説明

浄水器

【課題】水道水などの原水をろ過カートリッジで処理して浄水を製造し、浄水をタンク等で貯水する浄水器において、カートリッジ使用開始時に発生する浄水器内の不純物を浄水器の系外に排出するとともに、抗菌性を有する銀イオンを発生させて貯水タンクの滞留水の一般細菌の繁殖を長期間抑制する。
【解決手段】銀添着活性炭で水を処理する前処理カートリッジ40と、RO膜またはNF膜で構成された膜ろ過カートリッジ15とで処理された浄水を貯留する貯水タンク18を有してなる浄水器であって、前記膜ろ過カートリッジ15の流量を検出する流量計14bと通水路を切り替える3方切換弁50および電圧を印加した電極から抗菌性金属イオンを溶出する抗菌ユニット70とを、前記膜ろ過カートリッジ15と前記貯水タンク18との間に設置した浄水器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原水をろ過する浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水などの原水を浄化する浄水器としては、蛇口に直接取り付けるタイプの他に、キッチンに据え置くタイプ、キッチン内部に収納設置するタイプ、電気分解を行うアルカリイオン整水器等、様々な種類の浄水器が使用されている。また、浄水器に組込む浄化手段としては、活性炭と精密ろ過レベルの中空糸膜とを組み合わせた浄化処理カートリッジが一般的に用いられている。
【0003】
この浄化処理カートリッジを複数取り付けてろ過能力を高めた浄水器や、ろ過精度の高いナノろ過膜や逆浸透膜を用いた浄水器も提案されている。
【0004】
これらのナノろ過膜や逆浸透膜で構成されているカートリッジの中には、使用開始までろ過膜の透過性能を維持するために性能維持剤を含有させたものや、長期間保存することも考慮して水溶液のpHを1〜3の強酸性水溶液に浸漬して密封し、一般細菌が繁殖し難くする対策が取られていることもある。この種類のろ過膜は使用開始時に洗浄して性能維持剤を除去し、水道法で定められた飲料水用途に適合するpH5.8〜8.6に水質を調整する必要がある。
【0005】
また、浄水器の通水路に使用される部材や逆浸透膜などのろ剤から溶出する有機物が一般細菌の栄養源になりうることは広く知られている。このため、例えば特許文献1には逆浸透膜浄水システムの最終段階に中空糸膜を設けて、一般細菌の栄養源である活性炭フィルタから発生する微粉を除去する技術が開示されている。しかし、中空糸膜では微粉は除去できても逆浸透膜から溶出する有機物の除去は難しい。
【0006】
また、特許文献2では膜モジュールと透過水タンクの間に洗浄水を排水するドレン弁が設置され、膜モジュールと透過ラインの洗浄水を濃縮ラインと透過液側ドレン弁から排出する方法が開示されてるが、この方法では膜モジュールの透過水側は洗浄されない可能がある。
【0007】
特許文献3では逆浸透膜と純水タンクとの間に水抜きラインが設置され、初期水や装置内の滞留水を装置の系外に排出することができ、装置内のバクテリア繁殖防止は純水を循環させる技術が開示されているが、この方法では一般細菌の繁殖防止は難しいことが予想されるとともに、かえって一般細菌を装置内に拡散させる懸念もある。
【特許文献1】特開2000−288539号公報
【特許文献2】特開2000−79328号公報
【特許文献3】特開2000−262868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般細菌の繁殖を防止するために強酸水溶液に浸されていたカートリッジは、使用前に洗浄してpHを前述した適正な値に下げなければならない。また、浄水処理された水を貯水タンクに貯留しておくタイプの浄水器(以後「貯水タンク付き浄水器」と呼ぶ。)では、貯水タンクに貯留される処理水に有機物が含まれ、有機物によって雑菌が繁殖することは抑制しなければならない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、浄水器内の通水路やろ剤およびろ過膜などから溶出する不純物を浄水器系外に排出するとともに、抗菌性を有する銀イオンにより、膜処理した浄水を貯留させる貯水タンク内における一般細菌の繁殖を長期間抑制することができる浄水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、
供給された原水の流入を止める原水電磁弁と、
前記原水電磁弁を通過した原水が通過する前処理部と、
前記前処理部を通過した前処理済み原水を膜でろ過しろ過水を得る膜ろ過部と、
前記ろ過水の流量を計測する流量計と、
前記前処理部と膜ろ過部のカートリッジが交換されたことを示す交換信号を受け、前記原水電磁弁と前記ろ過水排水弁を開くカートリッジ交換制御部と、
受信した制御信号に従って前記ろ過水に金属イオンを溶出させ金属イオン含有ろ過水を得る抗菌ユニットと、
前記流量計の計測値に基づいて前記抗菌ユニットに前記制御信号を出力する制御部と、
前記金属イオン含有ろ過水を貯留する貯水タンクと、
前記貯水タンクの下流側に設けた給水ポンプと、
前記給水ポンプを介して前記貯水タンク中の前記金属イオン含有ろ過水を浄水ノズルから外部に供給する給水ラインと、
前記給水ラインの途中に配設され前記貯水タンクの水面上へ通じるバイパスラインとを有する浄水器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前処理部や膜ろ過部のカートリッジを交換した後、所定の間、前処理部と膜ろ過部を通過した水をろ過水排水ラインを通じて系外に排出するので、前処理部のカートリッジから排出される有機物や膜ろ過カートリッジに含まれる強酸水溶液のpHを中性にまで戻す作用効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る浄水器において行われる水処理工程の一実施形態を示す概略フロー図である。図2は浄水器の組立斜視図である。
【0014】
本実施形態の浄水器100の構成は例えば図1に示すように、水道配管1から止水栓7で分岐して水道水を浄水器内に取り入れ使用する。ストレーナ8とフローコントロールバルブ9および原水電磁弁10は一体構造を成して止水栓7と耐圧ホース5を介して連結されている。
【0015】
原水電磁弁10よりラインを2方に分岐し、一方のラインはリリーフ弁22から排水ラインA(25)を通じて浄水器100の系外に水道水を排水する。もう一方のラインは前処理カートリッジ40と膜ろ過カートリッジ15との間に流量計A(14a)を、膜ろ過カートリッジ15の下流側に流量計B(14b)、3方切換弁50、抗菌ユニット70の順に設置され貯水タンク18に至る。
【0016】
また、前処理カートリッジ40を装填させるため前処理容器40aと前処理容器蓋40b、および膜ろ過カートリッジ15を装填させるため膜ろ過容器15aと膜ろ過カートリッジ蓋15bを有している。
【0017】
さらに、膜ろ過カートリッジ15の濃縮ライン45は定流量弁23を介して排水ラインA(25)に接続され、貯水タンク18のオーバーフローライン16も排水ラインA(25)に連結されるとともに、貯水タンク18は水位センサ30を有している。
【0018】
貯水タンク18の下部には排水弁24と給水ポンプ19が設置され、排水弁24は排水ラインB(26)に、給水ポンプ19は給水ライン60により膜ろ過水を外部に供給する浄水ノズル20に接続されている。さらに給水ポンプ19と浄水ノズル20との間にバイパスライン21を設けて浄水器100を形成している。
【0019】
図1を参照にして、本実施形態の浄水器100をさらに詳細に説明する。
浄水器100の外観部に取り付けた運転ボタン(図示せず)を押すと原水電磁弁10が開き水道水は浄水器内に流入する。このときリリーフ弁22の水圧を例えば0.4MPaに設定しておけばそれ以上の水圧ではリリーフ弁22が開となり、水道水は排水ラインA(25)から浄水器100の系外に排出されるため、原水電磁弁10より下流側には設定水圧以上の水圧が加わることはなく、通水経路の水漏れや破損を防止できる。
【0020】
また水道水中の異物や鉄錆の固まりはストレーナ8の金網に捕捉されるため、原水電磁弁10やリリーフ弁22の弁座が損傷したり異物を噛み込むこともない。金網のサイズは80〜150メッシュの範囲がよく、材質はSUS製が良い。該金網部(図示せず)はストレーナ8のハウジングに着脱自在に係累しているため金網に異物が詰まると取り外して洗浄できる。
【0021】
原水電磁弁10のもう一方はホース17を介して前処理カートリッジ40に通じている。前処理カートリッジ40は、平均孔径が0.1〜10μmの円筒状のフィルター13と銀添着活性炭12を充填したものである。原水は前処理部内のフィルター13と銀添着活性炭12を通過する。
【0022】
ここで使用するフィルター13は平均孔径が0.1〜10μmであればろ層形状は特に制限されるものではなく、プリーツ型、ワインド型、デプス型等のいずれでも構わなく、材質も、特に制限されるものではなく、ポリプロピレン、ポリエステル等のいずれでも構わない。
【0023】
また使用する銀添着活性炭12を通過した後の水中の銀イオンの濃度の下限を5μg/Lとすることが好ましい。これは、一般細菌の増殖の抑制が大きく期待できるためであり、また上限を100μg/L以下とする理由は、銀イオン濃度は、日本の水道水質基準においては管理項目にはないが、WHO(世界保健機構)のガイドラインでは「100μg/L以下とすることが望ましい。」との記載があり、また、USEPA(米国環境保護庁)が規定している安全飲料水法水質基準においてもWHOと同じく100μg/L以下。と定められているためである。
【0024】
もし、上限が各国・地域により水質基準で定められている場合は、その値を上限とする。なお、本実施形態で規定する銀イオン濃度は、ICP発光分光分析装置で測定した数値である。
【0025】
銀添着活性炭12の形状は粉末、粒状、繊維状等のいずれでも構わない。前処理カートリッジ40の寿命は流量計A(14a)により積算流量を測定し表示する。
【0026】
さらに前処理カートリッジ40の上流側に逆止弁11を設置すれば例え配管に負圧がかかっても活性炭などのろ材が流出することもないのでより好ましい。
【0027】
前処理カートリッジを通過した原水は、膜ろ過カートリッジ15を通る。
本実施形態で用いる逆浸透膜(以下RO膜と呼ぶ。)またはナノろ過膜(以下NF膜と呼ぶ。)を有する膜ろ過カートリッジ15に使用される分離膜としては、脱塩率が93%以上(評価条件 NaCl濃度:500mg/L、操作圧力:0.1MPa)のRO膜や、脱塩率が5%以上93%未満(評価条件 NaCl濃度:500mg/L、操作圧力:0.1MPa)のNF膜を選択して用いることができる。
【0028】
かかる性能を有する分離膜の素材として、RO膜の場合は酢酸セルロース、セルロース系のポリマー、ポリアミド、およびビニルポリマー等の高分子材料を用いることができる。また、NF膜の場合にはポリアミド系、ポリピペラジンアミド系、ポリエステルアミド系、あるいは水溶性のビニルポリマーを架橋したものなどを用いることができる。代表的なRO膜としては、酢酸セルロース系またはポリアミド系の非対称膜、およびポリアミド系の活性層を有する複合膜を挙げることができ、中でも、ポリアミド系の活性層の表層にポリビニルアルコールを被覆させた複合膜は、高排除性能かつ高透水性かつ高耐汚染性を有するので好ましい。
【0029】
分離膜の形状としてはRO膜、NF膜ともに平膜または中空糸膜であることが好ましく、例えば分離膜の膜厚を10μm〜1mmの範囲、中空糸膜の場合は外径を50μm〜4mmの範囲とすることが好ましい。
【0030】
また、中空糸膜は外壁に孔径0.1μm程度を有する中空形状の膜であり、RO膜やNF膜より孔径が大きいため、主に補足できる物質は濁質や細菌が中心となるが、ろ過処理できる水量が多くなる利点を有する。
【0031】
RO膜やNF膜の形状は、分離膜が平膜状の場合にはスパイラル型、プリーツ型、プレート・アンド・フレーム型、円盤状のディスクを積み重ねたディスクタイプがあり、中空糸膜の場合には、中空糸膜をU字状やI字状に束ねて容器に収納した円筒型があるが本実施形態ではいずれのカートリッジ形状を用いてもよい。
【0032】
これらの膜ろ過カートリッジ15は、ランニングコストを抑えるという観点から低圧で運転できるものであるのが好ましい。
【0033】
また浄水器に供給される原水の状態によって使用する膜を適宜選択することができるが、溶存物質を選択的に除去でき、目標とする水質に調整しやすい点からNF膜を使用することが好ましい。
【0034】
NF膜が持つ選択的な除去能力を利用し1価イオンの脱塩率を10〜93%の範囲内とすれば膜ろ過カートリッジ15を通過後の水道水はカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の2価のミネラル成分を適度に含む水となり、おいしい水を供給することができる。
【0035】
このろ過膜を水が通過するためには一定以上の水圧が必要となるが、膜ろ過カートリッジ15の濃縮ライン45に定流量弁23を配して濃縮水の流量を制御すれば良い。膜ろ過カートリッジを通過した水をろ過水と呼ぶ。
【0036】
本実施形態で用いる抗菌ユニット70は、流入口から流出口へと膜ろ過処理水が流れる水流に沿う形で、2枚の板状電極が向かいあわせに配置され、電極は銀単独、銀と銅の合金、銀と亜鉛の合金等、抗菌性金属イオンのもとになる金属を含む金属材料で構成されている。そのため、両電極に電圧を印加すると、陽極側から銀イオン等の抗菌性金属イオンが溶出する。ろ過水に溶出させる金属イオンは、抗菌能力が高く、極微量で効果がある点で、銀イオン、銅イオンが好ましく、最も多種の菌に対して抗菌効果が有効である点で銀イオンが特に好ましい。なお、以下の説明では銀イオンで説明を続けるが、他の金属イオンを排除する意味ではない。
【0037】
この抗菌ユニット70は、流量計B(14b)で膜ろ過処理したろ過水の流量応じて電極間に電流を流すように制御される。具体的には、膜ろ過処理水の流量が大きい場合は、電流を大きくし銀イオン溶出量を増やし、流量が小さい場合は電流を小さくして銀イオン溶出量を減らすように制御が行われる。より詳細には、流量計Bの出力から抗菌ユニットの電極間に流す電流量を制御する制御信号が制御部によって作られる。抗菌ユニット70はこの制御信号を受けて、制御信号に応じた電流を電極間に流す。
【0038】
制御信号は電圧、電流のどちらでもよく、また直流、パルス波のいずれであってもよい。また、制御信号は、電気以外の信号でもよく、例えば機械的な力の伝達や光または音であってもよい。
【0039】
制御部は抗菌ユニット70に送る制御信号を作成する部分であればよく、MPU(Micro Processor Unit)とプログラムを用いた制御装置であったり、流量計自体であってもよい。
【0040】
このようにろ過水の流量に応じた銀イオンを溶出させることで、膜ろ過処理水量の流量が変動しても、ろ過水中の銀イオン濃度を一定にすることができる。所定量の銀イオンを溶出させるが、所定量の銀イオンを溶出するためのろ過水の流量と抗菌ユニットに供給する電流との関係は、RO膜やNF膜のろ過特性の一つである除去率に応じて適宜設定する必要がある。
【0041】
これは銀添着活性炭12から溶出した銀イオンが膜ろ過カートリッジ15で除去されるためである。つまり[銀イオン濃度5μg/L〜100μg/L]=[膜ろ過カートリッジろ過後の銀イオン濃度]+[抗菌ユニットから溶出する銀イオン濃度]となるように設定する。
【0042】
このとき抗菌ユニット70から溶出される銀イオンの濃度は流量計14bで検出された流量に従い制御されるため、概ね一定となるが均一ではない。また、銀イオンは拡散し難いため、貯水タンク18内の銀イオン濃度には分布ができる。なお、金属イオンが溶出したろ過水を金属イオン含有ろ過水と呼ぶ。銀イオンが溶出したろ過水も金属イオン含有ろ過水である。以下の説明では「銀イオン含有ろ過水」という言葉を用いる場合があるが、これは金属イオン含有ろ過水の中で特に抗菌性の高い銀イオンを溶出させたろ過水を指す。
【0043】
抗菌ユニット70を通過した銀イオン含有ろ過水は貯水タンク18に導入され、貯水タンク18に設置した上限センサ30bが感知するまで貯水タンクに貯留される。本実施の形態の浄水器100は、水道から水が供給されている間運転を継続する。上限センサ30bが貯水タンクの水面が所定の位置に達したことを感知すると、上限センサから信号が送られ自動的に原水供給弁10が閉となり運転を停止する。このようにして銀イオン含有ろ過水は、常に貯水タンクが一杯になるまでろ過され貯留される。
【0044】
次に膜ろ過水を外部に供給する方法を説明する。
貯水タンク18から浄水を給水する場合には、浄水器100の外部に設置した給水ボタン(図示せず)を押せば、給水ポンプ19により浄水ノズル20から給水される。
【0045】
給水ポンプ19と浄水ノズル20との間に設置したバイパスライン21は貯水タンク18の上部に位置し、給水時には常に浄水の一部がバイパスライン21を通って貯水タンク18に還流される。
【0046】
このバイパスラインから貯水タンクへの還流で貯水タンク18内は撹拌されるため、銀イオン濃度は均一となる。
【0047】
浄水ノズル18からの給水量とバイパスライン21の還流量は必要に応じて給水ポンプ19を選定すれば良く、また給水量と還流量の比はバイパスライン21の内径を変更すれば任意に設定できる。またバイパスライン21内にオリフィスを設けることも好ましい態様である。
【0048】
もし、バイパスライン21がなければ、給水ポンプ19を停止しても、浄水ノズル20の先端が貯水タンク18の液面より下に位置していた場合、貯水タンク18と給水ポンプ19と浄水ノズル20は給水ライン60を介して水密的に連通した状態が保持される。そのため、貯水タンク18内の膜ろ過水はサイフォン現象により浄水ノズル20から、流出し続ける。
【0049】
しかし、本実施形態では給水ポンプ19と浄水ノズル20との間にバイパスライン21を設けるとともに、バイパスライン21と貯水タンク18の間には空間を有しているため、給水ポンプ19を停止した場合、浄水ノズル20内の滞留水は自重によりバイパスライン21を逆流して貯水タンク18内に戻される。また同時に浄水ノズル20内は空気と置換される。このため貯水タンク18内の膜ろ過水がサイフォン現象により排出されることはない。
【0050】
給水を継続して貯水タンク18の水位が低下し上限センサ30bを下回れば原水電磁弁10が開となり自動的に水道水の供給を開始し、下限センサ30aが水面を感知すれば信号が送られ自動的に給水ポンプ19はOFFとなり膜ろ過水の供給は停止されるが、運転は水位が上限センサ30bに達するまで継続される。
【0051】
また貯水タンク18にはオーバーフローライン16が設置しているため上限センサ30bで検出不良が発生しても浄水器100からシンク3上に水漏れすることはない。このオーバーフロー水は濃縮水ライン45とリリーフ弁22からの排出ラインと連結して排出ラインA(25)を形成し浄水器100の系外に排出される。
【0052】
長時間浄水器を使用しない場合、貯水タンク18の滞留水に一般細菌が増殖する懸念がある。この解決手段として設定時間(例えば24時間など)になると排水弁24が自動的に開き貯水タンク18の滞留水を排水ラインB(26)から浄水器100の系外に排出させれば良好な状態が長期間維持されるため好ましい。
【0053】
この場合水位が下限センサ30a以下となれば排水弁24は自動的に閉となるが、この自動停止のタイミングは下限センサ30aを検知してから所定の時間経過後に停止させると滞留水が残らないため好ましい。排水動作が終了すると自動的に原水供給弁10が開となって水道水の供給が開始される。
【0054】
前処理カートリッジ40と膜ろ過カートリッジ15は寿命がきたら交換する。寿命検知は前処理カートリッジ40は流量計A(14a)で、膜ろ過カートリッジ15は流量計B(14b)で流量を測定し、あらかじめ設定した総積算流量(通水量)に達したときに表示する。またタイマーによりカートリッジの使用時間を設定しても良い。表示手段はLCDやLEDおよび音など環境に応じて選択するのが好ましい。このため劣化したカートリッジを継続して使用することが回避できる。
【0055】
次に3方切換弁50について説明する。3方切換弁50に内蔵された3個の弁は、流量計B(14b)に接続された方を入力側とし、出力側はろ過水排水ライン51と抗菌ユニット70とのラインに接続されている。このため、入力側の弁と抗菌ユニット70側との弁を開としてろ過水排水ライン51の弁を閉とすれば、ろ過水は抗菌ユニット70を経由して貯水タンク18に入る。
【0056】
また、入力側の弁とろ過水排水ライン51の弁を開とし、抗菌ユニット70側の弁を閉とすればろ過水はろ過水排水ライン51を経由して排水ラインA25より浄水器100の系外に排出される。
【0057】
これらの制御は浄水器100内に搭載した記憶手段やMPU(図示せず)で一連の制御を行う。MPUとは製品の制御手段であり、すでに説明したように銀イオンの溶出量を制御するほか、カートリッジ寿命となる積算流量のカウンタをクリアしたり、スイッチ等で入力して製品を操作する操作手段、通水および止水のために電磁弁を駆動させる電磁弁駆動手段、流量センサ等で製品に流れる流量データを入力する流量入力手段、操作手段からから入力された状態を、電磁弁駆動手段に出力したり、流量入力手段から入力した流量データから積算流量および瞬時流量を演算したり、タイマーやデータの演算や動作する上で必要なデータの入出力等を行う。
【0058】
次にカートリッジの交換方法について説明する。前述したとおり、前処理カートリッジ40を装填させるための前処理容器40aは、有底の略円筒形であり、前処理カートリッジ40を収納した後に前処理容器蓋40bを装着することで流路が形成される。
【0059】
前処理容器蓋40bはOリング(図示せず)を介して前処理容器40aに水密的にかつ脱着自在に固定されており、固定方法はネジによる固定式でもバヨネット式でもよい。これらの固定方法を用いると、前処理部蓋40bをわずかな力で取り外すことができるため、浄水器の内部や周囲を水で汚すことなく、簡単にカートリッジを交換することができる。また、膜ろ過カートリッジ15を装填させるための膜ろ過容器15aと膜ろ過カートリッジ蓋15bも前処理部と同様の構造であり、容器の材質はABS、POM、PPなどの樹脂成形品が好ましい。
【0060】
前処理カートリッジ40はろ過手段であるフィルター13と銀添着活性炭12とを一体化させたユニットであり、前処理容器40a内に収納して前処理容器蓋40bで密閉されている。また、膜ろ過カートリッジ15も同じく膜ろ過容器15aに収納し、膜ろ過容器蓋15bで密閉されている。
【0061】
浄水器100の外部に設置された交換ボタン(図示せず)を押せば、原水電磁弁10は閉となり、水道水の供給は停止される。各々のフタを外してカートリッジを交換後フタを閉める。交換ボタンを押せば原水電磁弁10は開となり再び水道水は供給され、水道水は各々のカートリッジを経由して浄水となり貯水タンク18へ導入される。
【0062】
このとき前述した膜ろ過カートリッジ15内の性能維持剤やろ過膜に含有される有機物などの不純物が貯水タンク18内に流入し、水質の悪化をまねくとともに一般細菌の栄養源となり繁殖する可能性がある。
【0063】
この対策として、本発明では膜ろ過カートリッジ15と貯水タンク18の間に3方切換弁50を設置している。つまりカートリッジ交換後は任意の設定時間、または流量計B(14b)で積算流量を検出し、設定した総流量に達するまで3方切換弁50のろ過水排水ライン51の弁は開となり、貯水タンク側の弁を閉となるので水質の悪化の要因となる物質は排水ラインA25より浄水器の系外に排出される。
【0064】
より詳細に説明する。交換ボタンが押され、カートリッジが交換されると、交換が終了したことを浄水器が知る。カートリッジが交換されたことを知る方法は特に限定されず、交換ボタンをリセットするための操作であってもよいし、カートリッジの入り口に機械的なスイッチを配しておき、そのスイッチが押されることであってもよい。カートリッジが交換された信号を交換信号という。交換信号を受信するのはMPUによって構成されるカートリッジ交換制御部である。
【0065】
カートリッジの交換完了後、3方切換弁50のろ過水排水ライン側を開き、原水電磁弁10を開く。これはカートリッジ交換制御部が3方切換弁50と原水電磁弁10を開くように制御してもよい。
【0066】
原水電磁弁10が開いたら、流量計B(14b)からの流水の積算を開始する。カートリッジ交換制御部は図示しないタイマを使って経過時間を積算してもよい。水は、前処理カートリッジと膜ろ過カートリッジを通過し、3方切換弁50からろ過水排水ライン51を通って排水される。この排水によって性能維持剤やろ過膜に含有される有機物などの不純物は、系外に排出される。カートリッジ交換制御部は、所定の流量または所定時間経過後にろ過水が抗菌ユニットに流れるように3方切換弁50を切換える。
【0067】
なお、ここでは、カートリッジ交換制御部がこれらの操作を行うこととしたが、上述した制御部がこれらの操作を行っても良い。また、MPUとプログラムを用いるのではなく、専用のシーケンサー等を利用してもよい。すなわち、カートリッジ交換制御部は制御部と同じであってもよい。
【0068】
排出動作終了後、自動的に3方切換弁50の貯水タンク側の弁は開に、ろ過水排水ライン51の弁は閉に切り替えられるため、膜ろ過水は不純物を含まない良好な状態で浄水として貯水タンク18内に流入する。さらに銀イオンにより一般細菌の増殖は抑制される。従って本浄水器は上述した動作により常に安全でおいしい水を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は浄水器を含む水処理装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る浄水器の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】浄水器の組立斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1:水道配管
2:片チーズ
3:シンク
4:水栓
5:耐圧ホース
7:止水栓
8:ストレーナ
9:フローコントロールバルブ
10:原水電磁弁
11:逆止弁
12:銀添着活性炭
13:フィルター
14a:流量計A
14b:流量計B
15:膜ろ過カートリッジ
15a:膜ろ過容器
15b:膜ろ過容器蓋
16:オーバーフローライン
17:ホース
18:貯水タンク
19:給水ポンプ
20:浄水ノズル
22:リリーフ弁
23:定流量弁
24:排水弁
25:排水ラインA
26:排水ラインB
30:水位センサ
30a:水位下限センサ
30b:水位上限センサ
40:前処理カートリッジ
40a:前処理容器
40b:前処理容器蓋
45:濃縮ライン
50:3方切換弁
51:ろ過水排水ライン
60:給水ライン
70:抗菌ユニット
100:浄水器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された原水の流入を止める原水電磁弁と、
前記原水電磁弁を通過した原水が通過する前処理部と、
前記前処理部を通過した前処理済み原水を膜でろ過しろ過水を得る膜ろ過部と、
前記ろ過水の流量を計測する流量計と、
前記前処理部と膜ろ過部のカートリッジが交換されたことを示す交換信号を受け、前記原水電磁弁と前記ろ過水排水弁を開くカートリッジ交換制御部と、
受信した制御信号に従って前記ろ過水に金属イオンを溶出させ金属イオン含有ろ過水を得る抗菌ユニットと、
前記流量計の計測値に基づいて前記抗菌ユニットに前記制御信号を出力する制御部と、
前記金属イオン含有ろ過水を貯留する貯水タンクと、
前記貯水タンクの下流側に設けた給水ポンプと、
前記給水ポンプを介して前記貯水タンク中の前記金属イオン含有ろ過水を浄水ノズルから外部に供給する給水ラインと、
前記給水ラインの途中に配設され前記貯水タンクの水面上へ通じるバイパスラインとを有する浄水器。
【請求項2】
前記金属イオンは銀イオンである請求項1に記載された浄水器。
【請求項3】
前記カートリッジ交換制御部は、前記原水電磁弁と前記ろ過水排水弁を開いた後、前記流量計からの信号を積算する請求項1または2のいずれかの請求項に記載された浄水器。
【請求項4】
前記カートリッジ交換制御部は、前記原水電磁弁と前記ろ過水排水弁を開いた後、所定の時間を積算する請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載された浄水器。
【請求項5】
前記前処理部には銀添着活性炭が配設されている請求項1乃至4のいずれか1の請求項に記載された浄水器。
【請求項6】
前記銀イオン含有ろ過水中の銀イオン濃度は5μg/L以上100μg/L以下である請求項1乃至5のいずれか1の請求項に記載された浄水器。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−233591(P2009−233591A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83692(P2008−83692)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】