説明

流体機械用のハウジング

本発明は、流体機械用のハウジング(1)に関しており、2つのハウジング半部(2,3)を備えており、これらのハウジング半部(2,3)は、軸方向の分割平面(4)に沿って相互に接触しており、両方のハウジング(2,3)を相互に固定して、相互に緊締するための固定装置(5)を備えている。ハウジング半部(2,3)の固定を改善するために、固定装置(5)は、ハウジング半部(2,3)を包囲する、少なくとも1本の緊締ケーブル(7)から成る少なくとも1つの巻き体(6)を備えており、緊締ケーブル(7)は、少なくとも1本のワイヤから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械、特にターボ機械用のハウジングに関する。さらに本発明は、このようなハウジングに巻き体を取り付けるための取付装置に関する。
【0002】
背景技術
流体機械、特にターボ機械、たとえば蒸気タービン、ガスタービン、コンプレッサ、ハイドロタービン、またはハイドロポンプは、運転中極めて高い圧力荷重にさらされている。蒸気タービン、ガスタービンおよび圧縮機もしくはコンプレッサでは、高温によって追加的な負荷が加えられる。この負荷は、流体機械の適切なハウジングによって吸収する必要がある。このようなハウジングは、通常2つのシェル半部から組み合わされており、シェル半部は、ハウジングの軸方向の分割平面の位置する領域で相互に接触している。ハウジングの軸方向の位置決めは、このような流体機械のロータの方向付けによって得られ、ロータのロータ軸線は、軸方向を規定する。両方のハウジングシェル半部またはハウジング半部は、運転中に存在する要求に耐えるために、比較的大きな力で相互に固定する必要がある。シングルハウジング(Einfachgehaeuse)を備えた構造および内側ハウジングと外側ハウジングとを有するダブルハウジング(Doppelgehaeuse)を備えた構造が公知である。
【0003】
両方のハウジング半部を相互に固定するために様々な技術が公知である。たとえばハウジングの外側に収縮リングを取り付けることができる。この場合の欠点によれば、このためにハウジングは、比較的大きな壁厚さを有する必要がある。さらに収縮リングは、半径方向で比較的大きな寸法を有しており、これによってハウジングは全体として比較的大きく形成される。流体機械の運転経過において進行する変形は、比較的大きい。なぜならばハウジング寸法に応じて、比較的大きな壁厚さにわたって温度差が比較的大きいからである。このことは特に内側ハウジングに当てはまる。なぜならば内側ハウジングは、内側から高熱にさらされていて、同時に外側から冷却されるからである。流体機械の高出力運転および始動に際して、半径方向に大きな寸法に基づいて、相応に大きな変形の生じる恐れがある。たとえば保守目的で収縮リングを取り外す際に、ハウジングの、比較的強い永続的な変形の生じる恐れがある。これによって分割平面の領域でコンタクト面のコストの嵩む加工が必要となる。ハウジングの、組み立ての際の収縮嵌めおよび取り外しの際の収縮変形は、時間の嵩む工程である。さらに製造コストが比較的高い。
【0004】
選択的に、分割平面上に結合フランジを備えたハウジング半部が公知である。このようなフランジは、要求される力を伝達するために、比較的肉厚に形成する必要がある。これによってハウジングは、比較的大きな重量を有し、このことは同時に製造コストを高める。フランジをねじ結合するためにねじが用いられるが、このねじは、高い負荷に対する耐性を有する必要があり、したがって高価である。さらにねじ結合部は、規則的に後緊締するか、もしくは検査する必要がある。
【0005】
内側ハウジングがこのような固定フランジを備えて形成されている場合、外側ハウジングも、これに応じて大きく寸法設定する必要がある。分割平面に沿って、不均等な圧力分布が形成され得る。なぜならばねじ結合が特異な力伝達しか実現しないからである。これによって温度および圧力によるハウジングの負荷は、制限されている。このような固定フランジの存在する領域では、極めて大きな材料厚さが存在し、これによって温度差によって、比較的大きな塑性変形の生じる恐れがある。固定フランジに沿ったハウジング半部の固定は、比較的高い圧力および/または比較的高い熱負荷の場合に、ハウジングの変形をもたらす。したがって円形リング状のハウジング内部は、このような負荷によって僅かに楕円状になる。これによって、動翼を有するロータを備えた流体機械では、動翼先端部と、これに対応する、ハウジング側の対向面との間の半径方向ギャップに問題が生じる。ギャップは、運転中に接触しないように、適切な大きさに選択する必要がある。しかしながら大きなギャップは、比較的大きな損失をもたらし、各流体機械の作用効率の低下をもたらす。ここでもハウジングを取り外したあとで、運転中に生じた永続的な変形を解消するために、固定フランジおよび/またはハウジング半部は、分割平面の領域で手間を掛けて加工し直す必要がある。
【0006】
シングルハウジングでは、収縮リングもしくは固定フランジを使用する際に生じる前述の欠点に対して追加的に、分割平面の存在する領域でハウジング半部の塑性変形によって不緊密部分が形成される場合に、蒸気または熱気が周囲に逃げる恐れがある。
【0007】
発明の開示
本発明について言及する。本発明の課題は、特許請求の範囲に記載したように、冒頭で述べたようなハウジングを改良して、特に運転中におけるハウジングの低減された変形および/または低減された重量および/または低減された製造コストおよび保守コストに関して優れた、改善されたものを提供することである。
【0008】
本発明によれば、この課題は、独立請求項に記載の構成によって解決される。有利な形態は、従属請求項の対象である。
【0009】
本発明は、概して、巻き体を用いて両方のハウジング半部を相互に固定するという基本思想に基づいており、巻き体は、ハウジング半部に外側で巻き掛けられ、巻き体は、引張荷重の掛けられた少なくとも1本の緊締ケーブルから形成されており、緊締ケーブルは、少なくとも1本のワイヤから成っている。本発明によって提案される構造によって、多様な利点が得られる。さらに巻き体は、概ねハウジングの回転対称性に最適に適合させることができ、これによってハウジングに沿った最適な力分配が得られる。さらにハウジングは、均一の力分配に基づいて比較的薄く形成することができ、これによってハウジングの重量および製造コストを低減することができる。ハウジングの小さな壁厚さは、温度の影響を小さくして、特に温度差に基づくクリープ変形を低減する。さらに巻き体またはこれに類するものは、半径方向で比較的小さな構成スペースしか必要とせず、これによって、低減された壁厚さに対して追加的に、所要スペースを縮小することができる。引張荷重の掛けられた緊締ケーブルは、特に複数のワイヤから形成されたワイヤケーブルによって形成することができ、引張方向で、ハウジング半部の鋳造材料に対して極めて高い安定性とクリープ耐性とを有している。これについては緊締ケーブルとハウジング半部とが同じ材料から製造される場合でも当てはまる。このことは異なるサイズに基づいている。同様にこのことは緊締ケーブルの冷間処理に基づいており、これについては有利には、特に繊維方向付けに関する内部材料構造に基づいている。さらにこのような巻き体を使用する場合には、固定フランジを省略することができ、同様に高い荷重を掛けることのできる緊締ねじを省略することができる。巻き体が、内側ハウジングに用いられる場合、これに応じて外側ハウジングも、比較的小さく形成することができる。両方のハウジング半部が相互に接触する分割平面上でシール面に沿って比較的均等な力分配によって、一時的な運転条件の間でも、ハウジングの、比較的高い圧力負荷および/または温度負荷が実現され、このことはシール面の塑性変型に対するハウジングの影響を低減する。原則として、ハウジング半部の、分割平面上に位置する接触域のコストの嵩む加工を省略することができる。なぜならば運転中に通常生じる変形が極僅かしか生じないからである。異なるハウジングにおいて巻き体を形成するには、幾つかの小さな標準ケーブル直径を有する緊締ロープの使用および準備で十分である。フランジねじ結合部の高価で特別な製造は、省略することができる。さらに緊締ケーブルは、簡単に貯蔵することができ、迅速に提供可能である。ハウジング半部を相互に固定するためのこのような巻き体の使用によって、たとえば収縮リングを取付ける、かつ取り外す際に必要である、面倒な取付方法および取外方法を省略することができる。巻き体を用いて行われた固定の信頼性は高められ、これによって巻き体を備えた流体機械の運転が簡単になる。本発明による固定の主要な利点によれば、保持力が、軸方向だけでなく、半径方向、ここでは周方向でも概ね均等に分配して、ハウジングに導入することができ、これによって、高い圧力および温度に基づく横断面の変形が低減される。円形の横断面の楕円形への変形は、大幅に低減するか、回避することができる。これによって特に、流体機械のロータの動翼とステータ側もしくはハウジング側の対向面との間の半径方向ギャップを、ギャップ幅に関して低減することができる。たとえばギャップ幅は、ラビリンスシールで低減することができる。これによってラビリンスシールを備えた流体機械の作用効率が改善される。さらにブラシシールを高圧タービンおよび中圧タービンに用いることもでき、ブラシシールの使用は、従来では、楕円形のハウジング変形に基づいて不可能であり、これによってもブラシシールを備えたタービンの作用効率が上昇する。別の重要な観点によれば、緊締ケーブルは、全体的に、たとえば固定フランジの緊締ねじに対して著しく低い温度にさらされている。このような緊締ねじは、固定フランジの内側で延びており、これによって各ハウジングの内側表面の傍に配置されており、内側表面は、特にガスタービンの高温ガス路または蒸気タービンの高温の高圧領域を画成する。これとは異なって、緊締ケーブルは、各ハウジングの外側に位置していて、直に冷却にさらすことができる。緊締ケーブルにおける著しく低い温度と、低い温度に関連する比較的高い材料強度とに基づいて、同じ作業条件では、緊締ねじを用いた適当なフランジ結合に対して、両方のハウジング半部の極めて良好な緊締が保証される。総じて、このようなハウジングの製造コストが低減される。さらに提案された固定の改善された信頼性によって、保守間隔が延長され、これによってハウジングを備えたターボ機械の、耐用期間中の停止時間が低減される。
【0010】
本発明の課題は、本発明によるハウジングに巻き体を取り付けるための取付装置によっても解決される。取付装置の構成によれば、ハウジングに堅固に取付可能であるか、または取り付けられる支持装置が設けられており、支持装置に、少なくとも1つの緊締装置を支持することができ、緊締装置は、引張力を緊締ケーブルに導入するために用いられる。緊締に必要な力は、直にハウジングに支持することができ、このことは所望に予荷重の掛けられた巻き体を形成するための装置に関する手間を低減する。
【0011】
本発明の別の重要な構成および利点は、従属請求項、図面、図面に関する説明から判る。
【0012】
本発明の有利な形態を図示し、以下に詳しく説明する。ここでは同一、同等、または機能的に同一の構成要素には、同じ符合を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ハウジングを一部で断面図で示す側面図である。
【図2】図1に示したハウジングを、A−A線に沿って示す半分の横断面図である。
【図3】図1に示したハウジングを、B−B線に沿って示す半分の横断面図である。
【図4】一方向に増加するハウジング直径を有するハウジングの側面図である。
【図5】軸方向で変化するハウジング直径を有するハウジングの側面図である。
【図6】従来慣用のねじ結合(左)とケーブル巻き体(右)との組み合わせを有するハウジングを示す平面図である。
【図7】従来慣用の収縮リング結合(左)とケーブル巻き体(右)との組合わせを有するハウジングを示す側面図である。
【図8】ハウジングに取り付けられた取付装置と共にハウジングの半分を軸方向にみて示す図である。
【図9】図8に示した取付装置の領域でハウジングを示す平面図である。
【図10】別の形態の取付装置における、図8に相当する図である。
【図11】取付装置を備えたハウジングを軸方向にみて示す図であり、ハウジングはケーブル巻き上げにより回動される。
【図12】軸方向キャリッジに追加的にばねを備えた、図11に示した取付装置を示す図である。
【0014】
発明の実施するための形態
図1に示したように、図示していない一般的な流体機械のハウジング1は、2つのハウジング半部2,3、特に上位のハウジング半部2と下位のハウジング半部3とを備えている。両方のハウジング半部2,3は、軸方向の分割平面4に沿って相互に接触するようになっており、これによってハウジング1は、周方向で閉じられる。さらにハウジング1は、固定装置5を備えており、固定装置5は、両方のハウジング半部2,3が相互に固定可能であり、相互に緊締可能であるように、形成されている。
【0015】
固定装置5は、少なくとも1つの巻き体6を備えており、巻き体6は、少なくとも1つの緊締ケーブル7によって形成されている。巻き体6は、両方のハウジング半部2,3の外面に巻き掛けられている。巻掛は、周方向に、もしくは螺旋状に行われる。螺旋状に形成された巻き体6は、有利には、ケーブル太さまたはロープ直径に相当するピッチ8を有している。別のピッチも考えられる。緊締ケーブル7は、1本のワイヤ(線材)から形成することができるので、緊締ワイヤ7と呼ぶこともできる。緊締ロープが、まとめてワイヤロープを形成する複数のワイヤから形成される形態も考えられる。ワイヤとして、有利にはスチールワイヤが用いられる。極めて高い温度、たとえば現在設計されている700度を超える蒸気発生温度を有する蒸気タービンでは、スチールワイヤの代わりに、ニッケルをベースとする材料から成るワイヤを用いてもよい。
【0016】
ハウジング1がこのような巻き体6を備えて形成された流体機械は、有利にはターボ機械、たとえば蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機またはコンプレッサ、ハイドロタービンおよびハイドロポンプである。ここではハウジング1は、このような流体機械またはターボ機械において、シングルハウジング(Einfachgehaeuse)を形成するか、またはダブルハウジング(Doppelgehaeuse)の内側ハウジングもしくはダブルハウジングの外側ハウジングを形成する。またハウジング1は、このような流体機械またはターボ機械の動翼支持体またはシール支持体を形成することができる。有利には、ハウジング1は、少なくとも巻き体6を備えた領域で回転対称的に形成されている。有利には、相互に接触する両方のハウジング半部2,3の外面は、外側輪郭10を有しており、外側輪郭10は、回転対称的な本体の外面に相当し、したがって横断面で円形である。図1に示した形態では、ハウジング1は、一定の横断面を有していて、したがって円筒形に形成されている。さらにまた軸方向に変化する横断面を有するハウジング1も考えられる。特に円錐形もしくは円錐台形のハウジング1もしくはハウジング区分を提供することができる。図4および図5には、ハウジング1を示しており、ハウジング1の外径は、段階的に変化している。符合42で示したハウジング区分の外側面の円筒度は、たとえば緊締ケーブル7が側方に滑落せず、これによって緊締が失われない点で有利である。ハウジング区分42は、軸方向でハウジングカラー43によって制限されている。
【0017】
そのような巻き体6を備えたハウジング1では、巻き体6は、従来慣用のハウジング結合と組み合わせることもできる。たとえば図6に示したハウジング1は、長手方向区分で、従来慣用のフランジねじ結合部33を備えることができ、有利にはハウジング1の高温側に向いた別の長手方向区分で、前述のワイヤ巻き結合部34を備えることができる。同様に図7に示したように、ハウジング1は、長手方向区分で、従来慣用の収縮リング結合部35を備えることができ、有利にはハウジング1の高温側に向いた別の長手方向区分で、前述のワイパ巻き結合部34を備えることができる。図6に示したフランジねじ結合部33は、結合ねじ用のフランジ孔44を有するフランジ47を備えている。図7に示した収縮リング結合部35は、収縮リング46用の載設面45を備えている。
【0018】
各緊締ケーブル7は、図示していないが、必然的に2つの端部を有している。各緊締ケーブル7の端部は、図示していない適切な固定箇所を介してハウジング1に取り付けることができる。固定箇所は、たとえばハウジングカラー11または円筒形のワイヤ載設面に形成することができる。一方のケーブル端部は、同じまたは別のケーブルの他方のケーブル端部と結合することもできる。たとえば2つのワイヤ端部を相互に溶接することができる。嵌め輪を各ケーブル端部に取り付けることもでき、この場合嵌め輪は、有利には後緊締可能なクランプによって結合される。
【0019】
完成した巻き体6では、各緊締ケーブル7に引張荷重が掛けられている。引張応力は、固定箇所11を介してハウジング1もしくはハウジング半部2,3に伝達することができる。したがって巻き体6もしくは各緊締ケーブル7の予荷重は、ハウジング1の内側で取り除くことができる。特に有利な形態では、少なくとも1つの固定箇所11は、各緊締ケーブル7の後緊締を行うことができるように形成されている。
【0020】
巻き体6は、原則として単層に形成することができる。つまり各緊締ケーブル7の個々の巻き体は、専ら軸方向で相並んで配置されている。同様に巻き体6の多層の構成も実現可能である。図1には、巻き体6の2層の構成を例示しており、これによって個々の巻条は、半径方向でも隣接して配置されている。3層以上の巻層を有する巻き体6も考えられる。特に各巻層が単個の緊締ケーブル7から形成されており、有利には各巻層がそれぞれ独自の緊締ケーブル7から成るように、巻き体6を形成することも考えられる。さらに巻き体6の単層または多層の構成において、各巻層を複数の緊締ケーブル7から形成することもできる。もちろん固定装置5は、その都度の特定数の緊締ケーブル7のために、対応する数の固定箇所11を有している。
【0021】
巻き体6が異なる複数の緊締ケーブル7から形成されている場合、原則として、個々の緊締ケーブル7は、ケーブル太さまたはケーブル直径に関して、かつ/または使用されるワイヤ材料に関して多様に構成することができる。これによって、特に比較的大きく荷重の掛けられた領域において、巻き体密度を高めるために、ケーブル太さ(幅)9を低減するか、またはこの領域において、単層の形態でケーブル太さ高めることができる。同様に強さに関する要求に応じて異なる強さのワイヤ材料を用いることもできる。たとえば複数の巻層を設け、異なる巻層に異なる緊締ケーブル7を用いた構成も考えられる。同様にハウジング1に沿って、異なる緊締ケーブル7で包囲された異なる軸方向領域を形成することもできる。たとえば蒸気タービンの内側ハウジングにおいて一般的であるが、軸方向で異なる温度を有するハウジング1では、ワイヤ材料は、比較的低温の領域で、経済的な材料から製作して、比較的高温の領域で、耐熱性の材料から製作することができる。たとえば蒸気タービンの外側ハウジングにおいて一般的であるが、半径方向で低下する温度を有するハウジング1では、ワイヤ材料は、比較的高温の第1の内側の巻層で、耐熱性の材料から製作して、比較的低温の外側の巻層で、経済的な材料から製作することができる。
【0022】
図2に示したように、有利には、両方のハウジング半部2,3は、センタリングピン12によって相対的に位置決めされる。センタリングピン12は、コンタクト平面4の位置する領域に配置されていて、対応するセンタリング孔13に挿入されている。センタリング孔13は、有利には、各ハウジング半部2,3の縁部領域に形成されている。センタリング孔13もしくはセンタリングピン12は、分割平面4に対して垂直に方向付けされている。センタリングピン12によって、ハウジング半部2,3を組み立てる際に、両方のハウジング半部2,3の間の所望の相対位置を見出すことができる。図2に示した形態が特に有利であり、ここではセンタリングピン12がハウジング半部2,3に、完全にハウジング1の外側輪郭10の内側に位置するように取り付けられており、これによってセンタリングピン12の完全に陥没した配置構造が得られる。これによって、センタリングピン12によって巻き体6が不都合な影響を受けることはない。
【0023】
図3に示したように、別の有利な形態では、ハウジング半部2,3は、固定ねじ14によって互いに固定することができる。固定ねじ14は、主に、センタリングピン12によって見出された、ハウジング半部2,3間の相対位置を固定するために用いられる。固定ねじ14は、特にハウジング1を備えた流体機械を運転するのに必要な、両方のハウジング半部2,3の間の保持力を及ぼすことはない。したがって固定ねじ14は、単に組立を容易にするために用いられる。固定ねじ14を取り付けるために、たとえば各ハウジング2,3は、貫通開口または貫通孔15を備えており、これによって固定ねじ14を差し込んで、相補的な固定ナット16を用いてねじ止めすることができる。ここでも有利な形態によれば、固定ねじ14が、固定ねじに含まれる固定ナット16と共に、完全に外側輪郭10の内側に配置されるように、ハウジング半部2,3に取り付けられている。これによって固定ねじ14もしくは固定ナット16の完全に引っ込められた配置構造が得られ、このことは巻き体6の取付を容易にする。
【0024】
図8〜図12には、取付装置17を示しており、取付装置17によって、巻き体6はハウジング1に取付可能である。各取付装置17は、支持装置18を備えており、支持装置18は、ハウジング1に固く取り付けられているか、または少なくとも一時的に取付もしくは取外のためにハウジング1に固く取付可能である。さらに取付装置17は、少なくとも1つの緊締装置19を備えており、緊締装置19は、永続的に支持装置18に支持されるか、または少なくとも一時的に支持装置18に支持可能に、構成されている。さらに各緊締装置19は、引張力を各緊締ケーブル7に導入できるように、構成されている。
【0025】
図8および図9に示した形態では、支持装置18は、複数の差込開口20を備えており、差込開口20は、たとえば外側でハウジング半部もしくは対応するカラーに半径方向に穿設されていて、周方向で互いに隣接して配置されている。各緊締装置19は、緊締レバー21を備えており、緊締レバー21は、脚部22で、差込開口20に差込可能であり、したがって支持装置18もしくはハウジング1に固定可能である。緊締レバー21は、脚部22で、ジョイント(支承部)23において旋回可能に支承されている。緊締レバー21に、ジョイント(支承部)24において、クランプ部材25が旋回可能に支承されている。クランプ部材25は、引張力を及ぼすために、緊締ケーブル7と連結可能である。クランプ作用は、たとえば図示していないねじがクランプ部材25のクランプジョーを締め付けることによって得られる。またクランプ作用は、クランプジョーが楔形に形成されていて、クランプジョーとケーブルとの間の摩擦と、及ぼされるケーブル引張力とによって自動的に締め付けられることによっても得られる。この原理は、たとえば多くの場合万能引張試験機で試験体を緊締する際に適用される。
【0026】
不可欠ではないが有用な緊締ばね26によって、緊締レバー21の大きなストローク運動が実現され、ケーブル張力は比較的精確に調節することができる。なぜならば緊締レバー21のストローク運動によって、緊締ばね26が伸張され、ばね弾性の選択によって調節可能なケーブル引張力が形成される。
【0027】
緊締レバー21は、クランプ部材25を作動させるのに用いられる。緊締レバー21の摺動による、たとえば矢印27に従った操作によって、比較的大きな引張力が緊締ケーブル7に導入される。取付装置17は、たとえば周方向で相前後にずらして用いられる2つの緊締装置19によって作動するので、たとえば第1の緊締装置19によって、緊締力を緊締ケーブル7に導入し、維持することができ、これに対して同時に第2の緊締装置19は、引張力の導入を引き受けるために、緊締ケーブル7の別の位置に取り付けることができるので、そのあとで第1の緊締装置19は再び変位するために離反可能である。したがって緊締装置19は、差込開口20のパターンに応じて、周方向に変位させることができる。図9に示したように、緊締レバー21は、Y字形に形成して、2つの脚部22を介して、2箇所で支持装置18にそれぞれ支持することができる。
【0028】
図10に示した形態では、支持装置18は、レール27を備えており、レール27は、支柱32を介してハウジング1に定位置に固定されている。レール27とキャリッジ28とが協働し、キャリッジ28は、緊締装置19の構成部材である。キャリッジ28は、レール27に沿って、つまりハウジング1に関して周方向に変位可能である。このために緊締装置19は、図示していない駆動装置を備えることができ、駆動装置は、緊締装置19もしくはキャリッジ21を支持装置18もしくはレール27に沿って、つまりハウジング1の周方向に変位させることができる。さらに緊締装置19は、図示の形態では、別の駆動装置30を備えており、駆動装置30は、ハウジング1の周方向で緊締装置19が調節運動する間に所望の引張力を維持しつつ、緊締ケーブル7の巻き解きを保証する。
【0029】
さらにそのような形態では、キャリッジ29が設けられ、キャリッジ29は、図示していない駆動装置によって、ハウジング軸方向に移動することができ、これによって螺旋状のケーブル巻き体のピッチ8(図1)が達成される。有利には、キャリッジ28の周方向運動用の駆動装置と、キャリッジ29の軸方向運動用の駆動装置とが互いに調整されており、これによってケーブル巻き体6の所望の螺旋形状が得られる。
【0030】
図11に示した別の緊締装置では、緊締ケーブル7は、始めに巻き枠36に沿って巻き上げられており、巻き枠36は、回転駆動装置を備えており、回転駆動装置は、ハウジング軸方向に可動であり、駆動装置を備えたキャリッジ37に取り付けられており、キャリッジ37のレール38は、床39と固く結合されている。ハウジング1は、ここでもハウジング軸線を中心に回動可能に支承されており、回動運動もまた駆動装置によって行われる。対応するハウジング支承部40もまた床39と固く結合されている。ケーブル巻き上げは、緊締ケーブル7をハウジング1に取り付けたあとで、ハウジング1が回動し、その間に巻き枠36の回転駆動装置がケーブル7を巻き枠36から巻き解くことによって行われ、しかもケーブル引張力は、所定の値に相応し、つまり巻き枠36の回転駆動装置は、距離に関してではなく荷重に関して制御されている。同時に軸方向キャリッジ37は、キャリッジの駆動装置によって、巻き体の螺旋形状の所望のピッチ8が得られるように運動する。符号48で、ハウジング1の回動方向を示し、符号49で、ケーブル7の巻き上げ方向を示し、符号50で、巻き枠36の回動方向を示し、符号51で、巻き枠36の力方向を示し、符号52で、巻き枠36の支承部を示した。
【0031】
図12に示した形態は、図11と同様の緊締装置を備えているが、追加的なばね41が軸方向キャリッジ37に組み込まれている点で異なっている。ばね41によって、緊締ケーブル7の引張力を簡単に調節することができる。なぜならば巻き枠37の小さな回転運動が緊締ケーブル7における引張力の小さな変化を及ぼすからである。ばね41が設けられていない場合、引張力の変化が著しく大きくなり、したがって巻き枠37の駆動装置の制御は困難になる。
【符号の説明】
【0032】
1 ハウジング、 2 ハウジング半部、 3 ハウジング半部、 4 分割平面、 5 固定装置、 6 巻き体、 7 緊締ケーブル、 8 ピッチ、 9 ケーブル直径、 10 外側輪郭、 11 ハウジングカラー、 12 センタリングピン、 13 センタリング孔、 14 固定ねじ、 15 貫通開口、 16 固定ナット、 17 取付装置、 18 支持装置、 19 緊締装置、 20 差込開口、 21 緊締レバー、 22 脚部、 23 支承部、 24 支承部、 25 クランプ部材、 26 ばね、 27 レール、 28 周方向運動用のキャリッジ、 29 軸方向運動用のキャリッジ、 30 駆動装置、 31 力導入、 32 支柱、 33 フランジねじ結合部、 34 ワイヤ巻き結合部、 35 収縮リング結合部、 36 巻き枠、 37 キャリッジ、 38 レール、 39 床、 40 ハウジング支承部、 41 ばね、 42 ハウジング区分、 43 ハウジングカラー、 44 フランジ孔、 45 載設面、 46 収縮リング、 47 フランジ、 48 回動方向、 49 巻き上げ方向、 50 回動方向、 51 力方向、 52 巻き枠支承部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機械用のハウジングにおいて、
2つのハウジング半部(2,3)を備えており、これらのハウジング半部(2,3)は、軸方向の分割平面(4)に沿って相互に接触しており、
両方のハウジング(2,3)を相互に固定して、相互に緊締するための固定装置(5)を備えており、
固定装置(5)は、ハウジング半部(2,3)を外側で包囲する、引張負荷の掛けられた少なくとも1本の緊締ケーブル(7)から成る少なくとも1つの巻き体(6)を備えており、緊締ケーブル(7)は、少なくとも1本のワイヤから成っている、
ことを特徴とする、流体機械用のハウジング。
【請求項2】
各緊締ケーブル(7)の端部が、固定箇所(11)を介してハウジング(1)に固定されている、請求項1記載のハウジング。
【請求項3】
少なくとも1つの前記固定箇所(11)が、各緊締ケーブル(7)を後緊締するために形成されている、請求項2記載のハウジング。
【請求項4】
ハウジング(1)は、少なくとも巻き体(6)の形成された領域で、回転対称的に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のハウジング。
【請求項5】
ハウジング半部(2,3)は、分割平面(4)の位置する領域で、センタリングピン(12)を介して相対的に位置決めされており、該センタリングピン(12)は、特にハウジング(1)の、巻き体(6)を支持する外側輪郭(10)の内側に完全に陥没して配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のハウジング。
【請求項6】
ハウジング半部(2,3)は、固定ねじ(14)によって相互に固定されており、固定ねじ(14)は、特にハウジング(1)の、巻き体(6)を支持する外側輪郭(10)の内側に完全に陥没して配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のハウジング。
【請求項7】
巻き体(6)は、単層または多層に形成されており、かつ/または、
各巻き体層の巻き体(6)は、単数または複数の緊締ケーブル(7)を備えており、かつ/または、
巻き体(6)は、異なる複数の緊締ケーブル(7)から成っており、これらの緊締ケーブル(7)は、異なる巻層および/またはハウジング(1)の異なる軸方向領域に巻き掛けられ、これらの緊締ケーブル(7)は、ケーブル太さ(9)および/またはワイヤ直径に関してそれぞれ異なっている、請求項1から6までのいずれか1項記載のハウジング。
【請求項8】
ハウジング(1)は、蒸気タービンまたはガスタービンまたはハイドロタービンまたはハイドロポンプまたは圧縮機の、内側ハウジングまたは外側ハウジングまたはシングルハウジングまたは動翼支持体またはシール支持体である、請求項1から7までのいずれか1項記載のハウジング。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のハウジング(1)に巻き体(6)を取り付けるための取付装置において、
ハウジング(1)に堅固に取り付けられるか、または取付可能な支持装置(18)を備えており、
緊締ケーブル(7)に引張力を導入するための、支持装置(18)に支持されるか、または支持可能な少なくとも1つの緊締装置(19)を備えている、
ことを特徴とする、取付装置。
【請求項10】
支持装置(18)は、ハウジング(1)を周方向で包囲し、かつ/または、
少なくとも1つの緊締装置(19)は、支持装置(18)に沿って、周方向に調節可能であるか、または変位可能であり、かつ/または、
少なくとも1つの緊締装置(19)は、引張力を導入するために緊締ケーブル(7)と連結可能なクランプ部材(25)を駆動するための緊締レバー(21)を備えており、かつ/または、
少なくとも1つの緊締装置(19)は、支持装置(18)に沿って緊締装置(19)を調節するための駆動装置(29)を備えている、
請求項9記載の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−523872(P2010−523872A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501463(P2010−501463)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053159
【国際公開番号】WO2008/119654
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】