説明

流水検知装置および一斉開放弁

【課題】 リフト式の逆止弁構造をしており、弁体と蓋体の間に弾発体が介在され、該弾発体によって弁体が弁座方向に付勢されている流水検知装置および一斉開放弁において、弁箱内の弁体と蓋体の間に設けられるばねの反発力の影響を小さくして蓋体を弁箱に容易に設置可能な構成とする。
【解決手段】 弾発体を所定寸法まで圧縮させた状態に保持可能な保持部材14を設置し、該保持部材14は弾発体13を挟み込む上下のケーシング部材14A、14Bと、該ケーシング部材を連結するピン14Cから構成され、ピン14Cの端部には鍔が形成されケーシング部材がピン14Cから抜けない構造となっており、一方のケーシング部材はピン14Cに沿って摺動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備配管に設置されるバルブである流水検知装置および一斉開放弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火設備は、建物内部に敷設された消火設備配管にスプリンクラーヘッド等の散水ヘッドが設置されており、火災時には散水ヘッドから水を散布し消火を行うものである。
【0003】
消火設備配管は、水源である貯水槽からポンプによって貯水槽内の水を汲み上げることが可能であり、ポンプから散水ヘッドへと水が送られ、散水ヘッドより放水された水は所定範囲に散布される。該散水ヘッドからの放水を検知するために、水源と散水ヘッドの間には流水検知装置が設けられており、消火設備配管内の流水現象を検知して信号が出力される。
【0004】
流水検知装置の構造は内部が逆止弁構造になっている。大部分の流水検知装置は、弁体が回動動作するスイング式と、弁体が弁座上を上下に摺動するリフト式に分けられる。そのうち後者のリフト式の流水検知装置は、弁と弁箱の一部により形成された圧力室の内部の流体圧力によって弁を開閉動作させることが可能である。
【0005】
例えば、図4に示す特許文献1に記載されている開放弁は、リフト弁構造であり、主弁体107はばね114によって主弁座103側に付勢されており、主弁体107は閉止状態が維持されている。主弁室108は主弁座103と反対側に形成されており、該主弁室108への流体の出入りを、逆止弁により閉止された小孔109と連通孔115および取出孔116によって制御することができ、主弁室108内の流体を外部に流出させることで主弁体107を主弁座103から離れる方向に移動させて開放弁を開放させることや、逆に主弁体107を主弁座103に着座させる方向に移動させて開放弁を閉止させることができる。
【0006】
主弁体107を付勢するばね114は、取出孔116が形成されている蓋体によって圧縮されており、該蓋体と弁箱102をボルトによって締結する際に蓋体を介してばね114を圧縮させている。
【0007】
バルブの口径サイズが大きくなると、弁体も口径サイズにあわせて大きくなり弁体に加わる流体圧力も大きくなる。従ってばねの力も大きな力が必要となり、口径サイズが大きくなるにつれて、より強力なばねが用いられることになる。ばねが強力になることで蓋体によって弁箱を封止するためにばねを圧縮する際に多大な力が必要となる。

【0008】
【特許文献1】特許 第3131739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記より、バルブ口径が大きくなる程、ばねを圧縮するために多大な力を要するため、バルブの組立て作業において、バネを圧縮させた状態を維持しながらボルトを締めなければならず作業者の負担が大きいものであった。また、配管上に設置されているバルブをメンテナンス時に分解した場合等においても、作業スペースが限られている現場で蓋体を弁箱に取り付ける作業が困難なものとなっていた。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、リフト式構造の流水検知装置および一斉開放弁において、弁箱内の弁体と蓋体の間に設けられるばねの反発力の影響を小さくして蓋体を弁箱に容易に設置可能な構成とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、リフト式の逆止弁構造をしており、弁体と蓋体の間に弾発体が介在され、該弾発体によって弁体が弁座方向に付勢されている流水検知装置および一斉開放弁において、弾発体を所定寸法まで圧縮させた状態に保持可能な保持部材が設置されている流水検知装置および一斉開放弁である。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記流水検知装置および一斉開放弁において、保持部材は弾発体を挟み込む上下のケーシング部材と、該ケーシング部材を連結するピンから構成され、ピンの端部には鍔が形成されケーシング部材がピンから抜けない構造となっており、一方のケーシング部材はピンに沿って摺動可能である請求項1記載の流水検知装置および一斉開放弁である。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記流水検知装置および一斉開放弁において、一方のケーシング部材から他方のケーシング部材側のピンの端部までの距離を調整可能な調整手段が設けられている請求項2記載の流水検知装置および一斉開放弁である。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記ケーシング部材において、各々のケーシング部材には弾発端をケーシング部材に保持する弾発体保持部が設けられている請求項2または3記載の流水検知装置および一斉開放弁である。

【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、保持部材によって弾発体を所定寸法まで圧縮させておくと、ボルトによって弁箱に蓋体を取り付ける際に、ボルトをある程度弁箱側に締めこんだ状態で蓋体が保持部材と接触する。さらにボルトを締め込み保持部材内部の弾発体の反発力が蓋体に加わっても蓋体がボルトによって弁箱と螺合されているので、弾発体の反発力で蓋体が弁箱から外れることはない。ボルトを締め付ける際にも弾発体の付勢力が印加されて蓋体が弁箱に密着されるまでの距離は僅かであるので、保持部材が無い場合と比較すると作業者への負担は軽減される。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、ケーシング部材はピンによって摺動自在な構成となっており、弁体が開放した場合にも一方のケーシングがピンに沿って摺動可能であるので保持部材が弁体の開閉動作を阻害することはない。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、一方のケーシング部材から他方のケーシング部材側のピンの端部までの距離を調整可能としたことで、保持部材による弾発体の圧縮状態の寸法を調整することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、弾発体の反発力を受けるケーシング部材に弾発体保持部を設けたことで、弾発体の反発力によって弾発体がケーシングから外れたり抜けたりすることを防止することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
保持部材は、ケーシング部材とピンにより構成され、ケーシング部材は、弾発体の端部を保持可能なようにカップ状に形成して内部に弾発体を収容してもよいし、弾発体の端部と嵌合可能な凸部や凹部を設けることも可能である。
【0020】
ピンは単数でも複数でもよく、一端は一方のケーシングに固定または係止され、他端には鍔部が形成される。ピンをボルトとし、鍔部をナットで構成することも可能である。他方のケーシングは、一方のケーシングと鍔部の間をピンに沿って摺動可能とする。
【0021】
保持部材により弾発体を圧縮する際には、蓋体を弁箱に取り付ける場合において、蓋体が弁箱に密着する前に弾発体の反発力が蓋体に加わるように位置調整する。
【0022】
弁体が開放することにより弾発体が収縮して各々のケーシングが近づくとピンがケーシングから蓋体側に突出されるので、該突出量を見込んで蓋体側に空間を設けておくことが好ましい。

【実施例】
【0023】
以下、この発明の実施例を図1から図3を参照して説明する。図1は本発明の流水検知装置の断面図、図2は保持部材の拡大図、図3は図1の流水検知装置の作動時の状態である。
【0024】
図1に示す流水検知装置1は、予作動式スプリンクラー設備に設置される流水検知装置であり、一次側が図示しない水源に通じる配管と接続しており、二次側はスプリンクラーヘッドHが設置されている配管と接続されている。スプリンクラーヘッドHが設置されている配管には気体が充填されており、該気体の圧力が所定範囲内になるようにコントロールされている。
【0025】
流水検知装置1の内部はリフト式の逆止弁構造をしており内部が隔壁2によって一次室Iと二次室IIに分けられている。隔壁2には一次室Iと二次室IIを連通する開口3が穿設されており、該開口3の二次室側にはリング状の弁座4が形成されている。
【0026】
弁座4の二次室II側の面には、複数の穴5が穿設されている。該穴5は隔壁2内部に形成された環状空間6まで貫通している。環状空間6には弁箱7の外部へと通じる通水穴8が形成されており、該通水穴8は弁箱外部に設けられた圧力スイッチ9と接続されている。
【0027】
弁座4が設置された一次室I側には、開口3の中心軸上に弁箱7の開口部10が形成され、該開口部10は蓋体11によって塞がれている。蓋体11は皿状であり周縁には複数の穴が穿設され、該穴に対応する弁箱7側に形成された図示しない牝ネジとボルトによって蓋体11が弁箱7に取り付けられる。
【0028】
弁座4と蓋体11の間には弁体12およびコイルバネ13が設置される。弁体12は有底円筒形状をしており、側面には鍔部12Aが形成され、鍔部12Aの側面が弁箱7の内壁と摺動される。弁体12の底面は弁座4に着座する部分である。底面内部には蓋体11側に突出した凸部12Bが形成されている。
【0029】
コイルバネ13は、蓋体11と弁体12の間に介在しており、保持部材14に挟まれた状態となっている。保持部材14は蓋体11側のケーシング14A、弁体12側のケーシング14Bと複数のピン14Cから構成されており、ケーシング14A、14Bはコイルバネ13の端部が収納可能なようにカップ状に形成され、底面には穴が穿設されている。
【0030】
ケーシング14A、14Bの側面には、鍔部14Dが形成されており該鍔部14Dにはピン14Cが挿通可能な複数の穴14Eが穿設されている。ピン14Cはボルトにより代用することも可能であり、図2においてはボルトを使用している。ピン14Cのケーシング14B側の端には牡ネジが形成されており、ケーシング14Bの穴14Eに螺刻された牝ネジと螺合する。これによりケーシング14Bとピン14Cが固定される。
【0031】
ピン14Cのケーシング14A側は、ボルトの頭部となっている。コイルバネ13をケーシング14A、14Bに挟んだ状態で、ピン14Cからケーシング14Aが外れないようにピン14Cの牡ネジ端に、ロックナット15を螺合させる。これによりケーシング14A、14B内にコイルバネ13が設置される。
【0032】
ピン14Cに対するロックナット15の位置を調整することで、コイルバネ13の圧縮状態の高さ寸法を調整することが可能である。
【0033】
上記のように、コイルバネ13が組み込まれた保持部材14は、弁体12の凸部12Bにケーシング14B底面の穴が嵌め込まれる。一方のケーシング14Aの底面の穴には、蓋体11の中心から弁箱側に突出されて形成された凸部が嵌め込まれる。
【0034】
蓋体11と弁箱7の内壁、弁体12によって形成された空間は制御室16であり、該制御室16には一次室Iに通じる配管17が接続されており、一次室Iの流体が制御室16に流入して充填された状態にある。一方制御室16内の流体を外部に排出する排水管18も設置されており、該排水管18上には常時閉止状態の電動弁19が設置されている。
【0035】
電動弁19は、スプリンクラーヘッドHの近傍に設置された火災感知器Sと電気的に接続されており、火災感知器Sの作動信号によって電動弁19が開放する。
【0036】
次に、上記の流水検知装置の作動について説明する。
【0037】
平時において、二次室II内には気体が充填されており、一次室I内および制御室16内は充水状態にある。弁体12は制御室16内部の流体圧力およびコイルバネ13の付勢力によって弁座4に押圧されており、閉止状態を維持している。
【0038】
火災が発生すると、まず火災感知器Sが作動して、作動信号により電動弁19が開放される。電動弁19の開放によって制御室16内の水は排水管18から外部に排出され、制御室16内の圧力が降下する。
【0039】
制御室16内の圧力が降下することで、弁体12を弁座4に着座させている力が弱まり、弁体12が弁座4から離れ、弁体12は図3に示すように蓋体11側に摺動する。弁体12の移動に伴い、弁体12に設置されたケーシング14Bおよびピン14Cも蓋体11側に移動する。ピン14Cのボルト頭部側の端はケーシング14Aから離れて蓋体11側に移動する。
【0040】
弁体12が弁座4から離れたことにより、弁座4に穿設された穴5内に水が流入して、環状空間6、通水穴8を通過して圧力スイッチ9に到達すると圧力スイッチ9が水圧によって作動し、警報を出力する。また、二次室IIにも一次室I内の水が流入して二次室II内およびスプリンクラーヘッドが設置された配管内が充水される。
【0041】
火災感知器Sに続いてスプリンクラーヘッドHが作動すると、二次室IIおよびスプリンクラーヘッドが設置された配管内は既に充水されているので、スプリンクラーヘッドHの作動と共にスプリンクラーヘッドHから水が放出され水の散布が開始される。作動したスプリンクラーヘッドHから散布される水によって火災が鎮圧される。

【産業上の利用可能性】
【0042】
上記実施例においては、消火設備配管上に設置される流水検知装置について説明したが、同様の構成である一斉開放弁に適用することも可能である。また消火設備に限定せず、汎用的なバルブに適用することも可能である。


【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の流水検知装置の断面図
【図2】保持部材の拡大図
【図3】図1の流水検知装置の作動時の状態
【図4】従来の開放弁の断面図
【符号の説明】
【0044】
1 流水検知装置
2 隔壁
3 開口
4 弁座
5 穴
6 環状空間
7 弁箱
8 通水穴
9 圧力スイッチ
10 開口部
11 蓋体
12 弁体
13 コイルバネ
14 保持部材
15 ナット
16 制御室
17 配管
18 排水管
19 電動弁
H スプリンクラーヘッド
S 火災感知器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフト式の逆止弁構造をしており、弁体と蓋体の間に弾発体が介在され、該弾発体によって弁体が弁座方向に付勢されている流水検知装置および一斉開放弁において、弾発体を所定寸法まで圧縮させた状態に保持可能な保持部材が設置されていることを特徴とする流水検知装置および一斉開放弁。

【請求項2】
前記流水検知装置および一斉開放弁において、保持部材は弾発体を挟み込む上下のケーシング部材と、該ケーシング部材を連結するピンから構成され、ピンの端部には鍔が形成されケーシング部材がピンから抜けない構造となっており、一方のケーシング部材はピンに沿って摺動可能であることを特徴とする請求項1記載の流水検知装置および一斉開放弁。

【請求項3】
前記流水検知装置および一斉開放弁において、一方のケーシング部材から他方のケーシング部材側のピンの端部までの距離を調整可能な調整手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載の流水検知装置および一斉開放弁。

【請求項4】
前記ケーシング部材において、各々のケーシング部材には弾発端をケーシング部材に保持する弾発体保持部が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の流水検知装置および一斉開放弁。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−17997(P2009−17997A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182162(P2007−182162)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】