説明

海底光ケーブル

【課題】光フアイバ心線に応力を与えることがなく、ケーブル内への水の浸入を防止することができる海底光ケーブルを容易に提供する。
【解決手段】縦添えされた金属製の扇形の分割個片によって構成されている円筒状の耐圧層20と、耐圧層20の外周に撚り合わせた抗張力線30と、抗張力線の外周を拘束する金属チューブ40と、金属チューブ40の外周を被覆している絶縁層50と、耐圧層内に挿通された単心または複数本の光ファイバ心線10、又はテープ心線10bの間隙に非弾性コンパウンド11を充填し、抗張力線の間隙に、弾性コンパウンド31を充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海底に敷設され光ファイバを通信線路とする海底光ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを伝送路とした海底光ケーブルにおいてルースチューブを用いた構造としては、例えば図2〜図3に示すようなものが提案されている。これらの構造を以下に簡単に説明すると、図2において1は光ファイバ心線10を挿通させた樹脂製のルースチューブ、30a、30b、30cはケーブルに加わる引張力に十分対応できるように、主として鋼線を撚り合わせて構成した抗張力体層(抗張力線)であり、ルースチューブ1を水圧から保護するための耐圧層を兼ねている。
【0003】
この抗張力体層30a、30b、30cは1層、または2層構造とされ、ケーブルの敷設時の負荷に十分耐える抗張力を付加し、かつ、障害に対してケーブルを保護する役目をする。40は抗張力体層30a、30b、30cの結束と気密、中継器への給電路となる金属層で、通常、銅またはアルミ等からなる金属テープを縦添え、溶接して縮径(絞り込み)し、チューブ状に形成したものである。また、50は海水との絶縁を目的とするポリエチレン等で形成する絶縁層(シース)である。図3において20は光ファイバ心線10を挿通させるとともに、光ファイバ心線10を水圧から保護するための耐圧層、30はケーブルに加わる引張力に十分対応できるように、主として鋼線を撚り合わせて構成した抗張力体層(抗張力線)である。この抗張力体層30は、ケーブルの敷設時の負荷に十分耐える抗張力を付加し、かつ、障害に対してケーブルを保護する役目をする。40は前記抗張力体層30の結束と気密、中継器への給電路となる金属層で、通常、銅またはアルミ等からなる金属テープを縦添え、溶接して縮径(絞り込み)し、チューブ状に形成したものである。また、50は海水との絶縁を目的とするポリエチレン等で形成する絶縁層(シース)である。
【0004】
また、一般的に海底に敷設される光ケーブルの場合は、何らかの障害によってケーブル内に海水が侵入した場合、その高い水圧によって侵入した海水がケーブルの長手方向に短時間で浸透し、ケーブルの通信機能を短い期間で遮断し大きな障害を残すことがないように、ケーブル内にはこのような水走りを阻止するためにコンパウンドが充填され、ケーブル内への水の浸入を防止するようにしている。
【0005】
例えば、図2に示す構造では、コンパウンド80が光フアイバ心線10の隙間に充填されている。図3に示す構造では、コンパウンド60が光フアイバ心線10の隙間に充填されている。また、各抗張力線30の隙間にもコンパウンド60と同様な性質を有するコンパウンド70が充填されている。図3に示す構造では、コンパウンドはケーブルの長手方向に充填部と、非充填部が交互に形成されている(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−208520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで図2のような従来のケーブルでは、プラスチック等の樹脂製のルースチューブを用いており、チューブに光ファイバ心線を挿通させるために、光ファイバ心線を送り出しながら、溶融した樹脂を押し出してルースチューブを形成している。光ファイバ心線が挿通されたルースチューブは一旦ドラムに巻き取られる。ドラムに巻き取られたルースチューブは再度引き出され、外層に抗張力線を拠り巻きする。この時、光ファイバ心線を送り出すのと同時に、溶融した樹脂を押し出しながらルースチューブを形成するため、ルースチューブは温度が低下すると共に経時的に収縮を起こし、ルースチューブ内の光ファイバ心線のスラック(弛み)量に影響を与える。ルースチューブの収縮量が大きい場合、ルースチューブ内の光ファイバ心線の弛み量が大きくなり伝送特性を変化させる可能性があるという課題がある。
【0007】
また、樹脂を押し出してルースチューブを形成し、一旦ドラムに巻き取るため、工程を連続してケーブル化する事が出来ず、1工程多くなることにより製造時間および費用が余計に掛かるという課題がある。これらの課題を解決するために、特許文献1においては図3のように、樹脂製のルースチューブを用いずに、光ファイバ心線を送り出しながら、同時に分割個片を送り出し、光ファイバ心線を挿通させて耐圧層を構成している。分割個片は耐圧層を構成すると共にルースチューブを兼ねている。分割個片は金属材質で構成されているためルースチューブを形成後、経時的に収縮を起こす事がないので内部の光ファイバ心線のスラック量を変化させる恐れがない。また、ルースチューブを形成後、一旦ドラムに巻き取る必要がないので、連続して次工程へ進める事ができるので、製造時間や費用を低減させる事ができるという優れた効果を有している。また、分割個片と光ファイバ心線の間隙には光ファイバ心線に応力を与えないコンパウンドを充填し、抗張力線の間隙にはケーブルが切断された際にケーブル内に水が浸入することを防止するためのコンパウンドを間欠的に充填している。
【0008】
ところで、分割個片でルースチューブを形成した光ファイバケーブルは、分割個片を合わせてチューブを形成しているため、継ぎ目が存在する。分割個片の上に抗張力体層(抗張力線)を撚り合わせ、これに金属テープを縦添え、溶接して縮径(絞り込み)し、チューブ状に形成した後は、分割個片の継ぎ目は締め付けられているため分割個片内のコンパウンドと抗張力線の間隙のコンパウンドが接触する可能性はない。しかし、金属チューブの上に絶縁層を押し出す際には、溶融した樹脂を押し出す際に熱が印加されるため、分割個片内のコンパウンドが膨張し、分割個片の継ぎ目を通って、抗張力線の間隙のコンパウンドと接触する恐れがある。ここで異種のコンパウンドが接触した場合、反応を起こしてコンパウンドが変性する可能性がある。このため、分割個片内のコンパウンドと抗張力線の間隙のコンパウンドを同一のコンパウンドとして、仮に両方のコンパウンドが接触しても反応を起こす事がないようにしていた。ところで分割個片内のコンパウンドは内部の光ファイバ心線に応力を与えないために抵抗力を小さく設定する必要がある。一方、抗張力線の間隙のコンパウンドは水の浸入を防止するために抵抗力を大きく設定する必要がある。
【0009】
ここでは、分割個片内のコンパウンドと抗張力線の隙間に充填されるコンパウンドとは同一種類のコンパウンドを用いており、コンパウンドの抵抗力が高くなりすぎると、光フアイバ心線に応力を与えて伝送特性を変化させる恐れがある。一方、コンパウンドの抵抗力が低くなりすぎると、抗張力線の隙間に充填されたコンパウンドが十分に水の浸入を防止することができない危険が生じる。このため、光フアイバ心線に応力を与えず、また水の進入を防止することができるようにバランスを取ってコンパウンドの抵抗力を設定する必要があった。
【0010】
本発明は係る課題を解決して、光フアイバ心線に応力を与えて伝送特性を変化させる危険性を回避するとともに、水の進入を防止することができ、なおかつコンパウンドの選定が容易にできる海底光ケーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の海底光ケーブルは、かかる問題点を解消することを目的としてなされたもので、縦添えされた金属製の扇形の分割個片によって構成されている円筒状の耐圧層と、前記耐圧層の外周に撚り合わせた抗張力線と、前記抗張力線の外周を拘束する金属チューブと、前記金属チューブの外周を被覆している絶縁層と、前記耐圧層内に挿通された単心または複数本の光ファイバ心線、又はテープ心線の間隙に非弾性コンパウンドを充填し、前記抗張力線の間隙に、弾性コンパウンドを充填した
ものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分割個片内の光ファイバ心線の間隙に非弾性コンパウンドを充填することによって光フアイバ心線に応力を与えることがなく、抗張力線の隙間に弾性コンパウンドを充填することによってケーブル内への水の浸入を防止することができる海底光ケーブルを提供できる。また、金属チューブの上に絶縁層を押し出す際に熱が印加され、分割個片内のコンパウンドが膨張して分割個片の継ぎ目から漏出しようとしても、分割個片の継ぎ目を弾性コンパウンドがブロックして押さえ付けるため、非弾性コンパウンドと接触する可能性を低減する事ができるので、異種材料が接触して反応して変性する可能性を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施例を示す海底光ケーブルを斜視図として示したもので、背景技術において説明をしたケーブルにおけると同一の部分には同一の名称を使用している。この図において符号10は中心部に挿通された複数本の光フアイバ心線、符号11はこの光フアイバ心線と同時に充填された非弾性コンパウンドである。符号11は非弾性コンパウンドなので光フアイバ心線に応力を与えることがないので伝送特性を変化させる危険がない。
【0014】
光フアイバ心線10は、予め数本の光フアイバ心線を拡大図Eに示しているようにテープ状に拘束している光フアイバテープ心線10bの形で供給することもできる。符号20は耐圧層を示し、本実施例では耐圧層20が3分割された扇形の個片によって構成されている。そして、この耐圧層20の外周には複数本の抗張力線30,30,・・を撚り巻きして耐圧層20を円筒状に固定している。符号31は抗張力線30の間隙に充填された弾性コンパウンドである。符号31は弾性コンパウンドなのでケーブル内への水の浸入を防止すると共に、耐圧層20を構成する分割個片の継ぎ目を押さえ付けて、耐圧層20内の非弾性コンパウンド11と接触する可能性を低減している。
【0015】
抗張力線30,30、・・はその外周を金属チューブ層40で固めて、その外周には絶縁層50が押し出し成型機によって形成されている。絶縁層50は絶縁性能と外部応力を防御するために中密度のポリエチレンによって構成されている。また、絶縁を取るために内層側を低密度のポリエチレンで構成し、外層側は外部応力を防御するために高密度のポリエチレンと、2層構造としてもよい。
【0016】
上記実施例において、光フアイバ心線と共に充填される符号11で示されるコンパウンドの抵抗力が高くなりすぎると、光フアイバ心線に応力を与えて伝送特性を変化させる恐れがあるため、符号11で示されるコンパウンドの抵抗力はあまり高くすることができない。また、抗張力線の隙間に充填された符号31で示されるコンパウンドの抵抗力を低くし過ぎると、符号31で示されるコンパウンドが十分に水の浸入を防止することができない危険が生じる。そこで、符号11で示されるコンパウンドは光ファイバ心線に応力を与えないために非弾性コンパウンドとした。具体的な非弾性コンパウンド11の稠度としては常温(25度C)で500以下とすることが好ましい。
【0017】
一方、符号31で示されるコンパウンドについては、抵抗力が低すぎる場合には水走りを十分に防止することができないので、適度の抵抗力を有する弾性コンパウンドとした。具体的には、常温(23度C)で0.5Nmm2以上の弾性率とすることが好ましい。
【0018】
このようにして形成したケーブルを往復ベンド試験(所定長のケーブルの一端部を固定し他端部を左右に所定回数屈曲しながらケーブルの伝送特性、および機械的な強度特性を試験する)にかけて種種の特性を調べた結果、ケーブルの敷設/回収作業で受ける光学的/機械的なストレスに対しても海底ケーブルとして必要とされる諸条件を満足するものであることが判明した。また、送水の防止の効果も十分であることも確認をした。
【0019】
以上説明したように、本発明の海底光ケーブルは、耐圧層内に挿通された複数本の光ファイバ心線、又はテープ心線の間隙に非弾性コンパウンドを充填し、抗張力線の間隙に、弾性コンパウンドを間欠的に充填している。このように、非弾性コンパウンドと弾性コンパウンドとの2種類のコンパウンドを用いることによって、光フアイバ心線に応力を与えることがなく、ケーブル内への水の浸入を防止することができる海底光ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の海底光ケーブルの一実施例を示す断面図である。
【図2】従来の海底光ケーブルの断面図である。
【図3】従来の海底光ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 光ファイバ心線、 10b 光ファイバテープ心線、 11 非弾性コンパウンド、 20 耐圧層、 30 抗張力線、 31 弾性コンパウンド、 40 金属チューブ層、 50 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦添えされた金属製の扇形の分割個片によって構成されている円筒状の耐圧層と、
前記耐圧層の外周に撚り合わせた抗張力線と、
前記抗張力線の外周を拘束する金属チューブと、
前記金属チューブの外周を被覆している絶縁層と、
前記耐圧層内に挿通された単心または複数本の光ファイバ心線、又はテープ心線の間隙に非弾性コンパウンドを充填し、
前記抗張力線の間隙に、弾性コンパウンドを充填したことを特徴とする海底光ケーブル。
【請求項2】
前記非弾性コンパウンドは、25度Cで500以下の範囲の稠度を有することを特徴とする請求項1に記載の海底光ケーブル。
【請求項3】
前記弾性コンパウンドは、23度Cで0.5Nmm2以上の弾性率であることを特徴とする請求項1に記載の海底光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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