説明

流体圧ステアリングシステム

【課題】単一シリンダ流体圧ステアリングシステムの操舵ポンプを使用可能な複数シリンダ流体圧ステアリングシステムを提供する。
【解決手段】流体圧ステアリングシステム10は、アクチュエータポート24、25、54、55を有する第1、第2流体圧アクチュエータ20、50とを備える。第1および第2の方向にシステムを操舵する操舵装置19は、操舵ポンプ12に接続される。操舵装置19はアクチュエータポート24、25に接続される。アクチュエータポート54、55に接続されるパワーステアリングポンプ40がある。システムの操舵を検知可能な位置センサ63がある。位置センサ63は、操舵装置19が第1の方向に操舵されるとき第3アクチュエータポート54の方に作動流体を噴出し、操舵装置19が第2の方向に操縦されるとき第4アクチュエータポート55の方に作動流体を噴出するように、パワーステアリングポンプ40に動作可能に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体圧ステアリングシステム、特に、二つまたは三つの船外機あるいは二枚舵の船内機を有する船などの船舶で通常使用される複数シリンダ流体圧ステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の複数シリンダ流体圧ステアリングシステムでは、第2のシリンダが第1のシリンダと平行に配管されることにより、操舵ポンプによって供給されるシリンダの体積が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−268661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単一シリンダ油圧システムで使用される操舵ポンプと比較して、回転を固定するロックを所望の上限内で単一シリンダシステムの数と略等しく保持するために、1回転当たりにより多くの量の作動流体を放出する操舵ポンプを使用する必要がある。その結果、船舶建造業者などの機器メーカーは、単一シリンダシステムおよび複数シリンダシステムに対処するため、2種類以上の操舵ポンプを蓄えていなければならない。
したがって、単一シリンダ流体圧ステアリングシステムの操舵ポンプを使用可能な複数シリンダ流体圧ステアリングシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ハンドル、第1流体圧ステアリング装置、第2流体圧ステアリング装置、および2つの流体圧アクチュエータを含む流体圧ステアリングシステムである。各流体圧アクチュエータは、作動流体を収容または放出する2つのアクチュエータポートを有する。ハンドルおよび第1の流体圧ステアリング装置は、アクチュエータポートのうちの2つに流体が通過可能に接続される。第2流体圧ステアリング装置はパワーステアリングポンプを有する。パワーステアリングポンプは、アクチュエータポートのうちの別の2つに流体が通過可能に接続される。センサは、ハンドルが操縦されるとき少なくとも1つの流体圧アクチュエータの移動を感知する第1流体圧ステアリング装置に動作可能に接続される。
コントローラは、パワーステアリングポンプとセンサに動作可能に接続される。コントローラは、別の流体圧アクチュエータが互いに連動して移動するように、アクチュエータポートの別の2つに作動流体を噴出するようにパワーステアリングポンプを作動させる。
【0006】
本発明は、単一シリンダ流体圧ステアリングシステムで使用される操舵ポンプと比較して、1回転当たりにより多くの量の作動流体を放出する操舵ポンプを必要としない。このため、単一シリンダシステムおよび複数シリンダシステムに対処するために2種類以上の操舵ポンプを蓄えなくてよいという、従来の複数流体圧パワーアシストステアリングシステムと比べて有利な効果を有する。同時に、本発明は、操舵手に要求される操縦労力を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図2】第1流体圧アクチュエータがパイロットアクチュエータであり、第2流体圧アクチュエータがパワーアクチュエータである、本発明の第2の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図4】第1流体圧アクチュエータおよび第2流体圧アクチュエータが平行に配管される、本発明の第4の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図5】第1流体圧アクチュエータおよび第2流体圧アクチュエータがアンバランスシリンダの形状を取る、本発明の第5の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図6】第1流体圧アクチュエータおよび第2流体圧アクチュエータがアンバランスシリンダの形状を取る、本発明の第6の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図7】パワーステアリングユニットを作動させる作動機構が、連結棒に搭載される荷重センサに動作可能に接続されるコントローラを備える、本発明の第7の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【図8】第1流体圧アクチュエータと第2流体圧アクチュエータとが機械的に接続されず、副パワーアシストユニットを作動させる作動機構がポテンショメータに動作可能に接続されるコントローラを備える、本発明の第8の実施形態に係る複数シリンダパワー流体圧ステアリングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず図1を参照すると、本発明の第1の実施形態の流体圧ステアリングシステム10が示されている。流体圧ステアリングシステム10は、手動操作可能な操舵ポンプ12を含む操舵装置19を備えている。操舵装置19は、操舵ポンプ12に動作可能に接続されるハンドル(図示せず)を有する。操舵ポンプ12は、第1流体圧アクチュエータ20に作動流体流通可能に接続される。パワーアシストポンプ30は、操舵ポンプ12と第1の流体圧アクチュエータ20間に直列に流体が通過可能に接続される。感知機構60は、操舵ポンプ12とパワーアシストポンプ30間に直列に流体が通過可能に接続される。主パワーアシストユニット11は、パワーアシストポンプ30および感知機構60を備えている。図1に示すように、感知機構60は、制御バルブ61と位置センサ63とを備え、制御バルブ61は往復運動するバルブ部材62を内部に備えている。位置センサ63は、制御バルブ61内のバルブ部材62の動きを感知する。なお、感知機構60は、操舵ポンプ12によって放出される流体の量を感知する体積流量センサであっても良いことは言うまでもない。
【0009】
電動のパワーステアリングポンプ40は、第2流体圧アクチュエータ50に流体が通過可能に接続される。パワーステアリングユニット17は、パワーステアリングポンプ40を備えている。流体圧アクチュエータ20および50は、シリンダ21および51とピストン22および52とピストンロッド23および53とをそれぞれ設けている。本実施形態では、流体圧アクチュエータ20および50は、細長い部材である連結棒85によって接続される。この連結棒85は舵柄87に接続され、次に、船舶(図示せず)を操縦する舵89に接続される。舵柄87は堅固に結合されている。
【0010】
操舵ポンプ12は、タンク13に接続され、第1操舵流体圧ポート14および第2操舵流体圧ポート16を有する。矢印100で示す第一の方向に、操舵ポンプ12が流体圧アクチュエータ20を作動させると、流体は、第1操舵流体圧ポート14から放出され、第2の操舵流体圧ポート16に収容される。一方、矢印105で示す第二の方向に、操舵ポンプ12が第1流体圧アクチュエータ20を作動させると、流体は、第2操舵流体圧ポート16から放出され、第1操舵流体圧ポート14に収容される。なお、第2の方向は、第1の方向100と逆方向である。操舵装置19には、流体の操舵ポンプ12への逆流を防ぐ公知のロックバルブ18が備えられている。一対の流体圧導管70および72は、第1および第2操舵流体圧ポート14および16を流体が通過可能に制御バルブ61に接続される。
【0011】
図1に示される本発明の実施形態では、制御バルブ61は、3位置、6方向のスプールバルブで、バルブ部材62はそのスプールである。制御バルブ61は、引用により本明細書に組み込まれるDudraらの米国特許出願第10/507、833号に開示されるスプールバルブに類似していてもよい。制御バルブ61は、一連のバルブポート64、65、66、67、68、および69を有する。流体圧導管70はバルブポート64に収容され、流体圧導管72はバルブポート65に収容される。制御バルブ61は、バルブポート66に収容される流体圧導管73とバルブポート67に収容される流体圧導管74とによってパワーアシストポンプ30に流体が通過可能に接続される。制御バルブ61は、バルブポート68とつながる流体圧導管75とバルブポート69につながる流体圧導管76とによって第1流体圧アクチュエータ20に流体が通過可能に接続される。
【0012】
操舵ポンプ12が矢印100で示される第1の方向に第1流体圧アクチュエータ20を作動させると、第1操舵流体圧ポート14から放出される流体は、流体圧導管70を通ってバルブポート64で制御バルブ61に流れ込む。同時に、流体は、流体圧導管71を介して制御バルブ61上のアクチュエータ78に提供される。アクチュエータ78によって、バルブ部材62はパワーアシストポンプ30に制御バルブ61を通り第1流体圧アクチュエータ20に至る流体の流れを助けさせるように作動し、そこで流体は第1アクチュエータポート24に収容される。第1流体圧アクチュエータ20が第1の方向に移動すると、流体は第2アクチュエータポート25から第1流体圧アクチュエータ20によって放出されると考えられる。第2アクチュエータポート25から第1流体圧アクチュエータ20によって放出される流体は、流体圧導管76と制御バルブ61とを通って、操舵ポンプ12の第2操舵流体圧ポート16に流れ込む。
【0013】
操舵ポンプ12が矢印105で示される第2の方向に第1流体圧アクチュエータ20を作動させると、第2操舵流体圧ポート16から放出される流体は、流体圧導管72、バルブポート65を経て制御バルブ61に流れ込む。同時に、流体は、流体圧導管77を介して制御バルブ61上のアクチュエータ79に提供される。アクチュエータ79によって、バルブ部材62はパワーアシストポンプ30に制御バルブ61と流体圧導管76を通り第1流体圧アクチュエータ20に至る流体の流れを助けさせるように移動し、そこで流体は第2のアクチュエータポート25に収容される。第1流体圧アクチュエータ20が第2の方向105に作動すると、流体は第1アクチュエータポート24から第1流体圧アクチュエータ20によって放出されると考えられる。第1アクチュエータポート24から第1流体圧アクチュエータ20によって放出される流体は、流体圧導管75と制御バルブ61を経て、操舵ポンプ12の第1操舵流体圧ポート14に流れ込む。
【0014】
パワーアシストポンプを作動させる作動機構は、操舵ポンプ12から第1流体圧アクチュエータ20への流体の流れを助けるパワーアシストポンプ30を作動する。パワーアシストポンプを作動させる作動機構は、感知機構60と連動して動作するコントローラ32および可速モータ31を含む。感知機構60は、図1の実施形態の主パワーアシストユニット11の1部を形成する。コントローラ32は比例コントローラである。可速モータ31は、パワーアシストポンプ30に作動可能に接続される。流体が操舵ポンプ12によって放出されると、バルブ部材62は制御バルブ61内を移動する。バルブ部材62の変位は、操舵ポンプ12から放出される流体の量に比例する。図1の実施形態では線形可変差動変換器である位置センサ63は、バルブ部材62の変位を感知し、コントローラ32に信号を送る。コントローラ32は可速モータ31を作動可能に接続され、次に、パワーアシストポンプ30を始動させるため可速モータ31に信号を送る。可速モータ31の作動速度は、制御バルブ61内でのバルブ部材62の相対的変位に比例する。したがって、パワーアシストポンプ30の動作は、操舵ポンプ12によって放出される流体の量に依存する。
【0015】
パワーアシストポンプ30は、流体圧導管33によってタンク13に流体が通過可能に接続される。公知のチェックバルブ36は、パワーアシストポンプ30からタンク13への流体の逆流を防止する。パワーアシストポンプ30はポンプポート34を有する。操舵ポンプ12が矢印100で示される第1の方向に第1流体圧アクチュエータ20を移動させるように作動させると、パワーアシストポンプ30は、流体圧導管33および74を経て液体を吸い込み、次に、流体圧導管73および75を介して第1の流体圧アクチュエータ20に流体を噴出することによって、流体の流れを支援する。操舵ポンプ12が矢印105で示される第2の方向に第1流体圧アクチュエータ20を作動させると、パワーアシストポンプ30は、流体圧導管33および74を経て流体を吸い込み、次に、流体圧導管73および76を介して第1流体圧アクチュエータに流体を噴出することによって流体の流れを支援する。
【0016】
パワーステアリングユニット17では、パワーステアリングポンプ40は、流体圧導管45によってタンク13に流体が通過可能に接続される。公知のチェックバルブ47はパワーステアリングポンプ40からタンク13への流体の逆流を防止する。パワーステアリングユニット17は、通常の操舵動作モードの間、タンク13と主パワーアシストユニット11とは分離する。別の実施形態では、パワーステアリングユニット17は、各ユニット11および17の別個のタンクをそれぞれ使用することで、主パワーアシストユニット11と完全に分離することができる。
【0017】
パワーステアリングポンプ40は、第1電動流体圧ポート42および第2電動流体圧ポート44を有する。パワーステアリングポンプ40が矢印100で示される第1の方向に第2流体圧アクチュエータ50を作動すると、流体は第1の電動流体圧ポート42によって放出され、第2電動流体圧ポート44に収容される。パワーステアリングポンプ40が矢印105で示される第2の方向に第2流体圧アクチュエータ50を作動せると、流体は第2電動流体圧ポート44によって放出され、第1電動流体圧ポート42に収容される。流体圧導管46および48は、パワーステアリングポンプ40を第2流体圧アクチュエータ50に流体が通過可能に接続する。流体圧導管46は第1電動流体圧ポート42に接続され、第3アクチュエータポート54で第2流体圧アクチュエータ50に収容される。流体圧導管48は第2電動流体圧ポート44に接続され、第4アクチュエータポート55で第2流体圧アクチュエータ50に収容される。
【0018】
操舵ポンプ12が作動すると、パワーステアリングポンプ40を作動させる作動機構は、第2流体圧アクチュエータ50を移動させるようにパワーステアリングポンプ40を始動する。パワーステアリングポンプ40を作動させる作動機構は、主パワーアシストユニット11の感知機構60と連動して動作するコントローラ41および可速モータ43を含む。コントローラ41は比例コントローラであり、可速モータ43はパワーステアリングポンプ40に動作可能に接続される。
流体が操舵ポンプ12によって放出されると、バルブ部材62は制御バルブ61内を移動する。バルブ部材62の変位は、操舵ポンプ12から放出される流体の量に比例する。図1の実施形態では線形可変差動変換器である位置センサ63は、バルブ部材62の変位を感知し、コントローラ41に信号を送る。コントローラ41は可速モータ43に動作可能に接続され、次に、パワーステアリングポンプ40を始動するように可速モータ43に信号を送る。可速モータ43の速度は、制御バルブ61内におけるバルブ部材62の相対的変位に比例する。したがって、パワーステアリングポンプ40の動作は、手動ポンプ12によって放出される流体の量に依存する。なお、コントローラ32をコントローラ41に接続できること、又は同じコントローラを用いてモータ43を制御できることは、言うまでもない。
【0019】
図1から分かるように、第1流体圧アクチュエータ20および第2流体圧アクチュエータ50は平行に配管されておらず、操舵ポンプ12およびパワーアシストポンプ30は第1流体圧アクチュエータ20への流体流に関係する。パワーステアリングポンプ40は第2流体圧アクチュエータ50への液体流に関係する。操舵ポンプ12は第1流体圧アクチュエータ20への液体流に関係するのみであるため、単一シリンダ流体圧ステアリングシステムで使用される操舵ポンプと比較して、1回転当たりより多くの量の流体を放出する操舵ポンプは、複数シリンダ流体圧ステアリングシステム10での回転を所望の上限内かつ単一シリンダ流体圧ステアリングシステムで見られる回転数に略等しく固定するようにロックを保持する必要がない。言い換えると、本発明は、操舵ポンプを、複数シリンダ流体圧ステアリングシステムで使用されるように、単一シリンダ流体圧ステアリングシステム向けに設計することができる。
【0020】
パワーステアリングユニット17の動作は主パワーアシストユニット11の感知機構60に依存するため、仮に主パワーアシストユニット11が故障するとすれば、パワーステアリングユニット17も故障することになる。しかし、パワーステアリングポンプ40はロックバルブを備えていないため、第2流体圧アクチュエータ50の一方から他方に流体は移動することができ、パワーステアリングポンプ40の流体回転抵抗を加えることで、船舶を手動で操縦することがまだ可能である。
【0021】
図2を参照すると、類似の部品が追加符号「.1」付きで図1と同じ参照符号を付され、差圧センサ15.1が設けられる。図2には、本発明の第2の実施形態に係る複数シリンダ流体圧ステアリングシステム10.1が示されている。差圧センサ15.1は、流体圧導管70.1および72.1を通過する流体間の圧力差を感知する。コントローラ41.1は、差圧センサ15.1での圧力差の符号と大きさに関連付けられるパルス幅変調(「PWM」)信号を送信する。コントローラ41.1に関するアルゴリズムの1例を以下に示す。圧力センサ15.1の圧力差が+/−20psi内である場合、ゼロパーセントPWMがモータ43.1に適用される。圧力差が20〜300psi(または、−20〜−300psi)のとき、圧力対PWMの参照テーブルがモータ43.1に適用される。この参照テーブルは、2つの線分を有する凸状の正確な一次関数に形状が類似する。+/−300psiの圧力差を越えると、100%PWMがモータ43.1に適用される。
【0022】
図2の実施形態において、第1流体圧アクチュエータ130はパイロットアクチュエータであり、第2流体圧アクチュエータ132はパワーアクチュエータであることを除き、図2の実施形態は図1の実施形態と同様である。第2流体圧アクチュエータ132が第1流体圧アクチュエータ130を作動させるのを可能にするため、可撓導管70.1が設けられる。可撓導管70.1は拡張して、システムの遅延時間差を低減および吸収する役割を果たすことができる。
【0023】
図3を参照すると、類似の部品が追加符号「.2」付きで図1と同じ参照符号を有する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る複数シリンダ流体圧ステアリングシステムが示されている。図3の実施形態は、差圧センサ15.2を採用することを除き、図1の実施形態と同様である。また、流体圧アクチュエータ20.2および50.2のシリンダは、チラー91および92に接続される。流体圧アクチュエータ20.2および50.2のシリンダが移動すると、連結棒91および92が移動する。第1および第2流体圧アクチュエータ20.2および50.2は、それぞれ連結棒91および92に独立して接続される。
舵93および94は、連結棒91および92にそれぞれ接続される。
【0024】
図4を参照すると、類似の部品が追加符号「.3」付きで図1および3と同じ参照符号が付される。図4は、本発明の第4の実施形態に係る複数シリンダ流体圧ステアリングシステム10.3が示されている。図4の実施形態は、図3の実施形態とほぼ同様であるが、追加のフェイルセーフ機能を有する。図4の実施形態では、第1の流体圧アクチュエータ20.3および第2の流体圧アクチュエータ50.3が、流体圧導管121および123を使用して平行に配管される。流体圧導管121および123はロックバルブ120が設けられ、差圧センサ15.3が動作し、通常の操舵努力と通常の液圧、たとえば、50psiとがあるとき、ロックバルブ120は閉鎖するように設定されて、流体が操舵ポンプ12.3から第2流体圧アクチュエータ50.3に流れるのを防止する。ただし、差圧センサ15.3が故障すると、操舵努力が高められる結果、流体圧が上昇する。たとえば、150psiまで流体圧が上昇すると、ロックバルブ120を開放させて、流体を操舵ポンプ12.3から第2流体圧アクチュエータ50.3に流出させる。
【0025】
図4の実施形態では、上述したように第1流体圧アクチュエータ20.3および第2流体圧アクチュエータ50.3を平行に配管することによって、差圧センサ15.3が動作し、通常の操舵努力がなされる際、操舵ポンプ12.3から第2流体圧アクチュエータ50.3への流体の流れが防止されるが、パワーステアリングユニット17.3が故障し、操舵労力が増えると、操舵ポンプ12.3から第2流体圧アクチュエータ50.3へ流体を流出させる。この設定によって、差圧センサ15.3が動作すると第2流体圧アクチュエータ50.3に流体が流れないため、複数シリンダ流体圧ステアリングシステムで使用されるように単一シリンダ流体圧ステアリングシステム向けに設定された操舵ポンプを使用することができる。ただし、パワーステアリングユニット17.3が故障すれば、流体が操舵ポンプ12.3から第2流体圧アクチュエータ50.3に流れることで、回転を固定するロックが増大しても、船舶を手動で操縦することができるというフェイルセーフ機能が追加される。
【0026】
図4の実施形態では、連結棒85.3が第1流体圧アクチュエータ20.3を第2流体圧アクチュエータ50.3に接続するが、たとえば、双胴船のように、第1流体圧アクチュエータ20.3と第2流体圧アクチュエータ50.3が機械的に接続されない場合であっても、本明細書に記載のフェイルセーフ機能が特に有効であることはいうまでもない。
さらに、50psiの通常流体圧と150psiの上昇流体圧は例示したものであり、通常流体圧と上昇流体圧の値がこれに限定されないことは、言うまでもない。
【0027】
図5を参照すると、類似の部品が追加符号「.4」付きで図3および4と同じ参照符号が付される。図5は、本発明の第5の実施形態に係る複数シリンダ流体圧ステアリングシステム10.4が示されている。図5の実施形態では、第1流体圧アクチュエータ136および第2流体圧アクチュエータ138がシリンダ146および147の形状を取り、各シリンダは単一ピストンロッド148または149をそれぞれ有する。操舵ポンプ12.4および差圧センサ15.4は、それぞれ流体圧導管304および306によって、第1アクチュエータポート320および第2アクチュエータポート322で前記流体圧アクチュエータ136および138のロッド側または操舵装置側300および302に直列に流体が通過可能に接続される。パワーステアリングユニットのパワーステアリングポンプ40.4はそれぞれ流体圧導管137および139によって、第3アクチュエータポート324および第4アクチュエータポート326で各前記流体圧アクチュエータ136および138の電動側346および347に流体が通過可能に接続される。電動側にはピストンロッドがないため、各前記流体圧アクチュエータ136および138の電動側346および347は対応する操舵装置側300および302よりも体積が大きい。細長い形状の部材である連結棒145は、第1流体圧アクチュエータ136のピストンロッド148を第2流体圧アクチュエータ138のピストンロッド149に接続する。連結棒145はさらに舵柄140および141に接続され、次に、それぞれ船舶(図示せず)を操縦する舵142および143に接続される。
【0028】
操舵ポンプ12.4が矢印100.4で示される第1の方向に第1流体圧アクチュエータを作動させると、流体は操舵装置12.4の第2操舵流体圧ポート16.4によって放出される。流体は流体圧導管72.4と流体圧導管306を通って第2のアクチュエータポート322から第2流体圧アクチュエータ138のロッド側302まで流れて、図2の流体圧アクチュエータ138を第1の方向に作動させる。この間、差圧センサ15.4は第2の実施形態について上述したように、パワーステアリングポンプ40.4から液体を噴出するようにパワーステアリングユニット17.4に信号を送る。流体は、流体圧導管137を経てパワーステアリングポンプ40.4の第1電動流体圧ポート42.4、第3アクチュエータポート324から第1流体圧アクチュエータ136の電動側146まで噴出し、第1流体圧アクチュエータ136を第1の方向に作動させる。
【0029】
第1流体圧アクチュエータ136が矢印100.4で示される方向に作動すると、液体が第1アクチュエータポート320から第1流体圧アクチュエータ136によって放出されることは言うまでもない。また、流体は第1のアクチュエータポート320から第1流体圧アクチュエータ136によって放出され、流体圧導管304を通って、第1の操舵流体圧ポート14.4から操舵ポンプ12.4に流れ込む。さらに、第2流体圧アクチュエータ138が矢印100.4で示される第1の方向に作動すると、流体は第4のアクチュエータポート326から第2流体圧アクチュエータによって放出されることも言うまでもない。更にまた、第2流体圧アクチュエータ138によって放出される流体は、流体圧導管139を経て、第2電動流体圧ポート44.4からパワーステアリングポンプ40.4に流れ込むことも言うまでもない。
【0030】
手動ポンプ12.4が矢印105.4で示される第2の方向に第1流体圧アクチュエータを作動させると、流体は操舵ポンプの第1操舵流体圧ポート14.4によって放出される。流体は、流体圧導管70.4と流体圧導管304を通って、第1アクチュエータポート320から第1流体圧アクチュエータ136のロッド側300に流れ込み、第1流体圧アクチュエータ20.4を第1の方向に移動させる。この期間中、差圧センサ15.4は図2の実施形態について上述したように、パワーステアリングポンプ40.4から液体を噴出させるようにパワーステアリングユニット17.4に信号を送る。流体は、流体圧導管139を通って、パワーステアリングポンプ40.4の第2電動流体圧ポート44.4から第4のアクチュエータポート326を経て第2流体圧アクチュエータ138の電動側147に噴出されて、第2流体圧アクチュエータ138を第2の方向に移動させる。
【0031】
第1流体圧アクチュエータ136が矢印105.4で示される第2の方向に作動すると、流体は第3アクチュエータポート324から第1流体圧アクチュエータ136によって放出されることはいうまでもない。また、第3アクチュエータポート324から第1流体圧アクチュエータ136によって放出される流体は、流体圧導管137を通って第1電動流体圧ポート42.4からパワーステアリングポンプ40.4に流れ込むことも言うまでもない。さらに、第2流体圧アクチュエータ138が矢印105.4で示される第2の方向に作動すると、流体がポート322から第2流体圧アクチュエータによって放出されることも言うまでもない。第2流体圧アクチュエータ138によって放出される流体は、第2操舵流体圧ポート16.4から操舵ポンプ12.4に流れ込む。
【0032】
電動側よりも手動側の体積が少ないシリンダを使用することによって、図5の実施形態は、操舵ポンプ12.4によって変位する体積が所望の回転度に対して減少するため、船舶を操舵するための回転を固定するロックを低減するという利点を有する。
【0033】
図6を参照すると、類似の部品が追加符号「.5」付きで図1および5と同じ参照符号を有する。図6は、本発明の第5の実施形態に係るパワー流体圧ステアリングシステム10.5が示されている。図6の実施形態は、第1および第2流体圧アクチュエータ136.5および138.5のシリンダロッド148.5および149.5が、船舶(図示せず)を操舵する単一の連結棒248および舵250に接続されることを除き、図5の実施形態と同様である。ロッド148.5および149.5は、旋回軸350および351によって単一の連結棒248に旋回可能に接続される。第1および第2流体圧アクチュエータ136.5および138.5は、旋回軸348および349によって電動側346.5および347.5に旋回可能に搭載される。第1および第2流体圧アクチュエータ136.5および138.5は、互いに角度を持って間隔を置いて配置される。これにより、図5の実施形態と比べて、第1および第2流体圧アクチュエータ136.5および138.5の変位に対する連結棒248および舵250の変位が増大するという効果も有する。
【0034】
図7を参照すると、類似の部品が追加符号「.6」付きで図1と同じ参照符号を有し、主パワーアシストユニット11.6が設けられる。図7は、本発明の第7の実施形態に係るパワー流体圧ステアリングシステム10.6が示されている。図7の実施形態は、パワーステアリングユニット17.6を作動させる作動機構が、連結棒85.6に搭載される荷重センサ80に動作可能に接続されることを除き、図1の実施形態と同様である。荷重センサ80は、操舵ポンプと主パワーアシストユニット11.6によって第1流体圧アクチュエータ20.6に印加される荷重力を感知し、荷重力に基づきパワーステアリングポンプ40.6を作動させるようにパワーステアリングユニットを作動させる作動機構のコントローラ41.6に信号を送る。これは、主パワーアシストユニット11内の感知機構の位置センサ63がパワーステアリングユニット17に信号を送る点で図1に示した実施形態と異なる。
【0035】
図7に示される本発明の実施形態では、荷重センサ80は、一対の軸ゲージと一対のポアゾンゲージを含み、第1および第2流体圧アクチュエータ20.6および50.6を接続する連結軸85.6に搭載される。ただし、他の特注の荷重セルまたは市販のFutekモデルL2700荷重セルなどの荷重セルを使用することもできる。もしくは、連結棒の第1の部分を連結棒の第2の部分に接続するバネなどの、荷重力を感知する別の方法を使用することもできる。荷重力が第1アクチュエータに作用すると、バネは荷重に応じて圧縮または伸張する。バネの変位を測定し、信号をコントローラに送信して、荷重力の大きさと方向に応じてポンプを作動させることができる。
【0036】
図7の実施形態は、パワーステアリングユニット17.6の動作が、手動ポンプ12.6によって放出される流体の量ではなく、第1流体圧アクチュエータ20.6に印加される荷重力に基づくという利点を有する。これにより、さらに大きなステアリング制御ができる。
【0037】
図8を参照すると、類似の部品が追加符号「.7」付きで図1と同じ参照符号が付され、主パワーアシストユニット11.7が設けられる。図8は、本発明の第8の実施形態に係る複数シリンダ流体圧ステアリングシステム10.7が示されている。図8の実施形態では、第1流体圧アクチュエータ20.7と第2流体圧アクチュエータ50.7との間が機械的に接続されない。パワーステアリングユニットを作動させる作動機構は、ポテンショメータ168に動作可能に接続される。第1および第2流体圧アクチュエータ20.7および50.7の位置は、第1および第2流体圧アクチュエータ20.7および50.7上にそれぞれ搭載される磁石162および164の移動を監視する磁歪式センサ163および165によって追跡される。磁歪式センサは、引用により本明細書に組み込まれる、Moreauらへの米国特許第5、717、330号に開示される磁歪式センサと類似していてもよい。磁歪式センサは、第1および第2流体圧アクチュエータ20.7および50.7の位置をポテンショメータ168に信号で送る。次に、ポテンショメータ168は、第1流体圧アクチュエータ20.7の位置に対する第2流体圧アクチュエータ50.7の位置に基づき作動するように第2のパワーアシストユニット17.7に信号を送る。
【0038】
図8の実施形態は、パワーステアリングユニット17.7の動作が、操舵ポンプ12.6によって放出される流体の量ではなく、第1流体圧アクチュエータ20.7に対する第2流体圧アクチュエータ50.7の移動に基づくという利点を有する。さらに、図8の実施形態は、第1流体圧アクチュエータ20.7と第2流体圧アクチュエータ50.7との間の機械的接続を必要としないという利点も有する。
【0039】
本明細書に記載される本発明の実施形態はパワーアシストユニットを含むことができるが、パワーアシストユニットは本発明の実行に必須ではないことは言うまでもない。たとえば、図7および8の実施形態では、パワーアシストユニット11.6および11.7を省略し、操舵ポンプ12.6および12.8を第1流体圧アクチュエータ20.6および20.7に直接接続することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態になんら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しえることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 流体圧ステアリングシステム、11 主パワーアシストユニット、12 操舵ポンプ、13 タンク、14 第1操舵流体用ポート、17 パワーステアリングユニット、19 操舵装置、20 第1流体圧アクチュエータ、21 シリンダ、22 ピストン、23 ピストンロッド、24 第1アクチュエータポート、25 第2アクチュエータポート、30 パワーアシストポンプ、31 可速モータ、32 コントローラ、33 流体圧導管、34 ポンプポート、40 パワーステアリングポンプ、41 コントローラ、42 第一電動流体圧ポート、43 可動モータ、44 第2電動流体圧ポート、45 流体圧導管、46 流体圧導管、47 チェックバルブ、48 流体圧導管、50 第1流体圧アクチュエータ、51 シリンダ、52 ピストン、53 ピストンロッド、54 第3アクチュエータポート、55 第4アクチュエータポート、60 感知機構、61 制御バルブ、62 バルブ部材、63 位置センサ、64 バルブポート、65 バルブポート、66 バルブポート、67 バルブポート、68 バルブポート、69 バルブポート、70 流体圧導管、71 流体圧導管、72 流体圧導管、73 流体圧導管、74 流体圧導管、75 流体圧導管、76 流体圧導管、77 流体圧導管、78 アクチュエータ、79 アクチュエータ、80 荷重センサ 85 連結棒、87 舵柄、89 舵、91 連結棒、92 連結棒、93 舵、94 舵、120 ロックバルブ、121 流体圧導管、123 流体圧導管、130 パイロットアクチュエータ、132 パワーアクチュエータ、136 第1流体圧アクチュエータ、137 流体圧導管、138 第2流体圧アクチュエータ、139 流体圧導管、142 舵、143 舵、145 連結棒、146 シリンダ、147 シリンダ、148 ピストンロッド、149 ピストンロッド、248 連結棒、250 舵、304 流体圧導管、306 流体圧導管、320 第1アクチュエータポート、322 第2アクチュエータポート、324 第3アクチュエータポート、326 第4アクチュエータポート、348 旋回軸、349 旋回軸、350 旋回軸、351 旋回軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル、第1流体圧ステアリング装置、第2流体圧ステアリング装置、および2つの流体圧アクチュエータを含み、各前記流体圧アクチュエータは作動流体を収容または放出する2つのアクチュエータポートを有し、前記ハンドルおよび前記第1流体圧ステアリング装置は前記アクチュエータポートのうち最初の2つに流体が通過可能に接続され、
前記第2流体圧ステアリング装置は電動のパワーステアリングポンプを含み、前記パワーステアリングポンプは第2アクチュエータポートに流体が通過可能に接続され、センサは、前記ハンドルが操舵されるとき各前記流体圧アクチュエータのうち少なくとも一方の作動を感知するために前記第1流体圧ステアリング装置に動作可能に関連付けられ、コントローラは前記パワーステアリングポンプと前記パワーステアリングポンプを作動させる前記センサとに動作可能に接続され、2つの前記流体圧アクチュエータが互いに連動して移動するように前記第2アクチュエータポートの2つに作動流体を噴出することを特徴とする流体圧ステアリングシステム。
【請求項2】
前記パワーステアリングポンプは通常の操舵動作モード中、前記第1流体圧ステアリング装置と独立していることを特徴とする、
請求項1の流体圧ステアリングシステム。
【請求項3】
前記パワーステアリングポンプは通常の操舵動作モード中、タンクとは別に、前記第1流体圧ステアリング装置と独立していることを特徴とする、
請求項1の流体圧ステアリングシステム。
【請求項4】
前記第1流体圧ポートのうち1番目の2つは前記2つの流体圧アクチュエータの1つめ上にあり、前記流体圧ポートのうち2番目の2つは前記2つの流体圧アクチュエータの2つめ上にあることを特徴とする、
請求項1の流体圧ステアリングシステム。
【請求項5】
前記センサは電子センサであり、
前記コントローラは電子コントローラであることを特徴とする、
請求項1の流体圧ステアリングシステム。
【請求項6】
前記センサは圧力センサであることを特徴とする、
請求項5の流体圧ステアリングシステム。
【請求項7】
前記センサは位置センサであることを特徴とする、
請求項5の流体圧ステアリングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−28342(P2013−28342A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208259(P2012−208259)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2008−25838(P2008−25838)の分割
【原出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(503154215)マリン カナダ アクイジション インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】