流体動圧軸受装置
【課題】流体動圧軸受装置の構成や組立手順を簡略化することを目的とする。
【解決手段】流体動圧軸受装置1を、軸受スリーブ8と、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材2と、プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブ8が圧入され、軸受スリーブ8の圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する段差部7dが形成されたハウジング7と、軸部材2の一端を接触支持するスラスト受け9と、ハウジング内部からの油漏れを防止するシール部10とで構成する。軸受スリーブ8の内周面に、軸部材2の外周面と軸受スリーブ8の内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧溝8a1を形成する。
【解決手段】流体動圧軸受装置1を、軸受スリーブ8と、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材2と、プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブ8が圧入され、軸受スリーブ8の圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する段差部7dが形成されたハウジング7と、軸部材2の一端を接触支持するスラスト受け9と、ハウジング内部からの油漏れを防止するシール部10とで構成する。軸受スリーブ8の内周面に、軸部材2の外周面と軸受スリーブ8の内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧溝8a1を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に形成される流体動圧で軸部材を回転自在に支持する流体動圧軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
【0003】
この種の流体動圧軸受装置は、図13に示すように、焼結金属製の軸受スリーブ108と、軸受108スリーブの内周に挿入され、軸受スリーブ108に対して相対回転する軸部材102と、軸受スリーブ108を収容するハウジング107とを備える。軸部材102としては、軸部102aの一端にフランジ部102bを有するものが使用される。軸部102aの外周面と軸受スリーブ108の内周面との間にラジアル軸受隙間が形成され、フランジ部102bの一方の端面102b1とこれに対向する軸受スリーブ108の端面108aとの間に第1のスラスト軸受隙間S1が形成され、フランジ部102bの他方の端面102b2とハウジング底部107cの内底面との間に第2のスラスト軸受隙間S2が形成される。軸部材102の回転時に、ラジアル軸受隙間、第1のスラスト軸受隙間S1、および第2のスラスト軸受隙間S2に満たされた潤滑油で動圧作用を生じさせ、軸部材102をラジアル方向および両スラスト方向に回転自在に支持する。ハウジング107の上端開口部はシール部材110でシールされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−83323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13に示す流体動圧軸受装置には以下の問題がある。
【0006】
二つのスラスト軸受隙間に数μm程度の精度が要求されるため、スラスト軸受隙間の隙間設定に際しては、各ユニットごとにハウジングに対する軸受スリーブや底部材の軸方向位置を微調整する必要がある。そのため、組立工程が煩雑化している。
【0007】
ハウジングは金属の削り出し品あるいは樹脂の成形品とすることが多いが、削り出し品では、ハウジングの剛性が高くなるため、ハウジング内周に軸受スリーブを圧入する際に、圧入代の周方向のばらつきが、軸受スリーブの内周面精度に影響を与える。これを回避するために、ハウジングの内周面や軸受スリーブの外周面を高精度化する必要があり、これらの部材の加工コストが高騰する。また、圧入に際しては、カジリ等を防止するためにハウジングと軸受スリーブとを精度良く芯合わせすることが必要となる。
【0008】
一方、樹脂成形品からなるハウジングでは、軸受スリーブの抜去力を確保するために、軸受スリーブを接着固定する必要がある。接着固定ではベーキング処理を必要とし、あるいは接着剤が固化するまで治具等で軸受スリーブとハウジングの位置関係を保持する必要があるため、接着工程が煩雑化し、高コスト化を招く。また、接着固定せずに、圧入だけで固定する場合、圧入代を大きく取る必要があり、金属の削り出し品と同様の問題が生じる。
【0009】
軸部材の一端にフランジ部が形成されているため、軸部材の他端側にフランジ状の他の部材(ハブ等)を取り付けた状態では軸受装置を組み立てる(軸受スリーブの内周に軸部材を挿入する)ことができない。そのため、組立時にはフランジ状の部材は取り外しておく必要があり、組立手順が制約を受ける。
【0010】
以上に列挙した理由から従来の流体動圧軸受装置は構成および組立工程が複雑化する傾向にある。従来から部品個々の低コスト化を図っているが、部品単体の低コスト化だけでは、飛躍的な低コスト化の実現には限界があり、軸受装置の構成や組立工程を抜本的に見直してこれらを簡略化することが望まれる。本発明は、従来の設計コンセプトを抜本的に改めることで、流体動圧軸受装置の構成や組立工程を大幅に簡略化し、延いては低コスト化を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流体軸受装置は、軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面のどちらか一方に形成され、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧発生部と、プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブが圧入され、軸受スリーブの圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する係合部が形成されたハウジングと、軸部材の一端を接触支持するスラスト受けとを有するものである。
【0012】
以上の構成によれば、ハウジング内に軸受スリーブを圧入し、軸受スリーブの端面がハウジングの係合部と係合するまで軸受スリーブを押し進めるだけで、ハウジングと軸受スリーブの軸方向相対位置が定まる。また、その後、軸受スリーブの内周に軸部材を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する。この際、スラスト軸受がいわゆるピボット軸受で構成されているので、スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブとハウジングの軸方向相対位置の許容寸法誤差が緩和される。さらに、プレス製ハウジングの剛性は低く、圧入後の内径方向への圧迫力が小さくなるため、ハウジングと軸受スリーブに多少の芯ずれがあっても圧入作業はスムーズに行える。以上から、組立作業性が格段に向上し、構成もシンプルなものとなる。
【0013】
また、プレス加工でハウジングを形成すれば、その加工コストが削り出しに比べて大幅に低下するので、部品コストを減じることもできる。
【0014】
このように、軸受装置の構成および組立工程が大幅に簡略化され、しかも部品コストの低減化も達成されるので、軸受装置全体を低コスト化することができる。
【0015】
上記のとおりプレス製ハウジングの剛性は低いため、圧入後に軸受スリーブがハウジングから受ける内径方向の圧迫力も削り出し品に比べて小さくなる。そのため、圧入に伴う軸受スリーブ内周面の変形を抑制することができ、ラジアル軸受隙間に面するラジアル動圧発生領域の変形による精度低下を回避することができる。また、軸部材の一端にフランジ部を装着する必要がないので、軸部材の他端にロータ等の他のフランジ状部材を取付けたままでも軸受装置を組み立てることができるというメリットも得られる。
【0016】
この流体動圧軸受装置においては、ハウジングに、大径部と、小径部と、大径部と小径部を接続する段差部とを設け、段差部で前記係合部を構成することができる。
【0017】
また、この流体動圧軸受装置においては、ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ底部に別体のスラスト受けを配置することができる。この場合、ハウジングの底部に、スラスト受けの回り止めを設けるのが好ましい。
【0018】
あるいは、ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ前記スラスト受けを底部と一体にすることができる。この場合、ハウジング底部の軸部材との接触部分に表面処理を施すのが好ましい。
【0019】
また、この流体動圧軸受装置においては、軸受スリーブの外周とハウジングの内周との間の圧入部を、円周方向で間欠的に設けることができる。具体的には、ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を断面多角形に形成し、あるいはハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に、突起を設ける。前者の構成においては、ハウジングの少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を均一肉厚に形成してもよい。ハウジングの外周面を断面真円状に形成してもよい。
【0020】
以上に述べた流体動圧軸受装置においては、プレス加工したハウジングに焼なましを施すのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上に示すように、本発明は、従来の設計コンセプトと異なる、軸受装置の構成や組立工程を簡略化する新たな設計コンセプトを提供するものである。具体的には、
・ハウジングの内周に軸受スリーブを圧入し、軸受スリーブの端面がハウジングの係合部と係合するまで軸受スリーブを押し進めるだけで、ハウジングと軸受スリーブの軸方向相対位置が定まる:
・スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブの圧入後、軸受スリーブの内周に軸部材を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する:
・ハウジングと軸受スリーブに多少の芯ずれがあっても圧入作業をスムーズに行えるため、圧入時におけるハウジングと軸受スリーブの芯合わせもラフなもので足りる:
といった作用効果を得ることができ、これにより軸受装置の構成や組立工程の大幅な簡略化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】流体動圧軸受装置を組み込んだポリゴンスキャナモータの主要部を示す断面図である。
【図2】軸部材を挿入する前の流体動圧軸受装置を示す断面図である。
【図3】図2に示す流体動圧軸受装置の横断面図およびその一部拡大図である。
【図4】スラスト受けに回り止めを設けた実施形態を示す図で、(a)図は流体動圧軸受装置の横断面図、(b)図は(a)図中のA−A線断面図である。
【図5】スラスト受けに回り止めを設けた実施形態を示す図で、(a)図は流体動圧軸受装置の横断面図、(b)図は(a)図中のA−A線断面図である。
【図6】ハウジング形状の他例を示す図で、流体動圧軸受装置の横断面図およびその一部拡大図である。
【図7】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、底部をハウジング小径部と別体にした実施形態を示す断面図である。
【図8】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、ハウジングの開口をシール部でシールした実施形態を示す断面図である。
【図9】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、ハウジングの開口をシール部でシールした実施形態を示す断面図である。
【図10】焼なまし(アニール)の有無による軸受スリーブ内周面の変形量の測定結果を示す図である。
【図11】焼なまし(アニール)の有無による軸受スリーブ内周面の変形量の測定結果を示す図である。
【図12】ハウジング形状の他例を示す図で、流体動圧軸受装置の横断面図である。
【図13】従来の流体動圧軸受装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に、情報機器用スピンドルモータの一例として、レーザビームプリンタ(LBP)に装備されるポリゴンミラースピンドルモータの主要部を示す。このモータは、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の軸部材2の上端に固定されたロータ3と、ロータ3に取り付けたポリゴンミラー4と、ベースとしての回路基板5とを有する。ロータ3に取り付けたロータマグネット(図示省略)と、回路基板5に取り付けたステータコイル(図示省略)との間の電磁力でロータマグネットが回転し、それによって、ロータ3およびポリゴンミラー4が軸部材2と一体に回転する。ロータマグネットとステータコイルとの間で軸方向の磁気バイアスを作用させることによって、軸部材2に下方に向けて軸方向の押し付け力が作用している。
【0025】
流体軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7の内周に固定された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング内部に配置されたスラスト受け9とを備える。
【0026】
ハウジング7は、鋼板(例えばSUS305等のステンレス鋼板)をプレス加工、例えば深絞り加工することで形成される。図示例のハウジング7は、上側の大径部7aと下側の小径部7bとを一体に有する有底の概略円筒形状に形成されたもので、全体で実質的に均一な肉厚を有する。図示例において、小径部7bは、ハウジングの一端を閉鎖する底部7cを一体に有し、大径部7aと小径部7bをつなぐ段差部7dは断面S字形状になっている。段差部7dは、後述のように軸受スリーブ8の圧入方向側に位置する端面(下端面)と係合する係合部として機能する。ハウジング7の大径部7aは、図3に示すように内周面と外周面の双方が円周方向等間隔に角部を有する断面多角形状(図面では正20角形)に形成される(多角形部分)。小径部7bは内・外周面とも断面真円となる円筒状に形成される。大径部7aの多角形部分は、少なくとも軸受スリーブ8の外周面と対向する領域aに形成されていればよく、領域aを除く大径部7aは、内・外周面が断面真円状の円筒形状に形成しても構わない。ハウジング7の開口端(大径部7aの開口端)は、ハウジング開口側の軸受スリーブ8の端面よりもハウジング開口側に突出した位置にある。ハウジング7の素材としては精度良くプレス加工を行える限り任意の材料を選択することができ、ステンレス鋼以外の他の金属板、例えば黄銅等を使用することもできる。
【0027】
小径部7bの外周面には回路基板5が接着等の手段で固定されている。この際、段差部7dを平坦面とし、この平坦な段差部7dに回路基板5の表面を面接触させて固定しても良いが(図示省略)、図1に示すように、断面S字状の段差部7dの外径側の湾曲点で回路基板5を段差部7dに環状に線接触させれば、両面間のガタの影響を回避し、ハウジング7と回路基板5との間で良好な直角度を容易に得ることができる。
【0028】
軸受スリーブ8は、例えば銅もしくは鉄を主成分とする焼結金属の多孔質体で、圧粉成形→焼結→サイジングの各工程を経て円筒状に形成される。サイジング後の軸受スリーブ8には潤滑油が含浸され、内部空孔に潤滑油が満たされる。軸受スリーブは、焼結金属以外にも、例えば黄銅等の軟質金属材料や、焼結金属ではない他の多孔質体(例えば、多孔質樹脂)で形成することも可能である。
【0029】
軸受スリーブ8の内周面8aには、図2に示すように、動圧発生部としての複数の動圧溝8a1をヘリングボーン形状に配列した二つのラジアル動圧発生領域N1、N2が上下に離隔して形成される。各ラジアル動圧発生領域N1、N2には、動圧溝8a1の他、動圧溝8a1を円周方向に区画する背の部分8a2と、環状の平滑部8a3とが形成される。平滑部8a3を中心として、軸方向両側に動圧溝8a1と背の部分8a2が対称に形成されている。背の部分8a2と平滑部8a3とは同一レベルの凸状をなし、軸受スリーブ8の内周面8aのこれ以外の領域(動圧溝8a1を含む)は、同一レベルの凹状に形成される。図示例においては、上下のラジアル動圧発生領域N1、N2の長さが等しくなっている。このラジアル動圧発生領域N1、N2は、焼結金属からなる軸受スリーブ8のサイジング工程において、外周面にラジアル動圧発生領域N1、N2の形状に対応する成形型を形成したコアロッドを軸受スリーブ8の内周に挿入し、両端面をパンチで拘束した状態で軸受スリーブ8をダイに圧入し、軸受スリーブ8の内周面をコアロッド外周面に押し付け、成形型の形状を軸受スリーブ8の内周面に転写することで成形される。
【0030】
軸部材2は、先端に球面部2aを有する軸状をなし、例えばステンレス鋼で形成される。軸部材2の球面部2aをハウジング底部7cの内底面に配置したスラスト受け9と接触させることで、ピボット軸受として機能するスラスト軸受部Sが構成される。スラスト受け9は、低摩擦でかつ耐摩耗性に優れる材料、例えば樹脂で形成され、ハウジング底部7cの内底面に配置されている。ハウジング底部7cの表面のうち、軸部材2との摺動部分に低摩擦で耐摩耗性に富む被膜(例えば樹脂被膜や硬質被膜など)を形成することで、スラスト受け9を省略してもよい。この場合、底部7cがスラスト受け9として機能する。
【0031】
この流体軸受装置1の組立に際しては、先ずハウジング7の底部7cにスラスト受け9を配置する。次いで、軸受スリーブ8をハウジング7の大径部7aの内周に圧入し、軸受スリーブ8の圧入方向側の端面(下端面)が段差部7d(係合部)と当接するまで軸受スリーブ8を押し進める。この時、必要に応じてハウジング大径部7aの内周面や軸受スリーブ8の外周面に接着剤を塗布した上で圧入作業を行うと、ハウジング7と軸受スリーブ8をより強固に固定することができる。軸受スリーブ8の圧入後は、図3に拡大して示すように、ハウジング大径部7aの角部内周と軸受スリーブ8の外周面との間に軸方向の隙間Pが形成される。これにより、図2に示す軸受アセンブリが得られる。
【0032】
図2に示す状態から、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入し、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間に潤滑油を注油することで、図1に示す流体軸受装置1が完成する。軸部材2の挿入に伴ってハウジング7の底部7c側に押し込まれた空気は、主にハウジング大径部7aの内周面と軸受スリーブ8の外周面との間の隙間Pを通ってハウジング7外に放出される。
【0033】
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面のラジアル動圧発生領域N1,N2と軸部材2の外周面との間のラジアル軸受隙間に、動圧溝8a1の動圧作用によって圧力を高められた油膜が形成される。この油膜により軸方向の二箇所に軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が形成される。軸部材2に負荷される下向きのスラスト荷重はスラスト軸受部Sで接触支持される。
【0034】
本発明によれば、軸受装置の組立工程において、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8を圧入し、軸受スリーブ8の端面がハウジング7の段差部7dと係合するまで軸受スリーブ8を押し進めるだけで、ハウジング7と軸受スリーブ8の軸方向相対位置が定まる。加えて、スラスト軸受部Sとしてピボット軸受を採用しているので、スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブ8の圧入後、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する。また、プレス製ハウジング7の剛性は低く、ハウジング7と軸受スリーブ8に多少の芯ずれがあっても圧入作業をスムーズに行えるため、圧入時におけるハウジング7と軸受スリーブ8の芯合わせもラフなもので足りる。よって、本発明により、流体軸受装置の構成や組立工程を簡素化することができる。
【0035】
また、ハウジング7をプレス加工で形成するので、加工コストを削り出し品に比べて大幅に低下させることができる。従って、流体軸受装置の構成や組立工程の簡略化だけでなく、部品コストの低減によっても軸受装置全体の低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、本発明によれば、図13に示す軸受装置で必須となる、軸部材2の一端のフランジ部が不要となるので、軸部材2の上端にロータ3を取付けたままでも軸受装置を組み立てることができる。図13に示す流体動圧軸受装置では、軸受装置全体を組み立ててから軸部材の上端に他のフランジ状の部材(ハブ等)を取付けざるを得ず、この取付け時の圧入荷重が下側のスラスト軸受部S2のスラスト軸受面に負荷され、スラスト軸受面の変形を生じるおそれがある。これに対し、本願発明では、ロータ3を上端に圧入固定してからでも軸部材2を軸受装置に組み付けることができ、この種の不具合を回避することができる。
【0037】
さらに、本発明によれば、ハウジングをプレス加工品とすることで、その剛性を低下させているので、ハウジング7への圧入後に軸受スリーブ8が受ける内径方向の圧迫力を削り出し品に比べて小さくすることができる。そのため、圧入に伴う軸受スリーブ内周面の変形を抑制することができ、圧入によるラジアル動圧発生領域N1、N2の精度低下を回避することができる。また、仮にハウジング7の内周面の精度が悪くても、ラジアル動圧発生領域N1、N2に及ぶ影響は最小限となるので、精度の出しにくいプレス加工品のハウジングも後加工を行うことなく、そのまま使用することが可能となる。また、スラスト軸受部Sとしてピボット軸受を使用しているので、モータの停止後、再起動時の起動トルクを小さくすることもできる。
【0038】
特に本発明では、ハウジング7の大径部7aを多角形状とすることで、軸受スリーブ8の外周とハウジング8の内周との間の圧入部を円周方向で間欠的に設けてある。そのため、ハウジング7内周への圧入後に軸受スリーブ8に作用する内径方向の圧迫力をさらに小さくすることができ、軸受スリーブ8の内周面の変形をより一層防止することができる。かかる効果は、図12に示すように、ハウジング7の大径部7aの内周面のうち、軸受スリーブ8の外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に突起11を設け、この突起11を弾性変形させながら軸受スリーブ8をハウジング大径部7aに圧入することによっても得ることができる。
【0039】
図3では、ハウジング大径部7aの内周面および外周面の双方を断面多角形状とし、円周方向の肉厚を均一にした場合を例示している。これに対し、図6に示すように、ハウジング大径部7aの内周面を断面多角形とする一方で、外周面を断面真円状に形成して多角形部分を形成してもよい。この構成であれば、ハウジング7の外周面全体が真円状となるので、ハウジング7をモータの円筒状ブラケットの内周に嵌合し、固定する場合において、取付け精度を向上させ、モータの回転精度を高めることができる。
【0040】
図1の構成では、図13に示す従来構成と異なり、ハウジング7の開口側をシール部材(図13の符号110)でシールせず、軸受スリーブ8の端面をハウジング7の開口側に露出させている。また、ハウジング7の内部空間を全て潤滑油で満たすのではなく、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間だけを潤滑油で満たすようにしている。そのため、シール部材や油面位置の管理工程を省略することができ、更なる低コスト化を図ることができる。この場合、ハウジング7外への油漏れを防止するため、図1に破線で示すように、軸受スリーブ8の外部において軸部材2の外周面に撥油性の被膜12を形成しておくのが望ましい。撥油性の被膜12の軸方向位置は、例えばハウジング7の開口端付近とする。
【0041】
スラスト受け9には回り止めを設けるのが望ましい。図4および図5は回り止めの一例を示すもので、円盤状のスラスト受け9の一部を切欠いて平坦面9aを形成すると共に、ハウジング7のプレス時に、小径部7bの底部7cにスラスト受け9の形状に適合する凹部7c1を設け、この凹部7c1にスラスト受け9を収容したものである。かかる構成であれば、スラスト受け9の平坦面9aと凹部7c1の直線状周面とが円周方向で係合するため、スラスト受けの回り止めが行われる。図4は平坦面9aを一箇所に設けた例であり、図5は平坦面9aを対向二箇所に設けた例である。
【0042】
図1では、ハウジング底部7cを小径部7bと一体にした場合を例示したが、図7に示すように、両者を別体に構成することもできる。この場合、底部7cがスラスト受け9として機能する。底部7cは、例えば小径部7bの下端をかしめることでハウジング7に固定される。底部7c自体を低摩擦で耐摩耗性に富む材料(例えば樹脂)で形成してもよいし、底部7cを金属製とし、その表面の軸部材2との摺動部分に低摩擦で耐摩耗性に富む被膜(例えば樹脂被膜や硬質被膜など)を形成してもよい。
【0043】
図1に示す実施形態ではシール部材を省略した場合を例示しているが、図8に示すように、ハウジング7の開口側をシール部材10でシールしてもよい。シール部材10は、例えば、黄銅等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料で円環状に形成され、端面を軸受スリーブ8の上端面から離隔させた状態で、ハウジング7の大径部7aの上端部に固定されている。シール部材10の内周面は軸部材2の外周面に近接して非接触シール(ラビリンスシール)を構成する。シール部材10の形状や構成は任意で、例えば図9に示すように、軸受スリーブ8の端面に当接する円筒状の脚部10aと、脚部10aの上端から内径側に突出する突出部10bと一体に有する断面L字型に形成することもできる。
【0044】
以上のシール部材10を使用する構成においては、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間のみに潤滑油を介在させる他、該隙間に加えてスラスト軸受部Sの周辺空間や隙間Pを含むハウジング7の全ての内部空間を潤滑油で満たすいわゆるフル含油の構成を採用することもできる。このフル含油の構成では、通常、油面はシール部材10の内周面に存在する。
【0045】
プレス成形後のハウジング7には、熱処理として焼なまし(アニール)を施すのが望ましい。具体的には、ハウジング7を1050℃に加熱し、これを一定時間(20分程度)保持した後、徐冷する。これにより、軸受スリーブ8の圧入後におけるハウジング7からの内径方向の圧迫力が減じられるため、軸受スリーブ8の内周面の変形をより一層抑制することができる。
【0046】
図10はハウジング7の焼なましの有無による軸受スリーブ8の内周面の収縮量の測定結果を示すものである。軸受スリーブ8の寸法はφ4(内径)×φ7.5(外径)×7.3(長さ)であり、ハウジング7はSUS305製の肉厚0.2mmとし、圧入代(ハウジング7の内接円径と軸受スリーブ8の外径との差)は12μmとした。図10の測定結果は、ハウジング内周面を20角形とすると共に、ハウジング外周面を真円形状としたもの(図6)を表し、図11の測定結果は内・外周面双方を20角形としたもの(図3)の測定結果を表す。なお、両図において、"Top"は上側のラジアル動圧発生領域N1での変形量を表し、"Bottom"は下側のラジアル動圧発生領域N2での変形量を表す。内外周面双方を20角形とした図11の測定結果において、「アニールなし」のプロット点は平均値を表す。
【0047】
両図からも明らかなように、「アニール有り」ではラジアル動圧発生領域N1、N2の内径収縮量が「アニールなし」に比べて小さくなっている。従って、ハウジングに焼なまし処理を行うことにより、ラジアル動圧発生領域N1、N2の変形をより確実に防止でき、より高い軸受性能が得られることが理解できる。
【0048】
なお、ラジアル動圧発生領域N1、N2は、軸受スリーブ8の外周面だけではなく、軸部材2の外周面に形成することもできる。また、ラジアル動圧発生領域N1、N2の形状としては、へリングボーン形状の他、スパイラル形状等の公知の形状を使用することができる。さらに、実施形態として、軸部材2を回転させる場合を例示したが、本発明の構成は、軸部材2を固定軸とし、ハウジング7および軸受スリーブ8を回転側とする場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 流体軸受装置
2 軸部材
3 ロータ
4 ポリゴンミラー
5 回路基板
7 ハウジング
7a 大径部
7b 小径部
7c 底部
7d 段差部
8 軸受スリーブ
8a1 動圧溝(動圧発生部)
9 スラスト受け
10 シール部材
N1 ラジアル動圧発生領域(上側)
N2 ラジアル動圧発生領域(下側)
P 隙間
S スラスト軸受部
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に形成される流体動圧で軸部材を回転自在に支持する流体動圧軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
【0003】
この種の流体動圧軸受装置は、図13に示すように、焼結金属製の軸受スリーブ108と、軸受108スリーブの内周に挿入され、軸受スリーブ108に対して相対回転する軸部材102と、軸受スリーブ108を収容するハウジング107とを備える。軸部材102としては、軸部102aの一端にフランジ部102bを有するものが使用される。軸部102aの外周面と軸受スリーブ108の内周面との間にラジアル軸受隙間が形成され、フランジ部102bの一方の端面102b1とこれに対向する軸受スリーブ108の端面108aとの間に第1のスラスト軸受隙間S1が形成され、フランジ部102bの他方の端面102b2とハウジング底部107cの内底面との間に第2のスラスト軸受隙間S2が形成される。軸部材102の回転時に、ラジアル軸受隙間、第1のスラスト軸受隙間S1、および第2のスラスト軸受隙間S2に満たされた潤滑油で動圧作用を生じさせ、軸部材102をラジアル方向および両スラスト方向に回転自在に支持する。ハウジング107の上端開口部はシール部材110でシールされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−83323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13に示す流体動圧軸受装置には以下の問題がある。
【0006】
二つのスラスト軸受隙間に数μm程度の精度が要求されるため、スラスト軸受隙間の隙間設定に際しては、各ユニットごとにハウジングに対する軸受スリーブや底部材の軸方向位置を微調整する必要がある。そのため、組立工程が煩雑化している。
【0007】
ハウジングは金属の削り出し品あるいは樹脂の成形品とすることが多いが、削り出し品では、ハウジングの剛性が高くなるため、ハウジング内周に軸受スリーブを圧入する際に、圧入代の周方向のばらつきが、軸受スリーブの内周面精度に影響を与える。これを回避するために、ハウジングの内周面や軸受スリーブの外周面を高精度化する必要があり、これらの部材の加工コストが高騰する。また、圧入に際しては、カジリ等を防止するためにハウジングと軸受スリーブとを精度良く芯合わせすることが必要となる。
【0008】
一方、樹脂成形品からなるハウジングでは、軸受スリーブの抜去力を確保するために、軸受スリーブを接着固定する必要がある。接着固定ではベーキング処理を必要とし、あるいは接着剤が固化するまで治具等で軸受スリーブとハウジングの位置関係を保持する必要があるため、接着工程が煩雑化し、高コスト化を招く。また、接着固定せずに、圧入だけで固定する場合、圧入代を大きく取る必要があり、金属の削り出し品と同様の問題が生じる。
【0009】
軸部材の一端にフランジ部が形成されているため、軸部材の他端側にフランジ状の他の部材(ハブ等)を取り付けた状態では軸受装置を組み立てる(軸受スリーブの内周に軸部材を挿入する)ことができない。そのため、組立時にはフランジ状の部材は取り外しておく必要があり、組立手順が制約を受ける。
【0010】
以上に列挙した理由から従来の流体動圧軸受装置は構成および組立工程が複雑化する傾向にある。従来から部品個々の低コスト化を図っているが、部品単体の低コスト化だけでは、飛躍的な低コスト化の実現には限界があり、軸受装置の構成や組立工程を抜本的に見直してこれらを簡略化することが望まれる。本発明は、従来の設計コンセプトを抜本的に改めることで、流体動圧軸受装置の構成や組立工程を大幅に簡略化し、延いては低コスト化を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流体軸受装置は、軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面のどちらか一方に形成され、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧発生部と、プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブが圧入され、軸受スリーブの圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する係合部が形成されたハウジングと、軸部材の一端を接触支持するスラスト受けとを有するものである。
【0012】
以上の構成によれば、ハウジング内に軸受スリーブを圧入し、軸受スリーブの端面がハウジングの係合部と係合するまで軸受スリーブを押し進めるだけで、ハウジングと軸受スリーブの軸方向相対位置が定まる。また、その後、軸受スリーブの内周に軸部材を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する。この際、スラスト軸受がいわゆるピボット軸受で構成されているので、スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブとハウジングの軸方向相対位置の許容寸法誤差が緩和される。さらに、プレス製ハウジングの剛性は低く、圧入後の内径方向への圧迫力が小さくなるため、ハウジングと軸受スリーブに多少の芯ずれがあっても圧入作業はスムーズに行える。以上から、組立作業性が格段に向上し、構成もシンプルなものとなる。
【0013】
また、プレス加工でハウジングを形成すれば、その加工コストが削り出しに比べて大幅に低下するので、部品コストを減じることもできる。
【0014】
このように、軸受装置の構成および組立工程が大幅に簡略化され、しかも部品コストの低減化も達成されるので、軸受装置全体を低コスト化することができる。
【0015】
上記のとおりプレス製ハウジングの剛性は低いため、圧入後に軸受スリーブがハウジングから受ける内径方向の圧迫力も削り出し品に比べて小さくなる。そのため、圧入に伴う軸受スリーブ内周面の変形を抑制することができ、ラジアル軸受隙間に面するラジアル動圧発生領域の変形による精度低下を回避することができる。また、軸部材の一端にフランジ部を装着する必要がないので、軸部材の他端にロータ等の他のフランジ状部材を取付けたままでも軸受装置を組み立てることができるというメリットも得られる。
【0016】
この流体動圧軸受装置においては、ハウジングに、大径部と、小径部と、大径部と小径部を接続する段差部とを設け、段差部で前記係合部を構成することができる。
【0017】
また、この流体動圧軸受装置においては、ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ底部に別体のスラスト受けを配置することができる。この場合、ハウジングの底部に、スラスト受けの回り止めを設けるのが好ましい。
【0018】
あるいは、ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ前記スラスト受けを底部と一体にすることができる。この場合、ハウジング底部の軸部材との接触部分に表面処理を施すのが好ましい。
【0019】
また、この流体動圧軸受装置においては、軸受スリーブの外周とハウジングの内周との間の圧入部を、円周方向で間欠的に設けることができる。具体的には、ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を断面多角形に形成し、あるいはハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に、突起を設ける。前者の構成においては、ハウジングの少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を均一肉厚に形成してもよい。ハウジングの外周面を断面真円状に形成してもよい。
【0020】
以上に述べた流体動圧軸受装置においては、プレス加工したハウジングに焼なましを施すのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上に示すように、本発明は、従来の設計コンセプトと異なる、軸受装置の構成や組立工程を簡略化する新たな設計コンセプトを提供するものである。具体的には、
・ハウジングの内周に軸受スリーブを圧入し、軸受スリーブの端面がハウジングの係合部と係合するまで軸受スリーブを押し進めるだけで、ハウジングと軸受スリーブの軸方向相対位置が定まる:
・スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブの圧入後、軸受スリーブの内周に軸部材を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する:
・ハウジングと軸受スリーブに多少の芯ずれがあっても圧入作業をスムーズに行えるため、圧入時におけるハウジングと軸受スリーブの芯合わせもラフなもので足りる:
といった作用効果を得ることができ、これにより軸受装置の構成や組立工程の大幅な簡略化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】流体動圧軸受装置を組み込んだポリゴンスキャナモータの主要部を示す断面図である。
【図2】軸部材を挿入する前の流体動圧軸受装置を示す断面図である。
【図3】図2に示す流体動圧軸受装置の横断面図およびその一部拡大図である。
【図4】スラスト受けに回り止めを設けた実施形態を示す図で、(a)図は流体動圧軸受装置の横断面図、(b)図は(a)図中のA−A線断面図である。
【図5】スラスト受けに回り止めを設けた実施形態を示す図で、(a)図は流体動圧軸受装置の横断面図、(b)図は(a)図中のA−A線断面図である。
【図6】ハウジング形状の他例を示す図で、流体動圧軸受装置の横断面図およびその一部拡大図である。
【図7】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、底部をハウジング小径部と別体にした実施形態を示す断面図である。
【図8】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、ハウジングの開口をシール部でシールした実施形態を示す断面図である。
【図9】流体軸受装置の他の実施形態を示す図で、ハウジングの開口をシール部でシールした実施形態を示す断面図である。
【図10】焼なまし(アニール)の有無による軸受スリーブ内周面の変形量の測定結果を示す図である。
【図11】焼なまし(アニール)の有無による軸受スリーブ内周面の変形量の測定結果を示す図である。
【図12】ハウジング形状の他例を示す図で、流体動圧軸受装置の横断面図である。
【図13】従来の流体動圧軸受装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に、情報機器用スピンドルモータの一例として、レーザビームプリンタ(LBP)に装備されるポリゴンミラースピンドルモータの主要部を示す。このモータは、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の軸部材2の上端に固定されたロータ3と、ロータ3に取り付けたポリゴンミラー4と、ベースとしての回路基板5とを有する。ロータ3に取り付けたロータマグネット(図示省略)と、回路基板5に取り付けたステータコイル(図示省略)との間の電磁力でロータマグネットが回転し、それによって、ロータ3およびポリゴンミラー4が軸部材2と一体に回転する。ロータマグネットとステータコイルとの間で軸方向の磁気バイアスを作用させることによって、軸部材2に下方に向けて軸方向の押し付け力が作用している。
【0025】
流体軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7の内周に固定された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング内部に配置されたスラスト受け9とを備える。
【0026】
ハウジング7は、鋼板(例えばSUS305等のステンレス鋼板)をプレス加工、例えば深絞り加工することで形成される。図示例のハウジング7は、上側の大径部7aと下側の小径部7bとを一体に有する有底の概略円筒形状に形成されたもので、全体で実質的に均一な肉厚を有する。図示例において、小径部7bは、ハウジングの一端を閉鎖する底部7cを一体に有し、大径部7aと小径部7bをつなぐ段差部7dは断面S字形状になっている。段差部7dは、後述のように軸受スリーブ8の圧入方向側に位置する端面(下端面)と係合する係合部として機能する。ハウジング7の大径部7aは、図3に示すように内周面と外周面の双方が円周方向等間隔に角部を有する断面多角形状(図面では正20角形)に形成される(多角形部分)。小径部7bは内・外周面とも断面真円となる円筒状に形成される。大径部7aの多角形部分は、少なくとも軸受スリーブ8の外周面と対向する領域aに形成されていればよく、領域aを除く大径部7aは、内・外周面が断面真円状の円筒形状に形成しても構わない。ハウジング7の開口端(大径部7aの開口端)は、ハウジング開口側の軸受スリーブ8の端面よりもハウジング開口側に突出した位置にある。ハウジング7の素材としては精度良くプレス加工を行える限り任意の材料を選択することができ、ステンレス鋼以外の他の金属板、例えば黄銅等を使用することもできる。
【0027】
小径部7bの外周面には回路基板5が接着等の手段で固定されている。この際、段差部7dを平坦面とし、この平坦な段差部7dに回路基板5の表面を面接触させて固定しても良いが(図示省略)、図1に示すように、断面S字状の段差部7dの外径側の湾曲点で回路基板5を段差部7dに環状に線接触させれば、両面間のガタの影響を回避し、ハウジング7と回路基板5との間で良好な直角度を容易に得ることができる。
【0028】
軸受スリーブ8は、例えば銅もしくは鉄を主成分とする焼結金属の多孔質体で、圧粉成形→焼結→サイジングの各工程を経て円筒状に形成される。サイジング後の軸受スリーブ8には潤滑油が含浸され、内部空孔に潤滑油が満たされる。軸受スリーブは、焼結金属以外にも、例えば黄銅等の軟質金属材料や、焼結金属ではない他の多孔質体(例えば、多孔質樹脂)で形成することも可能である。
【0029】
軸受スリーブ8の内周面8aには、図2に示すように、動圧発生部としての複数の動圧溝8a1をヘリングボーン形状に配列した二つのラジアル動圧発生領域N1、N2が上下に離隔して形成される。各ラジアル動圧発生領域N1、N2には、動圧溝8a1の他、動圧溝8a1を円周方向に区画する背の部分8a2と、環状の平滑部8a3とが形成される。平滑部8a3を中心として、軸方向両側に動圧溝8a1と背の部分8a2が対称に形成されている。背の部分8a2と平滑部8a3とは同一レベルの凸状をなし、軸受スリーブ8の内周面8aのこれ以外の領域(動圧溝8a1を含む)は、同一レベルの凹状に形成される。図示例においては、上下のラジアル動圧発生領域N1、N2の長さが等しくなっている。このラジアル動圧発生領域N1、N2は、焼結金属からなる軸受スリーブ8のサイジング工程において、外周面にラジアル動圧発生領域N1、N2の形状に対応する成形型を形成したコアロッドを軸受スリーブ8の内周に挿入し、両端面をパンチで拘束した状態で軸受スリーブ8をダイに圧入し、軸受スリーブ8の内周面をコアロッド外周面に押し付け、成形型の形状を軸受スリーブ8の内周面に転写することで成形される。
【0030】
軸部材2は、先端に球面部2aを有する軸状をなし、例えばステンレス鋼で形成される。軸部材2の球面部2aをハウジング底部7cの内底面に配置したスラスト受け9と接触させることで、ピボット軸受として機能するスラスト軸受部Sが構成される。スラスト受け9は、低摩擦でかつ耐摩耗性に優れる材料、例えば樹脂で形成され、ハウジング底部7cの内底面に配置されている。ハウジング底部7cの表面のうち、軸部材2との摺動部分に低摩擦で耐摩耗性に富む被膜(例えば樹脂被膜や硬質被膜など)を形成することで、スラスト受け9を省略してもよい。この場合、底部7cがスラスト受け9として機能する。
【0031】
この流体軸受装置1の組立に際しては、先ずハウジング7の底部7cにスラスト受け9を配置する。次いで、軸受スリーブ8をハウジング7の大径部7aの内周に圧入し、軸受スリーブ8の圧入方向側の端面(下端面)が段差部7d(係合部)と当接するまで軸受スリーブ8を押し進める。この時、必要に応じてハウジング大径部7aの内周面や軸受スリーブ8の外周面に接着剤を塗布した上で圧入作業を行うと、ハウジング7と軸受スリーブ8をより強固に固定することができる。軸受スリーブ8の圧入後は、図3に拡大して示すように、ハウジング大径部7aの角部内周と軸受スリーブ8の外周面との間に軸方向の隙間Pが形成される。これにより、図2に示す軸受アセンブリが得られる。
【0032】
図2に示す状態から、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入し、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間に潤滑油を注油することで、図1に示す流体軸受装置1が完成する。軸部材2の挿入に伴ってハウジング7の底部7c側に押し込まれた空気は、主にハウジング大径部7aの内周面と軸受スリーブ8の外周面との間の隙間Pを通ってハウジング7外に放出される。
【0033】
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面のラジアル動圧発生領域N1,N2と軸部材2の外周面との間のラジアル軸受隙間に、動圧溝8a1の動圧作用によって圧力を高められた油膜が形成される。この油膜により軸方向の二箇所に軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が形成される。軸部材2に負荷される下向きのスラスト荷重はスラスト軸受部Sで接触支持される。
【0034】
本発明によれば、軸受装置の組立工程において、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8を圧入し、軸受スリーブ8の端面がハウジング7の段差部7dと係合するまで軸受スリーブ8を押し進めるだけで、ハウジング7と軸受スリーブ8の軸方向相対位置が定まる。加えて、スラスト軸受部Sとしてピボット軸受を採用しているので、スラスト軸受隙間の隙間出し作業が不要であり、軸受スリーブ8の圧入後、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入するだけで、軸受装置の基本構成が完成する。また、プレス製ハウジング7の剛性は低く、ハウジング7と軸受スリーブ8に多少の芯ずれがあっても圧入作業をスムーズに行えるため、圧入時におけるハウジング7と軸受スリーブ8の芯合わせもラフなもので足りる。よって、本発明により、流体軸受装置の構成や組立工程を簡素化することができる。
【0035】
また、ハウジング7をプレス加工で形成するので、加工コストを削り出し品に比べて大幅に低下させることができる。従って、流体軸受装置の構成や組立工程の簡略化だけでなく、部品コストの低減によっても軸受装置全体の低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、本発明によれば、図13に示す軸受装置で必須となる、軸部材2の一端のフランジ部が不要となるので、軸部材2の上端にロータ3を取付けたままでも軸受装置を組み立てることができる。図13に示す流体動圧軸受装置では、軸受装置全体を組み立ててから軸部材の上端に他のフランジ状の部材(ハブ等)を取付けざるを得ず、この取付け時の圧入荷重が下側のスラスト軸受部S2のスラスト軸受面に負荷され、スラスト軸受面の変形を生じるおそれがある。これに対し、本願発明では、ロータ3を上端に圧入固定してからでも軸部材2を軸受装置に組み付けることができ、この種の不具合を回避することができる。
【0037】
さらに、本発明によれば、ハウジングをプレス加工品とすることで、その剛性を低下させているので、ハウジング7への圧入後に軸受スリーブ8が受ける内径方向の圧迫力を削り出し品に比べて小さくすることができる。そのため、圧入に伴う軸受スリーブ内周面の変形を抑制することができ、圧入によるラジアル動圧発生領域N1、N2の精度低下を回避することができる。また、仮にハウジング7の内周面の精度が悪くても、ラジアル動圧発生領域N1、N2に及ぶ影響は最小限となるので、精度の出しにくいプレス加工品のハウジングも後加工を行うことなく、そのまま使用することが可能となる。また、スラスト軸受部Sとしてピボット軸受を使用しているので、モータの停止後、再起動時の起動トルクを小さくすることもできる。
【0038】
特に本発明では、ハウジング7の大径部7aを多角形状とすることで、軸受スリーブ8の外周とハウジング8の内周との間の圧入部を円周方向で間欠的に設けてある。そのため、ハウジング7内周への圧入後に軸受スリーブ8に作用する内径方向の圧迫力をさらに小さくすることができ、軸受スリーブ8の内周面の変形をより一層防止することができる。かかる効果は、図12に示すように、ハウジング7の大径部7aの内周面のうち、軸受スリーブ8の外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に突起11を設け、この突起11を弾性変形させながら軸受スリーブ8をハウジング大径部7aに圧入することによっても得ることができる。
【0039】
図3では、ハウジング大径部7aの内周面および外周面の双方を断面多角形状とし、円周方向の肉厚を均一にした場合を例示している。これに対し、図6に示すように、ハウジング大径部7aの内周面を断面多角形とする一方で、外周面を断面真円状に形成して多角形部分を形成してもよい。この構成であれば、ハウジング7の外周面全体が真円状となるので、ハウジング7をモータの円筒状ブラケットの内周に嵌合し、固定する場合において、取付け精度を向上させ、モータの回転精度を高めることができる。
【0040】
図1の構成では、図13に示す従来構成と異なり、ハウジング7の開口側をシール部材(図13の符号110)でシールせず、軸受スリーブ8の端面をハウジング7の開口側に露出させている。また、ハウジング7の内部空間を全て潤滑油で満たすのではなく、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間だけを潤滑油で満たすようにしている。そのため、シール部材や油面位置の管理工程を省略することができ、更なる低コスト化を図ることができる。この場合、ハウジング7外への油漏れを防止するため、図1に破線で示すように、軸受スリーブ8の外部において軸部材2の外周面に撥油性の被膜12を形成しておくのが望ましい。撥油性の被膜12の軸方向位置は、例えばハウジング7の開口端付近とする。
【0041】
スラスト受け9には回り止めを設けるのが望ましい。図4および図5は回り止めの一例を示すもので、円盤状のスラスト受け9の一部を切欠いて平坦面9aを形成すると共に、ハウジング7のプレス時に、小径部7bの底部7cにスラスト受け9の形状に適合する凹部7c1を設け、この凹部7c1にスラスト受け9を収容したものである。かかる構成であれば、スラスト受け9の平坦面9aと凹部7c1の直線状周面とが円周方向で係合するため、スラスト受けの回り止めが行われる。図4は平坦面9aを一箇所に設けた例であり、図5は平坦面9aを対向二箇所に設けた例である。
【0042】
図1では、ハウジング底部7cを小径部7bと一体にした場合を例示したが、図7に示すように、両者を別体に構成することもできる。この場合、底部7cがスラスト受け9として機能する。底部7cは、例えば小径部7bの下端をかしめることでハウジング7に固定される。底部7c自体を低摩擦で耐摩耗性に富む材料(例えば樹脂)で形成してもよいし、底部7cを金属製とし、その表面の軸部材2との摺動部分に低摩擦で耐摩耗性に富む被膜(例えば樹脂被膜や硬質被膜など)を形成してもよい。
【0043】
図1に示す実施形態ではシール部材を省略した場合を例示しているが、図8に示すように、ハウジング7の開口側をシール部材10でシールしてもよい。シール部材10は、例えば、黄銅等の軟質金属材料やその他の金属材料、あるいは樹脂材料で円環状に形成され、端面を軸受スリーブ8の上端面から離隔させた状態で、ハウジング7の大径部7aの上端部に固定されている。シール部材10の内周面は軸部材2の外周面に近接して非接触シール(ラビリンスシール)を構成する。シール部材10の形状や構成は任意で、例えば図9に示すように、軸受スリーブ8の端面に当接する円筒状の脚部10aと、脚部10aの上端から内径側に突出する突出部10bと一体に有する断面L字型に形成することもできる。
【0044】
以上のシール部材10を使用する構成においては、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部材2の外周面との間の環状隙間のみに潤滑油を介在させる他、該隙間に加えてスラスト軸受部Sの周辺空間や隙間Pを含むハウジング7の全ての内部空間を潤滑油で満たすいわゆるフル含油の構成を採用することもできる。このフル含油の構成では、通常、油面はシール部材10の内周面に存在する。
【0045】
プレス成形後のハウジング7には、熱処理として焼なまし(アニール)を施すのが望ましい。具体的には、ハウジング7を1050℃に加熱し、これを一定時間(20分程度)保持した後、徐冷する。これにより、軸受スリーブ8の圧入後におけるハウジング7からの内径方向の圧迫力が減じられるため、軸受スリーブ8の内周面の変形をより一層抑制することができる。
【0046】
図10はハウジング7の焼なましの有無による軸受スリーブ8の内周面の収縮量の測定結果を示すものである。軸受スリーブ8の寸法はφ4(内径)×φ7.5(外径)×7.3(長さ)であり、ハウジング7はSUS305製の肉厚0.2mmとし、圧入代(ハウジング7の内接円径と軸受スリーブ8の外径との差)は12μmとした。図10の測定結果は、ハウジング内周面を20角形とすると共に、ハウジング外周面を真円形状としたもの(図6)を表し、図11の測定結果は内・外周面双方を20角形としたもの(図3)の測定結果を表す。なお、両図において、"Top"は上側のラジアル動圧発生領域N1での変形量を表し、"Bottom"は下側のラジアル動圧発生領域N2での変形量を表す。内外周面双方を20角形とした図11の測定結果において、「アニールなし」のプロット点は平均値を表す。
【0047】
両図からも明らかなように、「アニール有り」ではラジアル動圧発生領域N1、N2の内径収縮量が「アニールなし」に比べて小さくなっている。従って、ハウジングに焼なまし処理を行うことにより、ラジアル動圧発生領域N1、N2の変形をより確実に防止でき、より高い軸受性能が得られることが理解できる。
【0048】
なお、ラジアル動圧発生領域N1、N2は、軸受スリーブ8の外周面だけではなく、軸部材2の外周面に形成することもできる。また、ラジアル動圧発生領域N1、N2の形状としては、へリングボーン形状の他、スパイラル形状等の公知の形状を使用することができる。さらに、実施形態として、軸部材2を回転させる場合を例示したが、本発明の構成は、軸部材2を固定軸とし、ハウジング7および軸受スリーブ8を回転側とする場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 流体軸受装置
2 軸部材
3 ロータ
4 ポリゴンミラー
5 回路基板
7 ハウジング
7a 大径部
7b 小径部
7c 底部
7d 段差部
8 軸受スリーブ
8a1 動圧溝(動圧発生部)
9 スラスト受け
10 シール部材
N1 ラジアル動圧発生領域(上側)
N2 ラジアル動圧発生領域(下側)
P 隙間
S スラスト軸受部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受スリーブと、
軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、
軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面のどちらか一方に形成され、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧発生部と、
プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブが圧入され、軸受スリーブの圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する係合部が形成されたハウジングと、
軸部材の一端を接触支持するスラスト受けと
を有する流体動圧軸受装置。
【請求項2】
ハウジングに、大径部と、小径部と、大径部と小径部を接続する段差部とを設け、段差部で前記係合部を構成した請求項1記載の流体動圧軸受装置。
【請求項3】
ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ底部に別体のスラスト受けを配置した請求項1または2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項4】
ハウジングの底部に、スラスト受けの回り止めを設けた請求項3記載の流体動圧軸受装置。
【請求項5】
ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ前記スラスト受けを底部と一体にした請求項1または2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項6】
前記底部の軸部材との接触部分に表面処理を施した請求項5記載の流体動圧軸受装置。
【請求項7】
軸受スリーブの外周とハウジングの内周との間の圧入部を、円周方向で間欠的に設けた請求項1〜6何れか1項に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項8】
ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を、断面多角形に形成した請求項7記載の流体動圧軸受装置。
【請求項9】
ハウジングの少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を均一肉厚に形成した請求項8記載の流体動圧軸受装置。
【請求項10】
ハウジングの外周面を断面真円状に形成した請求項7または8記載の流体動圧軸受装置。
【請求項11】
ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に、突起を設けた請求項7記載の流体動圧軸受装置。
【請求項12】
プレス加工したハウジングに焼なましを施した請求項1〜11何れか1項に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項1】
軸受スリーブと、
軸受スリーブの内周に挿入された軸部材と、
軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面のどちらか一方に形成され、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる動圧発生部と、
プレス加工で形成され、内周に軸受スリーブが圧入され、軸受スリーブの圧入方向前方に、軸受スリーブの端面と係合する係合部が形成されたハウジングと、
軸部材の一端を接触支持するスラスト受けと
を有する流体動圧軸受装置。
【請求項2】
ハウジングに、大径部と、小径部と、大径部と小径部を接続する段差部とを設け、段差部で前記係合部を構成した請求項1記載の流体動圧軸受装置。
【請求項3】
ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ底部に別体のスラスト受けを配置した請求項1または2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項4】
ハウジングの底部に、スラスト受けの回り止めを設けた請求項3記載の流体動圧軸受装置。
【請求項5】
ハウジングに底部を一体又は別体に設け、かつ前記スラスト受けを底部と一体にした請求項1または2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項6】
前記底部の軸部材との接触部分に表面処理を施した請求項5記載の流体動圧軸受装置。
【請求項7】
軸受スリーブの外周とハウジングの内周との間の圧入部を、円周方向で間欠的に設けた請求項1〜6何れか1項に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項8】
ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を、断面多角形に形成した請求項7記載の流体動圧軸受装置。
【請求項9】
ハウジングの少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分を均一肉厚に形成した請求項8記載の流体動圧軸受装置。
【請求項10】
ハウジングの外周面を断面真円状に形成した請求項7または8記載の流体動圧軸受装置。
【請求項11】
ハウジング内周面の少なくとも軸受スリーブの外周面と対向する部分の円周方向複数箇所に、突起を設けた請求項7記載の流体動圧軸受装置。
【請求項12】
プレス加工したハウジングに焼なましを施した請求項1〜11何れか1項に記載の流体動圧軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−196544(P2011−196544A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36958(P2011−36958)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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