説明

浸水検出装置、浸水検出方法および通信装置

【課題】通信装置など筐体内に電子機器を内蔵して屋外に設置される装置において、雨水等による筐体内への浸水を正確に検出して電子機器保護する措置を取ることを可能とする浸水検出装置および浸水検出方法を提供するとともに、当該浸水検出装置を備えた通信装置を提供する。
【解決手段】浸水を検出する浸水センサ11、基地局の設置の方向および傾きを検出する傾斜センサ12、浸水センサ11および傾斜センサ12での検出情報を処理するMPU等の演算処理装置で構成される中央制御部13、浸水を検出した後、基地局100内の電子機器に浸水が及ぶまでの時間の算出に要するデータ等を格納し、中央制御部13からの読み出し要求に応じて所定のデータを出力する記憶部15、外部の通信網20に接続され、通信データの授受を行う通信部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉型の電子機器における浸水を検出する浸水検出装置および浸水検出方法に関するとともに、当該浸水検出装置を備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に通信装置における基地局、例えばPHS(Personal Handyphone System)の基地局は屋外設置型であるため、密閉構造あるいは一部密閉構造の筐体に電子機器を収納した防水構造となっているが、製造時の組立て過程で筐体に予定外の隙間が生じるなどの不具合が生じると、屋外に設置した場合には、雨水等が筐体内部に浸入する可能性がある。そして、浸入した雨水等が内部の電子機器を濡らすと通信機能を含む機能に動作不良をもたらすことになるので、通信サービスを維持するためには、動作不良が起きる前に基地局を交換する必要がある。
【0003】
そのためには、基地局内部に雨水等が浸入したことを検出して、通信システムの管理者等に報知する必要があるが、例えば特許文献1には携帯機器に湿気センサを組み込むことで水による損傷から保護することが開示されているが、基地局については有効な浸水検出装置が考案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−331281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、通信装置など筐体内に電子機器を内蔵して屋外に設置される装置において、雨水等による筐体内への浸水を正確に検出して電子機器保護する措置を取ることを可能とする浸水検出装置および浸水検出方法を提供するとともに、当該浸水検出装置を備えた通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る浸水検出装置は、電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出装置であって、前記筐体内に設置され、前記筐体内への浸水を検出して浸水発生情報として出力する浸水センサと、前記筐体内に設置され、前記筐体の傾斜角を検出して出力する傾斜センサと、前記浸水センサおよび前記傾斜センサに接続され、前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求め、前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出する制御部とを備え、前記制御部は、前記浸水発生情報を含む優先度情報を優先的に外部に出力する。
【0007】
本発明に係る浸水検出装置の一態様は、前記浸水検出装置が、前記筐体の傾斜角に対する前記残り体積との関係を予めテーブル化したデータテーブルを格納した記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部から読み出した前記データテーブルを参照して、検出した前記傾斜角に対する前記残り体積を求める。
【0008】
本発明に係る浸水検出装置の一態様は、前記浸水検出装置が、前記浸水時間を算出するために使用される浸水速度の情報を予め前記記憶部に有し、前記制御部は、前記残り体積を前記浸水速度で割ることで前記浸水時間を算出する。
【0009】
本発明に係る浸水検出装置の一態様は、前記浸水センサが、第1の浸水センサと、前記第1の浸水センサよりも鉛直方向上方に設置された第2のセンサとを含み、前記制御部は、前記第1の浸水センサが浸水を検出した後、前記第2の浸水センサが浸水を検出するまでの時間に基づいて浸水速度を算出するとともに、前記残り体積を前記浸水速度で割ることで前記浸水時間を算出する。
【0010】
本発明に係る浸水検出装置の一態様は、前記浸水検出装置は、通信網に接続され、前記制御部は、前記浸水時間に基づいて、浸入した水が前記電子機器に達する浸水予定時期を算出し、前記通信網を介して外部に通知する。
【0011】
本発明に係る浸水検出方法は、電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出方法であって、前記筐体内に設置された浸水センサが、前記筐体内への浸水を検出した場合に出力する浸水発生情報の有無により、浸水の有無を確認するステップ(a)と、前記筐体内に設置された傾斜センサが検出して出力する前記筐体の傾斜角を読み取るステップ(b)と、前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求めるステップ(c)と、前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出するステップ(d)とを備えている。
【0012】
本発明に係る浸水検出方法の一態様は、前記ステップ(c)が、前記筐体の傾斜角に対する前記残り体積との関係を予めテーブル化したデータテーブルを参照して、前記傾斜角に対する前記残り体積を求めるステップを含んでいる。
【0013】
本発明に係る通信装置は、通信機能を実現する電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出装置を備えた通信装置であって、前記筐体内に設置され、前記筐体内への浸水を検出して浸水発生情報として出力する浸水センサと、前記筐体内に設置され、前記筐体の傾斜角を検出して出力する傾斜センサと、前記浸水センサおよび前記傾斜センサに接続され、前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求め、前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出する制御部とを備え、前記制御部は、前記浸水発生情報を優先的に外部に出力し、前記電子機器は、前記制御部を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る浸水検出装置によれば、筐体が傾いているような場合でも、電子機器が水に濡れるまでの時間を正確に予測することができ、制御部は、浸水発生情報を含む優先情報を優先的に外部に出力することで、対応が遅れて電子機器が水に濡れることで不具合が発生することを防止できる。
【0015】
本発明に係る浸水検出装置の一態様によれば、簡易に残り体積を求めることができ、迅速な処理が可能となる。
【0016】
本発明に係る浸水検出装置の一態様によれば、簡易に浸水時間を求めることができ、迅速な処理が可能となる。
【0017】
本発明に係る浸水検出装置の一態様によれば、実状に適合した浸水速度を得ることができるので、より正確な浸水時間の算出が可能となる。
【0018】
本発明に係る浸水検出装置の一態様によれば、例えば通信システムの管理者が浸水予定時期を知ることができ、電子機器に不具合が発生する前に対応を取ることが可能となる。
【0019】
本発明に係る浸水検出方法によれば、筐体が傾いているような場合でも、電子機器が水に濡れるまでの時間を正確に予測することができる。
【0020】
本発明に係る浸水検出方法の一態様によれば、簡易に残り体積を求めることができ、迅速な処理が可能となる。
【0021】
本発明に係る通信装置によれば、筐体が傾いているような場合でも、電子機器が水に濡れるまでの時間を正確に予測することができ、制御部は、浸水発生情報を含む優先情報を優先的に外部に出力することで、対応が遅れて電子機器が水に濡れることで通信機能を含む機能に不具合が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る浸水検出装置を備えた基地局の構成を示すブロック図である。
【図2】基地局の構造を単純化して説明する図である。
【図3】基地局が傾いた場合を説明する図である。
【図4】基地局がポールに取り付けられた場合を想定した模式図である。
【図5】本発明に係る浸水検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】傾斜角に対する残り体積との関係を示すデータテーブルを示す図である。
【図7】複数の浸水センサを有する浸水検出装置を備えた基地局の構成を示すブロック図である。
【図8】3次元の傾斜センサを有する浸水検出装置を備えた基地局の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態>
<装置構成>
図1は、本発明に係る浸水検出装置を備えた基地局の構成を示すブロック図である。図1に示すように、基地局100は、浸水を検出する浸水センサ11、基地局の設置の方向および傾きを検出する傾斜センサ12、浸水センサ11および傾斜センサ12での検出情報を処理するMPU(microprocessing unit)等の演算処理装置で構成される中央制御部13、浸水を検出した後、基地局100内の電子機器に浸水が及ぶまでの時間の算出に要するデータ等を格納し、中央制御部13からの読み出し要求に応じて所定のデータを出力する記憶部15、外部の通信網20に接続され、通信データの授受を行う通信部16と、外部に対して視覚的あるいは聴覚的な方法で浸水を告知する警告表示部17とを備えている。なお、浸水センサ11、傾斜センサ12、中央制御部13および記憶部15は、浸水検出装置90の構成要素でもある。
【0024】
基地局100は、有線や無線で構成される通信網20を介してセンタ装置21に接続されているが、通信網20との通信データの授受を行う通信部16には、通信網20からの通信データを受ける受信部163の他に、中央制御部13から緊急性の高い優先情報を優先的に出力する優先度出力部161と、優先度出力部161の出力を通信網20に出力する外部出力部162とを有している。
【0025】
なお、基地局100には上述した構成以外に、無線部、変調部や復調部、データ変換部などを備えているが、本発明とは関係が薄いので、図示ならびに説明は省略している。
【0026】
次に、図2を用いて基地局100内の浸水センサ11および傾斜センサ12の配置例について説明する。
【0027】
図2は、簡単化のため、基地局100が単純な直方体の筐体110内に収納されている構成とした場合の内部透視図であり、基地局100の中央部のブロックで規定される領域には、電子機器120が配置されている。この電子機器120とは、浸水により濡れると通信機能を含む機能に動作不良をもたらす可能性のある機器の総称であり、そこには、図1に示した中央制御部13、記憶部15および通信部16などが含まれている。
【0028】
図2に示すように、筐体110の底面111の中央部に浸水センサ11が設置されており、この場合は、鉛直方向(重力方向)に対して底面111が下側となり、底面111とは真反対の上面112が上側となるように、筐体110を固定する。これにより、浸水があった場合は、最初に浸水センサ11が水に浸かることとなる。
【0029】
なお、筐体110の4つの側面のうち、最大の面積を持つ2つの面を主面115および116と呼称し、図2においては主面115を切り欠いた状態で筐体110内部を示している。
【0030】
また、図2では、鉛直方向をZ軸とし、Z軸に対して垂直な2軸をそれぞれX軸、Y軸とし、特に、筐体110の厚みに平行な方向をY軸としている。
【0031】
浸水センサ11は、例えば、電極間の抵抗値により水分の有無を判定するようなセンサを使用し、湿気や結露程度では浸水したものとは検知せず、自らが水中に没する程度の浸水があって初めて浸水したものと検出するものを使用する。
【0032】
傾斜センサ12は、例えば電極間の静電容量の変化で傾斜を検出する2次元センサで構成され、上面112と側面113とが交わる角部に設置されている。なお、傾斜センサ12の設置場所は角部に限定されるものではなく、浸水があった場合でも簡単には濡れない位置に設置すれば良く、少なくとも、浸水センサ11よりもZ方向で上側に設置すれば良い。
【0033】
通常、製造時の組立てまでの過程で生じる筐体110の隙間の大きさは、ある程度の規則性を有しているので、雨水等の単位時間あたりの浸水量は予測することができる。また、浸水センサ11と電子機器120との間の空間の体積は決まっているので、例えば底面111が水平面に対して、平行となるように設置された場合は、浸水センサ11が水に浸かることで浸水を検知した後は、電子機器120に水が達するまでの時間は予め計算により求めておくことができ、浸水センサ11が浸水を検知してから実際に機能に不具合が発生するまでの時間は比較的容易に予測することができ、浸水センサ11から浸水を検知したという情報が与えられれば、予測される時間内に対策を講じることで、機能に不具合が発生することを防ぐことができる。
【0034】
しかし、図2に示されるように、筐体110が傾斜を有して設置された場合、あるいは、設置した後に傾斜してしまった場合には、浸水センサ11と電子機器120との間の空間の体積が変わってしまうので、電子機器120に水が達するまでの時間は予め計算により求めた時間とは異なってしまうことになる。
【0035】
その状態を図3を用いて模式的に説明する。図3に示すように、筐体110の底面111が水平面に対して傾斜を有するように筐体110が設置されると、筐体110に浸入した水の水面WSは電子機器120に近い部分と、電子機器120から遠い部分とを有することになり、電子機器120に近い部分の水面は、予め計算により求めた時間よりも早い時間で電子機器120に到達してしまうことになり、予め予測した時間内に対策を講じても、機能に不具合が発生する可能性がある。
【0036】
しかし、本発明に係る基地局100においては、傾斜センサ12を浸水センサ11と併せて用いることで、筐体110が傾斜を有して設置された場合でも、電子機器120が水に濡れるまでの時間を正確に予測することができ、当該予測時間に基づいて警報等を発することが可能となる。
【0037】
<装置動作>
以下、図4〜図6を用いて浸水検出装置90の動作について説明する。
【0038】
図4は、基地局100(筐体110)がポールPLに取り付けられた場合を想定した模式図であり、筐体110の主面116がポールPLの円筒面に取り付けられ、底面111が水平面(XY平面)に対して平行となるように取り付けられているものとし、ポールPLの延在する方向はZ軸に平行な方向であるものとする。
【0039】
図5は、浸水検出装置90の動作を説明するフローチャートである。基地局100がポールPLに取り付けられて動作状態になると、浸水検出装置90が検出動作を開始し、図5に示すステップS1において、中央制御部13が定期的に浸水センサ11の確認を行い、雨水等による浸水の有無を確認する(ステップS2)。
【0040】
ステップS2において浸水が検知されていない場合は、ステップS1の動作を繰り返すが、浸水が検知された場合はステップS3に進んで、傾斜センサ12で検知された筐体110の傾斜角の読み取りを行う。
【0041】
そして、読み取った傾斜角に基づいて、浸水センサ11と電子機器120との間の空間の体積(残り体積と呼称)を算出する(ステップS4)。
【0042】
この処理は、中央制御部13が記憶部15に格納された、傾斜角に対する残り体積との関係を予めテーブル化したデータテーブルを読み出し、それを参照することで実行される。ここで、図6に、当該データテーブルの一例を示す。
【0043】
図6は、図4に示した模式図を前提として作成されたデータテーブルであり、基地局100が取り付けられたポールPLが傾いたことによって基地局100が傾斜しているという状況下に対応したものであり、簡単化のためZ軸方向の傾きは考慮せず、X軸方向の傾きと、Y軸方向の傾きとで基地局100の傾斜を規定している。
【0044】
図6において、X軸方向、Y軸方向の傾斜の検出範囲は、何れもマイナス10度からプラス10度の範囲とし、X軸方向の傾斜角とY軸方向の傾斜角との交差する部分に、その傾斜状態での残り体積(単位ml)が記録されている。
【0045】
すなわち、X軸方向の傾斜角がマイナス10度(−10)、Y軸方向の傾斜角がマイナス10度(−10)となるようにポールPL(図4)が傾斜した場合の残り体積は600mlであることが示されている。これの対極にある状態として、X軸方向の傾斜角がプラス10度(+10)、Y軸方向の傾斜角がプラス10度(+10)となるようにポールPLが傾斜した場合も、残り体積は600mlとなることが示されている。
【0046】
なお、ポールPLが傾くことなく、Z軸に平行に立っている場合(X軸方向およびY軸方向の傾斜角が共に0度の場合)は基地局100は傾いていないので、残り体積は最大の1000mlとなることが示されている。
【0047】
このようなデータテーブルは、基地局100の設計に使用されるCAD(Computer Aided Design)を用いることで作成することができ、記憶部15に予め記憶させておけば良い。なお、基地局100の傾斜は、図4に示すようなポールPNに基地局100を取り付けた場合だけでなく、基地局100を建物の屋上の床面に据え付けた場合のように底面が変わる場合は、図6のデータテーブルとは異なったテーブルを準備することになる。
【0048】
中央制御部13は、上述したようなデータテーブルを記憶部15から読み出し、傾斜センサ12で検知された筐体110の傾斜角に該当する残り体積(V)を当該データテーブルから取得する。なお、データテーブルを構成するX軸方向、Y軸方向の傾斜角は、図6に示すように飛び飛びの値であり、それよりも傾斜センサ12で検知精度が高い場合は、中央制御部13で、傾斜センサ12で検知された傾斜角を四捨五入するなどの処理を行って、データテーブルに合わせるようにする。
【0049】
ここで再び図5の説明に戻る。ステップS4で、残り体積をデータテーブルから取得した中央制御部13は、ステップS5において、予め実験的に求めた浸水速度(S)で残り体積を割ることで、電子機器120(図1)に水が到達するまでの時間(浸水時間(T)と呼称)を算出する。なお、実験的に求めた浸水速度は、記憶部13に格納しておき、必要に応じて読み出すようにすれば良い。
【0050】
その後、中央制御部13は、基地局100が浸水したことを表す浸水発生情報と、算出した電子機器120の浸水時間の情報に基づいて算出した、実際に電子機器120が浸水する日時の情報(浸水予定時期)の情報とを優先情報として通信部16(図1)の優先度出力部161に与え、優先度出力部161から外部出力部162(図1)を介して通信網20に出力し、これらの情報は通信網20を介してセンタ装置21(図1)に通知される(ステップS6)。また、センタ装置21への上記情報の通知と併せて、警告表示部17により、外部に対して視覚的あるいは聴覚的な方法で浸水を告知する。
【0051】
浸水発生情報および浸水予定時期の情報を外部に出力した後は、浸水検出装置90は検出動作を停止する。
【0052】
ここで、優先度出力部161は、外部に出力されるべき各種の信号のうち、緊急性の高い情報を有した信号を優先的に出力するために設けられており、中央制御部13から与えられる浸水発生情報や浸水予定時期の情報は、何れにも先んじて優先度の高い優先情報として優先度出力部161で扱われる。
【0053】
センタ装置21が浸水発生情報や浸水予定時期の情報の通知を受けると、通信システムの管理者は、浸水予定時期の情報に応じて対策を講じることになる。
【0054】
なお、中央制御部13は、浸水予定時期の情報の代わりに、浸水時間の情報を優先度出力部161から通信網20を介してセンタ装置21に通知する構成としても良く、センタ装置21に通知された浸水時間の情報に基づいて、センタ装置21で浸水予定時期を算出する構成としても良い。
【0055】
<効果>
以上説明した本発明に係る浸水検出装置90を備えた基地局100によれば、基地局100の筐体110が傾斜を有して設置された場合、あるいは、設置した後に傾斜してしまった場合でも、電子機器120が水に濡れるまでの時間を正確に予測することができるので、通信システムの管理者の対応が遅れて機能に不具合が発生することを防止できる。
【0056】
<変形例1>
以上説明した浸水検出装置90では、浸水センサ11で浸水を検出した後、残り体積をデータテーブルから取得して、予め実験的に求めた浸水速度を残り体積に当てはめて浸水時間を算出する構成を採っていたが、Z軸方向に複数の浸水センサ11を配置することで、中央制御部13で浸水速度(S)を計算し、残り体積(V)を割ることで浸水時間(T)を算出する構成としても良い。図7に、その一例を示す。
【0057】
図7に示すように、筐体110の底面111の中央部に浸水センサ11が設置されるとともに、側面113に浸水センサ11Aが取り付けられ、側面114に浸水センサ11Bが取り付けられている。
【0058】
浸水センサ11Aおよび11Bは、浸水センサ11の取り付け位置よりもZ軸方向で上側であって、電子機器120よりも下側となるように取り付けられている。
【0059】
従って、例えば、筐体110の底面111が水平面に対して傾斜を有するように筐体110が設置された場合に、筐体110に浸入した水の水面WSが、電子機器120に近い部分と、電子機器120から遠い部分とを有しても、浸水センサ11Aおよび11Bの一方が水没することで水面WSが電子機器120に接近したことを検知するとともに、浸水センサ11が浸水を検知(すなわち水没を検知)してから、浸水センサ11Aおよび11Bの一方が水没するまでの時間を知得することができ、当該時間に基づいて中央制御部13において浸水速度(S)を計算し、残り体積(V)を割ることで浸水時間(T)を算出することができる。
【0060】
このような構成を採ることで、浸水速度を予め実験的に求めておく必要がなくなり、基地局100の製造コストを低減できるとともに、実状に適合した浸水速度を得ることができるので、より正確な浸水時間の算出が可能となる。
【0061】
<変形例2>
以上説明した浸水検出装置90では、傾斜センサ12は2次元センサを使用するものとして説明したが、2次元センサではなく3次元センサを使用する構成としても良い。
【0062】
すなわち、図8に示すように、底面111と側面114とが交わる角部に浸水センサ11Bを設置し、上面112と側面113とが交わる角部に浸水センサ11Aを設置し、主面116(または主面115)の中央部に3次元センサ12Aを設置することで、筐体110の設置方向の自由度を高めることができる。
【0063】
筐体110のような6面体の場合、何れの面を底面にして良いのであれば6種類の取り付けパターンが考えられる。
【0064】
図8のように浸水センサ11Aおよび11Bを配置すると、底面111、上面112、側面113および114の何れが底面となるように配置されても、浸水を検知することができ、また、3次元センサ12Aを使用することで、筐体110が何れの面を底面として設置されても、傾斜角を検出することができる。
【0065】
なお、図8に示す筐体110は他の辺の長さに比べて厚みに相当する辺の長さが短いので、主面115および116の一方を底面とする場合は現実的ではないが、厚みに相当する辺の長さも他辺と同程度の筐体であれば、6面の何れを底面として設置することも可能となる。
【0066】
6面の何れを底面にするかによって、浸水センサ11Aおよび11Bの一方が水没した後の残り体積は異なるが、3次元センサ12Aにより何れの面が底面になっているかを検知できるので、予め、各底面ごとに図6に示したデータテーブルを準備しておけば、何れの面を底面とした場合でも残り体積を求めることができ、浸水時間を算出することができる。
【0067】
このように、筐体110の設置方向の自由度を高めることで、基地局100の設置作業の制約を低減することができる。
【符号の説明】
【0068】
11,11A,11b 浸水センサ
12,12A 傾斜センサ
13 中央制御部
15 記憶部
20 通信網
90 電子機器
100 基地局
110 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出装置であって、
前記筐体内に設置され、前記筐体内への浸水を検出して浸水発生情報として出力する浸水センサと、
前記筐体内に設置され、前記筐体の傾斜角を検出して出力する傾斜センサと、
前記浸水センサおよび前記傾斜センサに接続され、前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求め、前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記浸水発生情報を含む優先情報を優先的に外部に出力する浸水検出装置。
【請求項2】
前記浸水検出装置は、
前記筐体の傾斜角に対する前記残り体積との関係を予めテーブル化したデータテーブルを格納した記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部から読み出した前記データテーブルを参照して、検出した前記傾斜角に対する前記残り体積を求める、請求項1記載の浸水検出装置。
【請求項3】
前記浸水検出装置は、
前記浸水時間を算出するために使用される浸水速度の情報を予め前記記憶部に有し、
前記制御部は、
前記残り体積を前記浸水速度で割ることで前記浸水時間を算出する、請求項1記載の浸水検出装置。
【請求項4】
前記浸水センサは、
第1の浸水センサと、前記第1の浸水センサよりも鉛直方向上方に設置された第2のセンサとを含み、
前記制御部は、
前記第1の浸水センサが浸水を検出した後、前記第2の浸水センサが浸水を検出するまでの時間に基づいて浸水速度を算出するとともに、前記残り体積を前記浸水速度で割ることで前記浸水時間を算出する、請求項1記載の浸水検出装置。
【請求項5】
前記浸水検出装置は、通信網に接続され、
前記制御部は、前記浸水時間に基づいて、浸入した水が前記電子機器に達する浸水予定時期を算出し、前記通信網を介して外部に通知する、請求項1記載の浸水検出装置。
【請求項6】
電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出方法であって、
(a)前記筐体内に設置された浸水センサが、前記筐体内への浸水を検出した場合に出力する浸水発生情報の有無により、浸水の有無を確認するステップと、
(b)前記筐体内に設置された傾斜センサが検出して出力する前記筐体の傾斜角を読み取るステップと、
(c)前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求めるステップと、
(d)前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出するステップとを備える、浸水検出方法。
【請求項7】
前記ステップ(c)は、
前記筐体の傾斜角に対する前記残り体積との関係を予めテーブル化したデータテーブル
を参照して、前記傾斜角に対する前記残り体積を求める、請求項6記載の浸水検出方法。
【請求項8】
通信機能を実現する電子機器を内蔵して屋外に設置される筐体内への水の浸入を検出する浸水検出装置を備えた通信装置であって、
前記筐体内に設置され、前記筐体内への浸水を検出して浸水発生情報として出力する浸水センサと、
前記筐体内に設置され、前記筐体の傾斜角を検出して出力する傾斜センサと、
前記浸水センサおよび前記傾斜センサに接続され、前記浸水発生情報および前記傾斜角に基づいて、前記浸水センサと前記電子機器との間の残り体積を求め、前記残り体積に基づいて浸入した水が前記電子機器に達するまでの浸水時間を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記浸水発生情報を含む優先情報を優先的に外部に出力し、
前記電子機器は、前記制御部を含む、通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−198095(P2010−198095A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39378(P2009−39378)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】