説明

流量制御弁

【課題】圧力補償型流量制御弁において、上流圧力が急上昇したときの流量のオーバシュートを抑制する。
【解決手段】流入口側に第一の可変オリフィス11を、流出口側に第二の可変オリフィス15を備え、上流の流体圧力が上昇したときに流入する流体圧力によりスプール3が初期位置から変位するのに伴って第一の可変オリフィス11が開度を徐々に減少させる一方、第二の可変オリフィス15が開度を徐々に増大させるようにした。予め流出口側のオリフィス15の開度を絞っているため、上流の圧力上昇が急峻であっても所定量以上の流体が下流に流出してしまうことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業機械や車両等の液圧装置に用いられる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧力が変動してもその流量を一定に保つことのできる圧力補償型流量制御弁として、下記特許文献に開示されているようなものが既知である。この流量制御弁は、筒状のボディ内にコントロールスプールを摺動可能に配置し、それらボディとスプールとの間にスプールを軸心方向に弾性付勢するスプリングを介設してなる。流入口側は開度可変の可変オリフィス、流出口側は開度不変の固定オリフィスとなっている。
【0003】
上流の流体圧力が上昇すると、高圧流体の流入に伴って弁室内圧力が上昇し、スプールがスプリングの弾性付勢力に抗して変位する。結果、可変絞りの開度が減少して圧力補償がなされ、下流に流出する流体の流量が一定に保たれる。
【特許文献1】特開2004−183818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の流量制御弁が抱える問題として、上流の流体圧力が急激に上昇したときに流量がオーバシュートする点が挙げられる。上流の流体圧力が上昇してからスプールが変位するまでの間にはタイムラグが存在するため、上流の圧力上昇が急峻であると可変オリフィスの開度調節が間に合わず、一時的に過大量の流体が流れてしまうのである。
【0005】
以上に鑑みてなされた本発明は、上流の流体圧力が急激に上昇したときの流量のオーバシュートを抑制することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するべく、本発明では、上流の流体圧力が上昇したときに流入する流体圧力により初期位置から変位するスプールと、スプールが初期位置から変位するのに伴って開度を徐々に減少させる第一の可変オリフィスと、スプールが初期位置にある段階で予め開度を減少させており、スプールが初期位置から変位するのに伴って開度を徐々に増大させる第二の可変オリフィスとを具備する圧力補償型流量制御弁を構成した。このようなものであれば、上流の圧力上昇が急峻で第一の可変オリフィスの開度調節が間に合わないとしても、第二の可変オリフィスによって流量を絞ることができ、流量がオーバシュートする問題を有効に回避できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上流の流体圧力が急激に上昇したときの流量のオーバシュートを抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の流量制御弁を、図1及び図2に示す。本流量制御弁は、液圧装置の筐体ブロック5等に組み込まれるもので、ボディ1、プラグ2、コントロールスプール3及びスプリング4を主要な構成要素とする。
【0009】
ボディ1は、一端が閉塞し他端が開放した筒体形状をなし、その内にスプール3を軸心方向に沿って摺動進退可能に保持する。ボディ1の周壁には、略同一円周上に間欠的に配した複数の流入口11と、同様に略同一円周上に間欠的に配した複数の流出口13、15と、下流の流体圧力をボディ1内(におけるスプリング4が介在する他端側)に導き入れるための還流路17、18とを穿設してある。流入口11はボディ1の一端寄りに存在し、流出口13、15は流入口11からやや他端方に偏倚した箇所に存在し、還流路17、18は流出口13、15からさらに他端方に偏倚した箇所に存在している。ボディ1の他端にはプラグ2を螺着してこれを閉塞する。
【0010】
スプール3は、一端部31と他端部32との間に環状凹部331を形成して中間部33を小径化した外形を有する。スプール3の一端部31及び他端部32の外周は、ボディ1の内周に略密接する。一端部31の内部には、一端面側に開口する圧力伝達孔311を設けている。圧力伝達孔311は、中間部33の内部通路332を介して環状凹部331に連通する。他端部32の内部には、他端面側に開口する筒孔321を設けている。スプリング4はこの筒孔321内に挿入し、一端を筒孔321の底面に、他端をプラグ2の内向面に弾接する。スプリング4により、スプール3は一端方へ向けて弾性付勢される。
【0011】
スプール3の一端部31は第一の可変オリフィスとなる流入口11を開閉し、他端部32は第二の可変オリフィスとなる流出口15を開閉する。流入口11から流入した流体は、環状凹部331を経由して流出口13、15に至り、そこから流出する。
【0012】
弾性付勢されたスプール3は、図1に示す初期位置ではその一端面をボディ1の内向面に当接させている。スプール3が初期位置にある段階で、流入口11は全開の状態、流出口13、15は一部が閉じられた状態となる。図示例では、軸心方向に離間した複数箇所にそれぞれ流出口13、15を穿設しており、一端方にある流出口13は全開、他端方にある流出口15は全閉となる。
【0013】
上流の流体圧力が上昇すると、流入口11から弁室内、即ち環状凹部331や圧力伝達孔311、さらにはスプール3の一端面とボディ1の内向面との間隙に流入した液圧がスプール3を他端方に向けて押圧し、図2に示しているようにこれを弾性付勢力に抗して変位させる。スプール3が初期位置から変位するのに伴い、流入口11の開口面積は徐々に小さく絞られるが、流出口15の開口面積は徐々に大きく拡がる。そして、スプール3は、弁室内圧力と下流圧力との差圧が所与の補償圧力に合致する位置で静止する。これにより、上流から下流に流れる流体の流量が一定に保たれる。
【0014】
本実施形態の流量制御弁は、流入口側に第一の可変オリフィス11を備え、流出口側に第二の可変オリフィス15を備えており、上流の流体圧力が上昇したときに流入する流体圧力によりスプール3が初期位置から変位するのに伴って第一の可変オリフィス11が開度を徐々に減少させる一方、第二の可変オリフィス15が開度を徐々に増大させるものである。スプール3が初期位置にある段階で予め流出口側のオリフィス15の開度を絞っているため、上流の圧力上昇が急峻でスプール3の変位ひいては流入口側のオリフィス11の開度調節が遅れたとしても、所定量以上の流体が下流に流出してしまう問題を回避できる。
【0015】
例えば、フォークリフトの油圧制御回路に従来の流量制御弁を使用すると、リフトの下降動作開始時に流量制御弁が作動する(即ち、スプールが変位して流入口側の可変オリフィスを必要な分だけ絞る)までの間はリフトが高速に降下し、場合によってはラプチャバルブが誤作動することもあり得る。しかも、流量制御弁が作動することで作動油の流量が急減することから、リフトにショックが発生する。本流量制御弁を使用すれば、リフトの下降動作開始時にリフトが高速で降下せず、ラプチャバルブが誤作動したりリフトがショックを受けたりもしなくなる。
【0016】
また、上流の流体圧力が大きくなり、環状凹部331を流通する流体の流速が高まると、スプール3の変位量が増大して第一の可変オリフィス11の開度が小さくなるが、替わりに第二の可変オリフィス15の開度が大きくなるので、流量が不必要に衰えてしまうことがない。
【0017】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、軸心方向に離間した複数の流出口13、15をボディ1に穿設し、そのうちの一部を可変オリフィス15、残りを固定オリフィス13としていたが、図3及び図4に例示するように、軸心方向に拡張した大形の流出口10を穿設して可変オリフィスとし、固定オリフィスを廃しても構わない。
【0018】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の流量制御弁を示す側断面図。
【図2】同側断面図。
【図3】本発明の変形例を示す側断面図。
【図4】同側断面図。
【符号の説明】
【0020】
11…第一の可変オリフィス
15、10…第二の可変オリフィス
3…スプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流の流体圧力が上昇したときに流入する流体圧力により初期位置から変位するスプールと、
スプールが初期位置から変位するのに伴って開度を徐々に減少させる第一の可変オリフィスと、
スプールが初期位置にある段階で予め開度を減少させており、スプールが初期位置から変位するのに伴って開度を徐々に増大させる第二の可変オリフィスと
を具備する流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−36336(P2009−36336A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202648(P2007−202648)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】