説明

流動床を使用して粒子を操作するための方法及びシステム

本発明は、不活性材料であろうと生体材料であろうと、培地及び粒子、例えば懸濁細胞培養中の細胞などを操作するための方法及びシステムを含む。本方法及びシステムは、回転チャンバを含む装置の使用を含んでおり、流体流動力及び遠心力の結合力の作用は前記回転チャンバ内で流動床を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床を使用して、生体材料を含む粒子(例えば、細胞、細胞成分、タンパク質、脂質、炭水化物及び組織)、及び粒子を含む調製物を移送及び操作するために使用される方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、製薬会社やバイオテクノロジー企業において数百種類のバイオテクノロジー医薬品の開発が進行中であり、その数は時を追って増加すると予測されている。そのようなバイオテクノロジー製品を製造するためには、極めて多数の原核細胞及び真核細胞が発酵システム内で増殖させられる。原核細胞、例えば細菌細胞は、物理的には真核細胞よりはるかに弾性である。真核細胞、例えば哺乳細胞は、より脆弱であり、バイオ製造プロセスに不可欠な細胞の操作である遠心分離、ペレット化(pelleting)又は再懸濁(re-suspension)などの培養プロセスにおける工程によってより強い影響を受ける。
【0003】
一般に、細胞は、厳密に維持及び調節される条件下で、大きなステンレススチール製発酵槽内で増殖させられる。細胞は、生成物自体の場合があり、又は対象となる生成物を細胞が生成する場合もある。目的がいずれであっても、細胞をベースとする生成物の製造は、複雑なプロセスである。細胞は、温度、酸素、酸性度及び廃棄物の除去もしくは対象となる排出生成物の平衡を含む、注意深く制御された培養条件下で増殖させられる。細胞の増殖及び活性は、培養条件をほんのわずかに変化させることによってさえ妨害されることがあり、例えば培地の除去、細胞を回転させることによる細胞の単離、細胞の遠心分離によって形成されるペレット内への細胞の充填、及び細胞を培養条件内に再導入するための充填されたペレットの再懸濁などの操作によって大きく阻害される可能性がある。
【0004】
多数の公知の細胞培養法は、資金や労働力の莫大な投資を必要とする。細胞培養施設を建築するには数百万ドルという費用がかかり、数年間を要する。現在提案されている生成物を製造するために使用できる現行施設の数は限られている。細胞培養は、現在は、タンパク質、例えばヒトインスリン、ワクチンタンパク質、食品加工処理用の酵素、生分解性プラスチック、及び洗濯洗剤用酵素などを製造するために使用されている。そのような生成物には、治療用分子、ワクチン、ならびに診断ツール、治療用化合物として機能する、タンパク質チップ又はバイオセンサー内で機能する抗体が含まれるが、それらに限定されない。
【0005】
細胞生成物の製造に使用される材料の範囲に関する認識、あるいはこの技術がいかに未熟であるかという懸念が、バイオ製造において増大しつつある。この懸念は、治療用タンパク質及び他の細胞培養生成物を作製するために必要な資源のタイプ及び量と、哺乳動物細胞培養及び微生物発酵プロセスによって生成される廃棄物とから考えられることである。そのような生成物の製造は、低分子薬や生活必需品のための石油系薬品と比較すると相当に環境に優しい。しかし、細胞培養のプロセスは、例えば、数千リットルの培養物もしくは発酵ブロスを保持するバッチ反応装置内で大量の水を使用する。さらに、いっそう多量の水が、チュービング、フィルターなどの消耗性のプロセス器具及びクロマトグラフィー法とともに、下流精製のために使用される。計算では、生物製剤のためには、1kgのモノクローナル抗体を製造するための現在の大規模細胞培養プロセスは、7,600kgを超える材料を必要とし、この材料は、7,000kgの水と、600kgの無機塩及びバッファーに分けられる。これら材料は、プロセス終了時の水性廃棄物と、8kgの有機溶媒と、4kgの消耗材とを生じさせることが証明されている。微生物発酵のためには、1kgの生成物を得るために15,500kgの材料が必要とされ、その内15,000kgは水である。ディスポーザブル(使い捨て)装置を使用するとさらに廃棄物流が増加することになるが、他方リユーザブル(再利用可能)材料は水の使用量を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで必要とされるのは、バイオ製造システムや、粒子とともに使用できる他のタイプのプロセスにおいて使用できる方法及びシステムである。粒子は、生きている又は不活性の頑丈な細胞(生体材料及びあらゆるタイプの細胞を含む)、及び穏やかな処理を必要とする細胞であってよい。さらに必要とされるのは、バイオ製造プロセス中の細胞増殖及び活性プロセスを中断させないで、細胞の増殖及び製造を支援するための方法及びシステムである。さらに、本方法及びシステムにとってバイオ製造プロセスへの環境保全技術の進歩を提供することは有益であると考えられる。効率的な方法で粒子を移送及び操作するための方法及びシステムもまた必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示した方法及びシステムは、不活性な粒子及び細胞もしくは生体材料、例えば細胞成分、タンパク質、炭水化物、脂質、及び組織を含む粒子を操作するための方法及びシステムである。1つの実施形態では、本発明の方法及びシステムは、粒子が含まれるプロセス、例えばバイオ製造用途において、又は懸濁細胞培養とともに使用するために、例えばトランスフェクション法を使用して細胞をトランスフェクトする際に使用できる。例えば、本明細書に開示した方法及びシステムは、潅流バイオリアクタープロセス及び懸濁細胞培養法における細胞濃縮のために使用できる。本明細書に開示した方法及びシステムは、コーティング用途、細胞もしくは生体材料選択、又は選択された生体材料、例えば細胞の単離及び/又は精製において使用することができる。本明細書に開示した方法及びシステムの装置は、現行培地から細胞を取り除かないで細胞を濃縮するための連続流遠心分離装置として機能することができ、細胞に従来の遠心分離において見いだされる剪断力に晒されることはなく、細胞を充填又はペレット化せず、及び、それらの作用が生存している細胞に与える外傷を回避する。本明細書に開示した方法及びシステムは、不活性もしくは非生存性の粒子及び生物学的粒子、例えば細胞のために使用することができる。
【0008】
また別の実施形態では、本発明の方法及びシステムは、細胞を1つの場所、例えばバイオリアクターから別の場所へ、例えば本明細書に開示した装置のチャンバへ、細胞への障害を最小限に抑えながら移送するために使用できる。細胞を移送するこの能力は、細胞を破壊せずに培地を変更したり細胞の環境を変化させることを可能にするので、細胞の増殖及び活性は妨げられない。本方法の目的が、細胞の環境を迅速に変化させること、又は細胞の増殖もしくは活性に影響を及ぼすことである場合は、本明細書に開示した方法及びシステムは、最初の環境を取り除くために細胞を遠心分離してペレット化して新規な環境に細胞を再懸濁させる必要なしに、細胞に迅速な変化を提供する。
【0009】
また別の実施形態では、本発明の方法及びシステムは、トランスフェクションプロセス、又は細胞へ個別に影響を及ぼすように設計される、例えばウイルス感染などの他のプロセスにおいて有用となり得る。例えば、懸濁液中の細胞のトランスフェクションの効率は、本明細書に開示した方法及びシステムによって支援することができる。また別の例では、細胞は、エレクトロポレーション(電気穿孔処理)技術を受けることができる。細胞、又は細胞の特定サブセットは、バイオリアクター容器から装置のチャンバへ取り出すことができ、例えばトランスフェクションもしくは感染技術によって影響を及ぼすことができる。細胞には、特定薬学薬品、刺激剤、阻害剤、又は細胞の活性もしくは増殖を変化させる他の因子によって影響を及ぼすことができる。
【0010】
また別の実施形態では、本発明の方法及びシステムは、細胞部分集団を混合細胞集団から分離するために使用できる。例えば、細胞は、親和性、密度又はサイズに基づいて分離することができる。本明細書に開示した方法及びシステムは、タンパク質、炭水化物又は脂質を含むがそれらに限定されない細胞成分又は生体材料を分離するために使用できる。例えば、タンパク質の混合物は、装置の回転チャンバに進入することができ、培地条件は、タンパク質の選択された集団が沈降するような条件であり得る。そのような沈降物は、回転チャンバ内で流動床を形成し、チャンバ内に含有され、回転条件及び/又は培地の流れ力を変化させることによって取り除くことができる。沈降しなかったタンパク質は、流動床内には含有されず、回転チャンバを通って流れる。1つの態様では、本明細書に開示した方法及びシステムは、細胞へスカフォールディング材料を提供するため、又はスカフォールドから組織と結び付いた細胞などの細胞を取り除くために使用できる。また別の態様では、本明細書に開示した方法及びシステムは、細胞の静止集団もしくは増殖中の集団から細胞のサブ集団を選択的に取り除くために使用できる。さらにまた別の態様では、本明細書に開示した方法及びシステムは、培地資源を保存することができる。
【0011】
本発明の方法及びシステムは、軸の周りで回転するローターを含む装置を含んでいる。一部の実施形態では、ローターは、水平軸の周りで回転することができる。一部の他の実施形態では、ローターは、垂直軸の周りで回転することができる。さらに他の実施形態では、ローターは、水平軸と垂直軸の間の任意の軸の周りで回転することができる。
【0012】
本発明の一部の実施形態によると、流動床を使用して細胞を操作するための方法は、入口及び出口を含むチャンバを、遠心力場を作り出すために軸の周りで回転させるステップと、第1培地及び細胞を含有する第1流を入口に通してチャンバ内へ流すステップであって、第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、チャンバ内で細胞の流動床を形成するステップであって、前記力(遠心力及びそれとは相反する力)は、細胞に作用するベクトル力の総和によって細胞を流動床内に実質的に固定化する、ステップと、細胞を実質的にチャンバの出口を通過させることなく第1培地を収集するステップと、流動床内で細胞を操作するステップであって、前記操作するステップは、取り除く工程、濃縮する工程、希釈する工程、培地を交換する工程、収穫する工程、移送する工程、分注する工程、トランスフェクトする工程、電気穿孔処理(electroporating)する工程、分離する工程、単離する工程、抽出する工程、選択する工程、精製する工程、コーティングする工程、結合する工程、物理的に修正を加える工程、及び環境を変化させる工程からなる群から選択される、ステップと、その後に細胞を流動床から取り除くステップとを含んでいる。細胞を流動床から取り除くステップは、第2流を出口に通してチャンバ内へ流す工程であって、第2流を流す工程は、遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、チャンバの入口を通過する細胞を収集する工程とを含んでいる。
【0013】
一部のまた別の実施形態では、本方法は、第1流がチャンバ内に流入する前に、細胞培養システムからの第1流を提供し、細胞の流動床へ潅流細胞培養条件を提供するステップと、培地を交換するステップと、細胞が流動床から取り除かれた後に、細胞及び交換された培地を細胞培養システムへ送達するステップとを含んでいる。
【0014】
一部の実施形態では、細胞を操作するステップは、トランスフェクトする工程であって、トランスフェクション試薬複合体を含有するトランスフェクション流を細胞の流動床に通して1回以上循環させる工程を含んでいる。
【0015】
一部の実施形態では、細胞を操作するステップは、電気穿孔処理する工程を含み、電気穿孔処理する工程は、電流を細胞の流動床に印加することと、細胞の透過性を変化させることとを含む。一部の他の実施形態では、電気穿孔処理する工程は前記電流を印加する前か、前記電流を印加すると同時か、及び/又は前記電流を印加した後に、荷電分子を含有する荷電分子流を入口に通してチャンバ内へ流す工程と、荷電粒子を細胞内に組み入れる工程とをさらに含んでいる。
【0016】
本発明の一部の実施形態によると、流動床を使用して粒子を操作するための方法は、入口と出口とを含むチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、第1培地及び粒子を含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、前記チャンバ内で粒子の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記粒子に作用するベクトル力の総和によって前記粒子を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、前記粒子を実質的に前記チャンバの前記出口を通過させることなく前記第1培地を収集するステップと、次に、前記流動床内で前記粒子を操作するステップであって、前記操作するステップは、取り除く工程と、濃縮する工程と、希釈する工程と、培地を交換する工程と、収穫する工程と、移送する工程と、分注する工程と、トランスフェクトする工程と、電気穿孔処理する工程と、分離する工程と、抽出する工程と、単離する工程と、選択する工程と、精製する工程と、コーティングする工程と、結合する工程と、物理的に修正を加える工程と、環境を変化させる工程とからなる群から選択される、ステップと、その後に、前記粒子を前記流動床から取り除くステップとを含む。
前記粒子を取り除くステップは、第2流を前記出口に通して前記チャンバ内へ流す工程であって、前記第2流を流す工程は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、前記チャンバの前記入口を通過する前記粒子を収集する工程とを含む。
【0017】
一部の実施形態では、前記粒子を操作するステップは、前記粒子を濃縮する工程を含んでおり、前記粒子を濃縮する工程は、前記粒子を取り除いた後に濃縮粒子収穫容器内に前記粒子を受け入れることを含む。
【0018】
一部の他の実施形態では、前記粒子を操作するステップは、前記培地を交換する工程を含み、前記培地を交換する工程は、第2培地を含む新規培地の流れを前記入口に通して前記チャンバ内へ流すことと、前記流動床内の前記第1培地の少なくとも一部を前記第2培地と交換することとを含む。
【0019】
一部の実施形態では、前記粒子を操作するステップは、前記粒子を収穫する工程を含んでおり、前記粒子を収穫する工程は、前記粒子を取り除いた後に粒子収穫容器内に前記粒子を受け入れることを含む。
【0020】
一部の実施形態では、前記粒子を操作するステップは、前記粒子を分注する工程を含んでおり、前記粒子を分注する工程は、前記粒子を取り除いた後に、測定した量の粒子を1つ以上の細胞分注容器内に受け入れることを含む。
【0021】
一部の他の実施形態では、前記粒子は、混合された粒子群を含み、前記粒子を操作するステップは、前記混合された粒子群を分離する工程を含み、前記混合された粒子群を分離する工程は、前記混合された粒子群の少なくとも一部を前記流動床から取り除くことと、前記チャンバの前記出口を通過する、前記混合された粒子群の少なくとも一部を収集することとを含む。一部の他の実施形態では、前記混合された粒子群の少なくとも一部を取り除くことは、前記遠心力場及び/又は前記第1流の力を変化させることを含む。さらにまた別の実施形態では、前記混合された粒子群は、サイズ、密度、及び/又は形状によって分離される。
【0022】
一部の他の実施形態では、前記粒子を操作するステップは、前記粒子をコーティングする工程を含み、前記粒子をコーティングする工程は、コーティング材料を含有するコーティング流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すことと、前記流動床内に保持された前記粒子を前記コーティング材料でコーティングすることとを含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態によると、混合された粒子群を分離するための方法は、入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させるステップと、前記チャンバ内で親和性マトリックスを実質的に固定化するステップと、第1培地と混合された粒子群とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記混合された粒子群は、標的粒子と非標的粒子とを含む、ステップと、前記標的粒子を前記チャンバ内の前記親和性マトリックス内に保持するステップと、前記チャンバの前記出口を通過する前記第1培地及び前記非標的粒子を収集するステップとを含む。
【0024】
本発明の一部の実施形態によると、生体材料を分別するための方法は、入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、第1培地及び生体材料の混合物を含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、前記生体材料を前記第1流から選択的に沈降させるステップと、前記チャンバ内の前記沈降した生体材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記沈降した生体材料上に作用するベクトル力の総和によって前記沈降した生体材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、次に、前記チャンバの前記出口を通過する前記第1培地及び前記非沈降生物材料を収集するステップと、その後に前記沈降した生体材料を前記流動床から取り除くステップとを含む。前記沈降した生体材料を取り除くステップは、前記出口に通して第2流を前記チャンバ内へ流動させる工程であって、前記第2流を流動させる工程は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、前記チャンバの前記入口を通過する前記沈降した生体材料を収集する工程とを含む。一部のまた別の実施形態では、本生体材料は、タンパク質である。
【0025】
本発明の一部の実施形態によると、粒子をスカフォールディング材料と結び付けるための方法は、入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、第1培地とスカフォールディング材料とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、前記チャンバ内で前記スカフォールディング材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記スカフォールディング材料上に作用するベクトル力の総和によって前記スカフォールディング材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、第2培地と粒子とを含有する第2流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップと、前記スカフォールディング材料を用いて少なくとも一部の粒子を保持するステップとを含む。
【0026】
本発明の一部の実施形態によると、粒子をスカフォールディング材料から取り除くための方法は、入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、第1流体とスカフォールディング材料とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記スカフォールディング材料は、粒子を含み、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、前記チャンバ内で前記スカフォールディング材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記スカフォールディング材料上に作用するベクトル力の総和によって前記スカフォールディング材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、解離試薬を含有する第2流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップと、前記スカフォールディング材料から粒子を取り除くステップと、前記チャンバの前記出口を通過する前記取り除かれた粒子を収集するステップとを含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態によると、粒子を操作するためのシステムは、軸の周りで回転可能であり、遠心力場を作り出すようになっているチャンバであって、入口と出口とを有するチャンバと、第1流体及び粒子を含有するバイオリアクターと、前記回転チャンバ及び前記バイオリアクターと流体連通している少なくとも1つのポンプと、前記チャンバと流体連通している流体マニホールドであって、該流体マニホールドは、間隔をおいて配置された複数のバルブを含み、前記複数のバルブは、使用中には自動的かつ選択的に開閉するようになっている、流体マニホールドと、前記少なくとも1つのポンプ及び前記バルブと通信する制御装置とを含む。前記制御装置は、
(i)前記バルブの開放及び閉鎖と、
(ii)前記少なくとも1つのポンプの流量と、
(iii)前記回転チャンバの回転速度と、
(iv)前記第1流体及び粒子を含有する第1流が前記バイオリアクターから前記入口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速と
を指令するようになっており、操作時において、前記第1流が前記バイオリアクターから前記入口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速は、遠心力とは相反する力を作り出すように作用し、それによって、前記チャンバ内の粒子の流動床が形成され、このとき、前記遠心力及び前記相反する力は、前記粒子上に作用するベクトル力の総和によって前記粒子を前記流動床内に実質的に固定化する。一部の他の実施形態では、前記制御装置は、第2流体を含有する第2流が前記出口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速をさらに指令し、操作時において、前記第2流が前記出口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向の力を作り出し、それによって、前記流動床から前記粒子を取り除くようになっている。一部の他の実施形態では、操作時において、前記粒子は、前記チャンバの前記入口に通して収集され、前記流動床から取り除かれた後に前記バイオリアクターへ返送される。さらにまた別の実施形態では、少なくとも1つのポンプは、双方向性ポンプを含んでいる。
【0028】
本発明の一部の実施形態によると、粒子を操作するためのシステムは、軸の周りで回転可能であり、遠心力を作り出すようになっているチャンバであって、該チャンバが、間隔をおいて配置された入口及び出口ポートを含み、前記入口及び出口ポートが、その入口及び出口ポート中の粒子に対して流体力を印加するようなサイズ及び形状になっている、チャンバと、前記チャンバ及び流体供給源と流体連通している第1ポンプと、前記チャンバと流体連通している流体マニホールドであって、該流体マニホールドは、間隔をおいて配置された複数のバルブを含み、前記複数のバルブは、使用中には自動的かつ選択的に開閉するようになっている、流体マニホールドと、前記流体マニホールドと連絡している流体バッファー洗浄供給源と、前記流体バッファー洗浄供給源及び前記流体マニホールドと流体連通している第2ポンプであって、前記第2ポンプは作動オン期間及びオフ期間を有し、作動オン期間において、前記第2ポンプは、前記第1ポンプより高い流量を有し、前記第2ポンプは、前記流体マニホールドの第1アームに取付けられた前記流体バッファー洗浄供給源の近くに配置されており、前記流体マニホールドの第2アームは、対向して配列された第1端部分及び第2端部分を有し、前記第1端部分が、前記第2ポンプの上方に取付けられており、前記第2端部分が、前記第2ポンプの下方の前記第1アームに取付けられており、前記第2アームが、前記第1端部分と前記第2端部分とを備える前記第2ポンプの周囲に延びており、前記第2アームは、前記バルブの中の1つである第1バルブを含んでいる、第2ポンプと、前記第1ポンプと前記第2ポンプと前記バルブと連絡している制御装置とを備える。前記制御装置が、
(i)前記バルブを開放及び閉鎖することと、
(ii)前記第1ポンプ及び第2ポンプの流量と、
(iii)約75〜500×gの遠心力を作り出すための前記チャンバの回転速度と、
(iv)約20〜300mm/分で前記チャンバを通る前記流体供給源からの前記流体の平均流速と
を指令するようになっており、操作時において、前記システムは、前記バッファー洗浄供給源からのバッファーを用いて、前記チャンバへの標的培地を用いた初期装填後に前記流体マニホールドの規定セグメントをフラッシュし、それにより、前記流体マニホールド内のデッドレッグを浄化する。
【0029】
一部のまた別の実施形態では、前記流体マニホールドは、前記チャンバとバイオリアクターとの間に伸びる入口流路を含み、該入口流路が、前記バイオリアクターの近くに配置されたバイオリアクターバルブを有し、前記流体マニホールドの前記第1アームは、前記バイオリアクターバルブの上流で前記入口流路と結合し、前記第1アームは、前記第1アームと前記バイオリアクターバルブとの間に連続的にかつ間隔をあけて配置された2つのバルブを含み、バッファー洗浄サイクルにおいて、前記2つのバルブ及び前記バイオリアクターバルブが、前記第2ポンプがオンである時に開放されるとともに、前記第2アーム内の前記第1バルブが閉鎖されて、これにより、前記バイオリアクターバルブにおけるデッドレッグがフラッシュされるようになっている。一部のまた別の実施形態では、前記流体マニホールドの前記第2アームは、廃棄物ライン内の廃棄物バルブを備え、前記流体マニホールドの第1アームは、前記第2アームの上流で廃棄物容器へ伸びる前記破棄物ラインを備え、前記流体マニホールドは、前記チャンバと、前記前記流体マニホールドの第1アームとの間で伸びる第2流路を含み、前記第2流路は、前記流体マニホールドの前記第2アームの上流に配置された第2流路バルブを含み、バッファー洗浄サイクルにおいて、前記バイオリアクターにおけるデッドレッグがフラッシュされた後に、前記バイオリアクターバルブが閉鎖され、前記第2流路バルブと結び付いているデッドレッグをフラッシュするために前記第2流路バルブが開放されるようになっている。さらにまた別の実施形態では、本システムは、バイオリアクターと連絡しているマニホールドの第3アームを含んでおり、前記流体マニホールドの前記第3アームは、バルブを含んでいる。上記のシステムの一部の実施形態では、粒子は細胞である。
【0030】
上記の方法及びシステムの一部の実施形態では、軸は、実質的に水平軸である。上記の方法及びシステムの一部の他の実施形態では、軸は、実質的に垂直軸である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に関係する力を示す図である。
【図2】粒子の運動を規定する数学的計算を示す図であり、粒子の運動は、粒子が液体流動とは相反する遠心力場に保持されたときに粒子に作用する重力に起因している。
【図3】図2の制限の下で結果として生じる粒子の運動を示す図である。
【図4】所定の半径での条件における固定化についての数学的評価を示す図である。
【図5】円筒形回転チャンバ内の遠心力と流速力の平衡についての分析を示す図である。
【図6】円錐形回転チャンバ内の遠心力と流速力の平衡についての分析を示す図である。
【図7】円錐形回転チャンバ内の粒子の三次元配列を示す図である。
【図8】円錐形回転チャンバ内の粒子の三次元配列における層間(inter-stratum)緩衝領域を示す図である。
【図9】円錐形回転チャンバ内の粒子の二次元配列における層内(intra-stratum)流速変動についての数学的分析を示す図である。
【図10】円錐形チャンバの実施例及びそれらの寸法を決定する境界条件の1つの実施例を示す図である。
【図11】図10のチャンバ内で流量が10mL/分である場合の遠心力と流速力の位置変化についての分析を示す図である。
【図12】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図13】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図14】本発明の典型的な方法及びシステムを用いた場合の生存細胞密度を示すグラフである。
【図15】本発明の典型的な方法及びシステムを用いた生存細胞を示すグラフである。
【図16】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図17】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図18】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図19】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図20】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図21】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図22】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図23】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図24】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図25】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図26】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図27】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図28】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図29】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図30】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図31】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図32】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図33】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図34】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図35】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【図36】本発明の典型的な方法及びシステムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の一部の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明についてより十分に説明する。しかし、本発明は、多数の相違する形態で実施することができ、本明細書に示した実施形態に限定されるべきではない。むしろこれらの実施形態の開示は、完璧かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えられるように提供されている。
【0033】
同じ番号は、全体を通して同じの要素に対応する。図面においては、所定の線の幅、層、構成成分、要素又は機能が、明瞭にするために誇張して示される場合がある。
【0034】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としていて、本発明を限定することは意図されていない。本明細書で使用する単数形「1つの」及び「その」は、状況が明白に他のことを表さない限り、複数形を含むことが意図されている。さらに、用語「含む」及び/又は「含んでいる」は、本明細書で使用された場合は、言及した機能、工程、操作、要素、及び/又は構成成分の存在を規定しているが、1つ以上の他の機能、工程、操作、要素、構成成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないと理解されたい。本明細書で使用する用語「及び/又は」は、関連する列挙した項目の1つ以上のいずれか及びすべての組み合わせを含んでいる。
【0035】
他に特に規定されない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者であれば一般に理解される意味と同一の意味を有する。一般に使用される辞書に規定された用語などは、本明細書及び関連技術の状況における意味と一致した意味で解釈すべきであり、本明細書で明示的に規定していない限り理想的もしくは過度に公式な意味で解釈すべきではない。周知の機能もしくは構造は、簡潔さ及び/又は明瞭性のために詳細には記載されない場合がある。
【0036】
1つの要素がまた別の要素の「上にある」、「付着している」、「接続されている」、「結合されている」、「接触している」などと言及される場合は、1つの要素は他の要素の直接的に上にある、付着している、接続されている、結合されている、又は接触している可能性がある、又は介在要素もまた存在する場合があると理解されたい。これとは対照的に、要素が、また別の要素の例えば「直接的に上にある」、「直接的に付着している」、「直接的に接続されている」、「直接的に結合されている」、又は「直接的に接触している」と言及される場合は、介在要素は存在していない。当業者であれば、また別の機能に「隣接して」配置される構造もしくは機能についての言及は、隣接機能の上に重なる、又は下にある位置を有する場合があると理解されたい。
【0037】
例えば「下に」、「下方に」、「下方の」、「上に」、「上方の」などの空間的相対語は、本明細書では、1つの要素もしくは機能の図面に示したまた別の要素もしくは機能との関係を説明する目的で説明を容易にするために使用される場合がある。空間的相対語は、図面に示した方向に加えて、使用時又は操作時の本デバイスのいくつかの相違する方向を含むことが意図されていると理解されたい。例えば、図面の中のデバイスが反転させられると、他の要素もしくは機能の「下に」又は「下方に」と記載された要素は、その後他方の要素もしくは機能の「上に」方向付けられる。そこで典型的な用語「下に」は、「上に」及び「下に」の両方の方向を含む可能性がある。本デバイスは、他の方向に(90度回転させて、又は他の方向に)方向付けることができ、本明細書で使用する空間的相対的記述子は、それに応じて解釈される。同様に、用語「上向きに」、「下向きに」、「垂直」、「水平」などは、本明細書では、他に特別に指示しない限り説明のためだけに使用される。
【0038】
本明細書で使用する用語「粒子」は、不活性及び生きている材料を含んでおり、細胞、細胞オルガネラ、酵素、例えばタンパク質、脂質、炭水化物などの生体分子、例えばナノもしくはマイクロ粒子であるポリマーもしくはコポリマー材料などの不活性材料、ならびに他のタイプのナノもしくはマイクロ粒子が含まれるがそれらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用する用語「細胞培養システム」は、制限なく哺乳動物、鳥類、昆虫、真菌、及び細菌細胞を含む細胞が増殖させられる任意のシステム又は装置を意味する。1つの実施形態では、細胞培養システムは、細胞が懸濁液中で増殖させられるシステムを意味する。
【0040】
本明細書で使用する用語「実質的に粒子を伴わない」は、チャンバ内の粒子の総量が20%未満であり、例えば、チャンバ内の粒子の量が、15、10、5、又は1%未満であることを意味する。
【0041】
本明細書で使用する用語「実質的に水平」は、水平の約20度以内、例えば水平の約15、10、5、又は1度以内にある軸を意味する。
【0042】
本明細書で使用する用語「実質的に固定化された」は、粒子がチャンバ内で小さな程度には移動できるが、チャンバからは出ないことを意味する。
【0043】
本明細書で使用する用語「流体」は、液体及び気体を含んでいる。
【0044】
本明細書で使用する用語「生体材料」は、細胞もしくは他の生きている構造の一部、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、膜、オルガネラなどである材料を意味する。
【0045】
本明細書で使用する用語「物理的に修正を加える工程」は、粒子(例えば、細胞)の物理的変化、例えば、物理的及び/又は化学的構造における変化、また別の分子への共有結合、粒子内への分子の組み込みなどを意味する。
【0046】
本明細書で使用する用語「環境を変化させること」は、粒子を取り囲んでいる環境における変化、例えば、培地の変化、1つ以上の化合物を培地へ添加すること、培地内の化合物の濃度における変化などを意味する。
【0047】
本明細書に開示した方法及びシステムは、流動床を使用して、例えば不活性粒子もしくは生存粒子(living particle)、例えば細胞培養中の細胞などの粒子を操作するための方法及びシステムを含んでいる。本方法及びシステムには、以下の有用な適用例が含まれるがそれらに限定されない。本方法及びシステムの適用例としては、
1つの場所から別の場所への粒子(例えば、原核もしくは真核いずれかの細胞)の移動、例えば細胞数/mLの数を増加もしくは減少させるなどの粒子(例えば、細胞)を濃縮もしくは希釈すること、
培地条件を変化させること、
粒子(例えば、細胞)において何らかの作用を実行すること(例えば、細胞をトランスフェクト(transfect)する、もしくは細胞に特異的化学的活性化因子もしくは阻害剤(inhibitor)を提供することなど)、
粒子(例えば、細胞)の環境を変化させること、
例えばバイアル内もしくは他の容器内などへ、粒子もしくは細胞の制御され測定された分注を提供することがある。
【0048】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に開示した方法及びシステムは、重力軸と実質的に同軸である平面で回転するローターを含む装置を備えることができる。本装置には、液体培地の流動を許容するための構成成分を装備することができる。本装置は、各粒子に作用するベクトル力の総和を使用して、流動床を形成する粒子を実質的に固定化するようになっている。そのような装置の実施形態は、米国特許第5,622,819号明細書、第5,821,116号明細書、第6,133,019号明細書、第6,214,617号明細書、第6,660,509号明細書、第6,703,217号明細書、第6,916,652号明細書、第6,942,804号明細書、第7,347,943号明細書、及び米国特許出願第12/055,159号明細書及び第11/178,556号明細書に開示されており、それらの各々は全体として参照することによりここに組み入れられる。細胞及び粒子の重量は、軽量であるが、それらの質量はゼロではない。結果として、重力は、懸濁した粒子もしくは細胞に有意な作用を及ぼし、この作用は経時的に増加する。懸濁した粒子もしくは細胞は、その重量によって、これらの粒子が容器の最下位領域に沈降し、最初にチャンバ内でそれらを懸濁させた力の平衡を崩壊させる。先行技術デバイスにおいて見られるように、粒子は凝集する傾向を示し、これらの粒子のより大きな粒子への凝集は、結果として遠心作用を大きくし、これにより凝集体がより長い半径に移動し、最終的には流動床の不安定化を引き起こす。
【0049】
これらの実施形態によれば、本発明の方法及びシステムに使用される装置は、
(1)ストークスの法則(Stoke’s Law)及び向流遠心分離の法則に固有の関係、
(2)流速及び遠心力場強度の幾何学的関係
(3)培地及び粒子に及ぼす水圧の作用
を利用する。本方法及びシステムは、水平軸の周りでの回転ならびに重力、回転からの遠心力及び粒子を保持するチャンバもしくは容器に進入する培地の流れによって提供される液体流動力を含む平衡力を使用することによって、例えば細胞などの粒子の三次元配列を固定化して粒子の流動床を形成できる装置を含んでいる。
【0050】
本発明の装置の理論的基礎は、懸濁した粒子を固定化するための新規な方法を利用する。固定化された懸濁粒子に作用する重力の効果を利用することと組み合わせてストークスの法則を適正に適用すると、そのような粒子の相対固定化を可能にする数学的関係が生じる。重力の効果は、図1に示したように回転軸の選択によって補償することができる。生物学的遠心装置及び方法において最も一般的である垂直軸(z)の周りでの回転の代わりに水平軸(y)の周りの回転が選択されると、固定化された粒子に重力が及ぼす効果は、x−z面における作用にのみ限定される。x−z面は遠心力ならびに液体流関連力の両方が作用するように抑制される平面と同一平面であるので、回転サイクルにおける任意の時点での懸濁した粒子の運動は、それに作用する3つのタイプの力の総和の結果である。水平軸の周りの回転は、懸濁した粒子が重力軸と実質的に同軸で回転することを意味する。
【0051】
図2の挿入図Aに示したように、図の平面がx−z面である場合、内向きに方向付けられた流動液体(Fb)によって供給される正確に均等かつ相反する力が粒子に向けて方向付けられている状態のときの半径方向遠心力場(Fc)において懸濁した粒子の位置へ重力(Fg)が及ぼす作用は、方程式1〜4(式中、(k)は、(a)に等しいローター位置の角回転中の重力によって付与されるx−z面における下方変位を表す)の評価によって計算することができる。これらの制限の下で[2πx(k/a)]<R(低質量粒子)についての粒子の運動を分析すると、この運動が周期的であるという決定を得ることができる、すなわち、粒子運動は、360度の1回の完全回転後(平衡に到達した後)に出発場所へ戻ることになる。図2に示したように、遠心力及び流動関連力の相反する特性の結果として不動性である粒子の運動に重力が及ぼす作用は、第I四分円及び第II四分円における半径方向位置の減少と、第III四分円及び第IV四分円における同等の半径方向延長とを生じさせる。したがって、回転軸からの粒子の半径方向距離はまた、360度の完全回転の経過にわたって周期的運動も示している。数学的には、運動の周期性を測定するには、測定が90度又は180度のいずれかの位置で始まる場合は1回転しか必要としないが、測定がゼロ又は180度のいずれかの位置で始まる場合は2回の完全回転を必要とする。なぜなら、これは、最初とは相違する新規な平衡半径方向距離が、結果的に後者の場合で生じるためである。
【0052】
図3は、完全回転サイクルにおける粒子の有効運動を示している。粒子が懸濁させられる容器の側面を1及び2と表示すると、1回転サイクルの経過にわたる粒子の運動は、円を描くようなものであり、この円は、粒子の容器の「最先端」側に向かってずれた中心を備えるような円である。したがって、均等液体流動場とは相反する遠心力場に懸濁させられた粒子は、半径方向の力の平衡をその運動の経過にわたって維持できる場合は、周期的運動に拘束される(そしてしたがって効果的に固定化される)。
【0053】
図4は、グラフを表示しているが、この図では回転軸は(y)軸である。これらの条件下では、サンダーソン(Sanderson)及びバード(Bird)の仮説を言い換えて粒子の固定化に適用することができる。z軸(rz)に沿った半径方向距離があるが、このz軸(rz)に沿った半径方向距離は、方程式3によって評価すると、重力場の存在下においてさえ内向きに方向付けられる液体流とは正確に相反する遠心力場に粒子が相対的に固定化される位置を表している。さらに、均一な粒子のサイズ、形状、及び密度ならびに均質な液体流の条件下でストークスの法則(方程式1)を単純化すると方程式2となるが、この式では、粒子の沈降速度(SV)が、印加された遠心力場の単純線形関数になることが明らかである。同様に、次に方程式3を同一条件下で書き換えると方程式4となるが、このとき、液体速度(方程式3におけるV)は、液体流速(FV)と置換されている。方程式4は、液体流速と印加された遠心力場の連続体が存在することを提案しており、液体流速と印加された遠心力場の連続体は、それらの全部が相対粒子固定化の要件を満たすことができる定数(C)の評価によって適応させることができる。さらに、液体流速を(z)の関数として変動させることができれば、各半径距離でのこの方程式を別個に適用できる可能性がある。方程式4が有する意味を考察することは、回転軸から単一半径方向距離にある粒子の二次元配列の固定化とは対照的に、粒子の三次元配列の相対的固定化にとって重要である。
【0054】
粒子が位置しているチャンバが(図5にグラフ表示されているように)円筒形であり、液体がこのチャンバ内へチャンバの末端から回転軸の最も遠位へ流動させられると、この液体流の流速(方程式1に既定されている、図5)は、粒子の層によって占有されていない全地点で単一値を有することになる。その結果として、粒子の二次元配列が特定半径方向距離(A1)で位置的に平衡している場合は、方程式2(式中、CFは遠心力場強度であり、FVは液体流速である)に示したように、A1より大きい、又は小さいいずれかの半径方向距離で位置を占めるように強制された液体(例えば、図5でA2もしくはA3に位置する液体)は、必然的に、粒子の正味平行移動を生じさせる不均衡な拘束力で提示される。したがって、A1より長い半径方向距離であるA2に位置するそれらの粒子は、A1にある粒子よりも大きな遠心力を受けて、必然的により長い半径方向距離へ移動することになる(方程式3)。これとは逆に、最初はA3に位置した粒子は、減少した遠心力場を経験し、より短い半径方向距離へ移動することになる(方程式4)。したがって、例えば、図5などの平行の壁を備えるチャンバ内で粒子の三次元配列を形成するのは不可能であると考えられている。
【0055】
しかしチャンバが、図6にグラフ表示したように回転半径が減少するにつれてその断面積が増加するような幾何学形状を有する場合は、例えば細胞などの固定化された粒子の三次元配列を形成することが可能である。これは、相対遠心力場が回転半径と比例して変動する(方程式2)間に液体流動の微視的流速は断面積と反比例して変動する(方程式1)という事実の結果である。したがって、流速及び回転速度の数値が、粒子の二次元配列が回転半径A1で固定化されるように選択されると(方程式3)、最初は半径方向距離A2に位置した粒子が類似の力の均等、又は方程式4に示したように、チャンバの中心に向かって戻る正味運動を生じさせる力の不均等のいずれかを経験できるようにチャンバの側壁の「アスペクト比」を調整することが可能である。類似の議論は、A3に位置する粒子にも適用することができる(方程式5を参照)。図6に示したチャンバの幾何学的形状は、切頭円錐形の形状であるが、その代りに、回転半径が減少するにつれてチャンバの断面積は増加するという制約を受けるが、他の形状もまた使用できることに留意されたい。したがって、図7に示したように、選択されたチャンバの幾何学的形状は、回転半径が減少するにつれて遠心力場強度の減少以上の流速減少を可能にする場合は、液体流動場とは相反する変動する遠心力場において粒子の三次元配列を構築することが可能である。図7において選択された切頭円錐形の幾何学的形状では、各回転半径(Rc)での粒子の二次元配列は各々、相反する力が正確に等しい場合は、その半径に向かう運動に拘束される。
【0056】
一見すると、上記に提示した説明は、固定化を提供する半径以外の全ての半径では力の不釣り合いが及ぼす真の作用は、適切な半径上に集中する狭い領域内へ全粒子が「詰め込まれることを」示唆しているが、これは事実とは異なる。図8に示したように、粒子の各層が隣接層に近付くにつれて、各層は、ある領域内に移動し(図8における水平の矢印)、この領域では「緩衝作用」が各層を別々に維持している。粒子の隣接層が互いにかみ合うことができないことの理由は、各層を通る微視的流速プロフィールの分析によるものである。図9は、円形断面積を備えるチャンバ層において特定半径方向距離に閉じ込められた典型的な球状粒子の単層を示している。図9における粒子の直径と断面の直径との比は、12:1である。チャンバ断面の非占有部分を通る液体の流速の大きさは、その地点でのチャンバの寸法から単純に定量できるが、粒子の層に占有された領域を通る流速は、必然的に粒子の層が存在しないところの流速に比べてはるかに大きいが、それは液体が通過しなければならない断面積が極めて小さいからである。図9のグラフに示されているように、上記の寸法の層を通る流速の増加は、各側で層にすぐ隣接する自由空間において決定される流速の2倍を超える。各層の領域における局所流速におけるこの微視的増加は、各隣接層を別個に維持する「緩衝材」を提供し、細胞が粒子である場合は、結果として細胞の流動床が生じる。
【0057】
例えば、チャンバの幾何学的形状が切頭円錐である場合、切頭円錐の最遠位領域は、遠心力と液体流速の正確な均等が達成される領域であることが好ましい。切頭円錐の「アスペクト比」(切頭円錐の小さな半径対切頭円錐の大きな半径の比)は、図10に示した2つの方程式の解を同時に求めることによって決定される。方程式2では、粒子の「最下位」層についての不動性の所望の境界条件が提示されている。方程式2は、重力に起因する粒子の固有沈降速度(SR)×半径方向距離で印加される相対遠心力場(RCF)は、その地点での液体流速(FV)の大きさと正確に等しいと提示している。方程式1では、粒子の配列の対向表面での所望の境界条件が提示されている。本方法において、容器もしくはチャンバ内に粒子が保持されることを必要とする場合は、SRとRCFの積がその半径方向距離での流速の大きさの2倍である境界条件が選択される。所望の境界条件方程式の同時解決を使用すると、上方の直径及び円錐の長さが公知である場合は、円錐断面径の比を解くことができる。本方法が容器からの粒子の排除もしくは除去を必要とする場合は、回転が継続する間に力が変化させられ、平衡させられない。例えば、液体力と遠心力とが平衡しない場合がある、又は液体力と遠心力が同一方向に一緒に作用することがあり、粒子はチャンバから出て行く。
【0058】
図11は、本実施例では大きな直径=6.0cm、小さな直径=3.67cm及び深さ=3.0cmの寸法を有する円錐断面のチャンバを越える流動関連力と遠心力の相対的大きさのプロフィールである。相対沈降速度は、最適温度での培地中の重力に起因する粒子の固有沈降速度と印加された遠心力場の積であると規定されている。図10を参照すると、示された寸法のチャンバ(生体触媒固定化チャンバの近位端が回転軸から9cmの位置にあるチャンバ)内への所定の流量(本実施例では10mL/分)に関しては、重力に起因する固有粒子沈降速度と角速度との積は、所望の境界条件を満たすために所定の流量では一定である。言い換えると、角速度は本明細書では特定する必要がないが、それはその数値は固定化される粒子の特定タイプにのみ左右されるからである。図11に示した点線は、生体触媒固定化チャンバの底部から上部への遠心力場強度における線形変動を示していて、実線は、流速の対応する数値を示している。チャンバの底部(チャンバの最遠位部分)では、力は均等であり、この位置での粒子は真の力(net force)を経験しないことになる。チャンバの上部では、粒子は、遠心力場の大きさの半分に過ぎない流動関連力を受けるので、したがって、流速が顕著に増大するすぐ近くの断面積が減少する領域(チャンバの液体出口ポート)が存在していたとしても、チャンバから出て行く可能性はほとんどない。
【0059】
上記から、回転半径が減少するにつれて断面積が増加する必要条件を課すと、三次元粒子配列における結果として生じる所望の力関係を確立するために、印加された遠心力場と任意の半径方向距離での液体流速力との間の境界関係及び中間関係を確立するためにその形状を操作できるよう他の幾何学的チャンバ形状が生じることは明らかなはずである。しかし、実際には、回転面を横断する平面において作用するコリオリ力(coriolis force)の異常作用が生じるような長方形の断面を備える幾何学的形状を利用することは望ましくない。長方形の断面の場合には、これらの他の点では重要でない力が、層間粒子運動(interlayer particle motion)の原因となることがある。
【0060】
印加された遠心力とは無関係に作用する個別粒子質量に作用する重力は、以前に示されたよりさらに重要ではない。詳細には、重力が固定化される粒子に及ぼす基本的な作用は、半径方向の延長又は半径方向の短縮のいずれかを引き起こすことであるので、粒子のそのような運動によって、必然的に、粒子の流速の大きさが増加した領域(長半径)か又は粒子の流速の大きさが小さくなる領域(短半径)のいずれかになり、遠心力場強度については、小さな変化しか生じさせない。結果として、粒子の固有質量に及ぼす重力作用に起因する粒子の周期的運動は、そのような不均衡な相反する力場が存在する状況下では大きく抑えられ、低質量粒子の場合には、その場所での振動になる。
【0061】
本発明の一部の他の実施形態では、本明細書に開示した方法及びシステムは、重力軸を実質的に横断する平面で回転するローターを含む装置を備えることができる。これに関連して、ローターは、実質的に垂直軸の周りで回転することができる。そのような装置の実施形態は、米国特許第4,939,087号明細書、第5,674,173号明細書、第5,722,926号明細書、第6,051,146号明細書、第6,071,422号明細書、第6,334,842号明細書、第6,354,986号明細書、第6,514,189号明細書、第7,029,430号明細書、第7,201,848号明細書、及び第7,422,693号明細書に開示されており、それらの各々は全体として参照することによりここに組み入れられる。これらの装置には、少なくとも1つのチャンバ及びチャンバを通る液体培地の流動を許容する構成部品を装備することができる。本装置は、各粒子に作用するベクトル力の総和を使用して、粒子を実質的に固定化して流動床を形成する。より詳細には、液体培地の流動は、回転するチャンバによって作り出された遠心力場に相反する力を作り出すように作用する。
【0062】
さらに他の実施形態では、ローターは、水平軸と垂直軸との間の任意の軸の周りで回転することができる。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、ローターは、チャンバ内の粒子のタイプに依存して、約25〜約15,000×g、例えば約50〜約5,000×g、例えば約75〜約500×gの範囲内、例えば約25、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、もしくは15,000×g以上又はその中の任意の部分範囲の遠心力を作り出すために十分な速度で回転するようになっている。例えば、哺乳動物細胞について適切な遠心力は、約25〜約1,000×gの範囲内にあるが、より軽量の粒子(例えば、細菌もしくは生体材料(タンパク質、DNA))に対して適切な遠心力は、約5,000〜約15,000×gの範囲内にある場合がある。所定の実施形態では、チャンバを通る平均流体流速(チャンバの先端から1/3のチャンバ高さで測定)は、チャンバ内の粒子のタイプに依存して、約5〜約800mm/分、例えば約20〜約300mm/分の範囲内、例えば約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、もしくは800以上又はその中の任意の部分範囲内にある。他の実施形態では、流動床の密度は、チャンバ内の粒子のタイプに依存して、約0.1×10〜約5.0×10、例えば約0.5×10〜約2.0×10の範囲内、例えば約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0×10以上又はその中の任意の部分範囲内にあってよい。
【0064】
本明細書に開示した方法は、各粒子に作用するベクトル力の総和を使用して、粒子の流動床を形成する粒子を実質的に固定化する装置の使用を含んでいる。そのような装置の実施形態は、米国特許第5,622,819号明細書、第5,821,116号明細書、第6,133,019号明細書、第6,214,617号明細書、第6,334,842号明細書、第6,514,189号明細書、第6,660,509号明細書、第6,703,217号明細書、第6,916,652号明細書、第6,942,804号明細書、第7,029,430号明細書、第7,347,943号明細書、及び米国特許出願第11/384,524号明細書、第12/055,159号明細書及び第11/178,556号明細書に開示されており、それらの各々は全体として参照することによりここに組み入れられる。
【0065】
1つの態様では、本装置は、円筒形ローター本体を含むことができ、円筒形ローター本体は、モーター駆動回転軸上に取付けられている。ローター本体は、ロッキングカラー(locking collar)によって回転軸上の正位置に固定することができ、軸受によってローターのいずれかの側面に支持されている。また、別の態様において、バイオリアクターチャンバは、ローター上に取付けることができ、液体流は、回転軸内の液体チャネルによってバイオリアクターチャンバ内へ導入されて、バイオリアクターチャンバから取り除くことができる。
【0066】
本発明の一部の実施形態において、本装置内の及び/又は本装置に出入りする流路の全部分は、ディスポーザブル材料から構成される。完全にディスポーザブルの流路、ならびに閉鎖システム動作設計の使用は、最新医薬品適正製造基準(cGMP)の遵守を許容する。
【0067】
本装置及びその中のチャンバは、本発明の方法のために適切な任意のサイズであってよい。本装置のサイズに依存して、ローター本体は、1つ以上のチャンバ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のチャンバを含有することができる。ローター本体内のチャンバ全部の総容量は、約0.5mL以下〜約5L以上、例えば、10、15、もしくは20L以上の範囲に及んでよい。一部の実施形態では、チャンバ総容量は、約0.5、1、5、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、もしくは900mL、又は約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、もしくは5Lである。より大規模のバイオプロセッシング用途のためには、チャンバ総容量は、例えば、約250mL〜約1L以上の範囲内にあってよい。小規模プロセス(例えば、研究所使用、臨床検査室使用、血液処理など)のためには、チャンバ総容量は、例えば、約0.5mL〜約100mL以下の範囲内にあってよい。
【0068】
ローター本体が1つより多いチャンバを含有する場合は、一部の実施形態では、各チャンバは独自の別個の流路を有することができる。他の実施形態では、複数のチャンバを直列又は並列流体経路に接続することができる。所定の実施形態では、本発明の方法における相違するプロセスを、単一ローター本体内の相違するチャンバ内で実施することができる。
【0069】
1つの態様では、本明細書に開示した方法は、軸の周りでの回転を使用することによって粒子の流動床を形成できる装置の使用を含んでいる。また別の態様では、本発明の方法及びシステムは、チャンバ内の液体培地内への気体の導入又は液体培地内での気体の発生が望ましい場合に使用できる。本明細書に開示した方法及びシステムの他の実施形態では、液体培地中の溶液内又は溶液外の気体の存在又は非存在は、本方法及びシステムにとって重要ではない。したがって、チャンバ及びチャンバへ通じる、及びチャンバから出て行く液体ラインを含む本システムの液体含有パーツの水圧は、必要な量の流入気体を十分に溶解させるため、及び任意の生成された気体の溶解度を保証するために十分な水圧で維持されても維持されなくてもよい。
【0070】
以前のバイオプロセッシングシステムは、タンパク質治療薬製造に向けられてきたが、この場合には細胞は廃棄される。これとは対照的に、本発明は、回収率が改善され、且つ損傷した細胞由来の細胞タンパク質による汚染を小さくする、細胞をなだらかに操作するための方法を提供する。本方法は、細胞に低剪断力(low shear)及び最小の圧力低下を付与し、例えば遠心分離に基づくシステム、濾過に基づくシステム、沈降システム、超音波システム、及び液体サイクロンシステムなどの現行細胞保持システムに比較して、妨げが生じない(clog-free)連続作動を提供する。本発明は、プロセス工程の回数ならびにプロセス時間を減少させる細胞及び他の粒子のプロセッシングのための統合システムをさらに提供する。
【0071】
本発明の方法は、潅流培養(perfusion culture)、バッチ培養及びフェドバッチ(fed-batch)培養システムを含む任意のタイプの細胞培養システム(例えば、バイオリアクター、フラスコ、培養皿、又は他の増殖チャンバ)とともに使用できる。本発明の方法は、制限なく、細菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、細胞系、一次細胞、胚もしくは成体幹細胞などを含む任意のタイプの細胞とともにさらに使用できる。本発明の方法はさらに、細胞を含む流体(例えば、血液、尿、唾液、脳脊髄液などの体液)ならびに他の細胞供給源(例えば、微粒子上で培養された細胞、組織サンプル(例えば、生検標本もしくは吸引液)、培養一次細胞(例えば、幹細胞、同種異系細胞)など)とともに実施することができる。
【0072】
本発明の方法及びシステムの1つの態様は、潅流細胞培養条件を細胞に提供するステップを含んでいる。例えば、バッチ、フェドバッチ、及び潅流バイオリアクタープロセスは、バイオ治療薬の製造において広汎に使用されている。バッチ及びフェドバッチプロセスに比較して、潅流バイオリアクタープロセスは、より高い細胞密度、力価及び生成物の品質をもたらすが、これは栄養分が持続的に再補給される間に生成物及び毒性副産物が継続的に取り除かれるからである。大多数の潅流プロセスは、一般にはバッチ又はフェドバッチプロセスに比較してはるかに長い期間にわたって稼働し、より小型の装置を必要とする。潅流プロセスは伝統的なバッチ及びフェドバッチプロセスに比して幾つかの利点を有するが、潅流プロセスにおける主要な障害の1つは、プロセス全体を通して細胞が保持されることである。最も一般的には、細胞は遠心分離又は濾過のいずれかに基づく装置を使用することによってバイオリアクター内に保持される。遠心分離に基づく装置は、ペレットを形成する際に細胞へ剪断応力及び栄養枯渇を生じさせ得るが、これらの条件によって、細胞集団の生存性が低くなる。濾過に基づく装置は、フィルターに関連する目詰まり問題に困らせられることがあり、細胞に剪断応力を生じさせ、これは細胞の増殖及び活性を阻害する可能性がある。
【0073】
1つの態様においては、細胞を含有する培地の流れが、細胞を回転させるためのチャンバを含む装置内に通過すると、それを通過する培地の連続的潅流を生じさせる細胞の流動床が形成される。その後、細胞は、最小剪断力の環境内、及び細胞に酸素や栄養分の絶え間ない供給を行う環境内に置かれる。例えば、細胞は、固定バイオリアクター容器から取り出され、回転チャンバを含む装置に移されるが、その間に、培地は、チャンバへ、及びチャンバを通って移される。細胞の流動床は、培地の流体力に関連して細胞を保持するための速度で回転させられるチャンバ内で形成することができる。
【0074】
図12は、1つの態様を示していて、本発明の潅流バイオリアクターの方法及びシステムの1つの実施例である。細胞は、バイオリアクター1内に位置していて、提供された培地中で増殖している。培地の流れは、培地容器10からポンプ11を使用して一般にはチュービングである経路12を通って培地を提供することによって開始される。培地及び細胞は、バイオリアクター1から出て、経路2を経由して、例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置4へ流れる。培地及び細胞が回転チャンバ5内に流入すると、細胞は回転チャンバ5内に保持されるが、培地は経路6を経由して装置4から流出する。培地は、バルブ7を通って経路6に流れ、経路8を経由して使用済み培地又は収穫された培地のための容器9へ流れ又は廃棄される場合がある(経路は示していない)。
【0075】
例えば、回転チャンバ5がほぼいっぱいになった場合などの所望の時点もしくは条件では、細胞は、また別の場所に移すことができる、例えばバイオリアクター1に戻すことができる。1つの態様では、回転チャンバが回転し続けている間に、流体力は、流体流動方向を逆転させて少なくとも部分的に同一方向に作用する遠心力及び液体力を用いて変化させることができ、細胞の全部又は一部分は回転チャンバを離れることができる。
【0076】
本方法及びシステムの1つの実施例として、図13を参照されたい。培地は、経路14を経由してポンピング(pump)され、培地供給容器10から、又はまた別の培地供給源から供給することができる。培地は、さらにまたバイオリアクター1から提供されてもよい(経路は図示していない)。バルブ13は開放され、培地は経路6を経由して回転チャンバ5を含む装置4内に流入する。回転チャンバ5内に保持された細胞は、回転チャンバ5から経路2を経由して例えば双方向ポンプなどのポンプ3を通ってバイオリアクター1内へ流入する。培地は、所望の時間量にわたって回転チャンバ5及び経路、又はチュービングを通ってポンピングすることができる。回転チャンバ5内に以前に保持されていた細胞は、バイオリアクター内に返送され、細胞集団に混合される。所望の時間量後、流れの方向は再び逆転され、バルブ13は閉鎖され、バルブ7が開放され、図12及び図13に示したような潅流サイクルが繰り返される。この潅流サイクルを使用すると、バイオリアクター細胞には新鮮培地が連続的に提供され、使用済み培地が取り除かれる。
【0077】
例えば、図面に示したような本明細書に開示した典型的な方法及びシステムにおいて、本明細書に開示した方法及びシステムは、図示した容器、経路又はポンプだけに限定されないことを理解されたい。例えば、当業者であれば、双方向ポンプを1つ以上のポンプと容易に置換することができ、経路は、チュービング又はパイピングによる提流体流導管によって提供することができる。
【0078】
実施例1は、本発明の方法及びシステムを使用して、新鮮培地を提供するステップとバイオリアクターから使用済み培地を取り除くステップによって、そのステップの間に回転チャンバ内の使用済み培地中でバイオリアクターを離れる細胞を捕捉し、それらの捕捉された細胞を、細胞の増殖もしくは活性をほとんどもしくは全く妨害せずにバイオリアクターに返送する、潅流バイオリアクタープロセスを作り出すための比較例を開示している。使用済み培地が除去されるバイオリアクターから1つの方向に離れる流体流、それに捕捉された細胞及び培地がバイオリアクターに戻るような流体流の逆転が続く潅流サイクルは、バイオリアクターの稼働中は繰り返すことができる。潅流サイクルは、当業者であれば決定することができる細胞の必要に依存して、1バッチ期間に付き、又は1日当たり、又は1週当たり、又は1カ月当たり1回以上、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、又は1〜25回、1〜50回、1〜100回、1〜300回、1〜400回、1〜500回、1〜1,000回の範囲内で繰り返すことができる。回転チャンバ内で流体力を作り出す培地の流動方向は、本発明の方法又はシステム内では、0.5分毎、1分毎、2分毎、3分毎、4分毎、5分毎、10分毎、15分毎、20分毎、30分毎、40分毎、45分毎、50分毎、60分毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、11時間毎、12時間毎、0.5分毎〜24時間毎及びそれらの間の任意の範囲で逆転させることができる。
【0079】
潅流バイオリアクターでは、また別の培地の流れを利用することができる。図12を見ると、新鮮培地は、ポンプ11によって経路12を介して培地供給供給源10からバイオリアクター内へ持続的に送り込まれる。細胞及び使用済み培地は、バイオリアクター1から外へポンピングされ、細胞は回転チャンバ5内で捕捉され、使用済み培地は経路6によって、バルブ7を通って容器9内へ取り除かれる。図13には示していないが、潅流サイクルの他方の半分では、培地の流れが逆転させられ、バイオリアクター1又は例えば10からの培地供給源(図には示していない)などの他の供給源内で始まる経路14を有することによって、培地が提供される。培地は、バイオリアクターからバルブ13を通り、装置4の回転チャンバ5を通り、経路2に沿ってポンプ3によってポンピングされ、経路2を経由してバイオリアクター内へ戻される。バイオリアクターから出てくる培地に混入される可能性がある任意の細胞は、遠心力及び流体流動力が少なくとも部分的に整列されるために回転チャンバ5内を通って洗浄されるか、又は流体流が新規サイクルの開始時に再び逆転されると、存在する任意の細胞は回転チャンバ5内に捕捉されて細胞の流動床を形成する。
【0080】
本発明の方法及びシステムは、少なくとも本明細書に開示した方法及びシステムのための任意のタイプの細胞培養システム(例えば、バイオリアクター)とともに使用できる。1つの態様では、本方法及びシステムは、任意のサイズのバイオリアクター、プラスチック製、ガラス製もしくはステンレススチール製バイオリアクターとともに使用でき、固定式もしくは携帯式バイオリアクターとともに使用できる。また別の態様では、本方法及びシステムは、細胞へのストレスの減少が生じるために細胞生存性が極めて高いバイオリアクターを可能にする。さらにまた別の態様では、本明細書に開示した方法及びシステムは、細胞培養システムとともに、及び細胞培養システムに取付けて使用できる。
【0081】
本発明の方法及びシステムは、連続遠心分離器としての回転チャンバを含む装置の使用を含んでいる。図16を参照されたい。1つの態様では、細胞は、バイオリアクター1内に配置することができる。培地及び細胞は、バイオリアクター1から出て、経路2を経由して、バルブ15を通り、及び例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置4へ流れる。バルブ17は、閉鎖される。細胞は、回転チャンバ5内に保持され、培地は装置4から出て経路6を経由して、図示したように浄化された培地用の容器16へ流れる。培地は、リサイクルさせることができる、又は廃棄することができる(経路は図示していない)。細胞は、回転チャンバ5内で流動床を形成する。
【0082】
回転チャンバが回転し続けている間に、流体流動方向を逆転させて少なくとも部分的に同一方向に作用する遠心力及び液体力を用いて、流体力を変化させることができ、細胞の全部又は一部分は回転チャンバを離れることができる。
【0083】
本方法及びシステムの1つの実施例として、図17を参照されたい。培地は、例えば容器16などの培地容器から経路6を経由して、装置4及び回転チャンバ5へポンピングされる。細胞は、経路2を経由して双方向ポンプ3を通って回転チャンバ5から離れる。バルブ17は開放され、バルブ15は閉鎖され、培地及び細胞は、経路19を経由して容器18内へ流入する。1つの態様では、装置4のチャンバ5は、このプロセスを通して回転を停止させることを必要としない。細胞及び培地を、回転チャンバ内に細胞を含有する容器からポンピングして回転チャンバから細胞を相違する容器へ取り出すサイクルは、例えば大容量から細胞を濃縮させるために上記に開示したように複数回繰り返すことができる。
【0084】
本発明のまた別の本方法及びシステムは、回転チャンバ、細胞培養もしくは収穫中の培地及び/又はバッファー交換を含む装置の使用を含んでいる。図18を参照されたい。例えば、培地交換は新鮮培地を提供するため、又は細胞を相違する培地、例えば増殖培地、保管培地、分注培地、トランスフェクション培地などへ取り替えるために使用できる。培地交換は、細胞培養から汚染物質を取り除くため、例えば小粒子状汚染物質(例えば、ディスポーザブルチュービング(disposable tubing)及び/又はチャンバから生じるプラスチック粒子など)を取り除くため、細胞内タンパク質又は損傷もしくは溶解した細胞からの細胞破片を取り除くため、遊離ウイルスもしくは他の生物学的汚染物質などを取り除くために使用できる。一部の実施形態では、培地交換は古い培地を新規培地と置換することに少なくとも90%有効(古い培地の少なくとも90%が除去される)であり、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%有効である。他の実施形態では、有効な培地交換は、新規培地の使用を最小に抑えて、例えば約10チャンバ容量未満、例えば約9、8、7、6、5、4、3、又は2チャンバ容量未満で遂行できる。さらに別の実施形態では、培地交換は、細胞の高い残留率で、例えば少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上の残留率で実施することができる。例えば、細胞は、バイオリアクター1内に配置される。培地及び細胞は、バイオリアクター1から出て、経路2を経由して、バルブ15を通り、及び例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置4へ流れる。バルブ17及び21は閉鎖される。細胞は、回転チャンバ5内に保持され、培地は装置4から出て経路6を経由して、図示したように浄化された培地用の容器16へ流れる。細胞は、回転チャンバ5内で流動床を形成する。
【0085】
図19は、新規培地もしくはバッファー(buffer)を添加する実施例を示している。回転チャンバが回転し続ける間に、バルブ21は開放され、新規培地もしくはバッファーは、経路20を経由して、双方向ポンプ3もしくは一方向ポンプ(図示していない)のポンプを通って装置4へポンピングされる。回転チャンバ5内の細胞は、新規培地もしくはバッファーに晒して取り囲まれ、新規培地もしくはバッファーは、最初の培地もしくはバッファーを完全に又は部分的に置換することができる。細胞は、回転チャンバ5内に留まり、新規培地/バッファーは、装置4を離れて経路6を通って例えば容器16などのまた別の容器へ送られる。
【0086】
新規培地もしくはバッファーが、例えば最初の培地もしくはバッファーの100%を置換するなどの所望濃度に達すると、細胞は、バイオリアクターに返送され、新規培地もしくはバッファーの存在下で増殖し続けることができる。1つの態様では、例えば、回転チャンバは、回転し続けることができ、流体力は、流体流動方向を逆転させることによって変化させられる。また別の態様では、少なくとも部分的に同一方向に作用する遠心力及び液体力を用いると、細胞の全部もしくは一部分が回転チャンバから離れることができる。
【0087】
この態様では、培地は、例えば容器16などの培地容器から経路6を経由して装置4及び回転チャンバ5へポンピングされる。細胞は、経路2を経由して双方向ポンプ3を通って回転チャンバ5から離れる。バルブ17は閉鎖され、バルブ15は開放され、培地は、経路2を経由してバイオリアクター内へ流入する。回転チャンバ5内に保持された細胞は、回転チャンバ5から経路2を経由して、例えば双方向ポンプ3を通ってバイオリアクター1内へ流入する。
【0088】
また、図20に示したように、細胞を収穫(harvest)することができる。細胞の収穫は、例えば、様々な目的のために培養中で増殖させられている細胞、例えばワクチンとして使用するために生成されている細胞、被験者からの細胞サンプル(例えば、被験者へ再投与するために増殖させられている同種異系細胞又は胚もしくは成体幹細胞)などを取り出すために使用できる。培地は、例えば容器16などの培地容器から経路6を経由して装置4及び回転チャンバ5へポンピングされる。細胞は、経路2を経由して双方向ポンプ3を通って回転チャンバ5から離れる。バルブ17は開放され、バルブ15は閉鎖され、培地は、経路19を経由して容器18内へ流入する。回転チャンバ5内に保持された細胞は、回転チャンバ5から経路2を経由して、双方向ポンプ3を通って容器18内へ流入する。1つの態様では、装置4の回転チャンバは、このプロセスを通して回転を停止させることを必要としない。回転チャンバ内に細胞を含有する1つの容器から細胞及び培地をポンピングして回転チャンバから細胞を相違する容器へ取り出すサイクルは、上記に開示したように、複数回繰り返すことができる。これは、例えば、及び1つの態様によると、細胞の増殖及び/又は活性中のいずれの時点でも細胞に新規培地もしくは新規バッファーを提供することができるか、又は収穫もしくは保管のために培地もしくはバッファーを提供することができる。細胞が培地もしくはバッファーで洗浄された後、回転チャンバは、流体流を逆転させることによって細胞が空にされる。本明細書に開示した培地/バッファー交換の適用は、トランスフェクション、細胞分注、バイオリアクターへの播種、又は培養中の細胞の維持、増殖、収穫もしくは処理のいずれかの他のステップに先行して使用できる。
【0089】
図21〜23は、本明細書に開示した方法及びシステムの1つの態様を示している。本方法及びシステムは、バイアルに細胞を充填するための細胞ディスペンサーとして使用できる。この適用例では、細胞は濃縮され、培地及び/又はバッファー交換を行うことができ、次に、細胞は、回転チャンバから培地、又は新規培地及び/又はバッファーの流体流を逆転させることによって、バイアルもしくはボトル、又は任意の所望の容器内へ細胞を分注するために移される。細胞ディスペンサーは、細胞バンクを生成するため、細胞療法のためのバイアルを充填するため、冷凍するため、ウエルプレート、又は測定された量の細胞が所望である任意の容器内へ分注するために使用できる。
【0090】
図21に示した実施例では、細胞は、バイオリアクター1内へ配置される。培地及び細胞は、バイオリアクター1から出て、経路2を経由して、バルブ15を通り、及び例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置4へ流れる。バルブ17及び21は閉鎖される。細胞は、回転チャンバ5内に保持され、培地は、装置4から出て経路6及び25を経由して、バルブ24を通って廃棄物用の容器23へ流れる。細胞は、回転チャンバ5内で流動床を形成する。
【0091】
図22に示したように、培地及び/又はバッファーは、細胞が回転チャンバ5内に存在する間に交換される。新規培地及び/又はバッファーは、新規培地及び/又はバッファー容器22からバルブ21を通って経路20を経由して双方向ポンプ3などのポンプへ、及び回転チャンバ5を含む装置4内へポンピングされる。新規培地及び/又はバッファーは、回転チャンバ5を通ってそれを出て、経路6及び25を通ってバルブ24へ、及び容器23内へ流入する。
【0092】
図23は、回転チャンバから分注容器へ細胞を移送する実施例を示している。1つの態様では、細胞は、回転チャンバ5内で流動床を形成している。流体力の方向は、流体力及び遠心力が少なくとも部分的に同一方向に整列されるように変化させられる。また別の態様では、この変化は、流体流を逆転させるために双方向ポンプ3を使用することによって発生させることができる。新規培地及び/又はバッファーは、容器26から経路28及びバルブ27を経由して経路6及び装置4内の回転チャンバ5内へ提供される。細胞及び培地は、回転チャンバ5を離れ、経路2を経由して、ポンプ3、バルブ17を通り、経路19を通って分注容器45内へ流入する。
【0093】
回転チャンバ内への細胞の装填中、流路内の停滞領域は、例えば培養培地で汚染されている可能性がある。これらの停滞領域、又は「デッドレッグ(dead legs)」は、バルブの近辺で発生することがあり、完全なバッファー洗浄を得るために清浄培地/バッファーですすぎ洗う(rinsing)ことができる。本明細書で使用する「清浄」培地/バッファーは、培地/バッファーが無菌もしくは実質的無菌であることを意味し得る。図36は、この結果を達成するための典型的な方法及びシステムを示している。第1ポンプP1は、チャンバを通る培地の流動を制御する。第2ポンプP2は、第1ポンプP1より高速で稼働するように設定されている。細胞の装填中、デッドレッグは、バルブV1及びV7又はその近辺で発生することがある。デッドレッグをすすぎ洗うためには、細胞が装填された後、及びバッファーすすぎ洗いが行われている間に、第2ポンプP2のスイッチを入れ、バルブV8を閉鎖することができる。バルブV3及びV5は、バッファー洗浄のために既に開放されている。バルブV1は、そのバルブでデッドレッグを(ポンプP2からの過剰な流れを用いて)フラッシュするために短時間開放される。次に、ポンプP2は、スイッチが切られ、残りのバッファー洗浄時間のためにバルブV8が開放され、バルブV1が閉鎖される。収穫ルーチンを開始する前に、ポンプP2が、再びスイッチが入れられ、バルブV8が、閉鎖される。次に、バルブV7は、隣接デッドレッグをフラッシュするために短時間開放される。次に、ポンプP2はスイッチが切られ、バルブV7は閉鎖され、バルブV8は開放される。この時点で、汚染されていない収穫を行うことができる。一部の実施形態では、気泡検出器BS1、BS2、BS3、及びBS4は、流体流の末端を検知し、このためにプロセスの次の段階(例えば、洗浄)を始動させることができる。本発明の方法及びシステムのいずれにおいても、気泡検出器又は他の流動検出器を使用できると理解されたい。
【0094】
培養中の細胞は、新規生成物を提供するため、細胞の増殖を支援するため、又は細胞の最初の活性を変化させるための作用を受けることができる。例えば、細胞は、DNAもしくはRNAを細胞内に導入するトランスフェクション又は感染法を受けることができる。細胞内に導入される材料は、DNAもしくは他の核酸もしくは構築物、タンパク質、化学薬品、炭水化物、ワクチンもしくはウイルス粒子、又は細胞に影響を及ぼすために公知である他の活性物であってよい。
【0095】
トランスフェクションは、例えば、遺伝子を標的細胞内に導入するためにルーチン的に使用される。付着性培養と比較して、懸濁培養は、一般にはより低いトランスフェクション効率となる。これは、トランスフェクション試薬複合体と細胞との接触時間が短いことが原因となり得る。本発明の方法及びシステムは、トランスフェクションのために使用できる。1つの態様では、標的細胞は、適正なバッファー又はトランスフェクション試薬複合体を作り上げる他の化合物と一緒に対象となる核酸(DNA及び/又はRNA)に曝露させることができる。本発明の装置では、適切な当分野において公知の任意のトランスフェクション技術を使用できるが、それには限定はなく、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈降法、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、DNA装填エレクトロポレーション、リポフェクタミン−DNA複合体、及びウイルス媒介性トランスフェクション/感染が含まれる。1つの実施形態では、トランスフェクション試薬複合体は、対象となる核酸、例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス、αウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バー(Epstein−Barr)ウイルス、又はアデノウイルスベクターを含有するウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)であってよい。細胞は、トランスフェクション試薬複合体を装置の回転チャンバ内に存在する細胞の流動床へ提供することによって、トランスフェクション試薬複合体に晒すことができる。細胞は、振とうフラスコ又はバイオリアクター内で増殖させることができる。図24及び図25は、本方法及びシステムの実施例を示している。回転チャンバ内にあるより高密度にある細胞を晒して、トランスフェクション試薬複合体と細胞との接触時間を増加させる。トランスフェクション試薬複合体が、細胞間の間質腔を通って横断するにつれて、接触時間が増加する。図24に示したように、細胞は、バイオリアクター1内に配置される。培地及び細胞は、バイオリアクター1から出て、経路2を経由して、バルブ15を通り、及び例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置4へ流れる。細胞は、回転チャンバ5内に保持され、培地は、装置4から出て経路6及び25を経由して、バルブ24を通って容器23内へ流入する。細胞は、回転チャンバ5内で流動床を形成する。
【0096】
図25は、1つの態様によるトランスフェクション法及びシステムを示しているが、この方法及びシステムは、感染もしくは細胞上への任意の他の作用、又は細胞への特定化合物もしくは因子の提供のために使用できる。この態様では、本方法及びシステムは、細胞に提供される材料によって限定されない。例えば、トランスフェクション法では、少なくともDNA及び/又はRNA又は対象となる核酸構築物を含むトランスフェクション反応複合体は、容器29内に含有されていて、容器29から出て経路30を経由してバルブ31及び経路32を通って、例えば双方向ポンプ3などのポンプによって細胞の流動床を含有する回転チャンバ5がある装置4へポンピングされる。トランスフェクション反応複合体は、回転チャンバ5内の細胞の流動床を通って、経路6及び33を通ってバルブ34へ、経路35を通って容器29内へ流入するので、その結果としてトランスフェクション反応複合体は再循環する。トランスフェクション反応複合体は、細胞の適正な曝露を保証するために必要とされる限り再循環させることができる。
【0097】
1つの態様では、トランスフェクション反応複合体が適正な時間量、例えば1〜60分間、もしくは1〜3時間、又は所望の晒し時間にわたって細胞とともに存在した後、トランスフェクション反応複合体流体流の再循環は逆転させられる。図26を参照されたい。この態様では、トランスフェクション反応複合体の流体流は、容器29から、経路35を通って、バルブ34を通って、経路33及び6を通って装置4の回転チャンバ5内に流入する。この流体流の変化は、例えば双方向ポンプ3などのポンプによって制御することができる。この液体流の逆転を用いると、流体力及び遠心力は、少なくとも部分的に同一方向に作用し、細胞は回転チャンバ5から取り除かれる。細胞及び培地は、回転チャンバ5から、ポンプ3を通って、経路2を経由してバルブ15へ、及び例えばバイオリアクター1もしくは振とうフラスコなどの容器内へ通過する。1つの態様では、本明細書に開示した方法及びシステムは、必要とされると思われる量より少ない量のトランスフェクション複合体を使用して、大規模トランスフェクションを実行するために容易に使用できる。また、別の態様では、トランスフェクション前に培地交換が必要になると、上記に示したような単純な培地交換ステップをトランスフェクションの前に付け加えることができる。細胞とトランスフェクション材料との接触時間を増加させると、トランスフェクション効率を改善することができる。
【0098】
本発明のまた別の態様は、例えば、エレクトロポレーション技術(electroporation)を使用して細胞又は生体材料に影響を及ぼすための方法及びシステムを含んでいる。例えば、電流は、細胞膜の透過性を変化させ、核酸又は他の荷電分子の、細胞又は例えばミトコンドリアなどの細胞成分内への進入を可能にすることができる。図29は、そのような方法及びシステムの1つの態様を示している。この態様では、細胞を含有する培地は、培地中の細胞の容器1から経路2を経由して、双方向ポンプ3を経由して、回転チャンバ5を含む装置4内へポンピングされる。回転チャンバ5内の細胞は、電流場を印加することによって作用され、細胞膜の透過性が変化させられる。様々な態様では、膜の透過性を変化させるため、又は何らかの様式で細胞に影響を及ぼすために、電場の1つ以上のパルスを細胞に印加することができる。細胞を取り囲んでいる培地は、変化した透過性で細胞膜を横断できる1つ以上の核酸配列、タンパク質、塩又はイオンを含むことができる。エレクトロポレーション後、細胞は、回転チャンバ5から容器1へ、経路2を経由して、例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って容器1内へ戻ることができる。電気穿孔処理(electroporating)にかけられた細胞は、また別の容器8内に、培地及び細胞を回転チャンバ5から経路2を経由して、例えば双方向ポンプ3などのポンプを通して、バルブ7を通って容器8内にポンピングするステップによって保存することができる。培地は、所望の時間量にわたって回転チャンバ5及び経路、又はチュービングを通ってポンピングすることができる。廃棄培地及び/又は細胞は、回転チャンバ5から経路6を経由して廃棄物容器9へ取り除くことができる。
【0099】
図30は、エレクトロポレーション法のまた別の態様を示している。細胞を含有する培地は、培地中の細胞の容器1から、経路2を経由して、双方向ポンプ3を経由して、回転チャンバ5を含む装置4内にポンピングされる。細胞は、回転チャンバ5内に維持され、細胞流動床としてチャンバ内で濃縮される。細胞は、この時点において洗浄することができ、分子(容器10内に保存された)を含有する流体は、経路11及び12を経由して細胞流動床に通して再循環させることができる。電場は、分子を細胞に組み入れるために短パルスで印加される。エレクトロポレーションが完了すると、細胞は、その後のプロセッシングのために収集することができる。細胞は、1つ以上の場所にポンピングすることができる。
【0100】
一般に、エレクトロポレーション法は、例えば膜を備える細胞もしくは細胞成分などの生体材料を含む粒子を、粒子もしくは細胞膜の透過性を変化させるために適切な強度の電場へ晒すステップを含んでいる。例えば核酸、DNA、RNA、荷電イオン、タンパク質などの荷電分子は、変化した透過性のために、より容易に粒子内に進入する。1つの実施例として、細胞は、回転チャンバを含む装置において、細胞がチャンバ内で流動床を形成する回転チャンバ内で濃縮される。細胞は洗浄することができ、荷電分子を含有する培地は、流動床に添加することができる。所定の実施形態では、細胞は、電場が印加される前に、同時に、及び/又は後に荷電分子に曝露させることができる。電場が、例えば短パルスで印加されると、細胞膜が変化させられる。電気パルスのタイプ、強度、及び長さは、各細胞タイプに合わせて最適化できる。哺乳動物細胞については、所定の実施形態では、パルスは、方形波又は指数関数の形状にある。パルスの電圧は、約50〜約1,000V、例えば約100〜約500Vの範囲内、例えば約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1,000V以上又は任意のその中の部分範囲内にあってよい。パルスの長さは、約1ミリ秒〜約100ミリ秒、例えば約5〜約50ミリ秒の範囲内、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100ミリ秒以上又はその中の任意の部分範囲内にあってよい。細胞は、1回より多く、例えば、2、3、4、もしくは5回以上パルスすることができる。荷電分子もしくはイオンは、細胞に進入する。次に細胞は、逆流を使用してまた別の保持槽へ移す、又は母集団に戻すことができ、本プロセスは繰り返すことができる。
【0101】
本明細書に開示した方法及びシステムは、細胞集団を分離するために使用でき、密度及び/又はサイズに基づいて分離することを含んでいるが、それには限定されない。1つの実施形態では、相違する細胞集団(例えばサイズ又は密度が相違する細胞など)を含有する流体を回転チャンバ内に送り込むことができる。相違する細胞集団を含有する流体の例には、限定はなく、体液(例えば、血液、尿、唾液、脳脊髄液など)、消化組織サンプル、相違する細胞タイプの共培養などが含まれる。回転チャンバ内では、細胞は、流体流(流体力)及び/又は遠心力を変調させることによって分離できる。細胞の流動床は、回転チャンバ内で形成することができる。回転速度を変化させ、これにより細胞に印加される遠心力を変化させることによって、流体流を変化させ、これにより細胞への流体力を変化させることによって、又は回転速度及び液体流の両方を変化させることによって、特定細胞又は類似のサイズ及び/又は密度を有する細胞の小集団を流動床から分離して回転チャンバから取り出すことができる。流体力及び遠心力が適切に調整されると、より軽量及び/又は小さな細胞は、培地の流れで回転チャンバから外に出ることができる。図27を参照されたい。細胞床が形成された後、新鮮培地もしくはバッファーは、流体力及び/又は遠心力をもう一度調整することによって類似細胞のまた別の小集団を分離するために使用できる。このプロセスは、密度及び/又はサイズが相違する細胞の複数の小集団を分離するために数回繰り返すことができる。最後に、より重い/大きい細胞は、新鮮培地の流れを逆転させることによって収穫される(図28)。
【0102】
図27では、例えば、大細胞及び小細胞の混合集団を含む細胞が容器1内に配置されている。培地及び細胞は、容器1から出て、経路2を経由して、バルブ15を通り、及び例えば双方向ポンプ3などのポンプを通って、回転チャンバ5を含む装置へ流れる。細胞は、回転チャンバ5内に保持され、培地は、装置4から出て経路6を経由して、バルブ36を通って容器37内へ流入する。より小さい及び/又は軽量の細胞を取り除くためには、培地が回転チャンバ5内にポンピングされる速度を増加又は減少させることによって流体力が変化させられる、及び/又は回転チャンバ5の回転速度を変化させることによって遠心力が増加又は減少させられる。流体力もしくは遠心力のいずれか一方、又は両方を変化させると、細胞の小集団を取り除くことができる。残留している細胞は流動床を再形成し、次に流体力もしくは遠心力のいずれか一方又は両方は、上記に記載したように類似細胞のまた別の小集団を取り除くために変化させられ、所望に応じて頻回に繰り返すことができる。細胞の小集団を取り除くための方法が完了すると、所望の集団が回転チャンバ内に残留し、流体流は、流体力及び遠心力が完全ではなくても少なくとも部分的に整列するように逆転させられる。その後に細胞は、回転チャンバからまた別の容器に取り出すことができる。細胞培養方法では、小細胞又は大細胞を選択するのが所望であることがあり、そして本発明は、所望のタイプを選択するための細胞の分離を提供できる方法及びシステムを提供する。
【0103】
図28は、より重い/大きい細胞を収穫するための方法及びシステムの1つの態様を示している。この態様では、流体流は逆転させられ、培地は、容器10から経路43を経由してバルブ42へ、及び経路44を経由して回転チャンバ5を含む装置4へ提供される。細胞及び培地は、回転チャンバ5から出て、経路2を経由して例えば双方向ポンプ3などのポンプへ、経路41を経由してバルブ39へ、及び経路40を経由して容器38内に流入する。
【0104】
本明細書に開示した方法及びシステムは、特定細胞、生体材料、又は粒子の選択、精製、もしくは濃縮のために使用できる。例えば、親和性方法(affinity method)を使用すると、例えば細胞などの特定標的を選択することができる。親和性標的には、特定細胞タイプ、例えば胚もしくは成体幹細胞、多能性細胞、組織特異的細胞、又は特定分化段階の細胞を含むことができる。親和性マトリックスは、回転チャンバ内に含有されてよく、1つ以上の標的を含む混合集団を回転チャンバ内に移送することができる。親和性マトリックスは、親和性標的に結合し、流動床を形成できる、例えば標準クロマトグラフィー材料などの任意の適切な粒子、ビーズ、又は樹脂であってよい。親和性マトリックスは、親和性標的、例えば抗体(ポリクローナル、モノクローナル、フラグメント、Fc領域など)、プロテインA及びプロテインG含有材料、染料、受容体、リガンド、核酸などに結合する材料を含むことができる。マトリックスに対する親和性を有する細胞もしくは粒子は、マトリックスによって結合又は保持されるが、他の粒子もしくは細胞は、チャンバから出て行く。出て行く材料は、それが再び親和性マトリックスに近付くために回転チャンバ内に再進入するように再循環させることができる。親和性マトリックスと結合又は結び付けられる細胞もしくは粒子は、回転チャンバ内の培地の流れに溶出培地(elution media)を加えることによって遊離させることができる。遊離した細胞もしくは粒子は、親和性マトリックスからの遊離後に収集できる。図31を参照されたい。
【0105】
また別の態様は、例えば、親和性マトリックスを使用して、細胞もしくは粒子を濃縮させるための方法及びシステムを含んでいる。例えば、図31には、標的細胞もしくは粒子を分離するためのシステム及び方法の1つの態様が開示されている。この態様では、標的細胞を含有する培地は、培地中の不均質な細胞集団の容器1から、経路13を経由して、双方向ポンプ3を経由して、経路2を経由して回転チャンバ5を含む装置4内へポンピングされる。回転チャンバ5内に保持される細胞には、親和性マトリックスによって作用が加えられ、標的細胞+veは親和性マトリックスによって保持され、他の細胞−veは回転チャンバを通って流れ出る。回転チャンバから出て行く培地及び細胞は、回転チャンバ及び親和性マトリックスを1回以上通過するために再循環させられ、出て行く細胞−veは、バルブ8を通って容器11内に保存される。溶出培地は、容器12からバルブ9を通って、双方向ポンプ3を経由し、経路2を経由して装置4の回転チャンバ5内にポンピングされる。溶出培地は、標的細胞と親和性マトリックスとの関連を破壊するので、標的細胞+veは、マトリックスから取り除かれる。標的細胞は、回転チャンバ5から出て経路6を通り、バルブ7を経由して流れ、容器10内に含有される。
【0106】
また別の実施例では、特異的表面受容体を発現する細胞を細胞の混合集団から単離することができる。受容体に対する抗体がコーティングされたビーズは、親和性マトリックスとして機能し、回転チャンバ内に固定化できる。細胞の混合集団が本システム内に導入されるにつれて、受容体を提示する細胞はマトリックス上の抗体によって結合され、回転チャンバ内に保持されるが、他方、受容体を伴わない細胞は、回転チャンバを通って流れ出る。相違する実施形態では、細胞の混合集団を、回転チャンバに進入する前に抗体にさらすことができる。抗体に結合する材料(例えば、プロテインA及びプロテインG)でコーティングされたビーズは、チャンバ内に固定化できる。細胞の混合集団が本システム内に導入されるにつれて、抗体に結合している細胞は親和性マトリックスに結合し、チャンバ内に保持されるようになる。1つの態様では、受容体を備える細胞は、抗体マトリックスから、例えば制限なくトリプシンもしくは抗体によって認識される可溶性分子などの遊離剤を含有する培地を、回転チャンバに通して流動させることによって遊離させることができ、そして遊離剤の作用によって遊離した細胞を収集できる。
【0107】
また別の態様は、タンパク質又は他の生体材料を分別するための方法及びシステムを含んでいる。図32を参照されたい。タンパク質の混合物を含有する培地は、容器1から、バルブ10を経由し、双方向ポンプ3を経由してポンピングされ、経路2を経由して回転チャンバ5を含む装置4へ流入する。タンパク質混合培地は、選択的にタンパク質を沈降させることができ、沈降したタンパク質は、回転チャンバ5内に保持される。そのような条件は当業者には公知であり、pH、イオン強度、化学薬品(例えば、硫酸アンモニウム)、又はタンパク質濃度を含むことができる。沈降したタンパク質は、沈降したタンパク質に作用する平衡した力に起因して回転チャンバ5内に保持される。沈降していないタンパク質は、回転チャンバ5内には保持されず、経路6を通って容器8に流れることができる。沈降したタンパク質は流動床として蓄積し、ポンプ流を逆転させることによって収集され、経路2を通り、双方向ポンプ3を経由し、バルブ7を通って容器9内に流入できる。本プロセスは、繰り返すことができ、培地中の条件は、相違するタンパク質が各相違する条件(タンパク質分画)下で沈降させられ、個別分画は各々が相違する容器9内に保存されるように変化させることができる。
【0108】
本発明の方法及びシステムのまた別の態様は、細胞もしくは他の生体材料をスカフォールド(scaffold)と結び付けるステップ、又は細胞もしくは他の生体材料をスカフォールドから取り除くステップを含んでいる。本明細書で使用するスカフォールドは、例えば、内部もしくは外部、又はその両方のいずれであろうと、細胞を結び付ける、包埋(embed)することのできる三次元構造を含んでいる。そのようなスカフォールドは、例えば細胞を含む組織中、又は細胞が除去されている組織中で見いだされる天然構造などの天然であってよい、又は三次元形状を形成するために合成もしくは天然材料から製造することができる。例えば、コラーゲンスカフォールドは、例えば脱細胞化された血管、又はコラーゲン分子からなどの天然構造を用いて使用できる、又はランダム三次元形状を形成するスカフォールディング材料として使用できる。スカフォールディング材料の他の例には、アルギン酸塩及びプロテオグリカンが含まれるが、それらに限定されない。図33は、本明細書に開示した方法及びシステムの別の実施例を示している。スカフォールディング材料を含有する培地は、容器10から、バルブ8を経由し、双方向ポンプ3を経由して、経路2を経由して回転チャンバ5を含む装置4へポンピングされる。スカフォールディング材料は、回転チャンバ5内に保持される。スカフォールディング材料は、架橋結合できてもできなくてもよい。細胞を含有する培地は、容器1からポンピングされ、バルブ7を通って、双方向ポンプ3を経由し、経路2を経由して装置4の回転チャンバ5内に流入する。細胞は回転チャンバ内に保持され、スカフォールディング材料と結び付けられる、又はスカフォールディング材料の上及び内部に包埋される。スカフォールディング材料は、架橋結合できてもできなくてもよい。スカフォールディング材料及び細胞の添加の順序は逆転することができ、細胞が先に回転チャンバ5内に入り、その後にスカフォールディング材料の添加が行われてもよい。回転チャンバは開放することができ、結び付いた細胞を備える三次元スカフォールドを取り除くことができる。
【0109】
また別の態様は、細胞又は他の生体材料をスカフォールドから取り除くステップを含んでいる。一部の実施形態では、細胞は、組織サンプルから取り除くことができる。他の実施形態では、細胞はその上で細胞が培養中で増殖させられている人工支持体、例えば微粒子もしくは他のタイプのスカフォールドから取り除くことができる。例えば、細胞を含む組織の小片は、容器1から、バルブ7を経由し、双方向ポンプ3を経由してポンピングされ、経路2を経由して回転チャンバ5を含む装置4内へ流入する。組織の小片は、組織片上に作用する平衡した力に起因して回転チャンバ5内に保持される。例えば、そして制限なくトリプシン、コラゲナーゼ又は他の消化酵素などの解離試薬は、容器10からバルブ8を経由し、双方向ポンプ3を経由してポンピングされ、経路2を経由して装置4の回転チャンバ5へ流入する。解離試薬は固定化された組織片に作用し、細胞は組織から取り除かれ、経路6を通って回転チャンバから流失して容器9へ流れる。遊離した細胞は、洗浄されるため、又は相違する培地中に配置されるために第2回転チャンバ(図示していない)に進入することができる。この態様では、細胞の解離試薬又は過酷な条件へ晒すことは最小限に抑えられるので、結果として生じる細胞への損傷は小さい。
【0110】
本発明の方法及びシステムは、生体材料を治療するための方法及びシステムをさらに含んでいる。例えば、図35に例示されているような方法及びシステムを使用すると、例えば細胞、細胞成分又は他の生体材料などの粒子をコーティングすることができる。例えば、細胞は特定材料又は2つ以上の材料(例えば、相違する層中に)で被包化できる。図35に示したように、粒子を含有する培地は、容器1から、バルブ10を経由し、双方向ポンプ3を経由してポンピングされ、経路2を経由して回転チャンバ5を含む装置4へ流入する。粒子は、粒子に作用する平衡した力に起因して回転チャンバ5内に保持することができる。流体培地中に提供される、液体又は気体であってよいコーティング材料は、容器12からバルブ9を通って双方向ポンプ3を経由してポンピングされ、経路2を経由して粒子をコーティングするために装置4の回転チャンバ5内に流入する。過剰のコーティング材料は、経路6を通ってバルブ8を経由して容器12に流れて、1サイクル以上でコーティングプロセスを繰り返すことができる、又はバルブ7を通って廃棄物容器11内に流入できる。流動床内の粒子は一様にコーティングされ、例えば乾燥もしくは保管などの他の作用(図示していない)のために回転チャンバへ移送することができる。1層以上のコートを粒子に塗布することができ、これらのコートは同一材料を含むことができる、又は相違する材料を含むことができる。1つの態様では、例えば、第1コートは1つの材料であってよく、第2コートは相違する材料であってよい。
【0111】
本明細書に示した方法及びシステムを使用すると、細胞を1つの容器から別の容器へ運ぶことができる、又は細胞を遠心分離、濾過、及びペレット化の危険に晒すことなく最初の容器へ戻すことができる。本明細書に示した実施例は、細胞の操作、単離、濃縮、培地交換又は細胞の容易な移送が望ましい任意の方法のために変更することができる。そのような方法は、本発明によって企図されている。
【0112】
上記で考察したように、本発明の方法及びシステムは、ローター(モーターによって駆動できる)、1つ以上のバルブ、及び/又は1つ以上のポンプを使用することができる。これらの構成要素は、1つ以上の制御装置によって制御することができる。換言すると、単一制御装置が、全構成要素を制御できる、又は構成要素の一部もしくは全部が専用の制御装置を有していてよい。一部の実施形態では、本制御装置は、
1)バルブの開放及び閉鎖、
2)ポンプの流量、
3)直接的又はモーターを経由してのいずれかによるローターの回転速度、
4)チャンバの回転速度、及び/又は
5)バイオリアクターなどの流体供給源からの流体及び/又は粒子の流速
を指令する。一部の実施形態では、制御装置は、例えば上記でより詳細に記載したエレクトロポレーション技術において印加される電場などの電場の印加を指令することができる。
【0113】
本発明は、例示することだけを意図している下記の実施例においてより詳細に説明され、この実施例に対して当業者が多数の修正及び変更できることは明らかである。
[実施例1]
【0114】
本明細書に開示した方法及びシステムを潅流式バイオリアクタープロセスとして使用した。本実施例では、バイオリアクター容器から使用済み培地を取り除き、バイオリアクター内で細胞を潅流させるために培地をバイオリアクターへ戻すために、図12及び図13に示した方法及びシステムを使用している。バイオリアクターを離れる培地(使用済み培地)中には一部の細胞が存在した。細胞及び培地は、使用済み培地中に存在する細胞を保持もしくは捕捉する回転チャンバを通って流動させられ、使用済み培地は、回転チャンバから廃棄用容器内に流入し続けた。所定の時間後、流体流動は逆転させられ、新鮮な新規培地などの培地が回転チャンバ内へ流動させられた。チャンバ内の遠心力及び流体流動力は、少なくとも部分的に同一方向に作用し、細胞は回転チャンバから流出して、新鮮培地と一緒にバイオリアクターに戻された。これは、1回の潅流サイクルから構成された。所望の時間後、潅流サイクルは流体流を逆転させ、使用済み培地及び細胞を再びバイオリアクターからポンピングすることによって繰り返された。本明細書では、攪拌槽型バイオリアクタープロセスをバッチプロセスと呼ぶ。
【0115】
潅流プロセスと、細胞が除去されないバッチプロセスとを比較するために、5LのCDCHO培地(Invitrogen社)を含有する2つの15LのApplikon(登録商標)攪拌槽型バイオリアクターに細胞密度が0.26×10個/mLとなるようにCHO(チャイニーズハムスター卵巣)−S細胞(Invitrogen社)を接種した。細胞計数は、増殖及び培養の生存性を監視するために毎日実施した。使用済み培地がバイオリアクター容器から一部の細胞と一緒に取り除かれる連続的潅流サイクルを第3日にバイオリアクターの1つで開始したが、このサイクルでは細胞の大多数は回転チャンバによって捕捉されるが、その間に流体は一方向に流動し、その後流体流動は逆転させられるので、その結果、例えば新鮮培地などの培地及び捕捉された細胞は、バイオリアクター容器に戻された。
【0116】
潅流バイオリアクターでは、潅流速度は、使用済み培地の収穫速度に適応する速度で供給された培地によって5L/日で維持された。5L/日の速度は、バイオリアクターについて1容量/日の培地交換を生じさせた。バイオリアクターを離れる細胞は捕捉され、バイオリアクターに戻された。
【0117】
バイオリアクターの容量は5Lであり、温度は37℃で維持され、pHは6.9〜7.4であった。溶存酸素は30%で、pH制御に役立つようにインペラの速度は120rpm、低風量、及び二酸化炭素重層を用いた。回転チャンバは30mLの能力を有し、800rpmで回転した。交換速度は1容量/日であり、サイクル時間は30分間であった。
【0118】
潅流サイクルでは、30分毎に流体流が逆転させられるので、回転チャンバ内では、遠心力及び流体力はもはや相互に反対方向に平衡していないので、流体力及び遠心力は、同一方向に働いて捕捉された細胞の細胞流動床を回転チャンバから取り除き、細胞及び培地をバイオリアクターに戻した。潅流サイクルプロセスの開始後、生存細胞密度(VCD)はバッチプロセスサンプルと比較して潅流プロセスサンプル中では一貫して増加した(図14)。この実験は、5日間にわたる30分毎の細胞の除去、固定化及び返送後に第8日に終了した。第8日に、潅流バイオリアクター内のVCDは19.2×10個/mLに達したが、バッチバイオリアクター内のVCDは3.9×10個/mLであった。生存性は実験を通して>95%のままであり(図15)、これは、培地の移動及び細胞の捕捉が細胞に有害ではなかったことを示している。このデータは、本明細書に開示した潅流バイオリアクターのためのシステム及び方法を用いると、細胞の増殖は伝統的な攪拌槽型バイオリアクターを用いたバッチプロセスより高い細胞質量を生じさせることを証明している。
【0119】
上記は本発明の例示であり、本発明を限定するものと見なすべきではない。本発明の少数の典型的な実施形態を記載してきたが、当業者であれば、本発明の教示及び利点から著しく逸脱せずに典型的な実施形態において多数の修正が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、全てのそのような修正は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内に含まれることが意図されている。以下では、本発明は、添付の特許請求の範囲、及びその中に含まれる特許請求の範囲の均等物によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床を使用して細胞を操作するための方法であって、
入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、
第1培地及び細胞を含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、
前記チャンバ内で前記細胞の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記細胞に作用するベクトル力の総和によって前記細胞を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、
前記細胞を実質的に前記チャンバの前記出口を通過させることなく前記第1培地を収集するステップと、
前記流動床内で前記細胞を操作するステップと、その後に
前記細胞を前記流動床から取り除くステップを含み、
前記操作するステップは、取り除く工程と、濃縮する工程と、希釈する工程と、培地を交換する工程と、収穫する工程と、移送する工程と、分注する工程と、トランスフェクトする工程と、電気穿孔処理する工程と、分離する工程と、抽出する工程と、単離する工程と、選択する工程と、精製する工程と、コーティングする工程と、結合する工程と、物理的に修正を加える工程と、環境を変化させる工程とからなる群から選択され、
前記細胞を取り除くステップは、
第2流を前記出口に通して前記チャンバ内へ流す工程であって、前記第2流を流す工程は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、
前記チャンバの前記入口を通過する細胞を収集する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1流が前記チャンバ内に流入する前に、細胞培養システムからの第1流を提供するステップと、
前記第1培地を交換するステップと、
前記細胞が前記流動床から取り除かれた後に、前記細胞及び前記交換された培地を前記細胞培養システムへ送達するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞を操作するステップは、前記細胞をトランスフェクトする工程を含み、
前記細胞をトランスフェクトする工程は、前記細胞の前記流動床を通るトランスフェクション流を1回以上循環させることを含み、
前記トランスフェクション流は、トランスフェクション試薬複合体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を操作するステップは、前記細胞を電気穿孔処理する工程を含み、
前記細胞を電気穿孔処理する工程は、
前記細胞の前記流動床に電流を印加することと、
前記細胞の透過性を変化させることと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞を電気穿孔処理する工程は、
前記電流を印加する前か、前記電流を印加すると同時か、及び/又は前記電流を印加した後に、荷電分子を含有する荷電分子流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すことと、
前記荷電分子を前記細胞内に組み入れることと
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
流動床を使用して粒子を操作するための方法であって、
入口と出口とを含むチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、
第1培地及び粒子を含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、
前記チャンバ内で粒子の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記粒子に作用するベクトル力の総和によって前記粒子を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、
前記粒子を実質的に前記チャンバの前記出口を通過させることなく前記第1培地を収集するステップと、次に、
前記流動床内で前記粒子を操作するステップと、その後に
前記粒子を前記流動床から取り除くステップを含み、
前記操作するステップは、取り除く工程と、濃縮する工程と、希釈する工程と、培地を交換する工程と、収穫する工程と、移送する工程と、分注する工程と、トランスフェクトする工程と、電気穿孔処理する工程と、分離する工程と、抽出する工程と、単離する工程と、選択する工程と、精製する工程と、コーティングする工程と、結合する工程と、物理的に修正を加える工程と、環境を変化させる工程とからなる群から選択され、
前記粒子を取り除くステップは、
第2流を前記出口に通して前記チャンバ内へ流す工程であって、前記第2流を流す工程は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、
前記チャンバの前記入口を通過する前記粒子を収集する工程と
を含む、方法。
【請求項7】
前記粒子を操作するステップは、前記粒子を濃縮する工程を含んでおり、
前記粒子を濃縮する工程は、前記粒子を取り除いた後に濃縮粒子収穫容器内に前記粒子を受け入れることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子を操作するステップは、前記第1培地を交換する工程を含み、
前記第1培地を交換する工程は、
第2培地を含む新規培地の流れを前記入口に通して前記チャンバ内へ流すことと、
前記流動床内の前記第1培地の少なくとも一部を前記第2培地と交換することと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子を操作するステップは、前記粒子を収穫する工程を含んでおり、
前記粒子を収穫する工程は、前記粒子を取り除いた後に粒子収穫容器内に前記粒子を受け入れることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子を操作するステップは、前記粒子を分注する工程を含んでおり、前記粒子を分注する工程は、前記粒子を取り除いた後に、測定した量の粒子を1つ以上の細胞分注容器内に受け入れることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子は、混合された粒子群を含み、
前記粒子を操作するステップは、前記混合された粒子群を分離する工程を含み、
前記混合された粒子群を分離する工程は、
前記混合された粒子群の少なくとも一部を前記流動床から取り除くことと、
前記チャンバの前記出口を通過する、前記混合された粒子群の少なくとも一部を収集することと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記混合された粒子群の少なくとも一部を取り除くことは、前記遠心力場及び/又は前記第1流の力を変化させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合された粒子群は、サイズ、密度、及び/又は形状によって分離される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子を操作するステップは、前記粒子をコーティングする工程を含み、
前記粒子をコーティングする工程は、
コーティング材料を含有するコーティング流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すことと、
前記流動床内に保持された前記粒子を前記コーティング材料でコーティングすることと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
混合された粒子群を分離するための方法であって、
入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させるステップと、
前記チャンバ内で親和性マトリックスを実質的に固定化するステップと、
第1培地と混合された粒子群とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記混合された粒子群は、標的粒子と非標的粒子とを含む、ステップと、
前記標的粒子を前記チャンバ内の前記親和性マトリックス内に保持するステップと、
前記チャンバの前記出口を通過する前記第1培地及び前記非標的粒子を収集するステップと
を含む方法。
【請求項16】
溶出培地を含有する第2流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップと、
前記標的粒子を前記親和性マトリックスから遊離させるステップと、
前記チャンバの前記出口を通過する前記標的粒子を収集するステップ工程と
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
粒子をスカフォールディング材料と結び付けるための方法であって、
入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、
第1培地とスカフォールディング材料とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、
前記チャンバ内で前記スカフォールディング材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記スカフォールディング材料上に作用するベクトル力の総和によって前記スカフォールディング材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、
第2培地と粒子とを含有する第2流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップと、
前記スカフォールディング材料を用いて少なくとも一部の粒子を保持するステップと
を含む方法。
【請求項18】
粒子をスカフォールディング材料から取り除くための方法であって、
入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、
第1流体とスカフォールディング材料とを含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記スカフォールディング材料は、粒子を含み、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、
前記チャンバ内で前記スカフォールディング材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記スカフォールディング材料上に作用するベクトル力の総和によって前記スカフォールディング材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、
解離試薬を含有する第2流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップと、
前記スカフォールディング材料から粒子を取り除くステップと、
前記チャンバの前記出口を通過する前記取り除かれた粒子を収集するステップと
を含む方法。
【請求項19】
前記粒子は細胞である、請求項6ないし18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
生体材料を分別するための方法であって、
入口と出口とを有するチャンバを軸の周りで回転させて、遠心力場を作り出すステップと、
第1培地及び生体材料の混合物を含有する第1流を前記入口に通して前記チャンバ内へ流すステップであって、前記第1流を流すステップは、遠心力とは相反する力を作り出す、ステップと、
前記生体材料を前記第1流から選択的に沈降させるステップと、
前記チャンバ内の前記沈降した生体材料の流動床を形成するステップであって、前記遠心力及び前記相反する力は、前記沈降した生体材料上に作用するベクトル力の総和によって前記沈降した生体材料を前記流動床内に実質的に固定化する、ステップと、次に
前記チャンバの前記出口を通過する前記第1培地及び前記非沈降生物材料を収集するステップと、その後に
前記沈降した生体材料を前記流動床から取り除くステップと
を含み、
前記沈降した生体材料を取り除くステップは、
前記出口に通して第2流を前記チャンバ内へ流動させる工程であって、前記第2流を流動させる工程は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向にある力を作り出す、工程と、
前記チャンバの前記入口を通過する前記沈降した生体材料を収集する工程と
を含む、方法。
【請求項21】
前記生体材料は、タンパク質である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
粒子を操作するためのシステムであって、
軸の周りで回転可能であり、遠心力場を作り出すようになっているチャンバであって、入口と出口とを有するチャンバと、
第1流体及び粒子を含有するバイオリアクターと、
前記チャンバ及び前記バイオリアクターと流体連通している少なくとも1つのポンプと、
前記チャンバと流体連通している流体マニホールドであって、該流体マニホールドは、間隔をおいて配置された複数のバルブを含み、前記複数のバルブは、使用中には自動的かつ選択的に開閉するようになっている、流体マニホールドと、
前記少なくとも1つのポンプ及び前記バルブと通信する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、
(i)前記バルブの開放及び閉鎖と、
(ii)前記少なくとも1つのポンプの流量と、
(iii)前記回転チャンバの回転速度と、
(iv)前記第1流体及び粒子を含有する第1流が前記バイオリアクターから前記入口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速と
を指令するようになっており、
操作時において、前記第1流が前記バイオリアクターから前記入口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速は、遠心力とは相反する力を作り出すように作用し、それによって、前記チャンバ内の粒子の流動床が形成され、このとき、前記遠心力及び前記相反する力は、前記粒子上に作用するベクトル力の総和によって前記粒子を前記流動床内に実質的に固定化する、システム。
【請求項23】
前記制御装置は、第2流体を含有する第2流が前記出口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速をさらに指令し、
操作時において、前記第2流が前記出口を通って前記チャンバ内へ流れるときの流速は、前記遠心力場と少なくとも部分的に同一方向の力を作り出し、それによって、前記流動床から前記粒子を取り除くようになっている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
操作時において、前記粒子は、前記チャンバの前記入口に通して収集され、前記流動床から取り除かれた後に前記バイオリアクターへ返送される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのポンプは、双方向ポンプを含むものである、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
粒子を操作するためのシステムであって、
軸の周りで回転可能であり、遠心力を作り出すようになっているチャンバであって、該チャンバが、間隔をおいて配置された入口及び出口ポートを含み、前記入口及び出口ポートが、その入口及び出口ポート中の粒子に対して流体力を印加するようなサイズ及び形状になっている、チャンバと、
前記チャンバ及び流体供給源と流体連通している第1ポンプと、
前記チャンバと流体連通している流体マニホールドであって、該流体マニホールドは、間隔をおいて配置された複数のバルブを含み、前記複数のバルブは、使用中には自動的かつ選択的に開閉するようになっている、流体マニホールドと、
前記流体マニホールドと連絡している流体バッファー洗浄供給源と、
前記流体バッファー洗浄供給源及び前記流体マニホールドと流体連通している第2ポンプであって、前記第2ポンプは作動オン期間及びオフ期間を有し、作動オン期間において、前記第2ポンプは、前記第1ポンプより高い流量を有し、前記第2ポンプは、前記流体マニホールドの第1アームに取付けられた前記流体バッファー洗浄供給源の近くに配置されており、前記流体マニホールドの第2アームは、対向して配列された第1端部分及び第2端部分を有し、前記第1端部分が、前記第2ポンプの上方に取付けられており、前記第2端部分が、前記第2ポンプの下方の前記第1アームに取付けられており、前記第2アームが、前記第1端部分と前記第2端部分とを備える前記第2ポンプの周囲に延びており、前記第2アームは、前記バルブの中の1つである第1バルブを含んでいる、第2ポンプと、
前記第1ポンプと前記第2ポンプと前記バルブと連絡している制御装置と
を備え、
前記制御装置が、
(i)前記バルブを開放及び閉鎖することと、
(ii)前記第1ポンプ及び第2ポンプの流量と、
(iii)約75〜500×gの遠心力を作り出すための前記チャンバの回転速度と、
(iv)約20〜300mm/分で前記チャンバを通る前記流体供給源からの前記流体の平均流速と
を指令するようになっており、
操作時において、前記システムは、前記バッファー洗浄供給源からのバッファーを用いて、前記チャンバへの標的培地を用いた初期装填後に前記流体マニホールドの規定セグメントをフラッシュし、それにより、前記流体マニホールド内のデッドレッグを浄化する、システム。
【請求項27】
前記流体マニホールドは、前記チャンバとバイオリアクターとの間に伸びる入口流路を含み、該入口流路が、前記バイオリアクターの近くに配置されたバイオリアクターバルブを有し、
前記流体マニホールドの前記第1アームは、前記バイオリアクターバルブの上流で前記入口流路と結合し、前記第1アームは、前記第1アームと前記バイオリアクターバルブとの間に連続的にかつ間隔をあけて配置された2つのバルブを含み、
バッファー洗浄サイクルにおいて、前記2つのバルブ及び前記バイオリアクターバルブが、前記第2ポンプがオンである時に開放されるとともに、前記第2アーム内の前記第1バルブが閉鎖されて、これにより、前記バイオリアクターバルブにおけるデッドレッグがフラッシュされるようになっている、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記流体マニホールドの前記第2アームは、廃棄物ライン内の廃棄物バルブを備え、前記流体マニホールドの第1アームは、前記第2アームの上流で廃棄物容器へ伸びる前記破棄物ラインを備え、前記流体マニホールドは、前記チャンバと、前記前記流体マニホールドの第1アームとの間で伸びる第2流路を含み、
前記第2流路は、前記流体マニホールドの前記第2アームの上流に配置された第2流路バルブを含み、
バッファー洗浄サイクルにおいて、前記バイオリアクターにおけるデッドレッグがフラッシュされた後に、前記バイオリアクターバルブが閉鎖され、前記第2流路バルブと結び付いているデッドレッグをフラッシュするために前記第2流路バルブが開放されるようになっている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記粒子は細胞である、請求項22ないし28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記軸は、実質的に水平軸である、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の方法又は請求項22ないし28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記軸は、実質的に垂直軸である、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の方法又は請求項22ないし28のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2011−528225(P2011−528225A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518729(P2011−518729)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/004113
【国際公開番号】WO2010/008563
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511014932)ケイビーアイ・バイオファーマ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】