説明

流体媒体の配量システム及び流体媒体の配量方法

【課題】市場で調達可能な各方式のディスペンサを用いて、流体媒体の配量システムの配量精度を改善する。
【解決手段】制御信号を伝送するためのインタフェース36、及び、センサ出力信号を伝送するためのインタフェース50を有する制御装置10と、インタフェース36からの制御信号により制御され、所定量の流体媒体を吐出させる流体媒体用ディスペンサ30と、インタフェース50からの制御信号により制御され、ディスペンサ30に配送される流体媒体の流量率を連続的に検出し、その流量率に対応するセンサ出力信号44を出力するセンサ・ユニット40とを備え、制御装置10は、センサ出力信号44を検出して該センサ出力信号44から配送された流体媒体の流量を演算し、その流量に従って設定された流体媒体の所定量に合致するように、ディスペンサ30から吐出される流体媒体の量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された所定量の流体媒体を配量(分配量を計量)する配量(ディスペンサ)システムに関し、特に微量(マイクロ)配量システムとも称される微量の流体媒体を配量する配量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々のタイプの配量システムが公知であり、特に微量配量システム又は微量ディスペンサとも称される配量システムが公知である。上記した従来の配量システムによれば、流体すなわち液体媒体と気体媒体の配量が可能である。本発明の範囲は、特に種々の異なる作動方式に基づく、いわゆる流量自在(流量制御)方式のディスペンサと考えることができる。
【0003】
いわゆる滴下方式のディスペンサでは、流体媒体が充填されるガラス製毛細管を備えており、1つ又は複数の圧電素子により拍動が励起され、それにより所定の単位時間ごとに所定数の滴が吐出される。
【0004】
他の方式の流量自在(流量制御)方式ディスペンサでは、貯蔵容器と連結される細いノズル又は毛細管を備えている。貯蔵容器には、流体媒体が充填され加圧状態下に置かれる。加圧状態下に置かれた貯蔵容器とノズル又は毛細管との間の導管を、例えば圧電素子方式の弁で開閉することにより、流体媒体を滴下配量することが可能になる。
【0005】
さらに他の方式の配量システムは、容積排除方式(「噴射方式」)に従って動作する。その配量システムは、極めて少量の流体媒体を充填するための、例えば薄いシリコン膜を備えている。このシリコン膜は、流体媒体が充填される液室に結合されており、例えば静電方式又は圧電方式の手段により励起(活性化)され、それにより液室から一定量の流体媒体を排除して外部へと吐出させる。
【0006】
いわゆるノズルディスペンサでは、流体媒体が充填された貯蔵容器が一時的に加圧状態下に置かれ、それにより細いノズル先端を介して一定量の流体媒体が吐出される。この方式は、非常に正確に配量できる訳ではない。そのため少量の流体媒体の場合にはあまり適していない。流体媒体の吐出される量は、加えられる圧力及び配量される時間により制御される。
【0007】
上述した滴下方式ディスペンサでは、流体媒体の小さな個々の滴が所定の頻度で吐出される。吐出される流体媒体の総量(容積)を算定するには、個々の滴の平均的な容積を決定するために、何回かの配量実験を実施しなければならない。その滴の平均的な容積により、例えば吐出された滴の数から、吐出された流体媒体の総量(容積)を算定することができる。その場合、滴数と吐出総量(容積)との間には直線的な依存関係、すなわち比例性が存在するという仮定を前提としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際の滴数と配量総量(容積)との間には、仮定したような固定的な直線関係は存在しないことが明らかになった。特に、配量される総量(容積)が少ない場合には重要な(無視できない)一定のずれ量の存在が認められた。「周囲、流体媒体又は配量ヘッドの温度」、「配量率」、「流体媒体が存在する環境の圧力」、「流体の粘度」等の種々のパラメータは、一定の滴数による吐出量を時間が経過するに従い大きなレベルで異ならせてしまう。そのため、常に同じ総量(容積)を維持するためには、常時、総量(容積)の帰還制御、すなわち滴数の定常的な制御が必要になるという問題を有している。
【0009】
従って、滴下方式で配量する従来の技術は、常時帰還制御することなしには要求された配量で吐出させることについて保証することができない制御方法と言える。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するために、市場で調達可能である上記した各方式のディスペンサを用いて、常時帰還制御することなしに配量の精度を改善できる流体媒体の配量システムを提供することを目的とする。尚、その配量の精度の改善は、使用されるディスペンサの各方式に本質的に従属しないで任意方式でもできるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために、本発明の流体媒体の配量システムは、予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量システムであって、制御信号を伝送するためのインタフェース、及び、少なくとも1つのセンサ出力信号を伝送するためのインタフェースを有する制御装置と、インタフェースを介して伝送される制御信号により制御され、所定量の流体媒体を吐出させる流体媒体用ディスペンサと、インタフェースを介して伝送される制御信号により制御され、ディスペンサに配送される流体媒体の流量率を連続的に検出し、その流量率に対応するセンサ出力信号を出力するセンサ・ユニットとを備え、制御装置は、センサ出力信号を検出して該センサ出力信号から配送された流体媒体の流量を演算し、その流量に従って設定された流体媒体の所定量に合致するように、ディスペンサから吐出される流体媒体の量を制御する。
【0012】
また、この流体媒体の配量システムにより実施される本発明の流体媒体の配量方法は、予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量方法であって、制御装置により配量処理が実施される間に、ディスペンサから吐出される流体媒体の量が連続的に流量率センサを用いて測定され、その測定された流体媒体の量に従ってディスペンサから吐出される流体媒体の量が所定量に合致するように制御される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、市場で調達可能である任意方式のディスペンサを用いて、常時帰還制御することなしに配量の精度を改善できる流体媒体の配量システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
【0015】
本実施形態では、ディスペンサ、特に簡単かつ安価なディスペンサ、並びに制御回路における流量率センサの統合により、高精度の配量システムが構成される。その配量システムにおいて、できる限りの高精度を達成するために、各流量率センサは分離されると共に、配量システム全体としての校正処理が必要である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る配量システムの基本構成を示す系統図である。
配量処理を制御するディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)制御手段24(又はマイクロ・プロセッサ制御手段)を含む制御装置10が、本実施形態の中心となる部分である。配量処理は、例えば外部からの始動信号12が入力されることにより開始される。
制御装置10は、独自で独立したユニットとして構成させるか、又は、例えばパーソナルコンピュータと適切なソフトウェアを用いて構成させることができる。
【0017】
流体媒体の配量される量が設定された値である配量設定値14は、制御装置10に外部から入力されるか、又は内部に記憶される。制御装置10は、制御信号16を介して、通常は配量ユニット及び電子制御ユニットを含む本来のディスペンサ30の動作を制御する。配量される流体媒体は、貯蔵容器32から配送システム部34(例えばホース、導管)を介してディスペンサ30に導かれる。配送システム部34の中には、センサ・ユニット40の一部として、制御装置10に実際の流量に応じたセンサ出力信号(電気信号)44を送出する流量率センサ42が配置される。制御装置10は、センサ・ユニット40からのセンサ出力信号44を判断し、その判断結果から流体媒体の実際の流量を算定し、その実際の流量に応じてディスペンサ30の動作を制御する。ディスペンサ30は、流体媒体の流量が配量設定値に達した時に遮断される。
【0018】
制御装置10は、好ましくは1つ又は複数のセンサ/ディスペンサ制御回路を同時に且つ相互に独立して制御できるように構成される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る配量システムのより詳細な構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示されるように、制御装置10は、その配量設定値及びデータを外部の上位制御装置26(例えばパーソナルコンピュータ)から受信するか、又は例えば入力用キーボード18のような入力装置から直接に入力される。さらに制御装置10は、アナログ又はディジタルのインタフェース20(又はデータ・ライン)を介して、上位制御装置26に測定値を送出することも可能である。制御装置10(又は上位制御装置26)には、好ましくは入力データ及び出力データを可視化するための表示装置22が接続される。制御装置10は、ディスペンサ30の動作を開始(始動)させたり停止させたりできる。その場合、制御装置10は、ディスペンサ30の制御ユニットに対応する制御信号16を送出する。制御装置10は、ディスペンサ30の電子制御ユニットにその他の必要となるパラメータ及び数値(例えば、温度、吐出率/滴下率)、又はコマンド(例えばオン/オフ)をアナログ又はディジタルのインタフェース36(又はデータ・ライン)を介して送出することもできる。
【0020】
センサ・ユニット40は、流量率センサ42、この流量率センサ42のアナログ出力信号を増幅する前置増幅器46、及び好ましくは記憶ユニット48(例えば、(E)EPROM)を備える。記憶ユニット48には、流量率センサ42のセンサ特性曲線52(図5)がデータ・テーブル又は数学的関数の型式で記憶される。
【0021】
流量率センサ42からのセンサ出力信号44は、通常はアナログ信号であって、好ましくは前置増幅され、制御装置10に入力される。制御装置10は、好ましくはディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)24を含む。DSP24は、記憶ユニット48に記憶されているセンサ特性曲線52を参照すると共に、流量率センサ42からのセンサ出力信号44に基づいて一定時間当たりの質量又は総量(容積)として流量を得ることができる。配量システムの始動時には、DSP24により記憶ユニット48に記憶されているデータが、好ましくは双方向でディジタルのインタフェース50を介して読み出される。この記憶ユニット48のデータは、DSP24により流量率センサ42の最初の校正の際に書き込まれる。その場合に、例えば型番号や製造データのような他のデータも記憶させることができる。制御装置10による実際の流量の算定は、所定のサンプリング・レートに対応させて可能な限り短時間となるように実施される。それに続き、サンプリング・レートを考慮して、流量の個々の算定値を積分することにより流体媒体の流量の総量(容積)を得ることができる。
【0022】
図6は、この配量システムにおけるディスペンサの遮断後も直ちには流体の流れが止まらず吐出される流体媒体量を示す後続流量特性曲線の一例を例示する線図である。
制御装置10は、さらにDSP24により特に配量システムの始動時に読み出されるこの配量システムの後続流量特性曲線54を記憶する記憶ユニット28を備えている。この後続流量特性曲線54については、以下に詳述する。
【0023】
図5は、流量率センサの代表的な特性曲線を例示する線図である。
図5におけるセンサ特性曲線52は、すなわち校正特性曲線でもあり、流量率センサ42のセンサ出力信号44と流量率との関係を示すと共に、三次の多項式による近似値との間の関係を示すものである。この多項式における係数は、用いられる流量率センサ毎に対応する異なる係数が使用される。センサ・ユニット40の出力を校正するためのセンサ特性曲線52としては、流量率センサ42の出力電圧が流量率に依存して変化していることから、可能な限り正確に参照値(校正前の流量率)を測定することにより吐出される流量を算定することができる。その場合のセンサ特性曲線52は、特に用いられる流量率センサ42、及び用いられる流体媒体により異なったものが使用される。その場合の参照値の測定は、例えば吐出される流体媒体流量を質量測定方式又は容積差算定方式により測定するか、又は既に検定されたセンサを用いて測定される。それに続いて、このセンサ特性曲線52は、センサ・ユニット40の記憶ユニット48{又は制御装置10(記憶装置28)}内のデータ・テーブル又は数学的関数式の型式の近似値として読み出される。その場合に、例えば温度差の方式(熱式)の流量率センサについてのセンサ特性曲線52は、好ましくは三次の多項式によるか又は2つの指数関数の和により近似されうることが当業者には理解できるであろう。
【0024】
さらにDSP24は、センサ特性曲線52のオフセットのレベルについても校正を実施する。そのために、例えば配量システムの始動後又は各配量処理の前のようなディスペンサ30が配量システムから取り外されている時に、図3に示されているセンサ出力信号44のオフセット電圧UOff(ゼロレベル線)が検出される。
【0025】
図3は、流量率センサ42のセンサ出力信号44の代表的な推移を示すタイミングチャートである。
図3のセンサ出力電圧44には、ディスペンサ30が投入される時点tの前に所定値のオフセット電圧UOffが示されている。このオフセット電圧の値は、制御装置10により補償され実際の流量の算定の際に考慮される値である。
【0026】
時点tでディスペンサ30の動作が開始されると、センサ出力電圧(センサ信号電圧)44は上昇を開始し、時点tで電圧Uに達し、流量測定の継続中ほぼ一定値(電圧U)に維持される。ディスペンサ30は、時点tになると遮断される。配量システム内の流体媒体の流れは、ディスペンサ30にもはや流体媒体が流れなくなっても直ちには流れを停止させることができないことから、なおわずかな量の流体媒体が吐出される。そのため、流量率センサ42による検出は図3の時点tまで継続される。時点tというのは、流量率センサ42が当初に算定されたオフセット電圧UOffに再び達した時点である。時点tから時点tまでに流れる流体媒体の後続流量は、流体媒体の種類、配量システムの全体構成、及び特に時点tから時点tまでに流れる流体媒体の流量率に応じて変化する。さらに流量率は、特に圧電式ディスペンサの駆動周波数や流体媒体の圧力に関係する。この後続流量は、吐出される流体媒体の総量(容積)の一部であり、そのため考慮に入れなければならないものである。
【0027】
上述した図6の後続流量特性曲線54は、上記したようにディスペンサ30の遮断後もなお吐出されて、流量率センサ42により検出される流体媒体量がどれほどの量であるかを算定している。後続流量は、ディスペンサ30の遮断後の流量を積分することにより算定される。この積分は、時点tで開始され時点tで終了される。後続流量特性曲線54は、配量システムにおける流体媒体の配送部品(ホース{導管}、ディスペンサ30など)や流体媒体の圧縮性に関係すると共に、特に流量率にも関係する。この流量率は、特に圧電式ディスペンサが駆動される周波数に関係(従属)し、又は圧力の影響を受けるディスペンサが動作する場合の圧力にも関係(従属)する。
【0028】
後続流量特性曲線54は、種々の流量に対して複数(例えば10)の個別の配量実験を実施することにより、個々に得られた各後続流量から算定される。後続流量特性曲線54の近似のためには、好ましくは三次の多項式又は2つの指数関数の和を用いることができる。
【0029】
過大量の流体媒体を吐出させないようにディスペンサ30の遮断時点を算定するために、吐出された流体媒体を連続的に検出した総量(容積)と共に、吐出周波数及び/又は流量率に対応する後続流量特性曲線の値(後続流量)が考慮される。例えばディスペンサ30を一定流量のもとで測定された総量が10.00mgの時に遮断した場合で、ディスペンサ30の遮断後に流量率センサ42によりある所定の流量がなお検出され、それが例えば0.04mgであったとする。事後に検出されるこの流量は、記憶ユニット28のデータ・テーブルに格納される。それを用いて10.00mgの総量(容積)を得るために、図3の一定流量時における総量が9.96mgとなる測定量のところで配量処理を終了させる。すなわち、配量処理において、流量率センサ42により検出される流体媒体量が流体媒体の所望の総量(容積)に達する前に、既に達している総量(容積)及び配量値のところで正しく遮断されることになる。
【0030】
図4は、障害(流体媒体の導管内への空気の混入)が発生した状態の流量率センサのセンサ出力信号の代表的な推移を示すチャートである。本実施形態の制御装置10では上記に加え、例えば図4に示されているように流体媒体の導管内に空気が混入した場合のような障害状態を、予め設定された制御限界を越える流量率の変化に基づいて検出することも可能である。このような空気混入は、センサ・ユニット40のセンサ出力信号44における短時間の電圧降下として認識することができる。制御装置10では、そのような状態を検出してそれを補償するか、又はその障害に対応する警報を発生させることができる。
【0031】
本実施形態は、市場で調達できるディスペンサ30を用いられるディスペンサ30にほぼ無関係に、配量精度を有するように改善することを課題としている。本実施形態は、始動信号及び停止信号を伝送するためのインタフェース36、並びにセンサ出力信号を伝送するためのインタフェース50を有する制御装置10を備え、所定量の流体媒体を配量するための配量システムに関する。始動信号及び停止信号により制御され、両信号間の時間間隔内に所定量の流体媒体を吐出するディスペンサ30と、始動信号により制御され、ディスペンサ30に導入される流体媒体の流量を連続的に検出し、その流量に応じてセンサ出力信号44を出力するセンサ・ユニット40とが備えられる。制御装置10は、センサ出力信号44を収集し、そのセンサ出力信号44からディスペンサ30から流体媒体の吐出された量を算定し、吐出された流体媒体の量が所定の流体媒体の量に達した時、ディスペンサ30に停止信号を送出する。又、本実施形態は、所定量の流体媒体を配量する方法に関する。この方法によれば、配量処理の間、ディスペンサ30から吐出される流体媒体量が、流量率センサ(センサ・ユニット40)を用いて、制御装置10により連続的に測定される。その場合には、所定の流体媒体量が吐出された時に配量処理が終了させられる。
【0032】
本実施形態の流体媒体の配量システムは、予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量システムであって、制御信号を伝送するためのインタフェース36、及び、少なくとも1つのセンサ出力信号を伝送するためのインタフェース50を有する制御装置10と、インタフェース36を介して伝送される制御信号により制御され、所定量の流体媒体を吐出させる流体媒体用ディスペンサ30と、インタフェース50を介して伝送される制御信号により制御され、ディスペンサ30に配送される流体媒体の流量率を連続的に検出し、その流量率に対応するセンサ出力信号44を出力するセンサ・ユニット40とを備え、制御装置10はセンサ出力信号44を検出してそのセンサ出力信号44から配送された流体媒体の流量を演算し、その流量に従って設定された流体媒体の所定量に合致するように、ディスペンサ30から吐出される流体媒体の量を制御する。
【0033】
制御装置10は、ディジタル・シグナル・プロセッサの制御手段又はマイクロ・プロセッサの制御手段を含んで構成される。配量される流体媒体は、配送システム部34を介して貯蔵容器32からディスペンサ30に導かれ、その場合の配送システム部34中には流量率センサ42を一部分とするセンサ・ユニット40が接続される。流量率センサ42は、温度差の方式、又は他の高精度で高速な流量検出の方式に基づいて動作する。センサ・ユニット40は、流量率センサ42と、その流量率センサ42のアナログ出力信号を増幅する前置増幅器46と、流量率センサ42の校正特性曲線をデータ・テーブルの型式又は数学的関数の型式の何れかで記憶する記憶ユニット48とを含んでいる。
【0034】
制御装置10は、測定値を上位制御装置26に送信するためのアナログ又はディジタル・インタフェース20を備える。制御装置10又は上位制御装置26には、入力データ及び出力データを可視化させるための表示装置22が接続される。制御装置10は、ディジタル・シグナル・プロセッサ24を含む。
【0035】
本実施形態の流体媒体の配量システムの配量方法は、予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量方法であって、制御装置10により配量処理が実施される間にディスペンサ30から吐出される流体媒体の量が連続的に流量率センサ42を用いて測定され、その測定された流体媒体の量に従ってディスペンサ30から吐出される流体媒体の量が前記所定量に合致するように制御される。
【0036】
ディスペンサ30から吐出される流体媒体の量は、測定された流量の総量(容積)に従って制御される。流量率は、制御装置10により記憶装置48に記憶されたセンサ特性曲線52に基づいて、流量率センサ42から出力されるセンサ出力信号44から演算された一定時間当たりの質量又は総量(容積)として演算される。現在の流量率の演算は、制御装置10によりセンサ出力信号44の所定のサンプリング・レート(又はサンプリング速度)に対応する所定の時間間隔で行われ、その場合、サンプリング・レート(又はサンプリング速度)を考慮して個々の流量率の測定値を積分することにより、流体媒体の総量を得る。配量処理は、外部からの始動信号12により開始される。
【0037】
配量される流体媒体のための配量設定値14は、制御装置10に外部の上位制御装置26から供給されるか、インタフェース(入力用キーボード18)を介して直接に入力される。制御装置10は、ディスペンサ30の電子制御ユニットに連続するパラメータ及び数値又はコマンドを、アナログ又はディジタル・インタフェース36又はデータ線を介して出力する。パラメータ及び数値は、温度又は吐出率/滴下率である。コマンドは、オン/オフコマンドである。
【0038】
流量率センサ42のセンサ出力信号44は、前置増幅されてアナログインタフェースを介して前記制御装置10に入力される。制御装置10は、吐出される流体媒体の流量を連続して算出する期間中に、流体媒体の配送システム部34のデッドタイムに発生される作用又は過剰な揺り戻しによる作用を検出する。流体媒体の配量システムの後続流量特性曲線54が、制御装置10の記憶ユニット28内に記憶され、配量システムの始動の際に制御装置10により選択されるように制御される。
【0039】
後続流量特性曲線54は、ディスペンサ30の吐出遮断後に流れ続ける流体媒体の流量率の大きさを前記流量率センサ42により検出して算定する。後続流量特性曲線54は、配量処理の期間中に連続的に用いられて、吐出される流体媒体量が予め設定された所定量に達したその時に配量処理を停止させる。後続流量特性曲線54は、流量率により算定される。
【0040】
ディスペンサ30の吐出遮断時点を算定するために、分割された流体媒体が連ねて吐出された総量と共に、後続流量特性曲線54に流量率を用いることにより後続流量が算定される。配量処理は、分割された流体媒体の吐出された総量が後続流量を除いた所望の総量(容積)の値に達した時点tで終了される。総量(容積)を算定するために、流量率の積分が、流量率センサ42が予め設定されたオフセット電圧に再び達する時点tまで実施される。
【0041】
本実施形態によれば既設の微量配量装置に対してその流路(例えば配送システム部34)内に高精度のセンサ(例えばセンサユニット40)が配置される。同様にセンサ(センサユニット40)の信号の判断及び微量配量ヘッドの制御を担うマイクロ・プロセッサ回路(例えばDSP24)が付加的に設けられる。微量配量により吐出される流体媒体量は、測定された容積流量に応じて制御される。配量処理の間、センサ(センサユニット40)を用いて吐出量が連続的に測定される制御型の配量方式が適用される。その場合には、流体媒体の所定量が吐出された時に正しく配量処理が終了される。
【0042】
本実施形態によれば、流体媒体の所定量を吐出させる場合、所望の流体媒体総量(容積)が検出されるわずか前に配量処理が終了される。これは、微量配量の遮断後、流体媒体がもはやディスペンサ30に配送されないにもかかわらず、なおある一定の後続流量が流量率センサ42により検出されることによる。この後続流量は、配量システムの全体構成に関係する共に特に配量率(流量)にも関係し、設定量の正確な配量のために考慮に入れなければならないものである。そのため、本実施形態の配量処理では、総量(すなわち配量設定値)から対応する所定の後続流量値を差し引いた流量値に達した時に、配量処理が終了される。
【0043】
本実施形態の配量処理では、実際に吐出される流体媒体の量が制御されるので、上述したような配量の遮断後も後続流量が流量率センサ42により検出される作用は、吐出される流体媒体の量にもはや影響を与えることがなくなる。つまり、吐出される滴の数が変化するにもかかわらず、吐出される流体媒体の総量(容積)を一定に保つことができることになる。
【0044】
本実施形態によれば、特に熱量測定方式(熱式)による市販の高精度なセンサ(センサユニット40)を用いることができる。このセンサ(センサユニット40)は、流量算定のために温度差の方式(熱式)の測定方式を利用する。そこでは、流体媒体の流れの中に配置された発熱体は、流体媒体を局部的に加熱する。発熱体の下流側及び上流側に配置された温度センサが、流体媒体の流量、流体媒体の温度係数、及び配送される流体媒体の断面積に応じて、流体媒体の温度分布を測定する。特に、これらのセンサは、配送方向について双方向の流量を検出することができるものである。
【0045】
このことは、特に、配送システム部34が柔軟なホースを含む場合、及び検出されるべき流体媒体に逆流を生じうる圧縮性流体媒体の場合に、配量される流体媒体の正確な総量(容積)を測定するために重要な事項となる。
【0046】
本実施形態で用いるセンサ(センサユニット40)としては、方式的には、羽根車式(機械式)による流量率センサ、又は差圧式の流量率センサも好適であるが、それらはなにぶんにも、より大きな容積流量を検出するためのものである。
【0047】
本実施形態の制御装置10は、特に次のような課題を有している。つまり、本実施形態の制御装置10には、流量率センサ42により、例えばアナログ電圧として出力される流量(総量又は一定時間当たりの容積)の検出及び積分を行い、配量システムから吐出される総量の連続検出及びそれに応じた微量配量システムの制御に役立つようにすることが課せられている。従って、上述した微量配量システムは、使用される配量ヘッドの誤差には関係なく動作する。達成しうる精度は、例えば配量される容積総量(容積)の2%よりも良好である。
【0048】
さらに、本実施形態の制御装置10は、例えば許容配量時間、許容配量値(滴数)、又は通常の配量設定値に対して過大進行、若しくは過少進行のような不慮の障害を認識する。制御装置10のもう一つの目的は、配量ヘッドの状態を予知又は認識するために、プロセスの安定性を監視することである。同様に、制御装置10では、流体媒体の吐出された量を連続して検出する間に、流体媒体の配送システム部34に場合により発生するデッドタイム作用又は過拍動作用を、吐出される流体媒体の量を誤らせることがあるものとして考慮する。それにより、これらの作用により配量システムに引き起こされるディスペンサ30の早すぎるか、又は遅すぎる遮断を回避することができる。特に、配量すべき流体媒体中への空気の混入も認識することができ考慮することができる。
【0049】
本実施形態による配量システム及び配量方法は、特に気体をも含めた流体の正確な配量も可能である。その場合、制御装置10は、例えば薬剤等のための構成成分を配量するための密閉された配量システム、特に循環する閉回路で流体を配量することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の可能な応用範囲は多岐にわたる。本発明の微量配量方式は、例えば微量滴定板、及び医療分析、特に癌研究及びDNA配列研究における微少アレイの充填のための医療応用分野に見出すことができる。
【0051】
他の応用範囲は、例えば接着剤の微量配量、特に2成分接着剤の混合配量の分野である。その場合、混合は、例えば配量ノズル内で行うことができ、又は対象に対応させて別々に行うこともできる。その第2の場合には、2つの独立のディスペンサが用いられる。
【0052】
一般的な他の用途としては、少なくとも2つの成分、例えば2成分接着剤又は多成分接着剤やラッカ等の、特に流体媒体の量が微量で高精度の混合比を遂行する場合、又は酵素と他の医療用物質等との混合を実施する場合である。
【0053】
他の用途としては、例えば機械又は流体媒体軸受への少量の潤滑剤の充填、又はラッカ表面における油の表面張力の低下による油の表面漏れ作用を低減するために行う軸受部への油停止ラッカの適切な塗布である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係る配量システムの基本構成を示す系統図である。
【図2】本実施形態に係る配量システムのより詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】流量率センサのセンサ出力信号の代表的な推移を示すチャートである。
【図4】障害(流体媒体の導管内への空気の混入)が発生した場合の流量率センサのセンサ出力信号の代表的な推移を示すチャートである。
【図5】流量率センサの代表的な特性曲線を例示する線図である。
【図6】配量システムにおけるディスペンサの遮断後も直ちには流体の流れが止まらず吐出される流体媒体量を示す後続流量特性曲線の一例を例示する線図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ディジタル・シグナル・プロセッサ制御装置(DSP制御装置)、
12 入力信号(始動信号)、
14 入力信号(配量設定値)、
16 制御信号、
18 入力用キーボード、
20 インタフェース、
22 表示装置、
24 DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)、
26 上位制御装置、
28 記憶ユニット、
30 ディスペンサ、
32 貯蔵容器、
34 配送システム部、
36 インタフェース、
40 センサ・ユニット、
42 流量率センサ、
44 センサ出力信号(センサ)、
46 前置増幅器、
48 記憶ユニット((E)EPROM)、
50 インタフェース、
52 センサ特性曲線、
54 後続流量特性曲線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量システムであって、
制御信号を伝送するためのインタフェース、及び少なくとも1つのセンサ出力信号を伝送するためのインタフェースを有する制御装置と、
前記インターフェースを介して伝送される制御信号により制御され、前記所定量の流体媒体を吐出させる流体媒体用ディスペンサと、
前記インターフェースを介して伝送される制御信号により制御され、前記ディスペンサに配送される流体媒体の流量率を連続的に検出し、その流量率に対応するセンサ出力信号を出力するセンサ・ユニットと
を備え、
前記制御装置は、前記センサ出力信号を検出して該センサ出力信号から配送された流体媒体の流量を演算し、その流量に従って前記設定された流体媒体の所定量に合致するように、前記ディスペンサから吐出される流体媒体の量を制御する
ことを特徴とする流体媒体の配量システム。
【請求項2】
前記制御装置は、ディジタル・シグナル・プロセッサの制御手段又はマイクロ・プロセッサの制御手段を含んで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項3】
配量される流体媒体は、配送システム部を介して貯蔵容器からディスペンサに導かれ、
その場合の配送システム部中には、流量率センサを一部分とするセンサ・ユニットが接続される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項4】
前記流量率センサは、温度差の方式、又は、他の高精度で高速な流量検出の方式に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項3に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項5】
前記センサ・ユニットは、
流量率センサと、
該流量率センサのアナログ出力信号を増幅する前置増幅器と、
前記流量率センサの校正特性曲線をデータ・テーブルの型式又は数学的関数の型式の何れかで記憶する記憶ユニットと
を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項6】
前記制御装置は、測定値を上位制御装置に送信するためのアナログ又はディジタル・インタフェースを備える
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項7】
前記制御装置又は前記上位制御装置には、入力データ及び出力データを可視化させるための表示装置が接続される
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項8】
前記制御装置は、ディジタル・シグナル・プロセッサを含む
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の流体媒体の配量システム。
【請求項9】
予め設定された所定量の流体媒体を配量する配量方法であって、
前記制御装置により配量処理が実施される間に、ディスペンサから吐出される流体媒体の量が連続的に流量率センサを用いて測定され、
その測定された流体媒体の量に従って、前記ディスペンサから吐出される流体媒体の量が前記所定量に合致するように制御される
ことを特徴とする流体媒体の配量方法。
【請求項10】
前記ディスペンサから吐出される流体媒体の量は、測定された流量の総量(容積)に従って制御される
ことを特徴とする請求項9に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項11】
前記流量率は、前記制御装置により、記憶装置に記憶されたセンサの校正特性曲線に基づいて、前記流量率センサから出力されるセンサ出力信号から演算された一定時間当たりの質量又は総量(容積)として演算される
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項12】
現在の流量率の演算は、前記制御装置により、前記センサ出力信号の所定のサンプリング・レートに対応する所定の時間間隔で行われ、その場合、サンプリング・レートを考慮して個々の流量率の測定値を積分することにより、流体媒体の総量を得る
ことを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項13】
前記配量処理は、外部からの始動信号により開始される
ことを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項14】
配量される流体媒体のための配量設定値は、前記制御装置に、外部(上位制御装置)から供給されるか、インタフェースを介して入力装置から直接に入力される
ことを特徴とする請求項9乃至13の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項15】
前記制御装置は、前記ディスペンサの電子制御ユニットに、連続するパラメータ及び数値又はコマンドを、アナログ又はディジタル・インタフェース又はデータ線を介して出力する
ことを特徴とする請求項9乃至14の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項16】
前記パラメータ及び数値は、温度又は吐出率/滴下率である
ことを特徴とする請求項15に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項17】
前記コマンドは、オン/オフコマンドである
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項18】
前記流量率センサのセンサ出力信号は、前置増幅されて、アナログインタフェースを介して前記制御装置に入力される
ことを特徴とする請求項9乃至17の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項19】
前記制御装置は、吐出される流体媒体の流量を連続して算出する期間中に、流体媒体の配送システム部のデッドタイムに発生される作用又は過剰な揺り戻しによる作用を検出する
ことを特徴とする請求項9乃至18の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項20】
流体媒体の配量システムの後続流量特性曲線が、前記制御装置の記憶ユニット内に記憶され、前記配量システムの始動の際に前記制御装置により選択されるように制御される
ことを特徴とする請求項9乃至19の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項21】
前記後続流量特性曲線は、前記ディスペンサの吐出遮断後も直ちには流体の流れが止まらず吐出される流体媒体の流量率の大きさを前記流量率センサにより検出して算定する
ことを特徴とする請求項20に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項22】
前記後続流量特性曲線は、前記配量処理の期間中に連続的に用いられて、吐出される流体媒体量が予め設定された所定量に達したその時に配量処理を停止させる
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項23】
前記後続流量特性曲線は、流量率により算定される
ことを特徴とする請求項20乃至22の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項24】
前記ディスペンサの吐出遮断時点を算定するために、分割された流体媒体が連ねて吐出された総量と共に、前記後続流量特性曲線に前記流量率を用いることにより後続流量が算定される
ことを特徴とする請求項21乃至23の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項25】
前記配量処理は、分割された流体媒体の吐出された総量が前記後続流量を除いた所望の総量(容積)の値に達した時点tで終了される
ことを特徴とする請求項24に記載の流体媒体の配量方法。
【請求項26】
前記総量(容積)を算定するために、前記流量率の積分が、流量率センサが予め設定されたオフセット電圧に再び達する時点tまで実施される
ことを特徴とする請求項10乃至25の何れか1項に記載の流体媒体の配量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−120149(P2006−120149A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302534(P2005−302534)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】