説明

流路開閉弁及びその組立方法

【課題】不要物を分解することなく、外部からの作業で容易に外部へ排出できる流路開閉弁を提供する。
【解決手段】EGRバルブ20は、バルブ本体22と、貫通孔40が設けられたボールバルブ30と、シャフト軸90とを含む。また、バルブ本体22には、前記ボールバルブ30を回転自在に収容する室28が設けられ、前記ボールバルブ30には、前記室28と前記貫通孔40とを連通する孔部52が設けられ、前記バルブ本体22には、前記室28と前記バルブ本体22の外部とを連通する孔部61が、該孔部52の直下に設けられ、該孔部52と該孔部61は、同軸的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路開閉弁及びその組立方法に関し、一層詳細には、内燃機関から排出される排気ガスが流通する流路等に介装されて該流路の開成閉成を行う流路開閉弁及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流路開閉弁には、排気ガスを再循環させるための流路開閉弁として用いられるものがある。実開平6−16774号公報(特許文献1)には、この種の排気流路開閉弁として球状の弁体を有する「ボールバルブ」構造が開示されている。この球状弁体を回動させるためのシャフト軸は前記球状弁体の上部に設けられた溝に嵌合され、シャフト軸が回動することによって、流路の開成閉成を行う。この特許文献1に開示されている流路開閉弁の構成では、前記嵌合溝の側壁は互いに平行な側面部で構成され、シャフト軸の先端は平面部を有し、該シャフト軸の前記各平面部は前記嵌合溝を形成する二つの平行な側面に対面するように挿入される。
【0003】
特公平6−5111号公報(特許文献2)は「ボール弁」に関するものであって、流路を開成閉成するために弁本体の上部に円弧面を持つように膨出形成されたシャフト軸先端構造を採用する。
【0004】
特開2008−208984号公報(特許文献3)は「ガスコック」に関するものであって、この「ガスコック」は、開閉弁の上部に設けられた嵌合溝にシャフト軸が嵌合してシャフト軸の回動動作に伴って前記開閉弁が流路を開閉する。前記シャフト軸先端部は、断面外側に凸形状の円弧面を有する。従って、前記凸形状の円弧面は、平面で構成された嵌合溝側面部と線接触して開閉動作するための回動力を付与する。
【0005】
実公昭51-30016号公報(特許文献4)は、「ボールバルブ」に関するものであって、この「ボールバルブ」は、バルブが閉鎖時にのみ、プラグの貫通孔と透孔とが連通し、しかも、通孔が流出孔に開放されて、流出孔側の残留液が排出される構成を採用している。
【0006】
ところで、特許文献4の従来技術によれば、残留液を排出する経路は、軸孔から横間隙、下方間隙、透孔、貫通孔を経てバルブの外部に至るまで屈曲している。このため、該特許文献4で開示されているボールバルブを内燃機関に組み込まれるEGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブとして用いた場合、該経路途上で、内燃機関から排出される燃焼生成物等の不要物が堆積、又は固着することが考えられる。さらに、軸孔内面に不要物が堆積すると、該軸孔内を流れる燃焼ガスの流量が減少し、該軸孔内を流れる燃焼ガスの流量を正確に把握できないという不都合が生じる。また、燃焼ガスは弁体横の隙間を流れるために、弁室内で広範囲にわたって不要物が堆積し、かかる不要物によって弁体と弁室との間の摩擦抵抗が増加し、弁体の円滑な回動動作が困難となる不都合がある。さらに、このボールバルブにおける燃焼ガスの流入孔と流出孔との間で生じる圧力差のため、弁体が軸孔方向に移動し、弁体はシャフトに対して偏心状態で嵌合される状態となるため、弁体と可動・固定シートとの摺動面において齧り(焼付け)が生じ、弁体の回動トルクが大きくなるという不都合も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−16774号公報
【特許文献2】特公平6−5111号公報
【特許文献3】特開2008−208984号公報
【特許文献4】実公昭51−30016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の従来技術を克服するためになされたものであって、流入孔(以下、流体流入口、又は排気ガス流入口と称することもある)からバルブ本体内に侵入する不要物を、流路開閉弁を分解することなく、容易に該流路開閉弁の外部へ排出することが可能で、しかも、ボールバルブを円滑に回動することが可能な流路開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本願の請求項1で特定される発明は、貫通孔を設けたボールバルブと、前記ボールバルブを回転自在に収容する室が設けられ流体流入口と流体流出口とを有するバルブ本体と、前記ボールバルブを前記室内で回動させて前記流体流入口と流体流出口とを連通遮断するシャフト軸と、前記シャフト軸を回動するアクチュエータとからなり、前記ボールバルブには、前記室と前記貫通孔とを連通する第1の孔部が設けられ、前記バルブ本体には、前記室と前記バルブ本体の外部とを連通する第2の孔部が設けられると共に前記第2の孔部は着脱自在な栓部材によって閉塞され、前記第1及び第2の孔部は、同軸的に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項1の発明によれば、バルブ本体に形成された流体流入口から侵入した不要物を第1の孔部から第2の孔部に導き、栓部材を取り外すことによって、容易に取り除くことができる。すなわち、流路開閉弁を分解することなく、該流路開閉弁の外部からの作業で不要物を排出可能にすることで、該流路開閉弁のメンテナンスが容易となり、該不要物が、該流路開閉弁の内部に堆積、又は固着することを可及的に減少させ、排気ガスの必要流量を維持することができるという効果を達成することができる。さらに、該流路開閉弁の内部に堆積、又は固着した該不要物が、ボールバルブ回転時の抵抗となることを可及的に減少させることで、該ボールバルブの回動トルクの増大を防止し、該ボールバルブを円滑に回動させることができるという効果も達成することができる。
【0011】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載の流路開閉弁において、前記第1の孔部は、前記貫通孔側が広径となるようにテーパ形状を有していることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2の発明によれば、貫通孔に到達した不要物をテーパ状に拡径した第1の孔部に容易に導くことができ、しかも第2の孔部へと導出すれば、該第1の孔部内に、該不要物が堆積、又は固着することがない。
【0013】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項1又は2記載の流路開閉弁において、前記第2の孔部は、前記バルブ本体の外部側の開口部が、前記室側の開口部より広径であることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3で特定される発明によれば、前記バルブ本体の外部から栓部材を取り外して不要物を除去する際に、広径な開口部側から器具等を前記第2の孔部へ容易に挿入して不要物の除去を容易に行うことができる。
【0015】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路開閉弁において、前記第1の孔部における前記室側の開口部が、前記第2の孔部における前記室側の開口部より、広径であることを特徴とする。
【0016】
本願の請求項4の発明によれば、前記第1の孔部において室側の開口部を大きくしているので、一層効率的に不要物を捕捉して第2の孔部に導くことができる。
【0017】
本願の請求項5で特定される発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流路開閉弁において、前記流路開閉弁は、EGRバルブであることを特徴とする。
【0018】
本願の請求項5の発明によれば、流路開閉弁は、内燃機関に用いられるEGRバルブであるので、排気ガス中に含まれる燃焼生成物等の不要物が、EGRバルブ内に堆積することがなく、たとえ堆積したとしても容易に除去することができる。
【0019】
本願の請求項6で特定される発明は、貫通孔を設けたボールバルブと、前記ボールバルブを回転自在に収容する室が設けられ流体流入口と流体流出口を有するバルブ本体と、前記ボールバルブを前記室内で回動させて前記流体流入口と流体流出口とを連通遮断するシャフト軸とからなり、前記ボールバルブには、前記室と前記貫通孔とを連通する第1の孔部が設けられ、前記バルブ本体には、前記室と前記バルブ本体の外部とを連通する第2の孔部が設けられる流路開閉弁の組立方法であって、棒状部材を、前記第1及び第2の孔部へ挿入して前記ボールバルブを前記室内で位置決め固定する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記シャフト軸の先端を、前記ボールバルブに接続して固定する第2の工程と、前記第2の工程の後に、前記第1及び第2の孔部から前記棒状部材を抜き取る第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記第2の孔部に栓部材を嵌合して該第2の孔部を閉塞する第4の工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本願の請求項6の発明によれば、前記バルブ本体、前記ボールバルブ、及び前記シャフト軸間における所望の相対的な位置関係を高精度に且つ効率的に確定できることで、前記ボールバルブの偏心状態での組立が防止でき、その結果、ボールバルブの回動トルクの増大を未然に防止する効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0022】
すなわち、第1及び第2の孔部が、同軸的に形成されることにより、流路開閉弁を分解することなく、該流路開閉弁の外部からの作業で、不要物を、該流路開閉弁の外部へ排出可能にすることで、該流路開閉弁のメンテナンスが容易となり、該不要物が、該流路開閉弁の内部に堆積、又は固着することを可及的に減少させることができ、排気ガスの必要流量を維持するという効果を達成することができる。さらに、該流路開閉弁の内部に堆積、又は固着した該不要物が、ボールバルブ回転時の抵抗となることを可及的に減少させることで、該ボールバルブの回動トルクの増大を防止し、該ボールバルブを円滑に回動させることができるという効果も達成することができる。
【0023】
さらにまた、流路開閉弁の組立方法において、ボールバルブの偏心状態での組立が防止できることで、ボールバルブの回動トルクの増大を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本実施の形態に係るEGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの一部切断縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示すEGRバルブの一部分解切欠縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示すEGRバルブの概略縦断面図である。
【図4】図4は、図1に示すEGRバルブのボールバルブとシャフト軸先端の係合状態を示し且つボールバルブが閉成状態の縦断斜視説明図である。
【図5】図5は、図4に対応してEGRバルブが排気ガス導入口と排気ガス導出口とを連通させた状態の縦断面図である。
【図6】図6は、図1に示すEGRバルブを構成するボールバルブとシャフト軸先端との係合状態を示す一部省略拡大斜視図である。
【図7】図7は、図1に示すEGRバルブに、固定支持部材を挿入した状態であるステップS1の完了状態を示す一部省略概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る流路開閉弁に関し、その組立方法との関係で、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0026】
図1において、参照符号20は流路開閉弁の一つの実施の形態としての排気流路バルブ(以下、EGRバルブと称する)を示す。EGRバルブ20は、バルブ本体22を有し、このバルブ本体22の下側には、比較的小径な排気ガス流入口(流体流入口)24と、その反対側に前記排気ガス流入口24に連通する比較的大径な排気ガス流出口(流体流出口)26が設けられている。実際、前記排気ガス流入口24と排気ガス流出口26の間に室28が形成され、この室28の内部に変形した球状のボールバルブ30が回動自在に配設される。排気ガス流入口24側には、バルブ押さえ32が配設される。
【0027】
バルブ押さえ32は、図1、図2から容易に了解されるように、小径部34と、この小径部34と一体的且つ同軸な大径部36とからなり、前記小径部34は排気ガス流入口24に臨み、大径部36は前記ボールバルブ30に臨むように配設されている。大径部36には、ウェーブワッシャ38が設けられ、従って、このウェーブワッシャ38の弾発力によってバルブ押さえ32は常時排気ガス流出口26側へと弾発付勢されている。
【0028】
この場合、前記ウェーブワッシャ38に対して、図2に示すように、小径部34側にプレーンワッシャ39を設けてもよい。このプレーンワッシャ39の介装によって大径部36をさらにボールバルブ30側に押し付けることにより、ウェーブワッシャ38とバルブ本体22との間隔の調整をより一層容易に行うことができる。さらに、ウェーブワッシャ38が直接バルブ本体22に接触しなくなることから、バルブ本体22の損傷を回避することができる。
【0029】
排気ガス流出口26側には、バルブシート37が配設される。このバルブシート37は円環状であって、バルブ本体22に設けられた円形状の溝41にしっかりと固定される。ボールバルブ30は、図2から容易に了解されるように、中心軸に直交するように一方の曲面と他方の曲面が取り除かれて、該中心軸に沿って一方の面から他方の面へと貫通孔40が形成された球体である。そして、この貫通孔40に直交する頂部には、平面長方形状の凹部42が形成される。図4及び図6から容易に了解されるように、前記凹部42は、湾曲する底面44とその両側の平行な第1の側面46と第2の側面48とを有する。好ましくは、前記ボールバルブ30は、前記貫通孔40に直交するように孔部50を形成し、また、変形例として、場合によって前記貫通孔40及び孔部50に直交する孔部52を設けるとよい(図4参照)。
【0030】
前記ボールバルブ30は、後述するシャフト軸90によって回動されると、その貫通孔40がバルブ押さえ32に形成された通路51に連通するとともに、バルブシート37に形成された通路56を連通する。前記孔部50はボールバルブ30の閉成時に排気ガス流入口24からなお送出される微量の排気ガスを受け入れるためのものであり、孔部52(第1の孔部)は、ボールバルブ30の貫通孔40と室28とを連通し、該貫通孔40の内部に蓄積する不要な炭素の微粒子等(以下、不要物と称することもある。)を受容するためのものである。なお、孔部52は、貫通孔40に近づくにつれて広径となるテーパ形状を有してもよい(図3及び図5の仮想線A参照)。該テーパ形状を有することによって、不要物を受容するのに容易となり、しかも孔部52内に、該不要物が堆積しにくくなる。
【0031】
この場合、前記孔部52に対応して、バルブ本体22の前記孔部52の直下には、着脱自在な盲栓(栓部材)60を嵌合する孔部61(第2の孔部)を設けておく。孔部61は、室28とバルブ本体22の外部とを連通し、孔部52と同軸的に形成され、ボールバルブ30の貫通孔40内に堆積する前記不要物を必要に応じて除去するためのものである。
【0032】
孔部61は、バルブ本体22の外部側の開口部61bが、室28側の開口部61aより広径であってもよい(図2参照)。これによって、バルブ本体22の外部から前記不要物を除去する際に、器具等を孔部61へ容易に挿入することができる。
【0033】
また、孔部61の室28側の開口部61aが、孔部52の室28側の開口部52aより広径であってもよい(図4の仮想線B参照)。これによって、孔部52を経た前記不要物が、効率的に孔部61へと導かれる。
【0034】
次に、以上のように構成されるボールバルブ30を回動させるためのアクチュエータ側の構造について説明する。
【0035】
バルブ本体22の上方には、小径な第1の環状溝70と、この第1環状溝70に連通する大径な第2の環状溝72が互いに連通して同軸的に形成され、前記第2環状溝72は外方に開放された状態にある。第1環状溝70から第2環状溝72にかけて、コイルスプリング74が設けられ、このコイルスプリング74の上端部に回転力伝達プレート76が配設される。回転力伝達プレート76は、その中心部分に下方へと開口する室78と、この室78と同軸で且つ狭径な上方へと開口する室80が設けられている。前記室80を構成する肉厚な環状の壁部82に連結ピン84が等間隔で複数本植設される。各々の連結ピン84の上部に金属製の円環状チューブ85が被嵌される。前記壁部82を囲繞してロータ押さえ86が嵌合し、このロータ押さえ86の上面に金属板からなるロータ88が設けられている。前記ロータ88は、後述するアクチュエータ110からの回動動作によって回転力伝達プレート76がどの程度回動したかを検出するためのセンサの一部を構成する。
【0036】
一方、室80の中心部には、シャフト軸90が前記ボールバルブ30側へと延在するようにナット92によって締め付けられている。実際、シャフト軸90はバルブ本体22に設けられた転がり軸受け94によって、その回動動作が円滑に行えるように構成され、さらに、前記転がり軸受け94と同軸的に且つその下方に排気ガスが外部に漏出しないようにシール96が設けられている。さらに、シール96の下方には、軸受け98が前記シール96から所定間隔離間して設けられている。
【0037】
そこで、シャフト軸90の先端は、図2乃至図6から容易に了解されるように、二つの平行な側面100aと100bを有し、且つこの側面100a、100bが終端する下方は互いに外方へと膨出する曲面102a、102bとして形成されている。前記曲面102a、102bの下端部は、該曲面102a、102bの膨出方向に直交するように延在する円弧状の膨出部104に繋がっている。前記膨出部104、曲面102a、102b、側面100a、100bはシャフト軸90が組みつけられたとき、ボールバルブ30の凹部42に嵌合する。この場合、前記円弧状の膨出部104に代えて、図6に示すように屈曲する平面膨出部としてもよい。
【0038】
なお、図中、参照符号106、107は、前記EGRバルブ20を強制的に冷却するための図示しない冷却水供給用パイプに連通する孔部を示し、参照符号108はシール96と転がり軸受94との間に設けられた金属製の押さえ板を示す。さらに、参照符号110は、前記シャフト軸90を開動するためのアクチュエータを示す。前記アクチュエータ110は、バルブ本体22の上部にロータ88を包被するように固着される。
【0039】
本実施の形態に係るEGRバルブ20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用並びに効果について説明する。
【0040】
実際、アクチュエータ110は、ロータリーアクチュエータからなり、このアクチュエータ110が付勢されると、その回転力は、チューブ85が被嵌された連結ピン84に伝達される。前記のように連結ピン84には、金属製のチューブ85が被嵌されているために、アクチュエータ110が長期間に渡ってその回動動作を繰り返しても連結ピン84がその摩擦によって損耗することはない。このように連結ピン84に回転力が伝達されると、前記連結ピン84を植設している回転力伝達プレート76が回動し、その回動量はロータ88によって検出されるとともに、ナット92によってその一端部が緊締されたシャフト軸90にその回転力が伝達される。シャフト軸90の先端部は、前記のように平行な側面100a、100bと、曲面102a、102b及び膨出部104がしっかりとボールバルブ30の凹部42に密着嵌合しているため、時間的遅れを生じることなく前記ボールバルブ30がその回転力に応じて即時に回転するに至る。すなわち、バルブ押さえ32の通路51と、バルブシート37の通路56に密着して両通路51、56の連通を遮断している状態(図3参照)から、ボールバルブ30を図5の状態に回転すれば、排気ガス流入口24側の通路51がボールバルブ30の貫通孔40と連通し、さらにこの貫通孔40はバルブシート37側の通路56と連通して排気ガス流出口26に至る。従って、図示しないエンジンからの排気ガスが前記排気ガス流入口24に到達すると、通路51、貫通孔40、そして通路56を経て排気ガス流出口26から導出される。
【0041】
一方、EGRバルブ20を閉成しようとするとき、前記と同様にアクチュエータ110からの回転力が連結ピン84に伝達され、ロータ88によってその位置が確認されるとともに、回転力伝達プレート76が回動し、シャフト軸90を経て、ボールバルブ30を図3に示す位置に回動せしめる。これによって、バルブシート37の通路56は完全に閉成されることから、図示しないエンジンからの排気ガスが流通することはない。なお、バルブシート37の閉成直後にエンジンからの排気ガスが、排気ガス流入口24に到達する場合がある。この排気ガスは、ボールバルブ30に到達し、孔部50から貫通孔40に至るが、この貫通孔40内に留まる。場合によって、ボールバルブ30の貫通孔40内に蓄積された排気ガス中に含まれる炭素等の微粒子は、孔部52に堆積することがある。従って、必要に応じて盲栓60を取り外して、ボールバルブ30の内部に蓄積された炭素の微粒子を外部に取り出すことができる。
【0042】
本実施の形態によれば、ボールバルブ30の貫通孔40と室28とを連通する孔部52と、該孔部52の直下に設けられ、室28とバルブ本体22の外部とを連通する孔部61とが、同軸的に形成されることにより、バルブ本体22を分解することなく、該バルブ本体22の外部からの作業で、内燃機関で発生する不要物を、該バルブ本体22の外部へ排出可能にすることで、該バルブ本体22のメンテナンスが容易となり、該不要物が、該バルブ本体22の内部に堆積、又は固着することを可及的に減少させることができ、排気ガスの必要流量を維持することができる。さらに、室28内等に堆積した該不要物及び大径部36やバルブシート37等に固着した該不要物が、ボールバルブ30の回転時の抵抗となることを可及的に減少させることで、ボールバルブ30の回動トルクの増大を防止することができる。
【0043】
次に、このEGRバルブ20の組立方法について説明する。
【0044】
まずステップS1(第1の工程)として、図7に示すように、同軸に位置決めされたバルブ本体22の孔部61及びボールバルブ30の孔部52へ、後述する固定支持部材(棒状部材)122を挿入する。これによって、ボールバルブ30が、バルブ本体22に対して固定される。孔部52及び孔部61は、バルブ本体22とボールバルブ30が、予め規定された相対的な位置関係となるように、バルブ本体22及びボールバルブ30にそれぞれ設けられているため、これによって、バルブ本体22とボールバルブ30における所望の相対的な位置関係が規定される。
【0045】
次にステップS2(第2の工程)として、図6及び図7に示すように、ボールバルブ30の凹部42に、側面100a、100b、曲面102a、102b、及び膨出部104によって構成されたシャフト軸90の先端を嵌合する(図7の矢印参照)。ステップS1において、ボールバルブ30がバルブ本体22に対して固定されているため、凹部42にシャフト軸90の先端を嵌合する際に負荷される力によって、ボールバルブ30の位置がずれることを可及的に回避することができる。また凹部42は、ボールバルブ30とシャフト軸90が、予め規定された相対的な位置関係となるように、ボールバルブ30に設けられているため、これらによって、ボールバルブ30とシャフト軸90における所望の相対的な位置関係が規定される。
【0046】
次にステップS3(第3の工程)として、ステップS2で規定されたボールバルブ30とシャフト軸90における所望の相対的な位置関係を維持した状態で、固定支持部材122を孔部52及び孔部61から抜き取る。
【0047】
次にステップS4(第4の工程)として、盲栓60を孔部61に嵌合する。
【0048】
ステップS1において、バルブ本体22とボールバルブ30における所望の相対的な位置関係が規定され、ステップS2において、ボールバルブ30とシャフト軸90における所望の相対的な位置関係が規定されることで、ステップS1及びステップS2によって、バルブ本体22、ボールバルブ30、及びシャフト軸90間における所望の相対的な位置関係を高精度に且つ効率的に確定できる。これによって、シャフト軸90に対するボールバルブ30の偏心状態での組立が防止でき、その結果、EGRバルブ20のボールバルブ30における回動トルクの増大を未然に防止することができる。
【0049】
この際、孔部61の室28側の開口部61aと、孔部52の室28側の開口部52a(図3及び図5参照)とを、同形状及び同寸法とすると、バルブ本体22とボールバルブ30における相対的な位置関係において、より高い精度が得られ、好適となる。
【0050】
固定支持部材122は、適度な太さを有した棒状であればよく、その材質は問わない。しかも、その断面は、孔部61の室28側の開口部61a及び孔部52の室28側の開口部52aと同形状だが、孔部61及び孔部52への挿脱に支障がない程度に僅かに小型であると、挿脱が容易となりながらも、バルブ本体22とボールバルブ30における相対的な位置関係において、より高い精度が得られ、好適となる。
【0051】
上述した方法は、EGRバルブ20を最初に組み立てる場合だけでなく、メンテナンス時における分解後の再組立に用いてもよい。
【0052】
以上、本発明について、好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。特に、EGRバルブは排気ガス専用の流路開閉弁であるが、本実施の形態に係る流路開閉弁は、前記EGRバルブに限定されるものではなく、種々の流体の流路を開閉する弁として多くの用途に活用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
20…EGRバルブ 22…バルブ本体
24…排気ガス流入口 26…排気ガス流出口
28、78、80…室 30…ボールバルブ
32…バルブ押さえ 37…バルブシート
40…貫通孔 42…凹部
46…第1の側面 48…第2の側面
52、61…孔部 52a、61a、61b…開口部
74…コイルスプリング 76…回転力伝達プレート
84…連結ピン 86…ロータ押さえ
88…ロータ 90…シャフト軸
100a、100b…側面 102a、102b…曲面
104…膨出部 110…アクチュエータ
122…固定支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を設けたボールバルブと、
前記ボールバルブを回転自在に収容する室が設けられ流体流入口と流体流出口とを有するバルブ本体と、
前記ボールバルブを前記室内で回動させて前記流体流入口と流体流出口とを連通遮断するシャフト軸と、
前記シャフト軸を回動するアクチュエータとからなり、
前記ボールバルブには、前記室と前記貫通孔とを連通する第1の孔部が設けられ、
前記バルブ本体には、前記室と前記バルブ本体の外部とを連通する第2の孔部が設けられると共に前記第2の孔部は着脱自在な栓部材によって閉塞され、
前記第1及び第2の孔部は、同軸的に形成されていることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉弁において、
前記第1の孔部は、前記貫通孔側が広径となるようにテーパ形状を有していることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流路開閉弁において、
前記第2の孔部は、前記バルブ本体の外部側の開口部が、前記室側の開口部より広径であることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路開閉弁において、
前記第1の孔部における前記室側の開口部が、
前記第2の孔部における前記室側の開口部より、
広径であることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の流路開閉弁において、
前記流路開閉弁は、EGRバルブであることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項6】
貫通孔を設けたボールバルブと、
前記ボールバルブを回転自在に収容する室が設けられ流体流入口と流体流出口を有するバルブ本体と、
前記ボールバルブを前記室内で回動させて前記流体流入口と流体流出口とを連通遮断するシャフト軸とからなり、
前記ボールバルブには、前記室と前記貫通孔とを連通する第1の孔部が設けられ、
前記バルブ本体には、前記室と前記バルブ本体の外部とを連通する第2の孔部が設けられる流路開閉弁の組立方法であって、
棒状部材を、前記第1及び第2の孔部へ挿入して前記ボールバルブを前記室内で位置決め固定する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記シャフト軸の先端を、前記ボールバルブに接続して固定する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第1及び第2の孔部から前記棒状部材を抜き取る第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記第2の孔部に栓部材を嵌合して該第2の孔部を閉塞する第4の工程と、
を有することを特徴とする流路開閉弁の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236684(P2010−236684A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88104(P2009−88104)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】