説明

流体封入式筒型防振装置

【課題】オリフィス部材の組付け性の向上を図りつつ、オリフィス部材の塑性変形に基づくところの問題の発生を悉く解消せしめた流体封入式筒型防振装置を提供すること。
【解決手段】防振装置10において、オリフィス部材24に、軸方向に延びる一つのスリット40を設け、その両側に対称的に位置するように、ポケット部20の各々に対応する内周面部位にそれぞれ突出して入り込むストッパ芯部48を一体的に設け、更にそれを所定厚さのストッパゴム層50にて覆い、ポケット部20の底面への当接にて内筒金具12と外筒金具14との間の過大変位を阻止するストッパ52を構成する一方、オリフィス部材24の周方向中間部位に、折曲により二つのオリフィス部材片として分離可能なノッチ44を軸方向に形成し、更にかかるノッチ44の周方向両側のオリフィス部材24部位を繋ぐ連結ゴム層56を、ノッチ44形成部位を含むオリフィス部材24内周面に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体封入式筒型防振装置に係り、特に、非圧縮性流体が封入された二つの流体室を有し、それら二つの流体室間での封入流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式筒型防振装置の改良された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する二つの部材間に介装されて、それら二つの部材を連結する防振連結体の一種として、防振連結されるべき部材のうちの一方に取り付けられる軸部材と、そのような軸部材の周りに、その軸直角方向外方に所定距離を隔てて配されて、二つの部材のうちの他方に取り付けられる外筒部材とが、それらの間に介装されたゴム弾性体にて連結される一方、所定の非圧縮性流体が封入された二つの流体室が、軸部材を挟んで対称的に位置するようにゴム弾性体内に形成され、更に、それら二つの流体室を相互に連通するオリフィス通路が形成されるようにして、振動入力時に、かかる二つの流体室のそれぞれの室内に封入された非圧縮性流体が、オリフィス通路を通じて相互に流動せしめられ得るように構成した流体封入式筒型防振装置が、知られている。
【0003】
そして、このような流体封入式筒型防振装置は、振動入力時に、オリフィス通路を通じて流動せしめられる非圧縮性流体の共振作用等に基づいて、有効な防振効果が得られるところから、例えば、自動車におけるエンジンマウントやボデーマウント、サブフレームマウント、デフマウント、或はストラットバークッションの如きサスペンションブッシュ等として、好適に用いられている。
【0004】
ところで、この種の流体封入式筒型防振装置にあっては、その目的とする防振対象の入力振動が、オリフィス通路の通路(流路)断面積と長さの比に対応した周波数域のものとなるところから、かかるオリフィス通路の長さや断面積の設計の自由度を高め、目的とする防振対象の振動周波数のチューニング範囲を拡大すべく、オリフィス通路を外筒部材との間に形成するオリフィス部材を、流体室を与えるゴム弾性体のポケット部の開口部に配設するようにした構造が、例えば、特許文献1、2等に明らかにされている。
【0005】
そこでは、軸部材とその軸直角方向外方に離間して配された金属スリーブとを、それらの間に介装された本体ゴム弾性体にて連結すると共に、かかる本体ゴム弾性体に設けられた二つのポケット部を、金属スリーブに設けられた窓部を通じて外周面にそれぞれ開口せしめ、更に、それら二つのポケット部間を繋ぐオリフィス溝が、外周面に設けられたオリフィス部材を用いて、それを、かかるポケット部の開口部、更には金属スリーブの開口に嵌め込むと共に、その上に外筒部材を外嵌して固定せしめ、少なくとも前記した窓部やオリフィス部材を覆蓋することにより、非圧縮性流体が封入された二つの流体室を、前記二つのポケット部に対応して形成すると共に、前記オリフィス溝に対応してオリフィス通路が形成されるようにした構造が、採用されている。
【0006】
しかしながら、かかる従来の流体封入式筒型防振装置においては、二つのポケット部の開口部に対して配置すべく、オリフィス部材が、一対の分割構造体にて構成されているところから、必然的に、部品点数が増加して、製造コストの上昇を招くことに加えて、それら一対の分割構造体を、金属スリーブと外筒部材の間でそれぞれ流体密に固定する必要があるために、そのような組付け作業において分割構造体が脱落する問題があることに加えて、その組付け作業性が、面倒で、困難となる問題を内在しているのである。また、一対の分割構造体であるが故に、各分割構造体の二つのポケット部に対する組付けに誤り(誤組付け)が発生し易く、目的とする防振性能が得られない等という問題を惹起する恐れもあったのである。
【0007】
このため、特許文献3、4等においては、一対の分割構造体に代えて、周方向に半周以上の長さで延びる略C字形状の単一の部材を、オリフィス部材として用いて、それを軸方向から挿入して、金属スリーブに嵌着せしめ、更にその上に、外筒部材を外挿することにより、二つの流体室と共に、オリフィス通路が形成されるようにした構造の防振装置が、提案されているのであるが、そのような構造のものにあっても、次のような問題を内在するものであったのである。
【0008】
すなわち、この種の流体封入式筒型防振装置を、振動伝達系を構成する二つの部材間に介装して、それら二つの部材間の振動伝達を減衰乃至は阻止するに際しては、その内筒部材と外筒部材との間の過大変位を阻止すべく、流体室内には、一般に、内筒部材側或いは外筒部材(オリフィス部材)側に、適当なストッパ手段が配設されることとなる。しかしながら、そのようなストッパ手段を、オリフィス部材の内周面に設けた場合において、上記した特許文献3、4に示される如く、内筒部材と本体ゴム弾性体と金属スリーブからなる円柱状ブロック(一体加硫成形品)に対して、その軸方向から、オリフィス部材を嵌入せしめるには、内方に突出するストッパ手段が干渉して、その嵌入操作を実施することが出来ないという問題が内在している。また、敢えて、かかるストッパ手段の干渉を避けるべく、オリフィス部材の略C字形状の開口部を大きく拡開せしめて、その内径を大きくする場合にあっては、オリフィス部材自体が塑性変形を受けて、永久変形が惹起される恐れがあり、そしてその変形に起因する歪みの発生により、オリフィス部材、ひいてはオリフィス通路の形状安定性が維持され難くなって、流体室やオリフィス通路のシール性を確保することが困難となり、目的とする防振効果を安定して得ることが出来ない等の問題も、内在しているのである。
【0009】
なお、そのようなストッパ手段を流体室の底部に設けた場合にあっては、特許文献4にも示されている如く、内筒部材上に適当なストッパ芯金具を外挿配置せしめる必要があり、それ故に、必然的に部品点数が増える等の問題が惹起されることとなり、また、その形成操作も面倒となるのである。このため、ストッパ手段は、むしろオリフィス部材側に位置せしめて、オリフィス部材と同時に一体的に形成することが、その形成作業からして、望ましいものではあるが、その要請に対して、特許文献4に明らかにされている如き構造においては、充分に対処し得るものではなかったのである。
【0010】
また、特許文献3、4等の如く、オリフィス部材を単一の部材にて構成した場合にあっても、オリフィス部材におけるオリフィス溝(通路)の配設形態や金属スリーブ、ポケット部の形態等の如何により、オリフィス部材の挿入に方向性が求められることがあり、加えてオリフィス部材の内周面に各ポケット部に対応したストッパが設けられ、それらのストッパの高さが異なる場合においては、オリフィス部材は、その挿入方向が定められ、そしてその挿入方向を誤まれば、例えオリフィス部材が単一の部材にて構成されていても、前記した分割構造体の場合と同様な誤組付けの問題が惹起されることとなる。
【0011】
さらに、特許文献5においては、オリフィス部材を、半周より大きな周方向長さで延びる略C字形状の単一部材とすると共に、その周方向中間部分に、軸方向に連続して直線的に延びる軸方向溝を形成して、この軸方向溝の形成部位において、オリフィス部材の弾性変形が許容され得るようにすることによって、オリフィス部材を、一体加硫成形品に対して軸直角方向に組み付けて、装着することが出来るようにした流体封入式筒型防振装置が提案されているが、そこでは、オリフィス部材の弾性力を利用して、その弾性変形作用にて、オリフィス部材を大きく開口させ、そしてその状態において、一体加硫成形品に嵌め込み、その後その弾性的復元力に基づいて組み付けて、外筒部材を外嵌せしめるようにしたものであるところから、そのようなオリフィス部材を大きく開口させるには、その弾性復元力に打ち勝つだけの力を加える必要があり、そのために、その組付け作業には、かなりの力が必要となって、その作業に困難を来たし、また危険が伴なう等の問題も内在している。
【0012】
しかも、そのようなオリフィス部材の組付け作業は、あくまでも、弾性変形の範囲内での作業となるところから、そのC字形状の開口部の拡開の程度にも限度があり、特に、上述の如く、オリフィス部材の内周面にストッパ手段が設けられた場合にあっては、一体加硫成形品との干渉を避けるべく、大きな拡開状態が求められるために、そのような要求に充分に応え得るものではなかったのである。けだし、一体加硫成形品への組付けに際して、ストッパ手段との干渉を避けるべく、オリフィス部材のC字形状の開口を更に大きく拡開せしめると、その弾性限度を越えて、塑性変形が惹起される恐れが生じ、そして塑性変形が惹起された場合にあっては、前述せるように、歪みの発生、それに基づくオリフィス通路の形状安定性の悪化、ひいては流体室やオリフィス通路のシール性の低下等の問題が惹起されるようになるからである。
【0013】
【特許文献1】実公昭61−270533号公報
【特許文献2】特開2000−145876号公報
【特許文献3】特開平5−65933号公報
【特許文献4】特開平5−65934号公報
【特許文献5】特開2006−138430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、オリフィス部材の組付け性の向上を図りつつ、オリフィス部材の塑性変形に基づくところの問題の発生を悉く解消せしめた流体封入式筒型防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明にあっては、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、有利に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示乃至は示唆される発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0016】
(1) 軸部材とその軸直角方向外方に離間して配された金属スリーブとを、それらの間に介装された本体ゴム弾性体にて連結する一方、該本体ゴム弾性体に対称的に設けられた第一及び第二のポケット部を、該金属スリーブに設けられた窓部を通じて外周面に開口せしめ、更にその開口部を覆蓋するように、該金属スリーブに対して外筒部材を外嵌固定せしめることにより、前記第一及び第二のポケット部に対応した、それぞれ非圧縮性流体が封入されてなる第一及び第二の流体室を対称的に形成すると共に、それら二つのポケット部を相互に繋ぐオリフィス溝を外周面に有するオリフィス部材を、該金属スリーブと該外筒部材との間に配することにより、該オリフィス溝に対応して前記二つの流体室を相互に連通せしめるオリフィス通路を形成して、該オリフィス通路を通じて該二つの流体室内の非圧縮性流体が相互に流動せしめられ得るように構成した流体封入式筒型防振装置にして、
前記オリフィス部材を、軸方向に延びる一つのスリットにて筒壁部に切離し部が設けられた円筒状の樹脂成形品にて構成すると共に、該切離し部の両側に対称的に位置するように、前記ポケット部の各々に対応する内周面部位に、各ポケット部内にそれぞれ突出して入り込む突部としてのストッパ芯部を、該オリフィス部材に一体的に設け、そして該ストッパ芯部の各々の表面を覆うように、所定厚さのストッパゴム層を形成することにより、各ポケット部の底面への当接にて前記軸部材と前記外筒部材との間の過大変位を阻止するストッパを構成する一方、該オリフィス部材の周方向中間部位に、折曲により二つのオリフィス部材片として分離可能なノッチを軸方向に形成し、更に該ノッチの周方向両側のオリフィス部材部位を繋ぐ連結ゴム層を、該ノッチ形成部位を含むオリフィス部材内周面に形成したことを特徴とする流体封入式筒型防振装置。
【0017】
(2) 前記ノッチが、前記オリフィス部材の内周面に軸方向に設けられた、該オリフィス部材の筒壁部の厚さよりも深さの浅いV字形切欠きにて構成されていることを特徴とする上記態様(1)に記載の流体封入式筒型防振装置。
【0018】
(3) 前記連結ゴム層が、前記ストッパゴム層に繋がる連続した一体構造において前記オリフィス部材の内周面に配設されており、該ストッパゴム層の前記ストッパ芯部上への加硫成形時に、該連結ゴム層が同時に形成されていることを特徴とする上記態様(2)に記載の流体封入式筒型防振装置。
【0019】
(4) 前記オリフィス部材の内周面から前記第一及び第二のポケット部内にそれぞれ突出するように形成された二つの前記ストッパが、該オリフィス部材の径方向において高さの異なるものであることを特徴とする上記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載の流体封入式筒型防振装置。
【0020】
(5) 前記オリフィス部材が、前記ノッチの形成部位において、側方に開口する位置決め凹部を有していることを特徴とする上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の流体封入式筒型防振装置。
【0021】
(6) 前記オリフィス部材の位置決め凹部に係合する係合凸部が、前記金属スリーブの外周面上に設けられていることを特徴とする上記態様(5)に記載の流体封入式筒型防振装置。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明に従う構造を有する流体封入式筒型防振装置にあっては、オリフィス部材が、筒壁部に切離し部を設けてなる円筒状の樹脂成形品からなる単一の部材にて構成されているところから、樹脂の成形操作にて製造することが出来、そのため製造が容易であり、且つ製造コストも有利に低減せしめられ得ることとなることに加えて、従来の如き一対の分割構造体にて構成されるオリフィス部材に比べて、その取扱い作業性は、格段に向上され得ることとなったのであり、また、それぞれのポケット部の開口部に配置されるオリフィス部材部分を一体的に取り扱うことが出来るところから、そのようなオリフィス部材の配設の正確性を更に有利に高めることが出来る特徴がある。
【0023】
そして、本発明において用いられるオリフィス部材は、その周方向中間部位に、折曲作用を加えることにより二つのオリフィス部材片として分離可能なノッチを有しているところから、オリフィス部材の内周面に、軸部材と外筒部材との間の過大変位を阻止する二つのストッパが設けられていても、かかるオリフィス部材の組付けに際し、そのようなストッパによる干渉を避けるべく、オリフィス部材を、その切離し部(スリット)において大きく開口せしめ、それによって、ノッチ形成部位で折曲させて、二つのオリフィス部材片に分離せしめることにより、その後に大きな力を加えることなく、大きく開口させた状態において、オリフィス部材を、その軸直角方向から容易に組み付けることが出来ることとなるのである。また、これによって、オリフィス部材は、そのノッチ形成部位にて分離されるものの、その分離された二つのオリフィス部材片自体は、実質的に塑性変形を受けるようなことがないために、オリフィス部材の変形に基づくところのオリフィス通路の形状安定性の悪化や、流体室やオリフィス通路のシール性の低下等の問題の発生が、効果的に阻止され得るのである。
【0024】
しかも、オリフィス部材は、そのノッチ形成部位において分離されて、二つのオリフィス部材片となっても、それら二つのオリフィス部材片は、連結ゴム層にて連結されているところから、完全にバラバラの状態において組み付けられることがなく、そのために、オリフィス部材は、脱落することなく、それが分離される前と同様な状態において、その組付け状態を有利に維持することが出来るところから、その組付け作業性への影響も、可及的に軽減乃至は阻止することが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施形態の一つについて、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0026】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う流体封入式筒型防振装置の一実施形態が、それぞれ縦断面及び横断面の形態において、示されている。そこにおいて、防振装置10は、軸部材としての内筒金具12と、この内筒金具12の周りに径方向(軸直角方向)外方に所定距離を隔てて同軸的に位置せしめられた、外筒部材としての外筒金具14とを有し、更に、それら内筒金具12と外筒金具14とが、それら両金具12,14間に介装された本体ゴム弾性体16によって、弾性的に連結されてなる構造とされている。
【0027】
そして、そこでは、内筒金具12の内孔18に、図示しない枢軸(例えば、取付ボルト等)が挿通されて、防振連結されるべき二つの部材の一方に、かかる内筒金具12が取り付けられるようになっている一方、かかる二つの部材のうちの他方に、外筒金具14が、所定の取付金具を介して取り付けられ、主として、図2において上下方向となる径方向(軸直角方向)に入力される振動荷重に対して、目的とする防振特性が発揮され得るようになっている。
【0028】
また、そのような防振装置10においては、内筒金具12を挟んで、一対のポケット部20,20が、対称的に本体ゴム弾性体16に設けられており、そしてそれら一対のポケット部20,20の各開口部が、外筒金具14にて覆蓋されることによって、所定の非圧縮性流体が封入された一対の流体室22,22が形成されている。更に、それら一対のポケット部20,20に跨って架け渡されるように、全体として厚肉の円筒形状を呈する単一のオリフィス部材24が配置され、それらオリフィス部材24と外筒金具14とによって、一対の流体室22,22を連通せしめるオリフィス通路26が形成されている。
【0029】
より詳細には、内筒金具12と本体ゴム弾性体16とは、図3〜図5に示されているように、金属スリーブ28と共に、一体加硫成形品30として構成されている。即ち、それらの図から明らかなように、厚肉の小径円筒形状を呈する内筒金具12と、その径方向外方に離間して配された段付き円筒形状の金属スリーブ28とが、本体ゴム弾性体16との一体加硫成形操作によって、そのような本体ゴム弾性体16にて連結されて、一体加硫成形品30とされているのである。そして、そこにおいて、金属スリーブ28は、図3及び図4から明らかな如く、軸方向の一方の端部側において、ポケット部20の壁部の厚さに略相当する軸方向長さを有する大径部28aを有する一方、残余の軸方向長さ部分が小径部28bとされてなる、段付き筒体形状を呈していると共に、その筒壁部が大きな矩形形状に切り欠かれることによって、一対の窓部28c,28cが、軸心に対して対称的に設けられている。
【0030】
そして、それら内筒金具12と金属スリーブ28と本体ゴム弾性体16との一体加硫成形品30においては、そのような一体加硫成形操作によって、金属スリーブ28の窓部28cを通じて外周面に開口せしめられた一対のポケット部20,20が、内筒金具12を挟んで対称的に形成されているのである。一方、本体ゴム弾性体16から回り込んだゴム弾性体材料によって、金属スリーブ28の二つの窓部28c,28cによって二つに分断された小径部28bの一方の外面上に、図3(b)及び図4(a)に示される如く、大径部28aから略同じ高さで延びる、矩形の平面形態を呈する係合凸部32が、軸方向に所定長さ突出するように設けられている。なお、かかる二つに分断された小径部28bの他方の外面上にも、図3(c)及び図4(a)から明らかな如く、本体ゴム弾性体16から回り込んだゴム弾性体材料によって、大径部28aと小径部28bとの間の段部に、所定厚さの緩衝ゴム部34が形成されており、後述するオリフィス部材24が嵌着せしめられた際に、その側面(軸方向端面)が当接せしめられ得るようになっている。
【0031】
一方、外筒金具14の外嵌によって、その内周面との間において、オリフィス通路26を形成するオリフィス部材24は、図6〜図10に示されるように、全体として円筒形状を呈し、その筒壁部が、一箇所において、所定幅のスリット40にて軸方向に切り離されてなる形態において、構成されている。より具体的には、かかるオリフィス部材24は、ポリアミドや繊維強化プラスチック等の樹脂材料を用いて、射出成形等の成形操作により一体的に形成された円筒状の樹脂成形品にて構成されており、その筒壁部が、一箇所において、軸方向に延びるスリット40にて切り離されて、そこに切離し部が形成されてなる形態とされている。また、かかるオリフィス部材24の外周面には、図7(a)等に示されているように、スリット40を跨ぐようにして周方向に延びるオリフィス溝42が設けられており、このオリフィス溝42は、その両末端において、それぞれ、オリフィス部材24の同じ側の側方に開口せしめられて、後述せるように、オリフィス部材24が金属スリーブ28上に組み付けられた際に、その下方の二つのポケット部20,20にそれぞれ接続されるようになっている。
【0032】
また、かかるオリフィス部材24においては、その周方向中間部位に位置するように、ノッチ44が、軸方向に形成されている。このノッチ44は、その形成部位におけるオリフィス部材24の折曲作用乃至は屈曲作用により破断されて、容易に二つのオリフィス部材片に分離せしめられ得るようにするためのものである。そして、ここでは、図6(b)及び図9(a)等に示されている如く、かかるノッチ44は、スリット40に対して軸対称となる内周面位置に、オリフィス部材24の筒壁部の厚さよりも深さの浅いV字形切欠きによって、軸方向に形成されている。即ち、このノッチ44をオリフィス部材24に設けても、ノッチ44の底部には、破断可能な所定厚さの接続部が残されているところから、オリフィス部材24は、単一の部材として取り扱うことが出来るようになっているのである。
【0033】
さらに、このオリフィス部材24には、図6(b)や図7(b)、更には図10等から明らかなように、ノッチ44の形成部位に位置して、それから、その両側に周方向に同様な長さで延びる、位置決め凹部としての矩形凹所46が、側方に開口するように設けられている。この矩形凹所46は、図3(b)に示される金属スリーブ28の小径部28b上に形成された係合凸部32に係合せしめられて、オリフィス部材24を、金属スリーブ28に対して目的とする配設(嵌着)形態に位置決めして、正しい組付けが出来るようになっているのである。
【0034】
加えて、かかるオリフィス部材24には、その筒壁部における切離し部を構成するスリット40の両側に位置するように、ここでは、軸心を挟んで対称的に位置するように、二つのストッパ芯部48,48が、図6(b)や図9(a)に示されるように、それぞれ円弧形状において、オリフィス部材24との同時成形操作によって、一体的に形成されている。なお、それら二つのストッパ芯部48,48は、図2に示される如く、それぞれポケット部20,20の各々に対応するオリフィス部材24の内周面部位に、各ポケット部20内にそれぞれ突出して入り込む凸部として、一体的に設けられているのである。また、それらのストッパ芯部48,48の表面上には、図1、図2及び図9(a)等から明らかな如く、所定厚さのストッパゴム層50,50が、それぞれ円弧形状をもって、加硫成形操作により一体的に形成されており、そして、それらストッパ芯部48とストッパゴム層50とから、全体として円弧形状を呈するストッパ52が、構成されているのである。
【0035】
なお、このような二つのストッパ52,52の構成において、図2や図9(a)より明らかな如く、図において上下に位置するストッパ芯部48,48やストッパゴム層50,50は、その高さや厚さがそれぞれ異なる形態において設けられており、従って、二つのストッパ52,52の全体としての高さにおいても、上方のストッパ52よりも、下方のストッパ52の方が、高さが高くなるように構成されている。また、オリフィス部材24に一体的に設けられた二つのストッパ芯部48,48の背部には、図6(a)や(c)に示されている如く、それぞれ4つの肉抜き凹所54がそれぞれ設けられており、これによって、オリフィス部材24の軽量化が図られ得るようになっている。
【0036】
また、オリフィス部材24においては、その内周面の展開図やその部分断面図を示す図10(a)〜(d)等から明らかな如く、オリフィス部材24の内周面のノッチ44形成部位を含むように、ノッチ44の周方向両側のオリフィス部材部位を繋ぐ連結ゴム層56が、一体的に形成されている。なお、そのような連結ゴム層56は、ここでは、それぞれのストッパ52,52を構成するストッパゴム層50,50に繋がる連続した一体構造において、設けられている。しかも、そのような連結ゴム層56は、図10(b)及び(c)より明らかな如く、オリフィス部材24の筒壁部に、凹所58を形成して、その厚さを薄くする一方、凹所58内に、ゴム材料を充填すると共に、ノッチ44内にも充填してなる構造において、一体的に設けられているのである。また、このような連結ゴム層56は、オリフィス部材24のストッパ芯部48上へのストッパゴム層50の加硫成形時に、同時に形成されており、これによって、それらストッパゴム層50と連結ゴム層56の形成が、一回の加硫成形操作にて行なうことが可能となる利点がある。
【0037】
さらに、上記の如き防振装置に用いられる外筒金具14は、図11に示される如く、段付き円筒形状を呈し、その大径部側の開口部が、やや拡開されたテーパ形状において形成されている。なお、そのテーパ形状に拡開された部分は、後述せるように、組み付けられた後の縮径操作によって、図1に示される如く、大径部と同径とされて、ストレート形状を呈するように組み付けられることとなる。また、かかる段付き形状の外筒金具14の内周面には、所定厚さのシールゴム層60が一体的に加硫成形されており、このシールゴム層60の存在によって、金属スリーブ28との間、更にはオリフィス部材24との間の有効なシールを実現して、二つの流体室22,22やオリフィス通路26のシールが確保されるようになっている。そして、このシールゴム層60によるシール機能は、図11(b)に示されているように、両端開口部側部位にそれぞれ設けられた周方向のシールリブ62によって、更に高められているのである。
【0038】
ところで、かくの如きオリフィス部材24や一体加硫成形品30、更には外筒金具14を用いて、図1及び図2に示される如き防振装置10を組み立てるに際しては、先ず、図12に示される如く、一体加硫成形品30に対して、オリフィス部材24が、組み付けられて嵌着せしめられるのである。即ち、そこでは、オリフィス部材24が、その筒壁部の切離し部を構成するスリット40において、それが拡開するように押し広げられると、そのようなスリット40に対称的に設けられたノッチ44に対して屈曲作用乃至は折曲作用が加わり、それによって、かかるノッチ44形成部位において、オリフィス部材24が破断して、二つのオリフィス部材片として分離せしめられるようになる。しかし、そのようなノッチ形成部位には、連結ゴム層56が設けられているところから、それら二つのオリフィス部材片は、バラバラに分離することなく、一体的に連結された状態において、更にそのスリット40がより大きく開口することを許容するようになるために、オリフィス部材24は、その内周面に設けた二つのストッパ52,52が一体加硫成形品30に干渉することなく、そして変形作用を実質的に受けることなく、容易に組み付けられ得ることとなるのである。また、このようなオリフィス部材24の組付けに際しては、ノッチ44の形成部位に設けられた、側方に開口する矩形凹所46が、一体加硫成形品30における金属スリーブ28の小径部28b上に形成した係合凸部32に係合するように、組み付けられることとなる。
【0039】
次いで、この得られた一体加硫成形品30に対するオリフィス部材24の組付体(嵌着体)に対して、その外周面に、外筒金具14が、圧入により外嵌せしめられることによって、オリフィス部材24のオリフィス溝42が、外筒金具14の内周面にて覆蓋されることとなり、以て、同時に形成される一対のポケット部20,20に対応する一対の流体室22,22を連通せしめる、所定長さと流路断面積を有する一つのオリフィス通路26が形成されるのである。そして、そのような外筒金具14が外嵌された組付体には、更に八方絞り等の絞り加工が施されて、縮径されることにより、外筒金具14の有効な固定が図られ得ることとなる一方、外筒金具14の内周面に設けたシールゴム層60やシールリブ62の存在により、一対の流体室22,22(ポケット部20,20)やオリフィス通路26の周りのシールが、充分に為され得るようになっており、これによって、図1及び図2に示される如き防振装置10が、完成されるのである。また、上記した絞り加工等による縮径操作にて、オリフィス部材24の分離した二つの部材片は、両端部が突き合わされるようになり、図2に示される如く、スリット40の間隙が殆ど消失せしめられることとなる。しかも、そのようなスリット40の解消によって、スリット40を介して対向していた両側のオリフィス溝42,42が合致し、一つのオリフィス溝として効果的に機能するようになるのである。
【0040】
従って、かくの如き防振装置10の構造にあっては、オリフィス部材24が、一体加硫成形品30に対する組付け時におけるスリット40の拡開操作によって、そのノッチ44形成部位において切り離され、二つのオリフィス部材片に分離されることとなるが、それら二つのオリフィス部材片は、連結ゴム層56にて連結されているところから、バラバラに分離されることなく、一体的な部品として取り扱うことが出来ると共に、そのスリット40の開口を、大きく自由に拡開せしめることが出来ることとなるのである。それ故に、その大きく拡開されたスリット40の開口部を通じて、ストッパ52に対する干渉を回避しつつ、一体加硫成形品30に対して、相対的な挿入操作を行なうことが可能となり、以て、それらオリフィス部材24と一体加硫成形品30の組付け、嵌着操作を、効果的に行なうことが出来るのである。
【0041】
しかも、そのような一体加硫成形品30に対するオリフィス部材24の組付けに際しては、オリフィス部材24が、そのスリット40の開口を拡開せしめる力によって、ノッチ44の形成部位に、効果的な折曲作用が加わることとなり、そこにおいて破断が生じることによって、二つのオリフィス部材片に分離されることとなることにより、その後スリット40に大きな拡開力を作用せしめても、折曲作用乃至は屈曲作用は、ノッチ44周辺の連結ゴム層56に加わり、二つのオリフィス部材片には、ほとんど作用することがないところから、それら二つのオリフィス部材片、換言すれば、ストッパ52やオリフィス溝42の設けられたオリフィス部材片には、実質的な変形作用が加わることはなく、従って塑性変形を受けることがなく、それ故に、変形に基づく歪みがオリフィス部材24に発生することがないために、オリフィス通路26の形状安定性も、効果的に確保され、また流体室22やオリフィス通路26のシール性にも、問題を生じるようなことは、全くないのである。
【0042】
また、オリフィス部材24が、その筒壁部に、切離し部(スリット40)を設けてなる円筒状の樹脂成形品からなる単一の部材にて構成されているところから、従来の如き一対の分割構造体にて構成されるオリフィス部材に比べて、その取扱い作業性は、格段に向上され得ることとなったことに加えて、そのノッチ44の形成部位において、オリフィス部材24が二つのオリフィス部材片に分離されても、それら二つのオリフィス部材片は、連結ゴム層56にて連結されているために、オリフィス部材片が脱落することもなく、従ってその組付け作業に大きな困難を生じることはなく、それぞれのポケット部20の開口部に配置されるオリフィス部材片を、一体的に取り扱うことが出来るのである。しかも、そのようなオリフィス部材24の配設の正確性を有利に高め、またその組付け作業にも、大きな問題を惹起することがない特徴を発揮するのである。
【0043】
さらに、オリフィス部材24は、そのノッチ44形成部位に設けた矩形凹所46を、一体加硫成形品30の金属スリーブ28に設けられた係合凸部32に係合せしめて、組み付けられるようになっているところから、そのようなオリフィス部材24の内周面に設けられたストッパ52,52の高さが異なるために、その組付け方向性が規定される場合にあっても、一体加硫成形品30に対するオリフィス部材24の正しい組付けが、確実に実現され得ることとなるのであり、これによって、誤組付けの問題も、完全に解消され得ることとなるのである。
【0044】
なお、そのようなオリフィス部材24における矩形凹所46の存在は、また、オリフィス部材24に対するストッパゴム層50の加硫成形操作においても、その特徴を発揮し得るものである。即ち、加硫成形金型内に、そのような矩形凹所46に嵌合する凸部を設けておけば、加硫成形金型内における、オリフィス部材24の配置を正確に行なうことが出来、以て、そのようなオリフィス部材24におけるストッパ芯部48,48上に加硫成形されるストッパゴム層50,50の厚さの異なる層を、間違いなく、正確に形成することが出来る利点を発揮し得るのである。
【0045】
勿論、そのようなオリフィス部材24における矩形凹所46は、それが存在していることによって、そのような矩形凹所46の存在位置を確認することのみにて、オリフィス部材24の組付け方向を決定することが出来るために、一体加硫成形品30における係合凸部32等との係合を行なわなくても、オリフィス部材24の正しい配置を行なうことは可能であるが、本実施形態の如く、係合凸部(32)等との係合機構を利用すれば、更に正確な配設が可能となるのであって、以て、誤組付けの問題のより一層有効な解決を図ることが可能となる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に関する具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0047】
例えば、例示の実施形態にあっては、内筒金具12を挟んで、その両側に、対称的な一対のポケット部20(流体室22)が設けられているのであるが、そのようなポケット部20は、従来と同様な構造において設けられておれば足り、その配設形態は、適宜に設定されることとなる。加えて、一対のポケット部20(流体室22)の大きさにあっても、同じ大きさとされる場合の他、異なる大きさの組合せとすることも可能である。
【0048】
また、内筒金具12と外筒金具14とは、例示の如く、同心的に位置せしめられた形態において、本体ゴム弾性体16にて、互いに連結せしめられる他、良く知られているように、初期荷重が加わった際に、同心的に位置するように、内筒金具12と外筒金具14とを偏心させて、本体ゴム弾性体16にて連結するようにした構造も、適宜に採用され、本発明が、有利に適用され得るものである。
【0049】
さらに、本発明にあっては、例示の如く、二つのストッパ52,52の高さ(径方向内方への突出長さ)を、互いに異ならしめた構造の装置が、有利に対象とされ得るものであるが、勿論、それらストッパ52の高さが同じである構造のものにおいても、本発明は、同様に適用され得るものである。
【0050】
更にまた、オリフィス部材24におけるノッチ44は、例示の如きV字形状であることが望ましいものではあるが、適宜の断面形状において形成することが可能であり、更にその形成位置にあっても、スリット40に対して対称的に設ける場合の他、適宜の位置を選択することが出来、またオリフィス部材24の内周面の他、外周面に設けるようにすることが可能である。尤も、本実施形態の如く、内周面に設けることが、破断のし易さの点において有利である。
【0051】
加えて、本体ゴム弾性体16等を構成するゴム弾性体の材質や、流体室22内に封入される非圧縮性流体としては、何れも、公知のものが採用され、例えば、非圧縮性流体としては、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が採用されるが、一般に、0.1Pa・s以下の低粘性流体が、好適に用いられることとなる。
【0052】
そして、かくの如き構成の本発明は、自動車のサスペンションブッシュに好適に適用され得るものであるが、また、自動車のエンジンマウントやボデーマウント等の各種の自動車用防振装置に対して、更には自動車以外に用いられている各種の防振装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に従う構造を有する流体封入式筒型防振装置の一実施形態を示す縦断面拡大説明図である。
【図2】図1に示される流体封入式筒型防振装置の横断面拡大説明図であって、図1におけるII−II断面に相当する図である。
【図3】図1に示される流体封入式筒型防振装置に用いられる一体加硫成形品の説明図であって、(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、その正面図、右側面図及び左側面図である。
【図4】図3に示される一体加硫成形品の断面説明図であって、(a)及び(b)は、それぞれ、図3(a)におけるIVa−IVa断面及びIVb−IVb断面に相当する拡大図である。
【図5】図3(b)におけるV−V断面拡大説明図である。
【図6】図1に示される流体封入式筒型防振装置に用いられるオリフィス部材の説明図であって、(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、その平面図、正面図及び底面図である。
【図7】図6に示されるオリフィス部材の異なる方向から見た説明図であって、(a)及び(b)は、それぞれ、その左側面図及び右側面図である。
【図8】図6に示されるオリフィス部材の断面説明図であって、(a)及び(b)は、それぞれ、図6(b)におけるVIIIa−VIIIa断面及びVIIIb−VIIIb断面に相当する拡大図である。
【図9】図6に示されるオリフィス部材の異なる断面における説明図であって、(a)は、図6(a)におけるIXa−IXa断面に相当する拡大図を示し、(b)は、図6(b)におけるIXb−IXb断面に相当する拡大図を示している。
【図10】図6に示されるオリフィス部材の内周面を展開して示す説明図であって、(a)は、その展開拡大平面図であり、また(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、(a)におけるXb−Xb断面、Xc−Xc断面及びXd−Xd断面に相当する部分拡大説明図である。
【図11】図1に示される流体封入式筒型防振装置において用いられる外筒金具の説明図であって、(a)は、その正面図であり、(b)は、(a)におけるXIb−XIb断面説明図である。
【図12】図1に示される流体封入式筒型防振装置において、そのオリフィス部材を一体加硫成形品に組み付ける状態を説明する図2の断面に相当する拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
10 防振装置 12 内筒金具
14 外筒金具 16 本体ゴム弾性体
18 内孔 20 ポケット部
22 流体室 24 オリフィス部材
26 オリフィス通路 28 金属スリーブ
28a 大径部 28b 小径部
28c 窓部 30 一体加硫成形品
32 係合凸部 34 緩衝ゴム層
40 スリット 42 オリフィス溝
44 ノッチ 46 矩形凹所
48 ストッパ芯部 50 ストッパゴム層
52 ストッパ 54 肉抜き凹所
56 連結ゴム層 58 凹所
60 シールゴム層 62 シールリブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材とその軸直角方向外方に離間して配された金属スリーブとを、それらの間に介装された本体ゴム弾性体にて連結する一方、該本体ゴム弾性体に対称的に設けられた第一及び第二のポケット部を、該金属スリーブに設けられた窓部を通じて外周面に開口せしめ、更にその開口部を覆蓋するように、該金属スリーブに対して外筒部材を外嵌固定せしめることにより、前記第一及び第二のポケット部に対応した、それぞれ非圧縮性流体が封入されてなる第一及び第二の流体室を対称的に形成すると共に、それら二つのポケット部を相互に繋ぐオリフィス溝を外周面に有するオリフィス部材を、該金属スリーブと該外筒部材との間に配することにより、該オリフィス溝に対応して前記二つの流体室を相互に連通せしめるオリフィス通路を形成して、該オリフィス通路を通じて該二つの流体室内の非圧縮性流体が相互に流動せしめられ得るように構成した流体封入式筒型防振装置にして、
前記オリフィス部材を、軸方向に延びる一つのスリットにて筒壁部に切離し部が設けられた円筒状の樹脂成形品にて構成すると共に、該切離し部の両側に対称的に位置するように、前記ポケット部の各々に対応する内周面部位に、各ポケット部内にそれぞれ突出して入り込む突部としてのストッパ芯部を、該オリフィス部材に一体的に設け、そして該ストッパ芯部の各々の表面を覆うように、所定厚さのストッパゴム層を形成することにより、各ポケット部の底面への当接にて前記軸部材と前記外筒部材との間の過大変位を阻止するストッパを構成する一方、該オリフィス部材の周方向中間部位に、折曲により二つのオリフィス部材片として分離可能なノッチを軸方向に形成し、更に該ノッチの周方向両側のオリフィス部材部位を繋ぐ連結ゴム層を、該ノッチ形成部位を含むオリフィス部材内周面に形成したことを特徴とする流体封入式筒型防振装置。
【請求項2】
前記ノッチが、前記オリフィス部材の内周面に軸方向に設けられた、該オリフィス部材の筒壁部の厚さよりも深さの浅いV字形切欠きにて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項3】
前記連結ゴム層が、前記ストッパゴム層に繋がる連続した一体構造において前記オリフィス部材の内周面に配設されており、該ストッパゴム層の前記ストッパ芯部上への加硫成形時に、該連結ゴム層が同時に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項4】
前記オリフィス部材の内周面から前記第一及び第二のポケット部内にそれぞれ突出するように形成された二つの前記ストッパが、該オリフィス部材の径方向において高さの異なるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項5】
前記オリフィス部材が、前記ノッチの形成部位において、側方に開口する位置決め凹部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項6】
前記オリフィス部材の位置決め凹部に係合する係合凸部が、前記金属スリーブの外周面上に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の流体封入式筒型防振装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−249052(P2008−249052A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92520(P2007−92520)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】