説明

浸せき試験用自動測定システム

【課題】測定の省力化及びシステム構成の最小化が可能となる浸せき試験用自動測定システムを提供する。
【解決手段】浸せき試験用自動測定システム1は、ゴム試験片Pを自動移送する移送部2と、移送部2によってゴム試験片Pが供給され当該ゴム試験片Pの長さを測定する長さ測定部3と、長さ測定部3による測定後にて移送部2によってゴム試験片Pが供給され当該ゴム試験片Pの気中重量及び水中重量を測定することによりゴム試験片Pの質量及び体積を測定する質量体積測定部5と、移送部2、長さ測定部3及び質量体積測定部5の動作を制御すると共に長さ測定部3及び質量体積測定部5で測定した測定値のそれぞれを取り込んで外部出力するコントローラ20と、を備えている。また、長さ測定部3は、移送部2によるゴム試験片Pの移送中にゴム試験片Pの長さを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸せき試験用自動測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば潤滑油等の各種液体(以下、単に「潤滑油等」という)の開発に際しては、潤滑油等が加硫ゴムや熱可塑性ゴム等の樹脂材へ及ぼす影響を求める必要があり、一般的に、樹脂材に対して浸せき試験が行われる。このような樹脂材の浸せき試験は、通常、JIS K 6258の規定に準拠して実施されており、複数の樹脂材について潤滑油等に浸せきする前と浸せきした後とにおける物性変化が測定される。そこで、従来、樹脂材の浸せき試験においては、樹脂材の物性を測定するための測定手段として、非特許文献1に記載された長さ測定手段(レーザ測長器)や、非特許文献2に記載された質量測定手段(分析天秤)が用いられている。
【0003】
非特許文献1の長さ測定手段では、例えば、樹脂材を保持具にセットして保持し、この状態で樹脂材の長さを測定する。続いて、測定値を手動又は一部自動で記録した後、樹脂材を保持具から取り外す。そして、かかる樹脂材のセット、測定及び取外しを複数の樹脂材に対して繰り返し実施し、これにより、複数の樹脂材の長さ測定を行っている。
【0004】
また、非特許文献2の質量測定手段では、例えば、大気中で樹脂材の重量を気中重量として測定し、当該測定値を手動又は一部自動で記録すると共に、樹脂材を水槽内の水に浸水させ、この状態で樹脂材の重量を水中重量として測定し、当該測定値を手動又は一部自動で記録する。そして、これら気中重量及び水中重量の記録を複数の樹脂材に対して繰り返し実施し、これにより、複数の樹脂材の質量及び体積(密度)測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「レーザ式外径変位センサカタログ」、キーエンス社製、2010年度版、p.696〜697
【非特許文献2】株式会社 島津製作所ホームページ “分析天びん”[平成22年8月13日検索]、インターネット<URL:http://www.shimadzu.co.jp/balance/products/p01/a-aux.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したような従来技術では、前述のように、樹脂材の物性それぞれを別途に手動又は一部自動で測定する必要がある。さらに、複数の測定手段が独立して存在するために、システム構成が煩雑になる場合がある。よって、近年、樹脂材の浸せき試験においては、測定に対し人の介在を少なくして省力化することができ、且つシステム構成の最小化が可能な自動測定システムの開発が強く求められている。
【0007】
そこで、本発明は、測定の省力化及びシステム構成の最小化が可能となる浸せき試験用自動測定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る浸せき試験用自動測定システムは、樹脂材の浸せき試験に用いられ、樹脂材の物性を測定するための浸せき試験用自動測定システムであって、樹脂材を自動移送する移送手段と、移送手段によって樹脂材が供給され、当該樹脂材の長さを測定する長さ測定手段と、長さ測定手段による測定後にて移送手段によって樹脂材が供給され、当該樹脂材の気中重量及び水中重量を測定することにより樹脂材の質量及び体積を測定する質量体積測定手段と、移送手段、長さ測定手段及び質量体積測定手段の動作を制御すると共に、長さ測定手段及び質量体積測定手段で測定した測定値のそれぞれを取り込んで外部出力する制御手段と、を備え、長さ測定手段は、移送手段による樹脂材の移送中に当該樹脂材の長さを測定することを特徴とする。
【0009】
この浸せき試験用自動測定システムでは、移送手段によって、樹脂材が自動移送されて長さ測定手段及び質量体積測定手段に自動的に供給される。そして、制御手段によって、長さ測定手段及び質量体積測定手段で測定した測定値のそれぞれが一括して自動的に取り込まれて外部出力される。従って、浸せき試験における樹脂材の長さ、質量及び体積の測定において、人の介在を少なくして省力化することが可能となる。また、長さ測定手段にあっては、移送手段による樹脂材の移送中に樹脂材の長さを測定する、すなわち、移送手段による自動移送に関連させて構成されている。従って、システム構成の効率性及び合理性を高め、システム構成の最小化が可能となる。
【0010】
また、移送手段によって樹脂材が供給され、当該樹脂材の硬さを測定する硬さ測定手段をさらに備え、制御手段は、硬さ測定手段の動作を制御すると共に、硬さ測定手段で測定した測定値を取り込んで外部出力することが好ましい。この場合、浸せき試験における樹脂材の硬さについても省力化して測定することができる。
【0011】
また、質量体積測定手段による測定前にて移送手段によって樹脂材が供給され、当該樹脂材を洗浄する洗浄手段を備えたことが好ましい。これにより、例えば潤滑油等に浸せき後に樹脂材の物性を測定する場合において、樹脂材の質量及び体積を測定する際に樹脂材に付着又は浸透した潤滑油等が確実に除去されることとなり、樹脂材の質量及び体積を精度よく測定することができる。
【0012】
このとき、洗浄手段による洗浄後にて樹脂材にエアを吹き付けることにより、樹脂材に付着した洗浄溶剤を少なくとも除去するエア吹付け手段を備えたことが好ましい。この場合、樹脂材の質量及び体積を測定する際、樹脂材に付着した洗浄溶剤が確実に除去されることとなり、樹脂材の質量及び体積を一層精度よく測定することができる。
【0013】
また、質量体積測定手段は、樹脂材の浸水を複数回繰り返すと共に、当該複数回目の浸水のときに水中重量を測定することが好ましい。このように複数回目の浸水のときに水中重量を測定することで、樹脂材の水中重量測定時に樹脂材に気泡が付着するのを抑制することができ、樹脂材の水中重量を精度よく測定することが可能となる。
【0014】
また、質量体積測定手段は、浸水させた樹脂材に振動を付加することが好ましい。このように浸水させた樹脂材に振動を付加することで、樹脂材の水中重量測定時に樹脂材に付着した気泡を除去することができ、樹脂材の水中重量を精度よく測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定の省力化及びシステム構成の最小化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る浸せき試験用自動測定システムの概略を示すブロック図である。
【図2】図1の浸せき試験用自動測定システムが用いられる浸せき試験を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1の浸せき試験用自動測定システムにおける動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1の浸せき試験用自動測定システムにおける動作の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る浸せき試験用自動測定システムの概略を示すブロック図である。図1に示すように、浸せき試験用自動測定システム1は、加硫ゴムや熱可塑性ゴム等で形成された矩形板状の樹脂材であるゴム試験片Pの浸せき試験に用いられるものである。そこで、まず、この浸せき試験について説明する。
【0019】
図2は、浸せき試験の概要を示すフローチャートである。図2に示すように、ここでの浸せき試験は、「JIS K 6258」の規定に準拠して実施される試験であって、ゴム試験片Pを潤滑油等に浸せきし、浸せき前と浸せき後との寸法、質量、体積、引張強度、伸びの変化を測定することにより、ゴム試験片Pにおける潤滑油等による影響(耐液性)を求める。具体的には、この浸せき試験では、まず、ゴム試験片Pが作成される(S1)。ゴム試験片Pの寸法は、例えば、短手方向の長さ20mm、長手方向の長さ50mm、厚さ2.0mm±0.2mmとされる。
【0020】
続いて、浸せき前測定としてゴム試験片Pの物性(長さ、質量、体積、硬さ、厚さ、引張強度及び伸び等)が測定され、その測定値が記録される(S2)。続いて、試験目的及び製品使用目的に応じて、所定温度の潤滑油等にゴム試験片Pが所定時間浸せきされる(S3)。続いて、ゴム試験片Pが取り出されて洗浄された後、浸せき後測定としてゴム試験片Pの物性が再度測定され、その測定値が記録される(S4,S5)。
【0021】
続いて、浸せき前測定及び浸せき後測定の各測定値から、浸せき前後でのゴム試験片Pの物性変化が算出される。そして、上述の浸せき前測定から物性変化の算出までの一連の工程が複数のゴム試験片Pに行われ、これにより、複数のゴム試験片Pの物性変化が結果報告されることとなる(S6)。
【0022】
図1に戻り、本実施形態の浸せき試験用自動測定システム1は、上記浸せき試験の浸せき前測定及び浸せき後測定においてゴム試験片Pの物性(ここでは、長さ、質量、体積及び硬さ)を測定するものである。浸せき試験用自動測定システム1は、移送部2、長さ測定部3、洗浄部4、質量体積測定部5及び硬さ測定部6を有する本体部10と、本体部10における動作を制御し且つ測定値を一括的に取り込んで外部出力するコントローラ20と、を備えている。
【0023】
移送部2は、ゴム試験片Pを自動移送するものであり、ターンテーブル7と、アーム8と、を有している。ターンテーブル7は、円板状を呈し、複数のゴム試験片Pが周方向に沿って載置可能に構成されている。このターンテーブル7は、その中心を回転軸として回転することで、ゴム試験片Pを周方向に沿って自動移送する。アーム8は、ゴム試験片Pを把持すると共に、ゴム試験片Pを移送経路Rに沿って自動移送する。
【0024】
長さ測定部3は、ゴム試験片Pの長さを測定するためのものである。ここでは、長さ測定部3としてレーザ測長器が用いられており、照射部3aから照射された平行レーザ光の中にアーム8によってゴム試験片Pが供給され、平行レーザ光の遮断状態が受光部3bにて検知され、これにより、ゴム試験片Pの長さが測定される。
【0025】
また、特に本実施形態の長さ測定部3にあっては、アーム8によるゴム試験片Pの移送経路R中に介在するよう配置されている。つまり、長さ測定部3は、アーム8で把持されて自動移送中のゴム試験片Pの長さを当該自動移送を中断することなく検出可能となっている。この長さ測定部3は、測定したゴム試験片Pの長さについての測定値をコントローラ20へ出力する。
【0026】
洗浄部4は、長さ測定部3による長さの測定後で質量体積測定部5による質量及び体積の測定前において、ゴム試験片Pを洗浄するためのものである。ここでの洗浄部4では、洗浄溶剤中にゴム試験片Pがアーム8によって供給され、この洗浄溶剤によって、上記S3にてゴム試験片Pに付着又は浸透した潤滑油等が洗浄され除去される。溶剤としては、ゴム試験片Pに付着した潤滑油等を洗浄又は除去できれば特に限定されるものではなく、好ましくは、炭化水素系溶剤が挙げられる。中でも炭素数5〜9程度の飽和炭化水素を主体とする炭化水素系溶剤がより好ましく、具体的には、石油系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
【0027】
質量体積測定部5は、長さ測定部3による長さの測定及び洗浄部4による洗浄後において、ゴム試験片Pの質量及び体積を測定するためのものである。この質量体積測定部5では、アーム8によりゴム試験片Pが気中重量測定部5aに供給されて気中重量が測定された後、アーム8によりゴム試験片Pが水中重量測定部5bに供給されて水中重量が測定される。
【0028】
気中重量測定部5aは、ゴム試験片Pを大気中に位置させた状態で当該ゴム試験片Pの重量を測ることで気中重量を測定する。水中重量測定部5bは、ゴム試験片Pを水に浸水させた状態で当該ゴム試験片Pの重量を測ることで水中重量を測定する。ここでの水中重量測定部5bでは、ゴム試験片Pの浸水が2回(複数)行われ、当該2回目の浸水のときに水中重量が測られている。
【0029】
また、この水中重量測定部5bは、浸水させたゴム試験片Pに振動を付加する振動付加機構を含んでおり、これにより、浸水させたゴム試験片Pの周囲の気泡が除去されるようになっている。この水中重量測定部5bは、測定したゴム試験片Pの気中重量及び水中重量を、ゴム試験片Pの質量及び体積に関する測定値としてコントローラ20へ出力する。
【0030】
硬さ測定部6は、ゴム試験片Pの硬さ(硬度)を測定するためのものである。ここでの硬さ測定部6では、ターンテーブル7によりゴム試験片Pが供給され、ターンテーブル7上のゴム試験片Pの硬さが測定される。この硬さ測定部6は、測定したゴム試験片Pの硬さについての測定値をコントローラ20へ出力する。なお、硬さとしては、例えば国際ゴム硬さ(IRHD(International Rubber Hardness Degree))やデュロメータ硬さ等が用いられる。
【0031】
また、本体部10は、エア吹付け部9をさらに備えている。エア吹付け部9は、長さ測定部3による長さの測定前で洗浄部4による洗浄後において、ゴム試験片Pにエアを吹き付けてゴム試験片Pに付着した洗浄溶剤を少なくとも除去する。
【0032】
コントローラ20は、移送部2、長さ測定部3、質量体積測定部5、硬さ測定部6及びエア吹付け部9に接続されており、これらの動作を制御する。これと共に、コントローラ20は、長さ測定部3、質量体積測定部5及び硬さ測定部6で測定した測定値のそれぞれを取り込み、外部出力する。また、ここでのコントローラ20は、質量体積測定部5で測定した気中重量及び水中重量から、浸水させる水の水温及び密度に基づいてゴム試験片Pの質量及び体積(密度)を算出し外部出力する。外部出力としては、一例として、モニタ画面上に、ゴム試験片Pの識別番号に関連付けた表にして表示させる場合がある。
【0033】
次に、以上のように構成された浸せき試験用自動測定システム1の動作について、図3,4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0034】
浸せき試験用自動測定システム1では、浸せき前測定(上記S2)又は浸せき後測定(上記S5)においてゴム試験片Pの長さ、質量及び体積を測定する場合、まず、ターンテーブル7上に複数のゴム試験片Pを所定姿勢で載置してセットする(S10)。そして、コントローラ20を適宜操作することで次の動作が実行される。
【0035】
すなわち、ターンテーブル7が回転され、アーム8でゴム試験片Pを把持可能な所定位置までターンテーブル7が送られる(S11)。続いて、アーム8によりゴム試験片Pが把持され、洗浄部4へ向けて自動移送される(S12:図1中のP1参照)。このとき、上述したように、長さ測定部3がゴム試験片Pの移送中に長さ測定可能に構成されていることから、アーム8によりゴム試験片Pが洗浄部4へ向けて移送されている最中に、長さ測定部3によりゴム試験片Pの長さが測定される(S13)。そして、その測定値がコントローラ20に自動的に取り込まれ外部出力される。
【0036】
続いて、アーム8により洗浄部4にゴム試験片Pが供給され、洗浄部4によりゴム試験片Pが洗浄される(S14)。その後、ゴム試験片Pが質量体積測定部5へ向けて自動移送される。このとき、エア吹付け部9によりゴム試験片Pにエアを吹き付けられ、これにより、上記S14においてゴム試験片Pに付着し残留する洗浄溶剤や潤滑油等の油分が除去される(S15:図1中のP2参照)。
【0037】
続いて、アーム8により気中重量測定部5aにゴム試験片Pが供給され、ゴム試験片Pの気中重量が測定され、その測定値がコントローラ20に自動的に取り込まれて外部出力される(S16)。その後、アーム8により水中重量測定部5bにゴム試験片Pが供給され、ゴム試験片Pの水中重量が測定され、その測定値がコントローラ20に自動的に取り込まれて外部出力される(S17)。そして、コントローラ20では、取り込まれた気中重量及び水中重量から、浸水させる水の水温及び密度に基づいてゴム試験片Pの質量及び体積が算出され、外部出力される。
【0038】
ここで、上記S17では、2回目のゴム試験片Pの浸水のときに水中重量が測られるよう水中重量測定部5bが制御されることから、ゴム試験片Pは1度浸水されてそのまま取り出され、その後の2回目の浸水のときに水中重量が測られる。また、上記S17では、浸水させたゴム試験片Pに振動付加機構によって振動が付加され、これにより、浸水させたゴム試験片Pの周囲の気泡が除去される。
【0039】
続いて、アーム8によりゴム試験片Pがターンテーブル7上の元の位置に戻される(S18:図1中のP3参照)。そして、ターンテーブル7上の複数のゴム試験片Pに対して上記S11〜S18が繰返し実施され、これにより、複数のゴム試験片Pについて長さ、質量及び体積の測定が完了されることとなる(S19)。
【0040】
他方、浸せき試験用自動測定システム1では、浸せき前測定(上記S2)又は浸せき後測定(上記S5)においてゴム試験片Pの硬さを測定する場合、まず、ターンテーブル7上に複数のゴム試験片Pを所定姿勢で載置してセットし(S20)、コントローラ20を適宜操作することで次の動作が実行される。
【0041】
すなわち、ターンテーブル7が回転され、硬さ測定部6でゴム試験片Pの硬さ測定可能な所定位置までターンテーブル7が送られ、硬さ測定部6にゴム試験片Pが供給される(S21)。続いて、硬さ測定部6によりゴム試験片Pの硬さが測定され、その測定値がコントローラ20に自動的に取り込まれて外部出力される(S22)。そして、ターンテーブル7上の複数のゴム試験片Pに対して上記S21,22が繰返し実施され、これにより、複数のゴム試験片Pについて硬さの測定が完了されることとなる(S23)。
【0042】
なお、上記において、ターンテーブル7及びアーム8を有する移送部2が、移送手段を構成する。また、質量体積測定部5と質量及び体積を算出するコントローラ20とが、質量体積測定手段を構成する。また、長さ測定部3が長さ測定手段を構成し、洗浄部4が洗浄手段を構成し、コントローラ20が制御手段を構成する。また、硬さ測定部6が硬さ測定手段を構成し、エア吹付け部9がエア吹付け手段を構成する。
【0043】
以上、本実施形態の浸せき試験用自動測定システム1では、移送部2によって、ゴム試験片Pが自動移送されて長さ測定部3及び質量体積測定部5に自動的且つ連続的に供給される。そして、コントローラ20によって、長さ測定部3及び質量体積測定部5で測定した測定値のそれぞれが、手入力することなく一括して自動的に取り込まれて外部出力される。従って、浸せき試験におけるゴム試験片Pの長さ、質量及び体積の測定において、人の介在を少なくして省力化することが可能となる。その結果、人為的ミスを抑制して信頼性を高めることができると共に、浸せき試験における測定精度を向上することが可能となる。さらには、浸せき試験全体の処理時間を低減することも可能となる。
【0044】
また、長さ測定部3にあっては、アーム8によるゴム試験片Pの移送中にゴム試験片Pの長さを測定しており、すなわち、アーム8による自動移送に関連させて構成されている。従って、システム構成の効率性及び合理性を高め、システム構成の最小化が可能となる。
【0045】
また、本実施形態は、上述したように、硬さ測定部6をさらに備えていることから、浸せき試験における樹脂材の硬さについても省力化して測定することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上述したように、質量体積測定部5による測定前にゴム試験片Pが洗浄部4によって洗浄されることから、浸せき後測定(上記S5)にてゴム試験片Pの質量及び体積を測定する際、ゴム試験片Pに付着又は浸透された潤滑油等を確実に除去することができ、ゴム試験片Pの質量及び体積を精度よく測定することが可能となる。ちなみに、ゴム試験片Pの質量及び体積の測定は、ゴム試験片Pに付着又は浸透された潤滑油等によってその測定値が変動し易いため、かかる効果は顕著である。
【0047】
また、本実施形態では、上述したように、エア吹付け部9によってゴム試験片Pに付着した洗浄溶剤が少なくとも除去されることから、洗浄部4の後段にてゴム試験片Pの質量及び体積を測定する際、その測定精度を高めることが可能となる。ちなみに、ゴム試験片Pの質量及び体積の測定は、ゴム試験片Pに付着された洗浄液によってその測定値が変動し易いため、かかる効果は顕著である。
【0048】
また、本実施形態の水中重量測定部5bでは、上述したように、ゴム試験片Pの浸水が2回繰り返されると共に、当該2回目の浸水のときに水中重量が測られている。これにより、ゴム試験片Pの水中重量測定時に当該ゴム試験片Pの外面に気泡が付着するのを抑制することができ、ゴム試験片Pの水中重量を精度よく測定することが可能となる。なお、本実施形態では浸水を2回繰り返しているが、3回以上繰り返してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、上述したように、水中重量測定部5bにて水中重量を測定する際、浸水させたゴム試験片Pに振動が付加されるため、ゴム試験片Pに付着した気泡を除去することができ、ゴム試験片Pの水中重量を精度よく測定することが可能となる。
【0050】
なお、上述したように、質量体積測定部5による測定が長さ測定部3による測定後に実施されることから、例えば水中重量の測定に起因した長さ測定の誤差(ゴム試験片Pに付着した水による測定誤差等)を抑止することができ、長さ測定の精度を一層向上することが可能となる。
【0051】
ここで、本実施形態の浸せき試験用自動測定システム1を用いた浸せき試験と、ゴム試験片Pの物性それぞれを別途に手動又は一部自動で測定する従来手法による浸せき試験とにおいて比較試験を行った。その結果、本実施形態による浸せき試験では、従来手法による浸せき試験と比較して処理時間を1/10に短縮でき、処理時間を低減するという上記効果を確認することができた。さらに、本実施形態による浸せき試験では、1人での操作が容易に可能であり、測定の省力化を可能とするという上記効果を確認することができた。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0053】
例えば、樹脂材としては、上記実施形態のものに限定されず、一般ゴムやプラスチック等を用いてもよい。また、長さ測定部3、質量体積測定部5及び硬さ測定部6として、種々の測定器(計測器)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…浸せき試験用自動測定システム、2…移送部(移送手段)、3…長さ測定部(長さ測定手段)、4…洗浄部(洗浄手段)、5…質量体積測定部(質量体積測定手段)、6…硬さ測定部(硬さ測定手段)、7…ターンテーブル(移送手段)、8…アーム(移送手段)、9…エア吹付け部(エア吹付け手段)、20…コントローラ(制御手段)、P,P1〜P3…ゴム試験片(樹脂材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材の浸せき試験に用いられ、前記樹脂材の物性を測定するための浸せき試験用自動測定システムであって、
前記樹脂材を自動移送する移送手段と、
前記移送手段によって前記樹脂材が供給され、当該樹脂材の長さを測定する長さ測定手段と、
前記長さ測定手段による測定後にて前記移送手段によって前記樹脂材が供給され、当該樹脂材の気中重量及び水中重量を測定することにより前記樹脂材の質量及び体積を測定する質量体積測定手段と、
前記移送手段、前記長さ測定手段及び前記質量体積測定手段の動作を制御すると共に、前記長さ測定手段及び前記質量体積測定手段で測定した測定値のそれぞれを取り込んで外部出力する制御手段と、を備え、
前記長さ測定手段は、前記移送手段による前記樹脂材の移送中に当該樹脂材の長さを測定することを特徴とする浸せき試験用自動測定システム。
【請求項2】
前記移送手段によって前記樹脂材が供給され、当該樹脂材の硬さを測定する硬さ測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記硬さ測定手段の動作を制御すると共に、前記硬さ測定手段で測定した測定値を取り込んで外部出力することを特徴とする請求項1記載の浸せき試験用自動測定システム。
【請求項3】
前記質量体積測定手段による測定前にて前記移送手段によって前記樹脂材が供給され、当該樹脂材を洗浄する洗浄手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の浸せき試験用自動測定システム。
【請求項4】
前記洗浄手段による洗浄後にて前記樹脂材にエアを吹き付けることにより、前記樹脂材に付着した洗浄溶剤を少なくとも除去するエア吹付け手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の浸せき試験用自動測定システム。
【請求項5】
前記質量体積測定手段は、前記樹脂材の浸水を複数回繰り返すと共に、当該複数回目の浸水のときに前記水中重量を測定することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の浸せき試験用自動測定システム。
【請求項6】
前記質量体積測定手段は、浸水させた前記樹脂材に振動を付加することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の浸せき試験用自動測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−68056(P2012−68056A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211066(P2010−211066)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】