説明

流通路切換装置

【課題】回転駆動による回転部材を用いず、ガタツキの発生や、シール性の長期信頼性低下のない流通路切換装置を提供すること。
【解決手段】感温部内に充填されたワックスの熱膨張によりピストン部が伸張する弁体駆動部材と、ピストン部を外枠に保持する保持部材と、弁体駆動部材を圧縮する戻しバネと、感温部の軸上を摺動して第2の流通路を開閉する第1の開閉弁と、ピストン部の軸上を摺動して第3の流通路を開閉する第2の開閉弁とを備え、弁体駆動部材が伸縮して第2の流通路と第3の流通路とのいずれか一方を閉じることにより、軸駆動から回動駆動に変換する変換部材を用いず、軸方向の運動のみで確実にスムーズな切換え動作を行うことにより、シール性の長期信頼性が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水や空気等の流体の流通路を、流通路内の流体の温度変化によって直線方向の運動機構のみで切換え動作を行い、特に切換え動作の駆動力に電気的な動力を用いない流通路切換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流通路切換装置は、直線方向の運動を回動方向に変換させることで、切換弁を切換える方式を用いている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の流通路切換装置を示す図である。図8に示すように、例えば、金属または合成樹脂で形成された切換弁1は、その基端部が一つの流通路Aから二つに分かれた流通路B、Cの分岐境4に、支軸11で回動自在に支持されて、一つの流通路Aから二つに分かれた流通路B、Cのどちらか一方の流通路に切換えるように設けられている。
【0004】
すなわち、切換弁1の先端部1dが、支軸11の周りに設けたスプリング(図示せず)による付勢力によって時計回りに回動して、一つの流通路Aの一方の壁面A1に当接する一方、付勢力に抗して切換弁1を反時計方向に回動させて、切換弁1の先端部1dが他方の壁面A2に当接することによって、流通路の切換が行われるようになっている。
【0005】
切換弁1を切換押動するリンク5は、切換弁1の基端部と先端部の間の側方に支軸5bによって回動自在に設けられ、リンク5の後端部5cに長孔5dを穿設し、この長孔5dに係合させた支軸12に、流通路内の流体の温度変化に応じて切換弁1を一つの流通路Aから二つに分かれた流通路B、Cの何れかに切換駆動する弁体駆動部材2が回動自在に連結されている。
【0006】
弁体駆動部材2は、温度変化によって膨張・収縮するワックスをケースの感温部2eに充填し、ワックスの膨張・収縮によってピストン2aが進退するようなワックス式熱応動手段であり、感温部2eが流通路Aに位置して配設され、ピストン2aの先端に連結した弁体駆動杆2fの先端部が、支軸12に回動自在に連結されている。
【0007】
そして、流通路内の流体の温度変化に応じた弁体駆動部材2のピストン2aおよび弁体駆動杆2fの一定方向の移動によって、リンク5の先端5aが、ピストン2aおよび弁体駆動杆2fの移動とは反対方向に円弧を描きながら、そのリンク5の先端5aの切換弁1側への突出量は、低温時に小さく、温度上昇に伴い最も大きくなり、さらに温度が上昇すると、再び低温時と同様に小さくなるように回動することにより、切換弁1は、低温時は一つの流通路Aから二つに分かれた一方の流通路Bへ、温度上昇に伴い一つの流通路Aから二つに分かれた他方の流通路Cへ、さらに温度が上昇すると、再び低温時と同様に一つの流通路Aから一方の流通路Bへと切換わるように回動駆動されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3720938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成では、流通路内の流体の温度変化に応じて直線方向へ移動する弁体駆動部材2の弁体駆動杆2fを回動駆動させることにより、流通路の切換え動作を行っているため、直線方向から回動方向へ変換する動作をするために変換部材のリンク5が必要となり、複雑な構造になることや、回動駆動時に変換部材であるリンク5にも大きな負荷が掛かり、特に先端5aと切換弁1との間の接触抵抗が大きくなることが生じる。このため、先端5aと切換弁1との接触部の磨耗により、切換弁1やリング5にガタツキが生じると、切換弁1の流通路の切換え時にシール性が低下し、シール部の長期信頼性の向上を確保することが困難であるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するもので、回動駆動時に変換部材を用いることがなく、動作を簡略化し、直線方向の運動のみで確実に切換え動作を行い、変換部材がないため磨耗によるガタツキの発生も抑えられ、シール性や長期信頼性も確保できる流通路切換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来の課題を解決するために、本発明の流通路切換装置は、外枠の内部に形成された第1の流通路と、第1の流通路から二つに分岐された第2の流通路と第3の流通路と、感温部内に充填されたワックスの熱膨張によりピストン部が伸張する弁体駆動部材と、ピストン部を外枠に保持する保持部材と、弁体駆動部材を圧縮する戻しバネと、感温部の軸上を摺動して第2の流通路を開閉する第1の開閉弁と、ピストン部の軸上を摺動して第3の流通路を開閉する第2の開閉弁とを備え、弁体駆動部材が伸縮して第2の流通路と第3の流通路とのいずれか一方を閉じるようにしたものである。
【0012】
これによって、軸駆動から回動駆動に変換する変換部材を用いず、動作を簡略化し、軸方向の運動のみで確実にスムーズな切換え動作を行うことにより、シール性の長期信頼性も確保できることや、熱により弁体が駆動するので、流通路切換え時に電力を消費することがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流通路切換手段は、磨耗によるガタツキの発生が抑えられ、切換え部のシール性の長期信頼性も確保できるとともに、流通路の切換え時に電力を消費することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における流通路切換装置を用いた給湯装置の概略構成図
【図2】同実施の形態における流通路切換装置の縦断面図
【図3】同実施の形態における保持部材の正面図
【図4】同実施の形態における流通路切換装置の横断面図
【図5】同実施の形態における流通路切換装置の局部断面図
【図6】同実施の形態における流通路切換装置の縦断面図
【図7】同実施の形態における流通路切換装置の局部断面図
【図8】従来の実施の形態における流通路切換装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明の流通路切換装置は外枠の内部に形成された第1の流通路と、第1の流通路から二つに分岐された第2の流通路と第3の流通路と、感温部内に充填されたワックスの熱膨張によりピストン部が伸張する弁体駆動部材と、ピストン部を外枠に保持する保持部材と、弁体駆動部材を圧縮する戻しバネと、感温部の軸上を摺動して第2の流通路を開閉する第1の開閉弁と、ピストン部の軸上を摺動して第3の流通路を開閉する第2の開閉弁とを備え、弁体駆動部材が伸縮して第2の流通路と第3の流通路とのいずれか一方を閉じ
るようにしたことにより、回動駆動を変換する変換部材を用いず、動作を簡略化し、直線方向のみで確実にスムーズな切換え動作を行うことにより、変換部材を使用していないので、磨耗によるガタツキの発生が抑えられ、切換え部のシール性の長期信頼性も確保できるとともに、流体の温度変化による熱を利用することにより弁体が駆動するので、流通路の切換え時に電力を消費することがない。
【0016】
第2の発明の流通路切換装置は、特に、第1の発明において、感温部を保持する受け部材をさらに備え、受け部材は流体を通過させる開口部を有し外枠の内面を摺動することにより、外枠と受け部材との間に、新たに流通路を有することなく流体は流動でき、流通路切換装置を小型化できると共に、受け部部材は外枠の内面を摺動する流動方向の直線的な動作だけなので、安定した動作を実現できる。
【0017】
第3の発明の流通路切換装置は、特に、第1または第2の発明において、保持部材は、流体を通過させる開口部を有することにより、外枠と保持部材との間に、新たに流通路を有することなく流体は流動でき、流通路切換装置を小型化できる。
【0018】
第4の発明の流通路切換装置は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明において、第1の開閉弁および/または第2の開閉弁は、弁本体部とシール部とを有し、弁本体部とシール部がそれぞれ異なった材質を用いるので、シール部分を高価なゴム材質に、それ以外は安価な樹脂材質に構成できるので、低コスト化することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における流通路切換装置を用いた給湯装置の構成図を示すものである。この給湯装置は、湯水を貯える貯湯槽18と、加熱手段であるヒートポンプ熱源19を備えており、貯湯槽18の底部には、給水源からの水を供給する給水管20が接続されている。給水源から供給された水は給水管20を通って、貯湯槽18に貯まる。あるいは、給水管20から分岐され、給湯混合弁21の水側に供給される。
【0021】
そして給湯混合弁21の下流側にある給湯温度センサー31で検知する温度が、使用者が設定した給湯温度となるように、給湯混合弁21がフィードバック制御され、貯湯槽18上部の高温水と給水管20からの低温水とを混合し、蛇口33から出湯する。
【0022】
また、貯湯槽18の下部とヒートポンプ熱源19とは、沸き上げポンプ22を介してヒートポンプ往き配管23で接続されており、沸き上げポンプ22を駆動することで、ヒートポンプ熱源19に貯湯槽18の底部にある低温水を送っている。
【0023】
ヒートポンプ熱源19は、水と冷媒とが熱交換を行う水冷媒熱交換器34、冷媒を減圧する減圧弁35、冷媒が大気から熱を吸熱する蒸発器36、冷媒を圧縮するコンプレッサー24を有し、順次冷媒配管37で環状に接続されてヒートポンプ回路を備えている。そして冷媒水熱交換器34で、コンプレッサー24で圧縮されて高温高圧となった冷媒と、貯湯槽18の底部から送られてくる低温水との間で熱交換を行い、湯水を生成する。
【0024】
ヒートポンプ熱源19の入口には、水冷媒熱交換器34に入る水の温度である入水温度を測定するための入水温度センサー28が、ヒートポンプ熱源19の出口には、水冷媒熱交換器34から流出する湯の温度である出湯温度を測定するための出湯温度センサー29が設けられており、測定された温度データは、制御基板30に送られ、コンプレッサー24や沸き上げポンプ22の回転数の制御に用いられる。
【0025】
また、ヒートポンプ熱源19から貯湯槽18に戻ってくるヒートポンプ戻り配管25と、ヒートポンプ熱源19により生成された湯水を貯湯槽18の上部に戻すためのタンク上戻り配管27と、ヒートポンプ熱源19の起動時などにヒートポンプ熱源19から戻ってくる比較的低温の水を貯湯槽18の下部に戻すためのタンク下戻り配管26を備えている。
【0026】
さらに、ヒートポンプ戻り配管25と、タンク下戻り配管26およびタンク上戻り配管27とを接続している箇所に流通路切換装置100が設けられており、流通路切換装置100が切り替わることによってタンク上戻り配管27もしくはタンク下戻り配管26のいずれかの流路を選択できるように構成されている。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1における流通路切換装置100を流れる流体の温度が約50度未満の低温状態である場合の流通路切換装置100の断面図である。
【0028】
流通路切換装置100は、本体部12と、蓋部13とから略円筒形状の外枠を形成され、それらの接合部分は、例えばOリングなどのシール部材14でシールされている。そして、ヒートポンプ戻り配管25が接続されるヒートポンプ戻り口45、タンク下戻り配管26が接続されるタンク下戻り口46、タンク上戻り配管27が接続されるタンク上戻り口47を備えている。
【0029】
略円筒形状の外枠の内部には、一つの第1の流通路15から二つに分かれた第2の流通路16、第3の流通路17が形成されており、第1の流通路15はヒートポンプ戻り口45に、第2の流通路16はタンク下戻り口46に、第3の流通路17はタンク上戻り口47にそれぞれ連通している。また、略円筒形状の外枠の内部には、第1の流通路15に連通させる流通路を、第2の流通路16、第3の流通路17のどちらか一方の流通路に切り換える機構が備えられている。
【0030】
この切換機構は、主に、弁体駆動部材2と第2の流通路16を開閉する第1の開閉弁1と、第3の流通路17を開閉する第2の開閉弁3とから構成されている。
【0031】
弁体駆動部材2は、切り換え動作の動力として流体の温度変化により動作するワックス式熱応動手段であり、内部に周囲の温度に応じて体積変化するワックスが充填された感温部2eと、ワックスの体積変化に応じて収縮するピストン部2aとから構成されている。感温部2eの一端には、軸部2bが設けられている。
【0032】
ピストン部2aの端部は、保持部材6の保持部6aにより蓋部13に保持されている。図3に、保持部材6の正面図を示す。図3に示すように、保持部材6の中心には、弁体駆動部材2のピストン部2aの先端を受ける保持部6aを備え、その周囲には湯水を連通する複数の開口部A6bを備えている。
【0033】
一方、感温部2eは、本体部12の内部を摺動する受け部材10によって保持されている。図4は、受け部材10を正面から見た流通路切換装置100の断面図である。図4に示すように、受け部材10には、湯水を連通させる複数の開口部B10aを備えている。
【0034】
また、本体部12と受け部材10との間には、弁体駆動部材2が低温時に収縮する位置まで戻す戻しバネ7を備えている。
【0035】
感温部2eの軸部2bには、軸部2bの周囲を摺動し第2の流通路16を開閉する第1の開閉弁1を備えている。図5に、軸部2bの先端部近傍の流通路切換装置100の局部
断面図を示す。図5に示すように、止め輪11は第2の開閉弁1が軸部2bから抜けるのを防止している。また、第2の開閉弁1は、第2の開閉弁1と感温部2eとの間に設けられた連動バネA8により、軸部2bの先端部側へ押し付けられている。
【0036】
一方、ピストン部2aには、ピストン部2aの軸上を摺動し第3の流通路17を開閉する第2の開閉弁3を備えている。第3の開閉弁3は、第3の開閉弁3と保持部材6との間に設けられて連動バネB9により、ピストン部2a側へ押し付けられている。
【0037】
そして、第1の開閉弁1は、図5に示すように、弁本体部1aと面シール部1bと摺動シール部1cで構成され、弁本体部1aと、面シール部1bと摺動シール部1cのシール部材は、異なった材質を用いている。また、第2の開閉弁3は、弁本体部3aと面シール部3bと摺動シール部3cで構成され、弁本体部3aと、面シール部3bと摺動シール部3cのシール部材は、異なった材質を用いている。
【0038】
以上のように構成された流通路切換装置100を用いた本実施の形態の給湯装置について、以下その動作および作用を説明する。
【0039】
図1に示すように、ヒートポンプ熱源19は、水冷媒熱交換器34で、コンプレッサー24で圧縮されて高温高圧となった冷媒と、貯湯槽18の底部から送られてくる低温水との間で熱交換を行い、湯水を生成する。
【0040】
図2は、ヒートポンプ熱源2の立ち上がり時などの流通路切換装置100を流れる流体の温度が約50度未満の低温状態である場合の流通路切換装置100の断面図を示ている。一方、図5は、ヒートポンプ熱源19が立ち上がって所定の設定温度に達した時間経過後などの流通路切換装置100を流れる流体の温度が約50度以上の低温状態である場合の流通路切換装置100の断面図を示し、図7は、同じ状態での第1の開閉弁1の閉状態の局部断面図を示している。
【0041】
ヒートポンプ熱源2の立ち上がり時には、ヒートポンプ戻り口18から流路切替手段100に入る温水の温度は、十分上昇していない。例えば、湯水沸き上げ設定温度が約65度の場合、ヒートポンプ熱源2の立ち上がり時には、温水の温度が約50度に達していないため、弁体駆動部材2の感温部2e内部のワックスが体積膨張も小さく発生する荷重は、戻しバネ7の荷重により小さくなる。このため、図2に示すように、第2の開閉弁3は、弁体駆動部材2の感温部2eを受ける受け部材10を介して、外枠を構成する蓋部13の方向に押さえつけられる。
【0042】
この時、第2の開閉弁3の面シール部3bは、蓋部13との隙間Cを閉止する。また、ピストン部2aの外径と第2の開閉弁3との間の摺動部である摺動シール部3cも閉止している。このため、第3の流通路17からタンク上戻り管27への湯水の流出を止める。
【0043】
一方、図3に示すように、第1の開閉弁1は、軸方向の先端部で止めている弁体駆動部材2の軸部2bに嵌められた止め輪11により、連動バネA8の荷重が掛かっても、第1の開閉弁1の面シール部1aと本体部12内部との隙間Aが流路として確保される。すなわち、隙間Cとは反対側の第2の開閉弁1の面シール部1aと本体部12内部との間の隙間Aは開き、第1の流通路15から流入した湯水は第2の流通路16と連通したタンク下戻り管26から、貯湯槽18の下部へ流入する。
【0044】
このとき、隙間Aで形成された流路面積が、第2の流通路16に連通した穴寸法hによる開口面積より大きくしていることにより、流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できる。
【0045】
また、受け部材10の複数の開口部B10aの総開口面積を、第2の流通路16に連通した穴寸法hによる開口面積より大きくしていることにより、流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できる。また、図4に示すように、本体部12の内径と受け部材10の外径との間に隙間Dを設け、この隙間D寸法を極力小さくすることで、ガタツキも小さくなり、弁体駆動部材2の直線方向の動きをスムーズに動作することができる。
【0046】
ヒートポンプ熱源19が立ち上がってから所定時間経過後には、生成される温水が高温となっているため、ヒートポンプ戻り口18から流路切替手段100に入る温水の温度は高温となる。例えば、湯水沸き上げ設定温度が約65度の場合、ヒートポンプ熱源2から、出湯された湯水の温度が約50度に到達すると、図6に示すように、弁体駆動部材2のピストン2aは、内部のワックスが、熱による体積膨張から発生する荷重が大きくなり、緩やかに伸び始め、湯水の温度が約65度になるまでに戻しバネA7の荷重を超えて、受け部材10、連動バネA8を介して第1の開閉弁1を右側軸方向に押さえつける。そして、戻しバネB8のバネ荷重により、確実に隙間Aを閉止させる。
【0047】
また同時に、第2の開閉弁3は、連動バネB9のバネ荷重によって、感温部2e側へと戻される。すなわち、連動バネB9は、第2の開閉弁3のシール面への固着を防止し流通路面積を確保する役目を果たしている。
【0048】
この時、第1の開閉弁1の面シール部1bは、本体部12との隙間Aを閉止する。また、感温部2eの軸部2bの外径と第1の開閉弁1との間の摺動部である摺動シール部1cも閉止している。このため、第2の流通路16からタンク下戻り管9への湯水の流出を止める。なお、図7に示すように、弁体駆動部材2のピストン2aは約50度から65度の高温からさらに高い最高温度90度まで温度上昇により伸び続けるため、第1の開閉弁1の面シール部1bと本体部12内部との隙間Aが閉止されるが、ピストン2aの軸方向の閉止荷重を逃がすために感温部2eの軸部2bと止め輪11との間に隙間Bが発生し、隙間Aを閉止した後の湯水の温度が高いほど隙間Bは大きくなる。
【0049】
一方、図7に示すように、隙間Aとは反対側の第2の開閉弁3の面シール部3bと蓋部13内部との隙間Cが流路として確保される。これにより、第1の流通路15から流入した湯水は、隙間C、ピストン2aを受ける保持部材6の複数の開口部A6bを通り、第3の流通路17と連通したタンク上戻り管27から、貯湯槽18の上部に高温の湯水が流入する。
【0050】
このとき、隙間Cで形成された流路面積が、第3の流通路17に連通した穴寸法hによる開口面積より大きくしていることにより、流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できる。
【0051】
また、保持部材6の複数の開口部B6bの総開口面積を、第3の流通路17に連通した穴寸法hによる開口面積より大きくしていることにより、流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できる。
【0052】
また、第1の開閉弁1は、弁本体1aと面シール部1bと摺動部シール部1cで構成され、弁本体1aと面シール部1bは、異なった材質で構成している。すなわち面シール部1bと摺動部シール部1cとには高価でシール性の良いゴム材を使用し、弁本体1aには安価で軽い樹脂材を使用することで、安価にコストを実現できる。
【0053】
また、第2の開閉弁3は、弁本体3aと面シール部3bと摺動部シール部3cで構成され、弁本体3aと面シール部3bは、異なった材質で構成している。すなわち面シール部
3bと摺動部シール部3cとには高価でシール性の良いゴム材を使用し、弁本体3aには安価で軽い樹脂材を使用することで、安価にコストを実現できる。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、軸駆動から回動駆動による変化する部材を用いず、動作を簡略化し、直線方向のみの動作で確実にスムーズな切り換え動作を行うことにより、切り換え部のシール性についての長期信頼性も確保できることや、流体の温度変化による熱を利用することにより弁体が駆動するので、流通路切換え時に電力を消費することがない流通路切換装置を提供することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、受け部材10に複数の開口部A10aを設けるとともに、本体部12の内径と受け部材10の外径との間に隙間Dを設け、この隙間D寸法を極力小さくすることで、外枠と受け部材10との間に、新たに流通路を有することなく流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できるとともに、ガタツキが小さくなり、弁体駆動部材2の直線方向の動きをスムーズに動作することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、保持部材6の複数の開口部B6bを設けることで、外枠と保持部材6との間に、新たに流通路を有することなく、流通路内の圧力損失を低下し、流体の必要流量を確保できる
また、本実施の形態では、第1の開閉弁1や第3の開閉弁は、弁本体1a、3aと面シール部1b、3bとは、異なった材質で構成していること、すなわち面シール部1b、3bと摺動部シール部1c、3cとには高価でシール性の良いゴム材を使用し、弁本体1aには安価で軽い樹脂材を使用することで、安価にコストを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る流通路切換装置は、ヒートポンプサイクルと給湯サイクルが一体に構成された一体型ヒートポンプ式給湯機、別体に構成された分離型ヒートポンプ式給湯機、給湯用熱交換器で加熱したお湯をそのまま出湯できる直接出湯型ヒートポンプ式給湯機などの各種ヒートポンプ給湯機や貯湯式ヒートポンプ温水暖房機の三方弁としても適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 第1の開閉弁
1a 弁本体部
1b 面シール部
1c 摺動部シール部
2 弁体駆動部材
2a ピストン
2b 軸部
2e 感温部
3 第2の開閉弁
3a 弁本体
3b 面シール部材
3c 摺動部シール部材
6 保持部材
6a 保持部
6b 開口部A
7 戻しバネ
8 連動バネA
9 連動バネB
10 受け部材
10a 開口部B
11 止め輪
12 本体部
13 蓋部
14 シール部材
15 第1の流通路
16 第2の流通路
17 第3の流通路
18 貯湯槽
19 ヒートポンプ熱源
20 給水管
21 給湯混合弁
22 沸き上げポンプ
23 ヒートポンプ往き配管
24 コンプレッサー
25 ヒートポンプ戻り配管
26 タンク下戻り配管
27 タンク上戻り配管
28 入水温度センサー
29 出湯温度センサー
30 制御基盤
31 給湯温度センサー
33 蛇口
34 水冷媒熱交換器
35 減圧弁
36 蒸発器
37 冷媒配管
45 ヒートポンプ戻り口
46 タンク下戻り口
47 タンク上戻り口
100 流通路切換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠の内部に形成された第1の流通路と、前記第1の流通路から二つに分岐された第2の流通路と第3の流通路と、感温部内に充填されたワックスの熱膨張によりピストン部が伸張する弁体駆動部材と、前記ピストン部を前記外枠に保持する保持部材と、前記弁体駆動部材を圧縮する戻しバネと、前記感温部の軸上を摺動して前記第2の流通路を開閉する第1の開閉弁と、前記ピストン部の軸上を摺動して前記第3の流通路を開閉する第2の開閉弁とを備え、前記弁体駆動部材が伸縮して前記第2の流通路と前記第3の流通路とのいずれか一方を閉じることを特徴とした流通路切換装置。
【請求項2】
前記感温部を保持する受け部材をさらに備え、前記受け部材は流体を通過させる開口部を有し前記外枠の内面を摺動することを特徴とした請求項1に記載の流通路切換装置。
【請求項3】
前記保持部材は、流体を通過させる開口部を有することを特徴とした請求項1または2に記載の流通路切換装置。
【請求項4】
前記第1の開閉弁および/または前記第2の開閉弁は、弁本体部とシール部とを有し、前記弁本体部と前記シール部がそれぞれ異なった材質で構成されたことを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の流通路切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220503(P2011−220503A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92852(P2010−92852)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】