梯子などを利用して、充電状態にある鉄道架線に接近した時、その鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出すると同時に、その検出信号に基づいてブザー等を発音させることにより充電状態にある鉄道架線が接近していることを作業者に警報するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−14932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1に開示された活線警報器では、全方向から充電状態にある鉄道架線が接近する場合に対応できるものとなっている。しかしながら、鉄道の保線現場においては、例えば絶縁梯子を利用して作業者が充電状態にある鉄道架線に接近する場合、その作業者が充電状態にある鉄道架線に接近する方向が限られている。
【0006】
つまり、充電状態にある鉄道架線に対してその下方から作業者が接近することが常であることが現状となっている。従って、全方向での検出が可能な従来の活線警報器では、検出無用な鉄道架線までも検出することでスムーズな作業を阻害する可能性があった。そのため、鉄道の保線現場では、その保線現場での使用形態に適合した活線警報器が要望されている。
【0007】
そこで、本発明は、鉄道の保線現場における現状に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、鉄道の保線現場での使用形態に適合し、必要とする鉄道架線のみを検出してスムーズな作業を実現し得る活線警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出する活線警報器であって、鉄道架線への接近時にその鉄道架線との間に静電容量を形成する検出電極を備え、その検出電極は、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持つことを特徴とする。本発明における検出電極は、薄板短冊状をなしていることが望ましい。また、本発明における検出電極は、鉄道架線への接近方向に向く部位に曲成部を備えた筐体に内蔵され、その筐体の曲成部の内壁面に沿わせて円弧状に配置されていることが望ましい。
【0009】
本発明では、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持つ、例えば薄板短冊状の検出電極を備えていることにより、鉄道の保線現場において活線警報器を使用するに際して、作業者が充電状態にある鉄道架線に接近する場合、その鉄道架線のみを検出電極により検出することができて的確に認知できる。また、本発明の検出電極を、鉄道架線への接近方向に向く部位に曲成部を備えた筐体に内蔵し、その筐体の曲成部の内壁面に沿わせて円弧状に配置した構造とすれば、筐体内の検出電極に鉄道架線への接近方向のみの指向性を持たせることが容易となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持つ検出電極を備えていることにより、鉄道の保線現場において活線警報器を使用するに際して、作業者が充電状態にある鉄道架線に接近する場合、その鉄道架線のみを検出電極により検出することができて的確に認知できる。その結果、鉄道の保線現場での使用形態に適合した活線警報器を容易に提供することでき、必要とする鉄道架線のみを検出してスムーズな作業を実現できるので、作業性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態で、活線警報器を前面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態で、活線警報器を背面側から見た斜視図である。
【図3】(A)は図1の活線警報器を示す正面図、(B)は(A)の平面図、(C)は(A)の右側面図である。
【図4】図2の活線警報器の蓋体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の配線基板を取り外して裏返した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の活線警報器の回路構成を示すブロック図である。
【図7】(A)は本発明の活線警報器をヘルメットに装着した状態を示す正面図、(B)は(A)の側面図である。
【図8】本発明の活線警報器の動作例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る活線警報器の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、鉄道の保線現場において、作業者が例えば絶縁梯子を利用して、充電状態にある鉄道架線に接近した時、その鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出すると同時に、その検出信号に基づいてブザーを発音させることにより充電状態にある鉄道架線が接近していることを作業者に警報する場合を例示する。
【0013】
図1、図2および図3(A)〜(C)はこの実施形態における活線警報器の外観を示す。活線警報器は、上部に円弧状の曲成部1を有する樹脂製の筐体2を備え、その筐体2に、鉄道架線への接近時にその鉄道架線との間に浮遊静電容量を形成する検出電極3が内蔵されている(図中の破線参照)。
【0014】
筐体2は、ブザー孔4、押しボタン式テストスイッチ5および感度調整用ボリューム6が前面に配されたケース本体7と、そのケース本体7の背面にねじ止めにより取り付けられてその背面開口部を閉塞する蓋体8とで構成されている。この蓋体8の上部には電池蓋9が設けられ、その下部には活線警報器をヘルメットに着脱自在に引掛け係止するための屈曲形状のクリップ10がねじ止めにより固定されている。
【0015】
図4は筐体2の蓋体8を取り外した状態を示し、図5は筐体2のケース本体7内に収容された配線基板11を取り外して裏返した状態を示す。前述の検出電極3は、同図に示すように、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持つ薄板短冊状の銅板であり、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持たせるための大きさを有し、筐体2のケース本体7の曲成部1の内壁面に沿わせて円弧状に配置されている。この検出電極3が電気的に接続された配線基板11には、各種電子部品が実装されている(図5参照)。
【0016】
図6は前述の配線基板11に実装された各種電子部品からなる活線警報器の回路構成を示す。この活線警報器は、同図に示すように、前述した検出電極3が接続されたレベル検出回路12と、そのレベル検出回路12から出力された検出信号に基づいて断続信号を出力する断続信号発生回路13と、その断続信号発生回路13から出力される断続信号に基づいて発振する音響周波発振回路14とで構成され、その音響周波発振回路14にブザー15が電気的に接続されている。
【0017】
このブザー15は筐体2のケース本体7のブザー孔4に配されている〔図1および図3(A)参照〕。また、これらレベル検出回路12、断続音発生回路13および音響周波発振回路14を駆動するための電池16が各回路に電気的に接続されている。この電池16は配線基板11の背面側に実装されて筐体2の蓋体8の電池蓋9の開閉により交換可能となっている(図2参照)。これらブザー15および電池16の他に押しボタン式テストスイッチ5が設けられている〔図1および図3(A)参照〕。
【0018】
前述のレベル検出回路12では、充電状態にある鉄道架線が検出電極3に接近した時、その検出電極3と鉄道架線18との間に形成された浮遊静電容量C01および人体との間に形成された静電容量C02により検出電極3から人体へ流れる微小な静電誘導電流I0が動作電流となるように適正な検出レベルが設定されている(図8参照)。この検出レベルの調整は、筐体2の前面に設けられた感度調整用ボリューム6で行うことができる〔図1および図3(A)参照〕。
【0019】
以上の構成からなる活線警報器の使用例を以下に詳述する。なお、この活線警報器は、前述したように、鉄道の保線現場において、作業者が例えば絶縁梯子を利用して、作業者の上方に位置する鉄道架線に対する保線作業を実施する場合に使用される。
【0020】
この保線作業を実施するに先立って、図7(A)(B)に示すように、作業者が頭部に着用するヘルメット17に活線警報器を取り付ける。この活線警報器は、筐体2に設けられた屈曲形状のクリップ10でヘルメット17の側部下縁を挟み込むようにしてそのクリップ10を引掛け係止することで容易に取り付けることが可能である。
【0021】
この保線作業中、作業者のヘルメット17の上方から充電状態にある鉄道架線18が接近すると、図8に示すように、充電状態にある鉄道架線18と検出電極3との間に形成された浮遊静電容量C01および人体との間に形成された静電容量C02により検出電極3から人体へ流れる微小な静電誘導電流I0をレベル検出回路12で検出する。このレベル検出回路12から出力される検出信号に基づいて断続信号発生回路13により断続信号を出力し、その断続信号に基づいて音響周波発振回路14から出力される発振信号を駆動信号としてブザー15を発音させる。このブザー15の発音により充電状態にある鉄道架線18が接近していることを作業者に警報する。
【0022】
この活線警報器では、検出電極3が筐体2の上部に位置する曲成部1の円弧状内壁面に沿わせて配置されていることから、鉄道架線18への接近方向のみの指向性を持たせるようにしている。その結果、鉄道の保線現場において活線警報器を使用するに際して、筐体2をヘルメット17の側部に装着した状態で絶縁梯子を利用して作業者が充電状態にある鉄道架線18に接近する場合、その充電状態にある鉄道架線18に対してその下方から接近する作業者は、ヘルメット17の上方のみに位置する鉄道架線18が充電状態であることを検出電極3で検出することにより的確に認知できる。
【0023】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0024】
1 曲成部
2 筐体
3 検出電極
18 鉄道架線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道架線が充電状態であることを非接触で検出する活線警報器であって、前記鉄道架線への接近時にその鉄道架線との間に静電容量を形成する検出電極を備え、前記検出電極は、鉄道架線への接近方向のみの指向性を持つことを特徴とする活線警報器。
【請求項2】
前記検出電極は、薄板短冊状をなしている請求項1に記載の活線警報器。
【請求項3】
前記検出電極は、鉄道架線への接近方向に向く部位に曲成部を備えた筐体に内蔵され、前記筐体の曲成部の内壁面に沿わせて円弧状に配置されている請求項1又は2に記載の活線警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11943(P2012−11943A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152117(P2010−152117)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】