説明

流量制御バルブの情報表示装置および情報表示方法

【課題】バルブの運転状態が適正か否かを容易に判断する。
【解決手段】流量制御バルブの情報表示装置は、バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とをバルブから受信する受信部101と、バルブの開度を制御する演算部100から出力された操作量を設計流量に換算する流量換算部103と、計測流量の設計流量に対する比率を算出する比率算出部104と、計測流量、比率およびバルブ開度を表示する表示制御部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御システム等に使用される流量制御バルブに係り、特に流量制御バルブの情報を表示する情報表示装置および情報表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調制御システム等に使用される流量制御バルブにおいて、バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とをバルブから収集して表示する流量制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−232658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の流量制御装置では、計測流量とバルブ開度を同時に表示するのみで、計測流量の設計流量に対する比率を同時に表示してはいなかった。このため、従来の流量制御装置では、計測流量が空調機の負荷に対してどの程度の割合なのか、また計測流量が流量制御バルブに対してどの程度の容量なのかを一覧することができず、現在のバルブの運転状態が過大なのか適正なのかの判断を容易に行うことができないという問題点があった。なお、以上の問題点は、空調制御システムに限らず、バルブを用いて流体の流量を制御するシステムであれば同様に起こり得る。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、バルブの運転状態が適正か否かを容易に判断することができる流量制御バルブの情報表示装置および情報表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流量制御バルブの情報を表示する情報表示装置であって、流量制御バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とを前記流量制御バルブから受信する受信手段と、前記流量制御バルブの開度を制御する制御装置から出力された操作量を設計流量に換算する流量換算手段と、前記計測流量の前記設計流量に対する比率を算出する比率算出手段と、前記計測流量、前記比率および前記バルブ開度を表示する表示制御手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の流量制御バルブの情報表示方法は、流量制御バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とを前記流量制御バルブから受信する受信手順と、前記流量制御バルブの開度を制御する制御装置から出力された操作量を設計流量に換算する流量換算手順と、前記計測流量の前記設計流量に対する比率を算出する比率算出手順と、前記計測流量、前記比率および前記バルブ開度を表示する表示制御手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、計測流量、計測流量の設計流量に対する比率およびバルブ開度を同一画面に一覧表示することにより、流量制御バルブの負荷処理量が設計値に対して適正か否か、バルブ容量が適正か否かを容易に判断することができる。これにより、本発明では、設備管理およびエネルギー管理の作業効率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
図1において、1は冷水や温水等の熱媒を生成する熱源機、2は熱源機1が生成する冷温水を搬送するポンプ、3は複数の熱源機1からの冷温水を混合する往ヘッダ、4は往水管路、5は往ヘッダ3から往水管路4を介して送られてくる冷温水の供給を受ける負荷機器である空調機、6は還水管路、7は空調機5において熱交換され還水管路6を介して送られてくる冷温水が戻される還ヘッダ、8は往ヘッダ3から空調機5に供給される冷温水の流量を制御するバルブ、9は空調機5から送り出された給気の温度を計測する給気温度センサ、10は空調制御装置、11は空調機5のコイル、12は送風機、13は表示器である。なお、空調制御装置10と表示器13とは、情報表示装置を構成している。
【0009】
ポンプ2により圧送され熱源機1により熱量が付加された熱媒は、往ヘッダ3において混合され、往水管路4を介して空調機5へ供給され、空調機5を通過して還水管路6により還水として還ヘッダ7に至り、再びポンプ2によって圧送される。このように、熱媒は以上の経路を循環する。例えば冷房運転の場合、熱媒は冷水であり、暖房運転の場合、熱媒は温水である。
【0010】
空調機5は、空調制御エリアとなる室内から空調制御システムに戻る空気(還気)と外気との混合気を、冷温水が通過するコイル11によって冷却または加熱し、冷却または加熱した給気を送風機12によって空調制御エリアとなる室内に送り込む。
【0011】
本実施の形態は、バルブ8の制御に関する情報を表示器13に表示することを特徴としている。
図2はバルブ8の構成例を示すブロック図である。バルブ8は、空調機5を通過した冷温水が流入する流路を形成する弁箱80と、流路を開閉する弁体81と、流路を通過する冷温水の流量を計測する流量センサ(流量計測手段)82と、空調制御装置10から出力された操作量に基づいて弁体81の開度を調節する開度調節部83と、計測流量信号とバルブ開度信号を空調制御装置10に送信する送信部84とを有する。
【0012】
図3は空調制御装置10の構成例を示すブロック図である。空調制御装置10は、操作量を算出する演算部100と、計測流量信号とバルブ開度信号を受信する受信部101と、空調機5の設計流量を記憶する記憶部102と、演算部100が算出した操作量を設計流量値に換算する流量換算部103と、計測流量の設計流量に対する比率を算出する比率算出部104と、計測流量、計測流量の設計流量に対する比率、およびバルブ開度を表示器13に表示させる表示制御部105とを有する。
【0013】
以下、本実施の形態の空調制御システムの動作について説明する。図4は空調制御装置10の動作を示すフローチャート、図5はバルブ8の動作を示すフローチャートである。
まず、空調制御装置10の演算部100は、給気温度センサ9によって計測された給気温度を示す給気温度信号を受信する(図4ステップS1)。
【0014】
そして、演算部100は、給気温度センサ9によって計測された給気温度がオペレータ又は室内の居住者によって設定された温度設定値と一致するように空調機5を制御する。すなわち、演算部100は、温度設定値と給気温度との偏差に基づいて、例えばPID演算によって操作量を算出し(ステップS2)、算出した操作量をバルブ8に出力する(ステップS3)。
なお、湿度センサ(不図示)によって給気の湿度を計測し、演算部100が湿度設定値と現在の給気湿度との偏差に基づいて操作量を算出するようにしてもよい。
【0015】
次に、バルブ8の開度調節部83は、空調制御装置10から出力された操作量を示す操作量信号を受信する(図5ステップS10)。そして、開度調節部83は、受信した操作量に応じて弁体81の開度を調節する(ステップS11)。
バルブ8の流量センサ82は、流路を通過する冷温水の流量を計測する(ステップS12)。
【0016】
バルブ8の送信部84は、弁体81の開度を示すバルブ開度信号と流量センサ82によって計測された流量を示す計測流量信号とを空調制御装置10に送信する(ステップS13)。
以上のような図5に示すバルブ8の処理が、空調制御システムが動作停止するまで(図5ステップS14においてYES)、繰り返し行われる。
【0017】
次に、空調制御装置10の受信部101は、バルブ8からバルブ開度信号と計測流量信号を受信する(ステップS4)。
流量換算部103は、ステップS2で算出された操作量を設計流量値に換算する(ステップS5)。
【0018】
記憶部102には、操作量が100%のときの空調機5の設計最大流量の値が予め登録されている。図6は操作量と空調機5の設計流量との関係の1例を示す図である。図6において、Fpmaxが空調機5の設計最大流量である。
流量換算部103は、記憶部102から設計最大流量値を取得し、取得した設計最大流量値に基づいて操作量を設計流量値に換算する(ステップS5)。すなわち、流量換算部103は、操作量と空調機5の設計流量との関係が図6に示すような直線的な関係にあるものとし、記憶部102から取得した設計最大流量値と操作量が0%のときの流量値0とを用いて、操作量を流量値に換算すればよい。
【0019】
続いて、比率算出部104は、計測流量の設計流量に対する比率を算出する(ステップS6)。受信部101がステップS4で受信した計測流量をFm、流量換算部103がステップS5で算出した設計流量をFpとすると、比率はFm/Fp×100[%]である。
【0020】
空調制御装置10の表示制御部105は、受信部101が受信した計測流量の値と、比率算出部104が算出した比率の値と、受信部101が受信したバルブ開度の値とを表示器13に表示させる(ステップS7)。図7は表示器13の表示例を示す図であり、130が表示器13の画面である。
以上のような図4に示す空調制御装置10の処理が、空調制御システムが動作停止するまで(図4ステップS8においてYES)、繰り返し行われる。
【0021】
こうして、本実施の形態では、計測流量、計測流量の設計流量に対する比率およびバルブ開度を同一画面に一覧表示することにより、バルブ8の負荷処理量が設計値に対して適正か否か、バルブ容量が適正か否かをオペレータが容易に判断することができる。これにより、本実施の形態では、設備管理およびエネルギー管理の作業効率を改善することができる。
【0022】
なお、本実施の形態で説明した空調制御装置10は、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。同様に、バルブ8の開度調節部83と送信部84とは、コンピュータとプログラムによって実現することができる。これらのコンピュータのCPUは、それぞれの記憶装置に格納されたプログラムに従って、実施の形態で説明した処理を実行する。
【0023】
また、本実施の形態では、流量制御バルブの適用例として空調制御システムを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、流量制御バルブを用いて流体の流量を制御するシステムであれば同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、流量制御バルブに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の空調制御システムにおけるバルブの構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の空調制御システムにおける空調制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】図1の空調制御システムにおける空調制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図1の空調制御システムにおけるバルブの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態において操作量と空調機の設計流量との関係の1例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における表示器の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…熱源機、2…ポンプ、3…往ヘッダ、4…往水管路、5…空調機、6…還水管路、7…還ヘッダ、8…バルブ、9…給気温度センサ、10…空調制御装置、11…コイル、12…送風機、13…表示器、80…弁箱、81…弁体、82…流量センサ、83…開度調節部、84…送信部、100…演算部、101…受信部、102…記憶部、103…流量換算部、104…比率算出部、105…表示制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御バルブの情報を表示する情報表示装置であって、
流量制御バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とを前記流量制御バルブから受信する受信手段と、
前記流量制御バルブの開度を制御する制御装置から出力された操作量を設計流量に換算する流量換算手段と、
前記計測流量の前記設計流量に対する比率を算出する比率算出手段と、
前記計測流量、前記比率および前記バルブ開度を表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする流量制御バルブの情報表示装置。
【請求項2】
流量制御バルブの情報を表示する情報表示方法であって、
流量制御バルブを通過する流体の流量を計測した計測流量の信号とバルブの開度を示す信号とを前記流量制御バルブから受信する受信手順と、
前記流量制御バルブの開度を制御する制御装置から出力された操作量を設計流量に換算する流量換算手順と、
前記計測流量の前記設計流量に対する比率を算出する比率算出手順と、
前記計測流量、前記比率および前記バルブ開度を表示する表示制御手順とを備えることを特徴とする流量制御バルブの情報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−31861(P2009−31861A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192390(P2007−192390)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】