説明

浸漬型膜分離装置

【課題】気体供給管が1つで散気管の長さを長くしても、効率的に満遍なく均一に微細気泡を発生させることができる微細気泡散気管を用いた浸漬型膜分離装置を提供する。
【解決手段】被処理液を貯留した処理槽8内に浸漬設置される浸漬型膜分離装置において、複数の平膜型分離膜エレメントが膜面平行に並列に配置されてなる分離膜モジュール23と、該分離膜モジュールの鉛直下方に設置され、1つの気体供給管10に連接された複数の微細気泡散気管6とを備え、該複数の微細気泡散気管が、分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びており、少なくとも、筒状の支持管と、弾性シートが該支持管の外周を覆うように配置され、該支持管の内側に供給した気体が、該支持管の表面に設けられた複数の孔から該支持管と該弾性体の間隙に流入し、該弾性シートの微細スリットが開くことにより、微細気泡が散気管外に発生する微細気泡散気管を有する浸漬型膜分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥や微生物培養液への酸素供給に好適に使用することが出来る微細気泡散気管を備え、下水、し尿、産業廃棄水等の汚水を膜によりろ過処理する浸漬型膜分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水、し尿、産業廃棄水等の汚水を生物学的に処理する活性汚泥法や、微生物を利用した好気的な有価物生産プロセスでは、活性汚泥や微生物培養液に、効率よく酸素を供給することが、プロセス全体の効率化、低コスト化、省エネ化のために重要である。このような酸素供給手段として、例えば、図16に示す微細気泡散気管が知られている。
【0003】
この微細気泡散気管は、筒状の支持管1の外周を覆うように微細スリットを有した弾性シート2が設置され、その端部が締め付け金具3で封止されている。ここで、支持管1の片端の前記支持管1と弾性シート2との間隙は、気体供給部4と、貫通孔5を介して連通している。つまり、気体供給部4から供給された空気は貫通孔5を通った後、支持管1と弾性シート2との間隙に入り、弾性シート2を膨張させる。弾性シート2が膨張したことによって微細スリットが開き、供給された気体が微細気泡となって、活性汚泥や微生物培養液中に放出させる。空気供給が停止した時には弾性シート2が収縮して微細スリットが閉じるので、微細気泡が放出されない時に微細スリットから活性汚泥や微生物培養液が散気管内に流入することがなく、微細スリットの閉塞や散気管内の汚れを防ぐことができる。
【0004】
そして、下水、し尿、産業廃棄水等の汚水を膜によりろ過処理する浸漬型膜分離装置に微細気泡散気管を用いた例として、特許文献1が挙げられる。本例は中空糸膜を用いた浸漬型膜分離装置であるが、装置のサイズが大きく、散気管の長手方向(筒状支持管の中心軸の方向)の長さが、一定長(約1000mm)を越えると、気体供給部に近い位置(根元側)にある微細スリットからは十分な気泡が発生するが、気体供給部から遠い位置(先端側)にある微細スリットから発生する気泡量が少なくなり、発生する気泡量に大きな偏りが発生する、という問題が起こる可能性がある。
【0005】
このような問題を解決するための手段として、図17に示したように、1本の気体供給管10から供給された空気を、その両側に設けた複数の分岐管9に誘導し、分岐管9に連通して設けられた微細気泡散気管6の微細スリットから散気する構造が知られている(特許文献2)。
【0006】
そして、これを下水、し尿、産業廃棄水等の汚水を膜によりろ過処理する浸漬型膜分離装置23として用いたものを図18に示す。図18において、浸漬型膜分離装置23は、処理槽8の中に貯留された被処理液中に浸漬されている。複数枚の平板状ろ過膜22を膜面平行となるように並列で配置した浸漬型膜分離装置23には、透過水出口25が設置されていて、この透過水出口26には、処理水配管24と吸引ポンプ25とが連通している。
【0007】
処理槽8の上方には被処理液供給管21が開口している。そして、ろ過の駆動力として吸引ポンプ25を作動させると、処理槽内の被処理液は浸漬型膜分離装置23内に配置された平板状ろ過膜22によってろ過され、ろ過水は、透過水出口26、処理水配管24を介して系外に取り出される。
【0008】
浸漬型膜分離装置23の下方には散気管6が配置され、ろ過運転時には、ブロア7から供給されるエアが、気体供給管10と分岐管9を介して散気管6に送給され、散気管の散気孔から処理槽(曝気槽)8内にエアが噴出される。噴出するエアによるエアリフト作用によって気液混合上昇流が生起し、この気液混合上昇流及び気泡がろ過膜の膜面に掃流として作用し膜面にケーキ層が付着、堆積することを抑制し、ろ過運転の安定化を図っている。
【0009】
しかしながら、図18に示すように、この散気装置を浸漬型膜分離装置の下方に配置した場合には、微細気泡が散気されない中央部分では十分なエアリフト作用が発生せず、膜面に対する掃流効果を得ることができない。この結果、浸漬型膜分離装置の中央部分においては膜面洗浄が不足し、分離膜のろ過機能が低下してしまうという問題が起こる。
【0010】
そして、このような問題を解決する手段として、図19や図20に示す散気管の配置が考えられる。図19は、散気管を直線上に並ぶように配列させ、対向する微細気泡散気管の先端同士を近接位置とし、散気管の先端位置が不揃いとなるように、長さの異なる微細気泡散気管を組み合わせて用いることにより、微細気泡が散気されないエリアを分散させるものである。また、図20は、対向する微細気泡散気管の先端同士が重なるように配置することで、微細気泡が散気されないエリアをなくすものである。
【0011】
これらの手段は、エリアによる散気量のバラツキを軽減するものであるが、散気管を略直線上に2本配置しているため、少なくとも、両端に2つの気体供給管10が必要になるため、浸漬型膜分離装置のコストが高くなるばかりでなく、処理槽内に浸漬型膜分離装置を設置する際の、配管作業の手間も増える。
【0012】
一方、図1に示す散気管(例えば、EDI社のFLEXAIR Magnum Diffuser)は1000mm以上の長さでも、その片側からのみ気体を供給すれば、略均一に散気することが可能である。すなわち、図1において気体供給部4から供給された空気は、抵抗が小さい支持管1の内部を通って、微細気泡散気管の長手方向における気体供給部4と反対側の端部まで容易に流れることができるため、微細気泡散気管の長さが1000mm以上であって、その片端のみから空気を供給しても、供給された空気が、複数の貫通孔5から略均一に支持管1と弾性シート2の間隙に流れ込み、弾性シート2に設けられた微細スリットを通って、微細気泡散気管の長手方向において略均一量の微細気泡を水中に放出することができることが知られていた。
【特許文献1】特開2007―152179号公報
【特許文献2】特開2005―081203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の技術の上述した問題点を解決し、微細気泡を発生させる散気管の長さを長くして気体供給管を1つにしても気泡量の偏りを抑制することができ、均一な気泡量で微細気泡を発生することができる微細気泡散気管を備えた浸漬型膜分離装置を提供すること、特に、大型の分離膜モジュールの鉛直下方から満遍なく均一に微細気泡が発生される浸漬型膜分離装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討の結果、図1に示す形態の散気管を複数枚の膜エレメント配列された膜モジュールの下方に配置することで、気体の供給が該散気管の片側からのみで、かつ、その長さが1000mm以上である浸漬型膜分離装置によって、均一な気泡量で微細気泡を発生することができる微細気泡散気管を備えた浸漬型膜分離装置の提供が可能であることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、次の事項を特徴とするものである。
(1)被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される浸漬型膜分離装置において、平膜を分離膜として配設した分離膜エレメントの複数が膜面平行に並列で配置されてなる分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの鉛直下方に設置され、1つの気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管とを備え、該気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管が、分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びている浸漬型膜分離装置であって、該微細気泡散気管は、少なくとも、筒状の支持管と、微細スリットが形成された弾性シートとを有し、該弾性シートが該支持管の外周を覆うように配置され、該支持管の内側に供給した気体が、該支持管の表面に設けられた複数の孔から該支持管と該弾性体の間隙に流入し、該弾性シートの微細スリットが開くことにより、微細気泡が散気管外に発生する機能を有する微細気泡散気管であって、該支持管の長手方向の長さが1000mm以上であることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
(2)前記支持管と前記弾性シートとの間隙が、長手方向に少なくとも2分割されていていることを特徴とする(1)に記載の浸漬型膜分離装置。
(3)分割された間隙部の長手方向の長さが1000mm以下であることを特徴とする(2)に記載の浸漬型膜分離装置。
(4)前記分離膜エレメントの下端と前記微細気泡散気管との距離が、150mm以上500mm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微細気泡散気管は、微細気泡を発生させる長尺の散気管であるにもかかわらず気泡量の偏りを抑制することができ、均一な気泡量で微細気泡を発生することができる。さらに、散気管の片端のみから気体を供給するため、浸漬型膜分離装置のコスト低減や、処理槽内への取り付けが容易になる。そして、この微細気泡散気管を浸漬型膜分離装置の鉛直下方に設置しているので、大型の浸漬型膜分離装置を備えた浸漬型膜分離装置であっても、いずれの分離膜の膜面各部に対しても微細気泡を作用させて均一に洗浄することができ、安定した膜ろ過運転が可能となり、浸漬型膜分離装置の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る微細気泡散気管を図1に示す一実施態様に基づいて説明する。
【0018】
本発明の微細気泡散気管は図1に示すように、筒状の支持管1の片端部に、気体の流入口である気体供給部4が設けられ、他端は封止されている。支持管1は外周を覆うように、微細スリットが形成された弾性シート2が配置され、支持管1の両端部およびそれらの中間部には、支持管1と弾性シート2とをシールさせるための締め付け具3が設けられている。また、支持管には複数の貫通孔5が設けられている。
【0019】
支持管1の形状としては、その長手方向軸αに直角な断面において、円であることが好ましいが、略多角形としても良い。気体供給部4は、素材としては金属や樹脂などが好適に使用でき、形状としては、中空のパイプ状であることが好ましいが、中空の略多角形状としてもよい。さらに貫通孔5の形状は円や楕円形または略円形や略楕円形であることが好ましいが、任意の曲線及び/又は直線で囲まれた形としても良い。ここで、貫通孔5の形状とは貫通孔5を投影面積が最大になるように投影したときの形状を示す。また、締め付け金具3は、リング状の締め付け可能な金具(ホースバンド等)であることが好ましい。
【0020】
ここで、支持管1を構成する材質は、散気による振動などの負荷によって破損しない剛性を持つ材質であれば特に限定されるものではない。例えば、ステンレスなどの金属類、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂、繊維強化樹脂(FRP)などの複合材料、その他の材質などを好ましく使用することができる。
【0021】
また、弾性シート2の微細スリット(S)は、図3(a)に示すように、複数〜多数、形成されている。微細スリット(S)は、1〜5mmの長さであることが好ましく、2〜4mmの長さであることがさらに好ましい。微細スリット長さが長すぎると、気泡が大きすぎたり、微細スリットが閉じたときに水中の懸濁成分がスリット内に侵入したりして、目詰まりが進行しやすくなる。一方、短すぎると、気泡発生時の圧力損失が大きくなり、非効率的となる。微細スリット(S)の長さ方向は、特に限定されないが、支持管1の長手方向軸αに平行方向であることが、全体に均一に気泡が発生しやすくなる。また、微細スリット(S)の配列は、図3(a)のように、複数の略直線上に整列させてもよく、図3(b)のように、略直線ごとにスリット位置を少しずらすようにしながら配列してもよい。また、微細スリット(S)間の間隔は、特に限定しないが、1mm以上であることが好ましい。
【0022】
さらに、弾性シート2を構成する材質は弾性があって実質的に非通気性であれば特に限定されず、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムや、その他の弾性材質を適宜選択して使用することができる。なかでも、エチレンプロピレンゴムは耐薬品性に優れるので好ましい。
【0023】
ここで、本発明の微細気泡散気管では、気体供給部4から供給された気体が、支持管1の内部を通って、複数の貫通孔5から支持管1と弾性シートの間隙に流れ込み、隣接する締め付け具3に挟まれた領域の弾性シート2が膨らんで弾性シート2に設けられた微細スリット(S)が開くことにより、気体が微細気泡となって水中に放出される。また、気体供給部4への気体供給が停止した際には、弾性シート2がしぼみ、微細スリット(S)が閉じるため、水中の懸濁物質が微細スリット(S)および支持管1と弾性シート2の間隙部に流入するのを抑制する。
【0024】
ここで、図16に示す従来の微細気泡散気管においては、気体供給部4から供給された空気は、貫通孔5を通った後、支持管1と弾性シート2との間隙に入り、締め付け具3に挟まれた領域の微細スリットを通って、微細気泡となって水中に放出される。しかしながら、支持管1と弾性シート2との間隙は狭く、空気が流れる抵抗が大きいために、微細気泡散気管の長さが約1000mm以上になると、その長手方向における気体供給部4と反対側の端部まで流れる空気の量は減少する。その結果、微細気泡散気管の長手方向における散気量に大きな偏りが生じる。この場合、例えば、支持管の両端から空気を供給することで、長手方向おける散気量の偏りを軽減することができる。
【0025】
一方、図1に示す本発明によれば、気体供給部4から供給された空気は、抵抗が小さい支持管1の内部を通って、微細気泡散気管の長手方向における気体供給部4と反対側の端部まで容易に流れることができるため、微細気泡散気管の長さが1000mm以上であって、その片端のみから空気を供給しても、供給された空気が、複数の貫通孔5から略均一に支持管1と弾性シート2の間隙に流れ込み、弾性シート2に設けられた微細スリットを通って、微細気泡散気管の長手方向において略均一量の微細気泡を水中に放出することができる。
【0026】
さらに、図1に示すように、支持管1の長手方向の長さLを支持管1の両端に設けられた締め付け具3間の長さと定義すると、本発明における長手方向の長さLは1000mm以上であるが、長手方向の長さLが非常に長く、上述した本発明の微細気泡散気管の構造でも締め付け具3近傍の散気量より、支持管1の長手方向中央部における散気量の方が十分多くなり、該長手方向における散気量の偏りが大きくなる場合が考えられる。この場合には、図2に示すように、支持管1の両端に設けられた締め付け具3の中間部にも1つ以上の締め付け具3を付加することで、弾性シート2の膨らみが抑制され、該長手方向における散気量の偏りを抑制することができるため、長手方向の長さLが非常に長い場合でも好適に気体供給を満遍なく行うことができる。ここで、散気量の偏りを抑制するためには、隣接する締め付け具3どうしの距離(図2のL1およびL2)はそれぞれ1000mm以下であることが好ましい。また、中間部の締め付け金具の近傍では、弾性シート2が膨らんでも、微細スリット(S)が十分に開かず、気泡が発生し難くなるので、中間部の締め付け金具は細幅であることが好ましい。
【0027】
次に、上記した本発明に係る微細気泡散気管を複数本配置して構成した微細気泡散気装置を、図4に示す一実施態様に基づいて説明する。
【0028】
本発明に係る微細気泡散気装置では、2本以上の本発明の微細気泡散気管6が、略平行に配置されている。前記微細気泡散気管6の気体供給部4と微細気泡散気管6の一端とが、一つの気体供給管10に接続されている。即ち、一つの気体供給管10から、2つ以上の微細気泡散気管6が、分岐管9を介して接続されている。分岐管9は、接続のために気体供給管10から分岐されている管である。また、気体供給管10には例えば中央部に気体供給口11が設けられている。
【0029】
ここで、気体供給管10および分岐管9は、散気による振動などの負荷によって破損しない剛性を持つ材質で構成されればよい。例えば、ステンレスなどの金属類、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂、繊維強化樹脂(FRP)などの複合材料、その他の材質などを好ましく使用することができる。分岐管9と気体供給管10は中空状の配管であり、その内部が連通するように接続されている。
【0030】
また、分岐管9と、微細気泡散気管6の気体供給部4との接続部Yは、次の三つの接続構造であることが例示される。
(ア)接続部分の部材を回転させることなく挿嵌させることにより脱着可能な接続構造であること。即ち、気体供給部4あるいは分岐管9を回転させることなく、支持管1長手方向αに、気体供給部4あるいは分岐管9を移動させることにより挿嵌させる脱着可能な接続構造であること。
(イ)接続部分の部材を回転させることなく接続端どうしを接合させ、脱着可能な接続具によって接続させる接続構造であること。即ち、支持管1長手方向αと平行方向に、気体供給部4あるいは分岐管9を回転も移動もさせることなく、接続端どうしを接合させ、脱着可能な接続具を用いて接続すること。
(ウ)接続部分がネジ口による接続であること。ネジ口による接続は、気体供給部4あるいは分岐管9を回転させ、かつ、支持管1長手方向αと平行方向に移動させることによる螺着接続である。
【0031】
前記(ア)を満たす接続方法としては、接続端どうしを挿嵌させ、Oリング12でシールする接続方法が好ましい。具体的な接続方法として、図5の(a)または(b)に示すように、気体供給部4側の接続端部と分岐管9側の接続端部とが雌雄の関係にあり、いずれか一方にOリング12を設け、雌管に雄管を挿入した際に、Oリング12とそれぞれの配管が密着し、ガスが配管から漏洩しない構造とする。Oリング12の素材としては、弾性を有したゴムや樹脂であることが好ましく、シリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などに例示される。
【0032】
また、前記(イ)を満たす接続方法の場合は、脱着可能な接続具として、フランジ、ユニオン、クランプのいずれかを用いることが好ましい。フランジによる接続は、図6(a)に示すようなものであり、フランジの符号13で示す部分をボルトナットなどの力により接続する。フランジ間には、ゴムパッキンやOリングなどを挟み込むことにより気密性を高めることが好ましい。ユニオンによる接続は、図6(b)に示すようなものであり、まず、分岐管9の端部と気体供給部4の端部とを接触させ、その後、内側に雌ネジを設けたユニオン14により締め付けることにより、分岐管9と気体供給部4との接続を強化する。分岐管9と気体供給部4とが接触する部分には、ゴムパッキンやOリングなどを挟み込むことにより気密性を高めることが好ましい。
【0033】
クランプによる接続は、図6(c)に示すようなものであり、まず、分岐管9と気体供給部4の端部どうしを接触させ、その後、接続部分を覆うような形でクランプ15を設置した後、ボルト部16を締め付けることによって、分岐管9と気体供給部4との接続を強化する。分岐管9と気体供給部4とが接触する部分には、ゴムパッキンやOリングなどを挟み込むことにより気密性を高めることが好ましい。
【0034】
上記のような微細気泡散気装置を具備した本発明の浸漬型膜分離装置を、図7に示す一実施態様に基づいて説明する。
【0035】
図7は、本発明に係る浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略斜視図である。図7において、浸漬型膜分離装置は、処理槽8内の被膜ろ過液中に浸漬されている。この浸漬型膜分離装置には、複数枚の平板状ろ過膜22を上下方向に膜面平行となるように並列で配置した浸漬型膜分離装置23と、前記平板状ろ過膜22の透過水出口26に連通した処理水配管24とが備えられている。処理槽8の上方には被処理液供給管21が開口している。そして、ろ過の駆動力として吸引ポンプ25を作動させて処理水配管24内を減圧することにより、処理槽8内の被処理液を分離膜によってろ過する。ろ液は、透過水出口26、処理水配管24を介して系外に取り出される。
【0036】
処理槽8の材質は、廃水や活性汚泥混合液などの被膜ろ過液を貯えることができれば特に限定されないが、コンクリート槽、繊維強化プラスチック槽などが好ましく用いられる。
【0037】
処理水配管24に設置される吸引ポンプ25は、処理水配管24内を減圧状態にすることができれば特に限定されるものではない。この吸引ポンプ25の代わりに、サイホンによる水頭圧差を利用して、処理水配管24内を減圧状態にしてもよい。
【0038】
浸漬型膜分離装置の上部側には、複数の平板状ろ過膜22が上下方向に膜面平行となるように並列で配列された膜モジュール23が設けられている。この平板状ろ過膜22は、平板状の分離膜を配設したエレメントであり、例えば、樹脂や金属等で形成されたフレームの表裏両面に、シート状の分離膜を配設し、分離膜とフレームで囲まれた内部空間に連通する処理水出口28をフレーム上部に設けた構造の平板状ろ過膜22が用いられる。この平板状ろ過膜22の隣り合う2枚を図8(概略斜視図)に示す。隣り合う平板状ろ過膜22の間には所定の間隔が空けられていて、この膜間空間Z内を、被処理液の上昇流、特に気泡と被処理液との混合液の上昇流が流れる。
【0039】
膜モジュール23における設置面積当たりのろ過面積を増やすためには、平板状ろ過膜22の間隔を狭くし、より多くの平板状ろ過膜22を配置する方が望ましい。しかし、膜間隔が狭すぎると平板状ろ過膜22の膜面に十分に微細気泡や気液混合流を作用させることができず、膜面洗浄が不十分となって逆にろ過性能を低下させてしまう。そこで、効率よくろ過を行うためには、膜間隔は1〜15mmであることが好ましく、さらには5〜10mmであることがより好ましい。
【0040】
この平板状ろ過膜22は、分離膜の取り扱い性や物理的耐久性を向上させるために、たとえば、フレームや平板の表裏両面に分離膜を配置し、分離膜の外周部を接着や溶着固定した平膜エレメント構造をしている。このエレメント構造は特に限定されるものではなく、平板とろ過膜の間にろ過水流路材を挟んだ物でもよい。平膜エレメント構造は、膜面に平行な流速を与えた場合の剪断力による汚れの除去効果が高いことから、本発明に好適に用いられる。
【0041】
膜モジュール23の鉛直下方には、複数の本発明の微細気泡散気管6が配置されている。この複数の微細気泡散気管6は、それぞれ気体供給管10に分岐管9を介して連接されている。この気体供給管10は、支持管長手方向αが膜面に垂直となるように、かつ、全ての平板状ろ過膜22によって形成される膜間空間Z(図8参照)の鉛直下方部に、微細気泡散気管6に形成される微細スリット(S)が存在するように、微細気泡散気管6を配設することが好ましい。このことにより、膜モジュール23内の分離膜が効率よく洗浄される。
【0042】
図7において膜ろ過運転を行う時には、開閉弁17を開とすることによりブロア7から供給される空気が、気体供給幹管27および気体供給口11を介して気体供給管10へと流入し、さらに、分岐管9を介して、微細気泡散気管6へと気体が供給される。微細気泡散気管6の表面の微細散気孔から空気が噴出し、処理槽(曝気槽)8内に微細気泡が発生する。噴出した微細気泡によるエアリフト作用によって生起する気液混合上昇流や微細気泡が、分離膜の膜面に掃流として作用するので、膜ろ過される時に膜面に付着し堆積し易いケーキ層を抑制することができる。
【0043】
ブロア7は、気体供給管10およびその下流側の微細気泡散気管6に気体を供給することができれば良く、コンプレッサー、ファン、ボンベなども用いることができる。また、開閉弁(バルブ)17は、気体供給幹管27の内部を流れる気体の流量を制御するための開閉ができれば、開閉弁でも切替弁でも特に問題はない。
【0044】
微細気泡散気管6は、その長さが長くなるほど長手方向αに均一量で散気できなくなる傾向がある。従って、膜モジュール23が多数の平板状ろ過膜22を配置した大型の装置である場合、特に図7のαの方向の幅が例えば約1200mm以上の場合には、長手方向に均一量で散気することが難しい。
【0045】
しかしながら、本発明によると、図1に示す構造の微細気泡散気管6を用いることで、1つの気体供給管10で複数の微細気泡散気管6に気体を供給し、かつ、すべての膜間空間Z内を、微細気泡を含んだ気液混合流を上向きに流すことができ、膜面に対し均一に微細気泡を作用させることができる。
【0046】
また、前記微細気泡散気管6として、図2のように、長手方向中央部に締め付け金具3を設置することによって、支持管1と弾性シート2の間隙の長手方向α長さを2分割した構造のものとしてもよい。そうすることで、弾性シート2の膨らみが抑制され、該長手方向における散気量の偏りを抑制することができる。
【0047】
さらに、複数の微細気泡散気管6は、長手方向軸とは直角方向(E)(図10(b))に80〜200mmの間隔をおいて、設置されていることが好ましい。この間隔よりも近接させて設置すると、微細散気管間に発生する水流が抑制され、微細気泡散気管の上部に汚泥が堆積しやすくなる。
【0048】
また、微細気泡散気管から散気する風量は、前記膜モジュールの水平断面積あたりの曝気風量が、0.9m/m/分以上となるように調整することが好ましい。風量がこれよりも少なくなると、散気される風量に偏りが生じやすくなる。
【0049】
また、本発明の浸漬型膜分離装置は、図9、10に示すように、複数枚の膜エレメント102が水平方向に平行に配列されている膜モジュール23と、この膜モジュール106の下方に配置された散気装置104と、該散気装置及びその周囲の空間を囲む枠体103とから基本的に構成される装置構造が例示される。また、微細気泡散気管6における気体供給管と接続されている端部と反対側の端部には支持体113が設けられ、微細気泡散気管6の両端が支持されることで、長期間にわたり、その位置がしっかりと維持されて好ましい。
【0050】
ここで、配列された膜エレメント102は筐体106内に収納されているが、膜エレメントの左右端部を密接させることにより筐体を省略してもよい。この場合、枠体103によって囲まれた空間の側面の開口部面積のうち、膜エレメント102の配列方向と平行な側面で、散気装置104より上の開口部の面積Bと、配列された膜エレメント上部の開口部の面積Aとの割合(B/A)が0.8〜5.0でとなるように配置することが好ましい。
【0051】
ここで、配列方向とは、複数の膜エレメント102が配列された並び方向で、図10におけるC−D方向を指している。また、上記した散気装置104より上の開口部の面積Bとは、図10(a)において符号107で示す部分の面積の和である。即ち、符号107で示した部分は、図10(a)における正面側と裏面側とにあるので、符号107で示す部分の面積を2倍した面積が、開口部面積Bとなる。
【0052】
また、膜エレメント上部の開口部の面積Aとは、図9において膜エレメントの間の隙間105の面積(上面面積)を足しあわせた面積(面積和)である。
【0053】
この場合には、枠体により囲まれて形成された空間内において散気装置よりも上の空間を、従来装置の場合よりも広くし、前記した面積割合(B/A)が0.8〜5.0となるようにすることが重要である。なかでも、0.8〜3.0の範囲とすることが好ましい。このような位置に散気装置104を設置することにより、旋回流109の流れを効率よく形成し、旋回流109の流路を大きく確保することで、十分な速度を持つ気液混合流を各膜エレメント102の膜面に供給することができるようになる(図10(b))。
【0054】
ここで、枠体103に囲まれる空間内に配置され固定されている散気装置104は、微細気泡散気管を備えた微細気泡散気装置であり、前述した本発明に係る微細気泡散気管や散気装置を用いる。散気装置104の圧力損失は、高すぎると消費電力が増し、省エネルギー性、経済性を損ねることにつながるため、圧力損失が低い方が好ましい。
【0055】
また、散気管から発生した微細気泡が、筐体106内に十分に拡散するためには、膜エレメント102の下端と微細気泡散気管6との距離(F)は150mm以上500mm以下になることが好ましく、さらに好ましくは150mm以上300mm以下である。この範囲より小さいと微細気泡が筐体106内に十分に拡散しにくく、逆にこの範囲より大きいと、微細気泡は筐体106内に十分に拡散するが、浸漬型膜分離装置の高さが高くなり、大型化するからである。
【0056】
本発明において、浸漬型膜分離装置の膜エレメントに配設する分離膜は、平膜であって、被ろ過液側に圧力を加えて、もしくは透過側から吸引することによって被ろ過液中に含まれる一定粒子径以上の物質を捕捉する機能を有する分離膜であり、その捕捉粒子径の違いにより、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、および限外ろ過膜と分類されるが、好ましくは、精密ろ過膜である。
【0057】
この分離膜としては、高透水性や運転安定性の観点から、水透過性に優れた膜を使用することが好ましい。その透過性の指標としては、使用前の分離膜の純水透過係数を用いることができる。多孔性膜の純水透過係数は、逆浸透膜によって精製した25℃の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出した値であり、純水透過係数が2×10−9/m/s/pa以上であることが好ましく、より好ましくは40×10−9/m/s/pa以上である。この範囲内であれば実用的に十分な透過水量が得られる。
【0058】
分離膜として用いる平膜の膜表面部分を、図13に模式的に示す。膜分離活性汚泥法において、活性汚泥は膜表層部201において固液分離され、分離された水がろ過水(処理水)として膜内へと透過する。本発明の装置では、分離膜として、膜表面における表面粗さが0.1μm以下、さらには0.001〜0.08μm、特に0.01〜0.07μmと、膜表面粗さが小さい平滑表面の分離膜を用いることが好ましい。さらに、分離膜は、その膜表面における平均孔径が0.2μm以下、さらには、0.01〜0.15μm、特に0.01〜0.1μmであることが好ましい。このような分離膜を用いることにより、洗浄効果が低いと考えられてきた微細気泡を用いても十分な膜面洗浄効果を得ることができ、膜分離活性汚泥法で求められる通常のフラックス条件下で安定運転することができる。
【0059】
膜表面における表面粗さとは、分離膜が被処理水と接触する膜表面に対して垂直方向の高さの平均値と言うことができ、図13の模式図において符号202で示す高さでもって表すことができる。そして、この膜表面における表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments社製Nanoscope(登録商標) IIIa)を用い、各ポイントのZ軸(膜表面に対して垂直方向)の高さ(Ziとする)を測定し、下記の式1による計算を行って求められる二乗平均粗さRMS(μm)を膜表層部の表面粗さとすることによって求めることができる。
【0060】
【数1】

【0061】
膜表面における平均孔径とは、分離膜表面における細孔径の平均値であり、図13の模式図では符号203で示す幅でもって表すことができる。そして、この膜表面の平均孔径を測定するためには、例えば、膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の任意の細孔の直径を測定し、数平均して求める。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求められる。細孔径の標準偏差σが大きすぎると、ろ過孔径性能の劣る孔の割合が多くなるため、標準偏差σは0.1μm以下であることが好ましい。
【0062】
このような表面性状を有する平膜状の分離膜を用いた膜分離装置の場合には、膜面に微細気泡を作用させることによって良好に膜面洗浄することができる理由は、次のように考えられる。
【0063】
膜表面粗さが小さい分離膜ほど、膜表面における非膜透過物質剥離係数比率が大きくなる傾向がある(図14参照)。膜表面における非膜透過物質剥離係数とは、分離膜表面に付着している被ろ過液の非膜透過物質が分離膜からの剥離し易さを表す剥離係数であり、この試料膜の剥離係数を、標準膜の剥離係数に対する比率でもって表した値が非膜透過物質剥離係数比率である。即ち、この剥離係数比率が高いほど、分離膜に付着している非膜透過物質が分離膜から剥離し易く、膜表面に非膜透過物質のケーク層が形成されにくいものであり、膜ろ過性能が高くなる。また、ここで、標準膜とは、ミリポア社製のデュラポア膜フィルターVVLP02500(親水性PVDF製、、孔径0.10μm)である。
【0064】
また、平均孔径が小さい分離膜ほど、ろ過抵抗係数比率が小さい傾向がある(図15参照)。ろ過抵抗係数比率は、膜表面に付着している非膜透過物質の単位物質量あたりの抵抗発生量を表すろ過抵抗係数を、標準膜のろ過抵抗係数に対する比率でもって表した値である。即ち、ろ過抵抗係数比率が小さいほど、分離膜表面に非膜透過物質が付着しても膜ろ過抵抗として表れにくいものであり、透水性が高くなる。
【0065】
散気装置から発生されて膜表面に作用させる気泡として、粗大気泡ではなく微細気泡を用いると、気液混合上向流により励起される膜表面洗浄応力が小さくなる。しかし、膜表面粗さが0.1μm以下の分離膜では、非膜透過物質剥離係数比率が高いために、膜表面から分離膜に付着している非膜透過物質が分離膜表面から剥離し易く、膜表面に非膜透過物質のケーク層が形成されにくいのであり、この結果、微細気泡による膜面洗浄でも、十分な膜ろ過性能が得られるのである。
【0066】
本発明で特定した平滑な表面性状を有する平膜状の分離膜は、以下に説明する製造方法によって製造することができる。
【0067】
たとえば、不織布からなる基材の上に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び開孔剤などを含む製膜原液を塗布し、直ちに、非溶媒を含む凝固液中で凝固させることにより多孔質分離機能層を形成することにより、本発明で用いる分離膜を製造することができる。
【0068】
このとき、基材の表面上に製膜原液を塗布する代わりに、基材を製膜原液に浸漬して多孔質分離機能層を形成してもよい。基材に製膜原液を塗布する場合には、基材の片面に塗布しても構わないし、両面に塗布してもよい。基材とは別に多孔質分離機能層のみを形成した後に基材と積層させてもよい。
【0069】
そして、製膜原液には、前記したポリフッ化ビニリデン系樹脂の他に、必要に応じて開孔剤やそれらを溶解する溶媒等を添加してもよい。
【0070】
製膜原液に、多孔質形成を促進する作用を持つ開孔剤を加える場合、その開孔剤は、凝固液によって抽出可能なものであればよく、凝固液への溶解性の高いものが好ましい。たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ポルアクリル酸などの水溶液高分子やグリセリンを用いることができる。
【0071】
また、その開孔剤として、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、又は水酸基を含有する界面活性剤を用いることもできる。このような界面活性剤の使用により、目的とする細孔構造を得ることがより容易になる。
【0072】
この分離膜製造時において開孔剤として用いる界面活性剤は、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、水酸基のうち2つ以上を含むものが好ましい。
【0073】
また、製膜原液中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、他の有機樹脂及び開孔剤などを溶解させるための溶媒を用いる場合、その溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いる事ができる。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂に対する溶解性の高いNMP、DMAc、DMF、DMSOを好ましく用いることができる。
【0074】
製膜原液には、その他、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂や他の有機樹脂を溶解しないものであり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び他の有機樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも廃水処理の容易さや価格の点から水、メタノールが好ましい。これらの混合であってもよい。
【0075】
製膜原液の組成において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は5重量%〜30重量%、開孔剤は0.1重量%〜15重量%、溶媒は45重量%〜94.8重量%、非溶媒は0.1重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましい。
【0076】
非溶媒を含む凝固浴としては、非溶媒からなる液、または非溶媒と溶媒とを含む混合溶液を用いればよい。
【0077】
一方、製膜原液中に非溶媒を含有しない場合には、製膜原液中に非溶媒を含有させる場合よりも、凝固浴における非溶媒の含有量を、上記場合よりも少なくすることが好ましく、例えば、60重量%〜99重量%とするのが好ましい。
【0078】
このように凝固浴中の非溶媒の含有量を調整することにより、多孔質層表面の表面粗さや細孔径やマクロボイドの大きさを制御することができる。なお、凝固浴の温度は、あまり高いと凝固速度が速すぎるようになり、逆に、あまり低いと凝固速度が遅すぎるようになるので、通常、15℃〜80℃の範囲で選定するのが好ましい。より好ましくは20℃〜60℃の範囲である。
【0079】
このような分離膜の製造方法によると、多孔質基材の表面に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質樹脂層が形成されてなる分離膜であって、多孔質樹脂層の外表面側に、膜ろ過に必要な所望の平均孔径(0.01〜0.2μm)をもつとともに平滑表面(表面粗さが0.1μm以下)をもつ分離機能層が形成され、それより内側にはマクロボイドが存在する層が形成されてなる分離膜が製造される。即ち、多孔質樹脂層内には、多孔質基材に近い内側にマクロボイドのある層が存在し、外表面に、所定孔径をもつ平滑表面の分離機能層が存在する。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
図1に示すような構造の微細気泡散気管を製作した。
【0081】
その支持管1には、炭素繊維強化樹脂製の円柱状の支持管(長さ1600mm、φ62mm)を用い、支持管1の片端には、気体供給部4として、ステンレス製のパイプを設置し、支持管1の表面に上面と下面とに等間隔で12個ずつ長さ約40mm、最大幅約10mmの略楕円形の貫通孔5を設けた。また、気体供給部4については、先端部を雄型ネジ口とした。支持管1の外周を覆うように、EPDMゴム製の弾性シート2が設置され、締め付け金具3で両端部を支持管1に締め付けた。両方の端部に取り付けた締め付け金具3の間の距離を1400mmとした。弾性シート2には、幅2mmの微細スリット(S)が2mm間隔で図3(a)のように設けられていた。このような散気管を3本製作した。
【0082】
次に、微細気泡散気管の気体供給部を接続するための気体供給管として、図11のようなステンレス製のパイプ状の気体供給管10を製作した。気体供給管の管先の両端は閉じられており、上部に気体供給口11を分岐させ、3本の分岐管9を設けた。ここで、分岐管9の先端部は、雌型ネジ口とした。
【0083】
一方、流路材の代わりとなる凹凸を両面に形成した、高さ1000mm×幅500mm×厚み6mmのABS製の表裏両面に、それぞれ分離膜(平膜)を設置して、膜エレメント(分離膜面積:0.9m)を作製した。ここで、分離膜としては、ポリフッ化ビニリデン製の表面平均孔径0.08μm、表面粗さ(RMS)0.062μmの平膜を用いた。
【0084】
なお、当該平膜は、次のような手法により製作した。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂と、開孔剤として分子量が約20,000のポリエチレングリコール(PEG)と、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)と、非溶媒として純水をそれぞれ用い、これらを90℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を調製した。
【0085】
PVDF:13.0重量%
PEG : 5.5重量%
DMAc:78.0重量%
純水 : 3.5重量%
次に、上記製膜原液を25℃に冷却した後、密度が0.48g/cm、厚みが220μmのポリエステル繊維製不織布(基材)上に塗布し、塗布後、直ちに25℃の純水中に5分間浸漬し、さらに80℃の熱水に3回浸漬してDMAcおよびPEGを洗い出し、分離膜を製造した。
【0086】
次に、内寸(略寸)が高さ1000mm×幅515mm×奥行1400mmで上下が開放した筐体を製作した。筐体の下には枠体が連接されていて、枠体内の空間の所定位置に、上述の微細気泡散気装置が固定されていて、エレメント下端から微細気泡散気装置までの距離(F)が220mmであった。この時、膜エレメントの配列方向と平行な側面で、散気装置より上部の開口部の面積は、片面側2520cmであった。筐体内に100枚の膜エレメントを装填したときの、筐体上部の膜エレメント上面の開口部の面積は4000cmであった。従って、B/Aの値は、2520×2/4000=1.26であった。なお、散気管同士の水平間隔は125mmとした。
【0087】
以上のようにして、100枚の膜エレメント102が筐体106内に装填され、枠体103と散気管104とが設置された、図9、10に示す構造の浸漬型膜分離装置を製作した。
【0088】
また、表1にまとめて示す条件にて、図12に示す処理装置の水浄化処理プロセスによって、生活廃水の処理を行った。図12では、浸漬型膜分離装置を、膜エレメントが装填された膜モジュール23と散気装置104とに簡略化して示している。ここで、比較的大型の浸漬型膜分離装置にもかかわらず処理槽8内に設置した浸漬型膜分離装置への気体供給幹管の配管は、1本であるため位置あわせなどが容易であり、配管工事の手間が大幅に軽減された。次に、図12に示すように、原水(生活廃水)44は、原水供給ポンプ45を介して、まず脱窒槽46に導入され活性汚泥と混合される。その後、この活性汚泥混合液は処理槽8に導入される。生物処理工程は、窒素除去のため、硝化工程(好気)と脱窒工程(無酸素)により処理が進められる。後段の処理槽8(好気槽)でアンモニア性窒素(NH−N)の硝化を進め、膜分離活性汚泥槽から前段の脱窒槽46へ硝化液を汚泥循環ポンプ47により循環され、脱窒槽46にて窒素を除去する。
【0089】
ここで、処理槽8内では、ブロア7により送風された空気が散気装置4を介して曝気される。この曝気により、活性汚泥が好気状態に維持され、硝化反応やBOD酸化が行われる。さらに、この空気曝気により、膜モジュール23の膜面上へ付着する汚泥の付着・堆積が洗浄される。また、処理槽8と脱窒槽46内のMLSS濃度維持のため、定期的に汚泥を、汚泥引き抜きポンプ48により引き抜いた。
【0090】
膜モジュール23による膜ろ過は吸引ポンプ25で透過水側を吸引することにより行った。また、分離膜の膜表面への汚泥付着防止のため、タイマーを内蔵し、予め記録されたプログラムに従い、定期的に吸引ポンプの運転/停止を切り替えるリレースイッチを用いることにより、膜ろ過は8分運転と2分休止とを繰り返す間欠運転で行い、膜ろ過流束は1.0m/day(平均フラックス)と固定し運転を行った。
【0091】
【表1】

【0092】
ここで、運転性能を表す指標として膜差圧を経時的に測定し、その経時的変化を用いた。運転中に生じる旋回流が不均一であれば膜面洗浄が不十分となり、膜差圧が上昇し、安定運転が困難になるので、膜差圧の変化でもって運転性能を評価できる。
【0093】
90日間の運転を続けたちころ。90日間における差圧上昇はほとんど見られず、安定した運転を継続することができた。
(実施例2)
実施例1と同様の浸漬型膜分離装置において、枠体に固定された散気装置の位置を変更し、エレメント下端から微細気泡散気管まで距離Fが、それぞれ、155mm、460mmとなる位置に微細気泡散気管を設置した。この時、B/Aの値は、それぞれ、0.805、2.94であった。それぞれを、2(a)、2(b)とする。
【0094】
これらの膜分離装置を用いて実施例1と同様の運転条件で運転したところ、エレメント下端から散気装置までの上下方向の距離が155mmのとき(2(a)の場合)、および460mmのとき(2(b)の場合)のいずれの場合でも、安定した運転を継続することができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の浸漬型膜分離装置は、下水、し尿、産業廃棄水等の汚水を処理する際に、活性汚泥処理槽内に設置して使用する浸漬型膜分離装置として使用される。また、汚水以外の種々の水(例えば上水)を膜分離処理する際の浸漬型膜分離装置として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る微細気泡散気管の一実施態様を示す、長手方向中心軸での縦断面図である。
【図2】本発明に係る微細気泡散気管の一実施態様を示す、長手方向中心軸での縦断面図である。
【図3】本発明に係る微細気泡散気管の一実施態様の外観を模式的に示す図である。
【図4】本発明の微細気泡散気装置の一実施態様の外観を示す図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明に係る微細気泡散気管の気体供給部4と気体供給管の分岐管9との接続方法を例示する断面図である。
【図6】本発明に係る微細気泡散気管の気体供給部4と気体供給管の分岐管9との接続方法を例示する部分断面図であり、(a)はフランジを用いる方法、(b)はユニオンを用いる方法、(c)はクランプを用いる方法を示す。
【図7】本発明の浸漬型膜分離装置の一例を示す概略斜視図である。
【図8】本発明における浸漬型膜分離装置膜モジュール内で2枚の隣接する膜エレメントを示す概略斜視図である。
【図9】実施例における浸漬型膜分離装置を示す概略斜視図である。
【図10】(a)は図9の膜分離装置を膜エレメント2の配列方向と平行な側面から見た模式図(一部破断断面図)であり、(b)は図9の膜分離装置を膜エレメント2の配列方向と垂直な面から見た断面模式図である。
【図11】実施例における気体供給管の外観概略図である。
【図12】実施例において採用した膜分離活性汚泥法による廃水処理装置を示す装置概略図である。
【図13】分離膜の膜表面部分を模式的に示す膜断面概略図である。
【図14】分離膜の膜表面粗さ(RMS)と非膜透過性物質剥離係数比率との関係を表すグラフである。
【図15】分離膜の平均孔径とろ過抵抗係数比率との関係を表すグラフである。
【図16】従来の微細気泡散気管の一実施形態を示す長手方向中心軸での縦断面図である。
【図17】従来の微細気泡散気装置の設置状態を示す概略斜視図である。
【図18】従来の微細気泡散気装置を設置した浸漬型膜分離装置を示す概略図である。
【図19】従来の散気管の配置を示す概略図である。
【図20】従来の散気管の配置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0097】
1:支持管
2:弾性シート
3:締め付け金具
4:気体供給部
5:貫通孔
6:微細気泡散気管
7:ブロア
8:処理槽
9:分岐管
10:気体供給管
11:気体供給口
12:Oリング
13:ボルトナットの通し口
14:ユニオン
15:クランプ
16:ボルト
17:開閉弁
21:被処理液供給管
22:平板状ろ過膜
23:膜モジュール
24:処理水配管
25:吸引ポンプ
26:透過水出口
27:気体供給幹管
28:処理水出口
44:被処理水
45:原水供給ポンプ
46:脱窒槽
47:汚泥循環ポンプ
48:汚泥引き抜きポンプ
102:膜エレメント
103:枠体
104:散気装置
105:エレメント間のすきま
106:筐体
107:膜エレメント2の配列方向と平行な側面で、散気装置4より上の開口部の面積
108:エア
109:旋回流
113:支持体
201:膜表層部(膜表面)
202:表面粗さに相当する高さ
203:平均孔径に相当する幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される浸漬型膜分離装置において、平膜を分離膜として配設した分離膜エレメントの複数が膜面平行に並列で配置されてなる分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの鉛直下方に設置され、1つの気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管とを備え、該気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管が、分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びている浸漬型膜分離装置であって、該微細気泡散気管は、少なくとも、筒状の支持管と、微細スリットが形成された弾性シートとを有し、該弾性シートが該支持管の外周を覆うように配置され、該支持管の内側に供給した気体が、該支持管の表面に設けられた複数の孔から該支持管と該弾性体の間隙に流入し、該弾性シートの微細スリットが開くことにより、微細気泡が散気管外に発生する機能を有する微細気泡散気管であって、該支持管の長手方向の長さが1000mm以上であることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
前記支持管と前記弾性シートとの間隙が、長手方向に少なくとも2分割されていていることを特徴とする請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
分割された間隙部の長手方向の長さが1000mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項4】
前記分離膜エレメントの下端と前記微細気泡散気管との距離が、150mm以上500mm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−82597(P2010−82597A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257076(P2008−257076)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】