説明

流体動圧軸受ユニット及び流体動圧軸受ユニットを備えたディスク駆動装置及びディスク駆動装置の製造方法

【課題】容易にかつ短時間で潤滑剤を注入作業でき、気泡の入り込みを防止し、かつ潤滑剤の量を容易に確認できるFDBの提供、ならびにこのFDBを備えることで高速化に適したディスク駆動装置、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】シャフト11に固定された第1のフランジ15と、第1の環状部材18との間に第1のキャピラリーシール24を備え、第2のスリーブ17と第2の環状部材19の間に第2のキャピラリーシール25を備えたFDB50を真空槽に投入し、潤滑剤23を第1、第2のキャピラリーシール24,25の開放端に塗布する。その後、真空槽に空気を送り込むことで気圧差により潤滑剤23はFDB50に流れこむ。FDB50は、第2液面27の最内周部と第2の環状部材19の開放端の内周部と結んだ直線より径方向で内側に配設されているため、潤滑剤23の液面高さを測定することが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受ユニット及び記録ディスクを駆動するディスク駆動装置及びディスク駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDDなどのディスク駆動装置は、流体動圧軸受ユニットを備えることにより性能が飛躍的に向上し、一層の高速化が求められている。例えば磁気的にデータを記録するディスク駆動装置の回転速度は、従来は3600r/minであったが、5400r/minへ高速化され、さらには7200r/minへと高速化が進んでいる。
【0003】
しかし、ディスク駆動装置を高速化すると振動が大きくなり磁気ヘッドの振動を増やし、記録トラックのトレースを乱すことがある。
その対応策として、例えば特許文献1のように流体軸受ユニットのシャフトの一端をベース部材に固定する構成が提案されている。この構造によりシャフトの振動を低減し、磁気ヘッドの記録トラックのトレースの乱れを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−512330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造では典型的に流体軸受ユニットの両側に2つのキャピラリーシールを有する。一方のキャピラリーシールから潤滑剤を注入する際に、他方のキャピラリーシールから気泡を巻き込みやすい。また、潤滑剤が流体軸受ユニットの狭い隙間に入り込み難く作業時間が長くかかる。作業時間が長くかかると一層気泡を巻き込みやすい。流体軸受ユニットに気泡が入ると軸受の剛性低下から機能障害を生じるおそれがある。このように気泡が入った流体軸受ユニットを高速回転で使用すると寿命が短くなるおそれがある。また、注入した潤滑剤の量が十分でないと同様に寿命が短くなるおそれがある。このため、注入した潤滑剤の量を確認したい課題もある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、容易にかつ短時間で潤滑剤を注入作業でき、気泡の入り込みを防止し、かつ潤滑剤の量を容易に確認できる流体軸受ユニットを提供すること。あわせてこの流体軸受ユニットを備えることで高速化に適したディスク駆動装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の流体軸受ユニットは、第1の端部に留め具によりトップカバーを固定する孔を形成したシャフトと、シャフトを環囲し相対回転可能な第1のスリーブと、第1のスリーブの端面と隙間を介した位置でシャフトの第1の端部側に固定した第1のフランジと、第1のスリーブの他の端面と隙間を介した位置でシャフトの第2の端部側の外周に固定した第2のフランジと、第1のスリーブの外周に固定した略円筒状の第2のスリーブと、第1のフランジの外周を包囲して第2のスリーブに固定した第1の環状部材と、第2のスリーブの外周を包囲して第2のフランジの外周に固定した第2の環状部材と、シャフトの外周面と第1のスリーブの内周面の少なくとも何れかに設けたラジアル動圧溝と、第1のフランジと第1のスリーブの第1の端面の相互に対向する面の少なくとも何れかに設けた第1のスラスト動圧溝と、第2のフランジと第1のスリーブの第2の端面の相互に対向する面の少なくとも何れかに設けた第2のスラスト動圧溝と、第1の環状部材と第1のフランジとの隙間に開放側に向かって隙間が拡大するように形成した第1のキャピラリーシールと、第2の環状部材と第2のスリーブとの隙間に開放側に向かって隙間が拡大するように形成した第2のキャピラリーシールと、ラジアル動圧溝と第1及び第2のスラスト動圧溝と第1及び第2のキャピラリーシールに充填した潤滑剤と、を備えている。
第1のキャピラリーシールの途中には空気と潤滑剤の第1の液面を形成し、第2のキャピラリーシールの途中には空気と潤滑剤の第2の液面を形成し、第2のスリーブは第2の液面の最内周部と第2の環状部材の開放端の内周部と結んだ直線より径方向で内側の領域に配設されている。
【0008】
この態様によると、第2の液面の最内周部と第2の環状部材の開放端の内周部と結んだ直線より径方向で外側の領域には、空間を遮る物がない。このため、第1及び第2のキャピラリーシール内に、同一の方向から潤滑剤を吐出するノズルを接近させることができる。したがって、両方のキャピラリーシールに同時に潤滑剤を塗布できる。この結果、潤滑剤の注入の際に気泡の入り込みが防止され、容易にまた短時間で潤滑剤を注入作業ができる。また潤滑剤は第2のスリーブの径方向外側の位置から第2のキャピラリーシール内に可視できるから、潤滑剤の量を容易に確認することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、ディスク駆動装置である。このディスク駆動装置は、第1の態様に係る流体軸受ユニットと、第2のスリーブとは別に設けられたハブと、第2のフランジとは別に設けたベース部材と、を備える。シャフトの第2の端部はベース部材に設けた孔に結合され、ハブは第2のスリーブ外周に固定する。
【0010】
この態様によると、流体動圧軸受ユニットの内部に気泡の入り込みが少なくなり、高速化に適したディスク駆動装置を提供することができる。
【0011】
本発明のさらに第3の態様は、ディスク駆動装置の製造方法である。このディスク駆動装置の製造方法は、第2の態様に係るディスク駆動装置の製造方法であって、流体動圧軸受ユニットを準備する工程と、少なくとも第2のスリーブの外周とハブの円筒部の何れかに接着剤を塗布する工程と、ハブの円筒部に第2のスリーブの外周を挿入する工程と、少なくとも第2のスリーブとハブの何れかに紫外線を照射する工程と、少なくともシャフトの第2の端部とベース部材の孔部の何れかに接着剤を塗布する工程と、シャフトの第2の端部をベース部材の孔部に挿入する工程と、接着剤中の揮発成分を低減する工程と、ハブとベース部材の導通を確認する工程と、ハブを回転させながらハブの載置部の軸方向振れを確認する工程と、ハブの静止時と回転時とにおけるハブの載置部の軸方向高さの差を確認する工程と、を含んでいる。
【0012】
この態様によると、流体動圧軸受ユニットの内部に異物が入り込んでいる場合にも、ハブの静止時と回転時とにおけるハブの載置部の軸方向の高さの差を確認することで排除できるから、高速化に適したディスク駆動装置を提供することができる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易にかつ短時間で潤滑剤を注入作業でき、気泡の入り込みを防止し、かつ潤滑剤の量を容易に確認できる流体軸受ユニットを提供すること。あわせてこの流体軸受ユニットを備えることで高速化に適したディスク駆動装置及びその製造方法を提供する
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ディスク駆動装置の上面図と側面図である。図1Aは、ディスク駆動装置の上面図である。図1Bは、ディスク駆動装置の側面図である。
【図2】ディスク駆動装置のA−B部の要部断面図である。
【図3】流体軸受ユニットの断面図である。
【図4】流体軸受ユニットを組立てて潤滑剤を注入する工程を示す図である。図4Aは、シャフトに第1のフランジを固定した状態を示す図である。図4Bは、第2のスリーブと第1のスリーブを固定した状態を示す図である。図4Cは、第1のスリーブにフランジ付きのシャフトを挿入した状態を示す図である。図4Dは、シャフトに第2のフランジを固定した状態を示す図である。図4Eは、潤滑剤未充填の流体軸受ユニット内部の空気を除去した状態を示す図である。図4Fは、第1の環状部材と第1のフランジとの間及び第2の環状部材と第2のスリーブとの間にノズルにより潤滑剤を塗布した状態を示す図である図4Gは、潤滑剤が流体軸受ユニット内部に引き込まれた状態を示す図である。図4Hは、レーザー光を第1及び第2のキャピラリーシールの中に照射して潤滑剤の第1及び第2の液面の高さを確認する状態を示す図である。
【図5】ディスク駆動装置を組み立てる手順を示す図である。図5Aは、ハブの内周にヨークとマグネットを固定した状態を示す図である。図5Bは、ハブの内周に流体軸受ユニットの外周を固定した状態を示す図である。図5Cは、流体軸受ユニットのシャフトをベース部材に固定した状態を示す図である。図5Dは、ハブに記録ディスクとスペーサとクランパーを固定し、さらにトップカバーを固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
なお、本実施形態において、記録ディスク等の磁気データをリード/ライトする構造を全て含むものをディスク駆動装置と表現する場合もあるし、HDDと表現する場合もある。また、記録ディスクを回転駆動する部分のみをディスク駆動装置と表現する場合もある。
【0017】
図1Aは、ディスク駆動装置100の上面図である。図1Bは、ディスク駆動装置100の側面図である。なお、図1Aは、内部構成を露出させるためにトップカバー2を取り外した状態を示す。図2は、ディスク駆動装置100のA−B部の要部断面図である。流体軸受ユニット50のシャフト11の一端(第2の端部)はベース部材12に固定する。シャフト11の別の一端(第1の端部)には孔を形成しており、トップカバー2を留め具により固定している。図2の例では、留め具はスクリュウ13とし、シャフト11の孔はねじ孔11Aとしている。
【0018】
図3は、流体軸受ユニット50の断面図である。少なくとも一端にねじ孔11Aを形成したシャフト11と、略円筒状の第1のスリーブ14と、第1のフランジ15と、第2のフランジ16と、略円筒状の第2のスリーブ17と、第1の環状部材18と、第2の環状部材19とを備える。第1のスリーブ14は例えば銅系の合金からなり、切削加工により形成してもよい。シャフト11は例えばSUS420J2のようなステンレス剤を切削加工等して形成してもよい。第1のスリーブ14は相対回転可能な隙間を介してシャフト11の一部を収納する。
【0019】
第1のスリーブ14の内周面と、シャフト11の第1のスリーブ14に収納した部分の外周面との少なくとも何れかに1対のラジアル動圧溝20を設ける。ラジアル動圧溝20は軸方向に離間した位置に例えばヘリングボーン状に形成してもよい。
【0020】
第1のフランジ15はシャフト11の第1の端部に例えば圧入で固定する。第1のスリーブ14の端面と第1のフランジ15の対向面との少なくとも何れかに第1のスラスト動圧溝21を形成する。第1のスラスト動圧溝21はスパイラル状またはヘリングボーン状に形成してもよい。
【0021】
第2のフランジ16は、第1のスリーブ14の他方の面に隙間をもって対向する位置に、シャフト11の第2の端部側の外周に例えば圧入で固定する。第1のスリーブ14の他方の面と第2のフランジ16の対向面との何れかに第2のスラスト動圧溝22を形成する。第2のスラスト動圧溝22はスパイラル状またはヘリングボーン状に形成してもよい。
【0022】
第2のスリーブ17は第1のスリーブ14を収納して例えば接着により固定する。第1の環状部材18は、第2のスリーブ17の第1のフランジ15側の端面に固定する。第1のキャピラリーシール24は、第1のフランジ15と第1の環状部材18との隙間に開放側に向かって隙間が拡大する空間に形成する。第1のキャピラリーシール24は、毛細管現象により潤滑剤23の漏れ出しを防止する。
【0023】
第2の環状部材19は、第2のフランジ16の第2のスリーブ17の外周を包囲する位置に固定する。第2のキャピラリーシール25は、第2の環状部材19と第2のスリーブ17との隙間に開放側に向かって隙間が拡大する空間に形成している。第2のキャピラリーシール25は、毛細管現象により潤滑剤23の漏れ出しを防止する。
【0024】
ラジアル動圧溝20と第1及び第2のスラスト動圧溝21、22と第1及び第2のキャピラリーシール24、25には連続する潤滑剤23を充填する。第1のキャピラリーシール24内の途中には空気と潤滑剤23の第1の液面26を形成する。また、第2のキャピラリーシール25内の途中には空気と潤滑剤23の第2の液面27を形成する。
第1の環状部材18と第2のスリーブ17は、第2のキャピラリーシール25内の潤滑剤23の第2の液面27の最内周部と第2の環状部材19の開放端の内周部と結んだ直線より径方向で内側に配設されている。このため、第1のキャピラリーシール24の第1の液面26と、前記第2のキャピラリーシール25の第2の液面27は、第2のスリーブ17の径方向外側の位置で実質的に同じ視点から可視できる。即ち、第1及び第2の液面26、27は同一の方向から可視できる。
【0025】
図4は、流体軸受ユニット50を組立て、潤滑剤23を注入する工程を示す図である。図4に基づき本実施形態の流体軸受ユニット50を組立て、潤滑剤23を注入する工程を説明する。
(1)図4Aを参照して説明する。シャフト11と第1のフランジ15を準備する。第1のフランジ15をシャフト11の第1の端部の外周の所望の位置に例えば圧入で固定する。
(2)図4Bを参照して説明する。所望の形状に加工した第1のスリーブ14を準備する。第1のスリーブ14の内筒面にラジアル動圧溝20を、両端面に第1及び第2のスラスト動圧溝21、22を形成する。これらの動圧溝は機械的な加工やエッチングなど各種の加工方法で形成してもよい。次に第2のスリーブ17を準備する。第2のスリーブ17の端面に第1の環状部材18を固定する。第2のスリーブ17の内筒面に第1のスリーブ14の外筒面を例えば接着で固定する。
【0026】
(3)図4Cを参照して説明する。第1のスリーブ14の内筒にシャフト11を挿入する。この際に、第1のフランジ15の外周は第1の環状部材18の内周に対向する方向から挿入する。
(4)図4Dを参照して説明する。第2のフランジ16を準備する。第2のフランジ16の外周に第2の環状部材19を固定する。シャフト11の第2の端部側の外周の所望の位置に第2のフランジ16を例えば圧入で固定する。この際に、第2のスリーブ17の外周が第2の環状部材19の内周に対向するように固定する。この結果、潤滑剤23を充填していない流体軸受ユニット50が得られる。
【0027】
(5)図4Eを参照して説明する。次に、真空槽(不図示)に、潤滑剤23を充填していない流体軸受ユニット50を入れる。真空槽の内部の空気を排出して流体軸受ユニット50内部の空気を除去する。この際、真空槽の内部は例えば100Pa以下のほぼ真空状態にしてもよい。
(6)図4Fを参照して説明する。当該真空槽に入れたまま、流体軸受ユニット50の第1の環状部材18と第1のフランジ15との間にノズル28により潤滑剤23を塗布する。同時に第2の環状部材19と第2のスリーブ17との間にもノズル28により潤滑剤23を塗布する。
【0028】
(7)図4Gを参照して説明する。当該真空槽に空気を導入してほぼ大気圧に戻す。先に塗布した潤滑剤23は気圧差により流体軸受ユニット50内部に引き込まれる。その結果、潤滑剤23はラジアル動圧溝20、第1及び第2のスラスト動圧溝21、22を覆う。
(8)図4Hを参照して説明する。さらに、例えばレーザー距測装置29からレーザー光30を第1及び第2のキャピラリーシール24、25の中に照射して潤滑剤23の第1及び第2の液面26、27の高さを確認する。
(9)これらの液面26、27が所望の高さでない場合は、上記(5)から(8)の工程を繰り返し、潤滑剤23を補充してもよい。
【0029】
次に、上記(6)の工程において、第2の環状部材19と第2のスリーブ17の間には潤滑剤23を塗布しない例について説明する。この状態で上記(7)の工程で真空槽に空気を導入すると、第2の環状部材19と第2のスリーブ17の間から空気が流体軸受ユニット50内部に導入される。空気が入ると、潤滑剤23は十分には流体軸受ユニット50内部に引き込まれない。また、潤滑剤23に気泡が巻き込まれ易くなる。潤滑剤23を十分に流体軸受ユニット50内部に充填するためには、上記(5)から(8)の工程を繰り返す回数が多くなる。このように充填の繰り返し回数が多くなると時間が余分にかかり作業効率が悪い。また潤滑剤23に気泡が巻き込まれる可能性が高くなる。これらの課題に対応するには、第2の環状部材19と第2のスリーブ17の間にも潤滑剤23を塗布する方法が好ましい。
【0030】
本実施形態の流体軸受ユニット50において、構成する部品が多い例では組み立てる手間がかかる課題がある。これに対応して、第2のスリーブ17と第1の環状部材18は一体で形成してもよい。また、第2のフランジ16と第2の環状部材19は一体で形成してもよい。組立固定する手間が省け作業効率が向上する点で好ましい。
第2のスリーブ17と第1の環状部材18は、各種の金属材料やプラスチック材料を用いて形成することができる。例えば、黄銅材料を所望の形状に切削加工により形成してもよい。加工が容易で精度が高い点で好ましい。表面にメッキを施してもよい。例えば無電解ニッケルメッキは防錆効果があり硬度が高くなる点で好ましい。
第2のフランジ16と第2の環状部材19は、各種の金属材料やプラスチック材料を用いて形成することができる。例えば、SUS303などのステンレス材料を所望の形状に切削加工により形成してもよい。加工が容易で精度が高い点で好ましい。また、SUS304などのステンレス鋼板を所望の形状にプレス加工により形成してもよい。加工時間が短い点で好ましい。
【0031】
また、第2のキャピラリーシール25の外径が大きいと、ステータコア35の内径が大きくなり、回転駆動力が小さくなる課題がある、これに対応して、第2のスリーブ17の外周に縮径部17Aを設け、第2のキャピラリーシール25は縮径部17Aの外周を含んで構成され、第2のスリーブ17の第2の環状部材19側の端面の外周の直径は縮径部17Aの直径より大きくしてもよい。第2のキャピラリーシール25の外径を小さく構成し得る点で好ましい。
【0032】
また、第2のキャピラリーシール25を第1のキャピラリーシール24の径方向で内側に構成する例では、潤滑剤23の塗布のノズルが第1の環状部材18と干渉する課題がある。これに対応して、第2のキャピラリーシール25は第1のキャピラリーシール24の径方向で外側の位置に配設してもよい。図4Fに示すように、第2のキャピラリーシール25に第1のキャピラリーシール24と同一の方向から潤滑剤23の塗布をし得る点で好ましい。
【0033】
第2のキャピラリーシール25とラジアル動圧溝20が軸方向に配置する例では、流体軸受ユニット50が厚くなる課題がある。これに対応して、第2のキャピラリーシール25はラジアル動圧溝20の外周を包囲するように配設してもよい。流体軸受ユニット50を薄く構成し得る点で好ましい。
【0034】
また、流体軸受ユニット50が回転した際に、潤滑剤23に遠心力が加わり外部へ飛散する課題がある。これに対応して、第1または第2の環状部材18、19の内周側壁の少なくとも何れかは内向きに傾斜してもよい。潤滑剤23に遠心力が加わった際にも、潤滑剤23が飛散しにくい点で好ましい。この傾斜角度は0.5°以上で効果がみられ、10°以下で加工が容易である。従って、この傾斜角度は0.5°以上で10°以下の範囲が好ましく、実験等により適宜決定することができる。
【0035】
また、スリーブ14の両端に圧力の差が生じると、潤滑剤23が偏在し流体軸受ユニットの機能が不安定になる課題がある。これに対応して、少なくとも第1のスリーブ14の両端を連通する連通路32を設けてもよい。第1のスリーブ14の両端の圧力差が小さくなる点で好ましい。
また、連通路32を孔として形成する例では、当該孔の中に加工時に生じたバリの除去が難しい課題がある。これに対応して、少なくとも第1のスリーブ14の外周または第2のスリーブ17の内周の何れかに設けた軸方向の溝31を含んで構成してもよい。溝31の加工時に生じたバリを容易に除去し得る点で好ましい。
【0036】
また、流体軸受ユニット50に衝撃が加わったときに連通路32内の潤滑剤23が外に飛散する課題がある。これに対応して、第1のフランジ15の外径は連通路32の出口の径方向の位置より外側に張り出ししてもよい。流体軸受ユニット50に衝撃が加わったときに連通路32内の潤滑剤23は第1のフランジ15に当たり外に飛散しにくい点で好ましい。例えば、第1のスリーブ14の外径より第1のフランジ15の外径を大きく形成してもよい。
【0037】
第1の環状部材18の外径が第2の環状部材19の外径より大きい例では、前述の(8)の工程(図4H)で、レーザー光30が第1の環状部材18の外径と干渉する。レーザー光30が干渉を受けると第2の液面27の高さを確認することが難しい課題がある。これに対応して、第1の環状部材18の外径は第2の環状部材19の外径より小さくしてもよい。この結果、第2のキャピラリーシール25の中の潤滑剤23の第2の液面27の確認が容易になる点で好ましい。
【0038】
潤滑剤23の蒸発によって第1又は第2のキャピラリーシール24、25の何れかの潤滑剤23が無くなると、流体軸受ユニット50は寿命に至る。何れか一方のキャピラリーシールの潤滑剤23が最初から少ないと、より早く寿命に至る課題がある。これに対応して、潤滑剤23が減少した場合における、第1のキャピラリーシール24の開放端面から第1の液面26までの距離の変化量と第2のキャピラリーシール25の開放端面から第2の液面27までの距離の変化量は実質的に等しくなるように構成してもよい。
【0039】
第1の液面と第2の液面は、毛細管力によりそれぞれ潤滑剤を流体動圧軸受ユニットの内部に向けて力を受けている。第1の液面と第2の液面の、それぞれが受ける毛細管力が平衡する位置で安定する。したがって、キャピラリーシールの開放端面から液面までの距離と毛細管力とを関係を、両方のキャピラリーシールでほぼ同じにすることで、両方の液面の変化量は実質的に等しくなる。毛細管力は、例えばキャピラリーシールの隙間をパラメータとして変化する。よって、キャピラリーシールの開放端面からの距離とその隙間との関係をほぼ同じに設定することにより、上述の構成は実現できる。この結果、潤滑剤23の蒸発によって減少した場合も第1又は第2のキャピラリーシール24、25の何れか一方の潤滑剤23の減少による前述の課題が軽減される。
【0040】
第2のキャピラリーシールの容量は第1のキャピラリーシール24の容量の70〜130%としてもよい。この結果、前記(6)の潤滑剤23塗布工程で同じ大きさのノズル28から同量の潤滑剤23を吐出して作業できる。管理が容易である点で好ましい。同じ大きさのノズル28から同量の潤滑剤23を吐出するように調整しても±30%程度のバラツキが生じるからである。
【0041】
第2のキャピラリーシール25の容量を拡大したい課題がある。これに対応して、第2のキャピラリーシール25は第2のフランジ16の1面と第2のスリーブ17の対向する面との隙間空間を含んで構成してもよい。第2のキャピラリーシール25の容量を拡大し得る点で好ましい。
【0042】
第2のフランジ16の第2のスリーブ17と対向する面は平坦にする。第2のスリーブ17の第2のフランジ16と対向する面は外側に行くほど隙間が拡がるような傾斜を設ける。この隙間も毛細管現象により潤滑剤23の漏れ出し防止の作用をする。第2の環状部材19と第2のスリーブ17の間に形成した隙間と共に第2のキャピラリーシール25を構成する。
【0043】
第2のスリーブ17は第1のスリーブ14と一体で形成してもよい。加工の手間が少ない点で好ましい。これらは各種の金属材料やプラスチック材料を用いて形成することができる。例えば、黄銅材料を所望の形状に切削加工により形成してもよい。加工が容易で精度が高い点で好ましい。表面にメッキを施してもよい。例えば無電解ニッケルメッキは防錆効果があり硬度が高くなる点で好ましい。
【0044】
次に、図2に戻る。図2はディスク駆動装置100のA−B部の要部断面図である。本実施形態のディスク駆動装置100は前述した実施形態の流体軸受ユニット50と、流体軸受ユニット50の第2のスリーブ17とは別に設けられたハブ10と、流体軸受ユニット50の第2のフランジ16とは別に設けたベース部材12と、を備える。
【0045】
ハブ10は例えばアルミニウムの素材を切削加工により所望の形状に形成してもよい。ハブ10の外側には記録ディスク1の内周を契合する第1の円筒部と、クランパー39の内周に契合する第2の円筒部を有している。第1の円筒部の下端には外周に張り出した記録ディスク1の内周部を載置する載置部を有している。
ハブ10の内側には一方に第3の円筒部と、他方に相対的に直径の大きな第4の円筒部を有する。
ハブ10の第3の円筒部は流体軸受ユニット50の第2のスリーブ17の外周に例えば接着により固定する。ハブ10の第4の円筒部にはヨーク33の外周を、圧入と接着で固定する。ヨーク33は軟磁性を有する鉄鋼板を例えばプレス加工で略リング形状に形成してもよい。腐食を防止するためメッキを施してもよい。
ヨーク33の内周には略リング状のマグネット34を固定する。マグネット34は、例えばNd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)などの希土類材料を含んで構成してもよい。また、マグネット34は、その内周部の円周方向に沿って例えば8極の駆動用磁極を有してもよい。
【0046】
ベース部材12は中央付近の凹部12Aとその外周の周環壁部12Bとを有してもよい。ベース部材12は例えばアルミニウムの素材をダイキャスト成形した後、切削加工により所望の形状に形成してもよい。ベース部材12の表面はEDコート(電着塗装)をしてもよい。表面のダストの脱落を防止し得る点で好ましい。ベース部材12は中央付近に孔部12Cと、この孔部12Cの外周に環状壁部12Dを有する。環状壁部12Dの外周にステータコア35を例えば接着で固定する。ステータコア35は、円環部35Aと、そこから半径方向に延伸した12個の突極35Bとを有してもよい。ステータコア35の突極35Aには巻き線をして形成した3相のコイル36を有する。流体軸受ユニット50のシャフト11の第2の端部はベース部材12の孔部12Cに例えば接着で固定する。
【0047】
マグネット34の内周とステータコア35の外周は例えば0.5mmの隙間を介して対向する。コイル36は図示しない所定の駆動回路37に接続している。駆動回路37により3相の略正弦波状の電流がコイル36に通電されるとステータコア35の外周に回転磁界を発生する。マグネット34の駆動用磁極と、ステータコア35の外周に発生させた回転磁界との相互作用により回転駆動力を生じ、ハブ10が回転する。
【0048】
ハブ10の載置部には、ドーナツ形状の記録ディスク1とドーナツ状のスペーサ38を交互に載置してもよい。載置した記録ディスク1の上には略ドーナツ形状のクランパー39を載せてもよい。クランパー39の内周はハブ10の第2の外筒部に契合し、スクリュウ40によってハブ10に固定してもよい。すなわち、クランパー39及びスクリュウ40は、記録ディスク1の係止手段として機能する。
【0049】
図1に戻る。ディスク駆動装置100には、磁気ヘッド3及びこの磁気ヘッド3の駆動装置4とこれらの制御回路(不図示)、その他必要な部材を組み付けてよい。
【0050】
ディスク駆動装置100の上面には、トップカバー2を載置する。トップカバー2は例えばアルミニウム板や鉄鋼板をプレス加工で所望の形状に形成してもよい。腐食を防止するためメッキ等の表面処理を施してもよい。トップカバー2は外周付近に複数の孔2Aと、中央付近に孔2Bを有してもよい。トップカバー2は、中央付近の孔2Bを介して流体軸受ユニット50のシャフト11の第1の端部のねじ孔11Aにスクリュウ13で固定する。トップカバー2は、外周付近の孔2Aを介してベース部材12の周環壁部12Bに設けた孔12Fにスクリュウ5で固定してもよい。すなわち、流体軸受ユニット50のシャフト11の一方端部は、ベース部材12に直接固定され、他方の端部はトップカバー2を介してベース部材12に固定される。この結果、流体軸受ユニット50のシャフト11は安定して支持され、シャフト11の振動は低減され、磁気ヘッド3の記録トラックのトレースの乱れが改善される。
【0051】
図5は、本実施形態のディスク駆動装置100を組み立てる手順の一例を示す図である。
(1)図5Aを参照して説明する。まず、ハブ10とヨーク33とマグネット34を準備する。ハブ10の第4の円筒部の内周にヨーク33の外周を例えば圧入と接着で固定する。ヨーク33の内周にマグネット34の外周を例えば接着で固定する。マグネット34の内周に図示しない着磁手段で駆動用磁極を着磁する。
【0052】
(2)図5Bを参照して説明する。流体軸受ユニット50を準備する。流体軸受ユニット50の第2のスリーブ17の外周をハブ10の第3の円筒部に例えば接着と焼き嵌めにより固定する。少なくとも第2のスリーブ17の外周とハブ10の第3の円筒部の何れかに接着剤を塗布して、ハブ10の第3の円筒部に第2のスリーブ17の外周を挿入する。かかる接着剤は嫌気硬化性、熱硬化性、UV硬化性を併せもつものが、短時間で初期強度を生じるから作業容易である点で好ましい。
また、ハブ10と第2のスリーブ17の隙間からはみ出た接着剤が、組立の際に治具や工具に付着して他のディスク駆動装置に転写する課題がある。この課題に対応して、第2のスリーブ17とハブ10に紫外線を照射することができる。紫外線が照射されると、はみ出した接着剤はそのUV硬化性により短時間で硬化する。その結果、上述の隙間からはみ出した接着剤に起因する課題が軽減される。
【0053】
(3)図5Cを参照して説明する。ステータコア35を準備する。ステータコア35の突極35Aにコイル36を形成する。ステータコア35はベース部材12の環状壁部12Dの外周に例えば接着で固定する。ハブ10を固定した流体軸受ユニット50のシャフト11の第2の端部をベース部材12の孔部12Cに例えば接着と圧入により固定する。少なくともシャフト11の第2の端部とベース部材12の孔部の何れかに接着剤を塗布して、シャフト11の第2の端部をベース部材12の孔部に挿入する。
かかる接着剤は嫌気硬化性、熱硬化性を併せもつものが、短時間で初期強度を生じるから作業容易である点で好ましい。また、上記と同様に隙間からはみ出た接着剤に起因する課題に対応して、接着剤はUV硬化性を持たせ、はみ出した接着剤に紫外線を照射してもよい。その結果、短時間で硬化してはみ出た接着剤に起因する課題が軽減される。
【0054】
上述したように部材の固定に接着剤を用いる場合には、記録ディスク1が載置された後にも揮発成分を放出する。この場合に、当該放出された揮発成分が記録ディスク1の表面に付着して薄膜を形成することがある。当該薄膜は、磁気ヘッド3による正常な磁気データのリード/ライト動作を妨げ、エラーレートの悪化につながる課題がある。この課題に対応して、記録ディスク1が載置される前に、接着剤中の揮発成分を低減するようにしてもよい。例えば、上記接着後のディスク駆動装置を80〜90℃の環境下に1〜3時間静置することができる。これにより、接着剤中の揮発成分の多くの割合が放出されて、残留する割合は低減される。この結果、上述の接着剤の揮発成分に起因する課題が軽減される。
【0055】
記録ディスク1は、回転させると空気との摩擦により帯電することがある。帯電した電荷はハブ10からシャフト11やスリーブを通じてベース部材12に至り放電される。しかし、上述したように部材の固定に接着剤を用いる場合には、当該接着部分が絶縁されることがある。接着部分が絶縁されると、かかる電荷は十分に放電されない。この場合、最悪磁気ヘッド3の出力にノイズを生じさせる原因となる課題がある。この課題に対応して、ハブ10とベース部材12の導通を確認するようにしてもよい。例えば、当該部分の抵抗が1MΩを超える場合は、修理等を施してから出荷するようにできる。この結果、上述の課題が軽減される。なお、係る抵抗はハブ10を回転させながら測定する方法が、実際の使用状態に近い点で好ましい。
【0056】
上述した工程で、ハブ10と流体軸受ユニット50とが傾いて固定されると、ハブ10の記録ディスク1を載置する載置部の軸方向振れが大きくなることがある。係る振れが所定の値以上になると、載置固定された記録ディスク1の軸方向振れも大きくなる。記録ディスク1の軸方向振れが大きくなると、磁気ヘッド3による正常な磁気データのリード/ライト動作を妨げ、所望のエラーレート性能を得られない課題がある。この課題に対応して、ハブ10を回転させながらハブ10の載置部の軸方向振れを確認するようにしてもよい。例えば、当該振れが10μm以上である場合は、修理等を施してから出荷するようにできる。この結果、上述の課題が軽減される。
【0057】
上述した工程で、第1のスラスト動圧溝21や第2のスラスト動圧溝22の近傍に異物が挟まっていることがある。係る異物が大きいと、回転体の軸方向の浮上動作が妨げられる。このような状態で使用し続けると意図しない摩耗を生じる。係る摩耗が大きい場合には、最悪短時間で焼き付きなどの機能不全に陥ることがある。このような課題に対応して、ハブ10の静止時と回転時とにおけるハブ10の載置部の軸方向高さの差を確認するようにしてもよい。係る軸方向高さの差は、回転体の浮上量に相当する。係る軸方向高さの差が10μm未満である場合は、上述の障害を起こす可能性が高く、修理等を施してから出荷するようにできる。この結果、上述の課題が軽減される。
【0058】
なお、ディスク駆動装置50のハブ10をベース部材12の上側にした第1の姿勢と、ハブ10をベース部材12の下側にした第2の姿勢の両方で、当該軸方向高さの差を確認するようにしてもよい。上述の課題が一層軽減される点で好ましい。
【0059】
また、確認や検査の工程が多くなると、検査時間が長くなり作業の手間が多くかかる課題がある。この課題に対応して、ハブ10を回転させながらハブ10の載置部の軸方向振れを確認する工程と、ハブ10の静止時と回転時とにおけるハブ10の載置部の軸方向高さの差を確認する工程とは、実質的に同一の検査ステージで実施してもよい。検査の治具や工具が共用され、検査時間が短くなる点で好ましい。
【0060】
(4)図5Dを参照して説明する。記録ディスク1と、スペーサ38と、クランパー39と、トップカバー2とを準備する。所定の数の記録ディスク1とスペーサ38を交互に載置部に載置する。クランパー39の内周はハブ10の第2の外筒部に契合し記録ディスク1の上に載置する。クランパー39はスクリュウ40によってハブ10に固定する。
【0061】
図2に戻る。本実施形態のディスク駆動装置100において、ハブ10とベース部材12の軸方向の空間に備えたコイル36を挟むハブ10の軸方向寸法Xは、ベース部材12の軸方向寸法Yより厚くしてもよい。ディスク駆動装置100のロッキングモード共振周波数が高くなることで振動が軽減される点で好ましい。さらに、X≧1.5Yの関係になるよう構成すると一層ロッキングモード共振周波数が高くなる点で好ましい。ある実施例では、ハブ10の軸方向寸法Xは6.4mmに、ベース部材12の軸方向寸法Yは3.6mmに構成した。
【0062】
シャフト11がベース部材12に接合されている部分の直径は、ハブ10が第2のスリーブ17に接合されている部分の直径より小さい。このため、シャフト11とベース部材12の接合強度はハブ10と第2のスリーブ17の接合強度より弱い。このため、ディスク駆動装置50が衝撃を受けた場合に、シャフト11とベース部材12の接合部分が先に破壊される可能性が高い。即ち、ディスク駆動装置50の耐衝撃強度を高めるために、シャフト11とベース部材12の接合部分の接合強度を高めたい課題がある。
この課題に対応して、シャフト11のベース部材12と接する部分の軸方法寸法Zはハブ10が第2のスリーブ17の外周と接する部分の軸方向寸法と実質的に等しいか長くしてもよい。ディスク駆動装置50の高さが既定の場合に、シャフト11のベース部材12と接する部分の軸方法寸法と、ハブ10が第2のスリーブ17の外周と接する部分の軸方向寸法とは、一方を長くすると他方が短くなる関係にある。したがって、当該構成によりディスク駆動装置の耐衝撃強度が向上する。図2の実施例において、シャフト11のベース部材12と接する部分の軸方法寸法Zは5.4mmに、ハブ10が第2のスリーブ17の外周と接する部分の軸方向寸法は5.0mmに構成した。
【0063】
ディスク駆動装置の使用範囲が拡大する中、市場において実使用上で、ディスク駆動装置には450Gの衝撃が加わる機会があることが判明した。このような課題に対応するために、シャフト11のベース部材12と接する部分は1000Nの力を加えても破壊されない強度に構成してもよい。当該強度は、軸方法寸法Zをハブ10が第2のスリーブ17の外周と接する部分の軸方向寸法と実質的に等しいか長く構成する範囲内において、実験等により適宜決定して実現できる。当該強度を有する場合には、市場での実使用上で問題を生じる可能性は低いとの知見を有する。
【0064】
また、シャフト11のベース部材12と接する部分の軸方法寸法Zはシャフト11の全長Lの20%以上としてもよい。シャフト11のベース部材12の結合強度が安定する点で好ましい。ある実施例では、軸方法寸法Zは5.4mmに、シャフト11の全長Lは23.4mmに構成した。
【0065】
また、ハブ10の内周の第3の円筒部の入口に傾斜面10Aを設けてもよい。上記(2)の工程において、傾斜面10Aをガイドにすることができる。傾斜面10Aをガイドにすると、流体軸受ユニット50の第2のスリーブ17の外周は、円滑に第3の円筒部の内周内に導かれる。その結果、作業効率が向上し、ハブ10に流体軸受ユニット50が精度よく固定できる。
【0066】
また、ハブ10の端面に第1のキャピラリーシール24の径方向内側に張り出したカバー部材41を設けてもよい。ディスク駆動装置100が衝撃を受けた場合に、第1のキャピラリーシール24の中の潤滑剤23の飛散を軽減し得る点で好ましい。カバー部材41の内径は第1のフランジ15の外径よりも小さくしてもよい。潤滑剤23の飛散を一層軽減し得る点で好ましい。
カバー部材41は、各種の金属材料やプラスチック材料を用いて形成することができる。例えばSUS303などのステンレス材料を用いて切削加工により形成してもよい。錆び難く寸法精度が高い点で好ましい。カバー部材41は、SUS304などのステンレス鋼板をプレス加工により形成してもよい。加工の手間が少ない点で好ましい。
【0067】
また、カバー部材41はハブ10と一体に設けてもよい。加工の手間が省ける点で好ましい。
【0068】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
100 ディスク駆動装置、 50 流体軸受ユニット、
1 記録ディスク、 2 トップカバー、 3 磁気ヘッド、 4 駆動装置、 5 スクリュウ、
10 ハブ、 10A 傾斜面、 11 シャフト、 11A ねじ孔、 12 ベース部材、
12A 凹部、 12B 周環壁部、 12C ベース部材の孔部、 12D 環状壁部、
13 スクリュウ、 14 第1のスリーブ、 15 第1のフランジ、
16 第2のフランジ、 17 第2のスリーブ、 17A 縮径部、
18 第1の環状部材、 19 第2の環状部材、 20 ラジアル動圧溝、
21 第1のスラスト動圧溝、 22 第2のスラスト動圧溝、 23 潤滑剤、
24 第1のキャピラリーシール、 25 第2のキャピラリーシール、 26 第1の液面、
27 第2の液面、 28 ノズル、 29 レーザー距測装置、 30 レーザー光、
31 軸方向の溝、 32 連通路、 33 ヨーク、 34 マグネット、
35 ステータコア、 35A 突極、 36 コイル、 37 駆動回路、
38 スペーサ、 39 クランパー、 40 スクリュウ、 41 カバー部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部に留め具によりトップカバーを固定する孔を形成したシャフトと、
前記シャフトを環囲し相対回転可能な第1のスリーブと、
前記第1のスリーブの端面と隙間を介した位置で前記シャフトの前記第1の端部側に固定した第1のフランジと、
前記第1のスリーブの他の端面と隙間を介した位置で前記シャフトの第2の端部側の外周に固定した第2のフランジと、
前記第1のスリーブの外周に固定した略円筒状の第2のスリーブと、
前記第1のフランジの外周を包囲して前記第2のスリーブに固定した第1の環状部材と、
前記第2のスリーブの外周を包囲して前記第2のフランジの外周に固定した第2の環状部材と、
前記シャフトの外周面と前記第1のスリーブの内周面の少なくとも何れかに設けたラジアル動圧溝と、
前記第1のフランジと前記第1のスリーブの第1の端面の相互に対向する面の少なくとも何れかに設けた第1のスラスト動圧溝と、
前記第2のフランジと前記第1のスリーブの第2の端面の相互に対向する面の少なくとも何れかに設けた第2のスラスト動圧溝と、
前記第1の環状部材と前記第1のフランジとの隙間に開放側に向かって隙間が拡大するように形成した第1のキャピラリーシールと、
前記第2の環状部材と前記第2のスリーブとの隙間に開放側に向かって隙間が拡大するように形成した第2のキャピラリーシールと、
前記ラジアル動圧溝と前記第1及び前記第2のスラスト動圧溝と前記第1及び第2のキャピラリーシールに充填した潤滑剤と、を備え、
前記第1のキャピラリーシールの途中には空気と前記潤滑剤の第1の液面を形成し、前記第2のキャピラリーシールの途中には空気と前記潤滑剤の第2の液面を形成し、前記第2のスリーブは前記第2の液面の最内周部と前記第2の環状部材の開放端の内周部と結んだ直線より径方向で内側の領域に配設されてなることを特徴とする流体動圧軸受ユニット。
【請求項2】
前記第2のスリーブと前記第1の環状部材は一体で形成したことを特徴とする請求項1に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項3】
前記第2のフランジと前記第2の環状部材は一体で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項4】
前記第2のスリーブの外周に縮径部を設け、前記第2のキャピラリーシールは前記縮径部の外周を含んで構成され、前記第2のスリーブの第2の環状部材側の端面の外周の直径は前記縮径部の直径より大きいことを特徴とする請求項1から3に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項5】
前記第2のキャピラリーシールは前記第1のキャピラリーシールの径方向で外側の位置に配設したことを特徴とする請求項1から4に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項6】
前記第2のキャピラリーシールは前記ラジアル動圧溝の外周を包囲するように配設したことを特徴とする請求項1から5に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項7】
少なくとも前記第1または第2の環状部材の内周側壁の何れかは内向きに傾斜することを特徴とする請求項1から6に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項8】
少なくとも前記第1のスリーブの外周または前記第2のスリーブの内周の何れかに設けた軸方向の溝を含んで形成した連通路を備えたことを特徴とする請求項1から7に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項9】
前記第1のフランジの外径は前記連通路の出口の径方向の位置より外側に張り出すことを特徴とする請求項1から8に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項10】
前記第1の環状部材の外径は前記第2の環状部材の外径より小さくしたことを特徴とする請求項1から9に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項11】
前記潤滑剤が減少した場合における、前記第1のキャピラリーシールの開放端面から前記第1の液面までの距離の変化量と前記第2のキャピラリーシールの開放端面から前記第2の液面までの距離の変化量は実質的に等しいことを特徴とする請求項1から10に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項12】
前記第2のキャピラリーシールは前記第2のフランジの1面と前記第2のスリーブの対向する面との隙間空間を含んで構成したことを特徴とする請求項1から11に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項13】
前記第2のフランジはプレス加工により形成したことを特徴とする請求項1から12に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項14】
前記第2のスリーブは前記第1のスリーブと一体で形成したことを特徴とする請求項1から13に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項15】
前記第1のキャピラリーシールの第1の隙間の潤滑剤と、前記第2のキャピラリーシールの第2の隙間の潤滑剤とは、前記第2のスリーブの径方向外側の位置で実質的に同じ視点から可視できることを特徴とする請求項1から14に記載した流体動圧軸受ユニット。
【請求項16】
前記請求項1から15に記載した流体動圧軸受ユニットと、前記第2のスリーブとは別に設けられたハブと、
前記第2のフランジとは別に設けたベース部材と、を備え、
前記ハブは前記第2のスリーブの外周に固定され、前記シャフトの前記第2の端部は前記ベース部材に設けた孔に固定してなることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項17】
前記ハブと前記ベース部材の軸方向の空間にコイルを備え、前記コイルを挟む前記ハブの軸方向寸法は、前記ベース部材の軸方向寸法より厚くしたことを特徴とする請求項16に記載したディスク駆動装置。
【請求項18】
前記シャフトの前記ベース部材と接する部分の軸方法寸法は前記ハブが前記第2のスリーブの外周と接する部分の軸方向寸法と実質的に等しいか長いことを特徴とする請求項16または17に記載したディスク駆動装置。
【請求項19】
前記ハブの内周に傾斜面を設けたことを特徴とする請求項16から18に記載したディスク駆動装置。
【請求項20】
前記第1のキャピラリーシールの径方向内側に張り出したカバー部材を設けたことを特徴とする請求項16から19に記載したディスク駆動装置。
【請求項21】
前記カバー部材は前記ハブと一体に設けたことを特徴とする請求項20に記載したディスク駆動装置。
【請求項22】
請求項16から21に記載したディスク駆動装置の製造方法であって、
前記流体動圧軸受ユニットを準備する工程と、
少なくとも前記第2のスリーブの外周と前記ハブの円筒部の何れかに接着剤を塗布する工程と、
前記ハブの円筒部に前記第2のスリーブの外周を挿入する工程と、
少なくとも前記第2のスリーブと前記ハブの何れかに紫外線を照射する工程と、
少なくとも前記シャフトの前記第2の端部と前記ベース部材の孔部の何れかに接着剤を塗布する工程と、
前記シャフトの前記第2の端部を前記ベース部材の孔部に挿入する工程と、
前記接着剤中の揮発成分を低減する工程と、
前記ハブと前記ベース部材の導通を確認する工程と、
前記ハブを回転させながら前記ハブの載置部の軸方向振れを確認する工程と、
前記ハブの静止時と回転時とにおける前記ハブの載置部の軸方向高さの差を確認する工程と、
を含むことを特徴とするディスク駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−261580(P2010−261580A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209030(P2009−209030)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】