説明

海水利用設備用水中の海洋生物殺滅方法及びその装置

【課題】海水利用システムに利用する海水の水質管理が容易で、塩素ガスやオゾン等の殺菌剤を添加しなくても用水中の海洋生物を殺滅でき、少なくとも定期的オーバーホールの周期を延長し得る海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法及びその装置を得る。
【解決手段】燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させ、当該酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水と混合して該取水海水のpHを5〜7.3に調整し、そのpH調整海水を海水利用システム用水として供給する。又、前記燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させる手段として、ガス拡散電極を備えた気液接触部を有するスクラバからなる燃焼排ガス浄化処理装置を用い、前記気液接触部に海水と燃焼排ガスを供給することにより気液接触反応させて排ガス浄化処理を行うと同時に、前記ガス拡散電極に水素ガスを供給し、当該ガス拡散電極表面で水素ガスと酸素との燃料電池発電反応を生じさせることにより前記酸性廃液を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法及びその装置、より具体的には、海水を冷却水として利用する火力・原子力発電所の復水器や冷却器、或いは海水をバラスト水として利用する船舶など海水利用システムの用水中に含まれる海洋生物を殺滅して用水中の海洋生物による汚染、損傷を防止する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、海水利用システム、例えば、火力・原子力発電所の復水器には、タービンを回したあとの蒸気を冷やすため海水が利用されているが、取水した海水は、通常、pH8.3前後で塩分濃度3.5%程度のものが多く、これには多種多様の海洋生物、例えば、細菌、植物プランクトン、動物プランクトン、魚貝類の幼生、シスト、卵等が含まれ、その中でも海水中のフジツボや二枚貝など強固な殻を持つ貝類等が取水ラインや放水ライン或いは復水器の細管内壁に付着、生育して海水の流れを悪くするだけでなく、細管を浸食し、最悪の場合には穴をあけて冷却用海水の細管から復水器内への漏洩を引き起こすという問題がある。また、海洋細菌は、伝熱管内面に粘着性のバイオフイルムを形成して浮遊生体の付着を促進させる他、伝熱部の伝熱性能を低下させ、さらには金属材の腐食等の障害を引き起こすという問題もある。
【0003】
従来においても、海洋細菌の殺滅や海洋生物の付着防止のため、塩素ガス等の殺菌剤を取水ライン中の海水に注入する方法(特許文献1)、取水された海水中に塩素系殺菌剤の代わりに二酸化炭素を注入し、海水のpHを5〜6に低下させる方法(特許文献2)などが提案されている他、防汚塗料等を取水ラインや放水ラインに塗布することが行われている。
【0004】
他方、船舶のバラスト水として使用された海水が海洋生態系の異なる寄航地で排水されることにより異種生物が異常繁殖し、当該海域の生態系の破壊が世界的な規模で進行しており、バラスト水の無害化処理技術の確立が緊急課題になっている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−110392号公報
【特許文献2】特許第3605128号公報
【特許文献3】特許第3901559号明細書
【特許文献4】特開2004−89770号公報
【非特許文献1】社団法人 日本海難防止協会発行「平成10年度船舶のバラスト水管理方策に係る調査研究報告書」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、海水中に含まれる多種多様の微小な海洋生物は、季節的にも個体種やその数の変動或いは海水の水質が変動するため、水質管理が困難となり、従来の殺菌剤の注入処理や防錆塗料の塗布等では、期待する効果が十分に得られないという問題があった。このため、発電所等では発電設備を定期的にオーバーホールし、クリーニングスポンジボール等による付着物の物理的な除去掃除や内壁の磨耗点検が行われているが、発電設備の停止から運転再開までに1〜2月もの長期間を要し、経済的に多大な負担を強いられているのが現状である。
【0007】
また、前記問題を解決するためには、海水中の細菌数をできるだけ10CFU/L(海水)以下まで殺菌処理することが求められている。
【0008】
従って、本発明の課題は、海水利用システムに利用する海水の水質管理が容易で、塩素ガスやオゾン等の殺菌剤を添加しなくても用水中の海洋生物を殺滅でき、少なくとも定期的オーバーホールの周期を延長し得る海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法及びその装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、海洋生物は、通常pH8前後の海水中で生育しているが、その生育環境のHイオン濃度が数10〜1000倍程度(pHで1〜3程度)変化するだけで、生命の維持機能が損なわれて生育が困難になり、まもなく斃死すること、並びに発電所のボイラー、ガスタービン、焼却炉、燃焼炉、燃料分解ガス化炉、溶鉱炉、焼結炉、焙焼炉、加熱炉、焼成炉、焼却炉その他の燃焼機器或いは内燃機関等から排出される排ガスには塵埃粒子及び煤塵(PM)等の他、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、炭素酸化物(COx)が含まれ、これらを気液接触反応により海水に溶解又は吸収させればpHの低い酸性廃液が得られ、しかも、この酸性廃液にはガス活性酸素種で殺菌力の強い・OHラジカルに加えて、海洋生物に対し急性毒性を示す二酸化炭素(重炭酸イオンや炭酸イオン)が含まれることに着目し、前記酸性廃液を海水利用システム用水としての海水に添加混合して用水のpH値を1〜3程度下げることを特徴とするものである。
【0010】
即ち、本発明に係る海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法は、燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させ、当該酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水と混合して該取水海水のpHを5〜7.3、好ましくは、5〜6.3に調整し、そのpH調整海水を海水利用システム用水として供給することを特徴とするものである。
【0011】
前記海水を用いて燃焼排ガスを気液接触反応させて酸性廃液を生成させる手段としては、例えば、特許文献3に記載の排ガス浄化装置や特許文献4に記載の排ガス浄化方法及びその装置を採用することができる。しかし、前者の排ガス浄化装置では、海水又は塩水を電解して酸性電解液とアルカリ性電解液を生成させ、その酸性電解液及び/又はアルカリ性電解液を排ガスと気液接触反応させ、後者のものでは、気液接触部内で電解反応を生じさせているため、圧力損失が大きく送風動力が過大となり、また、海水又は塩水の電解に要する消費電力が大きく経済的損失が多いという新たな問題が明らかとなった。
【0012】
この新たな問題を解決すべく研究した結果、気液接触させるスクラバの気液接触部を多孔質のガス拡散電極で構成し、これに水素ガスを供給する一方、海水を電解することなくそのまま気液接触部に供給して排ガスと気液接触反応させることによって、排ガス中の塵埃粒子及び煤塵(PM)等が除去されるだけでなく、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、炭素酸化物(COx)が可溶性物質となって海水に溶解して除去され、それと同時に微生物殺傷力の強い・OHラジカルを含む酸性液が廃液として容易に得られ、この酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水に添加混合してpH調整海水となし、これを用水として使用することにより用水中の海洋生物を効率よく死滅させ得ることを見出した。
【0013】
従って、本発明は、多孔質のガス拡散電極を備えた気液接触部を有するスクラバからなる燃焼排ガス浄化処理装置を用い、前記気液接触部に海水と燃焼排ガスを供給することにより気液接触反応させて排ガス浄化処理を行うと同時に、前記ガス拡散電極に水素ガスを供給し、当該ガス拡散電極で水素ガスと酸素との燃料電池発電反応を生じさせることにより酸性廃液を生成させ、当該酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水と混合して当該取水海水のpHを5〜7.3、好ましくは、5〜6.3に調整し、そのpH調整海水を海水利用システム用水として供給することを特徴とする海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法をも提供するものである。
【0014】
前記酸性廃液は、燃焼排ガス中のCOx、SOx、NOx等の有害物が、その浄化処理の過程で水に溶解して、HCO、SO2−、SO2−、NO、NO等陰イオンとH陽イオン、ならびに活性酸素種の・OHラジカルや重炭酸イオン及び炭酸イオンを含む酸性溶液として得られる。
【0015】
前記ガス拡散電極としては、0.1〜1.2Vの混成電位の電気化学的な反応が行える、市販のアルカリ電解質型水素燃料電池用活性炭素系多孔電極を使用することができる。
【0016】
前記pH調整海水の生成をより効率的に行うため、排ガス処理装置を流動する排ガスに赤外線乃至遠赤外線を放射する赤外線放射手段、前記混成電位のガス拡散電極を分極してそれらに電圧を印加する直流電力印加手段、及び前記多孔質ガス拡散電極と対向電極との間に生成する水素燃料電池発電により生じる電力を取り出す電力出力手段の少なくとも一種を適便選択して付加するようにしても良い。
【0017】
前記気液接触部は、通常、棚板の材料として無孔または多数の孔を有する平板が用いられ、これを円形状または矩形状に加工し、その中央部に開口を形成した中央開口型棚板と、当該中央開口型棚板とほぼ同じ面積を有する円形状または矩形状に加工され中央部に開口の無い中央無開口型棚板とを、気液が流通可能に、所定間隔を置いて交互に配置することにより構成するのが好ましく、これによって棚段の開口部面積の調節によりガス/液比率の調節が可能となり、また圧力損失を最小にする機構を設けることにより送風動力の省エネルギー化を図ることが可能であり、また、本発明に従って、棚板の材料としてガス拡散電極を用い、これにより面積がほぼ同じ中央開口型棚板と、中央無開口型棚板を構成するのが最適である。
【0018】
前記燃焼排ガスの浄化処理装置から排出される廃液中の固形物の除外手段としては、液中の固形物を分離、回収することができる手段であれば任意の物を使用でき、例えば、サイクロンなどの遠心分離器、微細加圧空気気泡による微粒子収着分離機構を備えた沈降濃縮装置(シックナー)及び濾過装置からなる群から選ばれた液中固形物の離回収手段を採用することができる。
【0019】
前記海水利用システム用水として利用したpH調整海水の廃液は、海水電解槽とエゼクタを用いて無害化処理し海洋排水基準に適合させた後、海洋に廃棄すれば良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて得られる酸性廃液を取水海水と混合してpH調整海水となし、これを海水利用システム用水として用いることにより、低pH化と当該酸性廃液に含まれる・OHラジカル及び二酸化炭素の作用とが相俟って取水海水中の海洋生物の活性が急速に失われ、海水利用システムの用水流動ライン系統への付着を防止でき、海水利用システムの海洋生物による汚染防止処理を高効率で行うことができ、バラスト水のように長時間保持される環境下では致死させて環境保全を行え、また、燃焼排ガスの浄化処理及び燃料電池反応による発電出力を得ることができ、さらにはその発電出力を利用することによって海水利用システムの省エネルギー効果を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ガス拡散電極を備えた気液接触部5を有するスクラバからなる燃焼排ガス浄化処理装置3を用い、前記気液接触部5に海水と燃焼排ガスを供給することにより気液接触反応させて排ガス浄化処理を行うと同時に、前記ガス拡散電極に水素ガスを供給して当該ガス拡散電極に拡散する水素ガスと燃焼排ガス中の酸素による発電反応を生じさせることにより酸性廃液を生成させ、当該酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水と混合して該取水海水のpHを5〜7.3に調整し、得られたpH調整海水を海水利用システム用水として利用することにより海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理を行う。
【実施例1】
【0022】
海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理システムの構成を示す図1において、1は海水利用システムの冷却器、2は水素ガス発生供給装置、3は燃焼排ガス浄化処理装置、4はスクラバ本体、5は気液接触部、6は浄化処理液貯留槽、7は排ガス供給口、8は水素ガス供給口、9は浄化排ガス排出口、10は海水散水ノズル、11は海水取水ポンプ、12はブロワ、13は廃液中の固形物回収装置、14はエゼクタ、15はドーナツ盤型棚板、16は円板型棚板、17は赤外線放射手段、18は赤外線放射体材、19は赤外線放射体材ハウジング、20は水素ガス供給ライン、21は炭化水素燃料供給ライン、22は空気供給ライン、23は水供給ライン、24は気液分離部、25は燃焼排ガス供給ライン、26は浄化排ガス排出ライン、27は回収固形物排出ライン、28は直流電源、29は導線、30は海洋、31は海水取水ライン、32は第一取水海水供給ライン、33は浄化処理廃液ライン、34は酸性廃液供給ライン、35は取水海水第二供給ライン、36はpH調整用混合器、37は用水液供給ライン、38は用水廃液排出ライン、39は中和・希釈用海水流入口、40は海水混合廃液排出ラインである。
【0023】
前記燃焼排ガス浄化処理装置3は、水素ガス発生供給装置2、スクラバ本体4、浄化処理液貯留槽6及び固形物回収装置13を備え、第一取水海水供給ライン32によりスクラバ本体4の上部に供給された海水とスクラバ本体4の下部に供給された燃焼排ガスとを気液接触部5で気液接触処理させて当該燃焼排ガス中の有害酸化物を還元又は可溶化し、スクラバ本体上部の気液分離部24で上昇気流中に含まれる液体を分離し、当該液体と分離された気体をスクラバ本体頂部の浄化ガス排出口を介して系外へ排出する一方、処理液としての海水は気液接触反応により有害酸化物を吸収して酸性化しスクラバ本体内を流下して浄化処理液貯留槽6に降下し、浄化処理廃液排出ラインを介して固形物回収装置13に送られ、そこで固液分離により固形分を除去された後、混合器36に送られる。
【0024】
前記スクラバ本体4は、内部に気液接触部5及び気液分離部24を備え、前記気液接触部5は、スクラバ本体4の胴部に上下方向に所定間隔をおいて交互に配設された複数のドーナツ盤型多孔棚板15と円板型多孔棚板16とで構成され、両多孔棚板15、16は、それぞれ直径1〜5mmの多数の孔が穿設されると共に、棚段面積がほぼ等しくなるように形成されている。前記棚段の開口比を変えることにより、液/ガス容積比を0.1/100〜7/100の広範囲で変えることができ、これにより圧力損失が比較的に少なくできると共に、省動力を図ることが可能である。なお、前記燃焼排ガス浄化処理装置3の気液接触操作は、本実施例では気液対向流で行っているが、気液並行流、気液並行流と気液対向流の組み合わせや、単段もしくは多段の塔で構成することができる。
【0025】
前記ドーナツ盤型多孔棚板及び円板型多孔棚板は、ガス拡散電極として機能させるため、炭素繊維の布を基体とし、これに触媒金属のナノサイズ微粒子を担持させたもので、通常、多孔質活性炭素及び/又は多孔質金属酸化物、撥水性賦与剤(例えば、フッ素樹脂)、親水性賦与剤(例えば、金属酸化物微粒子)などを配合してなる組成物を前記基体に塗布して焼結させたシート状成形物が用いられる。また、前記シート状成形物に替えて、アルカリ液電解質の燃料電池用電極として市販されているカーボン系のガス拡散電極シートで構成してもよい。
【0026】
前記ガス拡散電極は、多孔質活性炭素又は多孔質活性炭素及び多孔質金属酸化物に、白金族金属、金、銀、銅及びVIII族遷移金属から選択された少なくとも一種を単体又は合金のナノサイズの微粒子の形態で2.5〜5g(グラム)/m(シート)程度担持させた触媒金属含有シートを使用するのが好ましい。
【0027】
前記活性炭素には、活性炭粒子、活性炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンホーン、カーボンフラーレン、前記触媒金属を体内に胎持した微生物の炭化焼成物及び膨張化黒鉛等が、また、前記金属酸化物には、ハニカム状細孔のフォトエッチング酸化チタン、酸化チタンナノチューブ、珪藻、ゼオライト等がそれぞれ含まれ、前記活性炭素及び多孔質金属酸化物は必要に応じて単独で又は組合せて使用することができる。前記ガス拡散電極は、赤外線放射体材18としても使用できるほかに、その使用にあたって、収容容器とは、絶縁して取り付け、耐食金属のメッキ電極を併用してもよい。
【0028】
前記水素ガス供給手段は、メタンガス等の炭化水素燃料を分解して水性ガスを生成し、これを水素ガス供給ライン20を介してガス拡散電極、即ち、燃焼排ガス浄化処理装置3のドーナツ盤型多孔棚板及び円板型多孔棚板に供給するが、その水素の原料としては、炭化水素燃料として使用される天燃ガス、石油、石炭、褐炭、バイオマス、油井ガス、炭鉱排気等の熱分解ガス、工業プロセスの高炉炉頂ガス、転炉ガス、コークスガス、水電解ガス、燃料電池水素極排ガス、水素精製工程の排ガス、天燃水性ガス等、少なくとも水素(H)を含むガスを利用できる。
【0029】
前記回収手段としては、例えば、サイクロン、微細加圧空気気泡による微粒子収着分離機構を備えたシックナ及び濾過装置から選択された少なくとも一種を使用すればよく、これにより廃液中に浮遊する固形物を分離、回収してスクラバ廃液を清澄化して、清澄化した酸性廃液を混合器36に供給する。
【0030】
前記気液分離部24は、スクラバ本体4の上方に配設されたデミスター(ワイヤーメッシュデミスター)と、当該デミスターから落下する液体を受けて貯留する浄化処理液貯留槽とを備え、スクラバ内を上昇してきた気液並行流中に含まれる微粒子の液体成分をデミスターで捕捉してガス成分から分離し、その液体を浄化処理液貯留槽に収集及び貯留する一方、液体成分から分離されたガス成分はデミスターを通過し、浄化排ガスとして排ガス排出口から外部へ排出される。前記浄化排ガスは冬季に燃焼排ガスの添加又はそれとの熱交換等で加熱すると白煙の排出が解消され、景観の悪化を防ぐことが可能である。浄化処理液貯留槽は浄化処理廃液排出ラインを介して廃液処理装置及び/又は混合器36に接続してもよい。
【0031】
前記海洋生物殺滅処理システムは、基本的には、海水取水ポンプ11により海洋30から海水を取水し、海水取水ライン31により送給される取水海水の一部を海水利用システム用水として取水海水第二供給ライン35によりpH調整用混合器36に送給し、残部を第一取水海水供給ライン32により燃焼排ガス浄化処理装置3に供給し、そこで燃焼排ガスライン25から供給される燃焼排ガスを浄化処理して酸性廃液を生成し、その酸性廃液は浄化処理液貯留槽6から浄化処理廃液ライン33を介して固形物回収装置13に送られ、そこで酸性廃液中の固形物を分離除去された後、酸性廃液供給ライン34により前記混合器36に供給され、そこで取水海水第二供給ライン35からの取水海水と混合されて取水海水のpH調整を行い、生成したpH調整海水を海水利用システム用水として海水供給ライン23により海水利用システムの冷却器1に供給する。
【0032】
燃焼排ガス浄化処理装置内では、燃焼排ガス中のCOx、SOx、NOx等の有害物が下記海水との気液接触反応及びガス拡散電極の内部及び表面での触媒金属の水素分解作用の起電力により電解質である海水に溶解及び吸収され、浄化される。
=2H+2e (1)
+e=O (2)
+HO=3・OH (3)
O+e=N (4)
+HO=N+2・OH (5)
+e=N (6)
+HO=N+4・OH (7)
CO+e=CO (8)
CO+HO=HCO+e (9)
SO+e−=SO (10)
SO+HO=HSO+e (11)
SO+e=SO (12)
SO+HO=HSO+e (13)
+HO=HNO+HNO (14)
CO+2・OH=HCO (15)
CH+8・OH=HCO+5HO (16)
前記(1)〜(16)式に示される電圧が0.1〜1.2Vの混成電位及び直流低電圧の電気化学的反応と水和・溶解反応が並行して行われ、その浄化処理によりHCO、SO2−、SO2−、NO、NO等の陰イオンとH陽イオン、活性酸素種で殺菌力の強い・OHラジカル等を含む酸性廃液が生成される。
【0033】
なお、前記水素ガス供給手段は、下記(17)式の天然ガス(CH)の熱分解と(18)式のシフト反応により水性ガス(H、CO、CO)を生成させ、これを水素ガスとして供給する。また、PSA(圧力スイング吸着)方式の精製装置で精製した水素ガスを供給するようにしても良い。
2CH+O=2CO+4H (17)
2CO+2HO=2CO+2H (18)
海水利用システムの冷却器1に供給する用水としてのpH調整海水は、海洋生物の斃死及び殺菌性能の確保、排水の無害化処理の負荷の低減、水界面の金属腐食度の軽減対策が必要なことから、pH5〜7.3、好ましくは排水基準下限のpH5.8〜6.3に設定されるが、これは前記冷却器1へ供給されるpH調整海水の生存海洋生物固体数を測定し、これがpH調整海水の水質管理として予め設定された基準指標の数値を超えない範囲内に入るように、取水海水と前記pH調整海水との混合比率を調整することにより行われる。前記取水海水よりも低pH化したpH調整海水には、強酸化力の・OHラジカルが含まれるため、海洋生物の斃死・殺菌処理のほか、海洋排水の規制値のBOD,CODを低減する作用がある。また、必要に応じて、前記酸性廃液に石灰石を中和剤として添加して、pH5以上のpH調整海水を得ることも可能である。
【0034】
pH調整海水中では、海洋生物は従来生育していた弱アルカリ性(pH7〜8.4)の環境に比べてHイオン濃度で数10倍〜1000倍を超える変化、即ち、pH値で1〜3低い過酷な生育環境の変化に曝されるため、その生育機能が損なわれると同時に、それに含まれる二酸化炭素及び・OHラジカルの作用とが相俟って活性低下、更には致死するに至り、10CFU/L(海水)以下までの殺菌処理を行うことができる。
【0035】
海水利用システムの冷却器1に供給され、そこで熱交換して生じた海水利用システムからの用水廃液は、排水域の水質との格差を少なくするために、海洋30の水面下に配置されたエゼクタ内で中和・希釈用海水流入口39からの海水により中和及び希釈されて無害化され、海洋30に排水される。因みに、我国の現在の海洋排水の基準は、pH5.8〜8.6、COD150ppm以下、BOD150ppm以下、SS200ppm以下である。
【0036】
前記実施例では、原料を無尽蔵にある海水を利用しているが、天日塩、岩塩等の結晶塩を水に溶解させて得られる塩水、海水淡水化装置や地下のかん水等を海水取水に替えても適用できる。
【実施例2】
【0037】
図2に示す実施例は、燃焼排ガス供給ライン25、水素ガス供給ライン20及び前記スクラバの気液接触部5に、それぞれ赤外線放射手段17を配置して低pH化海水を得るようにしたものである。前記赤外線放射手段17は赤外線放射体材18を含み、燃焼排ガス供給ライン25及び水素ガス供給ライン20に配設された赤外線放射体材18は赤外線放射体材ハウジング19に収納されている。
【0038】
前記赤外線放射体材18としては、黒鉛シート、シート状成形物表面に酸化チタン微粒子等の溶射したセラミックス微粒子の溶射皮膜などを採用することができるが、加工や配置等の容易性の観点からは黒鉛シートが好適である。なお、シート状成形物表面に酸化チタン微粒子等の溶射皮膜を採用した場合でも、黒鉛と同程度の放射強度が得られる。黒鉛シートや酸化チタン溶射被覆等のシート状物は、その断面形状が渦巻き状になるように巻回し、円筒管等の容器内にガス流の方向に沿うように金属ラス平板材等でサンドイッチ状に挟んで、通風抵抗が少なく、ガスの通過可能な空間を形成するように構成され、煙道の配管途中のハウジング19内に収納して配置されている。
【0039】
前記スクラバの気液接触部5は、ドーナツ盤型棚板15と、当該ドーナツ盤型棚板15とほぼ同じ面積を有する円板型棚板16とを、気液が流通可能に、所定間隔を置いて交互に配置することにより棚段を構成され、各棚段の上部面に、各棚段を構成する平板と同じ形状と面積の赤外線放射体材18を固定したものが好適である。前記赤外線放射体材18として黒鉛シートを採用した場合、黒体の場合に比べて、その約40%相当の放射光の出力が可能である。放射波長2〜15μmでの黒鉛シートの放射光放射強度の平均値は、雰囲気温度25℃で約10W/m2・μm、227℃で約150W/m2・μm程度である。
【0040】
前記燃焼排ガス中の有害成分及び水分子は、放射波長が2〜15μmの赤外線をよく吸収する領域に位置していることから、波長2〜15μmの赤外線を放射する黒鉛シート等からの赤外線の被曝を受けて、その分子振動エネルギーが励起状態に達する活性化現象を生じる。また、スクラバへの供給ガスの保有熱は、その熱量に比例して赤外線放射体の放射強度を高める効果があり、これが前記活性化現象と相俟って排ガス浄化過程の電気化学的反応及び水和反応を促進し、燃焼排ガス中のCOx、SOx、NOx等の有害物が海水に容易に溶解又は吸収される。
【実施例3】
【0041】
図3に示す海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理装置は、燃焼排ガス浄化処理装置3の気液接触部5の棚板材料として、ガス拡散電極でドーナツ盤型棚板15a,15b及び円板型棚板16a,16bを形成し、これらを交互に所定間隔をおいて配設する一方、円板型棚板16a,16bをその上位に位置するドーナツ盤型棚板15a,15bとそれぞれ導線29a、29bを介して電気的に接続すると共に、円板型棚板16aをアノードとし,円板型棚板16bをカソードとして直流電源28に接続し、両電極間に直流電圧を印加するようにしたもので、他の構成は実施例1のものと同じである。
【0042】
本実施例では、ガス拡散電極の燃焼排ガス浄化処理装置3は、気液接触部5に海水、燃焼排ガス及びH2ガスが供給されると同時に、気液接触部5に、直流電圧の印加手段を備えて、気液接触部5の一対のガス拡散電極が、前記0.1〜1.2Vの混成電位を超える高い分極電位の直流電圧を印加する気液の電解処理の単独又は前記混成電位の電解処理との併用で、低pH化海水の生成が促される。
【実施例4】
【0043】
図4に示す海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理装置は、燃料電池発電出力機構を備え、二つのスクラバ本体を備え、第一スクラバ本体5Aと、その燃焼排ガス浄化処理装置が廃液貯留槽6上に立接された二つのスクラバ本体、即ち、第一スクラバ本体4A及び第二スクラバ本体4Bを備え、両スクラバ本体4A、4Bが廃液貯留槽6により連通され、第一スクラバ本体4Aの気液接触部5Aに配設されたガス拡散電極と第二スクラバ本体4Bの気液接触部5Bに配設されたガス拡散電極とは外部負荷41に電気的に接続されている。第一スクラバ本体4Aの気液接触部5Aは、水素ガス供給ライン20a及び第一取水海水供給ライン32によってそれぞれ水素ガスと海水を供給され、気液並行流で気液接触させた後、第一処理気液として第一処理気液排出筒42を介して廃液貯留槽6に排出する。廃液貯留槽6に流入した第一処理気液のガス成分は燃焼排ガス供給ライン25からの燃焼排ガスと混合されて廃液貯留槽6から第二スクラバ本体4Bに入り、水素ガス供給ライン20bから供給される水素ガスと混合された後、気液接触部5Bで海水散水ノズル10からの海水と向流で気液接触し、その気液接触反応により燃焼排ガス中の有害成分を除去され、前記有害成分を吸収及び/又は溶解した海水は低pHの酸性廃液となって廃液貯留槽6に流下し、貯留される。
【0044】
他方、第一スクラバ本体4Aの気液接触部5Aを構成するガス拡散電極と第二スクラバ本体4Bの気液接触部5Bを構成するガス拡散電極は、水性ガス(Hガス)と海水が気液並行流により供給される第一スクラバ本体4A側をアノードとし、水素ガスと海水が向流または並流で気液接触する第二スクラバ本体4B側をカソードとして燃料電池を構成し、その出力は外部負荷41に出力される。
【0045】
前記第一スクラバ本体4A内での反応は、水性ガス(H,CO,CO)が供給される場合は、該ガス中に酸素を含むことや、供給される海水に溶存酸素があることから、下記に示される反応が主なものとなる。
=2H+2e (1)
+e=O (2)
+HO=3・OH (3)
CO+e=CO (8)
CO+HO=HCO+e (9)
CO+2・OH=HCO (15)
【0046】
第二スクラバ本体4B内での反応は、実施例1に示す式(1)〜(16)等の諸反応が生じ、又、第二スクラバ本体4B内に電解質の海水が間断なく流通して存在することから、前記第一スクラバ本体4Aの水素の分解で起電力が生じて、その電子(e)が、前記アノードとカソードが導線で接続された外部に配置の負荷装置を経て第二スクラバ本体4Bに供給される回路が構成され、負荷装置41に直流の発電出力が供給される。この発電出力は、負荷装置41に昇圧素子及びDC/ACコンバータを組み込むことにより、所望の交流電力の出力が可能になる。
【0047】
前記第一スクラバ本体4Aを、図5に示すように、その下部に配置の供給口から供給される水性ガスのHガスと海水が、気液並行の上昇流を形成しながらアノードのガス拡散電極に供給されて、第一処理気液排出筒42から廃液貯留槽6内に排出される構成にすることもできる。この場合には、廃液貯留槽6を共通として、第一スクラバ本体4Aと第二スクラバ本体4Bが前記廃液貯留槽6を挟むかたちに、第一スクラバ本体4Aを最下部に配置して、廃液貯留槽6、第二スクラバ本体4Bの順に、鉛直に一体的にそれぞれが配置されるスクラバの構成になり、設置スペースが少なくて済む利点がある。前記スクラバの構成は、前記のほかに、廃液貯留槽を共通とする、共に気液並行流の第1スクラバ本体と第2スクラバ本体との組み合わせが可能である。
【実施例5】
【0048】
図5に示す海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理装置は、第一スクラバ本体4Aの上に廃液貯留槽6及び第二スクラバ本体4Bを鉛直方向に順次配設して一体化した構成を有し、その付帯設備として直流入出力電源装置43を備え、当該直流入出力電源装置43は連動スイッチ44を介して廃液貯留槽の液中に配設された電極(アノード45a、カソード45b)に接続されると共に、アノードとしての第一気液接触部4Aのガス拡散電極16a及びカソードとしての第二気液接触部5Bのガス拡散電極16bにそれぞれ接続されている。
【0049】
使用に際しては、直流入出力電源装置43により直流電圧を前記廃液貯留槽内の一対の電極対に印加するか、直流入出力電源装置43を介して第一気液接触部5Aと第二気液接触部5Bとの間に生成する直流電力を出力するかの何れかを行うことによって、海洋生物の斃死及び殺菌剤となる・OHラジカル及びHClOを含む低pH化海水を得ることができる。
【0050】
前記構成において、廃液33の電解処理が必要な場合には、開閉器を閉(ON)にして、スクラバの電極対に印加される電圧(直流入出力電源装置の電圧)は、廃液貯留槽内の電極対に印加される電圧に律速されるが、単に廃液貯留槽に配置の電極対のみの電解処理の場合の印加電圧に比べて、第一及び第二気液接触部5A、5Bの電極でHガス分解により生じる起電力相当分が減極(印加電圧の低減化)されて、印加電力が節減できる特徴を備えている。
【0051】
廃液貯留槽内の電極対における反応式は、塩水の電解処理の場合と同じで、下記に示される。
2HO+2e=2OH+H (19)
2Cl−2e=Cl (20)
Cl+HO=HClO+HCl (21)
【0052】
また前記構成にすることによって、廃液の電解で生成するH及びClガスは、第二スクラバで、下記の反応式でそれぞれ分解される。
=2H+2e (1)
Cl+2e=2Cl (22)
Cl+HO=HClO+HCl (21)
また、廃液貯留槽6のアノードで生成するClガスは、前記のほかに、海洋微生物の殺菌処理と排ガス中のNOx成分の塩素化による脱硝処理にも利用できる。
【0053】
他方、廃液の電解処理が不要な場合には、開閉器を開(OFF)にして、発電出力と・OHラジカルを含む低pH化海水を得ることができる。前記直流入出力電源装置は、実施例4と同様に、直流出力のほかに、昇圧素子とDC/ACコンバータを組み込むことによって所望の交流電力の出力が可能になる。
【実施例6】
【0054】
塩水電解処理液にCO2を溶解する際の赤外線放射の効果を確認するため、赤外線放射体として直径5m/mのアルミナ製セラミックスボールを用い、天日塩を水に溶解して得た天日塩水(体積2Lx2、塩水導電率4.5S/m前後)を多孔テフロン隔膜で仕切られた電解槽(容積2.5Lx2)に入れ、その電解槽の陰極室(溶液量約2L)内に、前記セラミックスボール約400gを浸漬した後、電解槽の塩水中に浸漬した電極間に直流電圧10Vを所定時間印加し、電解してpHを異にする試料を作成した。
【0055】
酸性液の作成は、印加電圧の極性を反転して得られる。試料の塩水は、毎回、新規なものと入れ替えた。対照区の試料は、前記セラミックスボールを排除して同じ条件下で電解処理することにより作成した。
【0056】
各試料には、通電を止めた電解槽の底部に配設した微細気泡発生器にCO2ガスボンベより純CO2ガスを2L/min又は2.5L/minで供給してバブリングさせ、表1に示す条件下でpHの変化を測定した。試料のpH値は、最初の2分間は、30秒ごとに1回、その後は、サンプリングの時間間隔を徐々に開けて、毎回約10mL量をサンプリングし、携帯型pH計(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。得られた結果を表2及び図6に示す。なお、対照区の試料(試料番号6)では陽極室のpHは6.5であった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
二酸化炭素は海水中に放出されると、水に溶けて水素イオンを放出するため(CO+HO → HCO + H → CO2− + 2H)海水のpHが低下するが、その反応過程に赤外線放射体を存在させると赤外線の作用を受けて二酸化炭素等が活性化されて水との反応が促進され、より多くの水素イオンが放出される結果、赤外線放射体を存在しない場合に比べてpHが一段と低くなることが判る。また、二酸化炭素は海洋生物に対して急性毒性を示し、pH6.5前後でも海水中の二酸化炭素濃度が高ければ海洋生物が致死することが知られているが、二酸化炭素を塩水中にバブリングさせると、上記結果から明らかなように、短時間でpH6前後に低下し、しかも、本発明方法によれば、燃焼排ガスを浄化処理して得られる酸性廃液には海洋生物に毒性を示す重炭酸イオンや炭酸イオンに加えて、ガス活性酸素種で殺菌力の強い・OHラジカルが含まれるため、酸性廃液を取水海水に添加混合することにより海洋生物の活力を低下させ、その付着を阻止することが可能となり、更には海洋生物を致死及び殺菌させることが可能になることが判る。
【実施例7】
【0060】
採取した海水(pH8.4、導電率4.52S/m、水温27.2℃)中の細菌をZoBell2216E培地を用いて24℃で5日間培養した後、直流電圧を印加して7.3V/3A及び4.8V/1.5Aの各条件下で電解処理して生菌数を計測した。なお、希釈率は等倍、10倍及び100倍希釈の三段階とした。得られた結果を表3に示す。表3中、生菌数の単位はCFU/mlである。
【0061】
【表3】

【0062】
また、電解室を多孔テフロン隔膜で二室に区画された海水電解槽(容積:2.5Lx2)とタンク(容積:100L)を含む海水循環系を構成し、前記タンクに採取した海水約50L(pH8.4、導電率4.52S/m、水温27.2℃)を入れ、当該海水をポンプにより流量10L/minで循環させながら電極間に直流電圧を印加し、フジツボ幼生の斃死処理を行った。
【0063】
【表4】

表4中、フジツボ幼生の生存数の単位はN/Lであり、分母の数字が幼生数、分子側の数字が生残数である。また、電流3.0Aの欄の取水海水は全てノープリウス幼生のみを含み、電流1.5Aの欄の取水海水はノープリウス幼生とキプリス幼生を含む。
【0064】
表3及び表4の結果から海水を電解処理することにより海水中の微生物及びフジツボの幼生など海洋生物を短時間で殺滅できることが判る。これは海水の電解によりHClOが生成され、これが殺菌剤として作用するためであると考えられる。従って、燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させる過程或いは該酸性廃液を取水海水に添加混合して海水利用システムに供給するまでの過程で電解処理を付加することにより、取水海水中の海洋生物は重炭酸イオンや炭酸イオン及びガス活性酸素種で殺菌力の強い・OHラジカルに加えて、殺菌作用のあるHClOの作用を受けることにより、活性を低下し、殺滅されることになり、海水利用システムへの海洋生物の付着を阻止し得ることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】海洋生物の防汚処理システムの構成模式図
【図2】スクラバの気液接触部及び供給ガスの煙道に赤外線放射体を配置する模式図
【図3】気液接触部にガス拡散電極の電極対を備えたスクラバの構成模式図
【図4】燃料電池発電出力機構を備えた低pH海水生成システムの構成模式図
【図5】スクラバの電極対に直流電力の入出力手段を配置するシステムの構成模式図
【図6】塩水電解処理液へのCO2溶解における赤外線放射効果を示すデータ
【符号の説明】
【0066】
1: 冷却器
2: 水素ガス発生供給装置
3: 燃焼排ガス浄化処理装置
4、4A、4B: スクラバ本体
5、5A、5B: 気液接触部
6: 浄化処理液貯留槽
7: 排ガス供給口
8: 水素ガス供給口
9: 浄化排ガス排出口
10: 海水散水ノズル
11: 海水取水ポンプ
12: ブロワ
13: 固形物回収装置
14: エゼクタ
15、15a、15b: 中央開口型棚板
16、16a、16b: 中央無開口型棚板
17: 赤外線放射手段
18: 赤外線放射体材
19: 赤外線放射体材ハウジング
20、20a、20b: 水素ガス供給ライン
21: 炭化水素燃料供給ライン
22: 空気供給ライン
23: 水供給ライン
24: 気液分離部
25: 燃焼排ガス供給ライン
26: 浄化排ガス排出ライン
27: 回収固形物排出ライン
28: 直流電源28
29、29a、29b: 導線
30: 海洋
31: 海水取水ライン
32、32a、32b: 第一取水海水供給ライン
33: 浄化処理廃液ライン
34: 酸性廃液供給ライン
35: 取水海水第二供給ライン
36: 混合器
37: 用水液供給ライン
38: 用水廃液排出ライン
39: 海水流入口
40: 海水混合廃液排出ライン
41: 外部負荷
42: 第一処理気液排出筒
43: 直流入出力電源装置
44: 連動スイッチ
45: 電極
45a: アノード
45b: カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させ、当該酸性廃液を海水利用システム用水の取水海水と混合して該取水海水のpHを5〜7.3に調整し、そのpH調整海水を海水利用システム用水として供給することを特徴とする海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理方法。
【請求項2】
前記燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させる手段として、電解装置を用い、当該電解装置により海水又は塩水を電解して酸性電解液とアルカリ性電解液を生成させ、その酸性電解液及び/又はアルカリ性電解液を排ガスと気液接触反応させることにより前記酸性廃液を生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成させる手段として、ガス拡散電極を備えた気液接触部を有するスクラバからなる燃焼排ガス浄化処理装置を用い、前記気液接触部に海水と燃焼排ガスを供給することにより気液接触反応させて排ガス浄化処理を行うと同時に、前記ガス拡散電極に水素ガスを供給し、当該ガス拡散電極表面で水素ガスと酸素との燃料電池発電反応を生じさせることにより前記酸性廃液を生成させる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記気液接触部に配設された少なくとも二つのガス拡散電極間に直流電圧を印加して低pH化した酸性廃液を生成させる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼排ガス浄化処理装置が、少なくとも二つのスクラバと、両スクラバを連通させる廃液貯留槽とを備え、前記一方のスクラバの気液接触部に配設されたガス拡散電極と前記第二スクラバ本体4Bの気液接触部に配設されたガス拡散電極とを外部負荷に電気的に接続すると共に、前記一方のスクラバの気液接触部に水素ガスと海水とを気液並行流で供給する一方、前記第一スクラバ本体4Aの排出ガスと前記燃焼排ガスとの混合ガスを海水と気液向流又は気液並行流で供給する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記廃液貯留槽の廃液中にガス拡散電極を配設し、当該ガス拡散電極を前記スクラバの気液接触部に配設された各ガス拡散電極と対としてそれぞれ電気的に接続し、対となるガス拡散電極間に直流電圧を印加して前記酸性廃液を生成させる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記燃焼排ガスの供給側流路内及び前記スクラバの気液接触部に波長2〜15μmの赤外線を放射する赤外線放射材を配置して前記酸性廃液を生成させる請求項1〜6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記取水海水と前記低pH化海水の混合比率を、前記海水利用システムに供給される前記pH調整海水の生存海洋生物固体数に基づいて、予め設定された基準指標の数値の範囲内で設定する請求項1〜7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記気液接触部に供給される水素ガスは、炭化水素燃料を分解して得られる水性ガスである請求項3〜8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
燃焼排ガスを海水と気液接触反応させて酸性廃液を生成する燃焼排ガス浄化処理装置と、海水を取水して海水利用システムに送給する取水手段と、当該取水手段から供給される取水海水と前記燃焼排ガス浄化処理装置から排出される酸性廃液とを混合してpH5〜7.3の海水利用システム用水に調整する用水調整手段とからなる海水利用システム用水中の海洋生物殺滅処理装置。
【請求項11】
前記燃焼排ガス浄化処理装置が、燃焼排ガスと海水とを気液接触させる少なくとも一つの気液接触手段を有し、当該少なくとも一つの気液接触手段が下部に燃焼排ガス導入口を、上部に排ガス排出口をそれぞれ備えた縦型スクラバと、海水又は塩水を電気分解して酸性電解液及びアルカリ電解液を生成し、該酸性電解液及び/又はアルカリ性電解液をそれぞれ前記気液接触手段に供給する酸性液供給ライン及びアルカリ液供給ラインを備えた電解装置とを備えてなる請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記燃焼排ガス浄化処理装置が、下部に燃焼排ガス導入口を、上部に燃焼排ガス排出口をそれぞれ備え、前記燃焼排ガスと海水とを気液接触させる少なくとも一つの気液接触部を有する縦型スクラバと、水素ガスを生成する水素ガス生成手段とからなり、前記気液接触部がガス拡散電極を備え、当該ガス拡散電極で前記水素ガス生成手段から供給される水素ガスとスクラバ内を流動する排ガス中の酸素とを反応させて電気エネルギーに変換する燃料電池を構成してなる請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記気液接触部が少なくとも二つのガス拡散電極を備え、当該両ガス拡散電極間に直流電圧を印加するようにしてなる請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記燃焼排ガス浄化処理装置が、少なくとも二つのスクラバと、両スクラバを連通させる廃液貯留槽とを備え、前記一方のスクラバの気液接触部に配設されたガス拡散電極と前記第二スクラバ本体4Bの気液接触部に配設されたガス拡散電極とを外部負荷に電気的に接続すると共に、前記一方のスクラバの気液接触部に水素ガスと海水とを気液並行流で供給する一方、前記第一スクラバ本体4Aの排出ガスと前記燃焼排ガスとの混合ガスを海水と気液向流又は気液並行流で供給するようにしてなる請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記廃液貯留槽の廃液中に少なくとも一つのガス拡散電極を配設し、当該ガス拡散電極を前記スクラバの気液接触部に配設された各ガス拡散電極と対としてそれぞれ電気的に接続し、対となるガス拡散電極間に直流電圧を印加するようにしてなる請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記燃焼排ガスの供給側流路及び前記スクラバの気液接触部に波長2〜15μmの赤外線を放射する赤外線放射材を配置してなる請求項10〜15のいずれか一に記載の装置。
【請求項17】
前記気液接触部にHガスを供給する手段が、炭化水素燃料を分解して水性ガスを生成する装置である請求項12〜16の何れか一に記載の装置。
【請求項18】
前記ガス拡散電極が、多孔質活性炭素又は多孔質活性炭素及び多孔質金属酸化物に、白金族金属、金、銀、銅及びVIII族遷移金属からなる群から選ばれた少なくとも一種の単体又はその合金の微粒子を担持させてなるシートからなる請求項12〜16の何れか一に記載の装置。
【請求項19】
前記気液接触部が、面積がほぼ同じ中央開口型棚板と中央無開口型棚板とで構成され、前記中央開口型棚板と中央無開口型棚板が相互に所定間隔を於いて交互に配置されている請求項12〜18の何れか一に記載の装置。
【請求項20】
前記燃焼排ガス浄化処理装置が、サイクロンなどの遠心分離器、微細加圧空気気泡による微粒子収着分離機構を備えた沈降濃縮機、及び濾過装置からなる群から選ばれた液中固形物の分離回収手段を備え、その分離液を気液接触部に供給してなる請求項10〜19の何れか一に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−112996(P2009−112996A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291727(P2007−291727)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591205695)
【Fターム(参考)】