説明

浮きバルブ装置

【課題】本発明は、より高い遮断性能を有する浮きバルブ装置を提供する。
【解決手段】浮きバルブ装置50は、燃料タンク15内に配置されるサージタンク52の下部に形成された貫通孔57を燃料Fの浮力を受けて塞ぐ。浮きバルブ装置50は、貫通孔57を塞ぐ弁体60を有する浮き部材53と、浮き部材53の側面に対向するように配置されて、浮き部材53が貫通孔57を塞ぐ閉弁位置P1と貫通孔57を開く開弁位置P2との間で移動するようにガイドするガイド部材54と、ガイド部材54の側面との間に隙間が設けられるようにガイド部材54および浮き部材53を収納するケース部材56とを備える。ケース部材56は、ガイド部材54の側面に対向する周壁部56aを有し、周壁部56aには、ケース部材56とガイド部材54との隙間に燃料Fを流入させる貫通孔56bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料タンクに設けられる浮きバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼して駆動する内燃機関を走行の駆動源として備える自動車は、燃料を蓄える燃料タンクを備えている。燃料タンク内に蓄えられた燃料は、次第に蒸発し、燃料タンク内にたまる。
【0003】
燃料タンクと内燃機関の燃焼室とは、キャニスタを介して連通している。内燃機関が駆動する場合に生じる負圧は、キャニスタを介して燃料タンク内に作用するので、燃料タンク内にたまった蒸発した気体状の燃料は、燃料タンクから吸い出されてキャニスタに捕集される。キャニスタに捕集された燃料は、燃焼室側から作用する負圧によってパージされて燃焼室に供給される。また、キャニスタは、大気に開放されており、それゆえ、燃料タンク内の圧力が下がった場合などでは、外気がキャニスタを介して燃料タンクに供給される。このように、燃料タンク内の圧力は調整される。
【0004】
また、燃料タンク内において、キャニスタに連通する通路との連結部には、浮きバルブ装置が設けられている。浮きバルブ装置は、内部に、燃料タンク内の液体状の燃料の液面位置に応じて移動する浮き部材を有している。液面の上昇に合わせて浮き部材が上昇すると、浮き部材は、上記通路を塞ぐ。このことによって、燃料タンク内の液体状の燃料が通路を通って燃料タンクの外に出ることが抑制される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−293370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、走行するための駆動源として、電力によって駆動する電動機と、内燃機関とを備える電動車が知られている。この種の電動車においては、主に電動機によって走行し、内燃機関があまり用いられない電動車がある。
【0007】
このような電動車では、内燃機関が駆動しないために燃料タンク内の蒸発した気体状の燃料が吸いだされなくなり、それゆえ、燃料タンク内の圧力が高くなりやすくなる。上記したように、燃料タンク内は、キャニスタを介して大気に開放されている。このため、内燃機関が駆動されない期間が長くなると、燃料タンク内の圧力が高くなるとともに、燃料タンク内の圧力上昇にともなって燃料タンク内の蒸発した気体状の燃料が大気に漏れてしまう。
【0008】
このため、燃料タンクとキャニスタとを連通する通路中に、通路を開閉するバルブを設けて、内燃機関が駆動していない状態ではバルブを閉じることによって燃料タンク内の蒸発した気体状の燃料が外部に漏れることを抑制する技術が知られている。
【0009】
例えば、路面状況や走行状況によっては、燃料タンク内の燃料の液面状態が大きく変化する場合がある。このような場合では、上記のように蒸発した気体状の燃料がたまることによって燃料タンク内の圧力が高くなる自動車では、燃料タンクとキャニスタとを連通する通路内に設けられたバルブを開閉することにより瞬間的に通路内の気圧の脈動が生じる。
【0010】
通路中に脈動が生じることによって、浮きバルブ装置の浮き部材が押し下げられてしまい、それゆえ、燃料タンク内の液体状の燃料が浮きバルブ装置を通過することがある。液体状の燃料が浮きバルブ装置を通過することは好ましくない。
【0011】
このため、本発明は、より高い遮断性能を有する浮きバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の浮きバルブ装置は、燃料タンク内に配置されるガス収納器の下部に形成された開口を燃料の浮力を受けて塞ぐ浮きバルブ装置であって、前記開口を塞ぐ弁体を有する浮き部材と、前記浮き部材の側面に対向するように配置されて、前記浮き部材が前記開口を塞ぐ閉弁位置と前記開口を開く開弁位置との間で移動するようにガイドするガイド部材と、前記ガイド部材の側面との間に隙間が設けられるように該ガイド部材および前記浮き部材を収納するケース部材とを備え、前記ケース部材は、前記ガイド部材の側面に対向する周壁部を有し、前記周壁部には、前記ケース部材と前記ガイド部材との隙間に燃料を流入させる第1の貫通孔が形成される。
【0013】
請求項2に記載の発明の浮きバルブ装置では、請求項1の記載において、前記ケース部材は、前記ガイド部材の下面に対向する底壁部を有し、前記底壁部には、前記ケース部材と前記ガイド部材との隙間に燃料を流入させる第2の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔の開口面積は、前記第2の貫通孔の開口面積よりも大きい。
【0014】
請求項3に記載の発明の浮きバルブ装置は、請求項1または請求項2の記載において、前記ケース部材は、前記第1の貫通孔を覆う蓋部材を備え、前記蓋部材は、前記ケース部材の外部から内部への燃料の流入を許容する一方、前記ケース部材の内部から外部への燃料の流出を禁止するように回動する回動軸を備える。
【0015】
請求項4に記載の発明の浮きバルブ装置は、請求項1乃至3のいずれか1項の記載において、燃料を収容する燃料タンクと、該燃料タンクの蒸発燃料を吸着させるキャニスタと、前記燃料タンクと前記キャニスタとを連通する連通路の途中に設けられる開閉手段とを備えるタンク装置を更に備え、前記浮きバルブ装置は、前記連通路の前記燃料タンク側の先端に設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より高い遮断性能を有する浮きバルブ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料タンク装置を備える燃料供給システムを示す概略図。
【図2】図1に示されたフューエルカットオフバルブ装置を示す斜視図。
【図3】図2に示されたフューエルカットオフバルブ装置の下面図。
【図4】図1に示されるF4−F4線に沿って示すフューエルカットオフバルブ装置とその近傍の断面図。
【図5】フューエルカットオフバルブ装置の動作を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料タンク装置のフューエルカットオフバルブ装置とその近傍とを図4と同様に切断して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る燃料タンク装置を、図1〜5を用いて説明する。図1は、本実施形態の燃料タンク装置を備える燃料供給システム10を示す概略図である。燃料供給システム10は、一例として、電動車に搭載されている。
【0019】
電動車は、走行の駆動源として、電力を受けて駆動力を生じる電動機と、燃料Fを燃焼することによって駆動力を生じる内燃機関5とを備える電動車である。燃料供給システム10は、自動車において、内燃機関5に燃料を供給するためのシステムである。
【0020】
図1に示すように、燃料供給システム10は、燃料タンク15と、インジェクタ16と、燃料ポンプ17と、キャニスタ18と、第1の通路20と、第2の通路25と、第3の通路30と、バルブ装置40と、レベリングバルブ装置100と、フューエルカットオフバルブ装置110とを備えている。
【0021】
インジェクタ16は、燃料タンク15内に設けられる燃料ポンプ17から供給される燃料Fを、内燃機関5の吸気ポート21に供給する。
【0022】
第1の通路20は、キャニスタ18と燃料タンク15内と連通している。第1の通路20は、例えばパイプ部材などによって形成される。第2の通路25は、キャニスタ18と、内燃機関5の燃焼室側とを連通している。第2の通路25は、例えばパイプ部材などによって形成されている。
【0023】
このように、燃料タンク15内は、第1,2の通路20,25とキャニスタ18とによって、内燃機関5の燃焼室側と連通している。このため、内燃機関5が駆動することによって生じる負圧は、第1,2の通路20,25とキャニスタ18とを介して燃料タンク15内に作用する。
【0024】
燃料タンク15内に負圧が作用すると、燃料タンク15内の蒸発した気体状の燃料は、キャニスタ18に導かれる。キャニスタ18は、蒸発した気体状の燃料を捕集するとともに、負圧が作用すると捕集した燃料をパージする。パージされた燃料は、第2の通路25を通って燃焼室に供給される。
【0025】
また、キャニスタ18は、第3の通路30によって大気に開放されている。第3の通路30は、例えば、パイプ部材などによって形成されている。第3の通路30中には、エアフィルタ31が設けられている。
【0026】
給油口61は、給油通路62を介して燃料タンク15内に連通している。給油通路62は、例えばパイプ材で形成されている。自動車の外部の燃料供給装置から供給される燃料は、給油通路62を通って燃料タンク15に供給される。給油口61は、給油時以外は、蓋部材63によって塞がれる。
【0027】
バルブ装置40は、一例として、ソレノイドバルブ装置である。バルブ装置40は、第1の通路20を開閉する。バルブ装置40が第1の通路20を開く状態では、燃料タンク15は、第1の通路20と、キャニスタ18と、第3の通路30とを介して大気に開放されている。バルブ装置40が第1の通路20を閉じる状態では、燃料タンク15は、密閉される。このように、燃料タンク15は、いわゆる、密閉タンクである。バルブ装置40は、制御部210によって、動作が制御される。
【0028】
レベリングバルブ装置100は、燃料タンク15内に配置されている。レベリングバルブ装置100は、第1の通路20に連通しており、第1の通路20を開閉する。フューエルカットオフバルブ装置110は、燃料タンク15内に配置されており、燃料タンク15内で第1の通路20に連通する第4の通路35を開閉する。図1に示すように、フューエルカットオフバルブ装置110は、燃料タンク15の上端に配置されている。レベリングバルブ装置100は、フューエルカットオフバルブ装置110よりも低い位置に配置されている。
【0029】
レベリングバルブ装置100は、燃料タンク15内空気層確保のための給油燃料量(満タン容量)を制限する。燃料タンク15内には、液体の燃料Fの膨潤代、ないし、燃料タンク15内の蒸散ガスのパージの際に液体の燃料Fがタンク外に漏洩しないよう、液面とフューエルカットオフバルブ装置110との間に空気層を設けている。燃料タンク15内に注入される燃料Fの液面により当該レベリングバルブ装置100が閉塞し、燃料タンク15からキャニスタ18への空気の流れが滞ることで、行き場が無くなった燃料タンク15内空気により燃料タンク15内の燃料Fが押さえつけられ、注入中の燃料Fがフィラーパイプ給油口まで溜まることで、給油ノズル先端のシャットオフセンサが燃料Fを感知し給油停止、満タン容量を規制する。
【0030】
レベリングバルブ装置100が開放しているときは、パージ時や給油時などに燃料タンク15内の蒸散ガスの流路ともなる。上記パージ時の蒸散ガスの流路は、燃料タンク15、レベリングバルブ装置100、キャニスタ18、内燃機関5の順番で構成される。上記給油時の蒸散ガスの流路は、燃料タンク15、レベリングバルブ装置100、キャニスタ18の順番で構成される。
【0031】
フューエルカットオフバルブ装置110は、燃料タンク15内の蒸散ガスパージのための流路となること、ならびに、車両転覆時に燃料タンク15からの燃料Fの流出を防ぐ。燃料Fは、揮発性が高く、燃料タンク15を密閉すると外気温変化などにより燃料タンク15の内圧が高圧になる。燃料タンク15や、燃料タンク15に接続されるホースなどの接合部の強度が十分高くなければ、燃料タンク15内の蒸散ガスが外界へ排出されてしまう。
【0032】
このため、燃料タンク15内の蒸散ガスを、フューエルカットオフバルブ装置110を通じて内燃機関5の噴射燃料とともに都度燃焼処理(パージ)し、エバポエミッションへの適合、ならびに、タンク破損の原因となるタンク高圧化を防ぐ。
【0033】
また、気温差等によって、燃料タンク15の内圧が負圧となりえる際には,外界より大気を取り入れ、燃料タンク15の破損につながる変形を防ぐ。また、走行遥動や車両転覆などで燃料タンク15内の液体の燃料Fがフューエルカットオフバルブ装置110に到達した場合には、その浮きバルブ装置によって閉塞し、外界への燃料Fの漏洩を防ぐ。
【0034】
本実施形態では、レベリングバルブ装置100と、フューエルカットオフバルブ装置110として、浮きバルブ装置50が用いられている。浮きバルブ装置50の説明として、フューエルカットオフバルブ装置110として用いられる浮きバルブ装置50を代表して説明する。
【0035】
図2は、浮きバルブ装置50を示す斜視図である。図3は、浮きバルブ装置50の下面図である。図4は、図1中に示すF4−F4線に沿って示すフューエルカットオフバルブ装置とその近傍とを示す断面図である。図4は、フューエルカットオフバルブ装置として用いられる浮きバルブ装置50が燃料タンク15に固定されている状態を切断して示す断面図である。
【0036】
図4に示すように、燃料タンク15と第4の通路35との間には、サージタンク(ガス収容器)52が形成されている。サージタンク(ガス収容器)52は、後述される蒸発した気体状の燃料の脈動を吸収するべく、内側に空間S1を有している。図2に示すように、サージタンク(ガス収容器)52は、円筒形状である。サージタンク(ガス収容器)52の上部には、連結部51が設けられている。
【0037】
空間S1は、連結部51に連通している。サージタンク52において連結部51に対して他端、つまり、下端には、空間S1に連通する貫通孔57が形成されている。貫通孔57の周縁部の全域は、サージタンク52から離れる方向に立ち上がる弁座58となっている。
【0038】
浮きバルブ装置50は、浮き部材53と、ガイド部材54と、コイルばね55と、ケース部材56とを備えている。
【0039】
浮き部材53は、本実施形態では一例として、外形が、筒形状である。浮き部材53の一端部には、貫通孔57に収容可能な突出部59が形成されている。突出部59の周囲には、突出部59の周方向に広がる弁体60が形成されている。突出部59が貫通孔57に収容されると、弁体60が、弁座58に密着する。このことによって、貫通孔57は、弁体60によって塞がれる。浮き部材53は、浮き部材53が液体状の燃料Fに浸かると、浮力が得られる大きさを有している。
【0040】
ガイド部材54は、一端が開口する筒形状である。ガイド部材54は、内側に浮き部材53が収容されるように、開口端がサージタンク52に固定されている。ガイド部材54の内側は、浮き部材53が貫通孔57に近づく方向つまり装置上方向と、浮き部材53が貫通孔57から離れる方向つまり装置下方向とに、移動できる大きさを有している。
【0041】
浮き部材53が装置上方向に移動すると、突出部59が貫通孔57に収容されるとともに、弁体60が弁座58に接触する。このように、弁体60が弁座58に接触することによって貫通孔57が塞がれているときの浮き部材53の位置を、閉弁位置P1とする。
【0042】
浮き部材53が閉弁位置P1から装置下方向に移動すると、弁体60と弁座58との接触状態が解除されることによって、貫通孔57が塞がれた状態が解除される。このときの浮き部材53の位置を、開弁位置P2とする。
【0043】
ガイド部材54の軸方向に垂直な方向の幅は、浮き部材53の移動方向つまり装置上下方向に垂直な方向の幅とほぼ同じ大きさを有しているが、ガイド部材54の内面と浮き部材53との間には浮き部材53の移動を妨げることない程度の隙間が設けられている。このことによって、ガイド部材54は、浮き部材53の装置上下方向に沿う移動をガイドする。
【0044】
また、ガイド部材54には、ガイド部材54と浮き部材53との間に燃料Fの表面張力が作用することによって浮き部材53の移動が妨げられることがないように、複数の貫通孔54aが形成されている。ガイド部材54と浮き部材53との間に入り込んだ燃料Fが貫通孔54aを通って抜け出ることによって、浮き部材53の移動が妨げられることが抑制される。
【0045】
コイルばね55は、ガイド部材54の底壁部と浮き部材53との間に設けられている。コイルばね55は、浮き部材53を、開弁位置P2から閉弁位置P1に向かって付勢している。このため、浮き部材53は、通常状態では、閉弁位置P1にある。コイルばね55の付勢力は、大きくはなく、浮きバルブ装置50が振動またはゆれると、コイルばね55がたわみ、それゆえ、浮き部材53が閉弁位置P1と開弁位置P2との間を往復する程度の付勢力を有している。浮きバルブ装置50が振動またはゆれる場合としては、一例として、本実施形態の燃料供給システム10が搭載される電動車が例えば蛇行運転する場合がある。
【0046】
ケース部材56は、一端が開口する筒形状であり、本実施形態では一例として、図2,3に示すように、円筒形状である。ケース部材56は、内側にガイド部材54と浮き部材53とを収容するように、開口端がサージタンク52に固定されている。図4に示すように、サージタンク52には、装置上下方向の周方向に延びるフランジ部52aが形成されている。ケース部材56の開口端は、フランジ部52aに固定されている。固定方法としては、例えば、溶着や、接着剤を用いた固定がある。
【0047】
本実施形態では、浮きバルブ装置50は、燃料タンク15に形成される開口15aをサージタンク52が通った状態でフランジ部52aが開口15aの縁部に内側から固定されることによって、燃料タンク15に固定されている。
【0048】
サージタンク52の、装置上下方向Aに垂直な方向に沿う幅は、ガイド部材54の装置上下方向Aに垂直な方向に沿う幅よりも小さい。また、ガイド部材54の軸線はサージタンク52の軸線と重なっている。
【0049】
このため、ケース部材56とガイド部材54との間には、燃料Fを収容可能な燃料収容空間S2が設けられている。ケース部材56の内周面とガイド部材54の外周面との間には、一周つながる環状の隙間S3が設けられている。ケース部材56の底面と、ガイド部材54の下面との間には、隙間が設けられている。これら隙間が、燃料収容空間S2を構成している。
【0050】
図2に示すように、ケース部材56の周壁部56aには、貫通孔56bが複数形成されている。貫通孔56bは、ケース部材56の軸方向の中間位置に、周方向に並んでいる。図3に示すように、ケース部材56の底壁部56cには、貫通孔56dが複数形成されている。貫通孔56dは、底壁部56cの全体の略全域に散らばるように配置されている。全ての貫通孔56bの開口の大きさつまり開口面積の合計は、全ての貫通孔56dの開口の大きさつまり開口面積の合計よりも多きい。
【0051】
このように、レベリングバルブ装置100とフューエルカットオフバルブ装置110として用いられる浮きバルブ装置50は、貫通孔54a,56b,56d,57を介して、燃料タンク15内と第1の通路20とを連通する。
【0052】
レベリングバルブ装置とフューエルカットオフバルブ装置とは、燃料タンク15の上部に設けられている。このため、燃料タンク15内にたまった蒸発した気体状の燃料Fは、浮き部材53が開弁位置P2にあるときに、貫通孔56b,56d,54a,57を通って外部、つまり第1,4の通路20,35に排出される。
【0053】
つぎに、燃料供給システム10の動作を説明する。本実施形態では、燃料供給システム10が搭載される装置は、電動車である。電動車は、電動機のみで走行する走行モードと、内燃機関5を用いて走行する走行モードとを有している。内燃機関5を用いて走行する走行モードとしては、内燃機関5のみを用いて走行する走行モードと、内燃機関5と電動機とを併用する走行モードとがある。
【0054】
電動機のみで走行する走行モードでは、バルブ装置40は、制御部210の制御によって、第1の通路20を閉じる。このため、燃料タンク15内で蒸発した気体状の燃料Fは、レベリングバルブ装置とフューエルカットオフバルブ装置の浮き部材53が開弁位置P2にあるときに、貫通孔54a,56b,56d,57を通って第1,4の通路20,35内に排出されるが、バルブ装置40によって、キャニスタ18まで届かない。
【0055】
内燃機関5を用いて走行する走行モードでは、バルブ装置40は、第1の通路20を開く。内燃機関5で生じた負圧は、第2通路25とキャニスタ18と第1の通路20とを介して、燃料タンク15内に作用する。
【0056】
このため、燃料タンク15内の蒸発した気体状の燃料Fは、フューエルカットオフバルブ装置110とレベリングバルブ装置100の浮き部材53が開弁位置P2にあるときに、バルブ装置40を通過して、キャニスタ18にいたる。キャニスタ18で捕集された燃料は、内燃機関5の負圧によってパージされる。パージされた燃料Fは、第2の通路25を通って内燃機関5の燃焼室に供給される。
【0057】
燃料Fがフューエルカットオフバルブ装置110またはレベリングバルブ装置100の浮き部材53に浮力を与えて浮き部材53を閉弁位置P1に位置決めるのに十分な量の燃料Fが燃料タンク15内に収容されていると、浮き部材53は浮力によって閉弁位置P1に位置決められる。
【0058】
つぎに、燃料タンク15内に、電動機のみで走行する走行モードにおいて、燃料Fがフューエルカットオフバルブ装置下端の近傍にまで収容されている状態での動作を説明する。この状態の燃料Fの量は、フューエルカットオフバルブ装置の浮き部材53に浮力を与えるに十分な量ではない。このため、フューエルカットオフバルブ装置110の浮き部材53は、コイルばね55の付勢力によってのみ、閉弁位置P1に付勢されている。図5は、この状態のフューエルカットオフバルブ装置110とその近傍とを、図4と同様に切断して示す断面図である。なお、図5では、フューエルカットオフバルブ装置110が振動するなどして浮き部材53が開弁位置P2にある状態を示している。また、この状態では、レベリングバルブ装置100の浮き部材53は、燃料Fに浸かっている状態であるので、コイルばね55の付勢力と浮力とによって閉弁位置P1に位置決められている。
【0059】
この状態では、図5に示すように、燃料タンク15内の燃料Fの液面F1は、貫通孔57よりも下方に位置している。また、この状態では、電動機のみで走行する走行する走行モードであるので、バルブ装置40は、第1の通路20を閉じている。この状態で、電動車が蛇行運転などすることによって浮き部材53が揺れたり振動すると、フューエルカットオフバルブ装置110の浮き部材53が、コイルばね55の付勢力にあらがって、閉弁位置P1と開弁位置P2との間で移動するので、燃料タンク15内の蒸発した気体状の燃料Fは、フューエルカットオフバルブ装置110の貫通孔57を通って、第1の通路20内に排出される。
【0060】
なお、上記のように、レベリングバルブ装置100は、液体状の燃料Fに浸かっているので、燃料タンク15内の気体状の燃料は、レベリングバルブ装置100を通過することはない。
【0061】
バルブ装置40が第1の通路20を閉じているため、第1の通路20内に排出された蒸発した気体状の燃料Fによって、第1の通路20内に脈動が生じる。この脈動は、フューエルカットオフバルブ装置110とレベリングバルブ装置100の浮き部材53に対して、浮き部材53を開弁位置P2に押し下げるように作用する。しかしながら、レベリングバルブ装置100では、浮き部材53は、コイルばね51と浮力とによって付勢されて閉弁位置P1に位置決められているので、貫通孔57が開くことはない。
【0062】
電動車の揺れが大きく、それゆえ、燃料タンク15が傾くことによって燃料タンク15内の燃料が大きく揺れる場合がある。図4は、この状態を示している。図4に示すように、かつ、燃料タンク15がゆれたりすることがない通常状態で液面F1の位置がフューエルカットオフバルブ装置110のすぐ下にあるように燃料Fの液面F1が比較的高い位置ある場合では、燃料タンク15が傾くなどして燃料の液面位置が変化すると、この変化にともなって、液体状の燃料Fは、ケース部材56の周壁部56aに形成される貫通孔56bを通って燃料収容空間S2内に入り込む。燃料収容空間S2内に入り込んだ液体状の燃料Fは、貫通孔54aを通ってガイド部材54内に入り込む。燃料収容空間S2内に入り込んだ液体状の燃料Fによって、浮き部材53に浮力が作用する。
【0063】
図4に示すように、浮き部材53は、コイルばね55と浮き部材53に作用する浮力とによって、閉弁位置P1に付勢され、それゆえ、閉弁位置P1に位置決められる。
【0064】
燃料収容空間S2内に入り込んだ燃料Fは、ケース部材56によって保持されるので、燃料タンク15内の燃料Fの液面F1が下がっても、液面の変化に追随することなく、燃料収容空間S2内に保たれる。さらに、底壁部56cに形成される全ての貫通孔56dの開口面積の合計値が、周壁部56aに形成される全ての貫通孔56bの開口面積の合計値よりも小さいことによって、貫通孔56bを通して燃料収容空間S2内に入り込む燃料Fの量よりも、貫通孔56dを通って排出される燃料Fの量が少なくなるので、燃料収容空間S2内にたまった燃料Fは、燃料収容空間S2の外部に排出されにくくなる。
【0065】
このため、燃料タンク15内の燃料Fの液面F1が大きく変化する状態が続いても、浮き部材53は、コイルばね55の付勢力と浮力とによって、閉弁位置P1に付勢され続けるので、液面F1が大きく変化する状態であっても、浮き部材53が閉弁位置P1にある状態が維持される。このため、液体状の燃料Fが第1の通路20に排出されることが抑制される。
【0066】
燃料タンク15の姿勢が変化する状態がおさまると、フューエルカットオフバルブ装置110のケース部材56の周壁部56aに形成される貫通孔56bを通して燃料収容空間S2内に燃料Fが入らなくなるとともに、底壁部56cに形成される貫通孔56dを通して燃料Fが排出されるので、燃料収容空間S2内の燃料が次第に減っていく。
【0067】
燃料タンク15が揺れたりしない通常状態において、液面F1の位置がレベリングバルブ装置100のすぐ下に位置するような場合では、レベリングバルブ装置100は、上記したフューエルカットオフバルブ装置110と同様の動作を行う。
【0068】
このように構成される燃料供給システム10では、フューエルカットオフバルブ装置110がケース部材56を備えることによって、燃料収容空間S2内に液体状の燃料Fを蓄えることができるので、燃料タンク15内で燃料Fの液面F1が大きく変化するような状態であっても、浮き部材53に燃料Fによる浮力が作用し続ける。このため、液体状の燃料Fが外部に排出されることを抑制することができる。さらに、周壁部56aに貫通孔56bが形成されることによって、燃料Fの液面F1が位置変化するときに燃料Fが貫通孔56bを通りやすくなるので、液面F1の位置の変化が始まった早期に燃料収容空間S2内に燃料Fを満たすことができる。つまり、フューエルカットオフバルブ装置110とレベリングバルブ装置100の遮断性能をより一層高めることができる。言い換えると、燃料タンク15の遮断性能をより一層高めることができる。
【0069】
また、底壁部56cに形成される貫通孔56dの開口面積の合計値が、周壁部56aに形成される貫通孔56bの開口面積の合計値よりも小さいことによって、燃料収容空間S2内に燃料を保持しやすくなる。
【0070】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る燃料供給システムを、図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、フューエルカットオフバルブ装置110とレベリングバルブ装置100とが、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。
【0071】
図6は、本実施形態のフューエルカットオフバルブ装置110とその近傍とを、図4と同様に切断して示す断面図である。レベリングバルブ装置100も、図6と同じ構造である。図6に示すように、本実施形態では、ケース部材56には、内側から外側に向かって貫通孔56bを通って燃料Fが流れる出ることを防止する蓋部材120が設けられている。本実施形態では、蓋部材120は、すべての貫通孔56bに対して1つずつ設けられている。
【0072】
蓋部材120は、ケース部材56の内側において、貫通孔56bの上端の近傍に回動軸部材121によって回動可能に支持されている。蓋部材120は、貫通孔56bの開口よりも大きい。このため、蓋部材120は、ケース部材56の内側に向かってのみ開く。図6では、貫通孔56bを塞いでいる状態の蓋部材120を実線で記載し、貫通孔56bを開いた状態の蓋部材120を2点鎖線で記載している。蓋部材120は、ケース部材54の周壁部56aの内面に沿う形状である。このため、蓋部材120が閉じた状態では、蓋部材120は、貫通孔56aの全域を塞いだ状態で周壁部56aに密着する。
【0073】
ケース部材56の外側から燃料Fが入り込もうとすると、蓋部材120は、燃料Fに押圧されて、貫通孔56bを開く。ケース部材56の内側から外側に燃料Fが出ようとすると、蓋部材120は、燃料Fに押圧されて貫通孔56bを塞ぐ。
【0074】
本実施形態では、第1の実施形態の効果に加えて、燃料収容空間S2から燃料Fがより一層排出されにくくなるので、浮き部材53に対して浮力が作用する期間を長くすることができる。このため、浮き部材53を閉弁位置P1に長時間保持することができる。
【0075】
なお、蓋部材120は、複数の貫通孔56bのうちの、一部の貫通孔56bのみに設けられてもよい。蓋部材120の数を調整することによって、燃料収容空間S2内から液体状の燃料Fが排出される時間を調整することができる。
【0076】
なお、第1,2の実施形態では、第1の通路20は、燃料タンクと燃料タンクとの外側とを連通する通路の一例である。そして、バルブ装置40は、燃料タンクと燃料タンクとの外側とを連通する通路を開閉する開閉手段の一例である。また、燃料タンク15と、第1の通路20と、バルブ装置40と、フューエルカットオフバルブ装置110と、レベリングバルブ装置100とは、燃料タンク装置200を構成している。燃料タンク装置200は、本発明で言うタンク装置の一例である。また、第1,2の実施形態では、サージングタンク52は、開口としての貫通孔57が形成されるとともに、ケース部材が固定される壁部の一例である。
【0077】
また、第1,2の実施形態では、貫通孔56bと、貫通孔56dとは、互いに複数形成されたが、貫通孔56bの数と貫通孔56dの数とは、限定されるものではない。例えば、各々1つずつであってもよい。貫通孔56bによって開口する開口の大きさが、貫通孔56dによって開口する開口の大きさよりもおおきければ、燃料収容空間S2内に燃料Fを長期にわたって保持できるという効果が得られる。
【0078】
また、第1,2の実施形態では、浮きバルブ装置50は、燃料タンク装置200において、レベリングバルブ装置100と、フューエルカットオフバルブ装置110として用いられた。しかしながら、浮きバルブ装置50は、燃料Fを収容する燃料タンク15に設けられる以外の収容部に設けられてもよい。具体的には、燃料以外の液体を収容するタンクなどの収容部に用いられてもよい。燃料Fは、浮きバルブ装置50に対しては、液体の一例である。
【0079】
また、第1,2の実施形態では、浮き部材53を閉弁位置P1と開弁位置P2との間の移動をガイドする構造として、ガイド部材54が用いられた。浮き部材53の移動をガイドする構造は、ガイド部材54以外の構造であってもよい。
【0080】
また、第1,2の実施形態では、ケース部材56の周壁部56aに形成される第1の貫通孔としての貫通孔56bは、複数形成され、かつ、ケース部材56の底壁部56cに形成される第2の貫通孔としての貫通孔56dは、複数形成された。そして、全ての貫通孔56bの開口面積の合計値は、全ての貫通孔56dの開口面積の合計値よりも大きい。他の例としては、貫通孔56bが1つのみ設けられ、貫通孔56dが1つのみ設けられる場合は、1つの貫通孔56bの開口面積が、1つの貫通孔56dの開口面積よりも大きければ、第1,2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
要するに、貫通孔56bと貫通孔56dの数によらず、貫通孔56bによる開口面積が、貫通孔56dによる開口面積よりも大きければ、第1,2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
15…燃料タンク、20…第1の通路(連通路)、40…バルブ装置(開閉手段)、50…浮きバルブ装置、52…サージタンク(ガス収容器、壁部)、53…浮きバルブ装置、56a…周壁部、56b…貫通孔(第1の貫通孔)、56c…底壁部、56d…貫通孔(第2の貫通孔)、57…貫通孔(開口)、60…弁体、200…燃料タンク装置、P1…閉弁位置、P2…開弁位置、S3…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に配置されるガス収納器の下部に形成された開口を燃料の浮力を受けて塞ぐ浮きバルブ装置であって、
前記開口を塞ぐ弁体を有する浮き部材と、
前記浮き部材の側面に対向するように配置されて、前記浮き部材が前記開口を塞ぐ閉弁位置と前記開口を開く開弁位置との間で移動するようにガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の側面との間に隙間が設けられるように該ガイド部材および前記浮き部材を収納するケース部材とを備え、
前記ケース部材は、
前記ガイド部材の側面に対向する周壁部を有し、
前記周壁部には、前記ケース部材と前記ガイド部材との隙間に燃料を流入させる第1の貫通孔が形成される
ことを特徴とする浮きバルブ装置。
【請求項2】
前記ケース部材は、前記ガイド部材の下面に対向する底壁部を有し、
前記底壁部には、前記ケース部材と前記ガイド部材との隙間に燃料を流入させる第2の貫通孔が形成され、
前記第1の貫通孔の開口面積は、前記第2の貫通孔の開口面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の浮きバルブ装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、前記第1の貫通孔を覆う蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記ケース部材の外部から内部への燃料の流入を許容する一方、前記ケース部材の内部から外部への燃料の流出を禁止するように回動する回動軸を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の浮きバルブ装置。
【請求項4】
燃料を収容する燃料タンクと、該燃料タンクの蒸発燃料を吸着させるキャニスタと、前記燃料タンクと前記キャニスタとを連通する連通路の途中に設けられる開閉手段とを備えるタンク装置を更に備え、
前記浮きバルブ装置は、前記連通路の前記燃料タンク側の先端に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浮きバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79664(P2013−79664A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219348(P2011−219348)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】