説明

流体圧ユニット

【課題】電動流体圧ポンプのモータをインバータ回路で速度制御する流体圧ユニットにおいて、回生抵抗の小型化を図る。
【解決手段】流体のタンク(16)、インバータ回路(31)、電動流体圧ポンプ(11)を備えた油圧ユニットにおいて、電動流体圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)からタンク(16)に繋がるバイパスライン(101)を設ける。バイパスライン(101)には、絞り弁(103)、及び吐出ポート(D)とタンク(16)間の流体の流れを、吐出ポート(D)が正圧の場合は阻止し、吐出ポート(D)が負圧の場合はタンク(16)から吐出ポート(D)に向かう流れを、連通もしくは、阻止の選択を行う機能を有する制御弁(102,104)を設け、流体エネルギーに変換された運動エネルギーの一部もしくは全量を、絞り弁(103)での圧力損失により熱変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータなどの負荷を駆動する作動流体を供給する流体圧ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体圧ポンプによって流体を圧送してアクチュエータを駆動させる流体圧ユニットが知られている。この種の流体圧ユニットとして、例えば特許文献1に油圧ユニットが開示されている。この油圧ユニットは、油圧ポンプ(流体圧ポンプ)と、油圧シリンダ(アクチュエータ)と、タンクとを備えている。油圧ポンプは、可変速のモータによって駆動されることにより、タンクから作動油を吸入して油圧シリンダへ圧送する。これにより、油圧シリンダが駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−214510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧ユニットには、油圧ポンプ用のモータをインバータ回路で駆動するものがある。このような油圧ユニットでは、アクチュエータ(負荷)を減速する際に、該負荷の慣性による運動エネルギーによってモータの速度が目標速度を上回る状態(いわゆる自走状態)となることがある。自走状態では、油圧ポンプの吐出圧力は負圧となる。そして、自走状態では、モータは、回転方向に対して負のトルクを発生させる必要が生じて回生運転を行う。モータが回生運転を行うと、モータは発電機として機能し、電力を発生する。そのため、モータをインバータ回路で速度制御する油圧ユニットには、過電圧からインバータ回路などを保護するために、回生抵抗によって電力を消費させるものがある。この回生抵抗は、回生運転時に非常に大きな熱を発生させる。
【0005】
上述の回生抵抗は油圧ユニット用の制御盤内に設置させることが多く、制御盤内の温度を上昇させ、他の部品へ熱の影響が及ぶ可能性がある。そのため、回生抵抗の周囲には他の部品を配置しないようにして空間を開けておく必要があり、そのような配置は、装置の大型化の要因になる。また、比較的慣性が大きな負荷を油圧ユニットに接続するためには、回生抵抗もそれに応じて大型化する必要があり、この点も装置の大型化の要因になる。
【0006】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、モータをインバータ回路で駆動する流体圧ユニットにおいて、回生抵抗の小型化を図ることを目的としている。
【0007】
また、コンバータ回路は交流電源から得た電力を直流に変換する機能のみを有するものが一般的であるが、直流母線の電圧が上昇した場合に、直流から交流への逆変換を行い交流電源に電力を回生する機能を有するものがある(以降、簡略化のため、電源回生付コンバータと記する)。このようなコンバータを使用する場合、モータの回生運転により発生する最大電力を電源に回生するだけの容量を有している必要がある。しかしながら、モータから最大電力が回生される頻度が低い場合では、電源に回生される実電力量は少なくなり、コストパフォーマンスの悪いシステムとなっている。
【0008】
本発明は、このような問題においても、電源回生付コンバータの最大回生電力容量の低いものを適用することを可能とし、装置の小型化およびコストパフォーマンスの向上させることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
流体のタンク(16)と、
電力を出力するインバータ回路(31)と、
前記インバータ回路(31)の電力で速度制御され、前記タンク(16)から流体を吸入して吐出し、該流体の圧力で負荷を駆動する電動流体圧ポンプ(11)と、
前記電動流体圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)から前記タンク(16)に繋がるバイパスライン(101)とを備え、
前記バイパスライン(101)には、絞り弁(103)、及び前記吐出ポート(D)と前記タンク(16)間の流体の流れを、吐出ポート(D)が正圧の場合は阻止し、吐出ポート(D)が負圧の場合はタンク(16)から吐出ポート(D)に向かう流れを、連通もしくは、阻止の選択を行う機能を有する制御弁(102,104)が設けられており、流体エネルギーに変換された運動エネルギーの一部もしくは全量を、前記絞り弁(103)での圧力損失により熱変換することを特徴とする。
【0010】
この構成では、吐出ポート(D)が正圧の場合は、回生アシスト油圧回路(100)は作動しない。負荷の減速などにより吐出ポート(D)が負圧になった時、流体動力は、タンク(16)から回生アシスト油圧回路(100)を経由して供給される流れと、電動流体圧ポンプ(11)を経由して供給される流れとに分配される。回生アシスト油圧回路(100)では、圧力損失により流体動力は熱変換され、電動流体圧ポンプ(11)では回転力に変換された後に、電動流体圧ポンプ(11)のモータ(12)を通じて発電され、回生抵抗(24)で熱変換して消費される。
【0011】
また、第2の発明は、
第1の発明の流体圧ユニットにおいて、
前記制御弁(102,104)は、チェックバルブ(102)又は電磁弁(104)であることを特徴とする。
【0012】
この構成では、例えば、電磁弁(104)が必要に応じてON/OFF制御され、電動流体圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)と前記タンク(16)間の流体の流れを制御する。
【0013】
また、第3の発明は、
第1の発明の流体圧ユニットにおいて、
前記バイパスライン(101)は、複数設けられ、
それぞれのバイパスライン(101)に、前記絞り弁(103)及び前記制御弁(104)が設けられ、
それぞれの制御弁(104)は、開閉制御可能であることを特徴とする。
【0014】
この構成では、複数のバイパスライン(101)を使い分けることで、アシスト量(後述)を調整することが可能になる。
【0015】
また、第4の発明は、
第1の発明の流体圧ユニットにおいて、
前記絞り弁(103)は、絞り量が可変であることを特徴とする。
【0016】
この構成では、絞り弁(103)の絞り量を調整することでアシスト量(後述)を調整することが可能になる。
【0017】
また、第5の発明は、
第4の発明の流体圧ユニットにおいて、
電磁比例絞り弁(105)で、前記制御弁(104)と前記絞り弁(103)の両者を兼ねることを特徴とする。
【0018】
この構成では、1つの電磁比例絞り弁(105)を油圧配管(14)で接続することで回生アシスト油圧回路(100)が構成される。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、回生抵抗(24)の小型化、もしくは電源回生付コンバータの容量低減が可能になる。
【0020】
また、第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、例えば、前記制御弁(102,104)として電磁弁(104)を採用した場合には、該電磁弁(104)によって、必要に応じて回生アシスト油圧回路の作動の有無を選択することが可能になる。
【0021】
また、第3、4の発明によれば、それぞれ、アシスト量を調整できるので、回生電力量に応じた最適なアシスト量で、回生アシスト油圧回路(100)を動作させることが可能になる。
【0022】
また、第5の発明によれば、簡単な構成で、アシスト量が可能な回生アシスト油圧回路(100)を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る油圧ユニットの全体構成を示す油圧回路図である。
【図2】図2は、実施形態1における電力供給部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施形態2における回生アシスト油圧回路の構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態2のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2における回生アシスト油圧回路の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、実施形態3における回生アシスト油圧回路の構成を示す図である。
【図7】図7は、実施形態3におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、実施形態3における回生アシスト油圧回路の動作を説明するフローチャートである。
【図9】図9は、実施形態4における回生アシスト油圧回路の構成を示す図である。
【図10】図10は、実施形態4におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、実施形態4における回生アシスト油圧回路の動作を説明するフローチャートである。
【図12】図12は、油圧ポンプの吐出圧力を加味して回生アシストの要否判定を行うシステムの回生アシスト油圧回路の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
《発明の実施形態1》
以下の各実施形態では、本発明の流体圧ユニットの例として、油圧ユニットを説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る油圧ユニット(10)の全体構成を示す油圧回路図である。この油圧ユニット(10)は、例えばマシニングセンタ等の工作機械に用いられる。工作機械は、図示しないが、例えばチャック、心押台クランプ、刃物台クランプ等のように、ワークや工具を固定する複数の固定装置(駆動対象)を有し、これら固定装置をアクチュエータ(後述の油圧シリンダ(13))で駆動する。なお、ここでは、ワークをチャッキングするチャックを駆動するものとして説明するが、他の心押台クランプ等を駆動する場合でも同様の動作および制御が行われる。
【0026】
図1に示すように、油圧ユニット(10)は、油圧ポンプ(11)、モータ(12)、方向切換弁(15)、油タンク(16)、リリーフ弁(25)、回生アシスト油圧回路(100)、主機制御盤(20)、及びコントローラ(21)を備え、油圧シリンダ(13)に接続されている。なお、油圧シリンダ(13)は、工作機械のチャックを駆動するもので、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油が供給されて駆動する流体圧アクチュエータの一例である。この油圧シリンダ(13)は、ピストンによって区画されたヘッド室(13a)およびロッド室(13b)を有している。油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)およびロッド室(13b)と、油圧ポンプ(11)の吐出側および油タンク(16)とは、油圧配管(14)によって接続されている。そして、油圧シリンダ(13)は、ヘッド室(13a)に作動油が供給されると、伸長動作してチャックを閉じる動作を行う。また、油圧シリンダ(13)は、ロッド室(13b)に作動油が供給されると、収縮動作してチャックを開く動作を行う。
【0027】
油圧ポンプ(11)は、流体としての作動油を油タンク(16)から吸入して吐出する電動流体圧ポンプを構成している。この油圧ポンプ(11)は、例えばギアポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ等の固定容量型ポンプで構成されている。
【0028】
モータ(12)は、油圧ポンプ(11)を駆動する可変速モータである。このモータ(12)は、自身に内蔵されている回転速度制御用エンコーダ(図示せず)により油圧ポンプ(11)の吐出流量に相当する回転速度を検出している。
【0029】
方向切換弁(15)は、油圧配管(14)の途中に設けられ、該油圧配管(14)を連通状態と遮断状態とに切り換えるように構成されている。この方向切換弁(15)は、第1および第2の2つの電磁ソレノイド(15a,15b)を有する4ポート3位置スプリングセンタ式電磁切換弁である。方向切換弁(15)は、4ポートのうち、Aポートが油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)に、Bポートが油圧シリンダ(13)のロッド室(13b)に、Pポートが油圧ポンプ(11)の吐出側に、Rポートが油タンク(16)にそれぞれ油圧配管(14)を介して連通している。
【0030】
方向切換弁(15)は、各電磁ソレノイド(15a,15b)のON/OFF動作によって、中立位置と第1位置と第2位置とに切り換わる。方向切換弁(15)は、中立位置では4つのポートが互いに遮断状態になり、第1位置ではPポートとAポートが連通し且つBポートとRポートが連通し、第2位置ではPポートとBポートが連通し且つAポートとRポートが連通する。
【0031】
リリーフ弁(25)は、油圧ポンプ(11)の吐出側の油圧配管(14)と油タンク(16)との間に設けられ、油圧ポンプ(11)の吐出圧力が所定値以上になると、油圧ポンプ(11)が吐出した作動油を油タンク(16)に戻すようになっている。
【0032】
回生アシスト油圧回路(100)は、バイパスライン(101)、チェックバルブ(102)、及び絞り弁(103)を備えている。バイパスライン(101)は、電動流体圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)に繋がる油圧配管(14)から、タンク(16)に繋がる油圧配管である。このバイパスライン(101)の途中には、チェックバルブ(102)と絞り弁(103)とが設けられている。チェックバルブ(102)は、吐出ポート(D)からタンク(16)への作動油の逆流を防止するものである。このチェックバルブ(102)は、本発明の制御弁の一例である。
【0033】
主機制御盤(20)は、工作機械を制御するためのもので、方向切換弁(15)を切換制御してチャックを動作させるものである。つまり、主機制御盤(20)は、加工状況に応じて方向切換弁(15)の各電磁ソレノイド(15a,15b)を駆動制御する。これにより、方向切換弁(15)が各位置(中立位置、第1位置、第2位置)に切り換わる。
【0034】
コントローラ(21)は、インバータ制御部(22)、電力供給部(23)、及び回生抵抗(24)を備えている。
【0035】
図2は、本実施形態における電力供給部(23)の構成を示すブロック図である。図2に示すように、電力供給部(23)は、コンバータ回路(30)とインバータ回路(31)を備えている。コンバータ回路(30)は、交流電源(例えば200Vの三相交流)に接続され、交流を直流に変換する。インバータ回路(31)は、コンバータ回路(30)の出力をインバータ制御部(22)の制御に応じた電力に変換してモータ(12)に供給する。また、電力供給部(23)は、モータ(12)に制動を加えた際に、該モータ(12)から電力が回生されるようになっている。回生された電力は、コンバータ回路(30)(例えば平滑コンデンサ)で回生できる量は、該コンバータ回路(30)に回生する。また、電力供給部(23)には、回生抵抗(24)が接続されている。回生抵抗(24)は、コンバータ回路(30)に回生できない電力を熱に変換する。
【0036】
インバータ制御部(22)は、負荷状態に合わせて、モータ(12)を駆動制御する。具体的には、インバータ回路(31)に対して回転数指令(S0)を出力して、インバータ回路(31)の出力周波数を制御する。
【0037】
〈油圧ユニットの動作〉
ここでは、工作機械のチャックを閉じ動作させて加工物等を固定し(掴み)、チャックを開き動作させて加工物等を放す動作を例として説明する。
【0038】
インバータ制御部(22)は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力が予め定めた設定圧力、設定流量になるように、モータ(12)の回転数を駆動制御する。待機状態では方向切換弁(15)は中立状態にあり、油圧ポンプ(11)の回転数は油圧回路の漏れ流量を補う程度の低い状態であり、吐出圧力は設定圧力で保圧されている。
【0039】
チャックを閉じる時、方向切換弁(15)が第1位置に切り換わり、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)に作動油が供給される。油圧ポンプ(11)の吐出圧力は急激に低下する一方、油圧ポンプ(11)の運転回転数は、設定流量まで急速に急激に増大した後、設定流量で駆動されることで油圧シリンダ(13)は一定速度で駆動される。そして、チャックが加工物を掴んだことで、シリンダの動きは停止し、油圧ポンプ(11)の吐出圧力は設定圧力まで上昇し、この圧力を維持するように油圧ポンプ(11)の回転数は低下し、待機状態と同様に保圧状態となる。この状態での油圧ポンプ(11)の吐出圧力は正圧である。
【0040】
また、チャックを開く時、上記状態から方向切換弁(15)が第2位置に切り換わり、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)のヘッド室(13b)に作動油が供給され、シリンダは後退方向に移動を開始する。シリンダ停止までの油圧ポンプ(11)の作動については、チャック閉の場合と同様である。
【0041】
−油圧シリンダ制動時の動作−
例えば、チャックを開状態から閉状態にする際、加工物に傷をつけないようにソフトに掴む必要がある場合などにおいては、加工物近くまでは時間短縮のため高速に移動し、チャックを低速で加工物に触れされる必要がある。このような場合、油圧シリンダ(13)の作動開始時の作動は前述と同様である。しかし、ソフトタッチのために油圧シリンダ(13)が目標位置(すなわちチャックの開位置)に近づくと、インバータ制御部(22)は、インバータ回路(31)より出力する周波数を低下させる。
【0042】
これにより、モータ(12)の回転速度は減速してゆく。すなわち、モータ(12)は、インバータ回路(31)の電力で駆動されている。このとき、モータ(12)は、油圧シリンダ(13)の慣性による運動エネルギーによって、速度が目標速度を上回る状態(いわゆる自走状態)となることがある。モータ(12)が自走状態の場合は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力は負圧となる。そして、自走状態では、モータ(12)は、回転方向に対して負のトルクを発生させる必要が生じて回生運転を行う。すなわち、このときのモータ(12)は発電機として機能し、モータ(12)で発電した電力が電力供給部(23)に回生される。電力供給部(23)に回生された電力は、コンバータ回路(30)に回生され、コンデンサなどによって吸収されるが、直流母線の電圧が規定値以上になった場合、回生抵抗(24)へ通電させることにより、熱変換されて消費される。
【0043】
一方、回生アシスト油圧回路(100)では、油圧ポンプ(11)の吐出圧力が負圧となったことによって、油タンク(16)の作動油が、バイパスライン(101)の絞り弁(103)とチェックバルブ(102)を経由して油圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)側の油圧配管(14)に引き込まれる。このように、作動油が絞り弁(103)を通過することによって、作動油の運動エネルギーが熱に変わる。つまり、負荷の慣性による運動エネルギーが、ここでも熱に変換されたことになる。
【0044】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、負荷の減速時に、回生抵抗(24)と回生アシスト油圧回路(100)が分担して運動エネルギーの熱変換を行う。したがって、本実施形態では、回生抵抗(24)の小型化、もしくは削除が可能になる。
【0045】
また、電源回生付コンバータを適用したシステムにおいては、コンバータの回生容量の低減が可能となる。
【0046】
《発明の実施形態2》
実施形態2の油圧ユニット(10)は、コントローラ(21)、及び回生アシスト油圧回路(100)の構成が実施形態1とは異なっている。なお、以下では、説明の便宜のため、回生運転時の運動エネルギーを熱に変換することを回生制動という。
【0047】
〈回生アシスト油圧回路(100)の構成〉
図3は、実施形態2における回生アシスト油圧回路(100)の構成を示す図である。図3に示すように、この回生アシスト油圧回路(100)は、バイパスライン(101)、絞り弁(103)、及び電磁弁(104)を備えている。絞り弁(103)と電磁弁(104)は、何れもバイパスライン(101)の途中に設けられている。すなわち、本実施形態の回生アシスト油圧回路(100)は、実施形態1の回生アシスト油圧回路(100)におけるチェックバルブ(102)を電磁弁(104)に代えたものである。
【0048】
電磁弁(104)は、コントローラ(21)(詳しくは後述の回生アシスト駆動部(113))によって、開閉が制御される。油圧ポンプ(11)の吐出圧力が負圧、かつ電磁弁(104)が開状態の場合に回生制動が行われ、閉の場合には回生制動は行われない。この電磁弁(104)は、本発明の制御弁の一例である。
【0049】
〈コントローラ(21)の構成〉
図4は、実施形態2のコントローラ(21)の構成を示すブロック図である。このコントローラ(21)は、実施形態1のコントローラ(21)に、駆動頻度検出部(110)、回生負荷状態検出部(111)、回生アシスト判断部(112)、及び回生アシスト駆動部(113)を追加したものである。
【0050】
駆動頻度検出部(110)は、回生抵抗(24)による回生制動の頻度(回生抵抗駆動頻度)を検出するようになっている。
【0051】
回生負荷状態検出部(111)は、前記回生抵抗駆動頻度、及び回生抵抗(24)の温度に基づいて、回生抵抗(24)が過負荷状態か否かを判定する。回生負荷状態検出部(111)は、判定結果を示す信号(過負荷状態信号(S2))を回生アシスト判断部(112)に出力する。具体的には、回生抵抗(24)の温度が所定閾値を超えた場合や、前記回生抵抗駆動頻度が所定閾値を超えた場合などに回生抵抗(24)が過負荷状態であると判断する。なお、回生抵抗(24)の温度は、例えばサーミスタやバイメタルなどで検出する。
【0052】
インバータ制御部(22)は、モータの目標回転数と現在回転数の関係、もしくはモータトルクの指令状態などを元に、回生アシスト判断部(112)に回生運転状態情報(回生電力量など)を出力する。
【0053】
コンバータ回路(30)は、通常は交流電源を整流平滑してインバータ回路へ直流電力を供給している。モータが回生運転して回生電力の発生時はコンバータ回路(30)に内蔵されているコンデンサによって吸収し、次のモータ力行時に電力を再利用することで省電力化を図る。しかしながら、直流母線の電圧が規定値以上になった場合、回生抵抗(24)へ通電させることにより、熱変換して消費する。
【0054】
また、コンバータ回路(30)が電源回生付コンバータである場合、電源回生可能な電力量の情報を回生アシスト判断部(112)に出力している。
【0055】
回生アシスト駆動部(113)は、回生アシスト判断部(112)の判断結果に応じて電磁弁(104)を駆動するようになっている。
【0056】
〈油圧シリンダ制動時の動作〉
本実施形態では、一般的なコンバータ回路(電源回生が無いもの)を例にあげると、回生アシスト判断部(112)は、インバータ制御部(22)からの回生運転情報が回生電力発生となった場合に回生アシスト駆動部(113)に指令し、回生アシスト油圧回路(100)の電磁弁を励磁させることでアシスト回生アシスト油圧回路(100)を連通させて、回生制動を行わせる。
【0057】
また、電源回生付コンバータを適用している場合においては、インバータ制御部(22)からの回生運転情報から得られる回生電力量がコンバータ回路(30)の電源回生容量を超えると判断した時に、回生アシスト駆動部(113)に指令し、回生アシスト油圧回路(100)の電磁弁を励磁させることでアシスト回路を連通させて、回生制動を行わせる。
【0058】
図5は、本実施形態における回生アシスト油圧回路(100)の動作を説明するフローチャートである。同図に示すように、コントローラ(21)は、まず、ステップST01の処理を行う。ステップST01では、駆動頻度検出部(110)が、回生抵抗(24)の負荷状態を検出する。ステップST02では、回生アシスト判断部(112)がインバータ制御部(22)からの回生運転情報の1つである回生電力量が0以下(回生状態でない)の場合にはステップST06の処理に移行する。ステップST06では、回生アシスト判断部(112)が、回生アシスト駆動部(113)を介して、回生アシスト油圧回路(100)の電磁弁(104)を閉状態にする。これにより、回生アシスト油圧回路(100)は回生制動を行わない。
【0059】
また、ステップST02において回生電力量>0(回生電力あり)の場合は、ステップST03に移行する。
【0060】
ステップST03では、回生電力量とコンバータ回路(30)の電源回生可能電力との比較が行われ、回生電力の全てが電源回生可能であると判断された場合は、ステップST06に移行し、回生アシスト油圧回路(100)は回生制動を行わない。また、回生電力の全てを電源回生できないと判断された場合は、ステップST04に移行する。
【0061】
ここで、電源回生機能を有しないコンバータ回路を使用している場合は、電源回生可能電力=0として取り扱うことで、同じフローチャートを使用することができる。
【0062】
ステップST04では、ステップST01で取得した回生抵抗の状態が過負荷状態であった場合、ステップST07に移行し、そうでない場合はステップST05に移行する。
【0063】
ステップST05では、回生抵抗が通電状態であればステップST07に移行し、そうでない場合はステップST06に移行して回生アシスト油圧回路(100)は回生制動を行わない。
【0064】
ステップST07では、回生アシスト駆動部(113)を介して電磁弁(104)を駆動し、回生アシスト油圧回路(100)を連通させる。これにより、油タンク(16)の作動油が、電磁弁(104)と絞り弁(103)を経由して油圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)側の油圧配管(14)に引き込まれる。このように、作動油が絞り弁(103)を通過することによって、作動油の運動エネルギーが熱に変わる。つまり、負荷の慣性による運動エネルギーが、熱変換される。
【0065】
〈本実施形態における効果〉
実施形態1では、回生アシスト油圧回路(100)の作動は油圧ポンプ(11)の吐出圧力(D)によって決定され、吐出圧力(D)が負圧となった場合は、常に慣性による運動エネルギーを回生アシスト油圧回路(100)で熱変換して消費する。本実施形態では、コンバータ部(30)に内蔵されるコンデンサで吸収可能な限りは、モータ(12)を介して発電して電力として蓄積した上で次のモータ(12)の力行において再利用し、それを超えて回生抵抗で熱変換される状態になった場合のみ回生アシスト油圧回路(100)により消費させることが可能となり、第1の実施形態での回生抵抗(24)の小型化のメリットはそのままに省エネ性が増すことが可能である。
【0066】
《発明の実施形態3》
実施形態3の油圧ユニット(10)は、コントローラ(21)、及び回生アシスト油圧回路(100)の構成が実施形態2とは異なっている。
【0067】
〈回生アシスト油圧回路の構成〉
図6は、実施形態3における回生アシスト油圧回路(100)の構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態の回生アシスト油圧回路(100)は、複数のバイパスライン(101)を備えている。図6は、2つのバイパスライン(101)を設けた例である。それぞれのバイパスライン(101)の途中には、電磁弁(104)と絞り弁(103)が設けられている。本実施形態では、これらの絞り弁(103)は、異なる絞り径を有しており、回生アシストの必要量に応じて、いずれかの電磁弁が通電される。なお、両方の電磁弁を同時に通電することで更にもう1つの絞り径として取り扱うことも可能である。
【0068】
〈コントローラ(21)の構成〉
図7は、本実施形態におけるコントローラ(21)の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態のコントローラ(21)は、実施形態2のコントローラ(21)に回生アシスト量演算部(114)を追加したものである。回生アシスト量演算部(114)は、前記回生抵抗駆動頻度、回生抵抗(24)の温度、回生電力量と回生可能電力量に基づいて、回生アシスト油圧回路(100)で回生すべきエネルギー量(アシスト量)を算出する。回生アシスト量演算部(114)は、求めたアシスト量に該当する数の電磁弁(104)を選択し、その選択情報を回生アシスト駆動部(113)に出力する。本実施形態の回生アシスト駆動部(113)は、回生アシスト量演算部(114)が選択した電磁弁(104)を開状態にして、選択した電磁弁(104)に係るバイパスライン(101)において回生制動を行わせる。
【0069】
〈油圧シリンダ制動時の動作〉
図8は、実施形態3における、回生アシスト油圧回路(100)の動作を説明するフローチャートである。同図に示すように、本実施形態では、図5に示したステップST07に代えて、ステップST31〜ST33を有している。すなわち、ステップST31〜ST33は、回生アシスト油圧回路(100)で回生制動を行う場合に行われる処理である。
【0070】
本実施形態では、ステップST04,ST05の何れかで、回生アシストが必要であると判断された場合には、ステップST31の処理が行われる。ステップST31では、回生アシスト量演算部(114)が、回生アシスト油圧回路(100)で回生すべきエネルギー量(アシスト量)を算出し、ステップST32の処理に移行する。
【0071】
ステップST32では、回生アシスト量演算部(114)は、求めたアシスト量の該当する数の電磁弁(104)を選択する。例えば、回生アシスト油圧回路(100)の2つの絞り弁(103)の開度を25%、50%とした場合、電磁弁(104)を1つまたは2つ作動させることで、0%,25%,50%,75%の組合せを生成することが可能である。回生アシスト量演算部(114)は、その選択情報を回生アシスト駆動部(113)に出力する。
【0072】
次に、コントローラ(21)は、ステップST33の処理を行う。ステップST33では、回生アシスト駆動部(113)は、選択された電磁弁(104)を開状態にする。これにより、油タンク(16)の作動油が、選択された電磁弁(104)と絞り弁(103)を経由して油圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)側の油圧配管(14)に引き込まれる。このように、作動油が選択された絞り弁(103)を通過することによって、作動油の運動エネルギーが熱に変わる。つまり、負荷の慣性による運動エネルギーが、ここでも熱に変換されたことになる。
【0073】
〈本実施形態における効果〉
以上のように本実施形態によれば、回生抵抗(24)の状態や、回生電力量に応じた最適なアシスト量で、回生アシスト油圧回路(100)を動作させることが可能になる。
【0074】
《発明の実施形態4》
実施形態4の油圧ユニット(10)は、コントローラ(21)、及び回生アシスト油圧回路(100)の構成が実施形態2とは異なっている。
【0075】
〈回生アシスト油圧回路の構成〉
図9は、実施形態4における回生アシスト油圧回路(100)の構成を示す図である。図9に示すように、本実施形態の回生アシスト油圧回路(100)は、バイパスライン(101)の途中に、電磁比例絞り弁(105)を備えている。電磁比例絞り弁(105)は、ソレノイドで駆動される絞り弁であり、比例流量制御を行うことができるようになっている。この電磁比例絞り弁(105)は、閉状態にも制御することができる。本実施形態では、電磁比例絞り弁(105)で、電磁弁(104)(制御弁)と絞り弁(103)の両者を兼ねている。
【0076】
〈コントローラ(21)の構成〉
図10は、本実施形態におけるコントローラ(21)の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態のコントローラ(21)は、実施形態3のコントローラ(21)に開度演算部(115)を追加したものである。開度演算部(115)は、回生アシスト量演算部(114)が求めたアシスト量に応じて、電磁比例絞り弁(105)の開度を求めるようになっている。電磁比例絞り弁(105)の開度は、例えば、回生アシストが不要場合には全閉になる。
【0077】
〈油圧シリンダ制動時の動作〉
図11は、実施形態4における回生アシスト油圧回路(100)の動作を説明するフローチャートである。同図に示すように、本実施形態では、図5に示したステップST07に代えて、ステップST31,ST41,ST42を有している。すなわち、ステップST31,ST41,ST42は、回生アシスト油圧回路(100)で回生制動を行う場合に行われる処理である。
【0078】
ステップST04,ST05の何れかで、回生アシストが必要であると判断された場合には、ステップST31の処理が行われる。ステップST31では、回生アシスト量演算部(114)が、回生アシスト油圧回路(100)で回生すべきエネルギー量(アシスト量)を算出し、ステップST41の処理に移行する。
【0079】
ステップST41では、開度演算部(115)は、求めたアシスト量に該当する、電磁比例絞り弁(105)の開度を算出する。開度演算部(115)は、その開度情報を回生アシスト駆動部(113)に出力する。
【0080】
次に、コントローラ(21)は、ステップST42の処理を行う。ステップST42では、回生アシスト駆動部(113)は、前記開度情報に応じて、電磁比例絞り弁(105)の開度を調整する。これにより、油タンク(16)の作動油が、電磁比例絞り弁(105)を経由して油圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)側の油圧配管(14)に引き込まれる。このように、作動油が電磁比例絞り弁(105)を通過することによって、作動油の運動エネルギーが熱に変わる。つまり、負荷の慣性による運動エネルギーが、ここでも熱に変換されたことになる。
【0081】
〈本実施形態における効果〉
以上のように本実施形態においても、回生抵抗(24)の状態や、回生電力量に応じた最適なアシスト量で、回生アシスト油圧回路(100)を動作させることが可能になる。
【0082】
《実施形態4の変形例》
実施形態4で説明した過負荷状態や回生電力量などのパラメータに加え、油圧ポンプ(11)の吐出圧力を判定に用いることで、より正確な回生アシスト量を求めることが可能になる。図12は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力を加味して回生アシストの要否判定を行うシステムの構成例である。この例では、実施形態2の回生アシスト油圧回路(100)に圧力センサ(116)を付加している。詳しくは、図12に示すように、油圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)に繋がる油圧配管(14)に圧力センサ(116)を設けてある。
【0083】
《その他の実施形態》
なお、回生アシストの要否判断に用いるパラメータ(回生抵抗(24)の温度、回生電力量など)は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、アクチュエータなどの負荷を駆動する作動流体を供給する流体圧ユニットとして有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 油圧ユニット(流体圧ユニット)
11 油圧ポンプ(電動流体圧ポンプ)
16 油タンク(タンク)
31 インバータ回路
101 バイパスライン
102 チェックバルブ(制御弁)
103 絞り弁
104 電磁弁(制御弁)
105 電磁比例絞り弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体のタンク(16)と、
電力を出力するインバータ回路(31)と、
前記インバータ回路(31)の電力で速度制御され、前記タンク(16)から流体を吸入して吐出し、該流体の圧力で負荷を駆動する電動流体圧ポンプ(11)と、
前記電動流体圧ポンプ(11)の吐出ポート(D)から前記タンク(16)に繋がるバイパスライン(101)とを備え、
前記バイパスライン(101)には、絞り弁(103)、及び前記吐出ポート(D)と前記タンク(16)間の流体の流れを、吐出ポート(D)が正圧の場合は阻止し、吐出ポート(D)が負圧の場合はタンク(16)から吐出ポート(D)に向かう流れを、連通もしくは、阻止の選択を行う機能を有する制御弁(102,104)が設けられており、流体エネルギーに変換された運動エネルギーの一部もしくは全量を、前記絞り弁(103)での圧力損失により熱変換することを特徴とする流体圧ユニット。
【請求項2】
請求項1の流体圧ユニットにおいて、
前記制御弁(102,104)は、チェックバルブ(102)又は電磁弁(104)であることを特徴とする流体圧ユニット。
【請求項3】
請求項1の流体圧ユニットにおいて、
前記バイパスライン(101)は、複数設けられ、
それぞれのバイパスライン(101)に、前記絞り弁(103)及び前記制御弁(104)が設けられ、
それぞれの制御弁(104)は、開閉制御可能であることを特徴とする流体圧ユニット。
【請求項4】
請求項1の流体圧ユニットにおいて、
前記絞り弁(103)は、絞り量が可変であることを特徴とする流体圧ユニット。
【請求項5】
請求項4の流体圧ユニットにおいて、
電磁比例絞り弁(105)で、前記制御弁(104)と前記絞り弁(103)の両者を兼ねることを特徴とする流体圧ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132482(P2012−132482A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283013(P2010−283013)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】