流体力学的キャビテーションによる結晶化の装置および方法
核形成セクションにおいて、結晶化することになる化合物の供給溶液の少なくとも一つの流れと、逆溶媒の少なくとも一つの流れとを、供給溶液および逆溶媒の衝突を介して混合するステップと、高い圧力の混合した流れを少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部の中に通して、流体力学的キャビテーションを引き起こし、それにより、核形成および種結晶の生成を引き起こすステップと、種結晶を含む流体流を、中間セクションを通じて、結晶成長セクションに渡すステップと、種結晶を含む流体流を、高い圧力の結晶成長セクションの中に通し、少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部の中に通して、流体力学的キャビテーションを引き起こし、それにより溶液中に含まれる化合物のさらなる結晶化を引き起こすステップとを含む、流体力学的キャビテーションを用いて化合物を結晶化させるためのデバイスおよび方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体力学的キャビテーションを使用して化合物を結晶化する装置および方法に関する。結晶化され得る化合物のタイプは、薬剤、化学物質、食品添加物、および工業上使用される任意の他の化合物を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
溶液からの結晶化は、特に活性化合物またはそれらの中間体を製造するために、化学工業、食品工業および薬学工業において用いられる分離方法および精製方法である。結晶化プロセスの目的のうちのいくつかは、所望の純度を満たす生成物、また所望の結晶サイズおよびサイズ分布を有する生成物を製造することを含む。溶液からの結晶化は通常、バッチプロセスとして、または連続プロセスで行われる。バッチ結晶化装置および動作はかなり簡単であるが、バッチ間に長い時間をかけ、および多大な費用を投資する必要がある。さらに、バッチ結晶化は、バッチ結晶化プロセス中に状態が安定していないことに起因して、品質管理の問題を抱えている。連続結晶化は、定常状態において動作する単一の結晶化装置、または一連の結晶化装置を含むことができる。しかしながら、連続結晶化によれば、典型的には、通常行われているような品質管理では、高度な結晶サイズ制御およびサイズ分布制御を要求する工業分野において用いるのに適している結晶を生成することができないので、連続結晶化は標準的には、量産品タイプの材料の場合に用いられる。
【0003】
高い生体利用効率および短い溶解時間は望ましく、または多くの場合最終の薬剤にとって必要な特性である。しかし、大きさが小さく、表面積が大きい粒子の直接の結晶化は通常、高い過飽和環境下でなされるが、その環境下では多くの場合、不完全な結晶構造の形成のために、純度が低く、破砕性が高く、さらに安定性が悪い材料となる。有機物の結晶格子における結合力は、イオン性無機固体における場合以上に、非結晶となる頻度が非常に高いことから、過飽和材の「オイルアウト(oiling out)」が珍しくなく、このようなオイルはしばしば構造をもつことなく凝固する。
【0004】
緩やかな結晶化は、生成物の純度を増し、より安定した結晶構造を生成するために使用される一般的な技法であるが、結晶化器の生産性を減少させ、その結果非常に強力な製粉を必要とする、大きさが大きく、表面積が小さい粒子を生成する方法である。現状では、薬剤は、粒子の表面積を増加させ、したがって生物利用効率を高めるために、結晶化の後の製粉プロセスをほとんど常に必要とする。しかし、高エネルギーの製粉は欠点を有する。製粉は、産出に損失、ノイズ、粉塵をもたらし、さらには非常に効力のある薬剤に不要に人が晒されることになる。また、製粉の際に結晶の表面に形成されるストレスが不安定な化合物に悪影響を与える可能性がある。全体的に、表面積が大きく、化学的に純度が高く、非常に安定しているという三つの最も望ましい最終生成物という目標は、非常に多くのエネルギーを必要とする製粉なしでは、現在の結晶化技術を使用して同時に最適化することができない。
【0005】
一つの標準的な結晶化手順が、結晶化することになる化合物の過飽和溶液を、攪拌容器内で、適切な「逆溶媒」と接触させることを含む。攪拌容器内で、逆溶媒は結晶の形成につながる主要な核形成を、ときには熟成プロセス中、シーディング(seeding)および結晶消化の助けを借りて始める。容器内での混合は、種々の攪拌機(たとえば、Rushtonまたはピッチドブレードタービン、インターミグ等)で達成され、そのプロセスはバッチ式に行われる。
【0006】
直接小さな粒子を結晶化するために、現在の逆付加(reverse addition)技術を使用するとき、攪拌容器内で逆溶媒に供給溶液を導入すると、結晶形成の前にふたつの流体が十分に混合しないことから、最初の結晶の形成の間、濃縮勾配を避けることができない。濃縮勾配の存在、したがって最初の結晶形成における異種の流体環境は最適な結晶構造の形成を妨げ、不純物の混入を増やすことになる。緩やかな結晶化技術が採用されると、流体のより十分な混合を結晶形成の前に行うことができ、結晶構造および純度を改善するが、生成される結晶は大きくなり、生体利用効率の要件を満たすためには製粉が必要となる。
【0007】
別の標準的な結晶化手順は、溶液を過飽和点へともたらすため、結晶化することになる材料の溶液の温度変化を用いるが、このことは結晶の大型化をまねく緩やかなプロセスとなる。また、この手順では溶媒勾配をなくすが、生じる結晶における大きさ、純度および安定性の特徴は制御することが難しく、バッチ処理の間で一貫したものとならない。
【0008】
別の標準的な結晶化手順は、結晶化することになる化合物の過飽和溶液を、攪拌容器内で適切な酸または塩基と接触させることを含む。この結果として、過飽和溶液内でpH変化が生じ、それにより一次核形成が開始され、最終的に結晶が形成される。別法では、結晶化は、反応結晶化によって達成することもできる。反応結晶化では、過飽和溶液に反応試薬が追加され、結果として、一次核形成が生じ、最終的に結晶が形成される。他の標準的な結晶化プロセスと同様に、反応結晶化も混合に依存する。
【0009】
他の結晶化手順は、結晶化プロセスにおいて、非常に強力なマイクロミキシングを達成するために衝突ジェットを利用する。非常に強力なマイクロミキシングは既知の技法であり、ミキシングに依存する反応に関連する。米国特許第5,314,456号において、一様な粒子を得るために、二つの衝突ジェットを使用する方法が示されている。一般的なプロセスはよく攪拌されたフラスコ内に位置する二つの液体ジェットを衝突させることを伴い、それにより非常に強力なマイクロミキシングが達成される。二つのジェットが互いに衝突する点で、非常にレベルの高い過飽和が存在する。この高い過飽和の結果、二つの液体の衝突地点で、小さな混合体積内で結晶化が急速に行われる。新しい結晶の核が衝突地点で一定に形成されることから、非常に多数の結晶が形成される。非常に多数の結晶が形成される結果、形成される結晶のすべてが小さく形成されるわけではないが、平均的な大きさは小さい。
【特許文献1】米国特許第5314456号明細書
【特許文献2】米国特許第5969207号明細書
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は以下の記述、添付の特許請求の範囲および添付図面からよりよく理解されよう。
【0011】
図1は、本発明による結晶化デバイスのフローチャートである。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200の縦断面図である。
【0013】
図3は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション300の縦断面図である。
【0014】
図4は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション400の縦断面図である。
【0015】
図5は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション500の縦断面図である。
【0016】
図6は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション602を有する本発明による結晶化デバイス600を示すフローチャートである。
【0017】
図7は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション702を有する本発明による結晶化デバイス700を示すフローチャートである。
【0018】
図8は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション802を有する本発明による結晶化デバイス800を示すフローチャートである。
【0019】
図9は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション900を示す断面図である。
【0020】
図10は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション1000を示す断面図である。
【0021】
図11Aから11Dは、図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226aから2226dをそれぞれ示す断面図である。
【0022】
図12は、図4の核形成セクション、図8の中間セクションおよび図9の結晶成長セクションを含む、図1によるデバイスの一例を示す断面図である。
【0023】
[発明の詳細な説明]
以下の説明において明細書および図面それぞれを通じて同様の部品は同じ参照符号を用いて示される。図において、部品は一定の縮尺で描かれておらず、特定の部品の比率が説明の便宜上拡大されている。
【0024】
本出願は、流体力学的キャビテーションを用いて、溶液から物質を結晶化させるためのデバイスおよびプロセスを提供する。ここで図面を参照すると、図1は、結晶化デバイス10の一実施形態のフローチャートである。結晶化デバイス10は、中間セクション12に接続される核形成セクション11を備え、中間セクション12はさらに結晶成長セクション13に接続される。デバイス10の三つのセクションそれぞれにおいて溶液が処理された後に、結果として生成された生成物は、所望の結晶化した生成物を回収するために分離される。
【0025】
一実施形態では、結晶化プロセスは、結晶化プロセスにおいて核形成を達成するために、デバイス10の核形成セクション11に少なくとも二つの流体を送り込むことによって達成される。このプロセスにおいて用いられる二つの流体は、異なる溶媒組成から成ることができ、一方の流体は、適切な溶媒または溶媒の組み合わせ内にある結晶化することになる化合物の溶液(「供給溶液」)であり、他方の流体は、その化合物に対して相対的に低い溶媒和特性を有するように選択される、溶液からその化合物の沈殿を開始することができる適切な溶媒または溶媒の組み合わせ(「逆溶媒」)である。そのような溶媒および逆溶媒は、限定はしないが、アルコール、エチルアセテート、ハロゲン化溶媒、酸、塩基、アセトニトリル、ヘキサン、エーテルおよび水を含むことができる。溶媒および逆溶媒の適切な例は、限定はしないが、エタノール、メタノール、エチルアセテート、塩化メチレン、アセトニトリル、酢酸、ヘキサン、エーテルおよび水を含む。別法では、逆溶媒は、供給溶液内で結晶化することになる化合物と反応する適切な反応化合物を含むことができる。反応結晶化プロセスによって結晶化することになる化合物を与えられれば、当業者は、適切な反応化合物を選択して、結晶化プロセスを開始することができるであろう。
【0026】
このプロセスにおいて用いられる流体は、流体力学的キャビテーション結晶化プロセス中に生じることがある凝集を緩和することができる少量の適切な界面活性剤も含むことができる。界面活性剤は、プレミックスの一部として加えることができるか、または本明細書において説明される入口のうちの一つを通じて加えることができる。こうして、用いられる流体のうちの一つ、いくつか、または全てが界面活性剤を含むことができる。そのような界面活性剤は、結晶性化合物内に取り込まれることがあるので、結晶性化合物の最終的な用途に対して無害である界面活性剤が選択されるべきである。
【0027】
さらに別の実施形態では、結晶成長を安定させることができ、制御することができ、および/または促進することができる界面活性剤、安定剤または他の添加剤を、逆溶媒、供給溶液、または本発明の核形成セクション11、中間セクション12および/または結晶成長セクション13のうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおける供給溶液および逆溶媒を含む混合した流体流に加えることができる。
【0028】
[核形成セクション]
以下の本文は、本発明の結晶化デバイス10において用いるための例示的な核形成セクション11を説明する。デバイス10は、少なくとも一つの核形成セクションを備える。デバイス10内に二つ以上の核形成セクション11が存在する場合には、核形成セクション11は直列に接続される。
【0029】
図2を参照すると、図2は、結晶化デバイス10の核形成セクション11として用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200のための一実施形態を示す。流体力学的核形成セクション200は、一つの封止端20および一つの開放端22を有する流路18を備える。流路18は、内側表面26と、外側表面28と、流体流F1およびF2をそれぞれセクション200に導入するための少なくとも二つのポート30および32と、流体がセクション200から出るための出口34とを有する円筒壁24によって画定される。流路18の断面は円形であることが好ましいが、流路18の断面は、正方形、長方形または六角形等の任意の幾何学的形状をとることができる。
【0030】
ポート30および32はそれぞれ、開口部36および38を介して、流路18に接続される。ポート30および32は、流体流F1およびF2がそれぞれ、流路18に入る際に互いに衝突できるようにするために、互いに向かい合って流路18内に配置される。流体流F1およびF2の衝突によって、衝突ゾーン40が形成される。流体流F1およびF2が互いに衝突する結果として、衝突ゾーン40内に泡が生成される。泡が生成され、それらの泡が最終的に潰れて、衝突ゾーン40内に結果として衝撃波が生成されることによって、衝突ゾーン40内に流体力学的過渡キャビテーション場が生成される。結果として、衝突ゾーン40内に、微小の種結晶が形成される。
【0031】
流路18の中心線CLに沿って、またはその近くにおいて、流路18内にキャビテーション発生器42が配置され、キャビテーション発生器42は、キャビテーション発生器42から下流に一定の流体力学的キャビテーション場50を生成するように構成される。図2に示されるように、キャビテーション発生器42は、流路18の中心線CLに沿って、またはその近くに位置する円形オリフィス46をその中に配置されているディスク44である。オリフィス46は、ベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。
【0032】
オリフィス46を有するディスク44からの下流にキャビテーション場を生成し、制御するのをさらに促進するために、オリフィス46を有するディスク44は、取り外しできるように、そして種々の流体力学的キャビテーション場を生成するように様々な様式で形作られ、構成されるオリフィスを有する任意のディスクと取り替えることができるように構成される。オリフィス46の形状および構成は、キャビテーション流の特性に、それゆえ核形成の質に大きく影響を及ぼす可能性がある。多種多様な形状および構成を利用することができるが、米国特許第5,969,207号が、条件を満たしているいくつかのバッフル形状および構成を開示する。
【0033】
図3に示されるようなわずかに異なる実施形態では、セクション300は、複数のキャビテーション発生器42、52および62を備える。キャビテーション発生器52および62もそれぞれ、ディスク54および64から形成される。キャビテーション発生器42、52および62はそれぞれ、その中にオリフィス46、56および66を有する。セクション200の場合と同様に、セクション300のキャビテーション発生器は、以前に詳述されたように、取り外すことができ、種々の流体力学的キャビテーション場を生成するために様々な様式で形作られ、構成されるオリフィスを有する任意のディスクと取り替えることができる。第1のオリフィス46はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。第2のキャビテーション発生器52は、同じくベンチュリ管の形をとる第2のオリフィス56を備え、それは第1のオリフィス46の直径よりも大きな直径を有する。第3のキャビテーション発生器62は、同じくベンチュリ管の形をとる第3のオリフィス66を備え、それは第2のオリフィス56の直径よりも大きな直径を有する。別の実施形態では、第1のオリフィス、第2のオリフィスおよび第3のオリフィスの直径は、所望のように変更できることは明らかある。さらに別の実施形態では、オリフィス46、56および66の直径は全て同じである。
【0034】
図2に示されるセクション200の動作時に、第1の流体流F1が、ポート30および開口部36を介して流路18に入り、第2の流体流F2が、ポート32および開口部38を介して流路18に入る。流体流F1およびF2は互いに衝突し、混ざり合って、衝突ゾーン40を生成する。次に、流体流F1およびF2の組み合わせが、中心線CLの端部にある矢印によって示される方向に沿って、流路18の中を流れる。一例では、第1の流体流F1は逆溶媒であり、第2の流体流F2は供給溶液である。別法では、第1の流体流F1は供給溶液であり、第2の流体流F2は逆溶媒である。
【0035】
その後、混合した第1の流体流F1および第2の流体流F2は、オリフィス46の中を通り、その中で、第1の流体流F1および第2の流体流F2の速度が、第1の流体流F1および第2の流体流F2の物理的特性によって決定される最小速度(すなわち、キャビテーション泡が現われ始める速度)まで増す。第1の流体流F1および第2の流体流F2が、オリフィス46の中を通るとき、オリフィス46の下流に、一定の流体力学的キャビテーション場50(それは、キャビテーション泡を生成する)が形成される。高い静圧ゾーンに達すると、泡は潰れて、高い局所的な圧力(最大で5000kg/cm2)および/または衝撃波、並びに温度(最大で15000℃)が核形成を達成し、それにより、さらに多くの種結晶が直に生成される。残りの流体、およびその中に含まれる種結晶は、出口34を介して流路18から出て、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)によって、デバイス10の中間セクション12に搬送される。
【0036】
図3に示されるセクション300の動作時に、図3の核形成セクション300は、図2のセクション200と同じように動作するが、混合した第1の流体流F1および第2の流体流F2が、キャビテーション発生器42、52および62のオリフィス46、56および66の中を通ることが異なる。キャビテーション発生器42、52および62は、3段階の流体力学的キャビテーションを引き起こすように設計される。結果として混合した流体、および流体力学的キャビテーションに起因して形成される種結晶は、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)を介して、デバイス10の中間セクション12に搬送される。
【0037】
図4は、流体力学的キャビテーション核形成セクション400のさらに別の実施形態を示しており、その核形成セクション400は図3に示されるセクション300に構造および動作に関して類似であるが、セクション400は、開口部76および86を介して、流路18にそれぞれ接続される二つのさらに別の入口、ポート70および80を有することが異なる。ポート70および80によって、流体流F3およびF4が流路18の中に入ることができる。一例では、流体流F1が逆溶媒であるときに、流体流F3およびF4はいずれも逆溶媒である。別の例では、流体流F1が供給溶液であるときに、流体流F3およびF4はいずれも供給溶液である。さらに別の例では、流体流F1の特性にかかわらず、流体流F3およびF4は別個に、逆溶媒または供給溶液のいずれかにすることができる。
【0038】
図4のセクション400は、それぞれオリフィス46、56および66を有するキャビテーション発生器42、52および62を備える。図4の実施形態では、オリフィス46、56および66は全て同じ直径である。別の実施形態では、オリフィス46、56および66は互いに異なる直径を有することができる。
【0039】
流体流F1、F3およびF4が全て逆溶媒流体流である例では、逆溶媒が、核形成セクション400に連続して供給され、流路18内の流体流の過飽和特性を制御することができる。
【0040】
ここで図5を参照すると、流体力学的キャビテーション核形成セクション500が、端部閉鎖核形成サブセクション200および端部開放核形成サブセクション200aを備える。図5のサブセクション200は、図2の核形成セクション200と構造および動作に関して同じである。図5のサブセクション200aは、流路18がサブセクション200a内に二つの開放端を有する貫流流路18aであるという点で、図2のセクション200とは構造が異なる。貫流流路18aによって、予め混合され、および予め核形成された流体が、サブセクション200からサブセクション200aの中に入ることができるようになる。一例では、第1の流体流F1は逆溶媒であり、第2の流体流F2は供給溶液である。別法では、別の例では、第1の流体流F1は供給溶液であり、第2の流体流F2は逆溶媒である。第3の流体流F3は、供給溶液または逆溶媒から別個に選択することができる。
【0041】
サブセクション200と200aとの間には、熱交換サブセクション502が介在する。第2の熱交換サブセクション504が、サブセクション200aの出力側に配置される。サブセクション200は、任意の適切な手段506(たとえば、パイプ)を介して、熱交換器502に接続される。熱交換器502は、任意の適切な手段508を介してサブセクション200aに接続され、サブセクション200aは、任意の適切な手段510を介して、熱交換器504に接続される。熱交換器504は、任意の適切な手段512を介して、デバイス10の中間セクション12に接続される。
【0042】
流体流とともに用いるのに適している種々の熱交換器がある。そのような熱交換器の一つは、任意の適切な手段を介して、冷却媒体または加熱媒体で満たすことができる密閉箱内に入れられる伝熱管を備える。冷却媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を下げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。加熱媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を上げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。一実施形態では、熱交換器は、冷却媒体または加熱媒体が一定の温度に保持されるようにすることができる制御手段(たとえば、サーモスタット)および関連する温度制御システムを有する。
【0043】
適切な冷却媒体は、流体流の温度を下げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、氷またはドライアイス)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。冷却媒体の例は、限定はしないが、水、氷、ドライアイス、エチレングリコール、液体窒素および液体ヘリウムを含む。適切な加熱媒体は、流体流の温度を上げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、砂浴)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。適切な加熱媒体は、限定はしないが、水蒸気、過熱水、電気式ヒータ、ガス式ヒータ、油、および加熱された砂浴を含む。
【0044】
熱交換器502および504の中を通る流体流が、加熱されているか、冷却されているかによって、矢印520および530は、加熱媒体または冷却媒体のいずれかを加えることを表し、一方、矢印524および534は、熱交換器502および504において流体流を搬送している伝熱管と接触する結果として、媒体が温度変化を受けた後の加熱媒体または冷却媒体の除去を表す。
【0045】
熱交換器502および504は、その中に含まれる流体流内での種結晶の核形成、形成および/または保持を容易にするために必要な任意の所望の温度または温度範囲を与えるように設計することができる。上述され、図に示されるように、結晶化することになる化合物および/または製造されることになる結晶の物理的特性に基づいて、当業者であれば、核形成セクション500内に設けられる一つまたは複数の熱交換器に適している温度または温度変化を理解するであろう。
【0046】
図5に示される実施形態に関して、サブセクション200および200aは、図2〜図4において示される核形成セクションのいずれかと別個に置き換えることができる。サブセクション200aが、図2〜図4に開示されるような核形成セクションによって置き換えられることになる場合には、図5のサブセクション200aの代わりに用いられることになる、図2〜図4の核形成セクションは、図5の貫流流路18aに類似の貫流流路を有する端部開放核形成サブセクションになるように設計されるべきである。
【0047】
第1の流体流、第2の流体流、第3の流体流および第4の流体流F1、F2、F3およびF4は、ポンプ(図示せず)の助けを借りて、上述された核形成セクションのいずれかに注ぎ込まれる。選択されるポンプのタイプは、汲み上げることができる媒体の生理化学的特性、およびそのプロセスを達成するために必要とされる流体力学的パラメータに基づいて決定される。
【0048】
上述された核形成セクションでは、二つのタイプの流体力学的キャビテーション場が生成される。第1のタイプのキャビテーション場は、衝突ゾーン内で流体流が互いに衝突することによって生成される一時的なキャビテーション場である。本発明では、二つの流体流として、供給溶液流および逆溶媒流を用いることができる。別の実施形態では、二つの溶液流として、供給溶液または逆溶媒の付加的な流体流と衝突する、混合した流体流を用いることができる(たとえば、図4および図5の核形成セクションを参照されたい)。第2のタイプのキャビテーション場は、核形成セクション内に含まれる少なくとも一つの物理的な流れの狭窄部によって引き起こされる、流体流内の制御された減圧によって生成される一定のキャビテーション場である。
【0049】
[中間セクション]
以下の本文は、本発明の結晶化デバイスにおいて用いるための例示的な中間セクション12を説明する。デバイス10は、少なくとも一つの中間セクション12を備える。二つ以上の中間セクション12がデバイス10内に存在する場合には、それらの中間セクション12は直列に接続される。
【0050】
ここで図6を参照すると、図6は、本発明による結晶化デバイス600の一実施形態を示す。デバイス600は、核形成セクション11と結晶成長セクション13との間に配置され、およびそれらのセクションに接続される中間セクション602を含む。中間セクション602は、任意の適切な接続手段604(たとえば、パイプ)を介して核形成セクション11に接続され、さらに、任意の適切な手段606を介して、結晶成長セクション13に接続される。核形成セクション11は、図2〜図5および関連する本文において開示されるような、少なくとも一つの核形成セクションである。セクション13として用いるのに適している結晶成長セクションは、後に詳細に説明される。
【0051】
一実施形態では、図6の中間セクション602は熱交換器である。流体流とともに用いるのに適している種々の熱交換器がある。そのような熱交換器の一つは、任意の適切な手段を介して、冷却媒体または加熱媒体で満たすことができる密閉箱内に入れられる伝熱管を備える。冷却媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を下げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。加熱媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を上げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。一実施形態では、熱交換器は、冷却媒体または加熱媒体が一定の温度に保持されるようにすることができる制御手段(たとえば、サーモスタット)および関連する温度制御システムを有する。
【0052】
適切な冷却媒体は、流体流の温度を下げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、氷またはドライアイス)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。冷却媒体の例は、限定はしないが、水、氷、ドライアイス、エチレングリコール、液体窒素および液体ヘリウムを含む。適切な加熱媒体は、流体流の温度を上げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、砂浴)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。適切な加熱媒体は、限定はしないが、水蒸気、過熱水、電気式ヒータ、ガス式ヒータ、油、および加熱された砂浴を含む。
【0053】
熱交換器602の中を通る流体流が、加熱されているか、冷却されているかによって、矢印610は、加熱媒体または冷却媒体のいずれかを加えることを表し、一方、矢印612は、熱交換器602において流体流を搬送している伝熱管と接触する結果として、媒体が温度変化を受けた後の加熱媒体または冷却媒体の除去を表す。
【0054】
熱交換器602は、一つまたは複数の供給溶液内に含まれる化合物の結晶化を容易にするために必要な任意の所望の温度または温度範囲を与えるように設計することができる。結晶化することになる化合物および/または供給溶液から製造されることになる結晶の物理的特性に基づいて、当業者であれば、一つまたは複数の熱交換器がデバイス10の核形成セクション11において用いられる実施形態における適切な温度または温度範囲を理解するであろう。
【0055】
動作時に、中間セクション602は、後にさらに詳細に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションにおいて形成された流体流種結晶を渡す導管としての役割を果たす。この実施形態では、中間セクション602は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶の所望の温度を保持するための役割も果たす。別の実施形態では、中間セクション602は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶の温度を、所望のように、上げるか、または下げることができる。
【0056】
ここで図7を参照すると、図7は、結晶化デバイス700の別の実施形態を示す。デバイス700は、中間セクション702が、タンク720と、その中に含まれる混合器722との組み合わせを含むという点で、図6のデバイス600とは異なる。混合器722として、任意の適切な混合器(たとえば、電気機械混合器、磁気攪拌棒混合器等)を用いることができる。
【0057】
動作時に、中間セクション702は、後にさらに詳細に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションにおいて形成された流体流種結晶を渡す導管としての役割を果たす。この実施形態では、中間セクション702は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流の流動性を保持するための役割も果たす。これにより、或る程度、流体流内に含まれる種結晶の存在の結果として、流体流内で結晶があまりにも早く形成されるのを抑える。その代わりに、またはそれに加えて、混合器722を使用することによって、流体流の中にある間に、種結晶のサイズがあまりにも早く大きくなるのを抑えることができる。
【0058】
ここで図8を参照すると、図8は、結晶化デバイス800のさらに別の実施形態を示す。デバイス800は、中間セクション802が、後に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶を移送するパイプまたは導管を備えるという点で、図6のデバイス600とは異なる。中間セクション802は、種結晶の存在に起因して流体流内の化合物があまりにも早く結晶化するのを防ぐために必要な物理的条件および/または化学的条件を保持するために、断熱および/または加圧することができる。
【0059】
中間セクション602、702および/または802は、本発明の中間セクションの中を流れる流体流のpHを制御できるように設計することができる。pHの制御は、適切にpHを制御された溶液を中間セクション602、702および/または802に導入することによって達成することができる。そのような溶液は、中間セクション602、702および/または802内の流体流のpHを正確に変更するために用いることができる任意の適切な酸、塩基または中性溶液を含むことができる。
【0060】
[結晶成長セクション]
以下の本文は、結晶化デバイス10において用いるための例示的な結晶成長セクション13を説明するであろう。デバイス10は少なくとも一つの結晶成長セクション13を含む。二つ以上の結晶成長セクション13がデバイス10内に存在する場合には、結晶成長セクション13は直列に接続される。
【0061】
ここで図9を参照すると、図9は、結晶成長セクション900の一実施形態を示す。セクション900は、タンク902と、その中に収容される混合器904との組み合わせを含む。混合器904として、任意の適切な混合器(たとえば、電気機械混合器、磁気攪拌棒混合器等)を用いることができる。セクション900は、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)を介して、デバイス10の中間セクション12に接続される。タンク902は、任意の適切な再循環手段(たとえば、一連のパイプ)を介して、ポンプ906と、キャビテーション発生器920を含む少なくとも一つの流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910とに接続される。キャビテーション発生器920は、図2のキャビテーション発生器42と構造的に同じである。ポンプ906のために用いられるポンプのタイプは、汲み上げることができる媒体の生理化学的特性、およびそのプロセスを達成するために必要とされる流体力学的パラメータに基づいて決定される。
【0062】
二つ以上の流体力学的キャビテーション結晶化サブセクションがデバイス10の結晶成長セクション13において用いられる実施形態では、流体力学的キャビテーション結晶化サブセクションを直列に接続して、図10の流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション1030が形成される。本明細書において記述される結晶成長セクションは、再循環の実施形態のみに限定されない。
【0063】
図10は、図9のタンク/混合器の組み合わせとともに、またはその組み合わせを用いることなく使用することができる結晶成長セクション1000を示す。流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション1030が、少なくとも三つの流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を備え、それぞれがキャビテーション発生器920を含む。サブセクション910は直列に接続され、各キャビテーション発生器920は、図2のキャビテーション発生器42と構造的に同じである。図2〜図5に開示されるような、キャビテーション発生器のいずれか一つ、または組み合わせを、図9および図10のキャビテーション発生器920の代わりに用いることができることは当業者には明らかであろう。図11A〜図11Dは、図9および/または図10の結晶成長セクションにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910の他の実施形態を示す。
【0064】
図11Aは、貫流流路18aの中心線CLに沿って、またはその近くに配置される円形オリフィス1106を有するディスク1104から形成されるキャビテーション発生器1102を示す。オリフィス1106はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。図11Aのサブセクションは、オリフィス1106の直径がより大きいという点で、図9および図10に開示されるサブセクションとは異なる。
【0065】
図11Bは、その中に少なくとも二つの円形オリフィス1114を配置されたディスク1112から形成されるキャビテーション発生器1110を示す。オリフィス1114はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。図11Bのキャビテーション発生器1110は、図11Aのキャビテーション発生器と同じように動作するが、キャビテーション発生器1110が、貫流流路18aの中を流れる流体流内にわずかな圧力損失を引き起こすために少なくとも二つのオリフィスを利用することが異なる。
【0066】
図11Cは、バッフル1122から形成されるキャビテーション発生器1120を示す。図11Cに示されるように、バッフル1122は、円筒形の表面1126の中に延在する円錐形の表面1124を含み、バッフル1122の円錐形の部分1124は、流体の流れと衝突する。バッフル1122は、オリフィス1132を有するディスク1130に接続されるステム1128上に配置される。ディスク1130が、貫流流路18a内に取り付けられ、バッフル1122を、貫流流路18a内に保持する。オリフィス1132を有するディスク1130の代わりに、わずかな圧力損失を引き起こすクロスヘッド、ポスト、プロペラまたは任意の他の取付具を用いることができる。
【0067】
図11Dは、貫流流路18aの壁部における流れの狭窄部から形成されるキャビテーション発生器1150を示す。貫流18a内の狭窄1150は、わずかな圧力損失を引き起こす。
【0068】
上記の結晶成長セクションのキャビテーション発生器内に存在する一つまたは複数の流れの狭窄部を通り抜けるとき、混合した流体流Fmの速度は、混合した流体流Fmの物理的特性によって決定される最小速度(すなわち、キャビテーション泡が現われ始める速度)まで増す。混合した流体流Fmが、結晶成長セクションのうちの一つの中に含まれる一つまたは複数の流れの狭窄部を通り抜け続けるとき、一定の流体力学的キャビテーション場が、一つまたは複数の流れの狭窄部の下流にキャビテーション泡を生成する。高い静圧ゾーンに達すると、泡は潰れて、高い局所的な圧力(最大で5000kg/cm2)および/または衝撃波、および温度(最大で15000℃)が、本発明の結晶化デバイスの核形成セクションからの混合した流体流Fm内に存在する種結晶とともに、結晶化を達成する。流体流Fmを再循環させて、混合した流体Fmの中に含まれる結晶の濃度を高めることができる。一つまたは複数のキャビテーション発生器によって生成される圧力を変更することによって、および/または混合した流体流Fmを再循環させることによって、結晶サイズ分布を制御することもできる。
【0069】
流体流Fmを、流体流Fmから結晶化することになる化合物の過飽和勾配を瞬時に変更する条件にかけることによって、上記の結晶成長セクションのうちの一つにおける結晶成長をさらに刺激することができる。
【0070】
結晶成長が完了した後に、流体流Fmの中に存在する結晶を、当該技術分野において知られている任意の技法(たとえば、濾過、気化、真空濾過等)を用いて収集することができる。
【0071】
[例示的な結晶化デバイス]
ここで図12を参照すると、図12は、結晶化デバイスの一例を示す。結晶化デバイス1200は、図4の核形成セクション400と、図8の中間セクション802と、図9の結晶成長セクション900とを含む。デバイス1200が以下の例において使用された。それらの例は、本発明を例示するために与えられており、本発明の範囲または精神への制限と解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0072】
以下のようにして、三つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0073】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0074】
ポンプ906の圧力は表1に従って変更され、再循環時間は5分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表1に示される。
【表1】
【実施例2】
【0075】
以下のようにして、二つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0076】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0077】
ポンプ906の圧力は表2に従って変更され、再循環時間は15分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表2に示される。
【表2】
【実施例3】
【0078】
以下のようにして、二つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0079】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0080】
ポンプ906の圧力は表3に従って変更され、再循環時間は30分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表3に示される。
【表3】
【実施例4】
【0081】
以下のようにして、三つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0082】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0083】
ポンプ906の圧力は、400psiから500psiの範囲で保持され、再循環時間は表4に従って変更される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表4に示される。
【表4】
【実施例5】
【0084】
以下のようにして、一つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。20.976グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0085】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0086】
ポンプ906の圧力は6800psiであり、溶液Fmは、結晶成長セクション900を通じて5回再循環する。再循環の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズがHORIBA社の機器で分析される。平均粒径は5ミクロンである。
【0087】
本出願は種々の実施形態を例示しており、これらの実施形態が、いくらか詳細に説明されてきたが、特許請求される本発明の範囲をそのような細部に限定すること、または多少なりとも制限することは、本出願人の意図ではない。追加の利点および変更が、当業者には容易に明らかになるであろう。それゆえ、本発明は、その広い態様において、図示および説明される具体的な細部、典型的な装置および例示的な例には限定されない。したがって、本出願人の特許請求される発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような細部から逸脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による結晶化デバイスのフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション300の縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション400の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション500の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション602を有する本発明による結晶化デバイス600を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション702を有する本発明による結晶化デバイス700を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション802を有する本発明による結晶化デバイス800を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション900を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション1000を示す断面図である。
【図11A】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226aを示す断面図である。
【図11B】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226bを示す断面図である。
【図11C】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226cを示す断面図である。
【図11D】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226dを示す断面図である。
【図12】図4の核形成セクション、図8の中間セクションおよび図9の結晶成長セクションを含む、図1によるデバイスの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0089】
10 結晶化デバイス
11 核形成セクション
12 中間セクション
13 結晶成長セクション
18 流路
20 封止端
22 開放端
26 内側表面
28 外側表面
30 ポート
40 衝突ゾーン
42 キャビテーション発生器
50 流体力学的キャビテーション場
【技術分野】
【0001】
本発明は流体力学的キャビテーションを使用して化合物を結晶化する装置および方法に関する。結晶化され得る化合物のタイプは、薬剤、化学物質、食品添加物、および工業上使用される任意の他の化合物を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
溶液からの結晶化は、特に活性化合物またはそれらの中間体を製造するために、化学工業、食品工業および薬学工業において用いられる分離方法および精製方法である。結晶化プロセスの目的のうちのいくつかは、所望の純度を満たす生成物、また所望の結晶サイズおよびサイズ分布を有する生成物を製造することを含む。溶液からの結晶化は通常、バッチプロセスとして、または連続プロセスで行われる。バッチ結晶化装置および動作はかなり簡単であるが、バッチ間に長い時間をかけ、および多大な費用を投資する必要がある。さらに、バッチ結晶化は、バッチ結晶化プロセス中に状態が安定していないことに起因して、品質管理の問題を抱えている。連続結晶化は、定常状態において動作する単一の結晶化装置、または一連の結晶化装置を含むことができる。しかしながら、連続結晶化によれば、典型的には、通常行われているような品質管理では、高度な結晶サイズ制御およびサイズ分布制御を要求する工業分野において用いるのに適している結晶を生成することができないので、連続結晶化は標準的には、量産品タイプの材料の場合に用いられる。
【0003】
高い生体利用効率および短い溶解時間は望ましく、または多くの場合最終の薬剤にとって必要な特性である。しかし、大きさが小さく、表面積が大きい粒子の直接の結晶化は通常、高い過飽和環境下でなされるが、その環境下では多くの場合、不完全な結晶構造の形成のために、純度が低く、破砕性が高く、さらに安定性が悪い材料となる。有機物の結晶格子における結合力は、イオン性無機固体における場合以上に、非結晶となる頻度が非常に高いことから、過飽和材の「オイルアウト(oiling out)」が珍しくなく、このようなオイルはしばしば構造をもつことなく凝固する。
【0004】
緩やかな結晶化は、生成物の純度を増し、より安定した結晶構造を生成するために使用される一般的な技法であるが、結晶化器の生産性を減少させ、その結果非常に強力な製粉を必要とする、大きさが大きく、表面積が小さい粒子を生成する方法である。現状では、薬剤は、粒子の表面積を増加させ、したがって生物利用効率を高めるために、結晶化の後の製粉プロセスをほとんど常に必要とする。しかし、高エネルギーの製粉は欠点を有する。製粉は、産出に損失、ノイズ、粉塵をもたらし、さらには非常に効力のある薬剤に不要に人が晒されることになる。また、製粉の際に結晶の表面に形成されるストレスが不安定な化合物に悪影響を与える可能性がある。全体的に、表面積が大きく、化学的に純度が高く、非常に安定しているという三つの最も望ましい最終生成物という目標は、非常に多くのエネルギーを必要とする製粉なしでは、現在の結晶化技術を使用して同時に最適化することができない。
【0005】
一つの標準的な結晶化手順が、結晶化することになる化合物の過飽和溶液を、攪拌容器内で、適切な「逆溶媒」と接触させることを含む。攪拌容器内で、逆溶媒は結晶の形成につながる主要な核形成を、ときには熟成プロセス中、シーディング(seeding)および結晶消化の助けを借りて始める。容器内での混合は、種々の攪拌機(たとえば、Rushtonまたはピッチドブレードタービン、インターミグ等)で達成され、そのプロセスはバッチ式に行われる。
【0006】
直接小さな粒子を結晶化するために、現在の逆付加(reverse addition)技術を使用するとき、攪拌容器内で逆溶媒に供給溶液を導入すると、結晶形成の前にふたつの流体が十分に混合しないことから、最初の結晶の形成の間、濃縮勾配を避けることができない。濃縮勾配の存在、したがって最初の結晶形成における異種の流体環境は最適な結晶構造の形成を妨げ、不純物の混入を増やすことになる。緩やかな結晶化技術が採用されると、流体のより十分な混合を結晶形成の前に行うことができ、結晶構造および純度を改善するが、生成される結晶は大きくなり、生体利用効率の要件を満たすためには製粉が必要となる。
【0007】
別の標準的な結晶化手順は、溶液を過飽和点へともたらすため、結晶化することになる材料の溶液の温度変化を用いるが、このことは結晶の大型化をまねく緩やかなプロセスとなる。また、この手順では溶媒勾配をなくすが、生じる結晶における大きさ、純度および安定性の特徴は制御することが難しく、バッチ処理の間で一貫したものとならない。
【0008】
別の標準的な結晶化手順は、結晶化することになる化合物の過飽和溶液を、攪拌容器内で適切な酸または塩基と接触させることを含む。この結果として、過飽和溶液内でpH変化が生じ、それにより一次核形成が開始され、最終的に結晶が形成される。別法では、結晶化は、反応結晶化によって達成することもできる。反応結晶化では、過飽和溶液に反応試薬が追加され、結果として、一次核形成が生じ、最終的に結晶が形成される。他の標準的な結晶化プロセスと同様に、反応結晶化も混合に依存する。
【0009】
他の結晶化手順は、結晶化プロセスにおいて、非常に強力なマイクロミキシングを達成するために衝突ジェットを利用する。非常に強力なマイクロミキシングは既知の技法であり、ミキシングに依存する反応に関連する。米国特許第5,314,456号において、一様な粒子を得るために、二つの衝突ジェットを使用する方法が示されている。一般的なプロセスはよく攪拌されたフラスコ内に位置する二つの液体ジェットを衝突させることを伴い、それにより非常に強力なマイクロミキシングが達成される。二つのジェットが互いに衝突する点で、非常にレベルの高い過飽和が存在する。この高い過飽和の結果、二つの液体の衝突地点で、小さな混合体積内で結晶化が急速に行われる。新しい結晶の核が衝突地点で一定に形成されることから、非常に多数の結晶が形成される。非常に多数の結晶が形成される結果、形成される結晶のすべてが小さく形成されるわけではないが、平均的な大きさは小さい。
【特許文献1】米国特許第5314456号明細書
【特許文献2】米国特許第5969207号明細書
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は以下の記述、添付の特許請求の範囲および添付図面からよりよく理解されよう。
【0011】
図1は、本発明による結晶化デバイスのフローチャートである。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200の縦断面図である。
【0013】
図3は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション300の縦断面図である。
【0014】
図4は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション400の縦断面図である。
【0015】
図5は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション500の縦断面図である。
【0016】
図6は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション602を有する本発明による結晶化デバイス600を示すフローチャートである。
【0017】
図7は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション702を有する本発明による結晶化デバイス700を示すフローチャートである。
【0018】
図8は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション802を有する本発明による結晶化デバイス800を示すフローチャートである。
【0019】
図9は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション900を示す断面図である。
【0020】
図10は、本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション1000を示す断面図である。
【0021】
図11Aから11Dは、図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226aから2226dをそれぞれ示す断面図である。
【0022】
図12は、図4の核形成セクション、図8の中間セクションおよび図9の結晶成長セクションを含む、図1によるデバイスの一例を示す断面図である。
【0023】
[発明の詳細な説明]
以下の説明において明細書および図面それぞれを通じて同様の部品は同じ参照符号を用いて示される。図において、部品は一定の縮尺で描かれておらず、特定の部品の比率が説明の便宜上拡大されている。
【0024】
本出願は、流体力学的キャビテーションを用いて、溶液から物質を結晶化させるためのデバイスおよびプロセスを提供する。ここで図面を参照すると、図1は、結晶化デバイス10の一実施形態のフローチャートである。結晶化デバイス10は、中間セクション12に接続される核形成セクション11を備え、中間セクション12はさらに結晶成長セクション13に接続される。デバイス10の三つのセクションそれぞれにおいて溶液が処理された後に、結果として生成された生成物は、所望の結晶化した生成物を回収するために分離される。
【0025】
一実施形態では、結晶化プロセスは、結晶化プロセスにおいて核形成を達成するために、デバイス10の核形成セクション11に少なくとも二つの流体を送り込むことによって達成される。このプロセスにおいて用いられる二つの流体は、異なる溶媒組成から成ることができ、一方の流体は、適切な溶媒または溶媒の組み合わせ内にある結晶化することになる化合物の溶液(「供給溶液」)であり、他方の流体は、その化合物に対して相対的に低い溶媒和特性を有するように選択される、溶液からその化合物の沈殿を開始することができる適切な溶媒または溶媒の組み合わせ(「逆溶媒」)である。そのような溶媒および逆溶媒は、限定はしないが、アルコール、エチルアセテート、ハロゲン化溶媒、酸、塩基、アセトニトリル、ヘキサン、エーテルおよび水を含むことができる。溶媒および逆溶媒の適切な例は、限定はしないが、エタノール、メタノール、エチルアセテート、塩化メチレン、アセトニトリル、酢酸、ヘキサン、エーテルおよび水を含む。別法では、逆溶媒は、供給溶液内で結晶化することになる化合物と反応する適切な反応化合物を含むことができる。反応結晶化プロセスによって結晶化することになる化合物を与えられれば、当業者は、適切な反応化合物を選択して、結晶化プロセスを開始することができるであろう。
【0026】
このプロセスにおいて用いられる流体は、流体力学的キャビテーション結晶化プロセス中に生じることがある凝集を緩和することができる少量の適切な界面活性剤も含むことができる。界面活性剤は、プレミックスの一部として加えることができるか、または本明細書において説明される入口のうちの一つを通じて加えることができる。こうして、用いられる流体のうちの一つ、いくつか、または全てが界面活性剤を含むことができる。そのような界面活性剤は、結晶性化合物内に取り込まれることがあるので、結晶性化合物の最終的な用途に対して無害である界面活性剤が選択されるべきである。
【0027】
さらに別の実施形態では、結晶成長を安定させることができ、制御することができ、および/または促進することができる界面活性剤、安定剤または他の添加剤を、逆溶媒、供給溶液、または本発明の核形成セクション11、中間セクション12および/または結晶成長セクション13のうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおける供給溶液および逆溶媒を含む混合した流体流に加えることができる。
【0028】
[核形成セクション]
以下の本文は、本発明の結晶化デバイス10において用いるための例示的な核形成セクション11を説明する。デバイス10は、少なくとも一つの核形成セクションを備える。デバイス10内に二つ以上の核形成セクション11が存在する場合には、核形成セクション11は直列に接続される。
【0029】
図2を参照すると、図2は、結晶化デバイス10の核形成セクション11として用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200のための一実施形態を示す。流体力学的核形成セクション200は、一つの封止端20および一つの開放端22を有する流路18を備える。流路18は、内側表面26と、外側表面28と、流体流F1およびF2をそれぞれセクション200に導入するための少なくとも二つのポート30および32と、流体がセクション200から出るための出口34とを有する円筒壁24によって画定される。流路18の断面は円形であることが好ましいが、流路18の断面は、正方形、長方形または六角形等の任意の幾何学的形状をとることができる。
【0030】
ポート30および32はそれぞれ、開口部36および38を介して、流路18に接続される。ポート30および32は、流体流F1およびF2がそれぞれ、流路18に入る際に互いに衝突できるようにするために、互いに向かい合って流路18内に配置される。流体流F1およびF2の衝突によって、衝突ゾーン40が形成される。流体流F1およびF2が互いに衝突する結果として、衝突ゾーン40内に泡が生成される。泡が生成され、それらの泡が最終的に潰れて、衝突ゾーン40内に結果として衝撃波が生成されることによって、衝突ゾーン40内に流体力学的過渡キャビテーション場が生成される。結果として、衝突ゾーン40内に、微小の種結晶が形成される。
【0031】
流路18の中心線CLに沿って、またはその近くにおいて、流路18内にキャビテーション発生器42が配置され、キャビテーション発生器42は、キャビテーション発生器42から下流に一定の流体力学的キャビテーション場50を生成するように構成される。図2に示されるように、キャビテーション発生器42は、流路18の中心線CLに沿って、またはその近くに位置する円形オリフィス46をその中に配置されているディスク44である。オリフィス46は、ベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。
【0032】
オリフィス46を有するディスク44からの下流にキャビテーション場を生成し、制御するのをさらに促進するために、オリフィス46を有するディスク44は、取り外しできるように、そして種々の流体力学的キャビテーション場を生成するように様々な様式で形作られ、構成されるオリフィスを有する任意のディスクと取り替えることができるように構成される。オリフィス46の形状および構成は、キャビテーション流の特性に、それゆえ核形成の質に大きく影響を及ぼす可能性がある。多種多様な形状および構成を利用することができるが、米国特許第5,969,207号が、条件を満たしているいくつかのバッフル形状および構成を開示する。
【0033】
図3に示されるようなわずかに異なる実施形態では、セクション300は、複数のキャビテーション発生器42、52および62を備える。キャビテーション発生器52および62もそれぞれ、ディスク54および64から形成される。キャビテーション発生器42、52および62はそれぞれ、その中にオリフィス46、56および66を有する。セクション200の場合と同様に、セクション300のキャビテーション発生器は、以前に詳述されたように、取り外すことができ、種々の流体力学的キャビテーション場を生成するために様々な様式で形作られ、構成されるオリフィスを有する任意のディスクと取り替えることができる。第1のオリフィス46はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。第2のキャビテーション発生器52は、同じくベンチュリ管の形をとる第2のオリフィス56を備え、それは第1のオリフィス46の直径よりも大きな直径を有する。第3のキャビテーション発生器62は、同じくベンチュリ管の形をとる第3のオリフィス66を備え、それは第2のオリフィス56の直径よりも大きな直径を有する。別の実施形態では、第1のオリフィス、第2のオリフィスおよび第3のオリフィスの直径は、所望のように変更できることは明らかある。さらに別の実施形態では、オリフィス46、56および66の直径は全て同じである。
【0034】
図2に示されるセクション200の動作時に、第1の流体流F1が、ポート30および開口部36を介して流路18に入り、第2の流体流F2が、ポート32および開口部38を介して流路18に入る。流体流F1およびF2は互いに衝突し、混ざり合って、衝突ゾーン40を生成する。次に、流体流F1およびF2の組み合わせが、中心線CLの端部にある矢印によって示される方向に沿って、流路18の中を流れる。一例では、第1の流体流F1は逆溶媒であり、第2の流体流F2は供給溶液である。別法では、第1の流体流F1は供給溶液であり、第2の流体流F2は逆溶媒である。
【0035】
その後、混合した第1の流体流F1および第2の流体流F2は、オリフィス46の中を通り、その中で、第1の流体流F1および第2の流体流F2の速度が、第1の流体流F1および第2の流体流F2の物理的特性によって決定される最小速度(すなわち、キャビテーション泡が現われ始める速度)まで増す。第1の流体流F1および第2の流体流F2が、オリフィス46の中を通るとき、オリフィス46の下流に、一定の流体力学的キャビテーション場50(それは、キャビテーション泡を生成する)が形成される。高い静圧ゾーンに達すると、泡は潰れて、高い局所的な圧力(最大で5000kg/cm2)および/または衝撃波、並びに温度(最大で15000℃)が核形成を達成し、それにより、さらに多くの種結晶が直に生成される。残りの流体、およびその中に含まれる種結晶は、出口34を介して流路18から出て、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)によって、デバイス10の中間セクション12に搬送される。
【0036】
図3に示されるセクション300の動作時に、図3の核形成セクション300は、図2のセクション200と同じように動作するが、混合した第1の流体流F1および第2の流体流F2が、キャビテーション発生器42、52および62のオリフィス46、56および66の中を通ることが異なる。キャビテーション発生器42、52および62は、3段階の流体力学的キャビテーションを引き起こすように設計される。結果として混合した流体、および流体力学的キャビテーションに起因して形成される種結晶は、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)を介して、デバイス10の中間セクション12に搬送される。
【0037】
図4は、流体力学的キャビテーション核形成セクション400のさらに別の実施形態を示しており、その核形成セクション400は図3に示されるセクション300に構造および動作に関して類似であるが、セクション400は、開口部76および86を介して、流路18にそれぞれ接続される二つのさらに別の入口、ポート70および80を有することが異なる。ポート70および80によって、流体流F3およびF4が流路18の中に入ることができる。一例では、流体流F1が逆溶媒であるときに、流体流F3およびF4はいずれも逆溶媒である。別の例では、流体流F1が供給溶液であるときに、流体流F3およびF4はいずれも供給溶液である。さらに別の例では、流体流F1の特性にかかわらず、流体流F3およびF4は別個に、逆溶媒または供給溶液のいずれかにすることができる。
【0038】
図4のセクション400は、それぞれオリフィス46、56および66を有するキャビテーション発生器42、52および62を備える。図4の実施形態では、オリフィス46、56および66は全て同じ直径である。別の実施形態では、オリフィス46、56および66は互いに異なる直径を有することができる。
【0039】
流体流F1、F3およびF4が全て逆溶媒流体流である例では、逆溶媒が、核形成セクション400に連続して供給され、流路18内の流体流の過飽和特性を制御することができる。
【0040】
ここで図5を参照すると、流体力学的キャビテーション核形成セクション500が、端部閉鎖核形成サブセクション200および端部開放核形成サブセクション200aを備える。図5のサブセクション200は、図2の核形成セクション200と構造および動作に関して同じである。図5のサブセクション200aは、流路18がサブセクション200a内に二つの開放端を有する貫流流路18aであるという点で、図2のセクション200とは構造が異なる。貫流流路18aによって、予め混合され、および予め核形成された流体が、サブセクション200からサブセクション200aの中に入ることができるようになる。一例では、第1の流体流F1は逆溶媒であり、第2の流体流F2は供給溶液である。別法では、別の例では、第1の流体流F1は供給溶液であり、第2の流体流F2は逆溶媒である。第3の流体流F3は、供給溶液または逆溶媒から別個に選択することができる。
【0041】
サブセクション200と200aとの間には、熱交換サブセクション502が介在する。第2の熱交換サブセクション504が、サブセクション200aの出力側に配置される。サブセクション200は、任意の適切な手段506(たとえば、パイプ)を介して、熱交換器502に接続される。熱交換器502は、任意の適切な手段508を介してサブセクション200aに接続され、サブセクション200aは、任意の適切な手段510を介して、熱交換器504に接続される。熱交換器504は、任意の適切な手段512を介して、デバイス10の中間セクション12に接続される。
【0042】
流体流とともに用いるのに適している種々の熱交換器がある。そのような熱交換器の一つは、任意の適切な手段を介して、冷却媒体または加熱媒体で満たすことができる密閉箱内に入れられる伝熱管を備える。冷却媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を下げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。加熱媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を上げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。一実施形態では、熱交換器は、冷却媒体または加熱媒体が一定の温度に保持されるようにすることができる制御手段(たとえば、サーモスタット)および関連する温度制御システムを有する。
【0043】
適切な冷却媒体は、流体流の温度を下げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、氷またはドライアイス)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。冷却媒体の例は、限定はしないが、水、氷、ドライアイス、エチレングリコール、液体窒素および液体ヘリウムを含む。適切な加熱媒体は、流体流の温度を上げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、砂浴)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。適切な加熱媒体は、限定はしないが、水蒸気、過熱水、電気式ヒータ、ガス式ヒータ、油、および加熱された砂浴を含む。
【0044】
熱交換器502および504の中を通る流体流が、加熱されているか、冷却されているかによって、矢印520および530は、加熱媒体または冷却媒体のいずれかを加えることを表し、一方、矢印524および534は、熱交換器502および504において流体流を搬送している伝熱管と接触する結果として、媒体が温度変化を受けた後の加熱媒体または冷却媒体の除去を表す。
【0045】
熱交換器502および504は、その中に含まれる流体流内での種結晶の核形成、形成および/または保持を容易にするために必要な任意の所望の温度または温度範囲を与えるように設計することができる。上述され、図に示されるように、結晶化することになる化合物および/または製造されることになる結晶の物理的特性に基づいて、当業者であれば、核形成セクション500内に設けられる一つまたは複数の熱交換器に適している温度または温度変化を理解するであろう。
【0046】
図5に示される実施形態に関して、サブセクション200および200aは、図2〜図4において示される核形成セクションのいずれかと別個に置き換えることができる。サブセクション200aが、図2〜図4に開示されるような核形成セクションによって置き換えられることになる場合には、図5のサブセクション200aの代わりに用いられることになる、図2〜図4の核形成セクションは、図5の貫流流路18aに類似の貫流流路を有する端部開放核形成サブセクションになるように設計されるべきである。
【0047】
第1の流体流、第2の流体流、第3の流体流および第4の流体流F1、F2、F3およびF4は、ポンプ(図示せず)の助けを借りて、上述された核形成セクションのいずれかに注ぎ込まれる。選択されるポンプのタイプは、汲み上げることができる媒体の生理化学的特性、およびそのプロセスを達成するために必要とされる流体力学的パラメータに基づいて決定される。
【0048】
上述された核形成セクションでは、二つのタイプの流体力学的キャビテーション場が生成される。第1のタイプのキャビテーション場は、衝突ゾーン内で流体流が互いに衝突することによって生成される一時的なキャビテーション場である。本発明では、二つの流体流として、供給溶液流および逆溶媒流を用いることができる。別の実施形態では、二つの溶液流として、供給溶液または逆溶媒の付加的な流体流と衝突する、混合した流体流を用いることができる(たとえば、図4および図5の核形成セクションを参照されたい)。第2のタイプのキャビテーション場は、核形成セクション内に含まれる少なくとも一つの物理的な流れの狭窄部によって引き起こされる、流体流内の制御された減圧によって生成される一定のキャビテーション場である。
【0049】
[中間セクション]
以下の本文は、本発明の結晶化デバイスにおいて用いるための例示的な中間セクション12を説明する。デバイス10は、少なくとも一つの中間セクション12を備える。二つ以上の中間セクション12がデバイス10内に存在する場合には、それらの中間セクション12は直列に接続される。
【0050】
ここで図6を参照すると、図6は、本発明による結晶化デバイス600の一実施形態を示す。デバイス600は、核形成セクション11と結晶成長セクション13との間に配置され、およびそれらのセクションに接続される中間セクション602を含む。中間セクション602は、任意の適切な接続手段604(たとえば、パイプ)を介して核形成セクション11に接続され、さらに、任意の適切な手段606を介して、結晶成長セクション13に接続される。核形成セクション11は、図2〜図5および関連する本文において開示されるような、少なくとも一つの核形成セクションである。セクション13として用いるのに適している結晶成長セクションは、後に詳細に説明される。
【0051】
一実施形態では、図6の中間セクション602は熱交換器である。流体流とともに用いるのに適している種々の熱交換器がある。そのような熱交換器の一つは、任意の適切な手段を介して、冷却媒体または加熱媒体で満たすことができる密閉箱内に入れられる伝熱管を備える。冷却媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を下げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。加熱媒体として、熱交換器の伝熱管の中を流れる流体流の温度を上げるために用いることができる任意の気体、液体または固体を用いることができる。一実施形態では、熱交換器は、冷却媒体または加熱媒体が一定の温度に保持されるようにすることができる制御手段(たとえば、サーモスタット)および関連する温度制御システムを有する。
【0052】
適切な冷却媒体は、流体流の温度を下げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、氷またはドライアイス)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。冷却媒体の例は、限定はしないが、水、氷、ドライアイス、エチレングリコール、液体窒素および液体ヘリウムを含む。適切な加熱媒体は、流体流の温度を上げるために用いることができる、任意の気体、液体または固体(たとえば、砂浴)、さらには機械的なシステムまたは電気的なシステムを含む。適切な加熱媒体は、限定はしないが、水蒸気、過熱水、電気式ヒータ、ガス式ヒータ、油、および加熱された砂浴を含む。
【0053】
熱交換器602の中を通る流体流が、加熱されているか、冷却されているかによって、矢印610は、加熱媒体または冷却媒体のいずれかを加えることを表し、一方、矢印612は、熱交換器602において流体流を搬送している伝熱管と接触する結果として、媒体が温度変化を受けた後の加熱媒体または冷却媒体の除去を表す。
【0054】
熱交換器602は、一つまたは複数の供給溶液内に含まれる化合物の結晶化を容易にするために必要な任意の所望の温度または温度範囲を与えるように設計することができる。結晶化することになる化合物および/または供給溶液から製造されることになる結晶の物理的特性に基づいて、当業者であれば、一つまたは複数の熱交換器がデバイス10の核形成セクション11において用いられる実施形態における適切な温度または温度範囲を理解するであろう。
【0055】
動作時に、中間セクション602は、後にさらに詳細に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションにおいて形成された流体流種結晶を渡す導管としての役割を果たす。この実施形態では、中間セクション602は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶の所望の温度を保持するための役割も果たす。別の実施形態では、中間セクション602は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶の温度を、所望のように、上げるか、または下げることができる。
【0056】
ここで図7を参照すると、図7は、結晶化デバイス700の別の実施形態を示す。デバイス700は、中間セクション702が、タンク720と、その中に含まれる混合器722との組み合わせを含むという点で、図6のデバイス600とは異なる。混合器722として、任意の適切な混合器(たとえば、電気機械混合器、磁気攪拌棒混合器等)を用いることができる。
【0057】
動作時に、中間セクション702は、後にさらに詳細に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションにおいて形成された流体流種結晶を渡す導管としての役割を果たす。この実施形態では、中間セクション702は、上記の一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流の流動性を保持するための役割も果たす。これにより、或る程度、流体流内に含まれる種結晶の存在の結果として、流体流内で結晶があまりにも早く形成されるのを抑える。その代わりに、またはそれに加えて、混合器722を使用することによって、流体流の中にある間に、種結晶のサイズがあまりにも早く大きくなるのを抑えることができる。
【0058】
ここで図8を参照すると、図8は、結晶化デバイス800のさらに別の実施形態を示す。デバイス800は、中間セクション802が、後に説明される結晶成長セクションのうちの一つに、一つまたは複数の核形成セクションから放出される流体流および種結晶を移送するパイプまたは導管を備えるという点で、図6のデバイス600とは異なる。中間セクション802は、種結晶の存在に起因して流体流内の化合物があまりにも早く結晶化するのを防ぐために必要な物理的条件および/または化学的条件を保持するために、断熱および/または加圧することができる。
【0059】
中間セクション602、702および/または802は、本発明の中間セクションの中を流れる流体流のpHを制御できるように設計することができる。pHの制御は、適切にpHを制御された溶液を中間セクション602、702および/または802に導入することによって達成することができる。そのような溶液は、中間セクション602、702および/または802内の流体流のpHを正確に変更するために用いることができる任意の適切な酸、塩基または中性溶液を含むことができる。
【0060】
[結晶成長セクション]
以下の本文は、結晶化デバイス10において用いるための例示的な結晶成長セクション13を説明するであろう。デバイス10は少なくとも一つの結晶成長セクション13を含む。二つ以上の結晶成長セクション13がデバイス10内に存在する場合には、結晶成長セクション13は直列に接続される。
【0061】
ここで図9を参照すると、図9は、結晶成長セクション900の一実施形態を示す。セクション900は、タンク902と、その中に収容される混合器904との組み合わせを含む。混合器904として、任意の適切な混合器(たとえば、電気機械混合器、磁気攪拌棒混合器等)を用いることができる。セクション900は、任意の適切な手段(たとえば、パイプ)を介して、デバイス10の中間セクション12に接続される。タンク902は、任意の適切な再循環手段(たとえば、一連のパイプ)を介して、ポンプ906と、キャビテーション発生器920を含む少なくとも一つの流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910とに接続される。キャビテーション発生器920は、図2のキャビテーション発生器42と構造的に同じである。ポンプ906のために用いられるポンプのタイプは、汲み上げることができる媒体の生理化学的特性、およびそのプロセスを達成するために必要とされる流体力学的パラメータに基づいて決定される。
【0062】
二つ以上の流体力学的キャビテーション結晶化サブセクションがデバイス10の結晶成長セクション13において用いられる実施形態では、流体力学的キャビテーション結晶化サブセクションを直列に接続して、図10の流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション1030が形成される。本明細書において記述される結晶成長セクションは、再循環の実施形態のみに限定されない。
【0063】
図10は、図9のタンク/混合器の組み合わせとともに、またはその組み合わせを用いることなく使用することができる結晶成長セクション1000を示す。流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション1030が、少なくとも三つの流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を備え、それぞれがキャビテーション発生器920を含む。サブセクション910は直列に接続され、各キャビテーション発生器920は、図2のキャビテーション発生器42と構造的に同じである。図2〜図5に開示されるような、キャビテーション発生器のいずれか一つ、または組み合わせを、図9および図10のキャビテーション発生器920の代わりに用いることができることは当業者には明らかであろう。図11A〜図11Dは、図9および/または図10の結晶成長セクションにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910の他の実施形態を示す。
【0064】
図11Aは、貫流流路18aの中心線CLに沿って、またはその近くに配置される円形オリフィス1106を有するディスク1104から形成されるキャビテーション発生器1102を示す。オリフィス1106はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。図11Aのサブセクションは、オリフィス1106の直径がより大きいという点で、図9および図10に開示されるサブセクションとは異なる。
【0065】
図11Bは、その中に少なくとも二つの円形オリフィス1114を配置されたディスク1112から形成されるキャビテーション発生器1110を示す。オリフィス1114はベンチュリ管の形をとり、流体の流れに局所的な狭窄部を生み出す。図11Bのキャビテーション発生器1110は、図11Aのキャビテーション発生器と同じように動作するが、キャビテーション発生器1110が、貫流流路18aの中を流れる流体流内にわずかな圧力損失を引き起こすために少なくとも二つのオリフィスを利用することが異なる。
【0066】
図11Cは、バッフル1122から形成されるキャビテーション発生器1120を示す。図11Cに示されるように、バッフル1122は、円筒形の表面1126の中に延在する円錐形の表面1124を含み、バッフル1122の円錐形の部分1124は、流体の流れと衝突する。バッフル1122は、オリフィス1132を有するディスク1130に接続されるステム1128上に配置される。ディスク1130が、貫流流路18a内に取り付けられ、バッフル1122を、貫流流路18a内に保持する。オリフィス1132を有するディスク1130の代わりに、わずかな圧力損失を引き起こすクロスヘッド、ポスト、プロペラまたは任意の他の取付具を用いることができる。
【0067】
図11Dは、貫流流路18aの壁部における流れの狭窄部から形成されるキャビテーション発生器1150を示す。貫流18a内の狭窄1150は、わずかな圧力損失を引き起こす。
【0068】
上記の結晶成長セクションのキャビテーション発生器内に存在する一つまたは複数の流れの狭窄部を通り抜けるとき、混合した流体流Fmの速度は、混合した流体流Fmの物理的特性によって決定される最小速度(すなわち、キャビテーション泡が現われ始める速度)まで増す。混合した流体流Fmが、結晶成長セクションのうちの一つの中に含まれる一つまたは複数の流れの狭窄部を通り抜け続けるとき、一定の流体力学的キャビテーション場が、一つまたは複数の流れの狭窄部の下流にキャビテーション泡を生成する。高い静圧ゾーンに達すると、泡は潰れて、高い局所的な圧力(最大で5000kg/cm2)および/または衝撃波、および温度(最大で15000℃)が、本発明の結晶化デバイスの核形成セクションからの混合した流体流Fm内に存在する種結晶とともに、結晶化を達成する。流体流Fmを再循環させて、混合した流体Fmの中に含まれる結晶の濃度を高めることができる。一つまたは複数のキャビテーション発生器によって生成される圧力を変更することによって、および/または混合した流体流Fmを再循環させることによって、結晶サイズ分布を制御することもできる。
【0069】
流体流Fmを、流体流Fmから結晶化することになる化合物の過飽和勾配を瞬時に変更する条件にかけることによって、上記の結晶成長セクションのうちの一つにおける結晶成長をさらに刺激することができる。
【0070】
結晶成長が完了した後に、流体流Fmの中に存在する結晶を、当該技術分野において知られている任意の技法(たとえば、濾過、気化、真空濾過等)を用いて収集することができる。
【0071】
[例示的な結晶化デバイス]
ここで図12を参照すると、図12は、結晶化デバイスの一例を示す。結晶化デバイス1200は、図4の核形成セクション400と、図8の中間セクション802と、図9の結晶成長セクション900とを含む。デバイス1200が以下の例において使用された。それらの例は、本発明を例示するために与えられており、本発明の範囲または精神への制限と解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0072】
以下のようにして、三つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0073】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0074】
ポンプ906の圧力は表1に従って変更され、再循環時間は5分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表1に示される。
【表1】
【実施例2】
【0075】
以下のようにして、二つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0076】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0077】
ポンプ906の圧力は表2に従って変更され、再循環時間は15分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表2に示される。
【表2】
【実施例3】
【0078】
以下のようにして、二つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0079】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0080】
ポンプ906の圧力は表3に従って変更され、再循環時間は30分で一定に保持される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表3に示される。
【表3】
【実施例4】
【0081】
以下のようにして、三つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。23.888グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0082】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0083】
ポンプ906の圧力は、400psiから500psiの範囲で保持され、再循環時間は表4に従って変更される。再循環時間の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズ分布がLASENTEC社の機器で検査される。その結果が、以下の表4に示される。
【表4】
【実施例5】
【0084】
以下のようにして、一つのp−アセチルアミノフェノール(アセトアミノフェン)溶液が準備される。20.976グラムのp−アセチルアミノフェノールが、水/EtOHの重量比が30:70である100グラムの溶液に加えられる。結晶化プロセスが、図12のデバイスにおいて実行される。ただし、F1、F3およびF4は逆溶媒流体流であり、F2は供給溶液である。逆溶媒は水であり、F1、F3およびF4を介して加えられ、混合した流体流Fmがデバイス1200の核形成セクションを出るときに、最終的に70:30の逆溶媒対供給溶液の体積比がもたらされる。中間セクション802において、さらなる加熱、冷却またはpH変更は行われない。
【0085】
デバイス1200の結晶成長セクション900では、混合した流体流Fmが、高圧ポンプを介して、キャビテーション発生器920を含む流体力学的キャビテーション結晶化サブセクション910を通じて再循環する。
【0086】
ポンプ906の圧力は6800psiであり、溶液Fmは、結晶成長セクション900を通じて5回再循環する。再循環の終了時に、p−アセチルアミノフェノールの所望の結晶を含む溶液Fmがビーカの中に収集され、結晶サイズがHORIBA社の機器で分析される。平均粒径は5ミクロンである。
【0087】
本出願は種々の実施形態を例示しており、これらの実施形態が、いくらか詳細に説明されてきたが、特許請求される本発明の範囲をそのような細部に限定すること、または多少なりとも制限することは、本出願人の意図ではない。追加の利点および変更が、当業者には容易に明らかになるであろう。それゆえ、本発明は、その広い態様において、図示および説明される具体的な細部、典型的な装置および例示的な例には限定されない。したがって、本出願人の特許請求される発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような細部から逸脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による結晶化デバイスのフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション200の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション300の縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション400の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる流体力学的キャビテーション核形成セクション500の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション602を有する本発明による結晶化デバイス600を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション702を有する本発明による結晶化デバイス700を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる、中間セクション802を有する本発明による結晶化デバイス800を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション900を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による、図1のデバイスにおいて用いることができる結晶成長セクション1000を示す断面図である。
【図11A】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226aを示す断面図である。
【図11B】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226bを示す断面図である。
【図11C】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226cを示す断面図である。
【図11D】図1のデバイスにおいて用いることができるか、または図9および/または図10の結晶成長セクションとして用いることができる、結晶成長セクション2226dを示す断面図である。
【図12】図4の核形成セクション、図8の中間セクションおよび図9の結晶成長セクションを含む、図1によるデバイスの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0089】
10 結晶化デバイス
11 核形成セクション
12 中間セクション
13 結晶成長セクション
18 流路
20 封止端
22 開放端
26 内側表面
28 外側表面
30 ポート
40 衝突ゾーン
42 キャビテーション発生器
50 流体力学的キャビテーション場
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体力学的キャビテーションを用いて化合物を結晶化させるための方法であって、
結晶化デバイスの核形成セクションにおいて、結晶化することになる化合物の溶液の少なくとも一つの流れを逆溶媒の少なくとも一つの流れと衝突させて、一時的なキャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および種結晶を生成すること、
高い圧力において混合した流体流および種結晶を少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部の中に通して、核形成セクションにおいて一定の流体力学的キャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および付加的な、および/またはさらに大きな種結晶を生成すること、
種結晶を含む混合した流体流を結晶化デバイスの中間セクションの中に通すこと、および
種結晶を含む混合した流体流を少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を備える結晶化デバイスの結晶成長セクションの中に通して、流体力学的キャビテーションを引き起こし、それにより、混合した流体流に含まれる種結晶のさらなる結晶化または結晶成長を引き起こすこと
を含む方法。
【請求項2】
結晶化することになる化合物が無機物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶化することになる化合物が有機物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
核形成セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
隣接する局所的な流れの狭窄部間に、追加の逆溶媒流体流が供給される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
中間セクションにおいて、流体流の温度および/またはpHが変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体流の温度が、少なくとも一つの熱交換器を介して、中間セクションにおいて変更される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
結晶成長セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結晶成長セクションにおいて生成される結晶のサイズ分布が、該結晶成長セクションにおける流体流の圧力を制御することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
結晶成長セクションが流体再循環手段をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
結晶成長セクションにおいて生成される結晶のサイズ分布が、該結晶成長セクションにおける流体流の再循環時間によって決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
核形成セクション、中間セクションおよび/または結晶成長セクションのうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおいて、混合した流体流に少なくとも一つの化合物を加えるステップをさらに含み、少なくとも一つの化合物が、界面活性剤、安定剤、結晶成長促進化合物、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
流体力学的キャビテーションを用いて化合物を結晶化させるためのデバイスであって、
少なくとも一つの核形成セクションであって、該核形成セクションから流体流が流れ出ることができるようにするための一つの開放端を有し、
(i)逆溶媒入口および供給溶液入口を有する流路であって、該逆溶媒入口および該供給溶液入口は、逆溶媒および供給溶液を該流路に導入するように設計され、また、該逆溶媒流体流および該供給溶液流体流が、該流路に入る際に互いに衝突して、一時的なキャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および種結晶を生成できるように、互いに向かい合って配置される、流路と、
(ii)一時的なキャビテーション場の下流の位置において、流路内に配置される少なくとも一つの一定キャビテーション発生器であって、流体力学的キャビテーションが核形成を達成し、混合した流体流の中に付加的な、および/またはさらに大きな種結晶を生成するように設計される、少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を与える、一定キャビテーション発生器と
を備える、核形成セクションと、
入力および出力を有する少なくとも一つの中間セクションであって、該入力が、核形成セクションから混合した流体流および種結晶を受け取るように、適切な接続手段を介して核形成セクションの開放端に接続される、中間セクションと、
中間セクションの出力から混合した流体流および種結晶を受け取るための入力を有する結晶成長セクションであって、少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を有する少なくとも一つの流体力学的キャビテーションサブセクションを備える、結晶成長セクションと
を備えるデバイス。
【請求項14】
核形成セクションの流路が概ね円形の断面を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
核形成セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
核形成セクションの流路内に、追加の入口が配置され、隣接する局所的な流れの狭窄部間に付加的な逆溶媒を与える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
中間セクションが、少なくとも一つの熱交換器、混合器、またはそれらの組み合わせを備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
中間セクションにおいて、流体流の温度および/またはpHが変更される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
結晶成長セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項20】
結晶成長セクションが流体再循環手段をさらに備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
核形成セクション、中間セクションおよび/または結晶成長セクションのうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおいて、混合した流体流に少なくとも一つの化合物を入力する入力手段をさらに備え、少なくとも一つの化合物が、界面活性剤、安定剤、結晶成長促進化合物、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項1】
流体力学的キャビテーションを用いて化合物を結晶化させるための方法であって、
結晶化デバイスの核形成セクションにおいて、結晶化することになる化合物の溶液の少なくとも一つの流れを逆溶媒の少なくとも一つの流れと衝突させて、一時的なキャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および種結晶を生成すること、
高い圧力において混合した流体流および種結晶を少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部の中に通して、核形成セクションにおいて一定の流体力学的キャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および付加的な、および/またはさらに大きな種結晶を生成すること、
種結晶を含む混合した流体流を結晶化デバイスの中間セクションの中に通すこと、および
種結晶を含む混合した流体流を少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を備える結晶化デバイスの結晶成長セクションの中に通して、流体力学的キャビテーションを引き起こし、それにより、混合した流体流に含まれる種結晶のさらなる結晶化または結晶成長を引き起こすこと
を含む方法。
【請求項2】
結晶化することになる化合物が無機物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶化することになる化合物が有機物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
核形成セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
隣接する局所的な流れの狭窄部間に、追加の逆溶媒流体流が供給される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
中間セクションにおいて、流体流の温度および/またはpHが変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体流の温度が、少なくとも一つの熱交換器を介して、中間セクションにおいて変更される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
結晶成長セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結晶成長セクションにおいて生成される結晶のサイズ分布が、該結晶成長セクションにおける流体流の圧力を制御することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
結晶成長セクションが流体再循環手段をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
結晶成長セクションにおいて生成される結晶のサイズ分布が、該結晶成長セクションにおける流体流の再循環時間によって決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
核形成セクション、中間セクションおよび/または結晶成長セクションのうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおいて、混合した流体流に少なくとも一つの化合物を加えるステップをさらに含み、少なくとも一つの化合物が、界面活性剤、安定剤、結晶成長促進化合物、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
流体力学的キャビテーションを用いて化合物を結晶化させるためのデバイスであって、
少なくとも一つの核形成セクションであって、該核形成セクションから流体流が流れ出ることができるようにするための一つの開放端を有し、
(i)逆溶媒入口および供給溶液入口を有する流路であって、該逆溶媒入口および該供給溶液入口は、逆溶媒および供給溶液を該流路に導入するように設計され、また、該逆溶媒流体流および該供給溶液流体流が、該流路に入る際に互いに衝突して、一時的なキャビテーション場を生成し、それにより、混合した流体流および種結晶を生成できるように、互いに向かい合って配置される、流路と、
(ii)一時的なキャビテーション場の下流の位置において、流路内に配置される少なくとも一つの一定キャビテーション発生器であって、流体力学的キャビテーションが核形成を達成し、混合した流体流の中に付加的な、および/またはさらに大きな種結晶を生成するように設計される、少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を与える、一定キャビテーション発生器と
を備える、核形成セクションと、
入力および出力を有する少なくとも一つの中間セクションであって、該入力が、核形成セクションから混合した流体流および種結晶を受け取るように、適切な接続手段を介して核形成セクションの開放端に接続される、中間セクションと、
中間セクションの出力から混合した流体流および種結晶を受け取るための入力を有する結晶成長セクションであって、少なくとも一つの局所的な流れの狭窄部を有する少なくとも一つの流体力学的キャビテーションサブセクションを備える、結晶成長セクションと
を備えるデバイス。
【請求項14】
核形成セクションの流路が概ね円形の断面を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
核形成セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
核形成セクションの流路内に、追加の入口が配置され、隣接する局所的な流れの狭窄部間に付加的な逆溶媒を与える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
中間セクションが、少なくとも一つの熱交換器、混合器、またはそれらの組み合わせを備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
中間セクションにおいて、流体流の温度および/またはpHが変更される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
結晶成長セクションが二つまたはそれ以上の局所的な流れの狭窄部を備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項20】
結晶成長セクションが流体再循環手段をさらに備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
核形成セクション、中間セクションおよび/または結晶成長セクションのうちのいずれか一つまたは全てのセクションにおいて、混合した流体流に少なくとも一つの化合物を入力する入力手段をさらに備え、少なくとも一つの化合物が、界面活性剤、安定剤、結晶成長促進化合物、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−525308(P2008−525308A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549578(P2007−549578)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/047204
【国際公開番号】WO2006/071924
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507219468)ファイヴ スター テクノロジーズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】FIVE STAR TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/047204
【国際公開番号】WO2006/071924
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507219468)ファイヴ スター テクノロジーズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】FIVE STAR TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
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